(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記パッドプロファイル生成器は、前記研磨パッドの摩耗量および前記ドレッシングヘッドの位置の算出値から、前記研磨パッドの摩耗分布を生成することを特徴とする請求項1に記載の研磨装置。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスはますます微細化され、素子構造は複雑になりつつある。半導体デバイスの製造工程において、ウェハ表面の平坦化は非常に重要な工程とされる。ウェハ表面の平坦化に用いられる代表的な技術は、化学的機械的研磨(CMP,Chemical Mechanical Polishing)である。この化学的機械的研磨では、砥粒を含んだ研磨液を研磨パッドの研磨面(上面)上に供給しつつウェハを研磨面に摺接させる。ウェハの表面は、砥粒による機械的作用と、研磨液の化学的作用とにより研磨される。
【0003】
ウェハの研磨を行った後、研磨パッドの研磨面には砥粒や研磨屑が付着し、研磨パッドの特性が変化する。そこで、研磨パッドの研磨面を再生するために、ドレッサーが研磨テーブルの隣に設けられている。このドレッサーは、回転するドレッシングヘッドを研磨パッドの研磨面に押し付けることにより、研磨パッドの研磨面をわずかに削り取り、これによって研磨パッドの研磨面をドレッシング(すなわち再生)する。
【0004】
研磨パッドのドレッシングを繰り返すにつれて、研磨パッドの研磨面の形状、すなわち研磨パッドのプロファイルが変化する。研磨パッドのプロファイルは、ウェハの研磨結果に大きく影響する。このため、研磨パッドのプロファイルを取得し、得られた研磨パッドのプロファイルに基づいて研磨パラメータ(例えば、ウェハを研磨パッドに押し付ける圧力)を制御することが必要とされる。
【0005】
研磨パッドのプロファイルは、研磨パッドの表面高さを研磨面上の複数点で測定することにより取得することができる。例えば、
図10に示すように、エアシリンダ200によってドレッシングヘッド201を研磨パッド202に押し付けながら、研磨面202a上の複数点でのドレッシングヘッド201の鉛直方向の位置が位置センサ203により測定される。ドレッシングヘッド201の鉛直方向の位置は、研磨パッド202の表面高さに従って変化するので、ドレッシングヘッド201の鉛直方向の位置から研磨パッド202の表面高さを取得することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。同一または対応する構成要素には同一の符号を付して、その重複する説明を省略する。
図1は、研磨装置の斜視図である。研磨装置は、研磨パッド10を支持する研磨テーブル11と、基板の一例であるウェハWを研磨パッド10に押し付ける研磨ヘッド20と、研磨パッド10をドレッシング(またはコンディショニング)するドレッサー30とを備えている。研磨パッド10は研磨テーブル11の上面に取り付けられており、研磨パッド10の上面はウェハWを研磨する研磨面10aを構成している。研磨テーブル11は、テーブルモータ13に連結されており、このテーブルモータ13によって研磨テーブル11および研磨パッド10は、矢印で示す方向に回転されるようになっている。
【0015】
研磨ヘッド20は、研磨ヘッド駆動軸22に連結されている。研磨ヘッド駆動軸22は研磨ヘッド揺動アーム23の一端に回転自在に保持されている。研磨ヘッド揺動アーム23の他端は、研磨ヘッド揺動軸24によって支持されている。研磨ヘッド揺動アーム23の内部には、研磨ヘッド駆動軸22に連結された図示しない研磨ヘッドモータが設置されている。この研磨ヘッドモータは、研磨ヘッド駆動軸22を介して研磨ヘッド20を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0016】
研磨ヘッド20の下面は、真空吸引などによりウェハを保持するウェハ保持面(すなわち基板保持面)を構成している。研磨ヘッド駆動軸22は、図示しない上下動アクチュエータに連結されている。研磨ヘッド20は、上下動アクチュエータにより研磨ヘッド駆動軸22とともに上下動する。研磨ヘッド揺動軸24は、研磨テーブル11の外側に配置されている。この研磨ヘッド揺動軸24は回転可能に構成されており、これにより研磨ヘッド20は研磨パッド10の上方の位置と、研磨パッド10の外側の位置との間を移動可能となっている。
