特許第6312791号(P6312791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6312791薄膜封止用N2O希釈プロセスによるバリア膜性能の向上
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6312791
(24)【登録日】2018年3月30日
(45)【発行日】2018年4月18日
(54)【発明の名称】薄膜封止用N2O希釈プロセスによるバリア膜性能の向上
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20180409BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20180409BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20180409BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20180409BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/10
   C23C16/42
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-500984(P2016-500984)
(86)(22)【出願日】2014年3月10日
(65)【公表番号】特表2016-512651(P2016-512651A)
(43)【公表日】2016年4月28日
(86)【国際出願番号】US2014022498
(87)【国際公開番号】WO2014164465
(87)【国際公開日】20141009
【審査請求日】2016年8月16日
(31)【優先権主張番号】61/778,067
(32)【優先日】2013年3月12日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100101502
【弁理士】
【氏名又は名称】安齋 嘉章
(72)【発明者】
【氏名】チョイ ヤング ジン
(72)【発明者】
【氏名】パーク べオム スー
(72)【発明者】
【氏名】チョイ スー ヤング
【審査官】 野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−210544(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/067230(WO,A1)
【文献】 特開2010−027561(JP,A)
【文献】 特開2013−022820(JP,A)
【文献】 特開2012−081632(JP,A)
【文献】 特開2007−220646(JP,A)
【文献】 特開2004−039468(JP,A)
【文献】 特開2007−038529(JP,A)
【文献】 特開2012−216452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H05B 33/10
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に形成されたOLED構造と、
OLED構造及び基板の露出面上に形成された1以上の無機層を含む、OLED構造上に形成された多層封止層であって、1以上の無機層のうちの少なくとも1つは、酸素ドープされた窒化ケイ素及び酸化ケイ素(SiO)を含む多層封止層とを含み、酸素ドープされた窒化ケイ素は、酸素含有化合物のケイ素含有化合物に対する比率が0.3:1〜3:1を用いて堆積されるOLEDデバイス。
【請求項2】
無機層の水蒸気透過率は、100mg/m・日未満である、請求項1記載のOLEDデバイス。
【請求項3】
OLED構造は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層を含む、請求項1記載のOLEDデバイス。
【請求項4】
1以上の無機層は、窒化ケイ素を含み、−2×10ダイン/cm〜−0.1×10ダイン/cmの応力を有する、請求項1記載のOLEDデバイス。
【請求項5】
1以上の無機層は、酸窒化ケイ素(SiON)、炭化ケイ素(SiC)、又はそれらの組み合わせを更に含む、請求項1記載のOLEDデバイス。
【請求項6】
基板上に形成されたOLED構造と、
OLED構造上に形成された多層封止層であって、
OLED構造及び基板の上に形成された1以上の有機層と、
1以上の有機層のうちの少なくとも1つの上に形成された1以上の無機層であって、1以上の無機層のうちの少なくとも1つは、酸素含有ガスでドープされた窒化ケイ素及び酸化ケイ素(SiO)を含む1以上の無機層とを含み、酸素ドープされた窒化ケイ素は、酸素含有化合物のケイ素含有化合物に対する比率が0.3:1〜3:1を用いて堆積される多層封止層とを含むOLEDデバイス。
【請求項7】
酸素含有ガスは、亜酸化窒素である、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項8】
酸素含有ガスは、一酸化窒素、又はオゾンである、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項9】
無機層の水蒸気透過率は、100mg/m・日未満である、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項10】
OLED構造は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、及び電子注入層を含む、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項11】
1以上の無機層のうちの少なくとも1つは、窒化ケイ素を含み、−2×10ダイン/cm〜−0.1×10ダイン/cmの応力を有する、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項12】
1以上の無機層は、酸窒化ケイ素(SiON)、炭化ケイ素(SiC)、又はそれらの組合せを更に含む、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項13】
無機層は、無機窒化物又は無機酸化物層である、請求項6記載のOLEDデバイス。
【請求項14】
1以上の無機層は、無機窒化物又は無機酸化物層である、請求項6記載のOLEDデバイス。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
(発明の分野)
本明細書に開示される実施形態は、概して、化学蒸着(CVD)処理を用いた薄膜の堆積に関する。より具体的には、実施形態は、概して、大面積基板上にバリア層を堆積させるための方法に関する。
【0002】
(関連技術の説明)
有機発光ダイオード(OLED)は、テレビのスクリーン、コンピュータモニタ、携帯電話、その他のハンドヘルドデバイス、又は情報を表示するためのその他のデバイスの製造に使用される。典型的なOLEDは、個別に通電可能な画素を有するマトリックスディスプレイパネルを形成するように、すべてが基板上に堆積された2つの電極の間に位置する有機材料の層を含むことができる。OLEDは、一般的に、2つのガラスパネルの間に配置され、ガラスパネルの縁部は、その中にOLEDを封止するために密封される。
【0003】
封止は、UV硬化型エポキシ樹脂のビーズによって固定されたガラス蓋を使用して、不活性雰囲気中で活性材料を密封することによって達成される。硬質封止は、水分及び酸素から活性OLED材料を保護するために、耐久性及び可撓性のある封止が必要であるフレキシブルディスプレイには適用できない。1つのアプローチは、水分及び酸素の透過に対するバリアとして多層封止構造を使用することである。無機層は、主バリア層として多層封止構造内に組み込むことができる。有機層もまた、応力緩和及び水/酸素拡散チャネル分離層のために組み込むことができる。
【0004】
窒化ケイ素(SiN)は、良好なバリア材料として知られており、こうして、それは多層封止構造内の無機バリア層としての可能性を示す。しかしながら、低温(例えば、100℃以下)で堆積したSiN膜は、高い圧力を有し、これは膜の剥離(層間剥離としても知られる)又は多膜スタック構造内の不整合問題を誘発する可能性がある。OLEDデバイスの層のいくつかの感度のため、OLED材料上の後続の堆積層は、より低温(例えば、100℃未満)で堆積する必要があるだろう。
【0005】
このように、下のデバイスを保護するための改良された遮水性能を有する、大面積基板上に封止/バリア膜を堆積する方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
基板上に無機層を堆積させるための方法及び装置が記載される。無機層は、様々なディスプレイ用途に利用される多層封止構造の一部とすることができる。多層封止構造は、バリア層としての1以上の無機層を含み、これによって遮水性能を向上させる。1以上の無機層は、酸素ドープされた窒化ケイ素で構成される。酸素ドープされた窒化ケイ素は、多層封止構造内の剥離又は不整合を防止するために低い応力を維持しながら、低い水蒸気透過率を提供する。
【0007】
一実施形態では、OLEDデバイスは、基板上に形成されたOLED構造と、OLED構造上に形成された多層封止層を含むことができる。多層封止構造は、OLED構造及び基板の露出面上に形成された1以上の無機層を含むことができ、1以上の無機層のうちの少なくとも1つは、亜酸化窒素(NO)でドープされた窒化ケイ素を含む。
【0008】
別の一実施形態では、OLEDデバイスは、基板上に形成されたOLED構造と、OLED構造上に形成された多層封止層を含むことができる。多層封止構造は、OLED構造及び基板の露出面上に形成された第1無機層と、第1無機層上に形成された1以上の有機層と、1以上の有機層のうちの少なくとも1つの上に形成された1以上の第2無機層を含むことができ、1以上の第2無機層のうちの少なくとも1つは、酸素含有ガスでドープされた窒化ケイ素を含む。
【0009】
別の一実施形態では、封止構造を堆積させる方法は、処理チャンバ内に基板を配置する工程と、基板の表面上にOLED構造を形成する工程と、亜酸化窒素とシラン化合物を含む堆積ガスを処理チャンバ内へ流す工程であって、亜酸化窒素とシラン化合物は、約0.3:1〜約3:1の割合で送出される工程と、OLED構造及び基板の表面上に堆積ガスから無機層を堆積させる工程であって、無機層は、酸素ドープされた窒化ケイ素を含む工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明の上述した構成を詳細に理解することができるように、上記に簡単に要約した本発明のより具体的な説明を、実施形態を参照して行う。実施形態のいくつかは添付図面に示されている。しかしながら、添付図面は本発明の典型的な実施形態を示しているに過ぎず、したがってこの範囲を制限していると解釈されるべきではなく、本発明は他の等しく有効な実施形態を含み得ることに留意すべきである。
図1】1以上の実施形態で使用可能な処理チャンバである。
図2】一実施形態に係る、多層封止構造が最上部に堆積されたOLEDデバイスの断面模式図である。
図3】一実施形態に係る、基板上に多層封止構造を形成するプロセスを示すフロー図である。
【0011】
理解を促進するために、図面に共通する同一の要素を示す際には可能な限り同一の参照番号を使用している。一実施形態内で開示される要素を特定の説明なしに他の実施形態に有益に使用してもよいと理解される。
【詳細な説明】
【0012】
酸素ドープされた窒化ケイ素バリア層を含むOLED構造及びその製造方法が記載される。無機層は、様々なディスプレイ用途に利用される多層膜スタックの一部とすることができる。多層膜スタックは、バリア層としての1以上の無機層及び1以上の有機層を含み、これによって遮水性能を向上させる。1以上の無機層は、酸素ドープされたSiNで構成することができる。酸素ドープされたSiNは、標準的なSiNと比べて、減少された圧力を示しながら、高い密度を維持する。本明細書に開示される実施形態は、以下の図面を参照してより明確に説明される。
【0013】
本発明は、例示的に、以下に記載され、カリフォルニア州サンタクララにあるアプライドマテリアルズ社(Applied Materials Inc.)の一部門であるAKTアメリカから入手可能なプラズマ強化化学蒸着(PECVD)システムなどの処理システム内で使用される。しかしながら、本発明は、他のメーカーから販売されているものを含む他のシステム構成において有用であることを理解すべきである。
【0014】
図1は、本明細書に記載される操作を実行するために使用することができる処理チャンバの概略断面図である。本装置は、1以上の膜を基板120上に堆積することができるチャンバ100を含む。チャンバ100は、概して、処理容積を画定する、壁102、底部104、及びシャワーヘッド106を含む。基板支持体118は、処理容積内に配置される。処理容積は、スリットバルブ開口部108を介してアクセスされ、これによって基板120は、チャンバ100の内外に搬送することができる。基板支持体118は、基板支持体118を上下動するアクチュエータ116に結合することができる。リフトピン122が、基板支持体118を貫通して移動自在に配置され、これによって基板受け面へ及び基板受け面から基板を移動する。基板支持体118はまた、基板支持体118を所望の温度に維持するための加熱及び/又は冷却要素124を含むことができる。基板支持体118はまた、RFリターンストラップ126を含むことができ、これによって基板支持体118の周囲にRFリターンパスを提供する。
【0015】
シャワーヘッド106は、締結機構140によってバッキングプレート112に結合することができる。シャワーヘッド106は、1以上の締結機構140によってバッキングプレート112に結合することができ、これによってシャワーヘッド106の垂下の防止及び/又は真直度/曲率の制御を助長する。
【0016】
ガス源132は、バッキングプレート112に結合され、これによってシャワーヘッド106内のガス通路を介してシャワーヘッド106と基板120の間の処理領域へ処理ガスを供給することができる。ガス源132は、とりわけ、ケイ素含有ガス供給源、酸素含有ガス供給源、及び炭素含有ガス供給源を含むことができる。1以上の実施形態と共に使用可能な典型的な処理ガスは、シラン(SiH)、ジシラン、NO、アンモニア(NH)、H、N、又はそれらの組み合わせを含む。
【0017】
真空ポンプ110は、チャンバ100に結合され、これによって処理容積を所望の圧力に制御する。RF電源128は、整合ネットワーク150を介してバッキングプレート112及び/又はシャワーヘッド106へ結合し、これによってRF電流をシャワーヘッド106に供給することができる。RF電流は、シャワーヘッド106と基板支持体118の間に電界を生成し、これによってシャワーヘッド106と基板支持体118の間にガスからプラズマを生成することができる。
【0018】
リモートプラズマ源130(例えば、誘導結合リモートプラズマ源130)を、ガス供給源132とバッキングプレート112の間に結合することもできる。基板を処理する間に、洗浄ガスをリモートプラズマ源130に供給し、これによってリモートプラズマを生成することができる。リモートプラズマからのラジカルが、チャンバ100に供給され、これによってチャンバ100のコンポーネントを洗浄することができる。洗浄ガスは、シャワーヘッド106に供給されるRF電源128によって更に励起することができる。
【0019】
シャワーヘッド106は、更に、シャワーヘッドサスペンション134によってバッキングプレート112に結合することができる。一実施形態では、シャワーヘッドサスペンション134は、可撓性のある金属製スカートである。シャワーヘッドサスペンション134は、シャワーヘッド106を載置することができるリップ136を有することができる。バッキングプレート112は、チャンバ100を密閉するチャンバ壁102に結合された棚部114の上面に載置することができる。
【0020】
図2は、一実施形態に係る最上部に堆積された多層封止構造204を有するOLEDデバイス200を示す。多層封止構造204は、本明細書に記載される方法を用いて、基板202上に堆積させることができる。一実施形態では、陽極層208は、ガラス又はプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN))で作ることができる基板202上に堆積される。1以上の実施形態で使用可能な陽極層208の一例は、インジウムスズ酸化物(ITO)である。一実施形態では、陽極層208は、約200オングストローム〜約2000オングストロームの厚さを有することができる。
【0021】
陽極層208(例えば、インジウムスズ酸化物(ITO)層)が、基板202上に堆積された後、有機スタック220が、陽極層208の上に堆積される。有機スタック220は、正孔注入層210、正孔輸送層212、発光層214、電子輸送層216、及び電子注入層218を含むことができる。5つの層のすべてが、OLEDデバイス206の有機スタック220を構築するために必要であるわけではないことに留意すべきである。一実施形態では、正孔輸送層212及び発光層214のみを使用して、有機スタック220を形成する。堆積した後、有機スタック220は、パターニングされる。
【0022】
有機スタック220の表面をパターニングした後、陰極層222を次いで堆積し、パターニングする。陰極層222は、金属、金属の混合物、又は金属の合金とすることができる。陰極材料の一例は、約1000オングストローム〜約3000オングストロームの厚さの範囲内のマグネシウム(Mg)、銀(Ag)、及びアルミニウム(Al)の合金である。
【0023】
OLEDデバイス206の構築が完了した後に、多層封止構造204が、基板表面の最上部に堆積される。一実施形態では、多層封止構造204は、約500オングストローム〜約50000オングストローム(例えば、約2000オングストローム〜約50000オングストロームの間)の範囲内の厚さに堆積された無機窒化膜、無機酸化膜、及び高分子系有機膜の薄層を含む。一実施形態では、とりわけ、窒化ケイ素(SiN)、酸窒化ケイ素(SiON)、酸化ケイ素(SiO)、及び炭化ケイ素(SiC)を封止材料として使用することができる。
【0024】
本発明の一実施形態は、基板201上に堆積された多層封止構造204が、バリア/封止材料(例えば、無機窒化物、無機酸化物膜、及び高分子系有機材料)の1以上の層を含むことを提供する。1以上の追加の材料層(例えば、様々な炭素含有材料及び高分子系有機材料、及び低誘電率材料(例えば、アモルファスカーボン、ダイヤモンドライクカーボン、炭素ドープされたケイ素含有材料等)が、多層封止構造204内に堆積され、これによって接着性を向上させ、多層封止構造204を柔らかくする。
【0025】
多層封止構造204は、1以上の有機層及び1以上の無機層を含むことができる。上述したように、無機層は、一般的に、バリア特性を提供し、一方、有機層は、一般的に、多層封止構造204の可撓性を増加させる。一実施形態では、多層封止構造204は、第1無機層224、第2無機層228、及び第1無機層224と第2無機層228との間に挟まれた有機層226を含む。別の言い方をすると、有機層は、1以上の無機層のうちのいずれかの間、又は1以上の無機層のうちのいずれかに接触している1以上の層として堆積させることができる。更なる実施形態は、1以上の無機層のみを使用することができる。
【0026】
一実施形態では、約1000オングストロームの厚さを有する多層封止構造204が、その後、基板202及びOLEDデバイス206の表面上に堆積される。多層封止構造204は、水分及び酸素がOLEDデバイス206及び/又は基板202内に浸透するのを防ぐことができる。多層封止構造204は、共通のチャンバ内で堆積させることができ、これによって第1無機層224、第2無機層228、及び有機層226の両方が、真空を破ることなく同一チャンバ内で堆積される。
【0027】
1以上の無機層は、ケイ素(例えば、SiN、SiON、酸素ドープされたSiN、又は他のケイ素を含有する組成物からなる層)を含むことができる。酸素ドープされたSiNは、酸素を含む任意のドーパント(例えば、O又はNO)でドープされたSiNを含むことができる。1以上の無機層のうちの少なくとも1つは、酸素ドープされたSiNからなるべきである。酸素ドープされたSiNは、−1.0*10ダイン/cm未満の応力を有することができる。
【0028】
理論に束縛されることを意図するものではないが、−1.0*10ダイン/cm未満の応力は、層の剥離を防止するために望ましいと考えられている。層内の高い応力は、下地層からの層の分離を引き起こす可能性がある。後続の層内の応力は、前の層内の応力に複合する可能性があるので、この効果は、多層構造内で悪化する。単一層内の応力及び全体としての構造内の応力の両方は、膜の剥離を引き起こす可能性があり、これは封止構造の場合、水分及び大気の状態が、敏感な部品に到達してデバイス故障を引き起こす可能性がある。酸素ドープされたSiN層を堆積することにより、低い応力層を使用しながら、低い水蒸気透過率を維持することができる。
【0029】
図3は、一実施形態に係る、基板上に多層封止構造を形成するプロセス300を示すフロー図である。プロセス300は、ステップ302にあるように、処理チャンバ内に基板を配置することで始まる。このステップでは、基板は、基板支持アセンブリ上に配置され、処理領域内に移動される。基板は、薄膜の堆積で使用される標準的な基板(例えば、金属、有機材料、シリコン、ガラス、石英、高分子材料又はプラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリエチレンナフタレート(PEN))の薄いシート)とすることができる。更に、任意の適切な基板サイズを処理することができる。適切な基板サイズの例は、約2000平方センチメートル以上(例えば、約4000平方センチメートル以上(例えば、約10000平方センチメートル以上))の表面積を有する基板を含む。一実施形態では、約90000平方センチメートル以上の表面積を有する基板を処理することができる。以下に説明する実施形態は、5500平方センチメートルの基板に関する。
【0030】
OLED構造は、その後、ステップ304にあるように、配置された基板の表面上に形成される。OLED構造は、図2を参照して記載されるように、陽極層及び陰極層と共に、少なくとも正孔輸送層及び発光層を含む。しかしながら、OLED構造は、上述のすべての5つの層並びに陽極及び陰極層又はそれらの機能的均等物を含むことができる。
【0031】
OLED構造を形成した後、ステップ306にあるように、酸素含有ガス(例えば、NO)及びシラン化合物(例えば、SiH)を含む堆積ガスが、処理チャンバ内に流される。酸素含有ガスとシラン化合物は、約0.3:1〜約3:1の割合で送出される。酸素含有ガスは、NO、一酸化窒素(NO)、五酸化二窒素(N)、四酸化二窒素(N)、O、O、又はそれらの組み合わせを含むことができる。シラン含有ガスは、SiH、ジシラン、これらの誘導体及びこれらの組み合わせを含むことができる。堆積ガスは、H、N、NH、不活性ガス又はこれらの組み合わせを更に含むことができる。低い温度を維持するために、堆積ガスは、プラズマ源を使用して活性化される。
【0032】
堆積ガスを用いて、無機層は、ステップ308にあるように、OLED構造及び基板の表面上に堆積される。無機層は、酸素ドープされたSiNを含む。一実施形態では、酸素ドープされたSiNは、上記の方法によって、酸素含有化合物(例えば、NO)でドープされたSiNを含む。堆積された酸素ドープされたSiN層は、20Å〜1000Åの厚さとすることができる。更に、複数の酸素ドープされたSiN層を、封止構造を形成するのに使用することができる。酸素ドープされたSiN層は、当技術分野で知られている有機又は無機膜(例えば、SiO)と組み合わせて使用することができる。酸素ドープされたSiN層は、封止構造の任意の層として堆積させることができ、封止構造の他の堆積された層の間に挟まれてもよい。例えば、酸素ドープされたSiN層は、有機層と無機層の間、有機層と有機層の間、又は無機層と無機層の間に堆積させることができる。無機層は、酸素ドープされたSiN層を含むことができる。
【0033】
理論に拘束されることを意図するものではないが、酸素含有化合物を用いたドーピングは、低温で堆積された窒化ケイ素層に固有の応力を低減することができると考えられている。OLED構造は、100℃を超える温度に敏感である。OLED構造を形成した後に封止構造が堆積されるので、封止構造は、下地のOLEDの機能に影響を及ぼさない温度で堆積させることができる。一実施形態では、封止構造は、90℃よりも低い温度(例えば、85℃以下の温度)で堆積される。約0.3:1〜約3:1の酸素含有化合物のシラン化合物に対する比を用いて窒化ケイ素層を堆積させることによって、SiNは、酸素含有化合物でドープされる。この堆積プロセスは、100℃未満の温度で、標準的なSiN層と比較して良好な均一性及び低い応力で、及び(100mg/m・日未満(例えば、75mg/m・日未満)のWVTRを有する)低い水蒸気透過率で実行することができる。
【0034】
下記の表1は、前で開示した1以上の実施形態を用いた実験データからの例を示す。堆積は、カリフォルニア州サンタクララにあるアプライドマテリアルズ社から入手可能なAKT−5500 PX PECVDチャンバ内で実行され、処理された基板のsccm/cmで統一された。本明細書に記載される実施形態は、異なるサイズの基板及び異なるサイズのチャンバを補償するために拡大又は縮小させることができると理解されるべきである。以下に記載される例の各々に示されるように、堆積パラメータ(例えば、流量、温度、及び圧力)は、NO流量を除いて同じに維持された。
【表1】
【0035】
第1の例は、NOによるドープ無しのSiN層用堆積パラメータを示す。この例では、SiH、NH、N、及びHは、それぞれ960、2180、5480、及び9128sccmで送出される。SiN層は、85℃で、4000WのRFプラズマの存在下で、1600ミリトールの圧力で堆積される。NO無しで堆積されたSiN層は、40mg/m・日の水蒸気透過率(WVTR)、1.863の屈折率、及び−3.09*10ダイン/cmの比較的高い圧縮応力を有する。
【0036】
第2の例は、500sccmのNOによるSiN層用堆積パラメータを示す。この例では、SiH、NH、N、及びHは、それぞれ960、2180、5480、及び9128sccmで送出される(NO:SiHの比は、0.52:1)。SiN層は、85℃で、4000WのRFプラズマの存在下で、1600ミリトールの圧力で堆積される。堆積された酸素ドープされたSiN層は、35mg/m・日の水蒸気透過率(WVTR)、1.795の屈折率、及び−1.68*10ダイン/cmのより低い圧縮応力を有する。
【0037】
第3の例は、1000sccmのNOによるSiN層用堆積パラメータを示す。この例では、SiH、NH、N、及びHは、それぞれ960、2180、5480、及び9128sccmで送出される(NO:SiHの比は、1.04:1)。層は、85℃で、4000WのRFプラズマの存在下で、1600ミリトールの圧力で堆積される。堆積された酸素ドープされたSiN層は、75mg/m・日の水蒸気透過率(WVTR)、1.744の屈折率、及び−1.07*10ダイン/cmの圧縮応力を有する。
【0038】
第4の例は、2000sccmのNOによるSiN層用堆積パラメータを示す。この例では、SiH、NH、N、及びHは、それぞれ960、2180、5480、及び9128sccmで送出される(NO:SiHの比は、2.08:1)。SiN層は、85℃で、4000WのRFプラズマの存在下で、1600ミリトールの圧力で堆積される。堆積された酸素ドープされたSiN層は、81mg/m・日の水蒸気透過率(WVTR)、1.678の屈折率、及び−0.44*10ダイン/cmの圧縮応力を有する。
【0039】
第5の例は、3000sccmのNOによるSiN層用堆積パラメータを示す。この例では、SiH、NH、N、及びHは、それぞれ960、2180、5480、及び9128sccmで送出される(NO:SiHの比は、2.08:1)。SiN層は、85℃で、4000WのRFプラズマの存在下で、1600ミリトールの圧力で堆積される。堆積された酸素ドープされたSiN層は、81mg/m・日の水蒸気透過率(WVTR)、1.634の屈折率、及び−0.44*10ダイン/cmの圧縮応力を有する。
【0040】
例示的な堆積されたSiN層では、SiHの濃度と比べてNO濃度が増加するにつれて、応力は減少する。しかしながら、WVTRもまた、SiHの濃度と比べてNO濃度が増加するにつれて増加する。したがって、WVTR及び応力は、NO:SiHの比が0.3:1〜3:1の間(例えば、0.5:1〜3:1の割合)で最適である。
【0041】
(結論)
要約すると、無機層(例えば、SiN層)は、OLEDデバイスのためのバリア層として堆積される。SiNは、非常に低い水蒸気透過率で堆積させることができるが、低温での堆積は、圧縮応力の高いSiN層を作る。本明細書に記載される実施形態では、酸素含有ガスが、SiN層の堆積中に導入され、これによって優れた水蒸気透過率を維持しながら、層の応力を低減させる。
【0042】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の他の及び更なる実施形態は本発明の基本的範囲を逸脱することなく創作することができ、その範囲は以下の特許請求の範囲に基づいて定められる。
図1
図2
図3