(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記投光偏光部から出射される第2の方向の円偏光の赤外光の広がり角は32゜以上、46゜以下であり、この広がり角は上記投光部から射出される赤外光の指向角よりも大きい請求項1記載の自動水栓装置。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による自動水栓装置を説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による自動水栓装置全体の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態による自動水栓装置1は、水栓装置本体であるスパウト2と、このスパウト2への給水・停止を切り換える開閉弁部である電磁弁4と、スパウト2の先端部に設けられた光電センサ6と、この光電センサ6からの信号を処理し、電磁弁4の開閉を制御する制御部8と、を有する。
【0027】
スパウト2は、洗面ボウル10の近傍に取り付けられ、洗面ボウル10内へ吐水するように、先端部に吐水口2aが設けられている。
電磁弁4は、スパウト2に接続された給水管路12の途中に設けられ、制御部8からの信号に基づいて開閉されるように構成されている。これにより、吐水口2aからの吐水・止水を切り換えることができる。開閉弁部としては、電磁弁4の他に、制御部8からの制御信号に基づいて開閉することができる任意の開閉弁を使用することができる。
【0028】
光電センサ6は、反射光量型のセンサであり、吐水口2aの上部とスパウト2の先端部内面との間に設けられている。光電センサ6の詳細な構成については後述する。
制御部8は、光電センサ6の検出信号に基づいて電磁弁4に信号を送り、電磁弁4を開閉させるように構成されている。具体的には、制御部8は、各信号を入出力するインターフェイス、入力された信号を処理するためのマイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム(以上、図示せず)等により構成されている。
【0029】
本実施形態による自動水栓装置1においては、洗面ボウル10上方の、
図1に想像線で示す所定の検知領域14に使用者の手指等が差し出されると、これを光電センサ6が検出し、検出信号が制御部8に送られる。制御部8は、検出信号が入力されると電磁弁4に信号を送り、電磁弁4を開弁させ、吐水口2aから手指等に向けて吐水がなされる。また、光電センサ6からの検出信号が受信されなくなると、制御部8は電磁弁4に信号を送り、電磁弁4を閉弁させ、吐水を停止させる。
【0030】
次に、
図2乃至
図4を参照して、スパウト2の先端部の構成及び内蔵されている光電センサ6の構成を説明する。
図2は、スパウト2を先端部正面から見た図である。
図3は、スパウト2の先端部に内蔵されている光電センサ6の分解斜視図である。
図4は、光電センサ6の断面図である。
図2に示すように、スパウト2の先端部には、吐水口2aが設けられると共に、吐水口2aの一方の側に沿うように、円弧状断面を有する光電センサ6が配置されている。
【0031】
また、
図3に示すように、光電センサ6は、センサ本体16と、赤外光を投光する投光部である赤外線発光ダイオード18と、手指等の検出体により反射された赤外光を受光する受光部である赤外線センサ20と、赤外線発光ダイオード18及び赤外線センサ20を保持するホルダ22と、赤外線発光ダイオード18の先端側に配置された投光偏光部である第1円偏光板24と、赤外線センサ20の先端側に配置された受光偏光部である第2円偏光板26と、赤外光が透過可能な素材で形成された透光部28と、を有する。
【0032】
赤外線発光ダイオード18は、直流電流を流すことにより赤外光を発生する発光ダイオードである。なお、赤外光を発生する任意の素子を投光部として使用することができる。
赤外線センサ20は、赤外光が入射されることにより所定の電気信号を出力する光電変換素子であり、フォトダイオードもしくはフォトトランジスタセンサである。なお、赤外光を検出することができる任意の素子を、受光部として使用することができる。
【0033】
また、
図4に示すように、赤外線発光ダイオード18及び赤外線センサ20は、ホルダ22に固定されている。ホルダ22は赤外線発光ダイオード18との間を遮光すると共に、第1円偏光板24及び第2円偏光板26を固定するように構成されている。即ち、第1円偏光板24及び第2円偏光板26は、ホルダ22と透光部28の間に挟みこまれることにより固定され、これらがセンサ本体16に収納される。なお、
図4には、赤外線発光ダイオード18及び第1円偏光板24が示されているが、赤外線センサ20に対して配置された第2円偏光板26も全く同様に固定されている。
【0034】