【0017】
研磨テーブル11に隣接して、研磨液及びドレッシング液を研磨パッド10の研磨面10aに供給する液体供給ノズル25が配置されている。この液体供給ノズル25は、研磨液(例えばスラリ)を研磨パッド10に供給する研磨液供給ノズル(図示せず)と、ドレッシング液(例えば純水)を研磨パッド10に供給するドレッシング液供給ノズル(図示せず)とを備えている。液体供給ノズル25は、ウェハの研磨時には研磨液を研磨パッド10上に供給し、ウェハのドレッシング時にはドレッシング液を研磨パッド10上に供給する。研磨液供給ノズルとドレッシング液供給ノズルとを別々に設けてもよい。
【0018】
ウェハWの研磨は、次のようにして行なわれる。研磨ヘッド20の下面にウェハWが保持され、研磨ヘッド20および研磨テーブル11が回転される。この状態で、研磨パッド10の研磨面10aには研磨液が供給され、そして、研磨ヘッド20によりウェハWが研磨パッド10の研磨面10aに押し付けられる。ウェハWの表面(下面)は、研磨液に含まれる砥粒の機械的研磨作用と研磨液の化学的研磨作用により研磨される。研磨ヘッド20の下面(ウェハ保持面または基板保持面)は、柔軟な弾性膜から構成された複数の圧力バッグ(図示せず)から構成されており、ウェハWの複数の領域を別々に研磨パッド10に押し付けることが可能となっている。
【0019】
ドレッサー30は、研磨パッド10の研磨面10aに押し付けられるドレッシングヘッド31と、このドレッシングヘッド31に連結されたドレッサー駆動軸32と、ドレッサー駆動軸32を回転自在に保持するドレッサー揺動アーム33とを備えている。ドレッシングヘッド31の下面は、ダイヤモンド粒子などの硬質の砥粒から構成されたドレッシング面である。
【0020】
研磨パッド10のドレッシングは次のようにして行われる。研磨テーブル11を研磨パッド10とともに回転させ、液体供給ノズル25からドレッシング液(例えば純水)を研磨パッド10上に供給する。ドレッシングヘッド31のドレッシング面が研磨パッド10の研磨面10aに接触するまで、ドレッシングヘッド31はその軸心まわりに回転しながら下降する。さらに、ドレッシングヘッド31はドレッサー揺動アーム33によって研磨パッド10上を揺動させられる。ドレッシングヘッド31は、そのドレッシング面を研磨パッド10の研磨面10aに摺接させることにより、研磨パッド10をドレッシングする。研磨パッド10のドレッシングが終了すると、ドレッサー揺動アーム33が旋回してドレッシングヘッド31を研磨テーブル11の外側の退避位置にまで移動させる。
【0021】
図2は、ドレッサー30の詳細な構成を示す図である。
図2に示すように、ドレッシングヘッド31はドレッサー駆動軸32の下端に連結されている。ドレッサー駆動軸32は、伸縮可能なジョイント41を介してドレッサーモータ36に連結されている。ドレッサーモータ36はモータ保持部39に固定され、このモータ保持部39はドレッサー揺動アーム33に固定されている。ジョイント41は、ドレッサー駆動軸32の鉛直方向の移動を許容しつつ、ドレッサーモータ36のトルクをドレッサー駆動軸32に伝達できるように構成されている。ドレッサーモータ36は、そのトルクをジョイント41およびドレッサー駆動軸32を介してドレッシングヘッド31に伝え、ドレッシングヘッド31を矢印で示す方向に回転させる。
【0022】
ドレッサー駆動軸32は、ドレッサー揺動アーム33の一端に回転自在に支持されており、ドレッサー揺動アーム33の他端はドレッサー揺動軸34に固定されている。ドレッサー揺動軸34はアームモータ42に連結されている。このアームモータ42は、ドレッサー揺動軸34を中心としてドレッサー揺動アーム33を所定の角度だけ時計方向および反時計方向に交互に旋回させることにより、研磨パッド10上のドレッシングヘッド31を研磨パッド10の半径方向に揺動させる。アームモータ42は、ドレッシングヘッド31を研磨パッド10の表面上で移動させるドレッシングヘッド移動機構である。アームモータ42およびテーブルモータ13はモータ制御部57に接続されており、アームモータ42およびテーブルモータ13の動作はモータ制御部57によって制御される。
