特許第6317900号(P6317900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6317900高圧冷凍機で用いるための協働するキャピラリーとキャップ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6317900
(24)【登録日】2018年4月6日
(45)【発行日】2018年4月25日
(54)【発明の名称】高圧冷凍機で用いるための協働するキャピラリーとキャップ
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/28 20060101AFI20180416BHJP
【FI】
   G01N1/28 K
   G01N1/28 F
   G01N1/28 G
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-185867(P2013-185867)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2014-55949(P2014-55949A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2016年9月6日
(31)【優先権主張番号】12183821.3
(32)【優先日】2012年9月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501233536
【氏名又は名称】エフ イー アイ カンパニ
【氏名又は名称原語表記】FEI COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ルドルフ ヨハネス ペーター ヘラルドゥス スカンパー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス アントニウス ヘンドリクス ウィルヘルムス ヘラルドス ペルスーン
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス テオドラス エンヘレン
【審査官】 西浦 昌哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−318035(JP,A)
【文献】 特開平10−221228(JP,A)
【文献】 特開2009−014719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00− 1/44
G01N 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部容積内に水溶液を含む、協働するキャピラリーとキャップの集合体であって、
当該集合体は、高圧冷凍機内で用いられるように構成され、
前記高圧冷凍機内では、前記水溶液が高圧で冷凍されて、極低温でアモルファスの凍結試料が前記キャピラリーの内部に生成され、
前記キャピラリーの内部容積は、500μm未満の直径を有し、
前記キャップは、前記キャピラリーの一の端部を閉じるように構成され、
前記キャップが前記キャピラリーの内部容積を閉じるときに、前記キャピラリーの内部容積と接する前記キャップの部分は凹部を有し、その結果、前記水溶液の冷凍後、前記キャップは前記キャピラリーから取り外され、凍結した試料材料の柱状体が支持体なしで前記キャピラリーの内部容積から延びる、ことを特徴とする集合体。
【請求項2】
前記凹部が、錐体形状の凹部又は切頭形の錐体形状の凹部の形態をとり、かつ、
前記柱状体が、錐体又は切頭形の錐体の形態をとる、
請求項1に記載の集合体。
【請求項3】
前記凹部が、該凹部の深さより長い直径を有する、請求項1又は2に記載の集合体。
【請求項4】
前記キャピラリーは金属キャピラリーである、請求項1乃至3のうちいずれか一項に記載の集合体。
【請求項5】
前記キャップが金属キャップ又はセラミックキャップである、請求項1乃至4のうちいずれか一項に記載の集合体。
【請求項6】
前記キャピラリーの中央部での壁の厚さが、前記キャップによって封止されている前記キャピラリーの端部の厚さよりも厚い、請求項1乃至5のうちいずれか一項に記載の集合体。
【請求項7】
極低温試料を調査する方法であって:
協働するキャピラリーとキャップの集合体内に試料材料を供する段階;
前記集合体を高圧冷凍機内に挿入する段階;
アモルファスの極低温試料を前記キャピラリーの内部に生成する段階;
前記キャップを前記キャピラリーから取り外す段階;
