(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)有機溶剤が、フッ素原子を含んでいてもよいアルコール、炭化水素、水酸基を含まないエーテル類、及びエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよいフッ素化脂肪族炭化水素からなる群より選択される1種以上である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のパターン微細化用被覆剤。
前記ポジ型レジストパターンを前記パターン微細化用被覆剤からなる被膜で被覆した後に、前記被膜で被覆された前記ポジ型レジストパターンを加熱する工程を含む、請求項10に記載のポジ型レジストパターンのスリミング処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪パターン微細化用被覆剤≫
本発明に係るパターン微細化用被覆剤(以下、被覆剤とも記す。)は、所定の構造の(A)含窒素化合物と、(B)有機溶剤とを含む。本発明に係る被覆剤を用いて所定方法でポジ型レジストパターンを処理することにより、パターン中のレジストを微細化しつつパターン表面のラフネスを低減させることができる。パターンのスリミング量等を考慮すると、(A)含窒素化合物以外の(C)塩基性含窒素化合物、並びに(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーから選択される成分を含むのが好ましい。
以下、本発明に係るパターン微細化用被覆剤が含む、必須、又は任意の成分について説明する。
【0015】
<(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物>
被覆剤は、特定の構造の(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物を含有する。(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物は、窒素原子に結合する炭素原子数8以上のアルキル基を有し、当該アルキル基が結合している窒素原子1モルに対して、4モル以上、好ましくは5モル以上、より好ましくは7モル以上のエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが付加した化合物である。
【0016】
(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物に含まれる窒素原子の数は、(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物が所定の構造である限り特に限定されないが、通常、1であるのが好ましい。
【0017】
上記の構造を有する(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物は、オキシエチレン単位及びオキシプロピレン単位と、長鎖アルキル基とを有することにより界面活性剤的な性質を有する。このため、本発明に係る被覆剤を用いる場合、(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物がポジ型レジストパターン中のレジスト部の表面に良好に吸着されやすい。レジスト部の表面に吸着された(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物は、その界面活性剤的な作用によってレジスト部の表層の可溶化を促進させると思われる。
【0018】
レジスト部の側面の表面には、通常、微小な凹凸が存在するとともに、現像処理時の溶解残に由来するアルカリ可溶性基が少量露出する。このため、(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物は、その塩基的な性質に基づいて、レジスト部の側面の表面に良好に吸着された際、脱保護が不十分で現像処理で溶解し切れなかった、レジスト部の側面の表面を一部溶解させると思われる。これに対して、露光されていないレジスト部の頂部にはアルカリ可溶性基が殆ど露出していないため、レジスト部の頂部には(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物が吸着はされるが殆ど作用せずレジストを溶解しない。このため、本発明に係る被覆剤を用いてパターンを微細化すると、パターン部の高さを低下させたり、パターン部の断面形状を頂部が丸まった形状にすることなく、レジストパターンの表面が平滑化され、ポジ型レジストパターンのラフネスが低減されると考えられる。
【0019】
(B)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物としては、下式(1)又は下式(2)で表される化合物が好ましい。
【化1】
(式(1)中、R
1は炭素原子数8以上のアルキル基であり、R
2は−(A−O)
q−R
5で表される基であり、R
3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(A−O)
r−R
5で表される基である。式(2)中、R
1及びR
2は式(1)と同様であり、R
3はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(A−O)
r−R
5で表される基であり、R
4はアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又は−(A−O)
s−R
5で表される基であり、X
−は1価のアニオンである。Aはエチレン基又はプロピレン基であり、R
5は水素原子又はアルキル基であり、qは正の数であり、r、及びsはそれぞれ0又は正の数であり、
式(1)中、q+rは4以上であり、式(2)中、q+r+sは4以上である。)
【0020】
式(1)及び式(2)で表される化合物において、R
1としては炭素原子数8以上のアルキル基が好ましく、炭素原子数12以上のアルキル基がより好ましい。R
1としてのアルキル基の炭素原子数は20以下が好ましい。R
1としてのアルキル基の構造は特に限定されず、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0021】
R