【0023】
ドレッサー駆動軸32には軸受45が取り付けられており、この軸受45は連結部材49を介してボールねじ機構50のナット51に連結されている。ナット51は連結部材49に固定されている。ボールねじ機構50は、連結部材49、軸受45、およびドレッサー駆動軸32を介してドレッシングヘッド31に連結されている。
【0024】
ボールねじ機構50のねじ軸52は、サーボモータ55に連結されている。サーボモータ55は、モータ保持部39に固定されており、サーボモータ55の鉛直方向の位置は固定されている。サーボモータ55は、ボールねじ機構50を駆動してドレッシングヘッド31を昇降させるための昇降モータである。すなわち、サーボモータ55がボールねじ機構50のねじ軸52を回転させると、連結部材49、軸受45、ドレッサー駆動軸32、およびドレッシングヘッド31が一体に上昇および下降する。ドレッシングヘッド31は、ドレッサーモータ36によって回転させられ、サーボモータ55によって研磨パッド10に押し付けられる。
【0025】
サーボモータ55はサーボドライバ56に接続されており、サーボモータ55はサーボドライバ56によって駆動される。サーボドライバ56はモータ制御部57に接続されており、サーボドライバ56の動作はモータ制御部57によって制御される。研磨パッド10に加えられるドレッシングヘッド31の荷重は、モータ制御部57によって制御される。
【0026】
サーボドライバ56は、サーボモータ55を位置決め制御モードとトルク制御モードの2つのモードのいずれかで駆動するように構成されている。位置決め制御モードは、ドレッシングヘッド31を予め設定された位置まで比較的高速で移動させるモードであり、トルク制御モードは、サーボモータ55に掛かる負荷の変動にかかわらず、サーボモータ55が発生するトルクを所定の値に維持するモードである。モータ制御部57からのモード切り替え信号を受け取ると、サーボドライバ56は位置決め制御モードからトルク制御モードに、またはその逆に切り替える。
【0027】
研磨パッド10のドレッシングを行うとき、サーボドライバ56は、まずサーボモータ55を位置決め制御モードで駆動し、続いてトルク制御モードで駆動する。すなわち、サーボドライバ56はサーボモータ55を位置決め制御モードで駆動して、ドレッシングヘッド31を予め設定された位置まで高速で下降させる。例えば、研磨パッド10の研磨面10aから1mmだけ上方の位置までドレッシングヘッド31を高速で下降させる。このように位置決め制御モードでは、サーボモータ55は、ドレッシングヘッド31が研磨パッド10に接触する直前までドレッシングヘッド31を高速で下降させることができるので、全体のドレッシング時間を短縮することができる。
【0028】
ドレッシングヘッド31が予め設定された位置に達すると、モータ制御部57はサーボドライバ56にモード切り替え信号を送り、サーボドライバ56の運転モードを位置決め制御モードからトルク制御モードに切り替える。さらに、モータ制御部57は、サーボモータ55のトルクを所定の値に維持するためのトルク指令信号をサーボドライバ56に送る。サーボドライバ56は、サーボモータ55のトルクが上記所定の値に維持されるように、サーボモータ55をトルク制御モードで駆動する。
【0029】
ドレッシングヘッド31が研磨パッド10に接触していないとき、サーボモータ55のトルクは極めて小さい。ドレッシングヘッド31が研磨パッド10に接触すると、サーボモータ55のトルクが上昇する。より具体的には、弾性材から構成される研磨パッド10にドレッシングヘッド31が押し込まれるにつれて、サーボモータ55のトルクが徐々に上昇する。トルクが所定の値に達すると、サーボドライバ56はトルクがその所定の値に維持されるようにサーボモータ55の動作を制御する。
【0030】
