(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか一項に記載の回路基板において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなる絶縁基板と、その片面または両面に形成された導電部分とを含む回路層を備えており、
前記回路層の少なくとも一方の面が、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介して、他の回路基板材料に対して積層されている回路基板。
請求項1〜4のいずれか一項に記載の回路基板において、熱可塑性液晶ポリマーフィルムをカバーレイとし、前記カバーレイは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介して、導電配線パターンの少なくとも一部を被覆している回路基板。
請求項1〜10のいずれか一項に記載の回路基板において、熱可塑性液晶ポリマーフィルム間が接着層で接続された積層部分を有しており、その積層部分の引張弾性率が、2.0GPa以上である回路基板。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の回路基板について説明する。
本発明の回路基板は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと、
ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層と、
を少なくとも備える回路基板であって、
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、絶縁基板、回路層材料、およびカバーレイからなる群から選択される少なくとも一つの回路基板材料として、回路基板を構成する他の回路基板材料に対して前記接着層を介して積層一体化されている。
【0038】
ここで、回路層材料とは、絶縁基板と導電部分とで構成された回路層を形成するための材料を意味しており、具体的には、絶縁基板と導電性材料とを意味している。また、回路基板を構成する回路基板材料としては、通常回路基板において用いられる部材であれば特に限定されないが、例えば、絶縁性材料から形成される絶縁基板;絶縁基板の少なくとも一方の面に対して導電部分(導電回路、導電配線パターンなど)が形成されている回路層;絶縁性材料から形成されるカバーレイなどが挙げられる。
【0039】
また、回路基板は、1層の導電回路を有する単層回路基板であってもよいし、少なくともフレキシブル部分において、複数(例えば、2〜10層、好ましくは2〜8層)の導電回路を有する多層回路基板であってもよい。
【0040】
本発明の特徴の一つとして、回路基板に形成された前記接着層のガラス転移温度が所定の温度範囲内に存在することが挙げられる。これは、回路基板において接着状態にある接着層の有するガラス転移温度が所定の温度範囲内にあることを示しており、このようなガラス転移温度を有する接着層は、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着性シートに対して、特定の加熱条件下において熱を加えることにより、得ることができる。
【0041】
すなわち、このような接着層は、例えば、特許文献5で行われるようなポリフェニレンエーテル系樹脂を長時間にわたる加熱により熱硬化させて得られた熱硬化物とは大きく異なっており、接着性を有しつつも、ガラス転移温度により規定される特定の柔らかい状態を有することができる。
【0042】
例えば、本発明の一実施形態に係る回路基板は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと、その片面または両面に形成された導電部分(例えば導電配線パターン、導電回路)とを含む回路層を備えており、前記回路層の少なくとも一方の面が、接着層を介して、他の回路基板材料に対して積層されている回路基板であってもよい。
【0043】
このような回路基板では、接着層を介して回路基板材料が、絶縁性材料から形成される絶縁基板;絶縁基板の少なくとも一方の面に対して導電部分または導電層が形成されている回路層;絶縁性材料から形成されるカバーレイなどに対して積層されている。
【0044】
図1は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなる絶縁基板と、その片面に形成された導電配線パターンとを含む回路層を備えている回路基板であって、前記回路層の少なくとも一方の面が、接着層を介して、他の回路基板材料に積層されている回路基板を説明するための概略断面図である。
【0045】
図1に示すように、回路基板1000は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなる絶縁基板1002Aの一方の面に導電回路(または導電部分)1001Aが形成された回路層1004Aを少なくとも備えており、前記回路層1004Aの導電回路側の面が、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層1005を介して、他の回路基板材料の一つである回路層1004Bに対して積層されている。なお、この回路層1004Bでは、導電回路(または導電部分)1001Bが絶縁基板1002Bの一方の面に形成されている。
【0046】
ここで、導電回路1001Aおよび1001Bは互いに向かい合うように接着層側において形成されているが、例えば、導電回路の少なくとも一方は接着層と相反する面に形成されていてもよい。
【0047】
また、回路層1004Bを構成する絶縁基板1002Bは接着層1005を介して接着できる限り特に限定されないが、耐熱性、寸法安定性、低伝送損失性の観点から、熱可塑性液晶ポリマーフィルムであってもよい。
【0048】
図1では、2層の導電回路1001Aおよび1001Bを備える回路基板を示しているが、導電回路は1層だけでもよいし、3層以上の導電回路が形成された多層回路基板であってもよい。
【0049】
例えば、高集積化の観点では、好ましくは、絶縁基板の両面に導電
回路を有する回路層(A)を複数層含む多層回路基板であってもよい。通常は
接着層を(B)として(A)/(B)/(A)の4層回路基板が好ましいが、さらに繰り返して、(A)/(B)/(A)/(B)/(A)の6層回路、(A)/(B)/(A)/(B)/(A)/(B)/(A)の8層回路とすることも可能である。
【0050】
また、本発明の別の実施形態に係る回路基板は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなるカバーレイを備えており、前記カバーレイは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介して、導電部分(例えば、導電配線パターンなど)の少なくとも一部を被覆していてもよい。
【0051】
なお、回路基板における絶縁基板材料(例えばフレキシブル絶縁基板材料)およびカバーレイとしては、本発明の特定の接着性樹脂を用いる限り、必ずしもすべてが熱可塑性液晶ポリマーフィルムでなくてもよく、必要に応じて、絶縁基板材料およびカバーレイとして通常用いられるさまざまなものを選択することができる。好ましくは、耐熱性、寸法安定性、低伝送損失性の観点から、絶縁基板材料およびカバーレイが、熱可塑性液晶ポリマーフィルムであってもよい。
【0052】
また、本発明の回路基板においては前記回路層(A)の両面に液晶ポリマーフィルムをカバーレイ(C)として形成し、ポリフェニレンエーテル系樹脂を接着層(B)として回路層(A)を被覆させてもよい。通常はカバーレイ(C)/接着層(B)/回路層(A)/接着層(B)/カバーレイ(C)の構成が好ましい。
【0053】
図2は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなるカバーレイが、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介して、導電配線パターンを含む回路層に対して積層されている回路基板を説明するための概略断面図である。
【0054】
図2に示すように、単層の回路基板2000では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなるカバーレイ2003は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層2005を介して、導電回路2001を被覆している。ここで、導電回路2001は、絶縁基板2002の上に形成され、回路層2004を形成している。そして、カバーレイ2003は、回路層2004に対して積層されている。
【0055】
ここで、絶縁基板2002としては接着層2005を介して接着できる限り特に限定されないが、耐熱性、寸法安定性、低伝送損失性の観点から、熱可塑性液晶ポリマーフィルムであってもよい。
【0056】
(熱可塑性液晶ポリマーフィルム)
熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、絶縁基板として用いてもよいし、カバーレイとして用いてもよい。
本発明の熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、溶融成形可能な液晶性ポリマー(または光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマー)で構成され、この熱可塑性液晶ポリマーは、溶融成形できる液晶性ポリマーであれば特にその化学的構成については特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性液晶ポリエステル、又はこれにアミド結合が導入された熱可塑性液晶ポリエステルアミドなどを挙げることができる。