1としてのアルキル基の好適な具体例としては、n−オクチル基、オクタン−2−イル基、オクタン−3−イル基、2−エチルヘキシル基、5−メチル−ヘプチル基、n−ノニル基、ノナン−2−イル基、ノナン−3−イル基、n−デシル基、イソデシル基、デカン−2−イル基、デカン−3−イル基、7,7−ジメチルオクチル基、n−ウンデシル基、ウンデカン−2−イル基、ウンデカン−3−イル基、n−ドデシル基、ドデカン−2−イル基、ドデカン−3−イル基、ドデカン−4−イル基、n−トリデシル基、トリデカン−2−イル基、n−テトラデシル基、テトラデカン−2−イル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、ヘキサデカン−2−イル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、オクタデカン−2−イル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、及びイコサン−2−イル基が挙げられる。
【0022】
式(1)及び式(2)で表される化合物が有する基である、−(A−O)
q−R
5、−(A−O)
r−R
5、及び−(A−O)
s−R
5について、q、r、及びsは、それぞれ、窒素原子に対するエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドの平均付加数であって、整数でない場合がある。
【0023】
式(1)及び式(2)で表される化合物が有する基である、−(A−O)
q−R
5、−(A−O)
r−R
5、及び−(A−O)
s−R
5について、R
5は水素原子又はアルキル基であって、水素原子であるのが好ましい。R
5がアルキル基である場合の炭素原子数は、1〜6が好ましく、1〜4がより好ましい。R
5がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、及びn−ヘキシル基が挙げられる。
【0024】
式(1)で表される化合物については、R
2が−(A−O)
q−Hで表される基であり、R
3が−(A−O)
r−Hで表される基であるのが好ましい。式(2)で表される化合物については、R
2が−(A−O)
q−Hで表される基であり、R
3が−(A−O)
r−Hで表される基であり、R
4が−(A−O)
s−Hで表される基であるのが好ましい。
【0025】
式(1)
におけるq+rの値及び式(2)にお
ける、q+r+sの値は
それぞれ4以上であり、4以上25以下が好ましく、4以上20以下がより好ましく、7以上20以下が特に好ましい。(B)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物として、
式(1)中のq+r、及び式(2)中のq+r+sの値が上記の範囲内となるように、エチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシドが窒素原子に付加している化合物を被覆剤に配合することで、ポジ型レジストパターンを良好にスリミングでき、且つラフネスを低減させることができる。
【0026】
式(1)及び式(2)において、R
3又はR
4がアルキル基又はヒドロキシアルキル基である場合、アルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。R
3又はR
4がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル、及びn−オクチル基が挙げられる。R
3又はR
4がヒドロキシアルキル基である場合の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、5−ヒドロキシ−n−ペンチル基、6−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、7−ヒドロキシ−n−ヘプチル基、8−ヒドロキシ−n−オクチル基が挙げられる。
【0027】
式(2)において、X
−は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。X
−としては、水酸化物イオンや、塩化物イオン、臭化物イオン、沃化物イオンのようなハロゲン化物イオンが好ましく、水酸化物イオンがより好ましい。
【0028】
式(1)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。下式中、m及びnは正の数であり、m+nは4以上である。
【化2】
【0029】
式(2)で表される化合物の好ましい例としては、以下のものが挙げられる。下式中、m、n、及びlは正の数であり、m+n+lは4以上である。
【化3】
【0030】
以上説明した(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物は、複数種を組み合わせて用いてもよい。被覆剤中の(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。被覆剤中の(A)含窒素化合物のアルキレンオキシド付加物の含有量は、被覆剤の全液量に対して、0.001質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.8質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下が特に好ましい。
【0031】
<(B)有機溶剤>
被覆剤は、(A)含窒素化合物や、後述する(C)塩基性含窒素化合物、(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマー等の成分を溶解させる溶媒として、(B)有機溶剤を含む。被覆剤が溶媒として(B)有機溶剤を含む場合、ポジ型レジストパターンを被覆剤で被覆する際に、ポジ型レジスト組成物を塗布するためのカップを用いてポジ型レジストパターンの被覆を行っても、カップ中での混濁が生じない。このため、被覆剤による被覆を行う際にカップの交換が不要であり、スリミングされたポジ型レジストパターンを効率よく形成できる。また、(B)有機溶剤を主体とする被覆剤は、ポジ型レジストパターンに対する濡れ性が良好である。
【0032】
(B)有機溶剤は、ポジ型レジストパターンを溶解させない種々の有機溶剤から適宜選択される。(B)有機溶剤としては、ポジ型レジストパターンを実質的に全く溶解させないものが好ましい。ただし、(B)有機溶剤は、ポジ型レジストパターンを全く溶解させないものに限定されない。例えば、ポジ型レジストパターンと有機溶剤とを室温で接触させる場合に、ポジ型レジストパターンを、その幅が1nm以下、好ましくは0.5nm以下低下する程度にしか溶解させない有機溶剤の使用が許容される。