ドレッシングヘッド31は、研磨パッド10上を移動しながら研磨パッド10をドレッシングする。研磨パッド10の研磨面10aに凹凸があると、研磨パッド10からの反発力は変化する。すなわち、ドレッシングヘッド31が研磨面10aの凸部を横切るとき、ドレッシングヘッド31に作用する反発力が増加する。このとき、サーボドライバ56は、サーボモータ55のトルクを一定に保つために、ドレッシングヘッド31が上昇する方向にサーボモータ55を駆動する。一方、ドレッシングヘッド31が研磨面10aの凹部を横切るとき、ドレッシングヘッド31に作用する反発力が減少する。このとき、サーボドライバ56は、サーボモータ55のトルクを一定に保つために、ドレッシングヘッド31が下降する方向にサーボモータ55を駆動する。
【0031】
このように、トルク制御モードでは、サーボドライバ56は、サーボモータ55のトルクを一定に保つために、サーボモータ55を動作させてドレッシングヘッド31を上下動させる。ドレッシングヘッド31の上下動は、研磨パッド10の研磨面10aの形状に追従する動きである。したがって、ドレッシングヘッド31の鉛直方向の位置から研磨パッド10の研磨面10aの形状を取得することができる。ドレッシングヘッド31は、研磨パッド10の表面凹凸に追従して上下動するので、研磨パッド10の研磨面10aの凸部と凹部を同じ荷重で押し付けることができる。したがって、研磨パッド10の弾性変形の影響を排除することができる。
【0032】
サーボモータ55の内部には、サーボモータ55のロータの回転角度を測定するロータリエンコーダ61が配置されている。ロータリエンコーダ61は高さ算出器62に接続され、回転角度の測定値は高さ算出器62に送られる。高さ算出器62は、サーボモータ55の回転角度の測定値と、ボールねじ機構50のねじピッチとからドレッシングヘッド31の鉛直方向の位置、すなわちドレッシングヘッド31の高さを算出する。
【0033】
トルク制御モードでは、研磨パッド10の研磨面10aに接触しているときのドレッシングヘッド31の高さは、研磨パッド10の研磨面10aの高さに依存して変わる。したがって、ドレッシングヘッド31の高さから、研磨パッド10の研磨面10aの高さ、すなわち研磨パッド10の表面形状を取得することができる。ロータリエンコーダ61および高さ算出器62は、ドレッシングヘッド31の高さを測定する高さ測定器を構成する。この高さ測定器によって取得されたドレッシングヘッド31の高さの測定値は、パッドプロファイル生成器70に送られる。
【0034】
アームモータ42の内部にはロータリエンコーダ65が配置されており、ドレッサー揺動アーム33の旋回角度(すなわちドレッサー揺動軸34の回転角度)がロータリエンコーダ65によって測定される。ドレッサー揺動アーム33の旋回角度の測定値は、パッドプロファイル生成器70に送られる。同様に、テーブルモータ13の内部にはロータリエンコーダ66が配置されており、研磨テーブル11の回転角度がロータリエンコーダ66によって測定される。研磨テーブル11の回転角度の測定値は、パッドプロファイル生成器70に送られる。
【0035】
摩耗していない(すなわち新品の)研磨パッド10の表面に接触している時のドレッシングヘッド31の初期高さが既知であれば、研磨パッド10の初期の表面高さと研磨パッド10の現在の表面高さとの差分から研磨パッド10の摩耗量を算出することができる。すなわち、パッドプロファイル生成器70は、ドレッシングヘッド31の初期高さ(研磨パッド10の初期の表面高さ)からドレッシングヘッド31の高さの測定値(研磨パッド10の現在の表面高さ)を減算することにより、研磨パッド10の摩耗量を決定することができる。
【0036】
しかしながら、研磨パッド10は弾性材から構成されているので、ドレッシングヘッド31の荷重はドレッシングヘッド31の高さの測定値に影響を与える。したがって、正確な研磨パッド10の摩耗量を決定するためには、ドレッシングヘッド31の初期高さを測定したときのドレッシングヘッド31の荷重は、ドレッシングヘッド31の現在の高さを測定したときのドレッシングヘッド31の荷重と同じであることが必要である。
【0037】