【0057】
また熱可塑性液晶ポリマーは、芳香族ポリエステルまたは芳香族ポリエステルアミドに、更にイミド結合、カーボネート結合、カルボジイミド結合やイソシアヌレート結合などのイソシアネート由来の結合等が導入されたポリマーであってもよい。
【0058】
本発明に用いられる熱可塑性液晶ポリマーの具体例としては、以下に例示する(1)から(4)に分類される化合物およびその誘導体から導かれる公知の熱可塑性液晶ポリエステルおよび熱可塑性液晶ポリエステルアミドを挙げることができる。ただし、光学的に異方性の溶融相を形成し得るポリマーを形成するためには、種々の原料化合物の組合せには適当な範囲があることは言うまでもない。
【0059】
(1)芳香族または脂肪族ジヒドロキシ化合物(代表例は表1参照)
【表1】
【0060】
(2)芳香族または脂肪族ジカルボン酸(代表例は表2参照)
【表2】
【0061】
(3)芳香族ヒドロキシカルボン酸(代表例は表3参照)
【表3】
【0062】
(4)芳香族ジアミン、芳香族ヒドロキシアミンまたは芳香族アミノカルボン酸(代表例は表4参照)
【表4】
【0063】
これらの原料化合物から得られる液晶ポリマーの代表例として表5および6に示す構造単位を有する共重合体を挙げることができる。
【0066】
これらの共重合体のうち、p―ヒドロキシ安息香酸および/または6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸を少なくとも繰り返し単位として含む重合体が好ましく、特に、(i)p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸との繰り返し単位を含む重合体、(ii)p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオールと、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸との繰り返し単位を含む重合体が好ましい。
【0067】
例えば、(i)の重合体では、熱可塑性液晶ポリマーが、少なくともp−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸との繰り返し単位を含む場合、繰り返し単位(A)のp−ヒドロキシ安息香酸と、繰り返し単位(B)の6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸とのモル比(A)/(B)は、液晶ポリマー中、(A)/(B)=10/90〜90/10程度であるのが望ましく、より好ましくは、(A)/(B)=50/50〜85/15程度であってもよく、さらに好ましくは、(A)/(B)=60/40〜80/20程度であってもよい。
【0068】
また、(ii)の重合体の場合、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロシキ−2−ナフトエ酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ヒドロキシカルボン酸(C)と、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびヒドロキノンからなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジオール(D)と、テレフタル酸、イソフタル酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも一種の芳香族ジカルボン酸(E)の、液晶ポリマーにおける各繰り返し単位のモル比は、芳香族ヒドロキシカルボン酸(C):前記芳香族ジオール(D):前記芳香族ジカルボン酸(E)=30〜80:35〜10:35〜10程度であってもよく、より好ましくは、(C):(D):(E)=35〜75:32.5〜12.5:32.5〜12.5程度であってもよく、さらに好ましくは、(C):(D):(E)=40〜70:30〜15:30〜15程度であってもよい。
【0069】
また、芳香族ジカルボン酸に由来する繰り返し構造単位と芳香族ジオールに由来する繰り返し構造単位とのモル比は、(D)/(E)=95/100〜100/95であることが好ましい。この範囲をはずれると、重合度が上がらず機械強度が低下する傾向がある。
【0070】
なお、本発明にいう溶融時における光学的異方性とは、例えば試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を観察することにより認定できる。
【0071】
熱可塑性液晶ポリマーとして好ましいものは、融点(以下、Tmと称す)が295℃以上の範囲のものであり、さらに好ましくはTmが310〜400℃のものである。なお、Tmは示差走査熱量計((株)島津製作所DSC)により主吸熱ピークが現れる温度を測定することにより求められる。
【0072】
前記熱可塑性液晶ポリマーには、本発明の効果を損なわない範囲内で、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂等の熱可塑性ポリマー、各種添加剤、充填剤などを添加してもよい。
【0073】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルム(1)は、熱可塑性液晶ポリマーを押出成形して得られる。熱可塑性液晶ポリマーの剛直な棒状分子の方向を制御できる限り、周知のTダイ法、ラミネート体延伸法などの任意の押出成形法が適用できるが、特にインフレーション法が好ましい。
【0074】
本発明に使用される熱可塑性液晶ポリマーフィルム(1)は、295℃以上の融点を有しているのが好ましく、このような高い融点とするには、一旦低融点のフィルムを得て、不活性雰囲気下で熱処理することで、熱処理前の融点を増加させてもよい。該フィルムの融点が低すぎる場合、鉛フリーはんだ接合時のリフロー工程やはんだで部品接合時に反りや寸法変化を生じることがある。好ましくは310℃以上、より好ましくは330℃以上である。また、該フィルムの融点が400℃を超える場合、回路層を製造する際の銅箔を熱圧着する工程で高温の積層設備が必要となるため、フィルムの融点の上限は400℃程度であってもよい。
【0075】
なお、熱可塑性液晶ポリマーからなるフィルムとしてより高い耐熱性や融点を必要とする場合には、一旦得られたフィルムを加熱処理することによって、耐熱性や融点を高めることができる。加熱処理の条件の一例を説明すれば、一旦得られたフィルムの融点が283℃の場合でも、260℃で5時間加熱すれば、融点は320℃になる。
【0076】
(ポリフェニレンエーテル系樹脂層を含む接着層または接着性シート)
接着層または接着性シートは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を少なくとも含んでいる。ポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記化1で表される単位から、実質的に構成される。
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合を含む官能基を側鎖として導入し、硬化性であるほうが好ましい。この場合、接着層は、接着性シートの硬化物として得られる。
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記化2の一般式で表される化合物群を含んでいても良い。
【0078】
式中、Ra,Rb,Rc,Rdは同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(例えば、C
1−4アルキル基)、ハロゲン化アルキル基(例えば、ハロゲン化C
1−4アルキル基)またはフェニル基である。
【0080】
式中、A
1,A
2は同一または異なる炭素数1〜4の直鎖状アルキル基を表し、X
1は脂肪族炭化水素残基およびそれらの置換誘導体、アラルキル基およびそれらの置換誘導体、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、またはカルボニル基を表し、Y
1は、脂肪族炭化水素残基およびそれらの置換誘導体、芳香族炭化水素残基およびそれらの置換誘導体、またはアラルキル基およびそれらの置換誘導体を表し、Z
1は、酸素原子、硫黄原子、スルホニル基、またはカルボニル基を表し、A
2と直接結合した二つのフェニル基、A
2とX
1、A
2とY
1、A
2とZ
1の結合位置はすべてフェノール性水酸基のオルト位およびパラ位を示し、rは0〜4、sは2〜6を表す。
【0081】
また、ポリフェニレンエーテル系樹脂が熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂である場合、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂は、下記一般式(3)で表される単位から、実質的に構成されてもよい。
【0083】
(式中、R
1,R
2,R
3,R
4,R
5,R
6,R
7は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基またはフェニル基である。−(O−X−O)−は以下の構造式(4)で示され、−(Y−O)−は構造式(5)で定義される1種類の構造、または構造式(5)で定義される2種類以上の構造がランダムに配列したものである。Zは、炭素数1以上の有機基であり、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子を含むこともある。a,bは、少なくともいずれか一方が0でない、0〜300の整数を示す。c,dは、0または1の整数を示す。