【0033】
好適な有機溶剤の例としては、フッ素原子を含んでいてもよいアルコール、炭化水素、水酸基を含まないエーテル類、及びエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよいフッ素化脂肪族炭化水素からなる群より選択される1種以上が好ましい。以下、好適な有機溶剤について説明する。
【0034】
(フッ素原子を含んでいてもよいアルコール)
アルコールは1価のアルコールであっても、2価以上の多価アルコールであってもよい。アルコールは、フッ素原子を含まないアルカノールであってもよく、フッ素原子を含むフルオロアルカノールであってもよい。また、アルコールは、エーテル結合を含んでいてもよい。さらにアルコールは、鎖状構造であっても、環状構造であっても、鎖状構造と環状構造とを組み合わせた構造であってもよい。
【0035】
フッ素原子及びエーテル結合を含まない鎖状のアルコールの具体例としては、エタノール、n−プロパノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、sec−ペンタノール、tert−ペンタノール、イソペンタノール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、n−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、3−ヘプタノール、5−メチル−1−ヘキサノール、n−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、6−メチル−2−ヘプタノール、及び2−エチル−1−ヘキサノールが挙げられる。
【0036】
フッ素原子及びエーテル結合を含まない環状構造を含むアルコールの具体例としては、シクロペンタンメタノール、1−シクロペンチルエタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール(CM)、シクロヘキサンエタノール、1,2,3,6−テトラヒドロベンジルアルコール、exo−ノルボルネオール、2−メチルシクロヘキサノール、シクロヘプタノール、3,5−ジメチルシクロヘキサノール、及びベンジルアルコールが挙げられる。
【0037】
フッ素原子を含まず、エーテル結合を含む鎖状のアルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、及びジプロピレングリコールから選択される多価アルコールのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、又はモノブチルエーテルが挙げられる。これらの中では、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(1−プロポキシ−2−プロパノール)、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノールが好ましい。
【0038】
フッ素原子を含むアルコールとしては、炭素原子数4〜12であるものが好ましい。フッ素原子を含むアルコールの具体例としては、C
4F
9CH
2CH
2OH、及びC
3F
7CH
2OHが挙げられる。
【0039】
以上例示したアルコールの中では、1−ブトキシ−2−プロパノール(BP)、イソブタノール(2−メチル−1−プロパノール)、4−メチル−2−ペンタノール、n−ブタノール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、が好ましい。
【0040】
(炭化水素)
炭化水素は、パラフィン系の溶剤から適宜選択される。炭化水素の具体例としては、n−ヘプタンが挙げられる。
【0041】
(水酸基を含まないエーテル類)
水酸基を含まないエーテル類の好適な例としては、次式R
b1−O−R
b2で表される化合物が挙げられる。前述の式において、R
b1、R
b2はそれぞれ独立に1価の炭化水素基であり、R
b1とR
b2とが結合して環を形成していてもよい。
【0042】
R
b1及びR
b2の好適な例としては、アルキル基、アリール基、及びアラルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。R
b1及びR
b2がいずれもアルキル基であるのが好ましく、R
b1とR
2とが同じアルキル基であることがより好ましい。
【0043】
R
b1及びR
b2がアルキル基である場合、その構造及び炭素原子数に特に制限はない。アルキル基の炭素原子数は、1〜20が好ましく、1〜15がより好ましく、1〜10が特に好ましい。アルキル基の構造は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0044】
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、シクロペンチル基、及びヘキシル基等が挙げられ、n−ブチル基、及びイソペンチル基が特に好ましい。
【0045】
R
b1及びR
b2がアリール基又はアラルキル基である場合、その構造及び炭素原子数に特に制限はない。アリール基又はアラルキル基の炭素原子数は6〜12が好ましく、6〜10がより好ましい。アリール基又はアラルキル基に含まれる芳香環は、その芳香環上の水素原子の一部又は全部がアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0046】
アリール基又はアラルキル基の具体例としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基又はアラルキル基が芳香環上に置換基としてアルキル基を有する場合、当該アルキル基としては、炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、及びtert−ブチル基がより好ましい。
【0047】
アリール基又はアラルキル基が芳香環上に置換基としてアルコキシ基を有する場合、当該アルコキシ基としては、炭素原子数1〜5のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、及びエトキシ基がより好ましい。
【0048】
アリール基又はアラルキル基が芳香環上に置換基としてハロゲン原子を有する場合、当該ハロゲン原子はフッ素原子であるのが好ましい。
【0049】
R
b1及びR
b2互いに結合して環を形成する場合、R
b1及びR