そこで、パッドプロファイル生成器70は、サーボモータ55のトルクと、摩耗していない研磨パッド10の表面に接触している時のドレッシングヘッド31の初期高さとの関係を表す関係テーブルまたは関係式を記憶している。サーボモータ55のトルクは、ボールねじ機構50によってドレッシングヘッド31の荷重に変換され、ドレッシングヘッド31の荷重はサーボモータ55のトルクに比例する。
【0038】
図3は、サーボモータ55のトルクと、摩耗していない研磨パッド10の表面に接触している時のドレッシングヘッド31の初期高さとの関係を表す関係テーブルであり、
図4は、サーボモータ55のトルクと、摩耗していない研磨パッド10の表面に接触している時のドレッシングヘッド31の初期高さとの関係を表す関係式を示す図である。
図3および
図4から分かるように、サーボモータ55のトルクとドレッシングヘッド31の初期高さ(研磨パッド10の初期の表面高さ)との間には相関関係がある。この相関関係は、使用された研磨パッドを新しい研磨パッド10に交換した後であって、その研磨パッド10を用いてウェハを研磨する前に、取得される。
【0039】
図5は、サーボモータ55のトルクとドレッシングヘッド31の初期高さ(研磨パッド10の初期の表面高さ)との相関関係を取得する工程を示すフローチャートである。モータ制御部57は、サーボドライバ56の運転モードを位置決め制御モードに切り替える(ステップ1)。サーボドライバ56は、位置決め制御モードでサーボモータ55を駆動し、サーボモータ55はドレッシングヘッド31を予め設定された位置まで高速で下降させる(ステップ2)。
【0040】
ドレッシングヘッド31が予め設定された位置に達した後、モータ制御部57はサーボドライバ56の運転モードを位置決め制御モードからトルク制御モードに切り替える(ステップ3)。サーボドライバ56は、トルクの設定値を少しずつ変えながら、サーボモータ55を駆動する(ステップ4)。ロータリエンコーダ61および高さ算出器62から構成される高さ測定器は、トルクのそれぞれの設定値でのドレッシングヘッド31の高さを測定する(ステップ5)。ステップ1からステップ5までの工程は、研磨パッド10上の所定の測定点のすべてにおいて実行される(ステップ6)。
【0041】
上述したように、サーボモータ55のトルクとドレッシングヘッド31の初期高さ(研磨パッド10の初期の表面高さ)との相関関係は、関係テーブルまたは関係式の形態でパッドプロファイル生成器70に記憶される。パッドプロファイル生成器70は、研磨パッド10のドレッシング時のサーボモータ55のトルク値に対応するドレッシングヘッド31の初期高さを関係テーブルまたは関係式から取得し、得られたドレッシングヘッド31の初期高さ(研磨パッド10の初期の表面高さ)からドレッシングヘッド31の高さの測定値(研磨パッド10の現在の表面高さ)を減算することにより、研磨パッド10の摩耗量を決定する。
【0042】
パッドプロファイル生成器70は、サーボモータ55のトルクが同じ条件下で取得されたドレッシングヘッド31の初期高さおよびドレッシングヘッド31の高さの測定値から正確な研磨パッド10の摩耗量を算出することができる。すなわち、ドレッシングヘッド31の荷重が同じ条件下でドレッシングヘッド31の高さ(すなわち、研磨パッド10の表面高さ)が測定されるので、研磨パッド10の弾性変形の影響を排除して正確な研磨パッド10の摩耗量を算出することができる。
【0043】
一般に、ドレッサー30の動作条件を定めるドレッシングレシピは、ドレッシングヘッド31の荷重[N]を使用して作成される。そこで、パッドプロファイル生成器70およびモータ制御部57は、ドレッシングヘッド31の研磨パッド10に対する荷重をサーボモータ55のトルクに変換する変換テーブルまたは変換式を有している。サーボモータ55のトルクは、例えばサーボモータ55の定格トルクに対するパーセントで表される。
【0044】
図6は、ドレッシングヘッド31の荷重をサーボモータ55のトルクに変換する変換テーブルであり、
図7は、ドレッシングヘッド31の荷重をサーボモータ55のトルクに変換する変換式を示す図である。
図6および
