特許第6311704号(P6311704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6311704-建築窓用複層ガラス 図000005
  • 特許6311704-建築窓用複層ガラス 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6311704
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】建築窓用複層ガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/06 20060101AFI20180409BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20180409BHJP
   C03C 3/083 20060101ALI20180409BHJP
   C03C 3/085 20060101ALI20180409BHJP
   C03C 3/087 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   C03C27/06 101H
   C03C21/00 101
   C03C3/083
   C03C3/085
   C03C3/087
【請求項の数】16
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-510138(P2015-510138)
(86)(22)【出願日】2014年4月3日
(86)【国際出願番号】JP2014059880
(87)【国際公開番号】WO2014163158
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2017年2月16日
(31)【優先権主張番号】特願2013-77556(P2013-77556)
(32)【優先日】2013年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】旭硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】菊地 哲
(72)【発明者】
【氏名】小島 浩士
(72)【発明者】
【氏名】一山 泰子
(72)【発明者】
【氏名】石田 光
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−145310(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/031855(WO,A1)
【文献】 特開2011−236083(JP,A)
【文献】 特開2010−6684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 27/06
C03C 3/083
C03C 3/085
C03C 3/087
C03C 21/00
E06B 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板と、該複数枚のガラス板間に中空層を形成するように前記複数枚のガラス板の周縁に配置されたスペーサと、を備えた建築窓用複層ガラスにおいて、前記複数枚のガラス板のうち、室内側に配されるガラス板が、第1および第2の主面、ならびに第1および第2の主面間に介在する端面を有し、化学強化処理により前記主面の双方に表面圧縮応力が形成され内部に引張応力が形成されたガラス板であって、該ガラス板は、板厚が1.0〜2.5mm、前記双方の表面圧縮応力の値が400〜900MPa、前記引張応力の値が1〜25MPa、前記主面の双方における圧縮応力層の板厚方向の厚さが7〜25μmであることを特徴とする、建築窓用複層ガラス。
【請求項2】
前記室内側に配されるガラス板の板厚が1.2〜2.2mm、前記表面圧縮応力の値が600〜850MPa、前記引張応力の値が4〜20MPa、前記主面における圧縮応力層の板厚方向の厚さが15〜25μmである、請求項1に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項3】
前記建築窓用複層ガラスについて、前記室内側に配されるガラス板側からのJISR3206に準拠したショットバック試験を行なった際、その落下高さが10cmで飛散せず、20cm以上で飛散した際の0.15g超の破片の飛散距離が4.5m以下である、請求項1または2に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項4】
前記主面の面積が5000cm以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項5】
前記室内側に配されるガラス板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜75%、Alを1〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜10%含有するガラスからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項6】
前記室内側に配されるガラス板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜75%、Alを5〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜5%含有するガラスからなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項7】
前記中空層の厚さが6〜16mmである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項8】
第1、2および3のガラス板と、第1および第2のガラス板間に第1の中空層ならびに第2および第3のガラス板間に第2の中空層を形成するようにそれぞれガラス板の周縁に配置された第1および第2スペーサと、を備えた建築窓用複層ガラスにおいて、室内側に配される第1のガラス板が、第1および第2の主面、ならびに第1および第2の主面間に介在する端面を有し、化学強化処理により前記主面の双方に表面圧縮応力が形成され内部に引張応力が形成されたガラス板であって、該ガラス板は、板厚が1.0〜2.5mm、前記双方の表面圧縮応力の値が400〜900MPa、前記引張応力の値が1〜25MPa、前記主面の双方における圧縮応力層の板厚方向の厚さが7〜25μmであることを特徴とする、建築窓用複層ガラス。
【請求項9】
第1中空層の厚さと第2中空層の厚さとが6〜16mmである、請求項8に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項10】
第1中空層の厚さと第2中空層の厚さとが異なる、請求項9に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項11】
前記室内側に配されるガラス板の板厚が1.2〜2.2mm、前記表面圧縮応力の値が600〜850MPa、前記引張応力の値が4〜20MPa、前記主面における圧縮応力層の板厚方向の厚さが15〜25μmである、請求項8〜10のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項12】
前記建築窓用複層ガラスについて、前記室内側に配されるガラス板側からのJISR3206に準拠したショットバック試験を行なった際、その落下高さが10cmで飛散せず、20cm以上で飛散した際の0.15g超の破片の飛散距離が4.5m以下である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項13】
前記主面の面積が5000cm以上である、請求項8〜12のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項14】
前記室内側に配される第1のガラス板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜75%、Alを1〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜10%含有するガラスからなる、請求項8〜13のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項15】
前記室内側に配される第1のガラス板は、下記酸化物基準のモル百分率表示で、SiOを56〜75%、Alを5〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜5%含有するガラスからなる、請求項8〜13のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【請求項16】
前記室内側に配されるガラス板は、前記端面に圧縮応力層を有さない、請求項1〜15のいずれか1項に記載の建築窓用複層ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築窓用複層ガラスに関し、特に化学強化処理されたガラス板を用いた建築窓用複層ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の室内冷暖房の負荷を軽減する省エネルギー窓として、複層ガラスが普及してきている。一般に複層ガラスは、2枚のガラス板がその周縁全周に配置されたスペーサにより中空層を介して間隔保持されたものである。この中空層の存在により、複層ガラスがサッシに配置された際に、室内外の熱の伝導を減少させることで、冷暖房の負荷を軽減できる。
【0003】
さらに室内外の熱伝導を軽減させるために、中空層を2層にした3枚以上のガラス板を用いた複層ガラスも提案されている(特許文献1参照)。
なお、特許文献1は、段落0060に、ガラス板に化学強化された強化ガラスを用いることについての示唆がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−6684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガラス板の厚さを小さくすると、一般に強度が低下する。典型的な現象としては、ガラス板の厚さが小さくなるとガラス板自身の剛性が低下し、撓みやすくなる。ガラス板が過度に撓むと、湾曲状態で凸形状となったガラス板の面側に引張応力が生じ、この引張応力が破壊応力を超えることで、ガラス板が割れる。
【0006】
そこで、凸面側に生じる引張応力に抗するように、ガラス板の表面にあらかじめ圧縮応力を形成した強化ガラスとすることが考えられる。一方、厚さの小さいガラス板、典型的には2.5mm以下の厚さのガラス板を物理強化することは、実用上困難な場合がある。その理由は次のとおりである。物理強化は、ガラス板を加熱した後に急冷することで生じる、ガラス板の表面と内部との間の温度差を利用するものである。2.5mm以下の厚さのガラス板に所望の温度差を形成するための急冷には、工業的に相当大きな冷却能が必要である。そのため、2.5mm以下の厚さのガラス板の強化処理は、化学強化処理が適しているともいえる。
【0007】
厚さの小さい、化学強化処理されたガラス板に物体が衝突し、ガラス板が大きく撓む際に、ある程度の衝撃を超えるとガラス板は破損する。その結果、撓み方向と逆方向への反動とガラス板内部に残留する引張応力に起因する内部エネルギーの解放により、破損したガラス破片が撓み方向と逆方向に飛散する。すなわち、建築物の室内側でガラス板に物体が衝突しガラス板が破損した場合、破砕片が室内側に飛散することが懸念される。
よって、化学強化ガラスの破損の際に破片の飛散をできるだけ抑えることが求められる。しかし、特許文献1には、複層ガラスとして使用する場合において、ガラス板がどの程度の化学強化が必要であるかの具体的な記載はない。
また、特許文献1のガラス板の総重量は、最も薄いガラスを使った場合(総厚18mm)、計算上、30kg/m2=12.1(実測値)×2.5となり、重い。
【0008】
本発明は、厚さが薄くて軽量であり、破損の際に破片の飛散をできるだけ抑えることができる建築窓用複層ガラスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数枚のガラス板と、該複数枚のガラス板間に中空層を形成するように前記複数枚のガラス板の周縁に配置されたスペーサと、を備えた建築窓用複層ガラスにおいて、前記複数枚のガラス板のうち、室内側に配されるガラス板が、第1および第2の主面、ならびに第1および第2の主面間に介在する端面を有し、化学強化処理により前記主面の双方に表面圧縮応力が形成され内部に引張応力が形成されたガラス板であって、該ガラス板は、板厚が1.0〜2.5mm、前記双方の表面圧縮応力の値が400〜900MPa、前記引張応力の値が1〜25MPa、前記主面の双方における圧縮応力層の板厚方向の厚さが7〜25μmであることを特徴とする、建築窓用複層ガラスを提供する。
【0010】
また、本発明は、第1、2および3のガラス板と、第1および第2のガラス板間に第1の中空層ならびに第2および第3のガラス板間に第2の中空層を形成するようにそれぞれガラス板の周縁に配置された第1および第2スペーサと、を備えた建築窓用複層ガラスにおいて、室内側に配される第1のガラス板が、第1および第2の主面、ならびに第1および第2の主面間に介在する端面を有し、化学強化処理により前記主面の双方に表面圧縮応力が形成され内部に引張応力が形成されたガラス板であって、該ガラス板は、板厚が1.0〜2.5mm、前記双方の表面圧縮応力の値が400〜900MPa、前記引張応力の値が1〜25MPa、前記主面の双方における圧縮応力層の板厚方向の厚さが7〜25μmであることを特徴とする、建築窓用複層ガラスを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、厚さが薄くて、破損の際に破片の飛散をできるだけ抑えることができる建築窓用複層ガラスが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の建築窓用複層ガラスの一例を示す、部分断面図である。
図2図1に示す建築窓用複層ガラスに用いるガラス板を説明する、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づき本発明の建築窓用複層ガラスの一例を詳細に説明する。
図1は、本発明の建築窓用複層ガラスの一例を示す、部分断面図である。建築窓用複層ガラス10は、第1のガラス板20(室内側のガラス板)と、第2のガラス板30と、第3のガラス板40(室外側のガラス板)と、第1および第2のガラス板間に形成された第1の中空層12と、第2および第3のガラス板間に形成された第2の中空層14と、第1のスペーサ11と、第2のスペーサ13とを有する。第1のスペーサ11は、第1のガラス板20と第2のガラス板30との間の周縁全周に配されている。第2のスペーサ13は、第2のガラス板30と第3のガラス板40との間の周縁全周に配されている。こうして第1の中空層12は、第1のガラス板20と第2のガラス板30との間に、第2の中空層14は、第2のガラス板30と第3のガラス板40との間に、それぞれ設けられている。
【0014】
図2は、図1に示す建築窓用複層ガラス10に用いられるガラス板20を説明する、斜視図である。ガラス板20は、図1に示した建築窓用複層ガラス10の室内側に配されるものであり、図2の如く第1の主面21aおよび第2の主面21b、ならびに主面21aおよび21b間に介在する端面22を有する。このガラス板20の板厚tは、1.0〜2.5mmである。ガラス板20は、主面21a、21bにおいて板厚方向に7〜25μmの圧縮応力層を有する化学強化処理されたガラス板である。主面21a、21bの圧縮応力値は、それぞれ400〜900MPaである。ガラス板20の内部に形成された引張応力の値は、1〜25MPaである。
【0015】
本発明における、室内側に配されるガラス板20は、板厚が1.1〜2.2mm、双方の主面の表面圧縮応力の値が600〜850MPa、引張応力の値が4〜20MPa、双方の主面における圧縮応力層の板厚方向の厚さが15〜25μmであることが、好ましい。これにより、通常の複層ガラスをショットバック試験に供した場合の破片の飛散距離に遜色なく、飛散を抑制できる。さらに飛散を抑制できる点で、室内側に配されるガラス板20は、板厚が1.2〜2.1mm、双方の主面の表面圧縮応力の値が650〜800MPa、引張応力の値が5〜17MPa、双方の主面における圧縮応力層の板厚方向の厚さが18〜25μmであることが、好ましい。
【0016】
本発明におけるガラス板としては、主面の面積が5000cm以上であることが、本発明の効果を発揮するものとして有益であり、10000cm以上であることがさらに有益である。すなわち、建築窓用複層ガラスの面積が増大すれば、たわみの絶対値が大きくなりやすい。たわみが増大すればショットバック試験時の破片の飛散距離が大きくなる傾向にある。したがって、本発明のように内部に蓄積されるエネルギーをできるだけ小さくし、かつ所望の主面の圧縮応力を付与した化学強化処理されたガラス板を用いることが、面積の大きな複層ガラスに有益である。
【0017】
このような複層ガラスにおいて、室内側に配されるガラス板20側からの、JISR3206に準拠したショットバック試験における、落下高さが10cmで飛散せず、20cm以上で飛散した際の0.15g超の破片の飛散距離が4.5m以下であることは、通常の複層ガラスに比べて遜色のない、飛散距離の抑制された複層ガラスにできる。
【0018】
本発明における室内側に配されるガラス板は、主面とともに端面にも圧縮応力層が形成されていてもよい。化学強化後に所望の形状にガラス板を切断する場合には、端面に圧縮応力層を有さない場合もある。建築物の種々のサッシ形状、大きさに合わせるためには、化学強化後に所望の形状にガラス板を切断し、端面に圧縮応力層が形成されないガラス板を用いることが好ましい。さらに、この端面を被膜や化学処理等の保護処理を施した面とすることは好ましい。
【0019】
本発明における室内側に配されるガラス板に形成される圧縮応力は、ガラス板の主面方向に均一に形成されていても、面内に分布を有していてもよい。上記の化学強化処理によれば、処理むらを除けばほぼ均一に圧縮応力が得られる。そのため、圧縮応力に関する種々の値の測定にあたっては、主面の中央(ガラス板が矩形の場合には対角線の交わる点、矩形でない場合もこれに準じた点)を代表点とすればよい。
【0020】
本発明におけるガラス板を得るための化学強化処理の方法としては、ガラス表層のイオン半径の小さなイオン(例えば、Naイオン)と、溶融塩中のイオン半径の大きなイオン(例えば、Kイオン)とをイオン交換できるものであれば特に制限はないが、たとえば加熱された硝酸カリウム溶融塩にガラスを浸漬する方法が挙げられる。なお、本発明において硝酸カリウム溶融塩または硝酸カリウム塩は、KNOの他、KNOと10質量%以下のNaNOを含有するものなどを含む。
【0021】
ガラスに所望の表面圧縮応力を有する圧縮応力層を形成するための化学強化処理条件は、ガラス板の板厚などによっても異なるが、350〜550℃の硝酸カリウム溶融塩に2〜20時間ガラス基板を浸漬させることが典型的である。経済的な観点からは350〜500℃、2〜16時間の条件で浸漬させることが好ましく、より好ましい浸漬時間は2〜10時間である。
【0022】
本発明におけるガラス板の製造方法に特に制限はないが、たとえば種々の原料を適量調合し、約1400〜1800℃に加熱し溶融した後、脱泡、攪拌などにより均質化し、周知のフロート法、ダウンドロー法、プレス法などによって板状に成形し、徐冷後所望のサイズに切断して製造される。
【0023】
本発明における少なくとも室内側に配されるガラス板のガラスのガラス転移点Tgは、400℃以上であることが好ましい。これによって、イオン交換時の表面圧縮応力の緩和を抑止できる。より好ましくは550℃以上である。
本発明における少なくとも室内側に配されるガラス板のガラスの粘度が10dPa・sとなる温度T2は、好ましくは1800℃以下、より好ましくは1750℃以下である。
本発明におけるガラスの粘度が10dPa・sとなる温度T4は、1350℃以下であることが好ましい。
【0024】
本発明における少なくとも室内側に配されるガラス板のガラスの比重ρは、2.37〜2.55であることが好ましい。
本発明における少なくとも室内側に配されるガラス板のガラスのヤング率Eは、65GPa以上であることが好ましい。これによって、ガラスのカバーガラスとしての剛性や破壊強度が充分となる。
本発明における少なくとも室内側に配されるガラス板のガラスのポアソン比σは、0.25以下であることが好ましい。これによってガラスの耐傷つき性、特に長期使用後の耐傷つき性が充分となる。
【0025】
本発明における室内側に配されるガラス板は、所望のサイズに切断されたガラス板を化学強化するものでもよく、最初に化学強化をしたあとに所望のサイズに切断するものであっても良いことは言うまでもない。
ここで、本発明における化学強化ガラス板は、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを56〜75%、Alを1〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜10%含有することを特徴とする。また、SiOを56〜75%、Alを5〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜5%含有する化学強化ガラスであることがより好ましい。以降、百分率表示は、特に断らない限り、モル百分率表示含有量を示す。