凍結した前記試料材料を極低温で調査する段階;
を有し、
前記キャップは凹部を備えるキャップで、
前記キャピラリーが、前記キャップの凹部内で適合するように生成される鋭利な針の端部を有し、
前記キャップが取り外されるとき、支持体なしで存在する凍結した試料材料の柱状体が前記キャピラリーの内部から露出する、
ことを特徴とする方法。
【請求項8】
前記試料材料が、荷電粒子ビームの試料チャンバ内で調査され、かつ、
前記試料材料の表面はイオンビームによって加工されることで、ブロック面又は薄片が作製される、
請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記キャップが、前記試料チャンバ内において前記キャピラリーから取り外される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試料が薄片で、かつ、
前記試料が凍結置換後に調査される、
請求項7乃至9のうちいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部容積内に水溶液を含む、協働するキャピラリーとキャップの集合体に関する。当該集合体は、高圧冷凍機内で用いられるように構成される。前記高圧冷凍機内では、前記水溶液が高圧で冷凍されて、極低温でアモルファスの凍結試料が生成される。前記キャピラリーの内部容積は、500μm未満(好適には350μm未満)の直径を有する。前記キャップは、前記キャピラリーの一の端部を閉じるように構成される。
【0002】
本発明はさらに当該集合体の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
係る集合体はたとえば特許文献1から既知である。
【0004】
高圧冷凍(HPF)は、アモルファスの氷を有する試料を生成するのに用いられる方法である。係る試料は薄い試料を急速に冷凍することによって生成されうることが知られている。冷凍速度は104K/sを超える速度でなければならない。なぜなら未満の冷凍速度では、氷の結晶が生成されるからである。試料が加圧されるとすると、104K/sよりも低い冷凍速度が用いられ得ることが知られている。約2100[bar]の圧力では、たとえば103K/sの冷凍速度で、アモルファスの(ガラス化した)試料となる。このように冷凍速度が低いため、従来よりも厚い試料を生成することができる。また成功率(氷の結晶の存在しない試料の割合)も増大しうる。
【0005】
アモルファスの氷は、水のガラス転移温度(約135K)よりも低い温度で安定していることに留意して欲しい。
【0006】
特許文献1は、試料材料を含む水溶液が装荷された金属キャピラリーの使用について記載している。典型的には、金属キャピラリーは、650μmの外径と及び350μmの内径を有する(LEICA EM PACT2の取扱説明書より)。水溶液は、金属キャピラリー内部で適合する、たとえばセルロース又はポリマー製の小さなキャピラリー内に含まれる。セルロース製のキャピラリーが用いられる場合、そのセルロース製のキャピラリーは、水と混和しない流体(たとえば凝固点の低い(好適には120℃未満)炭化水素(たとえば1-ペンテン、1-クロロブタン等))の薄い層で取り囲まれることが好ましい。金属キャピラリーは2つの端部を有し、各端部は錐体形状の凹部を有することが好ましい。キャピラリーの一の端部は、錐体であるキャップによって閉じられる。その錐体の頂部は、そのキャピラリーの凹部と適合して、その凹部内の中心に位置する。そのキャピラリーの他の端部は、そのキャピラリーの凹部内で適合する錐体形状の端部を備える鋼鉄製の管を介して高圧管に接続される。その高圧管は、動作中のキャピラリーと高圧流体(たとえばオイル)とを接続することで、キャピラリー内の水溶液は好適には2100[bar]の圧力に加圧される。
【0007】
試料は、約2100[bar]に加圧され、ガラス転移温度よりも低い温度にまで急速に冷却されることによってガラス化する。その後その試料は減圧される。試料は液体によって取り囲まれているので、全体がセルロース製である内側キャピラリーは、たとえば適切な直径のワイヤ又はドリルビットによって金属キャピラリーから押し出されることで突出しうる。
【0008】
この方法の欠点は、金属キャピラリーの非常に小さな容積の大部分が試料ではない材料で満たされることである。つまりポリマーキャピラリーのセルロースだけではなく水と混和しない材料も、直径がわずか350μmの金属キャピラリー内に存在する。
【0009】
金属キャピラリーを試料材料で完全に満たして、セルロース製のキャピラリーのキャピラリーなしで用いることも知られていることに留意して欲しい。その場合、金属キャピラリーは、試料冷凍後に、たとえばミクロトームで削ることによって開けられなければならない。
【0010】
この方法の欠点は、露出した試料材料が、金属を取り除く(キャピラリーを開ける)ときに、その試料材料に力が及ぼされることによって変形する恐れがあることである。
【0011】
さらに他の方法では、金属は、集束イオンビーム装置又は電子ビーム鏡筒とイオンビーム鏡筒の両方を備える装置を用いることで、イオンビームによって除去される。これは、試料が電子ビーム鏡筒によって検査され、かつ、ブロック面又は薄片を生成するのにイオンビーム鏡筒によって加工できるという利点を有する。しかし欠点は、金属のミリング速度は相対的に低く、試料材料を露出されるのに長い時間を要することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6758362号明細書
【特許文献2】国際公開第2012/038484号パンフレット
【特許文献3】米国特許第5270552号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】B. Lich, “Site Specific Three-dimensional Structural Analysis in Tissues and Cells Using Automated DualBeam Slice &View”, Microscopy Today, 2007年, pp 26 − 30
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
試料材料を変形させることなく高スループットを実現する方法が求められている。本発明は、そのような方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的のため、キャップがキャピラリーの内部容積を閉じるときに、前記キャピラリーの内部容積と接する前記キャップの部分は凹部を有し、その結果、前記水溶液の冷凍後、前記キャップは前記キャピラリーから取り外され、凍結した試料材料の柱状体が支持体なしで前記キャピラリーから飛び出す。
【0016】
試料材料が凹部(好適には錐体形状の凹部)内に延びるように前記キャップを構成することによって、本願発明者等は、前記試料が凍結されたとき、前記キャップが取り外されて、前記試料材料の一部が露出され、さらなる調査が可能になったことを発見した。
【0017】
前記試料の解放と、たとえばブロック面及び/又は薄片の生成は、(再)結晶化が起こらないように、ガラス転移温度よりも低い温度で行われなければならないことに留意して欲しい。従って、前記試料の冷凍時点から、前記試料が調査、又は、解凍可能なように処理される(たとえば凍結置換)まで、前記試料は約-130℃以下に保たれなければならない。このことは、本発明による協働するキャップとキャピラリーを用いる方法だけではなく、従来技術に係るキャップとキャピラリーを用いる方法にも当てはまる。
【0018】
好適には前記キャピラリーは金属キャピラリーで、より具体的には鋼鉄又は銅である。前記キャップは、高い熱伝導率と低い熱容量を有するので、前記凹部内の材料を急速冷却することが可能である。そのためには前記キャップは金属又はセラミック材料で作られなければならない。
【0019】
前記キャップ中の試料材料が、前記キャピラリー内の試料材料から破断して、前記キャップを取り外すときに前記キャップ内に残るのを防ぐため、前記凹部の深さは、前記キャピラリーの直径の半分以下であることが好ましい。よって錐体の場合、頂部の角度は90°以上である。さらに前記錐体は、鋭利な頂部の存在しないなまった状態であることが好ましい。
【0020】
本発明の態様では、極低温試料を調査する方法が供される。当該方法は、
− 協働するキャピラリーとキャップの集合体内に試料材料を供する段階、
− 前記集合体を高圧冷凍機内に挿入する段階、
− アモルファスの極低温試料を生成する段階、
− 前記キャップを前記キャピラリーから取り外す段階、
− 凍結した前記試料材料を極低温で調査する段階、
を有し、
− 前記キャップは凹部を備えるキャップで、
− 前記キャップが取り外されるとき、支持体なしで存在する凍結した試料材料の柱状体が露出する、
ことを特徴とする。
【0021】
前記調査は、ブロック面又は薄片(薄いスライス)の調査であって良い。
【0022】
本発明の実施例では、前記調査は、荷電粒子ビームによる調査を含む。
【0023】
この実施例は、電子ビーム、イオンビーム、又は荷電クラスタビームによる前記試料の調査について説明する。当業者に知られているように、電子ビームは、非常に高い解像度を与える(走査電子顕微鏡(SEM)を用いれば200eVで1nmであり、TEMを用いれば300keVで0.05nmである)。
【0024】
他の実施例では、前記ブロック面又は薄片の表面はイオンビームによって加工される。
【0025】
前記試料を集束イオンビームで加工することによって被検査表面を生成する結果、前記試料に圧力を加えることなく滑らかな表面が得られ、高解像度TEMで必要とされる非常に薄い薄片の作製が可能となる。
【0026】
よって前記試料を荷電粒子装置内部で加工することによって、ブロック面又は薄片が作製及び調査可能となる。その後スライスが除去され、他のブロック面又は薄片が調査されうる。これは、”Slice&View”法として知られ、非特許文献1に記載されている。前記試料は前記キャピラリーから外部へ取り出される必要がないので、(試料材料を変形させる恐れのある)前記キャピラリーの剪断は不要となり、金属の除去も必要ない(その結果高スループットが実現される)。完全なその場”Slice&View”の処理を併用することで、本願発明に係る方法の処理はさらに速くなる。
【0027】
他の実施例では、前記薄片は凍結置換後に調査される。
【0028】
凍結置換は、前記試料中の水を他の材料に交換する可能性を与える。その結果、室温で調査可能な所謂固定試料となる。係る処理はたとえば特許文献2に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】Aは従来技術に係るキャップとキャピラリーを概略的に表し、BはAの詳細を概略的に表している。
図2】Aは本発明によるキャップとキャピラリーを概略的に表し、BはAの詳細を概略的に表している。
図3】キャップを取り外した後のキャピラリーを表している。
図4】本発明による他のキャピラリーを表している。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1のAは、従来技術に係るキャップとキャピラリーを概略的に表している。
【0031】
図1のAは、水性の試料材料3で満たされたキャピラリー1を表している。左側では、キャピラリーの一の端部がキャップ2によって閉じられている。キャップ2は封止体を構成している。キャップ2はホルダ4に適合する一方で、フェルール5はキャピラリー1を中心に位置づけている。右側では、フェルール5はキャピラリー1を中心に位置づけ、かつ、キャップ7はホルダ8内に保持される。キャップ7は、作動液をキャピラリー1の内部へ供給する軸チャネル9を有する。それによりキャピラリー1の内部と試料材料3は加圧される。
【0032】
ホルダ4とホルダ8は、キャップとキャピラリーを高圧冷凍機へ挿入する前に互いに接続されることに留意して欲しい。
【0033】
フェルール5とフェルール6の主な機能は、キャップ2とキャップ7がキャピラリー1に抗して押されるときにキャピラリー7が曲がるのを防ぐためであることに留意して欲しい。
【0034】
最初にキャピラリー1は、試料材料(たとえば細胞、細胞片、タンパク質、ウイルス等を含む溶液)によって満たされる。続いてキャピラリー1はホルダに挿入される。キャップはキャピラリーの方向に向かうように押されることで、封止体を構成する。キャピラリーとキャップを備えるホルダは、高圧冷凍機内に挿入される。圧力は、チャネル9内の作動液によって約2100[bar]にまで増大する。極低温流体はキャピラリー1に抗するように流される。その結果、キャピラリー1のその内容物の温度は急速に低下し、水溶液はアモルファスの凍結材料になる。本願明細書において、「アモルファス」とは、氷の結晶を観測できないことを意味する。キャピラリー1とその内容物を極低温(ガラス転移温度未満)に保ちながら、キャピラリーは減圧され、ホルダ4とホルダ8から取り出される。
【0035】
続いてキャピラリーは、切断又は表面を削り落とされることで解放される。その後試料材料(細胞、細胞片、タンパク質、ウイルス等)は露出される。
【0036】
結晶化及びキャピラリーでの氷の凝集を防ぐため、処理は、極低温流体(たとえば液化窒素)槽内で行われることが好ましいことに留意して欲しい。
【0037】
切断によって試料材料を露出する、及び、キャピラリーの表面を削り落とすことによる試料材料の露出することは、キャピラリー及びその中の凍結した内容物が変形することを意味する。ミクロトーム又はウルトラミクロトームを用いても、この変形を防ぐことはできない。
【0038】
最初に、キャップ2がキャピラリー1内で適合するキャピラリー1の遠端付近の試料材料が、氷の結晶を有しやすいことに留意して欲しい。その理由は、フェルールが、冷却液体とキャピラリーとの良好な熱接触を妨げるからである。具体的には、容積10へ入り込む容易な経路が存在しないのである。
【0039】
断面Aは図1aをより詳細に表している。
【0040】
図1のBはAの詳細を概略的に表している。
【0041】
図1のBはキャピラリー1を閉じるキャップ2を表している。キャピラリー1は試料材料3を含む。試料材料3は、液体(冷凍前)又はアモルファス凍結試料(高圧冷凍後)のいずれかであって良い。さらにフェルール5が図示されている。フェルールは、キャピラリーが外へ曲がるのを防ぐために必要である。
【0042】
図示されているキャピラリーの最も突出した部分である面11と、凍結材料の突出部分12に注目して欲しい。明らかに試料材料はキャピラリーから飛び出していない。このキャピラリー端部内の試料材料が十分に凍結している(アモルファス状態)とき(試料材料が十分凍結することは、上述したように起こりにくいが)でさえも、試料材料を調査することは容易ではない。
【0043】
図2のAは本発明によるキャップとキャピラリーを概略的に表している。
【0044】
図2のAは、図1のAの派生型と考えることができる。しかし図2のAは、図1のAとは以下のような点で異なる。
− フェルール25は、キャピラリー端部に抗するように冷却液体を流すことができる点で、フェルール5と異なる。
− ホルダ24には、冷却液体をキャピラリーへ導く複数の孔(孔26のみが図示されている)が開いている点で、ホルダ4と異なる。
− キャップ22は、凹部を有する点でキャップ2とは異なる。
− キャピラリー20は、キャップ22の凹部内で適合する鋭利な針の端部を有する。
【0045】
図2aでは、キャピラリーの両端は鋭利で、かつ、他のキャップであるキャップ7も、キャピラリーへ不適切に搬入されないように凹部を有する。
【0046】
詳細Bが、図2のBにおいてより詳細に表されている。
【0047】
差異については既に説明した。面10がキャピラリーから飛び出ているので、キャップが取り外されるとき、凍結材料は露出される。
【0048】
図3は、キャップを取り外した後のキャピラリーを表している。((封止された)細胞31を含む)試料の一部が露出されているのが明らかに視認できる。面30に沿ってイオンビームで凍結試料を加工した後、ブロック面が、たとえば電子ビーム、X線ビーム等で調査される。あるいはその代わりに、薄片が生成及び調査されても良い。薄片は、非特許文献1に記載されているようにバルクと接続されて良いし、又は、特許文献3に記載されているように、マニピュレータに取り付けられて、バルクから取り出されても良い。
【0049】
ブロック面又は薄片は、金属を除去するのにイオンビームを用いることなく生成されうるので、平均ミリング速度が高くなることに留意して欲しい。
【0050】
図4は本発明による他のキャピラリーを表している。
【0051】
キャピラリー端部付近での性質を最適にするため、高圧冷凍機によって用いられる冷却液体は、前記端部へ容易に到達できなければならない。図2で用いられたフェルール25は、孔が開いているときでさえ、自由な到達を阻害する。従ってキャピラリーが曲がる可能性を増やすことなくフェルール25を削除できる方法が発見された。そのため、キャピラリーの大部分40は厚い壁を有するように生成される。それによりキャピラリーの大部分40は頑丈になり、曲がりにくくなる。
【0052】
キャピラリーは対称性を有することが好ましいので、試料はフェルール23にも保持される。成功した実験は、図4によく似た銅のキャピラリーによって行われた。図中、D1は3mmで、D2は0.65mmで、D3は0.3mmだった。Lは約18mmだった。
【0053】
壁が厚いため、その厚い壁を有するキャピラリーの部分での冷凍は遅くなり、その結果氷の結晶が生成される。しかしこの部分はいずれにせよ調査されないので、厚い壁の部分での結晶化は問題とはみなされない。
【符号の説明】
【0054】
1 キャピラリー
2 キャップ
3 試料材料
4 ホルダ
5 フェルール
6 フェルール
7 キャップ
8 ホルダ
9 軸チャネル
10 面
11 面
20 キャピラリー
22 キャップ
23 フェルール
24 ホルダ
25 フェルール
26 孔
30 面
31 細胞
40 キャピラリー
図1
図2
図3
図4