図7に示す変換テーブルおよび変換式は、ドレッシングヘッド31と研磨パッド10との間にロードセルなどの荷重測定器を配置し、サーボモータ55のトルクの設定値を少しずつ変えながらサーボモータ55を駆動し、トルクのそれぞれの設定値での荷重を荷重測定器により測定することにより取得することができる。
【0045】
上述のようにして取得されたドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量は、研磨パッド10上のドレッシングヘッド31の位置と組み合わせてパッドプロファイル生成器70に保存される。パッドプロファイル生成器70は、ドレッシングヘッド31の高さの測定値と、対応するドレッシングヘッド31の位置とから研磨パッド10のプロファイルを作成することができる。さらに、パッドプロファイル生成器70は、研磨パッド10の摩耗量と、対応するドレッシングヘッド31の位置とから研磨パッド10の摩耗分布を作成することができる。
【0046】
パッドプロファイル生成器70は、研磨テーブル11の回転角度、ドレッサー揺動アーム33の旋回角度、ドレッサー揺動軸34の位置、およびドレッシングヘッド31とドレッサー揺動軸34との距離から、研磨パッド10上のドレッシングヘッド31の相対位置を計算するように構成されている。以下、研磨パッド10上のドレッシングヘッド31の相対位置の算出方法について
図8を参照して説明する。
図8は、研磨パッド10とドレッシングヘッド31を模式的に示す平面図である。
図8において、x−y座標系は研磨パッド10の研磨面10a上に定義された固定座標系であり、X−Y座標系は研磨パッド10の研磨面10a上に定義された回転座標系である。
図8に示すように、研磨テーブル11およびその上の研磨パッド10はx−y固定座標系の原点Oを中心として回転する。ドレッサー揺動アーム33はx−y固定座標系上のドレッサー揺動軸34を中心として時計周りおよび反時計回りに交互に所定の角度だけ旋回する。
【0047】
研磨テーブル11とドレッサー揺動軸34の相対位置は固定であるから、x−y固定座標系上のドレッサー揺動軸34の座標は必然的に決定される。ドレッサー揺動アーム33の旋回角度θは、ロータリエンコーダ65により計測される。研磨パッド10(研磨テーブル11)の回転角度αは、x−y固定座標系の座標軸とX−Y回転座標系の座標軸とがなす角度であり、この回転角度αはロータリエンコーダ66により計測される。
【0048】
x−y固定座標系上のドレッシングヘッド31の中心の座標は、ドレッサー揺動軸34の座標と、ドレッシングヘッド31とドレッサー揺動軸34との距離Lと、ドレッサー揺動アーム33の旋回角度θとから決定することができる。さらに、X−Y回転座標系上のドレッシングヘッド31の中心の座標は、x−y固定座標系上のドレッシングヘッド31の中心の座標と、研磨パッド10の回転角度αとから決定することができる。固定座標系上の座標から回転座標系上の座標への変換は、公知の変換式を用いて行うことができる。
【0049】
パッドプロファイル生成器70は、上述のようにしてX−Y回転座標系上のドレッシングヘッド31の中心の座標を算出する。X−Y回転座標系は、研磨面10a上に定義された二次元平面である。すなわち、X−Y回転座標系上のドレッシングヘッド31の座標は、研磨面10aに対するドレッシングヘッド31の相対位置を示す。したがって、ドレッシングヘッド31の位置は、研磨面10aに定義された二次元平面上の位置として表される。
【0050】
パッドプロファイル生成器70は、ドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量を取得するたびに、そのドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量を取得したX−Y回転座標系上の座標を特定する。この座標は、取得したドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量に対応するドレッシングヘッド31の位置を示している。したがって、パッドプロファイル生成器70は、ドレッシングヘッド31の高さの測定値および対応するドレッシングヘッド31の位置から、研磨パッド10のプロファイルを作成することができる。さらに、パッドプロファイル生成器70は、研磨パッド10の摩耗量および対応するドレッシングヘッド31の位置から、研磨パッド10の摩耗分布を作成することができる。
