特許第6311923号(P6311923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東京精密の特許一覧

<>
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000002
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000003
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000004
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000005
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000006
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000007
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000008
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000009
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000010
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000011
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000012
  • 特許6311923-温度測定装置及び温度測定方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6311923
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】温度測定装置及び温度測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 5/52 20060101AFI20180409BHJP
   G01K 11/12 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   G01K5/52
   G01K11/12 D
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-73010(P2014-73010)
(22)【出願日】2014年3月31日
(65)【公開番号】特開2015-194433(P2015-194433A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2016年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】松本 弘一
(72)【発明者】
【氏名】石井 雅文
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−012033(JP,U)
【文献】 特開2013−061255(JP,A)
【文献】 特開2013−178169(JP,A)
【文献】 特開2006−184181(JP,A)
【文献】 特開2010−091294(JP,A)
【文献】 特開昭63−182523(JP,A)
【文献】 米国特許第04714342(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00−19/00
G01D 5/26−5−38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の温度を測定する温度測定装置であって、
等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光である光コムを出射する光周波数コム光源と、
前記光周波数コム光源から出射された前記光を参照光と測定光とに分割する光分割部と、
前記光分割部にて分割された前記測定光を通すセンサ用光ファイバケーブルであって、温度変化により伸縮し、前記測定対象物に接触するように配置される前記センサ用光ファイバケーブルを有するセンサ部と、
前記光分割部にて分割された前記参照光と、前記センサ部の前記センサ用光ファイバケーブルを経由した前記測定光との光干渉信号を検出する光検出部と、
前記光検出部の検出結果に基づき、伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さを取得するセンサ長取得部と、
前記センサ長取得部が取得する伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、前記測定対象物の温度を算出する温度算出部と、
を備え
前記センサ部は長さが異なる複数の前記センサ用光ファイバケーブルを有し、複数の前記センサ用光ファイバケーブルの各々は光スイッチに接続され、前記光スイッチにより選択された前記センサ用光ファイバケーブルに前記測定光が通る温度測定装置。
【請求項2】
前記参照光の光路の長さを調整する光路長調整部を備え、
前記参照光の光路は、前記光路長調整部により、前記センサ長取得部が取得した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、調整される請求項1に記載の温度測定装置。
【請求項3】
測定対象物の温度を測定する温度測定装置であって、
等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光である光コムを出射する光周波数コム光源と、
前記光周波数コム光源から出射された前記光を参照光と測定光とに分割する光分割部と、
前記光分割部にて分割された前記測定光を通すセンサ用光ファイバケーブルであって、温度変化により伸縮し、前記測定対象物に接触するように配置される前記センサ用光ファイバケーブルを有するセンサ部と、
前記光分割部にて分割された前記参照光と、前記センサ部の前記センサ用光ファイバケーブルを経由した前記測定光との光干渉信号を検出する光検出部と、
前記光検出部の検出結果に基づき、伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さを取得するセンサ長取得部と、
前記センサ長取得部が取得する伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、前記測定対象物の温度を算出する温度算出部と、
を備え
前記参照光の光路の長さを調整する光路長調整部を備え、
前記参照光の光路は、前記光路長調整部により、前記センサ長取得部が取得した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、調整される温度測定装置。
【請求項4】
前記光周波数コム光源と前記光分割部との間には、前記光コムの周波数間隔をm(mは任意の整数)倍するエタロンが設けられている請求項1から3のいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項5】
前記測定対象物は、固体又は液体である請求項1からのいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項6】
前記温度算出部は、前記測定対象物の平均温度を算出する請求項1から5のいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項7】
前記センサ部の前記センサ用光ファイバケーブルは、前記測定対象物の内部に設けられている請求項1から6のいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項8】
前記センサ部の前記センサ用光ファイバケーブルは、前記測定対象物に接する部分以外は被覆されている請求項1から6のいずれか1項に記載の温度測定装置。
【請求項9】
測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、
等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光である光コムを出射する光コム出射ステップと、
前記光コム出射ステップで出射された前記光を参照光と測定光とに分割する光分割ステップと、
前記光分割ステップにて分割された前記測定光を通すセンサ用光ファイバケーブルであって、温度変化により伸縮し、前記測定対象物に接触するように配置される前記センサ用光ファイバケーブルにより前記測定対象物の温度を感知する感知ステップと、
前記光分割ステップにて分割された前記参照光と、前記センサ用光ファイバケーブルを経由した前記測定光との光干渉信号を検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップの検出結果に基づき、伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さを取得するセンサ長取得ステップと、
前記センサ長取得ステップで取得する伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、前記測定対象物の温度を算出する温度算出ステップと、
を含み、
前記センサ用光ファイバケーブルは、長さが異なる複数の前記センサ用光ファイバケーブルであり、複数の前記センサ用光ファイバケーブルの各々は光スイッチに接続され、前記光スイッチにより選択された前記センサ用光ファイバケーブルに前記測定光が通る温度測定方法。
【請求項10】
測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、
等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光である光コムを出射する光コム出射ステップと、
前記光コム出射ステップで出射された前記光を参照光と測定光とに分割する光分割ステップと、
前記光分割ステップにて分割された前記測定光を通すセンサ用光ファイバケーブルであって、温度変化により伸縮し、前記測定対象物に接触するように配置される前記センサ用光ファイバケーブルにより前記測定対象物の温度を感知する感知ステップと、
前記光分割ステップにて分割された前記参照光と、前記センサ用光ファイバケーブルを経由した前記測定光との光干渉信号を検出する光検出ステップと、
前記光検出ステップの検出結果に基づき、伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さを取得するセンサ長取得ステップと、
前記センサ長取得ステップで取得する伸縮した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、前記測定対象物の温度を算出する温度算出ステップと、
を含み、
前記参照光の光路の長さを調整する光路長調整ステップを含み、
前記参照光の光路は、前記光路長調整ステップにより、前記センサ長取得ステップで取得した前記センサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、調整される温度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の温度を測定する技術に関し、特に光ファイバケーブルを利用した温度測定に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、光ファイバーケーブルを使用して測定対象物の温度を測定する方法が考えられてきた。例えば、特許文献1には、光ファイバーケーブルにおける戻り光であるレイリー散乱光を応用して、測定対象物の温度を測定する技術が記載されている。また、特許文献2には、屈折率の高い部分と低い部分とが周期的に形成された回折格子をコア部に有する光ファイバーケーブルを使用して、測定対象物の温度を測定する技術が記載されている。
【0003】
さらに、近年、周波数領域において周波数が等間隔になっている周波数成分からなる光である光コムを計測に使用する技術が考えられている。例えば、特許文献3には、光コムを使用して距離を測定する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−042005号公報
【特許文献2】特開2012−088155号公報
【特許文献3】特開2013−178169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載された技術では、レイリー散乱光のデータを蓄積する手段を温度測定装置に設けることが必要となる。また、特許文献2に記載された技術では、屈折率の高い部分と低い部分とが周期的に形成された回折格子をコア部に有する光ファイバーケーブルを使用しなければならない。さらに、特許文献1及び2に記載された技術は、特許文献3に記載された光コムに関する技術を応用することが考慮されていない。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、光コムを使用して測定対象物の温度を正確に測定することができる温度測定装置及び温度測定方法を提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様である温度測定装置は、測定対象物の温度を測定する温度測定装置であって、等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光である光コムを出射する光周波数コム光源と、光周波数コム光源から出射された光を参照光と測定光とに分割する光分割部と、光分割部にて分割された測定光を通すセンサ用光ファイバケーブルであって、温度変化により伸縮し、測定対象物に接触するように配置されるセンサ用光ファイバケーブルを有するセンサ部と、光分割部にて分割された参照光と、センサ部のセンサ用光ファイバケーブルを経由した測定光との光干渉信号を検出する光検出部と、光検出部の検出結果に基づき、伸縮したセンサ用光ファイバケーブルの長さを取得するセンサ長取得部と、センサ長取得部が取得する伸縮したセンサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、測定対象物の温度を算出する温度算出部と、を備える。
【0008】
本態様によれば、光周波数コム光源から出射された光(光コム)を使用して、センサ用光ファイバケーブルの伸縮した長さを測定することにより測定対象物の温度を測定する。これにより、本態様は、光コムに含まれる複数の周波数の光波によりセンサ用光ファイバケーブルの長さを正確に測定することができ、正確な温度測定をすることができる。
【0009】
望ましくは、センサ部は、長さが異なる複数のセンサ用光ファイバケーブルを有し、複数のセンサ用光ファイバケーブルの各々は光スイッチに接続され、光スイッチにより選択されたセンサ用光ファイバケーブルに測定光が通る。
【0010】
本態様によれば、センサ部は長さが異なる複数のセンサ用光ファイバケーブルを有し、光スイッチにより、測定対象物の長さに応じてセンサ用光ファイバケーブルが選択される。これにより、本態様は、測定対象物の長さに応じてセンサ用光ファイバケーブルを選択して温度測定を行うことができる。
【0011】
望ましくは、光周波数コム光源と光分割部との間には、光コムの周波数間隔をm(mは任意の整数)倍するエタロンが設けられている。
【0012】
本態様によれば、温度測定に使用する光コムの周波数間隔をエタロンにより適宜調整を行うことができる。これにより、様々な周波数の間隔で測定でき、測定ピッチを細分化でき、より正確に温度測定できるという効果を奏する。
【0013】
望ましくは、測定対象物は、固体又は液体である。
【0014】
望ましくは、温度測定装置は、参照光の光路の長さを調整する光路長調整部を備え、参照光の光路は、光路長調整部により、センサ長取得部が取得したセンサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、調整される。
【0015】
本態様によれば、光コムを使用して、センサ用光ファイバケーブルの長さに応じて、参照光の光路の長さを調整することができる。これにより、本態様は、参照光の光路の長さを調整することができ、より正確な温度測定を行うことができる。
【0016】
望ましくは、温度算出部は、測定対象物の平均温度を算出する。
【0017】
本態様によれば、温度算出部により、測定対象物の平均温度を算出する。これにより、本態様は、センサ用光ファイバケーブルが配された部分の平均温度を正確に求めることができる。
【0018】
望ましくは、センサ部のセンサ用光ファイバケーブルは、測定対象物の内部に設けられている。
【0019】
本態様によれば、センサ用光ファイバケーブルがより大きい表面積で測定対象物と接するので、測定対象物の温度をより精度良く測定することができる。
【0020】
望ましくは、センサ部のセンサ用光ファイバケーブルは、測定対象物に接する部分以外は被覆されている。
【0021】
本態様によれば、測定対象物に接している部分以外のセンサ用光ファイバケーブルが被覆されているため、センサ用光ファイバケーブルに対する測定対象物以外の温度の影響が少なくなり、測定対象物の温度をより精度良く測定することができる。
【0022】
本発明の他の態様である温度測定方法は、測定対象物の温度を測定する温度測定方法であって、等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光である光コムを出射する光コム出射ステップと、光コム出射ステップで出射された光を参照光と測定光とに分割する光分割ステップと、光分割ステップにて分割された測定光を通すセンサ用光ファイバケーブルであって、温度変化により伸縮し、測定対象物に接触するように配置されるセンサ用光ファイバケーブルにより測定対象物の温度を感知する感知ステップと、光分割ステップにて分割された参照光と、センサ用光ファイバケーブルを経由した測定光との光干渉信号を検出する光検出ステップと、光検出ステップの検出結果に基づき、伸縮したセンサ用光ファイバケーブルの長さを取得するセンサ長取得ステップと、センサ長取得ステップで取得する伸縮したセンサ用光ファイバケーブルの長さに基づいて、測定対象物の温度を算出する温度算出ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、センサ用光ファイバケーブルを測定対象物に接触させ、測定対象物の温度に応じて伸縮したセンサ用光ファイバケーブルの長さを光コムにより測定し、その測定結果に基づいて測定対象物の温度を測定するので、測定対象物の正確な温度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】温度測定装置の構成を示す概略図である。
図2】光ファイバケーブルの断面図である。
図3】測定対象物の温度分布に関して説明する概念図である。
図4】センサ用光ファイバケーブルの配置の例を示す図である。
図5】温度測定装置の温度測定の流れを示したフロー図である。
図6】温度測定装置の変形例の構成を示す概略図である。
図7】光スイッチ及びセンサ用光ファイバケーブルの拡大図である。
図8】温度測定装置の変形例の構成を示す概略図である。
図9】光ファイバケーブルの設置に関して説明する図である。
図10】センサ用光ファイバケーブルの設置の例を示す概念図である。
図11】センサ用光ファイバケーブルの設置の例を示す概念図である。
図12】センサ用光ファイバケーブルの設置の例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に従って本発明にかかる温度測定装置及び温度測定方法の実施の形態について説明する。
【0026】
<温度測定装置の構成>
図1は、温度測定装置10の構成を示す概略図である。温度測定装置10は、主に光周波数コム光源20、スプリッタ(光分割部)22、第1光路23、第2光路24、センサ部11、ミキサ25、光検出部26、センサ長取得部27、温度算出部32、これら各部を接続する光路用光ファイバケーブル28(図中の二重線で表示)、及び光路用光ファイバケーブル28どうしを接続するコネクタ29を備えている。また、図1では、温度測定装置10は、固体の測定対象物100を測定している。なお、測定対象物100は、固体及び液体である。測定対象物100が固体の場合は、例えば、測定対象物100は上板である。また、測定対象物100のサイズは、大小様々なものを採用することができる。
【0027】
光周波数コム光源20は、温度測定に使用する光コム(光周波数コムともいう)31を出射する。光コム31は、周波数領域において周波数が等間隔に並んだ周波数成分を有する光である。この光周波数コム光源20としては、例えば、フェムト秒モード同期ファイバレーザでは、エリビウム添加光ファイバ(EDF)で形成されたリング共振器をレーザダイオードで駆動する構成のレーザ発振器などを用いることができる。なお、光周波数コム光源20は、少なくとも温度測定時には光コム31を常時出射する。光周波数コム光源20から出射された光コム31は、光路用光ファイバケーブル28を介してスプリッタ22に入力される。
【0028】
スプリッタ22は、第1光路23及び第2光路24に接続している。スプリッタ22は、入力された光コム31を参照光35と測定光36とに分割して、参照光35を第1光路23に出力するとともに、測定光36を第2光路24に出力する。なお、スプリッタ22は、参照光35と測定光36との割合が例えば5:95となるように光コム31を分割する。
【0029】
第1光路23には、第1コリメータ38、音響光学変調部(AOM)34、第1プリズムリフレクタ39、第2プリズムリフレクタ40、走査ステージ41、及び第2コリメータ42が設けられている。
【0030】
第1コリメータ38は、スプリッタ22から入力される参照光35を平行光として音響光学変調部34に向けて出射する。
【0031】
音響光学変調部34は、第1コリメータ38と第1プリズムリフレクタ39との間に配置されている。音響光学変調部34は、入力された光の周波数を変更することができる(周波数シフタ)。図1に示した場合には、音響光学変調部34は、第1コリメータ38から入力される参照光35の周波数を適宜変更して、第1プリズムリフレクタ39へ出射する。音響光学変調部34で参照光35の周波数を適宜変更することにより、周波数が変調された参照光35aとセンサ用光ファイバケーブル30を通過した測定光36aとの間に周波数差が生じ、両者を干渉させることで周波数差に応じたビート信号50aが得られる。
【0032】
第1プリズムリフレクタ39は、音響光学変調部34から入力された参照光35aを第2プリズムリフレクタ40に向けて反射するとともに、この第2プリズムリフレクタ40から入射する参照光35aを第2コリメータ42に向けて反射する。
【0033】
第2プリズムリフレクタ40は、第1プリズムリフレクタ39により反射された参照光35aの光路上に配置されている。この第2プリズムリフレクタ40は、第1プリズムリフレクタ39から入射した参照光35aを再び第1プリズムリフレクタ39に向けて反射する。
【0034】
走査ステージ41は、第2プリズムリフレクタ40に取り付けられている。この走査ステージ41は、第1プリズムリフレクタ39により反射された参照光35aの光路に平行な方向に沿って第2プリズムリフレクタ40を往復動させる。例えば、走査ステージ41は、第2プリズムリフレクタ40を数mm〜数cmのストロークで往復動させる。これにより、後述する参照光35aと測定光36aとの光干渉信号50の振幅を時間的に変動させることができる。時間的に変動する光干渉信号50の測定データを積算することで、測定データの精度を高めることができる。なお、走査ステージ41の代わりに、例えばPZTステージ(電圧アクチュエータ)を用いてもよい。
【0035】
第2コリメータ42は、第1プリズムリフレクタ39から入射する参照光35aを集光して光路用光ファイバケーブル28に出力する。
【0036】
光路長調整部37は、第2コリメータ42とミキサ25との間に、コネクタ29を介して配置されている。光路長調整部37は、第1光路23の長さの調整を行う。光路長調整部37は、光ファイバケーブルで構成されており、第1光路23の長さを調整する。
【0037】
第2光路24には、コネクタ29を介してセンサ部11が設けられている。センサ部11を通過した測定光36は、ミキサ25へ向けて出射される。
【0038】
センサ部11は、センサ用光ファイバケーブル30を有し、センサ用光ファイバケーブル30が温度により伸縮した長さにより、測定対象物100の温度を感知する。センサ用光ファイバケーブル30は、コネクタ29を介して光路用光ファイバケーブル28に接続されている。センサ用光ファイバケーブル30の入射部46は、測定光36がセンサ用光ファイバケーブル30に入射する箇所であり、センサ用光ファイバケーブル30の出射部48は、センサ用光ファイバケーブル30を通った測定光36が光路用光ファイバケーブル28に戻る箇所である。
【0039】
図2は、光路用光ファイバケーブル28及びセンサ用光ファイバケーブル30の断面図である。図2(A)は、光路用光ファイバケーブル28の内部を参照光35又は測定光36が進む様子を示している。光路用光ファイバケーブル28は、コア部60、クラッド部62、及び被覆部64を有する。図2(B)は、センサ用光ファイバケーブル30の内部を測定光36が進む様子を示している。図2(B)に示したセンサ用光ファイバケーブル30は、コア部60、及びクラッド部62を有しており、被覆部64は有していない。これは、センサ用光ファイバケーブル30は、接している測定対象物100の温度を感度よく感知するためである。
【0040】
すなわち、センサ用光ファイバケーブル30は、被覆部64を介さずに、温度の測定対象物100に接触するため、測定対象物100の温度を感度よく感知することができる。なお、センサ用光ファイバケーブル30は、測定対象物100と接触しない部分では被覆部64を有していてもよい。また、光路用光ファイバケーブル28とセンサ用光ファイバケーブル30は、一般に製造される光ファイバケーブルを使用することができる。例えば、コア部60の材料として、完全フッ化ポリマー、ポリメタクリル酸メチル系、及びポリカーボネート等を使用する光ファイバケーブルを使用することが可能である。また、例えば、クラッド部62の材料として、低屈折率をもつフッ素系ポリマーを使用する光ファイバケーブルを使用することが可能である。
【0041】
図3は、温度分布を有する測定対象物100に関して説明する概念図である。図3(A)は、測定対象物100が異なる温度を有するパッチ(符号102及び符号104)を有することを示す。パッチ102の温度は符号106の領域よりも高く、パッチ104の温度は符号106の領域よりも低い。図3(A)に示すように、一般に測定対象物100(固体又は液体)の温度は、コヒーレントのパッチとして分布している。図3(B)では、図3(A)で示した温度分布を有する測定対象物100の温度を本発明の温度測定装置10で測定することを示している。温度分布を有する測定対象物100にセンサ用光ファイバケーブル30が接触するように設けられることにより、温度分布を考慮した測定対象物100の温度を求めることができる。この場合に求められる測定対象物100の温度は、測定対象物100の代表温度又は平均温度である。
【0042】
図1に戻って、センサ用光ファイバケーブル30を経由した測定光36a、及び音響光学変調部34により周波数が変調された参照光35aは、ミキサ25に入力される。
【0043】
ミキサ25は、例えば光ミキサが用いられる。このミキサ25は、第1光路23から入力される周波数が変調された参照光35aと第2光路24から入力されるセンサ用光ファイバケーブル30を通った測定光36aとを例えば光学的に乗算するなどの方法で混合して、周波数が変調された参照光35aとセンサ用光ファイバケーブル30を通った測定光36aとの光干渉信号50を生成する。光干渉信号50は、参照光35aと測定光36aとの周波数差に応じて強度に変動(うなり)が生じる。なお、光干渉信号50から得られる信号をビート信号50aという。
【0044】
光検出部26は、ミキサ25から出力される光干渉信号50を受光し、電気信号であるビート信号50aに変換し、検出結果として、センサ長取得部27へ出力する。
【0045】
センサ長取得部27は、光検出部26から入力されるビート信号50aに基づき、公知のパルス干渉計測技術を利用してセンサ用光ファイバケーブル30の長さを取得する。このセンサ用光ファイバケーブル30の長さの取得は、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮の長さが第1光路23と第2光路24との差に関係することを利用したものである。
【0046】
例えば、先ずセンサ長取得部27は、センサ用光ファイバケーブル30を設置しない状態で基準点(ゼロ点)が設定される。図1に示す場合では、基準点の設定は、センサ用光ファイバケーブル30を設置せずにコネクタ29同士を接続し、第1光路23と第2光路24との長さを光路長調整部37により等しく調節することにより行われる。その後、センサ用光ファイバケーブル30をコネクタ29を介して温度測定装置10に設置して、測定光36aと参照光35aとの干渉縞パターンを干渉縞パターン検出部52により検出する。この場合に使用するセンサ用光ファイバケーブル30は、特定温度(基準温度)での長さ(基準長さ)が既知である。すなわち、センサ用光ファイバケーブル30は、予めある温度での長さが測定されており、その温度を基準温度及びその長さを基準長さとして有する。
【0047】
また、センサ長取得部27は、センサ用光ファイバケーブル30を温度測定装置10に設置したままでも基準点が調整される。具体的には、センサ用光ファイバケーブル30を設置した状態で温度測定装置10は、特定温度の環境下に置かれ、第1光路と第2光路との長さが等しくなるように調整される。そして、特定温度における第1光路と第2光路との長さが等しくなった点を基準とする。その後、センサ用光ファイバケーブル30は、測定対象物100に設置され、測定対象物100の温度の影響を受けて伸縮する。なお、基準点の校正は、上述の方法に限られず、公知の方法を採用することができる。
【0048】
干渉縞パターン検出部52が検出する干渉縞パターンは、測定対象物100の温度により伸縮したセンサ用光ファイバケーブル30の長さの分だけ、測定光36aの位相がずれる。そして、センサ長取得部27は、この測定光36aの位相のずれにより、測定対象物100の温度により伸縮したセンサ用光ファイバケーブル30の長さを取得する。その後、センサ長取得部27は、予め有しているセンサ用光ファイバケーブル30の基準長さと、測定光36の位相のずれにより取得したセンサ用光ファイバケーブル30の長さとを比較することにより、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さを求める。
【0049】
センサ長取得部27内の干渉縞パターン検出部52には、例えばロックインアンプが用いられる。ロックインアンプは、前述の光検出部26から入力されたビート信号50aと、図示は省略するが光周波数コム光源20から別途入力される参照信号との干渉縞パターンを検出する。センサ長取得部27は、この干渉縞パターンにより、測定光36aの位相情報を取得し、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さを求めることができる。
【0050】
ここでロックインアンプに入力される参照信号の周波数は、参照光35a及び測定光36aの周波数領域において近接した周波数成分の周波数差に対応する周波数に設定されている。これはビート信号50aが参照光35a及び測定光36aとを重畳した光干渉信号50の光強度に対応する信号レベルを有する電気信号であるので、結果としてビート信号50aは、参照光35aと測定光36aの周波数成分のうち、周波数領域において近接している周波数成分の周波数差に対応する周波数の周波数成分を有しているからである。したがって、参照信号の周波数を、参照光35aと測定光36aの、周波数領域において近接した周波数成分の周波数差に対応する周波数に設定した上で、ビート信号50aと参照信号との干渉縞パターンを干渉縞パターン検出部52で検出すれば、この干渉縞パターンから測定対象物100の温度に依存したセンサ用光ファイバケーブル30の長さを算出することができる。なお、参照信号の周波数の設定の詳細については特開2013−178169号を参照されたい。
【0051】
温度算出部32は、センサ長取得部27が取得したセンサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さから、測定対象物100の温度を算出する。具体的には、温度算出部32は、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さ、センサ用光ファイバケーブル30の熱膨張係数、及び上述した基準温度を使用して、測定対象物100の温度を算出する。また、センサ用光ファイバケーブル30が測定対象物100のある一定の領域において接触するように配置されている場合には、温度算出部32は、測定対象物100のその領域の平均温度を算出することができる。すなわち、センサ用光ファイバケーブル30が測定対象物100のある一定の領域に渡って接触するように配置されている場合には、センサ用光ファイバケーブル30は、その一定の領域の測定対象物100の温度の影響を受けて伸縮する。したがって、この場合には、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さから求めた温度は、配置された領域の平均温度(代表温度)とすることができる。ここで、センサ用光ファイバケーブル30の熱膨張係数は、センサ用光ファイバケーブル30の材料によって変化するが、例えば6×10−6/℃である。また、熱膨張係数の代わりに、線膨張係数を使用してもよい。
【0052】
図4は、センサ部11におけるセンサ用光ファイバケーブル30の異なる配置の仕方を示す図である。図4に示すように、センサ用光ファイバケーブル30は、いくつかの分岐点12を有し、分岐点12にそれぞれの長さの測定点13が接続する形態を採用することができる。この場合、測定光36は、コネクタ29からセンサ用光ファイバケーブル30に入射する。その後、測定光36は、予め設定された分岐点12において測定点13に入射し、測定点13により反射して、コネクタ29を介して光路用光ファイバケーブル28に入射する。測定光36は、測定点13で反射して、測定対象物100の温度に影響を受けて伸縮したセンサ用光ファイバケーブル30の長さ情報を有する測定光36aとなり、光路用光ファイバケーブル28に入射する。なお、予め測定したい距離が決まっている場合には、分岐点12の設定により、所望の測定点13により測定光36を反射させる。一方、測定点13を全て使用して温度測定を行う場合には、各測定点13で反射した測定光36aのある地点への到達する時間のずれにより、各測定点13で反射した測定光36aを特定することができる。
【0053】
図5は、温度測定装置10の温度測定の動作を説明するフロー図である。先ず、光周波数コム光源20は、光コム31をスプリッタ22に出射する(ステップS10、光コム出射ステップ)。その後、スプリッタ22は、光コム31を参照光35及び測定光36に分割する(ステップS12、光分割ステップ)。そして、測定光36がセンサ用光ファイバケーブル30の内部を通過する(ステップS14、感知ステップ)。この際、センサ用光ファイバケーブル30は、測定対象物100に接するように配置されており、測定対象物100の温度によって伸縮している。
【0054】
その後、光検出部26は、参照光35aとセンサ用光ファイバケーブル30を通過した測定光36aとの光干渉信号50からビート信号50aを検出する(ステップS16、光検出ステップ)。そして、センサ長取得部27は、光検出部26が検出したビート信号50aより、干渉縞パターン検出部52を使用して、測定光36aの位相情報を取り出す。その後、センサ長取得部27は、測定光36aの位相情報より、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さを算出する(ステップS18、センサ長取得ステップ)。その後、温度算出部32は、センサ長取得部27の算出結果に基づいて、測定対象物100の温度を算出する(ステップS20、温度算出ステップ)。
【0055】
以上で説明したように、本発明の温度測定装置10は、光コム31を使用したヘテロダイン干渉法により、センサ用光ファイバケーブル30の長さを測定し、測定対象物100の温度を求めている。一般に、ヘテロダイン干渉法では波長以上の光路差を検出することは困難となるが、光コム31は前述したように様々な波長の光を含むために、光路差の検出範囲が広がる。
【0056】
また、本発明の温度測定装置10は、光コム31を使用して、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さを測定するので、正確な長さを測定することができる。すなわち、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さの測定を、光コム31ではなく低コヒーレンスの光を使用して行う場合、光干渉信号50が得られないためにセンサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さを測定することができない場合がある。また、センサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さの測定を、光コム31ではなく可干渉距離が長い光を使用して行う場合、スプリッタ22等での反射光のノイズがあり測定することができない場合がある。本発明の温度測定装置10は、周波数領域において周波数が等間隔に並んだ周波数成分を有する光コム31を使用してセンサ用光ファイバケーブル30の伸縮した長さを測定するので、正確な伸縮長を測定でき、正確な温度を測定することが可能である。この光コム31使用して行う測定の効果は、上述した基準点の設定においても同様である。すなわち、本発明の温度測定装置10は、光コム31を使用して測定を行うので、基準点(ゼロ点)の設定を精度良く行うことができる。
【0057】
また、光コム31は周波数が等間隔になるような周波数成分を有する光であるために、本発明は、参照光35aと測定光36aとのビート信号50aが複数取得することができ、より正確な温度測定を行うことができる。
【0058】
[変形例1]
次に、温度測定装置10の変形例に関して説明する。本例は、センサ部11において複数の長さが異なるセンサ用光ファイバケーブル30が光スイッチ45を介して接続されていることを特徴とする。なお、本例において、上述した説明と重複する箇所は、同じ符号を付して説明は省略する。
【0059】
図6は、本例の温度測定装置10の構成を示している。本例の第1光路23には、音響光学変調部34が第1プリズムリフレクタ39と第2プリズムリフレクタ40との間に配置されている。
【0060】
本例の第2光路24には、サーキュレータ44、及びセンサ部11が設けられている。サーキュレータ44は、スプリッタ22から入力される測定光36をセンサ部11の光スイッチ45に向けて出力するとともに、この光スイッチ45からのセンサ用光ファイバケーブル30を通過した測定光36aをミキサ25に向けて出力する。
【0061】
センサ部11は、主に光スイッチ45及びセンサ用光ファイバケーブル30により構成されている。また、スイッチ制御部49の制御によって光スイッチ45が選択され、測長を行うためのビーム(測長ビーム)が出射されてもよい。
【0062】
図7は、センサ部11の光スイッチ45及びセンサ用光ファイバケーブル30の拡大図である。光スイッチ45には、複数のセンサ用光ファイバケーブル30(30a〜30e)が接続されている。
【0063】
光スイッチ45は、スイッチ制御部49の制御の下、光路用光ファイバケーブル28に接続するセンサ用光ファイバケーブル30(30a〜30e)の切り替えを行う。具体的には、光スイッチ45は、測定光36の光路を変えることにより、複数のセンサ用光ファイバケーブル(30a〜30e)の内から測定光36が通るセンサ用光ファイバケーブル(30a〜30eのいずれか)を選択する。
【0064】
なお、図6及び図7の光スイッチ45は、測定光36を距離測定対象に出射する測長ビーム出射部72を有している。これは、図6及び図7で記載された温度測定装置10は、測長ビーム出射部72を有することにより、測定光36(又は36a)により距離測定が行える。また、図6及び図7に示す構成の回路では、基準点の調整は、光スイッチ45とセンサ用光ファイバケーブル30との接続部からの反射光により行うことができる。すなわち、光スイッチ45とセンサ用光ファイバケーブル30との接続部では、測定光36の約4%の光が反射光となり光検出部26により検出され、その反射光により基準点(ゼロ点)を設定することができる。
【0065】
以上で説明したように、本例の温度測定装置10は、複数のセンサ用光ファイバケーブル30が光スイッチ45を介して接続されている。これにより、本例の温度測定装置10は、測定対象物100の長さに応じて、温度測定を行うことができる。
【0066】
[変形例2]
次に、温度測定装置10の変形例2に関して説明する。
【0067】
図8は、本例の温度測定装置10の構成を示している。本例の温度測定装置10の主な特徴は、光周波数コム光源20が光コム31をエタロン66に出射すること、サーキュレータ44がエタロン66とスプリッタ22との間に配置されていること、第1光路23に遅延デバイス部70が配置されていることである。なお、図8では、測定対象物100としてブロックゲージ68の温度測定が行われる例を示している。
【0068】
本例の温度測定装置10では、光周波数コム光源20から出射された光コム31は、エタロン66に入射する。エタロン66は、例えばファブリー・ペロー・エタロンが用いられる。エタロン66は、光コム31の周波数間隔をm(mは任意の整数)倍する。これにより、光コム31の周波数間隔を適宜広げることができる。例えば、光周波数コム光源20から出射される光コム31の周波数間隔は一般的には100MHz、250MHzであるが、この周波数間隔を15GHzに広げることができる。これにより、温度測定装置10は、測定対象物100の大きさや、その精度に対応して、適宜周波数間隔を調整し、大きい測定対象物100であっても正確に温度を測定できるという効果を奏する。
【0069】
本例では、サーキュレータ44は、エタロン66とスプリッタ22との間に配置される。エタロン66から出射された光コム31は、サーキュレータ44を介してスプリッタ22に入射する。一方、スプリッタ22から出射された光干渉信号50は、サーキュレータ44を介して光検出部26に入射する。
【0070】
スプリッタ22は、サーキュレータ44を通過した光コム31を取得し、光コム31を参照光35と測定光36に分割する。参照光35は第1光路23へと進み、測定光36は第2光路24へと進む。
【0071】
第1光路23へ進んだ参照光35は、光路長調整部37を通過して、遅延デバイス部70により周波数が変調される。遅延デバイス部70は、図1で説明をした音響光学変調部34、第1プリズムリフレクタ39、及び第2プリズムリフレクタ40の代わりに第1光路23に配置されている。例えば、遅延デバイス部70は、PZTステージ(電圧アクチュエータ)により構成されている。遅延デバイス部70により周波数が変調された参照光35aは、スプリッタ22へ戻される。
【0072】
第2光路24へ進んだ測定光36は、センサ用光ファイバケーブル30へと入射する。センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68に接するように配置され、ブロックゲージ68の温度を測定する。センサ用光ファイバケーブル30を通過した測定光36aは、スプリッタ22に戻る。
【0073】
スプリッタ22は、上述したミキサ25と同様な機能も持ち、入射される参照光35aと測定光36aとの光干渉信号50を生成する。
【0074】
なお、図8に示す構成の回路では、基準点(ゼロ点)の調整は、光路用光ファイバケーブル28とセンサ用光ファイバケーブル30との接続部からの反射光により行うことができる。すなわち、光路用光ファイバケーブル28とセンサ用光ファイバケーブル30との接続部では、測定光36の約4%の光が反射光となり光検出部26により検出され、その反射光により基準点(ゼロ点)を設定することができる。
【0075】
以上で説明したように、本例の温度測定装置10は、光コム31を使用することで、外乱に対しても非常にロバストで正確な測定が可能であり、光コム31の周波数を変化させることで、様々な測定対象物100の大きさに対応が可能である。また、本例の温度測定装置10は、センサ用光ファイバケーブル30と測定対象物100とを接触させて一体化させることによって(接触している部分以外は被覆部64等で覆うことによって)、大気の温度に影響されることなく、正確に測定対象物100のみの温度を測定できる。さらに、本例の温度測定装置10は、測定対象物100が大きい又は長いものであっても、測定対象物100の温度を正確に測定することができるという、効果を奏する。
【0076】
[センサ部の配置の変形例]
センサ部11のセンサ用光ファイバケーブル30は、様々な形態で、測定対象物100に接触するように配置される。以下に、センサ用光ファイバケーブル30の測定対象物100への設置の例を説明する。
【0077】
センサ用光ファイバケーブル30は、測定対象物100の温度(熱)が伝達されることにより伸縮をする。センサ用光ファイバケーブル30は、以下の式1に応じて測定対象物100の熱が伝達される。
【0078】
(式1) ΔQ/Δt=λ・S・ΔT/Δx
上述の式1のΔQ/Δtは、単位時間あたりに移動する熱量であり、λは熱伝達率であり、Sはセンサ用光ファイバケーブル30と測定対象物100との接触面積(伝熱面積)であり、ΔT/Δxは、測定対象物100の温度とセンサ用光ファイバケーブル30間の温度勾配を示している。式1が示すように、センサ用光ファイバケーブル30と測定対象物100との接触面積が大きいほど、センサ用光ファイバケーブル30は感度よく測定対象物100の温度を感知することができる。
【0079】
また、こうした熱伝達による温度伝達は、対流や輻射などによる温度変化に比べて非常に移動が早い。よって、精度よく測定対象物100の温度を正確に測定するためには、接触面積を大きくするとともに、できる限り大気の温度による外乱を受けないように構成することが望ましい。そのようにすることで、センサ用光ファイバケーブル30と測定対象物100の温度差をなくすことができるので、正確に測定対象物100の温度を測定することができる。
【0080】
図9は、温度測定装置10により測定対象物100であるブロックゲージ68の温度を測定する場合の、センサ用光ファイバケーブル30の設置の例を示した概念図である。
【0081】
図9(A)は、波形状にセンサ用光ファイバケーブル30をブロックゲージ68に設置した例を示している。温度測定装置10は、このように波形状にセンサ用光ファイバケーブル30を設置することにより、ブロックゲージ68の上下(図9に向かって上下の方向)の温度を測定することができる。図9(B)は、波形状にセンサ用光ファイバケーブル30をブロックゲージ68に対して往復するように設置した例を示している。温度測定装置10は、このように波形状のセンサ用光ファイバケーブル30をブロックゲージ68に対して往復させるように設置することにより、多くの面積でセンサ用光ファイバケーブル30とブロックゲージ68が接することができ、より正確な温度を測定することができる。図9(C)は、コの字状にセンサ用光ファイバケーブル30をブロックゲージ68に設置した例を示している。温度測定装置10は、このようにコの字状にセンサ用光ファイバケーブル30を設置することにより、ブロックゲージ68の全体の温度を効率良く測定することができる。図9(D)は、センサ用光ファイバケーブル30をブロックゲージ68上で周回させるように設置した例を示している。温度測定装置10は、このように周回させるようにセンサ用光ファイバケーブル30を設置することにより、ブロックゲージ68の周辺部及び中央部の温度分布を考慮して温度測定を行うことができる。
【0082】
図10から図12は、温度測定装置10により測定対象物100であるブロックゲージ68の温度を測定する場合、センサ用光ファイバケーブル30をブロックゲージ68に接触させる例を示した概念図である。
【0083】
図10では、センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68の表面に接触するように設置されており、テープ71により固定されている。なお、センサ用光ファイバケーブル30は、図2(B)で説明したものであり、コア部60及びクラッド部62から構成されている。センサ用光ファイバケーブル30は、テープ71で固定されることにより、ブロックゲージ68に安定的に接触して設置されている。また、センサ用光ファイバケーブル30は、テープ71で覆われるように固定されているため、外気等の温度の影響を受けにくくなる。これにより、温度測定装置10は、正確なブロックゲージ68の温度を測定することができる。
【0084】
図11では、センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68と接触する部分では被覆部64が無く、ブロックゲージ68と接触する部分以外では被覆部64を設けられている。このように、センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68と接触する部分で被覆部64を設けてないので精度良くブロックゲージ68の温度を測定することができる。また、センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68と接触しない部分で被覆部64を設けているのでブロックゲージ68(測定対象物100)以外の温度の影響を受けないので、精度良くブロックゲージ68の温度を測定することができる。
【0085】
図12では、センサ用光ファイバケーブル30がブロックゲージ68の内部に設けられている。センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68の内部に設けられることにより、より大きい表面積でブロックゲージ68と接触することができ、より精度良くブロックゲージ68の温度を測定することができる。また、センサ用光ファイバケーブル30は、ブロックゲージ68の内部に設けられることによりブロックゲージ68(測定対象物100)以外の温度の影響を受けず、より精度良くブロックゲージ68の温度を測定することができる。上述したように、センサ用光ファイバケーブル30は、様々な形態により測定対象物100に設置することができる。
【0086】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0087】
10…温度測定装置、11…センサ部、20…光周波数コム光源、22…スプリッタ、23…第1光路、24…第2光路、25…ミキサ、26…光検出部、27…センサ長取得部、28…光路用光ファイバケーブル、29…コネクタ、30…センサ用光ファイバケーブル、31…光コム、32…温度算出部、34…音響光学変調部、35…参照光、36…測定光、37…光路長調整部、38…第1コリメータ、39…第1プリズムリフレクタ、40…第2プリズムリフレクタ、41…走査ステージ、42…第2コリメータ、44…サーキュレータ、45…光スイッチ、46…入射部、48…出射部、49…スイッチ制御部、50…光干渉信号、50a…ビート信号、52…干渉縞パターン検出部、66…エタロン、68…ブロックゲージ、70…遅延デバイス部、72…測長ビーム出射部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12