【0085】
構造式(4)中、R
8,R
9,R
10,R
14,R
15は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
11,R
12,R
13は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
【0087】
式中、R
16,R
17は、同一または異なってもよく、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。R
18,R
19は、同一または異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子または炭素数6以下のアルキル基またはフェニル基である。
【0088】
このような化合物は特開2004−59644号公報に記載されており、例えば三菱ガス化学(株)より、OPE−2stシリーズとして上市されている。
【0089】
さらに接着層には、熱可塑性液晶ポリマーフィルムとの接着性を改善するために、エラストマー性スチレン系ポリマーをポリフェニレンエーテル系樹脂と組み合わせてもよく、エラストマー性スチレン系ポリマーとしては、ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン共重合体(SEBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合(SEPS)、ポリスチレン-ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン共重合体(SEEPS)またはその水添物(SEEPS−OH)などのスチレン系熱可塑性エラストマー;汎用ポリスチレン(GPPS)にゴム成分を混合したハイインパクトポリスチレンまたはその水添物などが挙げられる。
【0090】
ポリフェニレンエーテル系樹脂は、例えば、接着層または接着性シート全体の10質量%以上で配合されてもよく(例えば、10〜80質量%)、好ましくは15質量%以上(例えば、15〜70質量%)であってもよく、特に好ましくは25質量%以上であってもよい。
【0091】
また、ポリフェニレンエーテル樹脂の含有量が少なすぎると挿入損失が大きくなる。一方、多すぎると熱可塑性液晶ポリマーフィルムとの接着力の低下や積層後の寸法安定性が不良となる場合がある。
【0092】
また、エラストマー性スチレン系ポリマーは、例えば、接着層または接着性シート全体の90質量%以下で含まれていてもよく、好ましくは85質量%以下(例えば10〜70質量%)、より好ましくは75質量%以下(例えば、20〜60質量%)であってもよい。より好ましくは30〜80質量%である。
【0093】
さらに接着層または接着性シートには、物性を改善するために反応性樹脂を配合することができる。反応性樹脂としては、アクリル系樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。反応性樹脂は、例えば、接着層または接着性シート全体の2質量%以下であってもよく、好ましくは1.5質量%以下であってもよい。
【0094】
なお、接着するために用いられる接着性シートの厚みは、例えば、5〜100μmの範囲内で選択でき、5〜50μmの範囲内がより好ましい。
【0095】
(基板またはカバーレイの材料)
本発明の回路基板では、熱可塑性液晶ポリマーフィルムが、絶縁基板、回路層材料、およびカバーレイからなる群から選択される少なくとも一つの回路基板材料として、回路基板を構成する他の回路基板材料に対して、前記接着層を介して積層された構造を有する限り、その他の回路基板を構成する部材については、発明の効果を阻害しない範囲で適宜選択することができる。
【0096】
例えば、絶縁基板(好ましくはフレキシブル絶縁基板)およびカバーレイの材料は、寸法安定性、低吸湿性、低伝送損失などの観点から、熱可塑性液晶ポリマーを用いるのが好ましいが、必要に応じて、熱可塑性液晶ポリマー以外の高周波用基板材料を用いてもよい。
このような高周波用基板材料は、有機系材料であってもよいし、無機系材料であってもよい。有機系材料としては、例えば、フレキシブル基板材料としては、ポリイミドフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルムなどが挙げられる。また、リジッド基板材料としては、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。なお、これらの有機系材料は単独で用いてもよいし、ガラス布帛(例えばガラスマット、ガラス織布)などを補強材として併用して、ガラスフッ素基板またはガラスエポキシ基板として用いてもよい。また無機系材料としては、セラミックなどが挙げられる。
【0097】
(導電部分)
導電部分(または導電回路や導電配線パターン)は、絶縁基板の少なくとも一方の面に形成され、所定のパターンの信号ラインやアース、電源面などを構成していてもよい。このような
導電部分は、公知又は慣用の方法により形成され、スパッタリング法、メッキ法などを用いてもよい。
【0098】
または、絶縁基板に対して、導体箔を公知又は慣用の方法により接着した後、感光性レジスト処理、露光、エッチング加工を経て、所定のパターンの信号ラインを、絶縁基板の一方の面に形成してもよい。
導体箔は、基板の材料に応じて、基板材料と導体箔とを直接熱圧着などにより接着してもよいし、適当な接着剤を介して基板材料と導体箔とを接着してもよい。
【0099】
導体としては、電気的接続に使用されるような金属が好適であり、銅のほか金、銀、ニッケル、アルミニウムなどを挙げることができる。これらの金属のうち、銅が好ましく用いられる。
【0100】
導電部分の厚さは、1〜50μmの範囲内が好ましく、5〜20μmの範囲内がより好ましい。
導電部分に用いられている金属層または回路層に含まれる導電配線パターンは、その金属層の表面の最大粗度が2.0μm以下の低粗度であることが好ましい。前記表面の最大粗度が2.0μmよりも大きいと、伝送損失が大きくなる虞がある。より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。
【0101】
例えば、回路層は、表面粗度が2.0μm以下の電解銅箔あるいは圧延銅箔を基板材料(好ましくは熱可塑性液晶ポリマーフィルム)の融点より30℃低い温度で熱圧着し、次いで、所定の配線となるように塩化第二鉄溶液などでエッチングし作成する。さらに両面の導電をとるために、レーザーなどでスルーホールやビアを開け、内壁に銅めっきすることで層間接続を有する回路層を形成できる。
【0102】
(回路基板の製造方法)
このような回路基板は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着性シートと、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと、それぞれを準備する工程と、
前記接着性シートを介して、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、絶縁基板、回路層材料、およびカバーレイからなる群から選択される少なくとも一つの回路基板材料として、他の回路基板材料に対して積層し、前記接着性シートが、ガラス転移温度200〜300℃を有する接着層となるまで150〜250℃で熱圧着する熱圧着工程と、
を少なくとも備える製造方法により、得ることができる。
【0103】
上記熱圧着後の接着層は、柔軟性を有しつつも、はんだ耐熱性および/または積層後の寸法安定性を有する観点からガラス転移温度が200℃以上であり、好ましくは220℃以上、さらに好ましくは240℃以上であってもよい。なお、ガラス転移温度の上限は、300℃以下であり、好ましくは280℃以下、さらに好ましくは270℃以下であってもよい。
【0104】
また、前記接着層は、柔軟性を保った状態で用いられるのが好ましいため、回路基板が、熱可塑性液晶ポリマーフィルム間が接着層で接続された積層部分を有している場合、回路基板の弾性率として、例えば、その積層部分の引張弾性率は、例えば、2.0GPa以上であってもよく、より好ましくは2.5GPa以上、さらに好ましくは3.0GPa以上であってもよい。なお、その上限としては、5.0GPa程度であってもよい。
なお、回路基板の弾性率は、後述する実施例に記載された方法により測定された値を示す。
【0105】
熱圧着工程で用いられる加熱圧着の手段として特に制限はなく、真空熱プレス方式、ロール熱プレス方式、ダブルベルト熱プレス方式などが採用できる。
【0106】
熱圧着の際の条件は、接着層が所定のガラス転移温度を示す限り、回路基板材料の種類や、接着層に含まれる各物質の配合割合等などに合わせて適宜設定することができる。
加熱温度は、高温を要せずに熱圧着できる観点から150〜250℃(例えば、150〜190℃程度)であり、好ましくは160〜230℃程度(例えば、160〜180℃程度)、より好ましくは170〜200℃程度であってもよい。
また積層圧力は、例えば1〜3MPa程度、好ましくは1.3〜2.8MPa程度、さらに好ましくは1.5〜2.5MPa程度であってもよい。
また積層時間は、例えば30秒〜20分程度、好ましくは1〜15分程度、さらに好ましくは2〜10分程度であってもよい。
【0107】
(回路基板)