第1円偏光板24及び第2円偏光板26は、本実施形態においては、左円偏光を選択的に透過させる円偏光板である。また、第1円偏光板24及び第2円偏光板26としては、左円偏光、右円偏光を透過する何れの円偏光板を使用することもできるが、同一の透過方向の円偏光板を使用する。形状を含めて、全く同一の円偏光板を使用することもできる。また、本実施形態においては、第1円偏光板24及び第2円偏光板26は、互いに90°の角度を成すように取り付けられているが、これは光電センサ6の正面から見た厚みを減らすための配置であり、必ずしも90°に配置する必要はなく、任意の方向に偏光板を取り付けることができる。なお、本明細書において、左円偏光を「選択的に透過させる」偏光板には、自然光(非偏光)が入射されたとき左円偏光のみが射出される偏光板、及び左円偏光及び右円偏光を出射し、右円偏光よりも多くの左円偏光が出射される偏光板の両方が含まれるものとする。
【0035】
従来の直線偏光板を使用した自動水栓においては、2つの直線偏光板を偏光方向が直交する向きに配置する必要があり、90°の角度が厳密に管理されていないと偏光により鏡面反射を十分に除去することができなかった。後述するように、本実施形態においては、第1円偏光板24及び第2円偏光板26の角度の管理は不要である。
【0036】
透光部28は赤外線発光ダイオード18から射出された赤外光を透過する樹脂製の板であり、偏光を利用しているため、複屈折の生じない樹脂により形成することが好ましい。
【0037】
次に、
図5及び
図6により、本発明の第1実施形態による自動水栓装置1において、鏡面反射の影響を除去する原理を説明する。
図5及び
図6は、本実施形態の自動水栓装置1の作動原理を説明するための模式図であり、自動水栓装置1側から使用者を見た図である。
なお、本実施形態においては、第1、第2円偏光板として、左円偏光を選択的に透過させる円偏光板が使用されているが、右円偏光を選択的に透過させる円偏光板も使用することができる。この場合には、以下の説明における偏光方向が全て左右逆になる。
【0038】
図5において、赤外線発光ダイオード18から出力された赤外光は自然光であり、右円偏光と左円偏光成分を等量有しているが、第1円偏光板24を透過すると概ね左円偏光成分のみとなる。手指の表面では、赤外光は拡散反射を生じるので、反射光の偏光成分は右円偏光と左円偏光の両方が含まれる。第2円偏光板26は、左円偏光成分を選択的に透過するタイプなので、反射光の概ね左円偏光成分のみが赤外線センサ20に入射する。
【0039】
図6は、自動水栓装置1が使用されていない状態で、洗面ボウル10表面で第1円偏光板24を透過した赤外光が鏡面反射を起こした場合を示している。洗面ボウル10の材質が、高い光沢のある陶器や、ステンレス、ガラスの場合には、鏡面反射が起こりやすい。
【0040】
図6に示すように、赤外光は第1円偏光板24を透過すると、
図5と同様に、概ね左円偏光成分のみを含む赤外光となる。洗面ボウル10の表面で鏡面反射が発生すると、左円偏光は右円偏光となって赤外線センサ20の方へ反射される。加えて、鏡面反射された反射光は、反射の際に拡散されないため、投光された赤外光とほぼ同等の高強度の反射光となる。しかしながら、赤外線センサ20の前に配置された第2円偏光板26は、反射光の概ね左円偏光成分のみを透過するため、洗面ボウル10表面で鏡面反射された赤外光は赤外線センサ20に入射されない。これにより、洗面ボウル10における鏡面反射が、使用者の手指による反射と誤検知されることはない。
【0041】
以上のように、第1円偏光板24及び第2円偏光板26を、同一の方向の円偏光を選択的に透過するタイプとすることにより、自動水栓装置1が鏡面反射を起こす洗面ボウル10に設置にされた場合であっても、誤検知による誤吐水が発生することはない。このように、本実施形態においては、第1円偏光板24及び第2円偏光板26によって選択的に透過される第1の方向の円偏光として左円偏光を使用し、第1の方向の円偏光とは反対方向の、第2の方向の円偏光を右円偏光としているが、第1の方向の円偏光として右円偏光を使用することもできる。
【0042】
更に、第1円偏光板24及び第2円偏光板26の配置方向は任意とすることができ、従来の直線偏光板を使用した自動水栓装置のように2枚の偏光板の偏光方向の為す角度を90°に正確に維持する必要はない。また、第1円偏光板24及び第2円偏光板26は、その形状も任意に設計することができるため、光電センサ6を、極めて容易に組み立てることができるように構成することができる。
【0043】
上記のように、本実施形態の自動水栓装置1によれば、洗面ボウル10表面等の鏡面反射による誤検知を防止しながら、拡散反射する使用者の手指等を確実に検知することができる。加えて、本実施形態の自動水栓装置1では、円偏光板等を巧みに構成することにより、ステンレス製のコップや包丁等、鏡面反射する対象物であっても、検知することを可能としている。この構成を以下に説明する。
【0044】
まず、
図7乃至
図9を参照して、照射された赤外光が拡散反射された場合と、鏡面反射された場合における反射光の強度について説明する。
図7は、赤外線発光ダイオード18から赤外光が照射された場合の各点における照射強度を説明するための図である。
図8は、赤外線発光ダイオード18から照射された赤外光が拡散反射された場合における反射光の強度を説明するための図である。
図9は、赤外線発光ダイオード18から照射された赤外光が鏡面反射された場合における反射光の強度を説明するための図である。
【0045】
検出用の投光手段としては、一般的に、赤外線発光ダイオードが使用される。この赤外線発光ダイオード18は、
図7のような砲弾型と呼ばれる形状のものが多く、先端の丸みがレンズの役割を果たし、赤外光は所定の指向角を持ったビームとして放射される。
この赤外線発光ダイオード18の光出力の総和をP[W(ワット)]、放射されるビームの広がりを、頂角(指向角)をθとする円錐とする。頂角θの円錐が張る立体角Ω[sr(ステラジアン)]は、数学的な定義から数式1のように表すことができる。
【0046】
赤外線発光ダイオード18から距離D[m]だけ離れた位置の照射強度E[W/m
2]は、照射面の面積をS[m
2]とすると、数式2で表すことができる。また、面積Sと立体角Ω、距離Dの間には数式3の関係があるから、照射強度Eは数式4のように計算することができる。
【0047】
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【0048】
次に、
図8を参照して、赤外線発光ダイオード18が、拡散反射体30から距離Dだけ離れて置かれた場合の反射光を計算する。
赤外線発光ダイオード18から放射される投光ビームは
図7と同様に、出力P、頂角θの円錐状のビームとする。投光ビームの光出力Pは拡散反射体30上の照射面30aの面積に照射される。拡散反射体30の反射率をR
Dとすると、照射面30aは、光出力PのR
D倍の光出力を持つ光源(二次光源)となって反射光を放射する。
【0049】
照射面30aは拡散反射体であるため、反射光は照射面30aを中心とする半球状に広がる。つまり、
図8の照射面30aを
図7の赤外線発光ダイオード18と置き換え、光出力PをP×R
Dに置き換え、放射ビームの頂角θを180°(Ω=2πとなる)とすれば、数式4により、赤外線センサ20の位置における照射強度E
Dは数式5のように求めることができる。
【数5】
【0050】
次に、
図9を参照して、赤外線発光ダイオード18が、鏡面反射体32から距離Dだけ離れて置かれた場合の反射光を計算する。
赤外線発光ダイオード18から放射される投光ビームは
図7と同様に、出力P、頂角θの円錐状のビームとする。投光ビームは鏡面反射体32の照射面32aの面積に照射されるが、鏡面反射をするため、投光ビームの広がりの状態を維持したまま反射される。これは、
図9の鏡面反射体32の右側に示すように、光出力Pがそのまま直進して距離2Dの位置(鏡面反射体32を中心として、実際の赤外線センサ20の鏡像の位置)に赤外線センサ20があると考えることと等価である。
【0051】
鏡面反射体32の反射率をR
Mとすると、赤外線センサ20の位置における照射強度E
Mは、数式4の光出力PをP×R
Mに、距離Dを2Dに置き換えることにより、数式6のように求めることができる。
ここで、拡散反射による照射強度E
Dも鏡面反射による照射強度E
Mも、距離の2乗に反比例することに注意すべきである。
【0053】
ここで、各照射強度E
MとE
Dの比率を、数式5及び数式6に基づいて計算すると、数式7となる。
【数7】
【0054】
仮に、反射率R
M=R
D、投光ビームの頂角θ=20°(発光ダイオードとして一般的な値)とするとE
MはE
Dの33倍もの非常に大きな値となる。このため、鏡面反射が発生すると、赤外線センサ20には高強度の反射光が戻り、誤検知を発生する原因となる。本実施形態においては、赤外線センサ20の前に第2円偏光板26を配置することによりE
Mを除去している。
【0055】
しかしながら、上記のように、拡散反射による照射強度E
Dも鏡面反射による照射強度E
Mも、距離の2乗に反比例する特性がある。よって、鏡面反射を検出する際の光出力を制御して低減することができれば、洗面ボウル10表面等の鏡面反射による誤検知を回避しながら、赤外線センサ20の近くに差し出された鏡面反射体の検出が可能となる。
【0056】
次に、
図10を参照して、誤検知を回避しながら、赤外線センサの近くに配置された鏡面反射体を検出する原理を説明する。
図10は、第1円偏光板の界面における反射を説明する図である。
【0057】
本実施形態の自動水栓装置1においては、第1円偏光板の界面における反射を利用して、光出力を制御している。
まず、空気中から屈折率nの物質に光が垂直に入射する場合、または出射する場合、界面においては数式8により計算される反射R
Sが発生する。第1円偏光板24は、部材としての取り扱いのし易さや機械的強度を得るために、ガラスやアクリル樹脂などの屈折率n=約1.5の物質で表面が保護されているため、数式8より、界面の反射R
Sは約4%となる。
【数8】
【0058】
本実施形態においては、第1円偏光板24として、反射型の円偏光板が使用されている(第2円偏光板26も同じ)。この反射型の円偏光板は、コレステリック液晶の選択反射を利用したものである。
【0059】
図10に示すように、第1円偏光板24は左円偏光を透過し、右円偏光を反射する反射型円偏光板であり、屈折率n=1.5の材料からなるものである。
赤外線発光ダイオード18から放射される赤外光は自然光(非偏光)なので、右円偏光と左円偏光の成分を同量、含んでいる。ここで、赤外光に含まれる右円偏光及び左円偏光の成分を夫々100とする。この値は、透過、反射の割合を算出するための相対的な値であり、単位は特に必要無い。
図10において、図の左から右方向へ進む光が手指等の検出体に向けて出射される光成分であり、この光が検出に利用される。
【0060】
赤外線発光ダイオード18から放射された100の左円偏光は、屈折率n=1.5の第1円偏光板24に入射する際、そのうちの4%に相当する4が反射され、右円偏光となる。残り96の左円偏光が左円偏光のまま第1円偏光板24に入射し、再び空気中に出射される際に96の4%に相当する3.8が界面で反射されて右円偏光となり、残りの92.2(=96−3.8)が左円偏光として出射される。
界面で反射された3.8の右円偏光は、第1円偏光板24の内部の選択反射機能によって反射され、右円偏光として出射される。この際にも界面において4%の反射が発生するが、非常に小さい値(0.04の二乗)となるので、この反射は無視する。
【0061】
一方、赤外線発光ダイオード18から放射された100の右円偏光は、屈折率n=1.5の第1円偏光板24に入射する際、4%の4が反射され、左円偏光となる。残り96が右円偏光のまま第1円偏光板24に入射するが、第1円偏光板24の内部の選択反射機能によって反射され、右円偏光として赤外線発光ダイオード18の側に戻る。この際にも界面において4%の反射が発生し、3.8が左円偏光として第1円偏光板24から出射する。この際の界面反射も、非常に小さい値となるため無視する。
【0062】
以上より、
図10において、赤外線発光ダイオード18から放射された赤外光は、第1円偏光板24の右側へ、左円偏光成分が96(=92.2+3.8)、右円偏光成分が3.8出射される。このように、右円偏光成分は左円偏光成分の約25分の1という僅かな量だけ第1円偏光板24から出射される。即ち、第1円偏光板24は、左円偏光成分を選択的に透過させる。なお、第1円偏光板24から出射される左円偏光成分と右円偏光成分の比率は第1円偏光板24の屈折率に依存するため所定の割合に固定され、形状誤差等の影響を受けることなく安定した値となる。
【0063】
次に、
図8を参照して説明した、拡散反射体30による反射を、第1円偏光板24及び第2円偏光板26の作用を含めて計算する。第1円偏光板24から出射する左円偏光成分の出力をP
L、右円偏光成分の出力をP
R、両方を合わせた出力をP
L+Rとする。なお、赤外線発光ダイオード18から放射された赤外光のビームは、第1円偏光板24を透過した後も、ほぼ同一の頂角θ(立体角Ω)を維持したまま拡散反射体30に到達する。
【0064】
拡散反射体30において反射された赤外光は、その約半分が右円偏光成分、残りの半分が左円偏光成分となって赤外線センサ20の方へ戻る。しかしながら、反射光のうちの右円偏光成分は、第2円偏光板26を殆ど透過することができないため、赤外線センサ20に到達する光出力は約半分になる。また、上記のように、第1円偏光板24から出射する赤外光の大部分は左円偏光成分であるため、P
L+RはP
Lにほぼ等しくなる。これらの条件を数式5に代入すると、赤外光が拡散反射体30によって反射された場合において、赤外線センサ20によって受光される光の照射強度E
Dは数式9のように計算される。
【数9】
【0065】
同様に、
図9を参照して説明した、鏡面反射体32による反射を、第1円偏光板24及び第2円偏光板26の作用を含めて計算する。なお、赤外線発光ダイオード18から放射された赤外光のビームは、第1円偏光板24を透過した後も、ほぼ同一の頂角θ(立体角Ω)を維持したまま鏡面反射体32に到達する。
【0066】
上記のように、赤外線発光ダイオード18から射出された赤外光が第1円偏光板24に入射されると、第1円偏光板24からは、96の左円偏光成分と、3.8の右円偏光成分が出射される。これらのうちの左円偏光成分は、鏡面反射体32において鏡面反射されると右円偏光成分となるので、第2円偏光板26を殆ど透過することができず、赤外線センサ20に到達することはない。一方、右円偏光成分は、鏡面反射されることにより左円偏光成分となるので、第2円偏光板26を透過して赤外線センサ20によって受光される。即ち、第1円偏光板24から出射した右円偏光成分出力P
Rが、鏡面反射によって左円偏光となり、赤外線センサ20に到達する。
【0067】
これらの条件を数式6に代入すると、赤外光が鏡面反射体32によって反射された場合において、赤外線センサ20によって受光される光の照射強度E
Mは数式10のように計算される。
【数10】
【0068】
ここで、本実施形態の自動水栓装置1において、制御部8は、赤外線センサ20によって受光された光の照射強度が所定のしきい値を超えたとき、使用者の手指等が所定の検知領域に差し出されたと判断して、電磁弁4を開弁させるように構成されている。従って、数式10により計算した鏡面反射による照射強度E
Mが数式9により計算した拡散反射による照射強度E
Dよりも大きい場合には、検知領域に差し出された(拡散反射する)手指等を検知すると同時に、洗面ボウル10等の鏡面反射による誤検知を回避することが困難となる。
【0069】
即ち、洗面ボウル10等の鏡面反射による誤検知は、光電センサ6と洗面ボウル10との距離が近いほど発生しやすい。しかしながら、光電センサ6に対して、使用者の手指等の被検知物よりも洗面ボウル10の方が近くなることはない。このため、誤検知が最も発生しやすい状態は、使用者の手指等の被検知物と洗面ボウル10が、光電センサ6から等距離にある場合ということになる。この状態において、数式10により計算した鏡面反射の照射強度E
Mが数式9により計算した拡散反射による照射強度E
Dを超えていなければ、洗面ボウル10の誤検知を回避しながら、洗面ボウル10と等距離にある被検知物が検知されるようにしきい値を設定することが可能になる。
【0070】
従って、拡散反射による照射強度E
Dと鏡面反射による照射強度E
Mの間には、E
D≧E
Mという条件が成立する必要がある。この条件式に数式9及び10を代入すると、
【数11】
の関係式が得られ、この関係式を整理すると、
【数12】
の関係が得られる。
【0071】
図10に基づいて説明したように、本実施形態において、第1円偏光板24から出射する各円偏光成分の出力の比P
R/P
Lは1/25である。また、想定される拡散反射体の反射率R
Dを、人の皮膚の典型的な値である約50%とし、想定される鏡面反射体の反射率R
Mを鏡に近いものを想定して約100%とすると、R
M/R
D=2/1となる。これらの値を数式12に代入すると、
【数13】
となる。
【0072】
この数式13を整理することにより、赤外線発光ダイオード18から射出される赤外線ビームの頂角θ(≒第1円偏光板24から出射されるビームの頂角)の条件としてθ≧32°(ビーム中心線に対する両側の広がり角として表示すれば、θ≧±16°)が計算される。即ち、赤外線発光ダイオード18から射出される赤外線ビームの頂角θが約32°であるとき、同一の位置に配置された反射率50%の拡散反射体30によって反射され赤外線センサ20によって受光される光の強度と、反射率100%の鏡面反射体32によって反射され受光される光の強度が等しくなる。
【0073】
即ち、ビームの頂角が±16°程度に広がる赤外線発光ダイオード18を使用すれば、光電センサ6(赤外線発光ダイオード18)から対象物までが同じ距離Dであれば、反射率50%の拡散反射体である手指と、反射率100%の鏡面反射体で同等の出力信号が赤外線センサ20から出力される。従って、鏡面反射体が洗面ボウル10であるとすれば、検知すべき手指までの距離よりも確実に遠いため、洗面ボウル10を検知することなく、差し出された手指が検知されるように、赤外線センサ20出力のしきい値を設定することができる。本実施形態の自動水栓装置1においては、ビームの頂角及びしきい値がこのように設定されている。
【0074】
さらに、射出される赤外線ビームの頂角θを±16°よりも大きく設定した場合には、拡散反射体30により反射され、受光される光の強度が、鏡面反射体32によって反射され受光される光の強度よりも大きくなる。この状態においては、拡散反射体30が赤外線発光ダイオード18から所定距離D1以内に接近すると検知されるように、光強度のしきい値を設定した場合、鏡面反射体32では、距離D1よりも近くまで接近しなければ検知されることがない。即ち、コップや包丁等の鏡面反射体を検知させる場合、手指が検知される位置よりも近くにそれらを差し出せば、赤外線センサ20の出力がしきい値を超え、検知される。鏡面反射体を検知させるために光電センサ6に近づけるという行為は使用者にとって自然なものなので、特に違和感なく自動水栓装置1を使用することができる。
【0075】
また、上述した赤外線ビームの頂角θの値は、拡散反射体の反射率R
Dを、典型的な人の皮膚を想定して、R
D=50%として計算したが、作業用手袋等には更に反射率の低いものもある。このような反射率の低い拡散反射体の反射率R
Dを25%と仮定すれば、数式12におけるR
M/R
D=4/1となる(鏡面反射体の反射率R
M=100%とする)。このような拡散反射体について、拡散反射による反射光の強度と、鏡面反射による反射光の強度が等しくなる赤外線ビームの頂角θは、θ=約46゜(ビーム中心線に対する両側の広がり角として表示すれば、θ=±23°)となる。このように、想定される拡散反射体の反射率を低く見積もるほど、洗面ボウル10等による鏡面反射の誤検知を防止するために必要なビームの頂角θが大きくなる。しかしながら、ビームの頂角θをこれ以上大きくすると、コップや包丁等の検知すべき鏡面反射体を検知することも困難になる。
従って、赤外線発光ダイオード18から射出される赤外線ビームの指向角(第1円偏光板24を介して出射されるビームの広がり角もほぼ同一になる)は、約32゜以上、約46゜以下(±16≦θ≦±23゜)に設定することが好ましい。
【0076】
本発明の第1実施形態の自動水栓装置1によれば、鏡面反射の誤検知を防止するための第1円偏光板24及び第2円偏光板26が、何れも第1の方向の円偏光を選択的に透過させるように構成されているため、第1円偏光板24及び第2円偏光板26を任意の向きに配置することができる。これにより、偏光部として直線偏光板を使用した場合のように、第1円偏光板24と第2円偏光板26の相対的な角度を厳密に管理する必要がなく、確実に誤検知を防止することができると共に、自動水栓装置1の製造、組み立て工程を簡単にすることができる。
【0077】
また、本実施形態の自動水栓装置1によれば、第1円偏光板24から左円偏光及び右円偏光が所定の割合で射出される(
図10)ので、検知領域において鏡面反射により左円偏光に変換された赤外光を赤外線センサ20により受光することができる。このため、左円偏光と右円偏光の割合を適切に設定することにより、洗面ボウル等の誤検知を防止しながら、検知領域に差し出されたコップ、包丁等の鏡面反射を検知することができる。
【0078】
さらに、本実施形態の自動水栓装置1によれば、赤外線発光ダイオード18から射出される赤外光の指向角を32゜以上とすることにより、第1円偏光板から出射される右円偏光の広がり角も32゜以上となる。これにより、鏡面反射により左円偏光に変換されて赤外線センサ20へ戻る反射光の照射強度が、第1円偏光板24から出射された左円偏光が手指等によって拡散反射されて、左円偏光として受光部へ戻る反射光の照射強度以下となるため(数式13)、洗面ボウル等の誤検知を防止することができる。また、赤外線発光ダイオード18から射出される赤外光の指向角を46゜以下とすることにより、第1円偏光板24から出射される右円偏光の広がり角も46゜以下となる。これにより、鏡面反射により左円偏光に変換されて赤外線センサ20へ戻る反射光の照射強度が適度な大きさになるため、光電センサ6に近づけた鏡面反射体を検知することが可能になる。
【0079】
次に、
図11乃至
図13を参照して、本発明の第2実施形態による自動水栓装置を説明する。
本実施形態の自動水栓装置は、光電センサに使用されている円偏光板の構成が上述した第1実施形態とは異なる。従って、ここでは、本発明の第2実施形態の、第1実施形態とは異なる部分のみを説明し、同様の構成、作用、効果については説明を省略する。
【0080】
図11は、本発明の第2実施形態による自動水栓装置に内蔵されている光電センサに備えられている第1円偏光板の作用を説明する図である。
図12は、赤外線発光ダイオードから照射された赤外光が拡散反射された場合における反射光の強度を説明するための図である。
図13は、赤外線発光ダイオードから照射された赤外光が鏡面反射された場合における反射光の強度を説明するための図である。
【0081】
図11に示すように、本実施形態の自動水栓装置に使用されている投光偏光部である第1円偏光板124は、所定の方向の円偏光成分を選択反射する反射層124aと、同方向の円偏光成分を拡散する拡散層124bと、を有し、これらの層が貼り合わされている。この第1円偏光板124の反射層124aの作用は、
図10を参照して説明した、第1実施形態における第1円偏光板24と同様である。なお、本実施形態においては、赤外線センサ20の前に配置された受光偏光部である第2円偏光板126も、第1円偏光板124と同一の構成を有する(
図12、
図13)。また、これらの第1円偏光板124と第2円偏光板126を一体に、一枚の円偏光板として構成することもできる。
【0082】
即ち、赤外線発光ダイオード18から放射される赤外光に含まれる右円偏光及び左円偏光の成分を夫々100とすると、100の左円偏光は、第1円偏光板124の反射層124aに入射する際、そのうちの4%に相当する4が反射され、右円偏光となる。残り96の左円偏光が左円偏光のまま反射層124aに入射し、拡散層124bを介して再び空気中に出射される際に96の4%に相当する3.8が反射されて右円偏光となり、残りの92.2(=96−3.8)が第1円偏光板124から左円偏光として出射される。この第1円偏光板124から出射される左円偏光成分の広がり角θ
Lは、赤外線発光ダイオード18から放射される投光ビームの広がり角とほぼ等しくなる。
【0083】
一方、反射された3.8の右円偏光は、反射層124aの内部の選択反射機能によって反射され、拡散層124bを介して右円偏光として出射される。この際、右円偏光成分は、拡散層124bにより拡散され、所定の角度で広がるように出射される。この拡散層124bの作用により広がる角度をθ
Dとすると、右円偏光の広がりθ
Rは、赤外線発光ダイオード18の放射ビームの広がり角に、拡散層124bの作用による角度θ
Dを加えたものとなる。
【0084】
この拡散層124bは、左円偏光を拡散することなく通過させ、右円偏光を選択的に拡散反射する。この拡散層124b(拡散反射層)には、層面をフィルターの平面からランダムに傾斜したコレステリック液晶を用いることが好ましい。この層面の傾斜する方向はランダムであり、また平均傾斜角度は1度〜15度が好ましく、これよりも大きな角度になると通過する左円偏光を拡散偏光解消させるからである。このような膜面が傾斜したコレステリック液晶層は、ラビング処理をしていない水平配向性の基材に、コレステリック液晶を塗布し、その配向を固定することによって得ることが出来る。左円偏光を拡散することなく通過させ、右円偏光を選択的に拡散反射するためには、膜の厚みは0.5μm〜8μmであることが好ましく、1〜6μmであることがより好ましい。
【0085】
さらに、赤外線発光ダイオード18から放射された100の右円偏光は、第1円偏光板124の反射層124aに入射する際、4%の4が反射され、左円偏光となる。残り96が右円偏光のまま反射層124aに入射するが、反射層124aの内部の選択反射機能によって反射され、右円偏光として赤外線発光ダイオード18の側に戻る。この際にも4%の反射が発生し、3.8が左円偏光として拡散層124bを介して第1円偏光板124から出射する。この左円偏光成分も拡散層124bにおいて拡散されることはない。
【0086】
次に、
図12を参照して、第1円偏光板124から出射された赤外光が、拡散反射された場合について説明する。
上記のように、本実施形態においては、第1円偏光板124から出射される赤外光の広がり角が、左円偏光と右円偏光で異なっている。左円偏光成分は、拡散層124bにおいて殆ど拡散されないため、その広がり角θ
Lは、赤外線発光ダイオード18から射出される投光ビームの頂角θとほぼ同じである。一方、右円偏光成分は、拡散層124bにおいて拡散され、その広がり角θ
Rは、左円偏光成分の広がり角θ
Lよりもθ
Dだけ大きくなる(θ
R=θ
L+θ
D)。
【0087】
このように、本実施形態においては、広がり角が左円偏光成分と右円偏光成分で異なっているが、各成分とも拡散反射体30で反射されることにより、左円偏光成分及び右円偏光成分を含む光に変換される。これらの反射光のうちの左円偏光成分が、第2円偏光板126を透過して受光部である赤外線センサ20により受光される。赤外線センサ20によって受光される赤外光の照射強度は、第1実施形態と同様に数式5によって計算することができる。なお、数式5は、拡散反射体30上に形成される照射面が十分に小さいことを仮定して得られた近似式であるため、左円偏光成分と右円偏光成分の広がり角の相違は、数式5を使用した計算には反映されない。この広がり角の影響については後述する。
【0088】
次に、
図13を参照して、第1円偏光板124から出射された赤外光が、鏡面反射された場合について説明する。
まず、本実施形態においては、第1円偏光板124から出射される左円偏光成分の広がり角θ
Lは、赤外線発光ダイオード18から射出される投光ビームの頂角θとほぼ同じである。この左円偏光成分は、鏡面反射体32において鏡面反射されると右円偏光になるため、第2円偏光板126を殆ど透過せず、赤外線センサ20によって受光されることはない。
【0089】
一方、第1円偏光板124から出射される右円偏光成分の広がり角θ
Rは、赤外線発光ダイオード18から射出される投光ビームの頂角θよりも大きくされている。この右円偏光成分は、鏡面反射体32において鏡面反射されると左円偏光になるため、第2円偏光板126を透過して、赤外線センサ20によって受光される。赤外線センサ20によって受光される赤外光の照射強度は、第1実施形態における数式6のθをθ
Rに置き換えることにより計算することができる。ここで、右円偏光成分の広がり角θ
Rは、赤外線発光ダイオード18から射出される投光ビームの頂角θよりも大きくされているため、反射光も、より大きな領域に広がって赤外線センサ20の方へ戻る。このため、赤外線センサ20によって受光される赤外光の照射強度が低くなる。
【0090】
上述した第1実施形態においては、鏡面反射による反射光の照射強度E
Mを低下させ、拡散反射の照射強度E
D以下に設定する(数式13)ためには、赤外線発光ダイオード18から射出される投光ビームの頂角θを大きく設定する必要があった。これに対し、本実施形態においては、第1円偏光板124から出射される右円偏光成分の広がり角θ
Rのみが大きくされるので、投光ビームの頂角θ(左円偏光成分の広がり角θ
L)を小さく維持したまま、鏡面反射の反射光の照射強度E
Mを低下させることができる。この投光ビームの頂角θを小さく維持したまま鏡面反射の反射光の照射強度E
Mを低下させることによる効果を以下に説明する。
【0091】
上記のように、拡散反射による反射光の照射強度については、数式9により計算しているが、この式は、ビームの広がりを十分に小さいものとして無視したものである。すなわち、
図8における照射面30aが代表的な検出対象である手のひらに対して、十分に小さいとして計算している。しかしながら、数式13により計算されたように、誤検知を回避すべく鏡面反射の反射光の照射強度E
Mを低下させるには、投光ビームの頂角θ(広がり角)を±16°以上に広げる必要がある。鏡面体の洗面ボウル等による誤感知を減らし、誤感知が発生しない側に安全のマージンを増やすには、更にビームも広げる必要がある。
【0092】
このようにビームを広げると、照射面30aのサイズが大きくなり、手のひらのサイズを超える場合もある。例えば、頂角θ=±16°のビームは15cm先で直径約9cmとなり、手のひらのサイズを超える可能性が高い。これにより、放射したビームの一部が手のひらによって反射されなくなり、赤外線センサ20の出力が低下する。すなわち、手指等の検出感度が低下し、自動水栓装置の使い勝手が悪くなる。
逆に、子供の手のひらでも十分な拡散反射光が得られるように投光ビームの頂角θを小さくすると、鏡面反射体によって赤外線センサ20に受光される照射強度が高くなり、誤検知の可能性が高くなる。
【0093】
これに対して、本発明の第2実施形態における第1円偏光板124を使用することにより、
図12に示すように、左円偏光成分を比較的広がり角の小さいθ
Lのビームで拡散反射体に放射することができ、小さな手に対しても効率よく反射をさせることができる。
【0094】
一方、鏡面反射体に対しては、
図13のように、右円偏光成分を比較的広いθ
Rのビームで放射し、鏡面反射に基づいて赤外線センサ20に受光される照射強度を低く抑えることができる。右円偏光成分のビームの広がりが大きくなることにより、検知すべきコップや包丁等の鏡面反射体からの反射光は弱くなるが、鏡面反射体は、手指等の拡散反射体よりも近くに差し出されたときに検知されれば十分である。ここで、光電センサ(赤外線発光ダイオード18)の近傍においては、広がり角が大きい右円偏光成分のビームもあまり大きく広がっていないため、照射面は検出対象物に対して小さく、十分な感度でコップや包丁等の鏡面反射体を検知することができる。
【0095】
このように、左円偏光成分の広がり角θ
Lは小さい方が好ましく、右円偏光成分の広がり角θ
Rは32°以上が望ましい。しかしながら、第1実施形態において説明したように、広がり角θ
Rを約46゜(θ
R=±23°)以上に大きくすると、コップや包丁等の検知すべき鏡面反射体を検知することも困難になる。従って、第1円偏光板124を介して出射される右円偏光成分の広がり角θ
Rは、約32゜以上、約46゜以下(±16≦θ
R≦±23゜)に設定することが好ましい。
【0096】
なお、実際の赤外線発光ダイオードは、投光ビームの頂角θ内に完全に均一な赤外光を放射するものではなく、ある程度の「ぼけ」を持っており、上述した各数式には、このことが反映されていない。しかしながら、投光ビームの頂角θの外へ赤外光が広がる部分と、頂角θの内側で赤外光の強度が低下する部分が補い合うため、各数式を使用して、物体を検知する光電センサを十分な精度で設計することができる。
【0097】
本発明の第2実施形態の自動水栓装置によれば、第1円偏光板124から出射される右円偏光の赤外光の広がり角は、第1円偏光板124から出射される左円偏光の赤外光の広がり角よりも大きい。このため、右円偏光の照射強度が低下される。これにより、洗面ボウル等の鏡面反射により右円偏光から左円偏光に変換されて赤外線センサ20へ戻る赤外光の照射強度を適度に低下させることができ、洗面ボウル等の誤検知を防止しながら、検知領域14に差し出されたコップ、包丁等の鏡面反射を検知することができる。
【0098】
また、本実施形態の自動水栓装置によれば、第1円偏光板24から出射される右円偏光の赤外光の広がり角を32゜以上、46゜以下とすることにより、洗面ボウル等の誤検知を防止しながら、光電センサに近づけた鏡面反射体を検知することが可能になる。加えて、第1円偏光板24から出射される左円偏光の赤外光の広がり角を小さく設定しておく(
図12、
図13)ことにより、サイズの小さい拡散反射体からも十分な強度の反射光を受光することができ、手指等を確実に検知することができる。
【0099】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した第1、第2実施形態においては、光電センサがスパウトの先端部に取り付けられていたが、光電センサは任意の位置に設けることができる。また、上述した第1、第2実施形態においては、投光偏光部である第1円偏光板と、受光偏光部である第2円偏光板が、別々の偏光板で構成されていたが、これらを一体にして1枚の偏光板で構成することもできる。
【0100】
次に、
図14及び
図15を参照して、偏光板を1枚とした変形例を説明する。
図14は本発明の変形実施形態における光電センサ160の分解斜視図であり、
図15は、その光電センサの断面図である。
図14に示すように、本変形実施形態において使用されている円偏光板164は1枚であり、投光部である赤外線発光ダイオード18及び受光部である赤外線センサ20の双方を覆う、円弧状に構成されている。
【0101】
本変形実施形態に使用する円偏光板164として右円偏光または左円偏光のいずれのタイプも使用することができ、
図5及び
図6により説明したように、出射された赤外光の円偏光とは逆方向の円偏光を除去することができる。また、円偏光板を一体化することにより、投光側と受光側で偏光板を別部品として用意する必要がなくなる。なお、円偏光板を一体化する変形は、上述した第1、第2実施形態の何れにも適用することができる。
【0102】
また、上述した第1、第2実施形態においては、第1円偏光板及び第2円偏光板の位置を規定するための構造(円偏光板の形状に合わせた、へこみ)が必要であった。これに対して、本変形実施形態においては、
図14に示すように、例えば円偏光板164の形状をセンサ本体16の内側の形状に合わせることにより、ホルダ162と透光部28との間に挟み込むだけで円偏光板164を固定することができ、ホルダ162の構造を簡略化することができる。
【0103】
また、透光部28と円偏光板164を2つの部品だけで構成することができるので、これらを接着剤で貼り合わせたり、インサート成型により構成することも可能となり、製造性および組み立て性を向上させることができる。