【0051】
ドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量と、対応するドレッシングヘッド31の位置は、テーブルモータ13、アームモータ42、およびサーボモータ55の動作に基づいて取得される。
図2に示すように、テーブルモータ13、アームモータ42、およびサーボモータ55の動作は、共通のモータ制御部57によって制御される。したがって、ドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量と、対応するドレッシングヘッド31の位置は、実質的に同じタイミングで取得される。結果として、パッドプロファイル生成器70は、ドレッシングヘッド31の高さの測定値および研磨パッド10の摩耗量と、対応するドレッシングヘッド31の位置を正しく組み合わせることができ、正確なパッドプロファイルおよび摩耗分布を生成することができる。
【0052】
図9は、ドレッシングヘッド31の高さ(研磨パッド10の表面高さ)と、対応するドレッシングヘッド31の位置を取得する工程を示すフローチャートである。アームモータ42を作動させてドレッシングヘッド31を研磨パッド10の上方位置に移動させる(ステップ1)。モータ制御部57は、サーボドライバ56の運転モードを位置決め制御モードに切り替える(ステップ2)。サーボドライバ56は、位置決め制御モードでサーボモータ55を駆動し、サーボモータ55はドレッシングヘッド31を予め設定された位置まで高速で下降させる(ステップ3)。
【0053】
ドレッシングヘッド31が予め設定された位置に達した後、モータ制御部57はサーボドライバ56の運転モードを位置決め制御モードからトルク制御モードに切り替える(ステップ4)。モータ制御部57は、サーボモータ55のトルクを所定の値に維持するためのトルク指令信号をサーボドライバ56に送る(ステップ5)。サーボドライバ56は、サーボモータ55のトルクが上記所定の値に維持されるように、サーボモータ55をトルク制御モードで駆動する(ステップ6)。
【0054】
次に、アームモータ42が作動されてドレッシングヘッド31を研磨パッド10上で揺動させる(ステップ7)。パッドプロファイル生成器70は、研磨テーブル11の回転角度、ドレッサー揺動アーム33の旋回角度、ドレッシングヘッド31の高さの測定値の取得を開始する(ステップ8)。予め設定されたドレッシング時間が経過すると(ステップ9)、パッドプロファイル生成器70は、研磨テーブル11の回転角度、ドレッサー揺動アーム33の旋回角度、ドレッシングヘッド31の高さの測定値の取得を停止する(ステップ10)。
【0055】
モータ制御部57は、サーボドライバ56の運転モードをトルク制御モードから位置決め制御モードに切り替える(ステップ11)。サーボドライバ56は、位置決め制御モードでサーボモータ55を駆動し、サーボモータ55はドレッシングヘッド31を予め設定された位置まで高速で上昇させる(ステップ12)。
【0056】
パッドプロファイル生成器70は、研磨テーブル11の回転角度を取得しなくてもよい。この場合であっても、ドレッシングヘッド31は研磨パッド10の半径方向に揺動するので、研磨パッド10のプロファイルを取得することができる。
【0057】
取得された研磨パッド10のプロファイルまたは摩耗分布に基づいて、ドレッシング条件を変更してもよい。例えば、研磨パッド10の研磨面10aが平坦になるように、研磨面10aの凸部ではドレッシングヘッド31の荷重を増やすか、またはドレッシングヘッド31の揺動速度を遅くし、研磨面10aの凹部ではドレッシングヘッド31の荷重を減らすか、またはドレッシングヘッド31の揺動速度を速くしてもよい。
【0058】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうることである。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲とすべきである。