(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態の照明光学系の要部構成を概略的に示す図である。
図1において、照明光学系の光軸AXに沿った方向がZ軸となるようにXYZ座標系を設定している。
【0014】
図1において、図示なき光源からの光は、所定面内に配列されて個別に制御される複数のミラー要素(不図示)を備える空間光変調器3に達する。空間光変調器3の複数のミラー要素にて反射された光は、リレー光学系4の前側レンズ群4aを介して、リレー光学系4の瞳面4cに入射する。なお、空間光変調器3の構成および機能の詳細な説明は、
図3および
図4を参照して後述する。
図1では、空間光変調器3の配列面(所定面)における有効反射領域が4つの部分領域R01,R02,R03,R04に分けられているものとし、説明を簡単にするために、ここでは部分領域R01およびR04からの光についてのみ説明する。
【0015】
空間光変調器3の部分領域R01に位置する複数のミラー要素からの光は、前側レンズ群4aを経由して瞳面4c上の一対の瞳領域R1a,R1bへ導かれて、瞳領域R1a,R1b内に光強度分布P1a,P1bを形成する。また、空間光変調器3の部分領域R04に位置する複数のミラー要素からの光は、前側レンズ群4aを経由して瞳面4c上の一対の瞳領域R4a,R4bへ導かれて、瞳領域R4a,R4b内に光強度分布P4a,P4bを形成する。
【0016】
瞳面4cからの光は、リレー光学系4の後側レンズ群4bを経て、リレー光学系4に関して空間光変調器3の配列面と光学的に共役な面内の領域3fに到達する。この共役面には、入射する直線偏光の偏光方向を45度だけ回転させる旋光部材51と、入射する直線偏光の偏光方向を90度だけ回転させる旋光部材52とが配置されている。
図1では、領域3fが空間光変調器3の部分領域R01〜R04とそれぞれ光学的に共役な4つの部分領域R11〜R14に分けられており、旋光部材51が部分領域R12,R13に位置し、旋光部材52が部分領域R13,R14に位置している。
【0017】
ここで、瞳面4cからの光のうち一対の瞳領域R4a,R4bからの光は、領域3f内の部分領域R14に達し、旋光部材52を経てその偏光方向が90度だけ回転する。このとき、空間光変調器3からの光の偏光方向がY方向に偏光方向を有するY方向直線偏光としているため、旋光部材52を通過した一対の瞳領域R4a,R4bからの光の偏光方向はX方向に偏光方向を有するX方向直線偏光となる。そして、X方向直線偏光となった一対の瞳領域R4a,R4bからの光は、リレー光学系6を経て瞳面4cと光学的に共役な瞳面7a上の一対の瞳領域R14a,R14bへ導かれて、瞳領域R14a,R14b内に光強度分布P14a,P14bを形成する。
【0018】
また、瞳面4cからの光のうち一対の瞳領域R1a,R1bからの光は、領域3f内の部分領域R11に達する。この部分領域には旋光部材51,52が位置しておらず、空間光変調器3からの光の偏光方向がY方向に偏光方向を有するY方向直線偏光としているため、部分領域R11を通過した一対の瞳領域R1a,R1bからの光の偏光方向はY方向直線偏光のままである。そして、部分領域R11を通過した一対の瞳領域R1a,R1bからの光は、リレー光学系6を経て瞳面7a上の一対の瞳領域R11a,R11bへ導かれて、瞳領域R11a,R11b内にY方向直線偏光の光強度分布P11a,P11bを形成する。
【0019】
この瞳面7aの光強度分布P11a,P11b,P14a,P14bからの光は、図示なきコンデンサー光学系を介して集光されて被照射面を照明する。ここで、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な面内の領域3f上の旋光部材51,52を、この領域3f上で移動させれば、瞳面7aの光強度分布の偏光状態を任意の偏光状態に変更することができる。以下、この点を、
図2を参照して詳述する。
【0020】
図2は、実施形態にかかる露光装置の構成を概略的に示す図である。
図2において、
図1に示した実施形態と同様の機能を有する部材には同じ符号を付してあり、感光性基板であるウェハWの転写面(露光面)の法線方向に沿ってZ軸を、ウェハWの転写面内において
図2の紙面に平行な方向にY軸を、ウェハWの転写面内において
図2の紙面に垂直な方向にX軸をそれぞれ設定している。
【0021】
図2を参照すると、本実施形態の露光装置では、光源1から露光光(照明光)が供給される。光源1として、たとえば193nmの波長の光を供給するArFエキシマレーザ光源や、248nmの波長の光を供給するKrFエキシマレーザ光源などを用いることができる。光源1からの射出される露光光(照明光)は、直線偏光を主成分とする偏光状態となっている。ここで、直線偏光を主成分とする偏光状態とは、この直線偏光の強度が露光光(照明光)の全体強度に対して80%以上であるとすることができる。光源1から+Z方向に射出された光は、ビーム送光部2を介して、光路折曲げミラーMR1で反射された後、空間光変調器3に入射する。空間光変調器3を経て+Z方向に射出された光は、リレー光学系4に入射する。
【0022】
ビーム送光部2は、光源1からの入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しつつ空間光変調器3へ導くとともに、空間光変調器3に入射する光束の位置変動および角度変動をアクティブに補正する機能を有する。なお、ビーム送光部2は、光源1からの入射光束を適切な大きさおよび形状の断面を有する光束に変換しない構成であってもよい。空間光変調器3は、後述するように、所定面内に配列されて個別に制御される複数のミラー要素と、制御系CRからの制御信号に基づいて複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部とを有する。空間光変調器3の構成および作用については後述する。
【0023】
空間光変調器3から射出された光は、リレー光学系4の前側レンズ群4aを介して、リレー光学系4の瞳面4cに入射する。前側レンズ群4aは、その前側焦点位置が空間光変調器3の複数のミラー要素の配列面(以下、「空間光変調器の配列面」という)の位置とほぼ一致し且つその後側焦点位置が瞳面4cの位置とほぼ一致するように設定されている。空間光変調器3を経た光は、後述するように、複数のミラー要素の姿勢に応じた光強度分布を瞳面4cに可変的に形成する。
【0024】
瞳面4cに光強度分布を形成した光は、リレー光学系4の後側レンズ群4bを介して、偏光ユニット5に入射する。偏光ユニット5は、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置に配置されて、入射光束のうちの一部の光束の偏光状態を変化させて射出する。偏光ユニット5の構成および作用については後述する。
【0025】
偏光ユニット5を経た光は、リレー光学系6を介した後、光路折曲げミラーMR2により+Y方向に反射され、マイクロフライアイレンズ(またはフライアイレンズ)7に入射する。後側レンズ群4bおよびリレー光学系6は、瞳面4cとマイクロフライアイレンズ7の入射面とを光学的に共役に設定している。したがって、空間光変調器3を経た光は、瞳面4cと光学的に共役な位置に配置されたマイクロフライアイレンズ7の入射面に、瞳面4cに形成された光強度分布に対応した光強度分布を形成する。
【0026】
マイクロフライアイレンズ7は、たとえば縦横に且つ稠密に配列された多数の正屈折力を有する微小レンズからなる光学素子であり、平行平面板にエッチング処理を施して微小レンズ群を形成することによって構成されている。マイクロフライアイレンズでは、互いに隔絶されたレンズエレメントからなるフライアイレンズとは異なり、多数の微小レンズ(微小屈折面)が互いに隔絶されることなく一体的に形成されている。しかしながら、レンズ要素が縦横に配置されている点でマイクロフライアイレンズはフライアイレンズと同じ波面分割型のオプティカルインテグレータである。
【0027】
マイクロフライアイレンズ7における単位波面分割面としての矩形状の微小屈折面は、マスクM上において形成すべき照野の形状(ひいてはウェハW上において形成すべき露光領域の形状)と相似な矩形状である。なお、マイクロフライアイレンズ7として、例えばシリンドリカルマイクロフライアイレンズを用いることもできる。シリンドリカルマイクロフライアイレンズの構成および作用は、例えば米国特許第6913373号明細書に開示されている。
【0028】
マイクロフライアイレンズ7に入射した光束は多数の微小レンズにより二次元的に分割され、その後側焦点面またはその近傍の照明瞳には、入射面に形成される光強度分布とほぼ同じ光強度分布を有する二次光源(多数の小光源からなる実質的な面光源:瞳強度分布)が形成される。マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成された二次光源からの光束は、コンデンサー光学系8を介して、マスクブラインド9を重畳的に照明する。
【0029】
こうして、照明視野絞りとしてのマスクブラインド9には、マイクロフライアイレンズ7の矩形状の微小屈折面の形状と焦点距離とに応じた矩形状の照野が形成される。なお、マイクロフライアイレンズ7の後側焦点面またはその近傍に、すなわち後述する投影光学系PLの入射瞳面と光学的にほぼ共役な位置に、二次光源に対応した形状の開口部(光透過部)を有する照明開口絞りを配置してもよい。
【0030】
マスクブラインド9の矩形状の開口部(光透過部)を介した光束は、結像光学系10の集光作用を受け、且つ結像光学系10の光路中に配置されたミラーMR3により−Z方向へ反射された後、所定のパターンが形成されたマスクMを重畳的に照明する。すなわち、結像光学系10は、マスクブラインド9の矩形状開口部の像をマスクM上に形成することになる。
【0031】
マスクステージMS上に保持されたマスクMを透過した光束は、投影光学系PLを介して、ウェハステージWS上に保持されたウェハ(感光性基板)W上にマスクパターンの像を形成する。こうして、投影光学系PLの光軸AXと直交する平面(XY平面)内においてウェハステージWSを二次元的に駆動制御しながら、ひいてはウェハWを二次元的に駆動制御しながら一括露光またはスキャン露光を行うことにより、ウェハWの各露光領域にはマスクMのパターンが順次露光される。スキャン露光を行う場合には、
図2におけるY方向をスキャン方向に設定することができる。
【0032】
本実施形態の露光装置は、照明光学系(2〜10)を介した光に基づいて照明光学系の射出瞳面における瞳強度分布を計測する第1瞳強度分布計測部DTrと、投影光学系PLを介した光に基づいて投影光学系PLの瞳面(投影光学系PLの射出瞳面)における瞳強度分布を計測する第2瞳強度分布計測部DTwと、第1および第2瞳強度分布計測部DTr,DTwのうちの少なくとも一方の計測結果に基づいて空間光変調器3を制御し且つ露光装置の動作を統括的に制御する制御系CRとを備えている。
【0033】
第1瞳強度分布計測部DTrは、例えば照明光学系の射出瞳位置と光学的に共役な位置に配置された光電変換面を有する撮像部を備え、照明光学系による被照射面上の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が照明光学系の射出瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。また、第2瞳強度分布計測部DTwは、例えば投影光学系PLの瞳位置と光学的に共役な位置に配置された光電変換面を有する撮像部を備え、投影光学系PLの像面の各点に関する瞳強度分布(各点に入射する光が投影光学系PLの瞳位置に形成する瞳強度分布)をモニターする。
【0034】
第1および第2瞳強度分布計測部DTr,DTwの詳細な構成および作用については、例えば米国特許公開第2008/0030707号明細書を参照することができる。また、瞳強度分布計測部として、米国特許公開第2010/0020302号公報の開示を参照することもできる。
【0035】
本実施形態では、マイクロフライアイレンズ7により形成される二次光源を光源として、照明光学系の被照射面に配置されるマスクM(ひいてはウェハW)をケーラー照明する。このため、二次光源が形成される位置は投影光学系PLの開口絞りASの位置と光学的に共役であり、二次光源の形成面を照明光学系の照明瞳面と呼ぶことができる。また、この二次光源の形成面の像を照明光学系の射出瞳面と呼ぶことができる。典型的には、照明瞳面に対して被照射面(マスクMが配置される面、または投影光学系PLを含めて照明光学系と考える場合にはウェハWが配置される面)が光学的なフーリエ変換面となる。なお、瞳強度分布とは、照明光学系の照明瞳面または当該照明瞳面と光学的に共役な面における光強度分布(輝度分布)である。
【0036】
マイクロフライアイレンズ7による波面分割数が比較的大きい場合、マイクロフライアイレンズ7の入射面に形成される大局的な光強度分布と、二次光源全体の大局的な光強度分布(瞳強度分布)とが高い相関を示す。このため、マイクロフライアイレンズ7の入射面および当該入射面と光学的に共役な面における光強度分布についても瞳強度分布と称することができる。
図2の構成において、リレー光学系4,6、およびマイクロフライアイレンズ7は、空間光変調器3を経た光束に基づいてマイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を形成する分布形成光学系を構成している。
【0037】
次に、空間光変調器3の構成および作用を具体的に説明する。空間光変調器3は、
図3に示すように、所定面内に配列された複数のミラー要素3aと、複数のミラー要素3aを保持する基盤3bと、基盤3bに接続されたケーブル(不図示)を介して複数のミラー要素3aの姿勢を個別に制御駆動する駆動部3cとを備えている。空間光変調器3では、制御系CRからの指令に基づいて作動する駆動部3cの作用により、複数のミラー要素3aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素3aがそれぞれ所定の向きに設定される。
【0038】
空間光変調器3は、
図4に示すように、二次元的に配列された複数の微小なミラー要素3aを備え、入射した光に対して、その入射位置に応じた空間的な変調を可変的に付与して射出する。説明および図示を簡単にするために、
図3および
図4では空間光変調器3が4×4=16個のミラー要素3aを備える構成例を示しているが、実際には16個よりもはるかに多数のミラー要素3aを備えている。
【0039】
図3を参照すると、空間光変調器3に入射する光線群のうち、光線L1は複数のミラー要素3aのうちのミラー要素SEaに、光線L2はミラー要素SEaとは異なるミラー要素SEbにそれぞれ入射する。同様に、光線L3はミラー要素SEa,SEbとは異なるミラー要素SEcに、光線L4はミラー要素SEa〜SEcとは異なるミラー要素SEdにそれぞれ入射する。ミラー要素SEa〜SEdは、その位置に応じて設定された空間的な変調を光L1〜L4に与える。
【0040】
空間光変調器3では、すべてのミラー要素3aの反射面が1つの平面に沿って設定された基準状態において、ミラーMR1と空間光変調器3との間の光路の光軸AXと平行な方向に沿って入射した光線が、空間光変調器3で反射された後に、空間光変調器3とリレー光学系4との間の光路の光軸AXと平行な方向に進むように構成されている。また、上述したように、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面は、リレー光学系4の前側レンズ群4aの前側焦点位置またはその近傍に位置決めされている。
【0041】
したがって、空間光変調器3の複数のミラー要素SEa〜SEdによって反射されて所定の角度分布が与えられた光は、リレー光学系4の瞳面4cに所定の光強度分布SP1〜SP4を形成し、ひいてはマイクロフライアイレンズ7の入射面に光強度分布SP1〜SP4に対応した光強度分布を形成する。すなわち、前側レンズ群4aは、空間光変調器3の複数のミラー要素SEa〜SEdが射出光に与える角度を、空間光変調器3の遠視野領域(フラウンホーファー回折領域)である瞳面4c上での位置に変換する。こうして、マイクロフライアイレンズ7が形成する二次光源の光強度分布(瞳強度分布)は、空間光変調器3およびリレー光学系4,6がマイクロフライアイレンズ7の入射面に形成する光強度分布に対応した分布となる。
【0042】
空間光変調器3は、
図4に示すように、平面状の反射面を上面にした状態で1つの平面に沿って規則的に且つ二次元的に配列された多数の微小な反射素子であるミラー要素3aを含む可動マルチミラーである。各ミラー要素3aは可動であり、その反射面の傾き、すなわち反射面の傾斜角および傾斜方向は、制御系CRからの制御信号に基づいて作動する駆動部3cの作用により独立に制御される。各ミラー要素3aは、その反射面に平行な二方向であって互いに直交する二方向を回転軸として、所望の回転角度だけ連続的或いは離散的に回転することができる。すなわち、各ミラー要素3aの反射面の傾斜を二次元的に制御することが可能である。
【0043】
各ミラー要素3aの反射面を離散的に回転させる場合、回転角を複数の状態(例えば、・・・、−2.5度、−2.0度、・・・0度、+0.5度・・・+2.5度、・・・)で切り換え制御するのが良い。
図4には外形が正方形状のミラー要素3aを示しているが、ミラー要素3aの外形形状は正方形に限定されない。ただし、光利用効率の観点から、ミラー要素3aの隙間が少なくなるように配列可能な形状(最密充填可能な形状)とすることができる。また、光利用効率の観点から、隣り合う2つのミラー要素3aの間隔を必要最小限に抑えることができる。
【0044】
本実施形態では、空間光変調器3として、たとえば二次元的に配列された複数のミラー要素3aの向きを連続的にそれぞれ変化させる空間光変調器を用いている。このような空間光変調器として、たとえば欧州特許公開第779530号公報、米国特許第5,867,302号公報、米国特許第6,480,320号公報、米国特許第6,600,591号公報、米国特許第6,733,144号公報、米国特許第6,900,915号公報、米国特許第7,095,546号公報、米国特許第7,295,726号公報、米国特許第7,424,330号公報、米国特許第7,567,375号公報、米国特許公開第2008/0309901号公報、国際特許公開第WO2010/037476号パンフレット、国際特許公開第WO2010/040506号パンフレット並びに特開2006−113437号公報に開示される空間光変調器を用いることができる。なお、二次元的に配列された複数のミラー要素3aの向きを離散的に複数の段階を持つように制御してもよい。
【0045】
空間光変調器3では、制御系CRからの制御信号に応じて作動する駆動部3cの作用により、複数のミラー要素3aの姿勢がそれぞれ変化し、各ミラー要素3aがそれぞれ所定の向きに設定される。空間光変調器3の複数のミラー要素3aによりそれぞれ所定の角度で反射された光は、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に、所望の瞳強度分布を形成する。さらに、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、所望の瞳強度分布が形成される。換言すると、空間光変調器3は、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に瞳強度分布を可変的に形成する。
【0046】
偏光ユニット5は、上述したように、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置に配置されている。したがって、偏光ユニット5への入射光束の性状は、空間光変調器3への入射光束の性状に対応している。以下、説明の理解を容易にするために、偏光ユニット5には、X方向に細長い矩形状の断面を有し且つY方向に偏光した直線偏光(以下、「Y方向直線偏光」という)の平行光束が入射するものとする。したがって、空間光変調器3にも、X方向に細長い矩形状の断面を有し且つ
図1の紙面に平行な方向に偏光した直線偏光の平行光束が入射する。
【0047】
偏光ユニット5は、
図5に示すように、光軸AXに沿って互いに隣接するように配置されて、それぞれが入射光の断面に沿った方向であるX方向に沿って移動可能な一対の旋光部材51および52と、これら一対の旋光部材51および52をX方向に移動させる駆動部DR51およびDR52とを備えている。旋光部材51,52は、平行平面板の形態を有し、旋光性を有する光学材料である結晶材料、例えば水晶により形成されている。旋光部材51,52の入射面(ひいては射出面)は光軸AXと直交し、その結晶光学軸は光軸AXの方向とほぼ一致(すなわち入射光の進行方向であるZ方向とほぼ一致)している。また、駆動部DR51,DR52は、旋光部材51,52を移動させるためのアクチュエータと、旋光部材51,52の移動量を検知するためのエンコーダとを備えており、制御系CRからの制御信号に基づいて旋光部材51,52を移動させる。
【0048】
旋光部材51,52は、
図6に示すように、X方向に沿った一辺とY方向に沿った他辺とを有する矩形状の外形形状を有している。換言すれば、旋光部材51;52は、Y方向に沿った一対のエッジ51a,51b;52a,52bを有する。旋光部材51と52とは、互いに異なる厚さを有し、ひいては互いに異なる偏光変換特性を有する。
【0049】
具体的に、旋光部材51は、Y方向に偏光方向を有するY方向直線偏光の光が入射した場合、Y方向を+45度(
図6の紙面において時計廻りに45度)回転させた+45度斜め方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。一方、旋光部材51の射出側に隣接して配置された旋光部材52は、Y方向直線偏光の光が入射した場合、Y方向を+90度回転させたX方向に偏光方向を有するX方向直線偏光の光を射出するように厚さが設定されている。
【0050】
偏光ユニット5には、
図6に示すように、光軸AXを中心してX方向に細長い矩形状の断面を有するY方向直線偏光の平行光束F1が入射する。この場合、入射光束F1のうち、旋光部材51の+X方向側のエッジ51bよりも+X方向側の光束、すなわち矩形状の断面を有する第1部分光束F11は、旋光部材51および52を経ることなくリレー光学系6へ向かう。旋光部材51の+X方向側のエッジ51bと旋光部材52の+X方向側のエッジ52bとにより規定される光束、すなわち第1部分光束F11に隣接して矩形状の断面を有する第2部分光束F12は、旋光部材52を経ることなく旋光部材51だけを経てリレー光学系6へ向かう。
【0051】
旋光部材51の−X方向側のエッジ51aと旋光部材52の+X方向側のエッジ52bとにより規定される光束、すなわち第2部分光束F12に隣接して矩形状の断面を有する第3部分光束F13は、旋光部材51および52を経てリレー光学系6へ向かう。旋光部材51の−X方向側のエッジ51aよりも−X方向側の光束、すなわち第3部分光束F13に隣接して矩形状の断面を有する第4部分光束F14は、旋光部材51を経ることなく旋光部材52だけを経てリレー光学系6へ向かう。
【0052】
その結果、偏光ユニット5の直後における光束F1は、
図7に示すような偏光状態になる。すなわち、第1部分光束F11は、旋光部材51および52の旋光作用を受けないため、Y方向直線偏光のままである。第2部分光束F12は、旋光部材51の旋光作用だけを受けるため、Y方向を+45度回転させた方向に偏光方向を有する+45度斜め方向直線偏光になる。
【0053】
第4部分光束F14は、旋光部材52の旋光作用だけを受けるため、Y方向を+90度回転させたX方向に偏光方向を有するX方向直線偏光になる。第3部分光束F13は、旋光部材51の旋光作用および旋光部材52の旋光作用を順次受ける。このため、第3部分光束F13は、Y方向を+45度回転させた方向を+90度回転させた方向、すなわちY方向を−45度回転させた方向に偏光方向を有する−45度斜め方向直線偏光になる。
【0054】
偏光ユニット5において第1部分光束F11が占める部分領域R11は、
図8に示すように、空間光変調器3の配列面における有効反射領域のうちの矩形状の部分領域R01に対応している。同様に、部分光束F12,F13,F14が占める部分領域R12,R13,R04は、矩形状の部分領域R02,R03,R04にそれぞれ対応している。空間光変調器3の配列面における部分領域R01〜R04に外接する矩形状の領域R0は、偏光ユニット5において入射光束F1が占める領域R1に対応している。
【0055】
本実施形態では、空間光変調器3の複数のミラー要素3aのうち、第1部分領域R01に位置する第1ミラー要素群S01に属する複数のミラー要素3aのそれぞれの姿勢を、
図9(a)に示すように、第1ミラー要素群S01を経た光がマイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳面上の一対の瞳領域R11a,R11bへ導かれるように駆動部3cによって制御している。前述したように、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳面は、リレー光学系4の瞳面4cと光学的に共役な面であり、ひいては空間光変調器3の配列面の光学的なフーリエ変換面である。一対の瞳領域R11a,R11bは、例えば光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた領域である。
【0056】
第4部分領域R04に位置する第4ミラー要素群S04に属する複数のミラー要素3aのそれぞれの姿勢は、第4ミラー要素群S04を経た光が照明瞳面上の一対の瞳領域R14a,R14bへ導かれるように駆動部3cによって制御されている。一対の瞳領域R14a,R14bは、例えば光軸AXを挟んでZ方向に間隔を隔てた領域である。第2部分領域R02に位置する第2ミラー要素群S02に属する複数のミラー要素3aのそれぞれの姿勢、および第3部分領域R03に位置する第3ミラー要素群S03に属する複数のミラー要素3aのそれぞれの姿勢は、これら第3および第4ミラー要素群S03,S04を経た光が照明瞳面上の一対の瞳領域R12a,R12b、および一対の瞳領域R13a,R13bへ導かれるように駆動部3cによって制御されている。
【0057】
一対の瞳領域R12a,R12bは、例えば光軸AXを挟んで−X方向および+Z方向と45度をなす方向に間隔を隔てた領域である。一対の瞳領域R13a,R13bは、例えば光軸AXを挟んで+X方向および+Z方向と45度をなす方向に間隔を隔てた領域である。こうして、空間光変調器3は、矩形状の断面を有する平行光束に基づいて、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に、例えば8つの円形状の実質的な面光源P11a,P11b;P12a,P12b;P13a,P13b;P14a,P14bからなる8極状の瞳強度分布21aを形成する。
【0058】
すなわち、空間光変調器3の第1ミラー要素群S01を経た光は、偏光ユニット5の旋光部材51および52を経ることなく、瞳領域R11a,R11bを占める面光源P11a,P11bを形成する。一対の面光源P11a,P11bを形成する光は、旋光部材51および52を経ていないので、Z方向直線偏光(
図7におけるY方向直線偏光に対応)である。第4ミラー要素群S04を経た光は、旋光部材51を経ることなく旋光部材52だけを経て、瞳領域R14a,R14bを占める面光源P14a,P14bを形成する。一対の面光源P14a,P14bを形成する光は、旋光部材52だけを経ているので、X方向直線偏光(
図7におけるX方向直線偏光に対応)である。
【0059】
第2ミラー要素群S02を経た光は、旋光部材52を経ることなく旋光部材51だけを経て、瞳領域R12a,R12bを占める面光源P12a,P12bを形成する。一対の面光源P12a,P12bを形成する光は、旋光部材51だけを経ているので、
図9の紙面においてZ方向を時計廻りに+45度回転させた方向に偏光方向を有する+45度斜め方向直線偏光(
図7における+45度斜め方向直線偏光に対応)である。
【0060】
第3ミラー要素群S03を経た光は、旋光部材51および旋光部材52を経て、瞳領域R13a,R13bを占める面光源P13a,P13bを形成する。一対の面光源P13a,P13bを形成する光は、旋光部材51および52の双方を経ているので、
図9の紙面においてZ方向を時計廻りに−45度回転させた方向に偏光方向を有する−45度斜め方向直線偏光(
図7における−45度斜め方向直線偏光に対応)である。
【0061】
こうして、空間光変調器3と偏光ユニット5との協働作用により、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、8極状で周方向偏光状態の瞳強度分布21aが形成される。さらに、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳と光学的に共役な別の照明瞳の位置、すなわち結像光学系10の瞳位置および投影光学系PLの瞳位置(開口絞りASが配置されている位置)にも、瞳強度分布21aに対応する8極状で周方向偏光状態の瞳強度分布が形成される。
【0062】
一般に、周方向偏光状態の輪帯状や複数極状(2極状、4極状、8極状など)の瞳強度分布に基づく周方向偏光照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がs偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、s偏光とは、入射面に対して垂直な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に垂直な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。入射面とは、光が媒質の境界面(被照射面:ウェハWの表面)に達したときに、その点での境界面の法線と光の入射方向とを含む面として定義される。その結果、周方向偏光照明では、投影光学系の光学性能(焦点深度など)の向上を図ることができ、ウェハ(感光性基板)上において高いコントラストのマスクパターン像を得ることができる。
【0063】
さて、本実施形態では、たとえば
図9(b)に示すように、8極状の瞳強度分布21aとは異なる偏光分布を有する8極状の瞳強度分布21bを形成することができる。この8極状の瞳強度分布21bは、例えば8つの円形状の実質的な面光源P11a,P11b;P12a,P12b;P13a,P13b;P14a,P14bからなり、面光源P12a,P12b;P13a,P13bの偏光方向が瞳強度分布21aに比べて90度だけ回転している偏光分布を持っている。
【0064】
この
図9(b)に示す瞳強度分布21bを形成するには、たとえば第2部分領域R02に位置する第2ミラー要素群S02に属する複数のミラー要素3aのそれぞれの姿勢を、第2ミラー要素群S02を経た光が照明瞳面上の一対の瞳領域R13a,R13bに導かれるように設定し、且つ第3部分領域R03に位置する第3ミラー要素群S03に属する複数のミラー3aのそれぞれの姿勢を、第3ミラー要素群S03を経た光が照明瞳面上の一対の瞳領域R12a,R12bに導かれるように設定すればよい。
【0065】
また、第1〜第2部分光束F11,F12が占める部分領域R11,R12を旋光部材52が覆うように位置決めし、且つ偏光ユニット5(或いは空間光変調器3)にX方向直線偏光を入射させても、
図9(b)に示す瞳強度分布21bを形成することができる。なお、偏光ユニット5(或いは空間光変調器3)に入射する偏光方向の向きまたは偏光度を制御する技術は、米国特許第7,423,731号公報に開示される偏光状態切換部を参照することができる。
【0066】
本実施形態では、姿勢が個別に制御される多数のミラー要素3aを有する空間光変調器3を用いているので、瞳強度分布の形状(大きさを含む広い概念)の変更に関する自由度は高い。一例として、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器3を制御するだけで、
図10に示すように、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に輪帯状で周方向偏光状態の瞳強度分布22を形成することができる。
【0067】
図10に示す例では、第1ミラー要素群S01を経た光が、照明瞳面において光軸AXを挟んでX方向に間隔を隔てた一対の円弧状の瞳領域R21a,R21bへ導かれて、実質的な面光源P21a,P21bを形成する。第4ミラー要素群S04を経た光は、光軸AXを挟んでY方向に間隔を隔てた一対の円弧状の瞳領域R24a,R24bへ導かれて、実質的な面光源P24a,P24bを形成する。第2ミラー要素群S02を経た光は、光軸AXを挟んで−X方向および+Z方向と45度をなす方向に間隔を隔てた一対の円弧状の瞳領域R22a,R22bへ導かれて、実質的な面光源P22a,P22bを形成する。
【0068】
第3ミラー要素群S03を経た光は、光軸AXを挟んで+X方向および+Z方向と45度をなす方向に間隔を隔てた一対の円弧状の瞳領域R23a,R23bへ導かれて、実質的な面光源P23a,P23bを形成する。瞳領域R21a,R21b;R22a,R22b;R23a,R23b;R24a,R24bは、光軸AXを中心とした円環領域を周方向に8分割して得られる円弧状の領域である。こうして、例えば8つの円弧状の実質的な面光源P21a,P21b;P22a,P22b;P23a,P23b;P24a,P24bからなる輪帯状で周方向偏光状態の瞳強度分布22が形成される。
【0069】
また、本実施形態では、姿勢が個別に制御される多数のミラー要素3aを有する空間光変調器3を用いているので、瞳強度分布の偏光状態の変更に関する自由度は高い。一例として、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器3を制御するだけで、
図11に示すように、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に8極状で径方向偏光状態の瞳強度分布23を形成することができる。
【0070】
図11に示す例では、第1ミラー要素群S01を経た光が、旋光部材51および52を経ることなく、照明瞳面上の瞳領域R14a,R14bを占める面光源P31a,P31bを形成する。一対の面光源P31a,P31bを形成する光は、旋光部材51および52を経ていないので、Z方向直線偏光である。第4ミラー要素群S04を経た光は、旋光部材51を経ることなく旋光部材52だけを経て、瞳領域R11a,R11bを占める面光源P34a,P34bを形成する。一対の面光源P34a,P34bを形成する光は、旋光部材52だけを経ているので、X方向直線偏光である。
【0071】
第2ミラー要素群S02を経た光は、旋光部材52を経ることなく旋光部材51だけを経て、瞳領域R13a,R13bを占める面光源P32a,P32bを形成する。一対の面光源P13a,P13bを形成する光は、旋光部材51だけを経ているので、
図11の紙面においてZ方向を時計廻りに+45度回転させた方向に偏光方向を有する+45度斜め方向直線偏光である。
【0072】
第3ミラー要素群S03を経た光は、旋光部材51および旋光部材52を経て、瞳領域R12a,R12bを占める面光源P33a,P33bを形成する。一対の面光源P33a,P33bを形成する光は、旋光部材51および52の双方を経ているので、
図11の紙面においてZ方向を時計廻りに−45度回転させた方向に偏光方向を有する−45度斜め方向直線偏光である。
【0073】
こうして、例えば8つの円形状の実質的な面光源P31a,P31b;P32a,P32b;P33a,P33b;P34a,P34bからなる8極状で径方向偏光状態の瞳強度分布23が形成される。また、図示を省略するが、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器3を制御するだけで、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に輪帯状で径方向偏光状態の瞳強度分布を形成することもできる。
【0074】
一般に、径方向偏光状態の輪帯状や複数極状の瞳強度分布に基づく径方向偏光照明では、最終的な被照射面としてのウェハWに照射される光がp偏光を主成分とする偏光状態になる。ここで、p偏光とは、上述のように定義される入射面に対して平行な方向に偏光方向を有する直線偏光(入射面に平行な方向に電気ベクトルが振動している偏光)のことである。その結果、径方向偏光照明では、ウェハWに塗布されたレジストにおける光の反射率を小さく抑えて、ウェハ(感光性基板)上において良好なマスクパターン像を得ることができる。
【0075】
また、本実施形態では、空間光変調器3の作用により、例えば8極状の瞳強度分布21aを構成する8つの面光源のうち、一対の面光源P11aとP11bとの間、P12aとP12bとの間、P13aとP13bとの間、P14aとP14bとの間で、周方向偏光状態を維持しつつ光強度を相対的に変化させることができる。ただし、空間光変調器3の作用だけでは、例えば面光源P11aと面光源P11b以外の他の面光源との間で、偏光状態を維持しつつ光強度を相対的に変化させることはできない。
【0076】
本実施形態では、空間光変調器3と偏光ユニット5との協働作用により、例えば8極状の瞳強度分布21aを構成する8つの面光源の間で、周方向偏光状態を維持しつつ光強度を相対的に変化させることができる。具体的に、旋光部材51だけを
図6に示す位置から+X方向側へ移動させると、第1部分光束F11の断面積(部分領域R11の面積)が減少し、第2部分光束F12の断面積(部分領域R12の面積)が増大する。その結果、一対の面光源P11a,P11bの光強度を減少させ、一対の面光源P12a,P12bの光強度を増大させることができる。
【0077】
旋光部材51だけを
図6に示す位置から−X方向側へ移動させると、第2部分光束F12の断面積および第4部分光束F14の断面積(部分領域R14の面積)が減少し、第1部分光束F11の断面積および第3部分光束F13の断面積(部分領域R13の面積)が増大する。その結果、一対の面光源P12a,P12bの光強度および一対の面光源P14a,P14bの光強度を減少させ、一対の面光源P11a,P11bの光強度および一対の面光源P13a,P13bの光強度を増大させることができる。
【0078】
旋光部材52だけを
図6に示す位置から+X方向側へ移動させると、第2部分光束F12の断面積が減少し、第3部分光束F13の断面積が増大する。その結果、一対の面光源P12a,P12bの光強度を減少させ、一対の面光源P13a,P13bの光強度を増大させることができる。旋光部材52だけを
図6に示す位置から−X方向側へ移動させると、第3部分光束F13の断面積が減少し、第2部分光束F12の断面積が増大する。その結果、一対の面光源P13a,P13bの光強度を減少させ、一対の面光源P12a,P12bの光強度を増大させることができる。
【0079】
このように、一対の旋光部材51および52のうちの少なくとも一方をX方向に移動させることにより、第1部分光束F11の断面積と第2部分光束F12の断面積と第3部分光束F13の断面積と第4部分光束F14の断面積との比を変化させることができ、ひいては8極状の瞳強度分布21aを構成する8つの面光源P11a,P11b;P12a,P12b;P13a,P13b;P14a,P14bの間で、周方向偏光状態を維持しつつ光強度を相対的に変化させることができる。同様に、輪帯状の瞳強度分布22および8極状の瞳強度分布23においても、偏光状態を維持しつつ複数の面光源の間で光強度を相対的に変化させることができる。
【0080】
また、本実施形態では、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置に配置された偏光ユニット5により、瞳強度分布を構成する各面光源の偏光状態をそれぞれ設定している。その結果、偏光ユニット5の偏光部材(旋光部材51,52)のエッジのデフォーカスによる悪影響を低減でき、瞳強度分布を構成する各面光源の偏光状態を所望の状態にすることができる。ちなみに、空間光変調器の配列面と光学的に共役な位置からデフォーカスした位置に偏光ユニット5を配置する手法では、特定の面光源へ向かう光が通過すべき偏光部材(旋光部材)を経た光と、別の特定の面光源へ向かう光が通過すべき偏光部材(旋光部材)を経た光とが混在してしまい、特定の面光源の偏光状態が所望の偏光状態から外れ、ひいては瞳強度分布の偏光状態に影響を及ぼしてしまう。
【0081】
また、本実施形態では、空間光変調器3よりも被照射面側の光路中における、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置に配置された偏光ユニット5により、瞳強度分布を構成する各面光源の偏光状態をそれぞれ設定している。その結果、空間光変調器3よりも下流側(被照射面側)の照明光路に配置された後続光学系によるリターデーション(偏光方向が互いに直交する一対の直線偏光成分の間に位相差が生じる現象)に起因して、斜め方向(
図2における瞳面(XZ平面)でX方向およびZ方向とは異なる方向)の直線偏光が楕円偏光化してしまうことを低減することができる。
【0082】
特に、空間光変調器3の配列面の前後の光軸を含む面(YZ平面)または当該面(YZ平面)と直交し且つ光軸を含む面(XZ平面)に沿わない偏光方向を持つ直線偏光(斜め偏光)が楕円偏光化しやすい。
【0083】
ここで、光源から偏光ユニット5までの照明光路に、典型的には、リターデーションの影響を受けにくい縦方向(
図2におけるY方向)直線偏光または横方向(
図2におけるX方向)直線偏光の光を通過させると、この光路における直線偏光の楕円偏光化は生じにくくなる。
【0084】
以上のように、本実施形態の照明光学系(2〜10)では、光学部材の交換を伴うことなく、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳に形成される瞳強度分布の形状および偏光状態の変更に関して高い自由度を実現することができる。本実施形態の露光装置(2〜WS)では、瞳強度分布の形状および偏光状態の変更に関して高い自由度を有する照明光学系(2〜10)を用いて、転写すべきマスクMのパターンの特性に応じて実現された適切な照明条件のもとで、微細パターンをウェハWに正確に転写することができる。
【0085】
上述の実施形態において、制御系CRは、たとえば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オンリ・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなるいわゆるワークステーション(又はマイクロコンピュータ)等から構成することができ、装置全体を統括して制御することができる。また、制御系CRには、例えばハードディスクから成る記憶装置、キーボード,マウス等のポインティングデバイス等を含む入力装置,CRTディスプレイ(又は液晶ディスプレイ)等の表示装置、及びCD(compact disc),DVD(digital versatile disc),MO(magneto-optical disc)あるいはFD(flexible disc)等の情報記憶媒体のドライブ装置が、外付けで接続されていてもよい。
【0086】
本実施形態では、記憶装置には、投影光学系PLによってウェハW上に投影される投影像の結像状態が最適(例えば収差又は線幅が許容範囲内)となる瞳強度分布(照明光源形状)に関する情報、これに対応する照明光学系、特に空間光変調器3のミラー要素の制御情報等を格納してもよい。ドライブ装置には、後述する瞳強度分布の設定を行うためのプログラム等が格納された情報記憶媒体(以下の説明では便宜上CD−ROMとする)がセットされていてもよい。なお、これらのプログラムは記憶装置にインストールされていても良い。制御系CRは、適宜、これらのプログラムをメモリ上に読み出す。
【0087】
制御系CRは、たとえば以下の手順で空間光変調器3および偏光ユニット5を制御することができる。なお、以下の説明に際して、実施形態の露光装置は、
図12に示す瞳強度分布21cを形成するものとする。
図12の瞳強度分布21cは、8つの実質的な面光源P11a,P11b;P12a,P12b;P13a,P13b;P14a,P14bからなっており、一対の面光源P11a,P11bがZ方向直線偏光、一対の面光源P14a,P14bがX方向直線偏光、一対の面光源P12a,P12bが−45度斜め方向直線偏光、一対の面光源P13a,P13bが+45度斜め方向直線偏光となっている。そして、面光源P12a,P12bおよびP13a,P13bが、面光源P11a,P11bおよびP14a,P14bに比べて倍の光強度を有している。
【0088】
瞳強度分布は、たとえば瞳面を格子状に複数の区画に分割し、それぞれの区画の光強度および偏光状態を用いて数値として表現した形式(広義のビットマップ形式)で表現することができる。ここで、空間光変調器3のミラー要素数をN個とし、瞳強度分布の分割された区画数をM個とすると、個々のミラー要素により反射されるN本の光線を適当に組み合わせてM個の区画に導く、換言すれば、M個の区画により構成されるM個の輝点上でN本の光線を適当に重ね合わせることで、瞳強度分布(二次光源)が形成(設定)される。
【0089】
まず、制御部CRは、目標となる瞳強度分布21cに関する情報を記憶装置から読み出す。次に、読み出された瞳強度分布21cに関する情報から、例えば
図13(a)〜(d)に示すように偏光状態ごとの強度分布を形成するのに、それぞれ何本の光線が必要なのかを算出する。
図13(a)はZ方向直線偏光の瞳強度分布であり、
図13(b)はX方向直線偏光の瞳強度分布であり、
図13(c)は−45度斜め方向直線偏光の瞳強度分布であり、
図13(d)は+45度斜め方向直線偏光の瞳強度分布である。
【0090】
このとき、空間光変調器3のミラー要素数Nを64×64=4096個であるとし、瞳面の区画数を25×25=625個であると仮定する。面光源P11a,P11bは、それぞれ瞳面上の30区画を占め、面光源P14a,P14bは、それぞれ瞳面上の12区画を占め、面光源P12a,P12bおよびP13a,P13bは、それぞれ瞳面上の4区画を占めている。
【0091】
そして、面光源P12a,P12bおよびP13a,P13bが面光源P11a,P11bおよびP14a,P14bに比べて倍の光強度を有している仮定であるため、面光源P11a,P11bおよびP14a,P14bの1つの区画には、4096/116=35個のミラー要素からの光が到達する。また、面光源P12a,P12bおよびP13a,P13bの1つの区画には、70個のミラー要素からの光が到達する。なお、4096/116の剰余となる36個のミラー要素からの光は光学系の有効領域外へ導かれ、瞳強度分布の形成には寄与しないものとする。
【0092】
してみれば、Z方向直線偏光を生成するために必要なミラー要素数Nzは、35×30×2=2100個、X方向直線偏光を生成するために必要なミラー要素数Nxは、35×12×2=840個、−45度斜め方向直線偏光を生成するために必要なミラー要素数N-45は、70×4×2=560個、+45度斜め方向直線偏光を生成するために必要なミラー要素数N+45は、70×4×2=560個となる。
【0093】
したがって、制御部CRは、空間光変調器3の複数のミラー要素を、2100個のミラー要素からなる第1ミラー要素群S01、560個のミラー要素からなる第2ミラー要素群S02、560個のミラー要素からなる第3ミラー要素群S03、および840個のミラー要素からなる第4ミラー要素群S04に仮想的に分割し、それぞれのミラー要素群S01〜S04が位置する部分領域R01〜R04およびこれらの部分領域に対応する部分領域R11〜R14を設定する。そして、制御部CRは、偏光ユニット5の旋光部材51および52を駆動して、部分領域R12およびR13に旋光部材51を位置させ、部分領域R13およびR14に旋光部材52を位置させる。
【0094】
また、制御部CRは、第1ミラー要素群S01および第4ミラー要素群S04のミラー要素3aを駆動して、第1ミラー要素群S01からの光が面光源P11a,P11bに向かい、第4ミラー要素分S04からの光が面光源P14a,P14bに向かうように設定する。そして、第2ミラー要素群S02および第3ミラー要素群S03のミラー要素3aを駆動して、第2ミラー要素群S02からの光が面光源P12a,P12bに向かい、第3ミラー要素群S03からの光が面光源P13a,P13bに向かうように設定する。
【0095】
このとき、第2ミラー要素群S02の2つのミラー要素3aからの光が、面光源P12a,P12bの1つの区画に向かい、第3ミラー要素群S03の2つのミラー要素3aからの光が、面光源P13a,P13bの1つの区画に向かうように設定する。この制御部CRによる空間光変調器3および偏光ユニット5の制御により、
図12の瞳強度分布21cを形成できる。
【0096】
なお、上述の実施形態では、一対の旋光部材51および52を入射光束F1に作用させる例を示している。しかしながら、これに限定されることなく、例えば旋光部材51を光路から退避させて、旋光部材52だけを入射光束F1に作用させることもできる。この場合、旋光部材52のエッジ52bにより、入射光束F1が2つの部分光束に分割される。一方の部分光束(
図6の部分光束F11+F12に対応)は、旋光部材52を経ることなく、
図14に示すように、照明瞳面上の瞳領域R11a,R11bへ導かれ、Z方向直線偏光の面光源P11a,P11bを形成する。
【0097】
他方の部分光束(
図6の部分光束F13+F14に対応)は、旋光部材52を経て、照明瞳面上の瞳領域R14a,R14bへ導かれ、X方向直線偏光の面光源P14a,P14bを形成する。こうして、マイクロフライアイレンズ7の直後の照明瞳には、例えば4つの円形状の実質的な面光源P11a,P11b;P14a,P14bからなる4極状で周方向偏光状態の瞳強度分布24が形成される。旋光部材52をX方向に移動させることにより、周方向偏光状態を維持しつつ4極状の瞳強度分布24を構成する4つの面光源の間で光強度を相対的に変化させることができる。
【0098】
上述の実施形態では、8極状で周方向偏光状態の瞳強度分布21aを形成する例を示している。しかしながら、これに限定されることなく、制御系CRからの指令にしたがって空間光変調器3を制御するだけで、
図15に示すように、8極状の瞳強度分布21aに中心極P1cが付加された9極状の瞳強度分布25を形成することができる。
図15に示す例では、第1部分光束F11の一部、第2部分光束F12の一部、第3部分光束F13の一部、および第4部分光束F14の一部が、例えば照明瞳面上の光軸AXを中心とした円形状の瞳領域R1cへ導かれ、4つの直線偏光成分が混在した実質的に非偏光状態の面光源P1cを形成する。
【0099】
あるいは、
図16に示すように、照明光路に対して挿脱自在な非偏光化素子53を偏光ユニット5に付設することにより、9極状の瞳強度分布25を形成することもできる。非偏光化素子53は、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置またはその近傍において挿脱自在である。非偏光化素子53は、たとえば光の入射側から順に、水晶のような複屈折性材料からなり、光線の通過位置によって厚みが異なる第1偏角プリズム(くさび板)と、石英ガラスのような非複屈折性材料からなり、第1偏角プリズムの偏角作用によって曲がった光線を元に戻すための補正板として機能する第2偏角プリズムとにより構成することができる。なお、米国特許第7,423,731号公報に開示されるデポラライザを参照することもできる。
【0100】
図16の例では、入射光束F1のうち、旋光部材51のエッジ51bよりも+X方向側の光束は、非偏光化素子53を経ることなくリレー光学系6へ向かう第1部分光束F11と、非偏光化素子53を経てリレー光学系6へ向かう第5部分光束F15とに分割される。
【0101】
第1部分光束F11は、旋光部材51,52および非偏光化素子53を経ることなく、
図15に示す瞳領域R11a,R11bへ導かれ、Z方向直線偏光の面光源P11a,P11bを形成する。第5部分光束F15は、旋光部材51,52を経ることなく非偏光化素子53だけを経て、
図15に示す瞳領域R1cへ導かれ、非偏光状態の面光源P1cを形成する。なお、
図16の例において、旋光部材51を光路から退避させて旋光部材52および非偏光化素子53を入射光束F1に作用させることにより、
図17に示すように、4極状の瞳強度分布24に非偏光状態の中心極P1cが付加された5極状の瞳強度分布26を形成することもできる。
【0102】
上述の実施形態では、偏光ユニット5が、Y方向に延びる一対のエッジ51a,51b;52a,52bを有し且つX方向に移動可能な旋光部材51,52を備える例を示している。この場合、第1部分光束F11の断面積と第2部分光束F12の断面積と第3部分光束F13の断面積と第4部分光束F14の断面積との比を変化させることはできるが、各部分光束の断面積を互いに独立に制御することはできない。
図18には、台形状の外形を有する一対の旋光部材51Aおよび52Aからなる偏光ユニット5Aを用いて各部分光束の断面積を互いに独立に制御する例を示している。
【0103】
図18に示す例において、旋光部材51Aは、入射光束F1の矩形状の断面の一方の辺が延びるY方向と斜め交差する方向に延びる第1エッジ51Aaと、Y方向と斜め交差し且つ第1エッジ51Aaが延びる方向とは異なる方向に延びる第2エッジ51Abとを有する。同様に、旋光部材51Aの射出側に隣接して配置された旋光部材52Aは、Y方向と斜め交差する方向に延びる第1エッジ52Aaと、Y方向と斜め交差し且つ第1エッジ52Aaが延びる方向とは異なる方向に延びる第2エッジ52Abとを有する。旋光部材51A,52Aは、X方向およびY方向に移動可能であり、ひいては入射光束F1の断面(XY平面)に沿って二次元的に移動可能である。
【0104】
図18に示す例では、入射光束F1の断面の一方の辺が延びるY方向と斜め交差する方向に延びるエッジ51Aa,51Ab;52Aa,52Abを有する旋光部材51A;52Aを入射光束F1の断面に沿って二次元的に移動させることにより、第1部分光束F11の断面積と第2部分光束F12の断面積と第3部分光束F13の断面積と第4部分光束F14の断面積とを互いに独立に制御することができる。その結果、例えば8極状の瞳強度分布21aを構成する各面光源の光強度の相対的変化に関する自由度をさらに向上させることができる。この構成によれば、入射光束F1の光強度分布が不均一であって経時的に変化する場合にも、例えば8極状の瞳強度分布21aを構成する各面光源の光強度の相対的関係を所望の関係に維持することができる。
【0105】
なお、
図18では、偏光ユニット5Aを構成する一対の旋光部材51A,52Aがともに台形状の外形を有する例を示している。しかしながら、これに限定されることなく、偏光ユニットを構成する一対の旋光部材の外形形状については様々な形態が可能である。例えば、
図19に示すように、
図18の旋光部材52Aに代えて、Y方向に延びる第1エッジ52Baと、Y方向と斜め交差する方向に延びる第2エッジ52Bbとを有する旋光部材52Bを備えた偏光ユニット5Bを用いる変形例も可能である。また、
図20に示すように、
図19の旋光部材51Aに代えて、Y方向に延びる第1エッジ51Baと、Y方向と斜め交差する方向に延びる第2エッジ51Bbとを有する旋光部材51Bを備えた偏光ユニット5Cを用いる変形例も可能である。
【0106】
ところで、上述の実施形態では、光軸AXに沿った平行光束が偏光ユニット5に入射するものとしているが、実際には光軸AXに対して斜めに入射する(旋光部材51,52に対して垂直入射しない)光も存在する。この場合、水晶により形成された旋光部材51または52に垂直入射した直線偏光の光は直線偏光状態を維持しつつ偏光方向だけが変化するが、旋光部材51または52に斜め入射した直線偏光の光は楕円偏光化して射出される。これは、旋光部材51または52に斜め入射した光は水晶の結晶光学軸に対して斜めに進行するため、位相差が付与されるからである。
【0107】
そこで、
図21に示すように、例えば旋光部材52に代えて、右回り旋光性材料(右水晶)で形成された第1旋光部材52Rと、第1旋光部材52Rの射出側に隣接して配置されて左回り旋光性材料(左水晶)から形成された第2旋光部材52Lとを備えた旋光部材52Cを用いる構成例も可能である。
図21の例では、第1旋光部材52Rに垂直入射した縦偏光の光は斜め偏光に変換された後、第2旋光部材52Lにより横偏光の光に変換されて射出される。第1旋光部材52Rに斜め入射した縦偏光の光は楕円偏光化に変換された後、第2旋光部材52Lにより横偏光の光に変換されて射出される。すなわち、旋光部材52Cに斜め入射した光も、垂直入射した光と同じ偏光状態で旋光部材52Cから射出される。
【0108】
また、
図21の構成に代えて(あるいは
図21の構成に加えて)、
図22に示すように、空間光変調器3の配列面の光学的なフーリエ変換面であるリレー光学系4の瞳面4cの位置またはその近傍に、入射位置に応じて異なる位相差を入射光に与える位相差付与部材11を配置する構成も可能である。
図22の構成では、位相差付与部材11での入射位置は、リレー光学系4の後側レンズ群4bの作用により、偏光ユニット5での入射角度に変換される。
【0109】
上述したように、偏光部材51,52への入射角度に応じて楕円偏光化する量は変化する。しかしながら、
図22の構成では、偏光ユニット5において入射角度に応じて楕円偏光化する量の変化を相殺(あるいは補償)する位相差が位相差付与部材11により予め与えられるので、偏光ユニット5に斜め入射した光も、垂直入射した光と同じ偏光状態で偏光ユニット5から射出される。なお、偏光ユニット5よりも後側の光路中において空間光変調器3の配列面の光学的なフーリエ変換面に位相差付与部材11を配置する構成も可能である。
【0110】
また、
図23(a)〜(c)に示すように、例えば旋光部材52に代えて、照明光学系の光軸AXに直交する面内(XY平面内)の第1方向(ここではY方向)に光学軸を持つ1/2波長板52D1と、照明光学系の光軸AXに直交する面内(XY平面内)の第2方向に光学軸を持つ1/2波長板52D2とを組み合わせて偏光回転器52Dを得る構成も可能である。ここで、
図23(b)は1/2波長板52D1のXY平面図であり、
図23(c)は1/2波長板52D2のXY平面図である。
図23(c)に示す通り、1/2波長板52D2の光学軸の方向である第2方向は、第1方向に対して角度θだけ回転した方位となっている。
【0111】
これら1/2波長板52D1および52D2の作用を、ミュラー行列を用いて説明する。ミュラー行列については、例えば文献"Edited By Michael Bass et al. : HANDBOOK OF OPTICS, Chapter 22: Polarimetry, pp. 22-8 to 22-14, 米国 (McGRAW-HILL, Inc. 1995)"に開示されている。
【0112】
1/2波長板52D1の偏光作用を表すミュラー行列は以下の(1)式で表され、1/2波長板52D2の偏光作用を表すミュラー行列は以下の(2)式で表される。
【0114】
そして、これら1/2波長板52D1および52D2を組み合わせた光学素子の偏光作用を表すミュラー行列は以下の(3)式で表される。
【0116】
上記(3)式の右辺は、旋光子の偏光作用を表すミュラー行列と同じものである。すなわち、1/2波長板52D1および52D2を組み合わせた光学素子は旋光子(旋光部材)と等価な光学素子である。なお、1/2波長板52D1の光学軸の方位に対する1/2波長板52D2の光学軸の方位を45度(θ=45度)に設定すると、入射直線偏光の偏光方向を90度だけ回転させる旋光子となり、θの設定角度を変更することにより、入射直線偏光の偏光方向を任意の角度だけ回転させることができる。
図23の変形例では、1/2波長板52D1と52D2とを積層体にして一体的に回転させることもできるし、1/2波長板52D1と52D2とを別体にして相対的に回転させることもできる。
【0117】
図23の変形例においては、光学軸が光の入射方向に向けられた旋光子ではなく、光学軸が光の入射方向とほぼ直交する面内に向けられた波長板を用いているため、所望の偏光変調を維持できる許容入射角度範囲を広く確保できる。したがって、偏光ユニット5(偏光回転器52D)に入射する光束に角度分布があっても、この角度分布内の全ての光線に楕円度を変化させないで偏光回転作用を与えることができる。ひいては、瞳強度分布を構成する各面光源を所望の偏光状態に設定することが容易である。
【0118】
上述の実施形態では、空間光変調器3の配列面と光学的に共役な位置に互いに隣接する旋光部材51および52を配置するものとしているが、実際には一対の旋光部材51と52とを同じ位置に配置することはできない。そこで、具体的には、
図24に示すように、空間光変調器3の配列面3dと光学的に共役な位置3eを挟んで一対の旋光部材51および52を配置することができる。共役な位置3eは、配列面3dと光学的に共役な面3fとリレー光学系4の光軸AXとが交差する点として定義される。
【0119】
配列面3dと光学的に共役な面3fは、配列面3dと同様に、光軸AXと直交する面に対して傾いている。光軸AXと直交する面に対する面3fの傾きは、リレー光学系4の結像倍率の絶対値が大きくなるにつれて小さくなる。旋光部材51は位置3eよりも僅かに前側の位置において光軸AXと直交する面PLN1に沿って配置され、旋光部材52は位置3eよりも僅かに後側の位置において光軸AXと直交する面PLN2に沿って配置される。このとき、一対の旋光部材51および52を、それぞれ面PLN1およびPLN2に沿って移動させても良いし、例えば
図25に示すように、空間光変調器3の配列面3dと共役な面3fと平行な面に沿って移動させてもよい。
【0120】
また、上述の実施形態において、例えば
図26に示すように、空間光変調器3の配列面3dと共役な面3fと平行な面に沿って一対の旋光部材51と52とを配置し、これら一対の旋光部材51と52とを共役な面3fと平行な面に沿って移動させることもできる。このとき、一対の旋光部材51と52とを照明光路に沿った方向において隣接するように設け、かつ共役な面3fを挟むように設けても良い。
【0121】
上述の実施形態では、偏光ユニット5を構成する一対の旋光部材51および52を互いに隣接するように配置している。しかしながら、これに限定されることなく、旋光部材51および52との間にリレー光学系を配置して、旋光部材51と旋光部材52とを互いに光学的に共役にする構成も可能である。
【0122】
上述の実施形態では、旋光部材51,52が水晶により形成されている。しかしながら、これに限定されることなく、旋光性を有する他の適当な光学材料を用いて旋光部材を形成することもできる。
【0123】
上述の実施形態では、偏光ユニット5が、旋光性を有する光学材料により形成された一対の旋光部材(光学素子)51,52により構成されている。しかしながら、これに限定されることなく、偏光ユニットを構成する光学素子の外形形状、数、配置、光学的特性などについては様々な形態が可能である。例えば、入射光を所定の偏光状態の光に変化させる波長板を用いて偏光ユニットを構成したり、入射光から所定の偏光状態の光を選択して射出する偏光子を用いて偏光ユニットを構成したりすることが可能である。なお、偏光子を用いて偏光ユニットを構成する場合、例えば非偏光状態の光を入射させることになる。
【0124】
図27および
図28を参照して、一対の波長板を用いて偏光ユニットを構成する変形例を説明する。
図27を参照すると、偏光ユニット5Dは、偏光ユニット5の旋光部材51と同様の外形形状を有し且つ旋光部材51と同様に配置された1/2波長板54と、旋光部材52と同様の外形形状を有し且つ旋光部材52と同様に配置された1/2波長板55とを備えている。すなわち、1/2波長板54,55は、Y方向に延びる一対のエッジ54a,54b;55a,55bを有する。
【0125】
1/2波長板54は、その標準的な状態においてY方向を時計廻りに+22.5度回転させた方向に光学軸を有し、ひいては旋光部材51と同様の偏光変換特性を有する。1/2波長板55は、その標準的な状態においてY方向を時計廻りに+45度回転させた方向に光学軸を有し、ひいては旋光部材52と同様の偏光変換特性を有する。1/2波長板54,55は、X方向およびY方向に移動可能であり、ひいては入射光束F1の断面(XY平面)に沿って二次元的に移動可能である。さらに、1/2波長板54,55は、入射光束F1の断面(XY平面)に沿って回転可能であり、ひいては光学軸の向きを調整可能である。
【0126】
一対の波長板54,55を用いて構成された偏光ユニット5Dは、一対の旋光部材51,52からなる偏光ユニット5と同様の機能を発揮する。ただし、偏光ユニット5Dでは、偏光ユニット5とは異なり、1/2波長板54,55の光学軸の向きを変化させることにより、例えば8極状の瞳強度分布21aを構成する各面光源の偏光状態を調整することができる。
【0127】
図28を参照すると、偏光ユニット5Eは、偏光ユニット5Aの旋光部材51Aと同様の外形形状を有し且つ旋光部材51Aと同様に配置された1/2波長板54Aと、旋光部材52Aと同様の外形形状を有し且つ旋光部材52Aと同様に配置された1/2波長板55Aとを備えている。すなわち、1/2波長板54A,55Aは、入射光束F1の断面の一方の辺が延びるY方向と斜め交差する方向に延びるエッジ54Aa,54Ab;55Aa,55Abを有する。
【0128】
1/2波長板54Aは、その標準的な状態においてY方向を時計廻りに+22.5度回転させた方向に光学軸を有し、ひいては旋光部材51Aと同様の偏光変換特性を有する。1/2波長板55Aは、その標準的な状態においてY方向を時計廻りに+45度回転させた方向に光学軸を有し、ひいては旋光部材52Aと同様の偏光変換特性を有する。1/2波長板54A,55Aは、X方向およびY方向に移動可能であり、ひいては入射光束F1の断面(XY平面)に沿って二次元的に移動可能である。さらに、1/2波長板54A,55Aは、入射光束F1の断面(XY平面)に沿って回転可能であり、ひいては光学軸の向きを調整可能である。
【0129】
一対の波長板54A,55Aを用いて構成された偏光ユニット5Eは、一対の旋光部材51A,52Aからなる偏光ユニット5Aと同様の機能を発揮する。ただし、偏光ユニット5Eでは、偏光ユニット5Aとは異なり、1/2波長板54A,55Aの光学軸の向きを変化させることにより、例えば8極状の瞳強度分布21aを構成する各面光源の偏光状態を調整することができる。
【0130】
上述の実施形態では、偏光ユニット5を、空間光変調器3よりも被照射面側の光路中における、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面と共役な位置に配置している。しかしながら、これに限定されることなく、偏光ユニット5を、空間光変調器3よりも光源側の光路中における、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面と共役な位置に配置することもできる。
【0131】
図29を参照して、偏光ユニット5を、空間光変調器3よりも光源側の光路中における、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面と共役な位置に配置する変形例を説明する。
図29においては、光源1からの光を受ける光量均一化素子12から空間光変調器3の配列面の光学的なフーリエ変換面であるリレー光学系4の瞳面4cまでの光路を示しており、この
図29に示した光路以外の構成については、
図2を参照することができる。また、上述の実施の形態および変形例と同様の機能を有する部材には同じ符号を付してある。
【0132】
図29において、図示なき光源からの光は、光量均一化素子12に入射して波面分割される。光量均一化素子12で波面分割されたそれぞれの光束は、所定の発散角で光量均一化素子12から射出し、光量均一化素子12の配置面12aに前側焦点位置を持つコンデンサー光学系13を経て、コンデンサー光学系12の後側焦点面12bを重畳的に照明する。そして、この面12bには、実質的に均一な照度分布の照野が形成され、リレー光学系40によって、この照野の像が空間光変調器3に形成される。
【0133】
すなわち、リレー光学系40は、面12bと空間光変調器3とを光学的に共役にしている。また、リレー光学系40は、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面3dと共役な位置3eを、空間光変調器3の光源側の光路に形成していると言える。ここで、空間光変調器3の配列面3dと光学的に共役な位置3eは、光量均一化素子12とコンデンサー光学系13とによって照野が形成される面12bに位置している。なお、光量均一化素子12としては、たとえばフライアイレンズ等の屈折型アレイ素子、反射型アレイ素子、回折型アレイ素子などの波面分割素子を用いることができる。
【0134】
図29の例では、偏光ユニット5の一対の旋光部材51および52を空間光変調器3の配列面3dと共役な位置3eに配置して、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの複数のミラー要素群のそれぞれに対して異なる偏光状態の光束を供給することができる。そして、空間光変調器3の複数のミラー要素群のそれぞれによって瞳強度分布を構成する各面光源を設定する際に、各ミラー要素群に供給される光束の偏光状態をそれぞれ所望の偏光状態とできるため、各面光源の偏光状態を所望の偏光状態に設定できる。
図29の例においても、偏光ユニット5の偏光部材(旋光部材51,52)のエッジのデフォーカスによる悪影響を低減することができる。なお、
図29の例と、上述の各実施形態並びに変形例に示した構成とを組み合わせてもよい。
【0135】
また、上述の実施形態並びに変形例では、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面と共役な位置に偏光ユニット5を配置したが、この偏光ユニット5と、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面の光学的なフーリエ変換面に配置されて、入射する直線偏光を周方向直線偏光または径方向直線偏光に変換する偏光ユニット14とを組み合わせて用いることも可能である。以下、
図30〜
図32を参照して説明する。
【0136】
図30においては、光源1からマイクロフライアイレンズ7までの光路を示しており、この
図30に示した光路以外の構成については、
図2を参照することができる。また、上述の実施の形態および変形例と同様の機能を有する部材には同じ符号を付してある。
図30において、
図2に示した例と異なる構成は、空間光変調器3の配列面の光学的なフーリエ変換面であるリレー光学系4の瞳面4cの位置に、入射する直線偏光を周方向直線偏光または径方向直線偏光に変換する偏光ユニット14を配置した点である。
【0137】
図31に示すように、この偏光ユニット14は、光軸AXを中心とした円形状(または円環状)の外形形状を有し、円の周方向に沿って8分割して得られる8個の分割領域14a〜14hを有する。そして、この偏光ユニット14は、旋光性を有する光学材料である結晶材料、たとえば水晶により形成されている。偏光ユニット14が照明光路中に位置決めされている状態において、偏光ユニット14の入射面および射出面が光軸AXと直交し、その結晶光学軸が光軸AXの方向とほぼ一致(すなわち入射光の進行方向であるZ方向とほぼ一致)している。
【0138】
ここで、分割領域14a,14eの光軸AX方向の厚さは、たとえば偏光ユニット14にY方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合に、Y方向をZ軸回りに+90度+180×n度(nは整数)だけ回転させた方向、すなわちX方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように設定されている。また、分割領域14b,14fの光軸AX方向の厚さは、たとえば偏光ユニット14にY方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合に、Y方向をZ軸回りに+135度+180×n度(nは整数)だけ回転させた方向、すなわちY方向をZ軸回りに−45度だけ回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように設定されている。
【0139】
分割領域14c,14gの光軸AX方向の厚さは、たとえば偏光ユニット14にY方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合に、Y方向をZ軸回りに+180度+180×n度(nは整数)だけ回転させた方向、すなわちY方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように設定されている。そして、分割領域14d,14hの光軸AX方向の厚さは、たとえば偏光ユニット14にY方向に偏光方向を有する直線偏光の光が入射した場合に、Y方向をZ軸回りに+45度+180×n度(nは整数)だけ回転させた方向、すなわちY方向をZ軸回りに+45度だけ回転させた方向に偏光方向を有する直線偏光の光を射出するように設定されている。
【0140】
図30に戻って、光源1から空間光変調器3に達する光の偏光方向が、Y方向に偏光方向を持つ直線偏光であって、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの傾きが瞳面4c上で8極状の光強度分布を形成するものであった場合には、偏光ユニット14を経由した光強度分布の偏光状態は、光軸AXを中心とした周方向直線偏光状態となる。そして、照明光学系の光路中に偏光ユニット5が位置しない場合には、
図9(a)に示すように、マイクロフライアイレンズ7直後の照明瞳面にも、周方向直線偏光状態の8極状の光強度分布が形成される。
【0141】
ここで、偏光ユニット5が、入射する直線偏光の偏光方向を光軸を中心として+90度+180×n度(nは整数)だけ回転させる旋光部材である場合を考える。空間光変調器3の複数のミラー要素3aのうち、マイクロフライアイレンズ7直後の照明瞳面上に形成される8極状の光強度分布のうちの面光源P12a,12b;P13a,P13bを形成するための複数のミラー要素3aが位置する部分領域と共役な領域に、偏光ユニット5を位置させると、
図9(b)に示すように、上下左右の極である面光源P11a,P11b;P14a,P14bの偏光方向が周方向直線偏光であり、斜め±45度方向の極である面光源P12a,12b;P13a,P13bの偏光方向が径方向直線偏光である偏光状態を得ることができる。
【0142】
このように、照明瞳面上に周方向直線偏光を形成する偏光ユニット14と、空間光変調器3の複数のミラー要素3aの配列面と共役な位置に配置される偏光ユニット5とを組み合わせて、偏光状態の変更を高い自由度のものとすることができる。
【0143】
なお、
図30および
図31に示した変形例と、上述の実施形態ならびに変形例のいずれか一方とを組み合わせることも可能である。また、
図32に示すように、
図2に示した実施形態と、
図29に示した変形例とを組み合わせて、空間光変調器3の被照射面側の光路中における共役位置と光源側の光路中における共役位置との双方に偏光ユニットを配置する構成も可能である。
【0144】
上述の実施形態では、二次元的に配列されて個別に制御される複数のミラー要素を有する空間光変調器として、二次元的に配列された複数の反射面の向き(角度:傾き)を個別に制御可能な空間光変調器を用いている。しかしながら、これに限定されることなく、たとえば二次元的に配列された複数の反射面の高さ(位置)を個別に制御可能な空間光変調器を用いることもできる。このような空間光変調器としては、たとえば米国特許第5,312,513号公報、並びに米国特許第6,885,493号公報の
図1dに開示される空間光変調器を用いることができる。これらの空間光変調器では、二次元的な高さ分布を形成することで回折面と同様の作用を入射光に与えることができる。なお、上述した二次元的に配列された複数の反射面を持つ空間光変調器を、たとえば米国特許第6,891,655号公報や、米国特許公開第2005/0095749号公報の開示に従って変形しても良い。
【0145】
上述の実施形態では、空間光変調器3が所定面内で二次元的に配列された複数のミラー要素3aを備えているが、これに限定されることなく、所定面内に配列されて個別に制御される複数の透過光学要素を備えた透過型の空間光変調器を用いることもできる。
【0146】
上述の実施形態では、マスクの代わりに、所定の電子データに基づいて所定パターンを形成する可変パターン形成装置を用いることができる。なお、可変パターン形成装置としては、たとえば所定の電子データに基づいて駆動される複数の反射素子を含む空間光変調素子を用いることができる。空間光変調素子を用いた露光装置は、たとえば米国特許公開第2007/0296936号公報に開示されている。また、上述のような非発光型の反射型空間光変調器以外に、透過型空間光変調器を用いても良く、自発光型の画像表示素子を用いても良い。
【0147】
上述の実施形態において、旋光部材51,52は、それぞれ入射する直線偏光の偏光方向を45度、90度だけ回転させるものであったが、偏光方向の回転角は45度、90度には限定されない。
【0148】
旋光部材51は、入射する直線偏光の偏光方向を45度+180×n度(nは整数)だけ回転させるものであれば良く、例えば225度、405度等であっても良い。旋光部材52は、入射する直線偏光の偏光方向を90度+180×n度(nは整数)だけ回転させるものであれば良く、例えば270度、450度等であっても良い。すなわち、旋光部材51は、入射する直線偏光の偏光方向をj度+180×n度(jは実数、nは整数)だけ回転させるものであれば良く、旋光部材52は、入射する直線偏光の偏光方向をk度+180×n度(kは実数、nは整数)だけ回転させるものであれば良い。
【0149】
また、上述したように、偏光ユニット5を構成する移動可能な偏光回転部材としての旋光部材または位相部材(典型的には波長板)の数は任意の数であっても良く、例えば
図33(a)、(b)に示すように、それぞれが移動可能な3つの偏光回転部材で偏光ユニット5F、5Gを構成しても良い。
【0150】
図33(a)では、偏光ユニット5Fが図中X方向に移動可能な3つの偏光回転部材51F、52F、56Fで構成されている。ここで偏光回転部材51F、52F、56Fのそれぞれは、入射する直線偏光の偏光方向を135度だけ回転させる。これらの偏光回転部材51F、52F、56Fは、旋光部材や波長板で構成されていても良く、上述の
図23に示した波長板であっても良い。
図33(a)において、偏光ユニット5Fに入射する直線偏光がY方向直線偏光である場合には、第1部分光束F11は、偏光回転部材51F、52F、56Fのいずれも経ることなく、偏光ユニット5Fの直後においてY方向直線偏光のままである。第2部分光束F12は、偏光回転部材51Fを経て、偏光ユニット5Fの直後において+135度斜め方向直線偏光になる。第3部分光束F13は、偏光回転部材51F、52Fを経て、偏光ユニット5Fの直後において+270度方向直線偏光(X方向直線偏光)になる。第4部分光束F14は、偏光回転部材51F、52F、56Fを経て、偏光ユニット5Fの直後において+405度斜め方向直線偏光になる。
【0151】
また、
図33(b)では、偏光ユニット5Gが図中X方向に移動可能な3つの偏光回転部材51G、52G、56Gで構成されている。ここで、偏光回転部材51G、56Gのそれぞれは、入射する直線偏光の偏光方向を90度だけ回転させ、偏光回転部材52Gは、入射する直線偏光の偏光方向を135度だけ回転させる。これらの偏光回転部材51G、52G、56Gは、旋光部材や波長板で構成されていても良く、上述の
図23に示した波長板であっても良い。
図33(b)において、偏光ユニット5Gに入射する直線偏光がY方向直線偏光である場合には、第1部分光束F11は、偏光回転部材51G、52G、56Gのいずれも経ることなく、偏光ユニット5Gの直後においてY方向直線偏光のままである。第2部分光束F12は、偏光回転部材51Gを経て、偏光ユニット5Gの直後においてX方向直線偏光になる。第3部分光束F13は、偏光回転部材51G、52Gを経て、偏光ユニット5Gの直後において+225度斜め方向直線偏光になる。第4部分光束F14は、偏光回転部材51G、52G、56Gを経て、偏光ユニット5Gの直後において+315度斜め方向直線偏光になる。なお、
図33(b)の構成の場合、X方向直線偏光およびY方向直線偏光のみを用いて照明を行う際に、1つの偏光回転部材51Gだけを照明光路に挿入すれば良い。
【0152】
また、
図34に示すように、
図33(b)の構成に加えて、入射する直線偏光の偏光方向を22.5度+180度×n度(nは整数)だけ回転させる偏光回転部材57を設けても良い。なお、
図34において、
図33(b)の構成と同様の機能を有する部材には同じ符号を付してある。
【0153】
図34において、
図33(b)と異なる点を説明すると、偏光ユニット5Gに入射する直線偏光がY方向直線偏光である場合には、第5部分光束F15は、偏光回転部材57を経て、偏光ユニット5Gの直後において+22.5度斜め方向直線偏光になる。第6部分光束F16は、偏光回転部材51G、57を経て、偏光ユニット5Gの直後において+112.5度斜め方向直線偏光になる。第7部分光束F17は、偏光回転部材51G、52G、57を経て、偏光ユニット5Gの直後において+247.5度斜め方向直線偏光になる。第8部分光束F18は、偏光回転部材51G、52G、56G、57を経て、偏光ユニット5Gの直後において+337.5度斜め方向直線偏光になる。
【0154】
図34の例では、偏光回転部材57は、偏光回転部材51G、52G、56Gの移動方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に移動可能であり、偏光回転部材57の移動によって第1部分光束F11と第5部分光束F15との断面積比、第2部分光束F12と第6部分光束F16との断面積比、第3部分光束F13と第7部分光束F17との断面積比、第4部分光束F14と第8部分光束F18との断面積比を変更できる。なお、この偏光回転部材57を図中X方向にも移動させても良い。
【0155】
また、上述の各実施形態並びに変形例において、偏光ユニットの被照射面側の照明光路に、偏光ユニットよりも被照射面側の光学系に起因して発生するリターデーションの影響を低減するための位相変調部材を配置しても良い。
図35は、このような位相変調部材15を偏光ユニット5よりも被照射面側の照明光路に配置した例を示す図であり、
図2の実施形態と同様の機能を有する部材には同様の符号を付してある。
【0156】
図35において、位相変調部材15は、照明光路の断面の全体に亘って延在し且つ均一な厚さを有する波長板であって、その光学軸はY方向(あるいはX方向)に設定されている。換言すれば、位相変調部材15を構成する波長板の光学軸は、偏光ユニット5よりも被照射面側の光学系中の平面反射鏡MR2、MR3の反射面に対するp偏光の偏光方向またはs偏光の偏光方向に対応する方向に設定されている。
【0157】
位相変調部材15を設けない場合には、偏光ユニット5よりも下流側の光路中に配置された後続光学系(偏光ユニット5とレチクルRまたはウェハWとの間に配置された光学系、特に平面反射鏡MR2、MR3)によるリターデーション(偏光方向が互いに直交する一対の直線偏光成分の間に位相差が生じる現象)により、平面反射鏡の前後の光軸を含む面(YZ平面)または当該面(YZ平面)と直交し且つ光軸を含む面(XZ平面)に沿わない偏光方向を持つ直線偏光(斜め偏光)が楕円偏光となりがちである。
【0158】
図35の例では、偏光ユニット5からの縦偏光(Y方向直線偏光)および横偏光(X方向直線偏光)の光束は、位相変調部材15による位相変調をほとんど受けることなく、位相変調部材15からの光束の偏光方向はほぼ維持される。一方、偏光ユニット5からの斜め偏光の光束は、位相変調部材15による位相変調を受けて、上記後続光学系による斜め偏光の楕円化をほぼ相殺する楕円偏光の光束になる。この楕円偏光の光束の偏光度は、位相変調部材15を構成する波長板の厚さに依存する。
【0159】
この構成により、偏光ユニット5よりも下流側の光路中に配置された後続光学系によるリターデーションの影響を低減できる。このような位相変調部材15は、偏光ユニット5の直後の位置には限定されず、偏光ユニット5よりも被照射面側の照明光路であればいずれの位置にも配置できる。なお、X方向直線偏光およびY方向直線偏光のみを用いて照明を行う際には、位相変調部材を照明光路から退避させても良い。
【0160】
上述の実施形態の露光装置は、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行っても良い。
【0161】
次に、上述の実施形態にかかる露光装置を用いたデバイス製造方法について説明する。
図36は、半導体デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図36に示すように、半導体デバイスの製造工程では、半導体デバイスの基板となるウェハWに金属膜を蒸着し(ステップS40)、この蒸着した金属膜上に感光性材料であるフォトレジストを塗布する(ステップS42)。つづいて、上述の実施形態の投影露光装置を用い、マスク(レチクル)Mに形成されたパターンをウェハW上の各ショット領域に転写し(ステップS44:露光工程)、この転写が終了したウェハWの現像、つまりパターンが転写されたフォトレジストの現像を行う(ステップS46:現像工程)。
【0162】
その後、ステップS46によってウェハWの表面に生成されたレジストパターンをマスクとし、ウェハWの表面に対してエッチング等の加工を行う(ステップS48:加工工程)。ここで、レジストパターンとは、上述の実施形態の投影露光装置によって転写されたパターンに対応する形状の凹凸が生成されたフォトレジスト層であって、その凹部がフォトレジスト層を貫通しているものである。ステップS48では、このレジストパターンを介してウェハWの表面の加工を行う。ステップS48で行われる加工には、例えばウェハWの表面のエッチングまたは金属膜等の成膜の少なくとも一方が含まれる。なお、ステップS44では、上述の実施形態の投影露光装置は、フォトレジストが塗布されたウェハWを、感光性基板つまりプレートPとしてパターンの転写を行う。
【0163】
図37は、液晶表示素子等の液晶デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図37に示すように、液晶デバイスの製造工程では、パターン形成工程(ステップS50)、カラーフィルタ形成工程(ステップS52)、セル組立工程(ステップS54)およびモジュール組立工程(ステップS56)を順次行う。ステップS50のパターン形成工程では、プレートPとしてフォトレジストが塗布されたガラス基板上に、上述の実施形態の投影露光装置を用いて回路パターンおよび電極パターン等の所定のパターンを形成する。このパターン形成工程には、上述の実施形態の投影露光装置を用いてフォトレジスト層にパターンを転写する露光工程と、パターンが転写されたプレートPの現像、つまりガラス基板上のフォトレジスト層の現像を行い、パターンに対応する形状のフォトレジスト層を生成する現像工程と、この現像されたフォトレジスト層を介してガラス基板の表面を加工する加工工程とが含まれている。
【0164】
ステップS52のカラーフィルタ形成工程では、R(Red)、G(Green)、B(Blue)に対応する3つのドットの組をマトリックス状に多数配列するか、またはR、G、Bの3本のストライプのフィルタの組を水平走査方向に複数配列したカラーフィルタを形成する。ステップS54のセル組立工程では、ステップS50によって所定パターンが形成されたガラス基板と、ステップS52によって形成されたカラーフィルタとを用いて液晶パネル(液晶セル)を組み立てる。具体的には、例えばガラス基板とカラーフィルタとの間に液晶を注入することで液晶パネルを形成する。ステップS56のモジュール組立工程では、ステップS54によって組み立てられた液晶パネルに対し、この液晶パネルの表示動作を行わせる電気回路およびバックライト等の各種部品を取り付ける。
【0165】
また、本発明は、半導体デバイス製造用の露光装置への適用に限定されることなく、例えば、角型のガラスプレートに形成される液晶表示素子、若しくはプラズマディスプレイ等のディスプレイ装置用の露光装置や、撮像素子(CCD等)、マイクロマシーン、薄膜磁気ヘッド、及びDNAチップ等の各種デバイスを製造するための露光装置にも広く適用できる。更に、本発明は、各種デバイスのマスクパターンが形成されたマスク(フォトマスク、レチクル等)をフォトリソグラフィ工程を用いて製造する際の、露光工程(露光装置)にも適用することができる。
【0166】
なお、上述の実施形態では、露光光としてArFエキシマレーザ光(波長:193nm)やKrFエキシマレーザ光(波長:248nm)を用いているが、これに限定されることなく、他の適当なレーザ光源、たとえば波長157nmのレーザ光を供給するF
2レーザ光源、Ar
2レーザ(出力波長126nm)、Kr
2レーザ(出力波長146nm)などのパルスレーザ光源、g線(波長436nm)、YAGレーザの高調波発生装置などやi線(波長365nm)などの輝線を発する超高圧水銀ランプなどに対して本発明を適用することもできる。
【0167】
また、例えば米国特許第7,023,610号明細書に開示されているように、真空紫外光としてDFB半導体レーザ又はファイバーレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(又はエルビウムとイッテルビウムの両方)がドープされたファイバーアンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
【0168】
また、上述の実施形態において、投影光学系と感光性基板との間の光路中を1.1よりも大きな屈折率を有する媒体(典型的には液体)で満たす手法、所謂液浸法を適用しても良い。この場合、投影光学系と感光性基板との間の光路中に液体を満たす手法としては、国際公開第WO99/49504号パンプレットに開示されているような局所的に液体を満たす手法や、特開平6−124873号公報に開示されているような露光対象の基板を保持したステージを液槽の中で移動させる手法や、特開平10−303114号公報に開示されているようなステージ上に所定深さの液体槽を形成し、その中に基板を保持する手法などを採用することができる。ここでは、国際公開第WO99/49504号パンフレット、特開平6−124873号公報および特開平10−303114号公報の教示を参照として援用する。
【0169】
また、上述の実施形態において、露光装置の投影光学系は縮小系のみならず等倍及び拡大系のいずれでも良いし、投影光学系は屈折系のみならず、反射系及び反射屈折系のいずれでも良いし、この投影像は倒立像及び正立像のいずれでも良い。
【0170】
また、例えば国際公開第2001/035168号に開示されているように、干渉縞をウェハW上に形成することによって、ウェハW上にライン・アンド・スペースパターンを形成する露光装置(リソグラフィシステム)に適用することができる。
【0171】
さらに、例えば米国特許第6,611,316号明細書に開示されているように、2つのレチクルパターンを、投影光学系を介してウェハ上で合成し、1回のスキャン露光によってウェハ上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置に適用することができる。
【0172】
なお、上記実施形態でパターンを形成すべき物体(エネルギビームが照射される露光対象の物体)はウェハに限られるものでなく、ガラスプレート、セラミック基板、フィルム部材、あるいはマスクブランクスなど他の物体でも良い。
【0173】
また、上述の実施形態では、露光装置においてマスク(またはウェハ)を照明する照明光学系に対して本発明を適用しているが、これに限定されることなく、マスク(またはウェハ)以外の被照射面を照明する一般的な照明光学系に対して本発明を適用することもできる。
【0174】
「35U.S.C.§112」を満足するために必要とされる詳細において本特許出願において説明しかつ例示した「表題」の実施形態の特定の態様は、上述の実施形態の態様のあらゆる上述の目的、及び上述の実施形態の態様により又はその目的のあらゆる他の理由で又はその目的にために解決すべき問題を完全に達成することができるが、請求した内容の上述の実施形態のここで説明した態様は、請求した内容によって広く考察された内容を単に例示しかつ代表することは、当業者によって理解されるものとする。実施形態のここで説明しかつ主張する態様の範囲は、本明細書の教示内容に基づいて当業者に現在明らかであると考えられるか又は明らかになると考えられる他の実施形態を漏れなく包含するものである。本発明の「表題」の範囲は、単独にかつ完全に特許請求の範囲によってのみ限定され、いかなるものも特許請求の範囲の詳細説明を超えるものではない。単数形でのこのような請求項における要素への言及は、解釈において、明示的に説明していない限り、このような要素が「1つ及び1つのみ」であることを意味するように意図しておらず、かつ意味しないものとし、「1つ又はそれよりも多い」を意味する意図とし、かつ意味するものとする。当業者に公知か又は後で公知になる実施形態の上述の態様の要素のいずれかに対する全ての構造的及び機能的均等物は、引用により本明細書に明示的に組み込まれると共に、特許請求の範囲によって包含されるように意図されている。本明細書及び/又は本出願の請求項に使用され、かつ本明細書及び/又は本出願の請求項に明示的に意味を与えられたあらゆる用語は、このような用語に関するあらゆる辞書上の意味又は他の一般的に使用される意味によらず、その意味を有するものとする。実施形態のいずれかの態様として本明細書で説明した装置又は方法は、それが特許請求の範囲によって包含されるように本出願において開示する実施形態の態様によって解決するように求められる各及び全て問題に対処することを意図しておらず、また必要でもない。本発明の開示内容におけるいかなる要素、構成要素、又は方法段階も、その要素、構成要素、又は方法段階が特許請求の範囲において明示的に詳細に説明されているか否かに関係なく、一般大衆に捧げられることを意図したものではない。特許請求の範囲におけるいかなる請求項の要素も、その要素が「〜のための手段」という語句を使用して明示的に列挙されるか又は方法の請求項の場合にはその要素が「作用」ではなく「段階」として列挙されていない限り、「35U.S.C.§112」第6項の規定に基づいて解釈されないものとする。
【0175】
米国の特許法の準拠において、本出願人は、本出願の明細書に添付されたあらゆるそれぞれの請求項、一部の場合には1つの請求項だけにおいて説明した各発明の少なくとも1つの権能付与的かつ作用する実施形態を開示したことが当業者によって理解されるであろう。本出願人は、開示内容の実施形態の態様/特徴/要素、開示内容の実施形態の作用、又は開示内容の実施形態の機能を定義し、及び/又は開示内容の実施形態の態様/特徴/要素のあらゆる他の定義を説明する際に、随時又は本出願を通して、定義的な動詞(例えば、「is」、「are」、「does」、「has」、又は「include」など)、及び/又は他の定義的な動詞(例えば、「生成する」、「引き起こす」、「サンプリングする」、「読み取る」、又は「知らせる」など)、及び/又は動名詞(例えば、「生成すること」、「使用すること」、「取ること」、「保つこと」、「製造すること」、「判断すること」、「測定すること」、又は「計算すること」など)を使用した。あらゆるこのような定義的語又は語句などが、本明細書で開示する1つ又はそれよりも多くの実施形態のいずれかの態様/特徴/要素、すなわち、あらゆる特徴、要素、システム、サブシステム、処理、又はアルゴリズムの段階、特定の材料などを説明するのに使用されている場合は、常に、本出願人が発明しかつ請求したものに関する本発明の範囲を解釈するために、以下の制限的語句、すなわち、「例示的に」、「例えば、」、「一例として」、「例示的に単に」、「例示的にのみ」などの1つ又はそれよりも多く又は全てが先行し、及び/又は語句「することができる」、「する可能性がある」、「かもしれない」、及び「することができるであろう」などのいずれか1つ又はそれよりも多く又は全てを含むと読むべきである。全てのこのような特徴、要素、段階、及び材料などは、たとえ特許法の要件の準拠において本出願人が特許請求した内容の実施形態又はいずれかの実施形態のあらゆるそのような態様/特徴/要素の単一の権能付与的な実施例だけを開示したとしても、1つ又はそれよりも多くの開示した実施形態の単に可能な態様として説明されており、いずれかの実施形態のいずれか1つ又はそれよりも多くの態様/特徴/要素の唯一の可能な実施、及び/又は特許請求した内容の唯一の可能な実施形態としで説明していないと考えるべきである。本出願又は本出願の実施において、特許請求の範囲のあらゆる開示する実施形態又はあらゆる特定の本発明の開示する実施形態の特定的な態様/特徴/要素が、特許請求の範囲の内容又はあらゆるそのような特許請求の範囲に説明されるあらゆる態様/特徴/要素を実行する1つ及び唯一の方法になると本出願人が考えていることを明示的かつ具体的に特に示さない限り、本出願人は、本特許出願の特許請求の範囲の内容のあらゆる開示する実施形態のあらゆる開示した態様/特徴/要素又は実施形態全体のあらゆる説明が、特許請求の範囲の内容又はそのあらゆる態様/特徴/要素を実行するそのような1つ及び唯一の方法であり、従って、特許請求の範囲の内容の他の可能な実施例と共にあらゆるそのように開示した実施例を包含するのに十分に広範囲にわたるものであるあらゆる特許請求の範囲をこのような開示した実施形態のそのような態様/特徴/要素又はそのような開示した実施形態に限定するように解釈されることを意図していない。本出願人は、1つ又は複数の親請求項に説明した特許請求の範囲の内容又は直接又は間接的に従属する請求項のあらゆる態様/特徴/要素、段階のようなあらゆる詳細と共にいずれかの請求項に従属する従属請求項を有するあらゆる請求項は、親請求項の説明事項が、他の実施例と共に従属請求項内に更なる詳細を包含するのに十分に広範囲にわたるものであること、及び更なる詳細が、あらゆるこのような親請求項で請求する態様/特徴/要素を実行し、従って従属請求項の更なる詳細を親請求項に取り込むことによって含むあらゆるこのような親請求項のより幅広い態様/特徴/要素の範囲をいかなる点においても制限するいずれかの従属請求項に説明されるいずれかのこのような態様/特徴/要素の更なる詳細に限られる唯一の方法ではないことを意味するように解釈されるべきであることを具体的、明示的、かつ明解に意図するものである。
【0176】
また、本願では、以下に示す特許請求の範囲としても良い。
請求項1 光源からの光により被照射面を照明する照明光学系において、
所定面内に配列されて個別に制御される複数の光学要素を有し、前記照明光学系の照明瞳に光強度分布を可変的に形成する空間光変調器と、
前記照明光学系の光路中において前記所定面と光学的に共役な位置に配置されて、入射光束のうちの一部の光束の偏光状態を変化させて射出する偏光ユニットとを備えていることを特徴とする照明光学系。
請求項2 前記偏光ユニットは、前記空間光変調器よりも前記被照射面側の光路中における前記共役な位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の照明光学系。
請求項3 前記偏光ユニットは、前記入射光束のうちの第1部分光束に作用を及ぼすことなく、前記入射光束のうちの前記第1部分光束とは異なる第2部分光束の偏光状態を変化させる第1光学素子を有することを特徴とする請求項1または2に記載の照明光学系。
請求項4 前記第1光学素子は、前記入射光束の断面に沿った第1面に配置され、前記第1面を経た前記第1部分光束の断面積と前記第1面を経た前記第2部分光束の断面積との比を変化させるために、前記第1面に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の照明光学系。
請求項5 前記第1光学素子は、前記入射光束の矩形状の断面の一方の辺と平行な第1方向に延びる一対のエッジを有し、且つ前記第1方向と直交する第2方向に移動可能であることを特徴とする請求項3または4に記載の照明光学系。
請求項6 前記第1光学素子は、前記入射光束の矩形状の断面の一方の辺と斜め交差する第3方向に延びる第1エッジと、前記第3方向とは異なる第4方向に延びる第2エッジとを有し、且つ前記入射光束の断面に沿って二次元的に移動可能であることを特徴とする請求項3または4に記載の照明光学系。
請求項7 前記第1光学素子の前記第2エッジが延びる前記第4方向は、前記一方の辺と斜め交差する方向であることを特徴とする請求項6に記載の照明光学系。
請求項8 前記偏光ユニットは、前記第1光学素子を経た前記第2部分光束のうちの少なくとも一部の第3部分光束の偏光状態、および前記第1光学素子を経ることなく入射する前記第1部分光束のうちの少なくとも一部の第4部分光束の偏光状態を変化させる第2光学素子を有することを特徴とする請求項3乃至7のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項9 前記第2光学素子は、前記入射光束の断面に沿った第2面に配置され、前記第2面を経た前記第3部分光束の断面積と前記第2面を経た前記第4部分光束の断面積との比を変化させるために、前記第2面に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項8に記載の照明光学系。
請求項10 前記第2光学素子は、前記入射光束の矩形状の断面の一方の辺と平行な第1方向に延びる一対のエッジを有し、且つ前記第1方向と直交する第2方向に移動可能であることを特徴とする請求項8または9に記載の照明光学系。
請求項11 前記第2光学素子は、前記入射光束の矩形状の断面の一方の辺と斜め交差する第5方向に延びる第3エッジと、前記第5方向とは異なる第6方向に延びる第4エッジとを有し、且つ前記入射光束の断面に沿って二次元的に移動可能であることを特徴とする請求項8または9に記載の照明光学系。
請求項12 前記第2光学素子の前記第4エッジが延びる前記第6方向は、前記一方の辺と斜め交差する方向であることを特徴とする請求項11に記載の照明光学系。
請求項13 前記第1光学素子は、旋光性を有する光学材料により形成された旋光部材を有することを特徴とする請求項3乃至12のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項14 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちの少なくとも一方は、旋光性を有する光学材料により形成された旋光部材を有することを特徴とする請求項8乃至13のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項15 前記旋光部材は、右回り旋光性材料で形成された第1旋光部材と、該第1旋光部材と隣接して配置されて左回り旋光性材料から形成された第2旋光部材とを備えていることを特徴とする請求項13または14に記載の照明光学系。
請求項16 前記所定面の光学的なフーリエ変換面には、入射位置に応じて異なる位相差を入射光に与える位相差付与部材が配置されていることを特徴とする請求項14または15に記載の照明光学系。
請求項17 前記第1光学素子は、入射光を所定の偏光状態の光に変化させる波長板を有することを特徴とする請求項3乃至16のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項18 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちの少なくとも一方は、入射光を所定の偏光状態の光に変化させる波長板を有することを特徴とする請求項8乃至17のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項19 前記波長板は、前記入射光束の断面に沿って回転可能であることを特徴とする請求項17または18に記載の照明光学系。
請求項20 前記波長板は、前記入射光束の断面に沿った面内における第1方向に沿った光学軸を持つ第1波長板と、前記入射光束の断面に沿った面内において前記第1方向とは異なる第2方向に沿った光学軸を持つ第2波長板とを備えていることを特徴とする請求項18または19に記載の照明光学系。
請求項21 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちの少なくとも一方は、入射光から所定の偏光状態の光を選択して射出する偏光子を有することを特徴とする請求項8乃至20のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項22 前記第1光学素子と前記第2光学素子とは互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項8乃至21のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項23 前記所定面と前記所定面と共役な位置との間に配置されたリレー光学系をさらに備えていることを特徴とする請求項1乃至22に記載の照明光学系。
請求項24 前記第1光学素子と前記第2光学素子とは、前記所定面と光学的に共役な位置を挟んで配置されることを特徴とする請求項23に記載の照明光学系。
請求項25 前記所定面と光学的に共役な位置は、前記リレー光学系の光軸上の位置であることを特徴とする請求項23または24に記載の照明光学系。
請求項26 前記空間光変調器の前記複数の光学要素が配置される前記所定面は、前記リレー光学系の光軸直交面に対して傾斜しており、
前記第1光学素子は、前記リレー光学系に関して前記所定面と光学的に共役な面に沿った方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項23乃至25のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項27 前記第1光学素子と前記第2光学素子との間に配置されて、前記第1光学素子と前記第2光学素子とを互いに光学的に共役にする第2リレー光学系を備えていることを特徴とする請求項8乃至21のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項28 前記偏光ユニットは、照明光路に対して挿脱自在な非偏光化素子を有することを特徴とする請求項1乃至27のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項29 前記非偏光化素子は、前記照明光路中の前記所定面と光学的に共役な位置または該位置の近傍において挿脱自在であることを特徴とする請求項28に記載の照明光学系。
請求項30 オプティカルインテグレータを備え、
前記偏光ユニットは、前記空間光変調器と前記オプティカルインテグレータとの間の光路中に配置されていることを特徴とする請求項1乃至29のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項31 前記空間光変調器は、前記所定面内で二次元的に配列された複数のミラー要素と、該複数のミラー要素の姿勢を個別に制御駆動する駆動部とを有することを特徴とする請求項1乃至30のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項32 前記駆動部は、前記複数のミラー要素の向きを連続的または離散的に変化させることを特徴とする請求項31に記載の照明光学系。
請求項33 前記複数のミラー要素のうちの前記所定面上の第1領域に位置するミラー要素の群を第1ミラー要素群とし、前記複数のミラー要素のうちの前記第1領域とは異なる前記所定面上の第2領域に位置するミラー要素の群を第2ミラー要素群とするとき、前記駆動部は、前記第1ミラー要素群を経た光が前記所定面の光学的なフーリエ変換面上の第1瞳領域へ導かれるように前記第1ミラー要素群を制御駆動し、且つ前記第2ミラー要素群を経た光が前記所定面の光学的なフーリエ変換面上の第2瞳領域へ導かれるように前記第2ミラー要素群を制御駆動することを特徴とする請求項31または32に記載の照明光学系。
請求項34 前記第1瞳領域と前記第2瞳領域とは異なる領域であることを特徴とする請求項33に記載の照明光学系。
請求項35 前記第1瞳領域と前記第2瞳領域とは一部が重複することを特徴とする請求項33または34に記載の照明光学系。
請求項36 前記偏光ユニットは、前記第1ミラー要素群を経た第1部分光束に作用を及ぼすことなく、前記第2ミラー要素群を経た第2部分光束の偏光状態を変化させる第1光学素子を有することを特徴とする請求項33乃至35のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項37 前記偏光ユニットは、前記空間光変調器よりも前記光源側の光路中における前記共役な位置に配置されることを特徴とする請求項1乃至36のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項38 前記共役な位置よりも前記光源側の光路中に配置されて、前記共役な位置を含む面内の照度均一性を、入射光束の断面内の照度均一性よりも向上させる照度均一化光学系を備えていることを特徴とする請求項37に記載の照明光学系。
請求項39 前記共役な位置よりも前記光源側の光路中に配置されて、入射光束を波面分割して前記共役な位置を含む面に重畳させる波面分割光学系を備えていることを特徴とする請求項37に記載の照明光学系。
請求項40 前記被照射面と光学的に共役な面を形成する投影光学系と組み合わせて用いられ、前記照明瞳は前記投影光学系の開口絞りと光学的に共役な位置であることを特徴とする請求項1乃至39のいずれか1項に記載の照明光学系。
請求項41 所定のパターンを照明するための請求項1乃至40のいずれか1項に記載の照明光学系を備え、前記所定のパターンを感光性基板に露光することを特徴とする露光装置。
請求項42 前記所定のパターンの像を前記感光性基板上に形成する投影光学系を備えていることを特徴とする請求項41に記載の露光装置。
請求項43 請求項41または42に記載の露光装置を用いて、前記所定のパターンを前記感光性基板に露光することと、
前記所定のパターンが転写された前記感光性基板を現像し、前記所定のパターンに対応する形状のマスク層を前記感光性基板の表面に形成することと、
前記マスク層を介して前記感光性基板の表面を加工することと、を含むことを特徴とするデバイス製造方法。
請求項44 矩形状の断面を持つ入射光束のうちの一部の光束の偏光状態を変化させて射出する偏光ユニットであって、
前記入射光束の断面に沿った第1面に配置され、前記入射光束のうちの第1部分光束に作用を及ぼすことなく、前記入射光束のうちの第2部分光束の偏光状態を変化させる第1光学素子と、
前記入射光束の断面に沿った第2面に配置され、前記第1光学素子を経た前記第2部分光束のうちの少なくとも一部の第3部分光束の偏光状態、および前記第1光学素子を経ることなく入射する前記第1部分光束のうちの少なくとも一部の第4部分光束の偏光状態を変化させる第2光学素子とを備え、
前記第1光学素子は、前記入射光束の矩形状の断面の一方の辺と斜め交差する第3方向に延びる第1エッジと、前記第3方向とは異なる第4方向に延びる第2エッジとを有することを特徴とする偏光ユニット。
請求項45 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちに少なくとも一方は、前記第1部分光束の断面積と前記第2部分光束の断面積と前記第3部分光束の断面積と前記第4部分光束の断面積との比を変化させるために、前記第1面または前記第2面に沿って移動可能に構成されていることを特徴とする請求項44に記載の偏光ユニット。
請求項46 前記第1光学素子の前記第2エッジが延びる前記第4方向は、前記一方の辺と斜め交差する方向であることを特徴とする請求項44または45に記載の偏光ユニット。
請求項47 前記第2光学素子は、前記入射光束の矩形状の断面の一方の辺と斜め交差する第5方向に延びる第3エッジと、前記第5方向とは異なる第6方向に延びる第4エッジとを有し、且つ前記第2面に沿って二次元的に移動可能であることを特徴とする請求項44乃至46のいずれか1項に記載の偏光ユニット。
請求項48 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちの少なくとも一方は、旋光性を有する光学材料により形成された旋光部材を有することを特徴とする請求項44乃至47のいずれか1項に記載の偏光ユニット。
請求項49 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちの少なくとも一方は、入射光を所定の偏光状態の光に変化させる波長板を有することを特徴とする請求項44乃至48のいずれか1項に記載の偏光ユニット。
請求項50 前記波長板は、前記入射光束の断面に沿って回転可能であることを特徴とする請求項49に記載の偏光ユニット。
請求項51 前記第1光学素子および前記第2光学素子のうちの少なくとも一方は、入射光から所定の偏光状態の光を選択して射出する偏光子を有することを特徴とする請求項44乃至50のいずれか1項に記載の偏光ユニット。