本発明の回路基板は、低伝送損失性の観点から10GHzの周波数における挿入損失が例えば3.0dB/10cm以下、好ましくは2.5dB/10cm以下、より好ましくは2.0dB/10cm以下であってもよい。ここで、挿入損失とは、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0108】
また、上記した回路基板で構成される本発明の回路は、5GHzの周波数における挿入損失が2.0dB/10cm以下、好ましくは1.8dB/10cm以下、より好ましくは1.5dB/10cm以下であってもよい。
【0109】
また、回路基板は、特定の接着層を介した回路基板内の層間接着性にも優れており、例えば、カバーレイと回路層との接着層間を剥離させる場合や、接着層を介して隣り合う回路層間を剥離させる場合などの強度を層間接着力として評価すると、層間接着力は、例えば、0.5kN/m以上であってもよく、好ましくは0.8kN/m以上であってもよい。ここで、層間接着力とは、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0110】
また、回路基板は、はんだ耐熱性にも優れており、例えば、JIS C5016試験法に準拠した回路基板(特に、絶縁基板部分やカバーレイ部分)におけるはんだ耐熱温度は、例えば、290℃以上であってもよく、好ましくは295℃以上であってもよい。ここで、はんだ耐熱温度とは、後述する実施例に記載した方法により測定される値である。
【0111】
また、回路基板は、寸法安定性にも優れており、IPC−TM−6502.2.4に準じて測定した加熱前後の寸法変化率が、例えば、±0.18%以内であってもよく、好ましくは±0.13%以内であってもよく、より好ましくは±0.08%以内、特に好ましくは±0.05%以内であってもよい。
【0112】
(リジッド−フレックス回路基板)
また、本発明はさらに別の実施形態として、リジッド部とフレキシブル部で構成されたリジッド−フレックス回路基板を包含していてもよい。
【0113】
この場合、絶縁基板およびカバーレイとして、高周波領域での誘電特性に優れる熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いてフレキシブル部(またはフレキシブル回路板)を形成し、このフレキシブル回路板に対してリジッド回路層が積層されたリジッド部を形成すると、得られたリジッド−フレックス回路基板は、耐熱性に優れるだけでなく、熱可塑性液晶ポリマーフィルムの優れた誘電特性を利用して高周波での伝送損失を低減することができる。
【0114】
例えば、このようなフレキシブル部とリジッド部とを備えるリジッド−フレックス回路基板は、
前記フレキシブル部は、絶縁材料として光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、少なくとも絶縁基板、回路層材料、およびカバーレイからなる群から選択される少なくとも一つの回路基板材料として備えるフレキシブル回路板で構成され、
前記リジッド部は、前記フレキシブル部から延出したフレキシブル回路板と、その少なくとも一方の面に配設されたリジッド回路層とを備えるリジッド回路板で構成され、
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介して、リジッド−フレックス回路基板を構成する他の回路基板材料に対して、積層一体化されているリジッド−フレックス回路基板であってもよい。なお、ここで、リジッド回路層は、リジッド絶縁基板と、その少なくとも一方に形成された導電部分(例えば、導電回路など)とを備えている。
【0115】
このようなリジッド−フレックス回路基板は、特定の接着層を利用するため低温成形できるだけでなく、フレキシブル部の絶縁材料として、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用いているため、耐熱性および寸法安定性に優れる。また、リジッド−フレックス回路基板は、層間接着力に優れるとともに、低伝送損失を達成できる。
また、本発明のリジッド−フレックス回路基板は、低温成形性を有しているため、熱硬化型樹脂で使用されている積層設備などを用いて、効率よく、上記の優れた性質を有するリジッド−フレックス回路基板を製造することが可能である。
【0116】
例えば、前記フレキシブル部は、フレキシブル絶縁基板と、その少なくとも一方の面に形成された導電部分(例えば、導電回路)とを備えるフレキシブル回路層、及びこのフレキシブル回路層に形成されている導電部分を被覆するためのカバーレイを備えるフレキシブル回路板で形成され;
前記フレキシブル絶縁基板およびカバーレイは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムで構成され;
リジッド部は、リジッド絶縁基板と、その少なくとも一方の面に形成された導電部分(例えば、導電回路)とを備えるリジッド回路層と、このリジッド回路層を少なくとも一方の面に配設している前記フレキシブル回路板とを備えるリジッド回路板で構成され;
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介して、リジッド−フレックス回路基板を構成する他の回路基板材料に対して、積層されていてもよい。
例えば、前記フレキシブル絶縁基板、カバーレイおよびリジッド絶縁基板は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層により、互いに接着されていてもよい。
【0117】
前記リジッド絶縁基板は、熱可塑性液晶ポリマーフィルムで形成されていてもよいし、または前述した他の有機及び/または無機基板材料で形成されていてもよい。
【0118】
また、このようなリジッド−フレックス回路基板は、
フレキシブル部を形成するための絶縁基板材料として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用い、
フレキシブル部およびリジッド部を構成する絶縁基板、回路層、およびカバーレイからなる群から選択される少なくとも一種の他の回路基板材料を接着させるために、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を用い、
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルムと、前記他の回路基板材料とを、熱圧着により一体成形することにより、製造することができる。
【0119】
より具体的には、
図3から
図5を利用して、リジッド−フレックス回路基板を説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るリジッド−フレックス回路基板を示す概略断面図であり、
図4は、フレキシブル部の要部概略断面図であり、
図5は、リジッド部を説明するための要部概略断面図である。
【0120】
図3に示すように、リジッド−フレックス回路基板30は、フレキシブル部31とリジッド部32,32とを備えている。リジッド部32,32では、フレキシブル部31から延出しているフレキシブル回路板7の両面に、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層5を介してリジット回路層4A,4Bをそれぞれ積層している。
【0121】
図4に示すように、前記フレキシブル部31は、フレキシブル絶縁基板2と、その一方の面に形成された導電部分(導電回路)11Aを有するフレキシブル回路層と、この導電部分11Aを被覆するためのカバーレイ3とを備えるフレキシブル回路板7で形成されている。ここで、フレキシブル基板2およびカバーレイ3は、光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性液晶ポリマーで構成されており、フレキシブル基板2と、カバーレイ3とは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層5を介して接着されている。
【0122】
一方、
図5に示すように、リジッド部32では、前記フレキシブル部31から延出したフレキシブル回路板7の両面に、リジッド回路層4A,4Bが、それぞれポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層5,5を介して接着・配設されている。ここで、リジッド回路層4A,4Bでは、リジッド絶縁基板8B,8Cに対して導電部分(導電回路)11B,11Cがそれぞれ形成されている。また、導電部分11Bから11Cを貫通するスルーホール20が設けられ、そのスルーホール20にはスルーホールメッキ21が形成されている。
【0123】
図6は、本発明の別の実施形態に係るリジッド−フレックス回路基板を示す概略断面図である。リジッド−フレックス回路基板130は、フレキシブル部131とリジッド部132,132とを備えている。前記フレキシブル部131は、一方の面に導電部分111Aを有するフレキシブル絶縁基板102と、この導電部分111Aを被覆するためのカバーレイ103とを備えるフレキシブル回路板107で形成されている。なお、カバーレイ103は、フレキシブル部131においてはカバーレイとして作用するが、リジッド部132,132においては、リジッド部として作動する導電部分111Dを有している。そのため、このような場合、カバーレイ103は、リジッド部においては、カバーレイとして働かず、実質的には導電部分を有する回路層の一部として働くものであるが、フレキシブル部での構造に基づいてカバーレイと称している。また、このような呼び方は、他の実施形態においても共通して用いられる。