【0026】
本実施形態の化学強化ガラスにおいて、ガラス組成を前記範囲に限定した理由を以下に説明する。
SiOは、ガラス微細構造の中で網目構造を形成する成分として知られており、ガラスを構成する主要成分である。SiOの含有量は、56%以上であり、好ましくは60%以上、より好ましくは63%以上、さらに好ましくは65%以上である。また、SiOの含有量は、75%以下であり、好ましくは73%以下、より好ましくは71%以下である。SiOの含有量が56%以上であると、ガラスとしての安定性や耐候性の点で優位である。一方、SiOの含有量が75%以下であると、熔解性および成形性の点で優位である。
【0027】
Alは、化学強化におけるイオン交換性能を向上させる作用があり、特に表面圧縮応力(CS)を向上する作用が大きい。ガラスの耐候性を向上する成分としても知られている。また、フロート成形時にボトム面からの錫の浸入を抑制する作用がある。Alの含有量は、1%以上であり、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上である。また、Alの含有量は、Alの含有量は、20%以下であり、好ましくは17%以下、より好ましくは12%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下である。Alの含有量が1%以上であると、イオン交換により、所望のCSが得られ、また、錫の浸入を抑制する効果が得られる。一方、Alの含有量が20%以下であると、ガラスの粘性が高い場合でも失透温度が大きくは上昇しないため、ソーダライムガラス生産ラインでの熔解、成形の点で優位である。
【0028】
SiOおよびAlの含有量の合計SiO+Alは、80%以下であることが好ましい。80%超では高温でのガラスの粘性が増大し、溶融が困難となるおそれがあり、より好ましくは79%以下、さらに好ましくは78%以下である。また、SiO+Alは、70%以上であることが好ましい。70%未満では圧痕がついた時のクラック耐性が低下し、より好ましくは72%以上である。
【0029】
NaOは、イオン交換により表面圧縮応力層を形成させる必須成分であり、圧縮応力深さ(DOL)を深くする作用がある。またガラスの高温粘性と失透温度を下げ、ガラスの熔解性、成形性を向上させる成分である。NaOの含有量は、8%以上であり、好ましくは12%以上、より好ましくは13%以上である。また、NaOの含有量は、22%以下であり、好ましくは20%以下、より好ましくは16%以下である。NaOの含有量が8%以上であると、イオン交換により所望の表面圧縮応力層を形成することができる。一方、NaOの含有量が22%以下であると、充分な耐候性が得られる。
【0030】
Oは、必須ではないが、イオン交換速度を増大しDOLを深くする効果があるため含有してもよい。一方、KOが多くなりすぎると十分なCSが得られなくなる。KOを含有する場合は、10%以下が好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。KOの含有量が10%以下であると、充分なCSが得られる。
【0031】
MgOは、必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。MgOの含有量は、2%以上が好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは3.6%以上である。また、MgOの含有量は、14%以下であり、好ましくは8%以下、より好ましくは6%以下である。MgOの含有量が2%以上であると、ガラスの耐薬品性が良好になる。高温での熔解性が良好になり、失透が起こり難くなる。一方、MgOの含有量が14%以下であると、失透の起こりにくさが維持され、充分なイオン交換速度が得られる。
ZrOは、必須ではないが、一般に、化学強化での表面圧縮応力を大きくする作用があることが知られている。しかし、少量のZrOを含有してもコスト増加の割には、その効果は大きくない。したがって、コストが許す範囲で任意の割合のZrOを含有することが出来る。含有する場合は、5%以下であることが好ましい。
【0032】
CaOは、必須ではないが、ガラスを安定化させる成分である。CaOは、アルカリイオンの交換を阻害する傾向があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有量を減らす、もしくは含まないことが好ましい。一方、耐薬品性を向上させるためには、2%以上が好ましく、より好ましくは4%以上、さらに好ましくは6%以上である。CaOを含有する場合の量は、10%以下であり、好ましくは9%以下、より好ましくは8.2%以下である。CaOの含有量が10%以下であると、充分なイオン交換速度が保たれ、所望のDOLが得られる。
【0033】
SrOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。SrOは、イオン交換効率を低下させる作用があるため、特にDOLを大きくしたい場合は含有しないことが好ましい。含有する場合のSrO量は3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
BaOは、必須ではないが、ガラスの高温粘性を下げ、失透温度を下げる目的で含有してもよい。BaOはガラスの比重を重くする作用があるため、軽量化を意図する場合には含有しないことが好ましい。含有する場合のBaO量は3%以下が好ましく、より好ましくは2%以下、さらに好ましくは1%以下である。
【0034】
TiOは、天然原料中に多く存在し、黄色の着色源となることが知られている。TiOの含有量は、0.3%以下が好ましく、より好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。TiOの含有量が0.3%を超えるとガラスが黄色味を帯びる。
この他、ガラスの熔融の清澄剤として、塩化物、フッ化物などを適宜含有してもよい。本発明のガラスは、本質的に以上で説明した成分からなるが、本発明の目的を損なわない範囲でその他の成分を含有してもよい。そのような成分を含有する場合、それら成分の含有量の合計は5%以下であることが好ましく、より好ましくは3%以下、典型的には1%以下である。以下、上記その他成分について例示的に説明する。
【0035】
ZnOは、ガラスの高温での熔融性を向上するために、たとえば2%まで含有してもよい。しかし、フロート法で製造する場合には、フロートバスで還元され製品欠点となるので含有しないことが好ましい。
は、高温での熔融性またはガラス強度の向上のために、1%未満の範囲で含有してもよい。一般的には、NaOまたはKOのアルカリ成分とBを同時に含有すると揮散が激しくなり、煉瓦を著しく浸食するので、Bは実質的に含有しないことが好ましい。
LiOは、歪点を低くして応力緩和を起こりやすくし、その結果安定した表面圧縮応力層を得られなくする成分であるので含有しないことが好ましく、含有する場合であってもその含有量は1%未満であることが好ましく、より好ましくは0.05%以下、特に好ましくは0.01%未満である。
【0036】
本発明におけるスペーサには、周知のものが使用可能である。例えば、アルミニウム製の短冊をロール成形し筒状にし、内部にゼオライト等の乾燥材を入れたスペーサ本体を、ブチルゴム等の一次シールと多硫化ゴムやシリコーン等の二次シールとを用いて、ガラス板間に配置するものがあげられる。他に、乾燥材を混入させた樹脂製のスペーサを用いることもできる。
【0037】
本発明におけるガラス板には、各種の機能コーティングを設けてもよい。典型的には、室内側ガラス板の中空層側の面に銀系の薄膜を形成し、低放射性能を付与するものがあげられる。他に、室内外を問わず任意に熱線反射膜を設けたり、親水性の薄膜を設けたりすることもできる。
【0038】
本発明の複層ガラスに用いるガラス板は、それ自体単板ガラスの場合もあれば、二枚以上のガラス板をポリビニルブチラールやエチレン酢酸ビニル等の中間膜を介して積層された合せガラスを意味してもよい。
【0039】
本発明における中空層には、不活性ガスを充填してもよい。また、中空層の厚さは、複層ガラスとしての充分な断熱性や防音性を得るために、いずれも、6〜16mmであることが好ましい。また、各中空層どうしの厚さが異なることは、次の理由から好ましい。物体の遮音性能は、一般にはその物体の質量に依存する。本発明の複層ガラスのように、用いるガラス板の板厚を小さくすると、遮音性の低下が懸念される。そこで、断面視で並列する複数の中空層の厚さを異なるようにすることで、遮音性を向上できる。
【0040】
図1は、3枚のガラス板20、30、40と2層の中空層12、14とで構成される複層ガラス10の例であるが、4枚以上のガラス板とその枚数より1つ少ない層の中空層で構成された複層ガラスであってもよい。
【実施例】
【0041】
表1、2のような構成の建築窓用複層ガラスを用意した。表1および表2中、LおよびSは、ガラス板の種類で、「L」は、旭硝子(株)製「LEOFLEX(登録商標)、「S」は、ソーダライムシリカガラスを表す。この種類に続く( )内の数字は、当該ガラス板の厚さ(単位:mm)を示す。同様に中空層の欄の数字は、中空層の厚さ(単位:mm)を示す。これらのガラス板の外形寸法は、すべて700(mm)×1140(mm)である。なお、表1および表2において、「CS」は、表面圧縮応力値(単位:MPa)を、「DOL」は、圧縮応力層の深さ(すなわち、主面における圧縮応力層の板厚方向の厚さ)(単位:μm)、「CT」は、引張応力の値(単位:MPa)を示す。
ここで、当該ガラス板は、酸化物基準のモル百分率表示でSiOを56〜75%、Alを1〜20%、NaOを8〜22%、KOを0〜10%、MgOを0〜14%、ZrOを0〜5%、CaOを0〜10%含有する化学強化されたガラスである。
【0042】
表1、表2において、ガラス板の欄の「 」内の表記(1)「面取りなし」、(2)「R面取り#400」、(3)「R面取り#800」は、それぞれ化学強化処理後に所定の寸法に切断した後に、(1)そのまま、(2)端面を400番手の砥石でR面取り、(3)端面を800番手の砥石でR面取り、それぞれ行ったことを示す。また、化学強化処理されたガラス板は、それぞれ所定の強化物性が得られるように調整されたものである。調整の結果付与された強化物性の値は、折原製作所社製表面応力計FSM−6000にて主面の表面圧縮応力CS(単位:MPa)および主面における圧縮応力層の板厚方向の厚さDOL(単位:μm)を測定し、内部引張応力CT(単位:MPa)を計算し、得た。なお、表1、2中のガラス板、中空層の符号は、図1で用いた符号と同じものを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
表1、表2に示す各構成例の複層ガラスを、室内側に配されるガラス板(図1の符号20のガラス板)に加撃体を衝突させるように、JISR3206:1997に準拠したショットバック試験に供した。結果を表3に示す。表3中「落下高さ」は、ショットバック試験によりガラス板が破砕したときの加撃体の落下高さ(単位:cm)を示す。同じく「最大飛散距離」は、当該試験の結果飛散した破片の最大飛散距離(単位:m)を示す。同じく「最大飛散距離の破片重量(g)」は、上記最大飛散距離に飛散した破片の最大重量(単位:g)を示す。又「0.15g超飛散距離」は、0.15g超の破片の最大飛散距離(単位:m)を示す。なお、参照のしやすさのために、化学強化処理されている場合の、室内側に配されるガラス板の強度物性(表面圧縮応力値「CS」および引張応力値「CT」)と、圧縮応力深さ「DOL」と、板厚tとを表3中に記入した(単位は同上)。
【0046】
【表3】
表3中、例1〜32の複層ガラスは、本発明の実施例に係る複層ガラスである。例1〜32の複層ガラスのうち、例1、2、7〜9、14〜16、21〜23の複層ガラスは、本発明の好ましい実施例に係る複層ガラスである。同例33〜36の複層ガラスは、比較例に係る複層ガラスである。同例37〜41は、参考例に係る複層ガラスである。
これら例1〜32の複層ガラスによれば、JISR3206に準拠したショットバック試験における落下高さが10cmで、室内側ガラス板が飛散しない、または同じ構成において多くの室内側ガラス板が飛散しない。
【0047】
以下、表3の結果について詳細に説明する。なお、本実施例の化学強化されたガラス板は、化学強化後に切断されたものである。
例1〜2の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、5.5m、4.0mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.0mであった。よって、例1〜2の複層ガラスによれば、厚さが1.1mmのガラス板でも飛散距離を抑えることができた。
【0048】
例3〜6の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、3.0mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.0mであった。また、落下高さが30cmの場合、最大飛散距離は、4.0mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.0mであった。よって、例3〜6の複層ガラスによれば、端面を400番手の砥石でR面取りをしているため、たとえ過酷な条件(落下高さが30cm)であっても、厚さが1.1mmのガラス板でも飛散距離を抑えられる傾向がわかった。
【0049】
例7〜9の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、3.5m、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.5mであった。また、落下高さが40cmの場合、最大飛散距離は、4.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、4.5mであった。よって、例7〜9の複層ガラスによれば、端面を800番手の砥石でR面取りをしているため、たとえ過酷な条件(落下高さが40cm)であっても、厚さが1.1mmのガラス板でも飛散距離を抑えられる傾向がわかった。
【0050】
例10〜13の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、3.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、2.0mであった。また、落下高さが48cmの場合、最大飛散距離は、6.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、5.5mであった。よって、例10〜13の複層ガラスによれば、過酷な条件(落下高さが48cm)であっても、厚さが1.3mmのガラス板でも飛散距離を抑えることができた。
【0051】
例14〜16の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、3.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、2.5mであった。また、落下高さが48cmの場合、最大飛散距離は、5.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、4.0mであった。よって、例14〜16の複層ガラスによれば、過酷な条件(落下高さが48cm)であっても、厚さが1.3mmのガラス板でも飛散距離を抑えることができた。
【0052】
例17〜20の複層ガラスによれば、落下高さが61cmの場合、最大飛散距離は、5.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、4.5mであった。また、落下高さが77cmの場合、最大飛散距離は、5.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、5.5mであった。よって、例17〜20の複層ガラスによれば、端面を400番手の砥石でR面取りをしているため、過酷な条件(落下高さが77cm)であっても、厚さが2.0mmのガラス板でも飛散距離を抑えられる傾向がわかった。
【0053】
例21〜23の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、2.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、2.5m以下であった。また、落下高さが38cmの場合、最大飛散距離は3.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.5mであった。よって、例21〜23の複層ガラスによれば、過酷な条件(落下高さが38cm)であっても、厚さが2.0mmのガラス板でも飛散距離を抑えることができた。
【0054】
例24〜25の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、4.5mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.5m以下であった。よって、例24〜25の複層ガラスによれば、端面を400番手の砥石でR面取りをしているため、厚さが1.1mmのガラス板でも飛散距離を抑えられる傾向がわかった。
例26〜28の複層ガラスによれば、落下高さが20cmの場合、最大飛散距離は、3.0mであり、0.15gを超えた破片の最大飛散距離は、3.0mであった。よって、例26〜28の複層ガラスによれば、端面を800番手の砥石でR面取りをしているため、厚さが1.1mmのガラス板でも飛散距離を抑えられる傾向がわかった。
【0055】
ここで、表1及び表2で示された構成例のガラスの重さについて説明する。
構成例1〜3、8〜12の複層ガラスによれば、3枚のガラスの総重量は、約8.25kg/m2=(1.1+1.1+1.1)×2.5(ここにおいて、括弧内の数値は、板厚(mm)を表し、それに続く数値は比重を表す。以下同様)である。また、構成例4の複層ガラスによれば、3枚のガラスの総重量は、約13.5kg/m2=(1.3+1.1+3.0)×2.5である。また、構成例5の複層ガラスによれば、3枚のガラスの総重量は、約9.75kg/m2=(1.3+1.3+1.3)×2.5である。また、構成例6の複層ガラスによれば、3枚のガラスの総重量は、約15.25kg/m2=(2.0+1.1+3.0)×2.5である。また、構成例7の複層ガラスによれば、3枚のガラスの総重量は、約15kg/m2=(2.0+2.0+2.0)×2.5である。
また、ガラスの断熱性の指標として、熱貫流率(いわゆる、U値)というものがある。U値とは、内外の温度差が1℃あった場合に、1時間あたりガラス1mを通過する熱量をワットで表したものである。ここで、特許文献1の熱貫流率(U値)は、最も小さいもので1.8W/m・Kである。
【0056】
一方、本発明の化学強化された薄いガラス板を用いた場合(銀2層系Low−E膜付きガラス板3mm(室外側のガラス板)+アルゴンガス入り中空層15mm+ガラス板1.3mm+アルゴンガス入り中空層15mm+銀2層系Low−E膜付きガラス板1.3mm(室内側のガラス板))、U値は0.6W/m・Kとすることができる。また、本発明の化学強化された薄いガラス板を用いた場合(銀2層系Low−E膜付きガラス板3mm(室外側のガラス板)+アルゴンガス入り中空層12mm+ガラス板1.3mm+アルゴンガス入り中空層12mm+銀2層系Low−E膜付きガラス板1.3mm(室内側のガラス板))、U値は0.7W/m・Kとすることができる。よって、本願発明の薄い化学強化されたガラス板を用いることにより、従来の複層ガラスに比べて、高い断熱性能(高い省エネルギー効果)を得ることができる。
【0057】
参考例に係る複層ガラスは、通常の複層ガラスである。このうち、ショットバック試験において最も飛散距離の大きい例40の複層ガラスは、0.15gの破片の飛散距離が4.5m未満である。本発明の特に好ましい実施例に係る例1、2、7、8、14〜16、21〜23の複層ガラスは、通常の複層ガラスに遜色ないほどに破片の飛散が抑制されている。つまり、本発明の複層ガラスは、所定の強度を持つ薄い化学強化されたガラス板を用いたことにより、フロートガラス板3mmを使った場合と同等の強度を備え、かつ、従来の複層ガラスに比べて軽量な複層ガラスを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の建築窓用複層ガラスによれば、厚さが薄くて軽量であり、破損の際に破片の飛散をできるだけ抑えることができ、高い省エネルギー効果を発揮することができる建築窓用複層ガラスを提供することができる。
なお、2013年4月3日に出願された日本特許出願2013−077556号の明細書、特許請求の範囲、図面および要約書の全内容をここに引用し、本発明の開示として取り入れるものである。
【符号の説明】
【0059】
10…建築窓用複層ガラス、20、30、40…ガラス板、11、13…スペーサ、12、14…中空層、21a…第1の主面、21b…第2の主面、22…端面。
図1
図2