b2は、それぞれ独立に直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基(好ましくは炭素原子数1〜10のアルキレン基)であり、R
b1の末端と、R
b2の末端とが結合して環を形成する。また、当該アルキレン基は、その鎖中にエーテル結合を含んでいてもよい。R
b1及びR
b2が環を形成しているエーテル類の具体例としては、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ピネンオキサイド、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が挙げられる。
【0050】
水酸基を含まないエーテル類の具体例としては、1,4−シネオール、1,8−シネオール、ピネンオキサイド、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル(ジイソアミルエーテル)、ジオキサン、アニソール、エチルベンジルエーテル、ジフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、フェネトール、ブチルフェニルエーテル、テトラヒドロフラン、エチルプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルジヘキシルエーテル、及びジプロピルエーテル等が挙げられる。これらの中では、1,8−シネオール、ジ−n−ブチルエーテル、及びジイソペンチルエーテルが好ましい。
【0051】
(エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよいフッ素化脂肪族炭化水素)
エーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよいフッ素化脂肪族炭化水素としては、炭素原子数が3〜15であるものが好ましく用いられる。
【0052】
エーテル結合を含むフッ素化脂肪族炭化水素としては、R
b3OR
b4(R
b3及びR
b4は、それぞれ独立にアルキル基を示し、両アルキル基の炭素原子数の合計が3〜15であり、少なくともその水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されている。R
b3及びR
b4は、互いに結合して環を形成してもよい。)で表されるフッ素化アルキルエーテルが好ましい。
【0053】
エステル結合を含むフッ素化脂肪族炭化水素としては、R
b5COOR
b6(R
b5及びR
b6は、それぞれ独立にアルキル基を示し、両アルキル基の炭素原子数の合計が3〜15であり、少なくともその水素原子の一部又は全部がフッ素原子により置換されている。)で表されるフッ素化アルキルエステルが好ましい。
【0054】
上記のフッ素化アルキルエーテルの好適な例としては、下記式(B−1)で表される化合物と、フルオロ−2−ブチルテトラヒドロフランと、が挙げられる。また、上記のフッ素化アルキルエステルの好適な例としては、下記式(B−2)及び(B−3)で表される化合物が挙げられる。
【0056】
以上説明した有機溶剤の中では、イソブタノール(2−メチル−1−プロパノール)、4−メチル−2−ペンタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール(BP))、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(1−プロポキシ−2−プロパノール)、及びジイソペンチルエーテル(ジイソアミルエーテル)が好ましい。
【0057】
被覆剤は、溶媒として(B)有機溶剤のみを含むのが好ましいが、本発明の目的を阻害しない範囲で水を含んでいてもよい。被覆剤中の水の含有量は、被覆剤の質量を100質量%とする場合に、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましく、3質量%以下であるのが特に好ましく、1質量%以下であるのが最も好ましい。
【0058】
<(C)塩基性含窒素化合物>
被覆剤は、(C)塩基性含窒素化合物を含んでいてもよい。(C)塩基性含窒素化合物は、(A)含窒素化合物に該当しない化合物である。被覆剤に、(C)塩基性含窒素化合物を配合することにより、被覆剤の奏するスリミングの効果を高めることができる。
【0059】
(C)塩基性含窒素化合物としては、水溶性アミン化合物や、塩基性の4級アンモニウム塩が好ましく、塩基性の4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0060】
水溶性アミン化合物の具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカノールアミン類;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、プロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、N−エチル−エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン等のポリアルキレンポリアミン類;2−エチル−ヘキシルアミン、ジオクチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリアリルアミン、ヘプチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラヒドロフルフリルアミン等の脂肪族アミン類;ベンジルアミン、ジフェニルアミン等の芳香族アミン類;ピペラジン、N−メチル−ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン等の環状アミン類等が挙げられる。
【0061】
塩基性の4級アンモニウム塩としては、下式(C1)で表される4級アンモニウム水酸化物が好ましい。
【化5】
(式(C1)中、R
c1、R
c2、R
c3、R
c4は、同一であっても異なっていてもよく、それぞれ独立に、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、及びアラルキル基からなる群より選択される基である。)
【0062】
式(C1)中、R
c1、R
c2、R
c3、及びR
c4が、アルキル基又はヒドロキシアルキル基である場合、アルキル基及びヒドロキシアルキル基の炭素原子数は特に限定されず、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル、及びn−オクチル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシ−n−プロピル基、4−ヒドロキシ−n−ブチル基、5−ヒドロキシ−n−ペンチル基、6−ヒドロキシ−n−ヘキシル基、7−ヒドロキシ−n−ヘプチル基、8−ヒドロキシ−n−オクチル基が挙げられる。
【0063】
式(C1)中、R
c1、R
c2、R
c3、及びR
c4が、アラルキル基である場合、アラルキル基の炭素原子数は特に限定されず、7〜12が好ましい。アラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、α−ナフチルエチル基、及びβ−ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0064】
式(C1)で表される4級アンモニウム水酸化物の具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリプロピルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、及びベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。
【0065】
被覆剤中の、(C)塩基性含窒素化合物の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(C)塩基性含窒素化合物は、被覆剤の質量を100質量%とする場合に、0.1〜5質量%が好ましく、0.1〜1質量%がより好ましい。
【0066】
<(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマー>
パターン微細化用被覆剤は、(A)含窒素化合物、及び(B)有機溶剤以外に、(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーを含んでいてもよい。被覆剤が、(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーを含むことにより、所望する膜厚であって、均一な膜厚の被膜でポジ型レジストパターンの表面を被覆しやすい。また、被覆剤に、(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーを配合することにより、被覆剤によるスリミング及びラフネス改善の効果が高められる。
以下、水溶性ポリマー及びアルカリ可溶性ポリマーについて説明する。
【0067】
〔水溶性ポリマー〕
水溶性ポリマーの種類は、ポジ型レジストパターン上に所望の膜厚の塗布膜を形成可能な濃度で、覆剤中に均一に溶解可能であって、被覆剤に溶解させた場合にゲル化しないものであれば特に限定されない。
【0068】
水溶性ポリマーの好適な例としては、一種以上のアクリル系単量体の重合体、一種以上のビニル系単量体の重合体、アクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体、セルロース系樹脂、アミド系樹脂、及び水溶性ペプチドの中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0069】
アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、及びアクリロイルモルホリン等が挙げられる。
【0070】
ビニル系単量体としては、例えば、N−ビニルピロリドン、ビニルイミダゾリジノン、N−ビニルイミダゾール、酢酸ビニル、及びアリルアミン等が挙げられる。
【0071】
ビニル系単量体の重合体、又はアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体が酢酸ビニル由来する構成単位を有する場合、かかる構成単位のエステル基を加水分解してビニルアルコール単位としてもよい。また、そのビニルアルコール単位の水酸基は、アセタール等で保護されてもよい。
【0072】
セルロース系樹脂としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロール、セルロールアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等が挙げられる。
【0073】
さらに、アミド系樹脂の中で水溶性のものも用いることができる。
【0074】
これら中でも、ビニル系樹脂が好ましく、特にはポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールが好ましい。
【0075】
一種以上のアクリル系単量体の重合体、一種以上のビニル系単量体の重合体、アクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体、セルロース系樹脂、及びアミド系樹脂の質量平均分子量は、500以上500000以下であることが好ましく、1000以上200000以下であることがより好ましい。
【0076】
水溶性ペプチドは、室温で水への溶解性が高く、低温でもゲル化しにくいペプチドであればよく、特に制限されない。水溶性ペプチドの質量平均分子量は10000以下であることが好ましく、5000以下がより好ましい。質量平均分子量が10000以下である場合、水への溶解性が高く、低温でもゲル化しにくいため、溶液の安定性が高くなる。なお、質量平均分子量の下限は500以上が好ましい。また、水溶性ペプチドは天然物由来であってもよく、合成物であってもよい。また、水溶性ペプチドの誘導体であってもよい。
【0077】
水溶性ペプチドとしては、例えば、コラーゲン由来の加水分解ペプチド、絹糸タンパク由来の加水分解ペプチド、大豆タンパク由来の加水分解ペプチド、小麦タンパク由来の加水分解ペプチド、コメタンパク由来の加水分解ペプチド、ゴマタンパク由来の加水分解ペプチド、エンドウタンパク由来の加水分解ペプチド、羊毛タンパク由来の加水分解ペプチド、カゼイン由来の加水分解ペプチド等が挙げられる。
【0078】
これらの水溶性ポリマーは、単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
(アルカリ可溶性ポリマー)
アルカリ可溶性ポリマーとしては、フェノール性水酸基や、カルボキシル基等の親水性のアルカリ可溶性の官能基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性ポリマーの具体例としては、例えば、ノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン(PHS)やヒドロキシスチレン−スチレン共重合体等の、ヒドロキシスチレンから誘導される構成単位を有する樹脂(PHS系樹脂)、アクリル酸エステルから誘導される構成単位を含有するアクリル系樹脂等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0080】
被覆剤における、(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーの使用量は特に限定されず、被覆剤の粘度等を考慮して適宜定められる。被覆剤における(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーの含有量は、被覆剤の全質量を100質量%とする場合に、0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がより好ましく、0.1〜2質量%が特に好ましい。
【0081】
<(E)任意の添加剤>
パターン微細化用被覆剤は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、水溶性フッ素化合物等の任意の添加剤を含んでいてもよい。以下これらの任意の添加剤について順に説明する。
【0082】
・界面活性剤
界面活性剤としては、被覆剤に懸濁を発生しない等の特性が必要である。また、被覆剤が(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーを含有する場合、界面活性剤には(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーに対する高い溶解性が望まれる。このような特性を満たす界面活性剤を用いることにより、特に被覆形成剤を塗布する際の気泡(マイクロフォーム)発生を抑えることができ、このマイクロフォーム発生と関係があるとされるディフェクトの発生をより効果的に防止することができる。上記の点から、ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤、ノニオン性界面活性剤のうちの1種以上が好ましく用いられる。
【0083】
上記ポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤としては、下式(E1)で表されるものが好ましい。
【化6】
【0084】
上記式(E1)中、R
e1は、炭素原子数1〜10のアルキル基又はアルキルアリル基を示し、R
e2は、水素原子又は(CH
2CH
2O)R
e1(R
e1は上記で定義した通り)を示し、xは1〜20の整数を示す。
【0085】
かかるポリオキシエチレンのリン酸エステル系界面活性剤としては、具体的には「プライサーフA212E」、「プライサーフA210G」(以上、いずれも第一工業製薬株式会社製)等として市販されているものを好適に用いることができる。
【0086】
上記ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物又はアルキルアミンオキシド化合物であることが好ましい。
【0087】
上記ポリオキシアルキレンのアルキルエーテル化物としては、下式(E2)又は(E3)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化7】
【0088】
上記式(E2)、(E3)において、R
e3及びR
e4は、炭素原子数1〜22の直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状のアルキル基、水酸基を有するアルキル基、又はアルキルフェニル基を示す。A
0は、オキシアルキレン基であり、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン基の中から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。yは整数である。
【0089】
アルキルアミンオキシド化合物としては、下式(E4)又は(E5)で表される化合物が好ましく用いられる。
【化8】
【0090】
上記式(E4)及び(E5)において、R
e5は、酸素原子で中断されていてもよい炭素原子数8〜20のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し、pは1〜5の整数を示す。
【0091】
上記式(E4)、又は式(E5)で表されるアルキルアミンオキシド化合物としては、オクチルジメチルアミンオキシド、ドデシルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、セチルジメチルアミンオキシド、ステアリルジメチルアミンオキシド、イソヘキシルジエチルアミンオキシド、ノニルジエチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、イソペンタデシルメチルエチルアミンオキシド、ステアリルメチルプロピルアミンオキシド、ラウリルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、セチルジエタノールアミンオキシド、ステアリルジ(ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ドデシルオキシエトキシエトキシエチルジ(メチル)アミンオキシド、ステアリルオキシエチルジ(メチル)アミンオキシド等が挙げられる。
【0092】
このような界面活性剤を添加する場合の添加量は、被覆剤の全質量を100質量%とする場合、1質量ppm〜10質量%が好ましく、100質量ppm〜2質量%がより好ましい。
【0093】
・水溶性フッ素化合物
水溶性フッ素化合物としては、被覆剤に懸濁を発生しない等の特性が必要である。また、被覆剤が(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーを含有する場合、水溶性フッ素化合物には(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーに対する高い溶解性が望まれる。このような特性を満たす水溶性フッ素化合物を用いることにより、さらにレベリング性(被覆剤の広がり度合い)を向上させることができる。このレベリング性は、界面活性剤の過剰量添加による接触角の引き下げにより達成することも可能であるが、界面活性剤添加量を過剰にした場合、ある一定以上の塗布向上性が認められないばかりか、過剰量とすることにより、塗布した際に被膜上に気泡(マイクロフォーム)が発生し、ディフェクトの原因となり得るという問題がある。この水溶性フッ素化合物を配合することにより、そのような発泡を抑制しつつ、接触角を下げ、レベリング性を向上させることができる。
【0094】
かかる水溶性フッ素化合物としては、フルオロアルキルアルコール類、フルオロアルキルカルボン酸類等が好ましく用いられる。フルオロアルキルアルコール類としては、2−フルオロ−1−エタノール、2,2−ジフルオロ−1−エタノール、トリフルオロエタノール、テトラフルオロプロパノール、オクタフルオロアミルアルコール等が挙げられる。フルオロアルキルカルボン酸類としては、トリフルオロ酢酸等が挙げられる。ただし、これら例示に限定されるものではなく、水溶性を有するフッ素化物であって、上述の効果を奏するものであれば限定されない。特には、炭素原子数6以下のフルオロアルキルアルコール類が好ましく用いられる。中でも入手しやすさ等の点から、トリフルオロエタノールが特に好ましい。
【0095】
このような水溶性フッ素化合物を添加する場合の添加量は、被覆剤の全質量を100質量%とする場合、1質量ppm〜10質量%が好ましく、100質量ppm〜2質量%がより好ましい。
【0096】
≪微細パターンの形成方法≫
基板上のポジ型レジストパターンを前述のパターン微細化用被覆剤からなる被膜で被覆し、次いで、加熱されたポジ型レジストパターンから被膜を溶解除去することで、被膜で被覆される前のポジ型レジストパターンよりもスリミングされたポジ型レジストパターンを得ることができる。以下、前述の被覆剤を用いて微細パターンを形成する方法について、詳細に説明する。
【0097】
ポジ型レジストパターンを有する基板の作製は、特に限定されるものでなく、半導体デバイス、液晶表示素子、磁気ヘッドあるいはマイクロレンズ等の製造において用いられる常法により行うことができる。例えば、シリコンウェーハ等の基板上に、ポジ型ホトレジスト組成物を、スピンナー等で塗布、乾燥してホトレジスト層を形成した後、縮小投影露光装置等により、紫外線、deep−UV、エキシマレーザー光等の活性光線を、所望のマスクパターンを介して、真空中、あるいは所定の屈折率を有する液体を介して照射するか、あるいは電子線により描画した後、加熱し、次いでこれを現像液、例えば1〜10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等のアルカリ性水溶液等を用いて現像処理することによって、基板上にポジ型レジストパターンを形成することができる。
【0098】
なお、ポジ型レジストパターンの材料となるポジ型ホトレジスト用組成物としては、アルカリ性の現像液によって現像可能なものであれば特に限定されず、i、g線用ポジ型ホトレジスト組成物、KrF、ArF、F
2等のエキシマレーザー用ポジ型ホトレジスト組成物、さらにはEB(電子線)用ポジ型ホトレジスト組成物、EUV用ポジ型ホトレジスト等、広く一般的に用いられるポジ型ホトレジスト組成物を用いることができる。
【0099】
次いで、ポジ型レジストパターンを有する基板上全面にわたって、被覆剤を塗布してポジ型レジストパターンを被覆剤からなる被膜で被覆する。被覆方法は従来の熱フロープロセスにおいて通常行われていた方法に従って行うことができる。すなわち、例えばバーコーター法、ロールコーター法、スリットコーター法、スピンナーを用いた回転塗布等の公知の塗布手段により、上記被覆剤がポジ型レジストパターン上に塗布される。
【0100】
被膜形成後、必要に応じて加熱処理を行ってもよい。加熱処理温度は、ポジ型レジストパターンを良好にスリミングできる温度であれば、特に限定されず、ポジ型レジストパターンが熱流動を起こさない温度で加熱するのが好ましい。ポジ型レジストパターンが熱流動を起こさない温度とは、被覆剤からなる被膜が形成されてなく、ポジ型レジストパターンだけを形成した基板を加熱した場合、該ポジ型レジストパターンに寸法変化(例えば、自発的流動による寸法変化等)を生じさせない温度をいう。このような温度での加熱処理を行うことにより、ポジ型レジストパターン中のパターン部の表層の可溶化を促進することができ、後の被膜を除去した後に、良好にスリミングされ、且つラフネスが低減されたポジ型レジストパターンを得ることができる。
【0101】
被覆剤からなる被膜で被覆されたポジ型レジストパターンを加熱する温度は、60〜140℃が好ましく、80〜120℃がより好ましい。加熱時間は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが30〜90秒間が好ましい。
【0102】
また、被覆剤からなる被膜の厚さとしては、特に限定されず、ポジ型レジストパターンを被覆できていればよい
【0103】
皮膜形成後、又は上記の加熱処理の後、ポジ型レジストパターンを有する基板上に残留する被覆剤からなる被膜は、水系溶剤、好ましくは純水による洗浄により除去される。そうすることで、被膜とともに、ポジ型レジストパターン中のレジスト部の表層が洗浄水に溶解し、スリミングされたポジ型レジストパターンが得られる。
【0104】
なお、水洗に先立ち、所望によりアルカリ水溶液(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、コリン等)で被覆剤からなる被膜を備える基板を洗浄してもよい。アルカリ水溶液で洗浄した後に水洗を行う場合、被膜及びポジ型レジストパターン中のレジスト部の表層が溶解しやすく、ポジ型レジストパターンをより良好にスリミングさせることができる。
【0105】
なお、以上説明した工程は、ポジ型レジストパターン中のパターン部が所望する程度にスリミングされるまで、繰返して行われてもよい。
【0106】
以上説明する方法により、特定の構造の(A)含窒素化合物と、(B)有機溶剤とを含有する前述の被覆剤を用いてポジ型レジストパターンを微細化することで、ポジ型レジストパターン中のパターン部が良好にスリミングされ、且つ、ラフネスが低減された微細パターンを形成できる、
【実施例】
【0107】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0108】
〔実施例1〜34、及び比較例1〕
実施例において、(A)成分である含窒素化合物として、下記化合物A1及びA2を用いた。
【化9】
(A1について、m及びnの和は平均7である。A2について、m、n、及びlの和は平均7である。)
【0109】
実施例及び比較例において、(B)成分である有機溶剤として、下記のB1〜B3を用いた。
B1:4−メチル−2−ペンタノール
B2:プロピレングリコールモノブチルエーテル(1−ブトキシ−2−プロパノール)
B3:プロピレングリコールモノプロピルエーテル(1−プロポキシ−2−プロパノール)
【0110】
実施例において、(C)成分である塩基性含窒素化合物として、下記のC1〜C7を用いた。
C1:ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド
C2:トリイソプロパノールアミン
C3:ジイソプロパノールアミン
C4:モノイソプロパノールアミン
C5:モノメチルエタノールアミン
C6:1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン
C7:1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセン
【0111】
実施例及び比較例において、(D)成分である水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーとして、下記のD1〜D3を用いた。
D1:ポリビニルピロリドン(K30、株式会社日本触媒製)
D2:ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)(質量平均分子量:150,000)
D3:ポリヒドロキシスチレン(質量平均分子量:2,500)
【0112】
それぞれ表1に記載の種類の(A)成分と、(C)成分と、(D)成分とを、それぞれ表1に記載の濃度となるように、表1に記載の種類の(B)成分に溶解させて、各実施例及び比較例の被覆剤を得た。
【0113】
(評価)
12インチシリコンウェーハ上に反射防止膜形成用塗布液(Brewer社製、ARC−29A)を塗布した後、205℃にて60秒間加熱処理して、膜厚89nmの反射防止膜を設けた。この反射防止膜上に、ポジ型レジスト組成物(東京応化工業株式会社製、TARF−PI6−144ME)をスピンナーを用いて塗布した後、120℃で60秒間加熱処理して、膜厚120nmのレジスト膜を形成させた。このようにして形成されたレジスト膜に対して、それぞれ幅60nmのラインとスペースとを備えるラインアンドスペースパターンを形成するためのマスクを介して露光処理した後、90℃で60秒間加熱処理した。その後、2.38質量%TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)水溶液を用いて現像処理した後、イオン交換蒸留水によるリンスを行い、ラインアンドスペースパターンを得た。
【0114】
ラインアンドスペースパターンを備える基板の表面に対して、各実施例又は比較例の被覆剤を、スピンナーを用いて被膜の膜厚が60nmとなるように塗布して、ラインアンドスペースパターンの表面を被覆剤からなる被膜で被覆した。その後、2.38質量%TMAH水溶液を用いてラインアンドスペースパターンの表面から被膜を除去した後、イオン交換蒸留水を100秒間被膜に接触させた。このようにして得られた、微細化処理が施されたラインアンドスペースパターンについて、以下の評価を行った。
【0115】
なお、表1中のベークの項目について「有」と記載されている実施例又は比較例の被覆剤を用いている場合については、TMAH水溶液により被膜を除去する前に、被膜で被覆されたラインアンドスペースパターンを、100℃で60秒間加熱処理した。
【0116】
[ライン幅の微細化量の評価]
まず、微細化処理を施される前のラインアンドスペースパターンを、走査型電子顕微鏡で観察して、400箇所のライン幅を測定した。400箇所のライン幅の値の平均値を求めて、求められた平均値をライン幅W1(nm)とした。各実施例及び比較例の被覆剤を用いて微細化処理を施されたラインアンドスペースパターンについても、400箇所のライン幅の平均値を求め、求められた平均値をライン幅W2(nm)とした。
求められたW1及びW2から、ライン幅の微細化量ΔW(nm)を、下式に従って算出した。
ΔW=W1−W2
各実施例及び比較例の被覆剤を用いて微細化処理されたラインアンドスペースパターンについての、ライン幅の微細化量ΔWを、表1に記す。なお、ΔWが負の値である場合、被覆剤を用いて微細化処理した後に、ライン幅が未処理時のライン幅よりも増大したことを意味する。
【0117】
[ラインワイズラフネス(LWR)の低下量の評価]
まず、微細化処理を施される前のラインアンドスペースパターンを、走査型電子顕微鏡で観察して、400箇所のライン幅を測定した。400箇所のライン幅の値から、ライン幅の標準偏差(σ)を求めた。次いで、標準偏差の3倍値(3σ)を算出し、3σの値を未処理のラインアンドスペースパターン中のラインのラフネス(R1、nm)とした。
各実施例の被覆剤を用いて微細所処理を施されたラインアンドスペースパターンについても、400箇所のライン幅を測定し、R1と同様にして、微細化処理を施されたラインアンドスペースパターン中のラインのラフネス(R2、nm)を求めた。
求められたR1及びR2から、LWRの低下量ΔR(nm)を、下式に従って算出した。
ΔR=R1−R2
各実施例の被覆剤を用いて微細化処理されたラインアンドスペースパターンについての、LWRの低下量ΔRを、表1に記す。
【0118】
【表1】
【0119】
実施例1〜34によれば、所定の構造の(A)含窒素化合物と、(B)有機溶剤とを含有する被覆剤を用いて、所定の方法でポジ型レジストパターンを処理する場合、ポジ型レジストパターンのスリミングと、ラフネスの低減とを両立できることかが分かる。
また、実施例1〜34によれば、(C)塩基性含窒素化合物、並びに(D)水溶性ポリマー、又はアルカリ可溶性ポリマーを含む被覆剤を用いる場合、これらを含まない被覆剤を用いる場合よりも、スリミング及びラフネス低減の効果が高いことが分かる。
さらに、実施例1〜34の被覆剤を用いて処理されたポジ型レジストパターン中のレジスト部の形状を、走査型電子顕微鏡により観察したところ、レジスト部の高さは処理前と変わらず、レジスト部の断面形状は良好な矩形であった。
【0120】
比較例1によれば、アルカリ可溶性ポリマーを含んでいるが、所定の構造の(A)含窒素化合物を含まない被覆剤を用いて、所定の方法でポジ型レジストパターンを処理する場合、ポジ型レジストパターンのラフネスはある程度改善されるが、ポジ型レジストパターンが殆どスリミングされないことかが分かる。