フレキシブル絶縁基板102およびカバーレイ103は、それぞれ熱可塑性液晶ポリマーで構成されており、フレキシブル絶縁基板102と、カバーレイ103とは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層105を介して接着されている。
【0124】
リジッド部132では、前記フレキシブル部131から延出したフレキシブル回路板107の両面に、リジッド回路層104A,104Bが、それぞれポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層105,105を介して接着・配設されている。フレキシブル回路板107のリジッド回路層104Aの側には、導電部分111Dが設けられている。ここで、リジッド回路層104A,104Bは、それぞれ、リジッド絶縁基板108B,108Cと、そのリジッド絶縁基板に対して設けられた導電部分(導電回路)111B,111Cとを備えている。また、導電部分111Bから111Cを貫通するスルーホール120が設けられ、そのスルーホール120にはスルーホールメッキ121が形成されている。
【0125】
図7は、本発明のさらに別の実施形態に係るリジッド−フレックス回路基板を示す概略断面図である。リジッド−フレックス回路基板230は、フレキシブル部231とリジッド部232,232とを備えている。
図7に示すように、前記フレキシブル部231は、両方の面に導電部分211A,211Eを有するフレキシブル絶縁基板202と、この導電部分211Aを被覆するためのカバーレイ203とを備えるフレキシブル回路板207で形成されている。なお、カバーレイ203は、フレキシブル部においてはカバーレイとして作用するが、リジッド部においては、導電部分211Dを有している。そのため、カバーレイ203は、リジッド部においては、実質的には導電部分を有する回路層の一部として働いている。
【0126】
フレキシブル絶縁基板202およびカバーレイ203は、熱可塑性液晶ポリマーで構成されており、フレキシブル絶縁基板202とカバーレイ203とは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層205を介して接着されている。
【0127】
リジッド部232では、前記フレキシブル部231から延出したフレキシブル回路板207の両面に、リジッド回路層204A,204Bが、それぞれポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層205,205を介して接着・配設されている。フレキシブル回路板207の両面には、導電部分211D,211Eが設けられている。ここで、リジッド回路層204A,204Bは、それぞれリジッド絶縁基板208B,208Cと、そのリジッド絶縁基板に対して設けられた導電部分(導電回路)211B,211Cとを備えている。また、導電部分211Bから211Cを貫通するスルーホール220が設けられ、そのスルーホール220にはスルーホールメッキ221が形成されている。
【0128】
図8は、本発明の他の実施形態に係るリジッド−フレックス回路基板を示す概略断面図である。リジッド−フレックス回路基板330は、フレキシブル部331とリジッド部332,332とを備えている。
図8に示すように、前記フレキシブル部331は、両方の面に導電部分311A,311Eを有するフレキシブル絶縁基板302と、これらの導電部分311A,311Eをそれぞれ被覆するためのカバーレイ303,306とを備えるフレキシブル回路板307で形成されている。
【0129】
フレキシブル絶縁基板302およびカバーレイ303,306は、熱可塑性液晶ポリマーで構成されており、フレキシブル絶縁基板302と、カバーレイ303,306とは、それぞれポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層305を介して接着されている。
【0130】
リジッド部332では、前記フレキシブル部331から延出したフレキシブル回路板307の両面に、リジッド回路層304A,304Bが、それぞれポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層305,305を介して接着・配設されている。ここで、リジッド回路層304A,304Bは、それぞれリジッド絶縁基板308B,308Cと、そのリジッド絶縁基板に対して設けられた導電部分(導電回路)311B,311Cとを備えている。また、導電部分311Bから311Cを貫通するスルーホール320が設けられ、そのスルーホール320にはスルーホールメッキ321が形成されている。
【0131】
また、カバーレイとして用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムと、フレキシブル絶縁基板として用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムの融点は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
フレキシブル絶縁基板またはカバーレイとして用いられる熱可塑性液晶ポリマーフィルムの厚さは、1〜100μmの範囲内が好ましく、5〜50μmの範囲内がより好ましい。
【0132】
(リジッド基板)
リジッド基板は、高周波用基板材料として利用できる限り、有機系材料で構成されてもよいし、無機系材料で構成されてもよい。有機系材料としては、熱可塑性液晶ポリマーシートを用いることもできるが、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、熱可塑性液晶ポリマーなどを用いてもよい。なお、これらの有機系材料は単独で用いてもよいし、ガラス布帛(例えばガラスクロス、ガラス布)などを補強材として併用してもよい。また無機系材料としては、セラミックなどが挙げられる。
【0133】
リジッド基板の厚みは、リジッド−フレキシブル基板の目的に応じて適宜設定することができ、例えば0.5〜2.5mm程度であってもよく、好ましくは0.6〜2.3mm程度であってもよく、より好ましくは0.7〜2.1mm程度であってもよい。また、リジッド層まで薄くする必要がある場合には、多層フレックスとして、リジッド部もフレキシブル基板と同様に熱可塑性液晶ポリマーフィルムで形成してもよい。この場合、リジッド層として、熱可塑性液晶ポリマーフィルムは、単層で所定の厚みを有するものであってもよいし、薄い熱可塑性液晶ポリマーフィルム(例えば、200μm〜1mm程度)を2層以上(例えば、2〜10層程度、好ましくは2〜5層程度)重ねて一体化しシート状にしたものであってもよい。
【0134】
なお、本発明は、変形実施態様として、下記に記載されるような応用例を含んでいてもよい。
(応用例1)
フレキシブル部とリジッド部とを備えるリジッド−フレックス回路基板において、
前記フレキシブル部は、絶縁材料として光学的異方性の溶融相を形成し得る熱可塑性液晶ポリマー(以下、熱可塑性液晶ポリマーと称する)からなるフィルムを用いたフレキシブル回路板で構成され、
前記リジッド部は、リジッド絶縁基板とその少なくとも一方の面に導電部分を有するリジッド回路層と、このリジッド回路層を少なくとも一方の面に配設している前記フレキシブル回路板とを備えるリジッド回路板とで構成され、
前記熱可塑性液晶ポリマーフィルム同士、およびフレキシブル回路板とリジッド回路層とは、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層により、互いに接着されているリジッド−フレックス回路基板。
(応用例2)
応用例1のリジッド−フレックス回路基板において、
フレキシブル部は、少なくとも一方の面に導電部分を有するフレキシブル絶縁基板と、このフレキシブル基板に形成されている導電部分を被覆するためのカバーレイと、を備えるフレキシブル回路板で形成され;
前記フレキシブル絶縁基板およびカバーレイは、熱可塑性液晶ポリマーフィルムで構成され;
リジッド部は、リジッド絶縁基板とその少なくとも一方の面に導電部分を有するリジッド回路層と、このリジッド回路層を少なくとも一方の面に配設している前記フレキシブル回路板とを備えるリジッド回路板で構成され;
前記フレキシブル基板、カバーレイおよびリジッド回路層は、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層により、互いに接着されているリジッド−フレックス回路基板。
(応用例3)
応用例1または2のリジッド−フレックス回路基板において、熱可塑性液晶ポリマーの融点が295℃以上であるとともに、接着層のガラス転移温度が200℃以上であるリジッド−フレックス回路基板。
(応用例4)
応用例1から3のいずれか一項のリジッド−フレックス回路基板において、はんだ耐熱温度が295℃以上であるリジッド−フレックス回路基板。
(応用例5)
応用例1から4のいずれか一項のリジッド−フレックス回路基板において、接着剤層が、ポリフェニレンエーテル系樹脂を10質量%以上含むリジッド−フレックス回路基板。
(応用例6)
応用例1から5のいずれか一項のリジッド−フレックス回路基板において、リジッド絶縁基板が熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなるリジッド−フレックス回路基板。
(応用例7)
応用例6のリジッド−フレックス回路基板において、リジッド絶縁基板が、2層以上の熱可塑性液晶ポリマーフィルムからなるリジッド−フレックス回路基板。
(応用例8)
応用例1から7のいずれか一項のリジッド−フレックス回路基板において、リジッド絶縁基板が、ガラスフッ素基板またはガラスエポキシ基板からなるリジッド−フレックス回路基板。
(応用例9)
フレキシブル部とリジッド部とを備えるリジッド−フレックス回路基板の製造方法であって、
フレキシブル部を形成するための絶縁基板材料として熱可塑性液晶ポリマーフィルムを用い、
フレキシブル部およびリジッド部を構成する各回路基板材料を接着させるために、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を用い、
熱圧着により一体成形するリジッド−フレックス回路基板の製造方法。
【実施例】
【0135】
以下に実施例及び比較例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
[フィルムの融点 ℃]
示差走査熱量計を用いて、10℃/分の速度で昇温したときに現れる主吸熱ピークを融点とした。
【0137】
[分子配向度(SOR)]
マイクロ波分子配向度測定機において、液晶ポリマーフィルムを、マイクロ波の進行方向にフィルム面が垂直になるように、マイクロ波共振導波管中に挿入し、該フィルムを透過したマイクロ波の電場強度(マイクロ波透過強度)が測定される。
【0138】
そして、この測定値に基づいて、次式により、m値(屈折率と称する)が算出される。
m=(Zo/△z) X [1−νmax/νo]
【0139】
ただし、Zoは装置定数、△zは物体の平均厚、νmaxはマイクロ波の振動数を変化させたとき、最大のマイクロ波透過強度を与える振動数、νoは平均厚ゼロのとき(すなわち物体がないとき)の最大マイクロ波透過強度を与える振動数である。
【0140】
次に、マイクロ波の振動方向に対する物体の回転角が0°のとき、つまり、マイクロ波の振動方向と、物体の分子が最もよく配向されている方向であって、最小マイクロ波透過強度を与える方向とが合致しているときのm値をm
0、回転角が90°のときのm値をm
90として、分子配向度SORがm
0/m
90により算出される。
【0141】
[はんだ耐熱温度 ℃]
JIS C5016試験法に準拠して、カバーレイを有する回路基板をはんだ浴上に1分間静置し、変色、変形、発泡などの外観変化が発生しない温度を測定した。
【0142】
[接着層のガラス転移温度(℃)]
動的粘弾性測定(DMA)にて測定した。熱圧着後の回路基板から、10mm×40mmの試験片を切り出し、試験片中の接着層部分について、DMS6100にて3℃/分の速度で25℃から220℃まで昇温したときに現れるtanDのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0143】
[回路基板の弾性率]
2枚の熱可塑性液晶ポリマーフィルム(または、熱可塑性液晶ポリマーフィルムと導電部分とを備える回路層)が、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層で熱圧着された積層部分(例えば、回路基板のフレキシブル部)を10mm×100mmに切り出し、ASTM D 882に準拠して、引張弾性率を測定した。
【0144】
[導電配線の粗度 μm]
導電配線の粗度は、触針式の表面粗さ計を用いて測定した。ミツトヨ製サーフテストSJ201を用い、JIS B0601−2001に準拠してRzを測定した。
【0145】
[層間接着力 kN/m]
JIS C5016試験法に準拠して、90°の角度で、ポリフェニレンエーテル系樹脂を含む接着層を介した回路基板材料間(フレキシブル回路層間、またはフレキシブル回路層とカバーレイ間)を剥離させるときの強度を層間接着力とした。
【0146】
[5GHzでの挿入損失 dB/10cm]
ストリップライン構造でインピーダンスが50Ωとなるように、信号線の幅が95μm、信号線の長手方向の長さ100mmの回路を作製した。
マイクロ波ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「8722ES」)を用い、カスケードマイクロテック製プローブ(ACP40−250)にて5GHzでの挿入損失を測定した。
【0147】
[10GHzでの挿入損失 dB/10cm]
ストリップライン構造でインピーダンスが50Ωとなるように、信号線の幅が140μm、信号線の長手方向の長さ100mmの回路を作製した。
マイクロ波ネットワークアナライザ(Agilent Technology社製「8722ES」)を用い、カスケードマイクロテック製プローブ(ACP40−250)にて10GHzでの挿入損失を測定した。
【0148】
[寸法安定性]
IPC−TM−6502.2.4に準じて測定した。加熱条件は150℃×30分であり、加熱前後のサンプルの寸法変化率(%)を測定した。
【0149】
[参考例A1]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが50μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを基材フィルムとし、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃2時間熱処理することで融点を300℃に増加させ、基材フィルム上下に所定の表面粗度の厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度290℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて銅張積層板を得た(銅張積層板Aとする)。
【0150】
[参考例A2]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが50μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを基材フィルムとし、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃4時間熱処理することで融点を330℃に増加させ、基材フィルム上下に所定の表面粗度の厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度290℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて銅張積層板を得た(銅張積層板Bとする)。
【0151】
[参考例A3]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが50μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを基材フィルムとし、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃7時間熱処理することで融点を370℃に増加させ、基材フィルム上下に所定の表面粗度の厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度300℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて銅張積層板を得た(銅張積層板Cとする)。
【0152】
[参考例A4]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが50μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを基材フィルムとし、基材フィルム上下に所定の表面粗度の厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度260℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて銅張積層板を得た(銅張り積層板Dとする)。
【0153】
[実施例A1]
参考例A1で得られた銅張積層板Aの銅箔粗度を1.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂(三菱ガス化学(株)「OPE2st」)50質量部、スチレン系ポリマー((株)クラレ「SEPTON8007L」)50質量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)「JER152」)1質量部、および硬化促進剤をトルエンに溶解した後、シート状に乾燥固化させた接着性シート(厚み25μm)を真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させ、回路層/接着層/回路層で構成された積層体(回路基板)を得た。得られた積層体の各種物性を評価し、表7に示した。
【0154】
[実施例A2]
参考例A2で得られた銅張積層板Bの銅箔粗度を1.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を30質量部、スチレン系ポリマーを70質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例A1と同様に得た接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し、両者を接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0155】
[実施例A3]
参考例A2で得られた銅張積層板Bの銅箔粗度を0.5μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、実施例A1で得られた接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0156】
[実施例A4]
参考例A2で得られた銅張積層板Bの銅箔粗度を2.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を60質量部、スチレン系ポリマーを40質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例A1と同様に得た接着性シート(接着層(2))を真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0157】
[実施例A5]
参考例A3で得られた銅張積層板Cの銅箔粗度を0.8μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、実施例A1で得られた接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0158】
[実施例A6]
参考例A3で得られた銅張積層板Cの銅箔粗度を0.5μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、実施例A4で得られた接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0159】
[実施例A7]
参考例A4で得られた銅張積層板Dの銅箔粗度を1.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、実施例A1で得られた接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0160】
[実施例A8]
参考例A2で得られた銅張積層板Bの銅箔粗度を3.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、実施例A1で得られた接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0161】
[実施例A9]
参考例A2で得られた銅張積層板Bの銅箔粗度を2.0μmとし、ストリップライン構造となるように配線加工した回路層と、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を10質量部、スチレン系ポリマーを90質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例A1と同様に得た接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間熱圧着し接着させた。得られた積層体の各種物性を評価した。
【0162】
【表7】
【0163】
実施例A1〜A9は、いずれも、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを基板回路材料として用いているにもかかわらず、180℃における低温で積層一体可能であった。
これらの実施例のうち、熱可塑性ポリマーフィルムの融点が300℃以上であると、高い層間接着力を実現できる傾向にあり、導電配線の粗度が低いと挿入損失の値を低くできる傾向にある。また、接着層におけるポリフェニレンエーテル系ポリマーの比率が高いと層間接着力が向上する傾向にある。
【0164】
[参考例B1]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、膜厚25μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃2時間熱処理することで融点を300℃に増加させた(フィルムAとする)。
【0165】
[参考例B2]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが25μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃4時間熱処理することで融点を330℃に増加させた(フィルムBとする)。
【0166】
[参考例B3]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが25μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムをベースフィルムCとした。
【0167】
[参考例B4]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)で、融点が280℃、厚さが50μmである熱可塑性液晶ポリマーフィルムを、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃4時間熱処理することで融点を330℃に増加させたフィルムの上下に表面粗度が1.0μmで、厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度300℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて銅張積層板を得た。この銅張積層板を配線加工し回路層とした。
【0168】
[実施例B1]
参考例B1で得られたフィルムAと、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂(三菱ガス化学(株)「OPE2st」)50質量部、スチレン系ポリマー((株)クラレ「SEPTON8007L」)50質量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)「JER152」)1質量部、および硬化促進剤をトルエンに溶解した後、シート状に乾燥固化させた接着性シート(厚み25μm)を真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しカバーレイと接着性シートとの積層体とした。次いで、この積層体中の接着層が参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着した。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0169】
[実施例B2]
参考例B2で得られたフィルムBと、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を30質量部、スチレン系ポリマーを70質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例B1と同様に得た接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しカバーレイと接着性シートとの積層体とした。次いで、この積層体中の接着性シートが参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着し、カバーレイと回路層とが接着層により一体化した回路基板を得た。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0170】
[実施例B3]
参考例B2で得られたフィルムBと、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部、スチレン系ポリマーを80質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例B1と同様に得た接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しカバーレイと接着性シートとの積層体とした。次いで、この積層体中の接着性シートが参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着し、カバーレイと回路層とが接着層により一体化した回路基板を得た。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0171】
[実施例B4]
参考例B2で得られたフィルムBと、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を60質量部、スチレン系ポリマーを40質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例B1と同様に得た接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しカバーレイと接着性シートとの積層体とした。次いで、この積層体中の接着性シートが参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着し、カバーレイと回路層とが接着層により一体化した回路基板を得た。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0172】
[実施例B5]
参考例B3で得られたフィルムCと、実施例B1で得られた接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しカバーレイと接着性シートとの積層体とした。次いで、この積層体中の接着性シートが参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着し、カバーレイと回路層とが接着層により一体化した回路基板を得た。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0173】
[実施例B6]
参考例B2で得られたフィルムBと、接着性シートにおける各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を10質量部、スチレン系ポリマーを90質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例B1と同様に得た接着性シートを真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しカバーレイと接着性シートとの積層体とした。次いで、この積層体中の接着性シートが参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着し、カバーレイと回路層とが接着層により一体化した回路基板を得た。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0174】
[比較例B1]
カバーレイとして、12.5μm厚のポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製、「カプトン」)を用い、接着性材料として12.5μm厚のエポキシ系接着材(ニッカン製CISV)を用いた。次いで、この接着性材料が参考例B4の回路層の配線加工面に接するように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着し、カバーレイと回路層とが接着層により一体化した回路基板を得た。得られた回路基板の各種物性を評価した。
【0175】
【表8】
【0176】
実施例B1〜B6は、いずれも、熱可塑性液晶ポリマーフィルムを基板回路材料として用いているにもかかわらず、180℃における低温で積層一体可能であった。
これらの実施例のうち、熱可塑性ポリマーフィルムの融点が300℃以上であると、高い層間接着力を実現できる傾向にあり、導電配線の粗度が低いと挿入損失の値を低くできる傾向にある。また、接着層におけるポリフェニレンエーテル系ポリマーの比率が高いと層間接着力が向上する傾向にある。
一方、ポリイミドに対してエポキシ樹脂を接着層として用いた比較例B1では、挿入損失の値が高いため、高周波帯での伝送損失を低減できていない。
【0177】
[参考例C1]
p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の共重合物(モル比:73/27)を溶融押出し、インフレーション成形法により、融点が280℃、膜厚25μm、SOR1.05、誘電率3.0の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得た。
【0178】
[参考例C2]
参考例C1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルム(A)を、窒素雰囲気下で260℃4時間、さらに280℃4時間熱処理することにより、融点が330℃、膜厚25μm、SOR1.05、誘電率3.0の熱可塑性液晶ポリマーフィルムを得た。
【0179】
[参考例C3]
参考例C1で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムの上に表面の最大粗度が1.0μmで厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度280℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて加熱圧着して片面銅張積層板を得た。この銅張積層板を配線加工し融点280℃のフレキシブル基板102および103を作製した。
【0180】
[参考例C4]
参考例C2で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムの上に表面粗度が1.0μmで、厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度300℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて片面銅張積層板6を得た。この銅張積層板を配線加工し融点330℃のフレキシブル基板102および103を作製した。
【0181】
[参考例C5]
参考例C2で得られた熱可塑性液晶ポリマーフィルムの上に表面粗度が1.0μmで、厚さ12μmの圧延銅箔をセットし、一対のロールでの連続プレス機にてロール温度300℃、線圧100kg/cm、ライン速度2m/分の条件にて片面銅張積層板を得た。この銅張積層板を配線加工しリジッド基板104を作製した。
【0182】
[実施例C1]
熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂(三菱ガス化学(株)「OPE2st」)50質量部、スチレン系ポリマー((株)クラレ「SEPTON8007L」)50質量部、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)「JER152」)1質量部、および硬化促進剤をトルエンに溶解した後、シート状に乾燥固化させた接着性シート105(厚み25μm)を作製した。
次いで、参考例C4で得られたフレキシブル基板102および103と、参考例C5で得られたリジッド基板104と、接着性シート105を
図9(b)に示すように配置し、真空下、加圧力2MPaで180℃5分間加熱圧着しリジッド−フレックス回路基板130を得た。
両面の導電をとるために、リジッド部においてレーザーでスルーホール120を開け、このスルーホール120に銅めっきしてスルーホールメッキ121,121を形成した。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。
【0183】
[実施例C2]
接着性シート105における各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を30質量部、スチレン系ポリマーを70質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例C1と同様にリジッド−フレックス回路基板130を得た。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。なお、接着層のガラス転移温度は200℃である。
【0184】
[実施例C3]
接着性シート105における各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を20質量部、スチレン系ポリマーを80質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例C1と同様にリジッド−フレックス回路基板130を得た。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。なお、接着層のガラス転移温度は185℃である。
【0185】
[実施例C4]
接着性シート105における各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を60質量部、スチレン系ポリマーを40質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例C1と同様にリジッド−フレックス回路基板130を得た。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。なお、接着層のガラス転移温度は238℃である。
【0186】
[実施例C5]
接着性シート105における各樹脂成分の割合を、熱硬化性ポリフェニレンエーテル系樹脂を10質量部、スチレン系ポリマーを90質量部、エポキシ樹脂を1質量部と変更する以外は、実施例C1と同様にリジッド−フレックス回路基板130を得た。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。なお、接着層のガラス転移温度は170℃である。
【0187】
[参考比較例C1]
参考例C4で得られたフレキシブル基板102および103と、参考例C5で得られたリジッド基板104と、接着層105としての参考例C1の液晶ポリマーフィルム(A)を
図9(b)に示すように配置し、真空下、加圧力4MPaで300℃60分間加熱圧着しリジッド−フレックス回路基板130を得た。
両面の導電をとるために、リジッド部においてレーザーでスルーホール120を開け、このスルーホール120に銅めっきしてスルーホールメッキ121,121を形成した。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。
【0188】
[参考比較例C2]
参考例C3で得られたフレキシブル基板102および103と、参考例C5で得られたリジッド基板104と、接着層105としての参考例C1の液晶ポリマーフィルム(A)を
図9(b)に示すように配置し、真空下、加圧力4MPaで300℃60分間加熱圧着しリジッド−フレックス回路基板130を得た。
両面の導電をとるために、リジッド部においてレーザーでスルーホール120を開け、このスルーホール120に銅めっきしてスルーホールメッキ121,121を形成した。得られたリジッド−フレックス回路基板130の各種物性を評価した。
【0189】
【表9】
【0190】
表9に示すように、実施例C1から5は、いずれも低温、低圧、短時間での成形であっても誘電特性に優れるリジッド−フレックス回路基板を得ることができる。特に、ポリフェニレンエーテル系樹脂の割合が20質量%〜60質量%である場合、接着力、誘電特性、寸法安定性のすべてにおいて非常に優れるものである。
一方、先行技術の範囲ではないが実施例Cの効果を比較する上で用いられた参考比較例C1および2では、誘電特性に優れるリジッド−フレックス回路基板は得られたものの、積層条件がよりシビアであり、長時間にわたる高温高圧での加熱圧着を必要としている。