(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性樹脂を主成分とし、外側表面に転写用凹凸パターンを形成するための熱可塑性樹脂層と、ガラスフィルム層とを有し、該熱可塑性樹脂層と該ガラスフィルム層の厚み比(=熱可塑性樹脂層/ガラスフィルム層)が0.15以上、10以下であり、総厚みが45μm以上、500μm以下である転写用基材であって、
該熱可塑性樹脂層の温度23℃における引張破断伸度が50%以上、400%以下であり、引張破断強度が20MPa以上であり、
該熱可塑性樹脂層と該ガラスフィルム層の層間剥離強度が、1N/cm以上である、転写用基材。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の転写用基材(以下、「本基材」とも称する)、及び本基材を用いて作製した転写シート(以下、「本シート」とも称する)、さらにそれらを構成する材料について詳細に説明する。
【0012】
<熱可塑性樹脂層>
本基材における熱可塑性樹脂層は、その外側表面に転写用凹凸パターンを形成するという極めて重要な役割を有すると同時に、本基材の耐剥離性やハンドリング性を向上する機能を有する層である。また、本基材の透明性を保持する機能を有することも求められる。
本基材の熱可塑性樹脂層の外側表面に転写用凹凸パターンを形成し、転写シートの転写面とすることによって、転写時に転写ズレが生じることなく、転写後剥離する際に転写シートが破損することもない。
【0013】
熱可塑性樹脂層に使用可能な熱可塑性樹脂としては、透明性が高く、適度な伸びと強度を有する材料であれば、特に限定されるものではない。
具体的には、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の中でも、透明性がより高く、より適度な伸びと強度を有するという観点から、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が好ましく、中でもポリエステル系樹脂が特に好ましい。
【0014】
熱可塑性樹脂層に使用可能なポリエステル系樹脂としては、各種多価カルボン酸と各種多価アルコールの共重合体や、各種ヒドロキシカルボン酸の単独重合体、多価カルボン酸と多価アルコールとヒドロキシカルボン酸の共重合体などを好ましく例示することができる。
中でも、透明性が高く、適度な伸びと強度を有する観点から、テレフタル酸とエチレングリコールを主とする共重合体(いわゆるポリエチレンテレフタレート)や、ナフタレンジカルボン酸とエチレングリコールを主とする共重合体(いわゆるポリエチレンナフタレート)が特に好ましい。また、これらの共重合体には、例えばイソフタル酸などの第三成分が共重合されていても良い。
【0015】
熱可塑性樹脂層に使用可能なポリオレフィン系樹脂としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの各種α−オレフィンの単独重合体、2種以上のα−オレフィンの共重合体、α−オレフィンと他の化合物(例えば、酢酸ビニル、各種アクリル酸エステル、各種メタクリル酸エステルなど)との共重合体が挙げられる。また、酸、塩基などで変性したものや、いわゆるアイオノマーも使用することができる。
【0016】
熱可塑性樹脂層に使用可能なポリカーボネート系樹脂としては、各種ジオール(2価アルコール)と炭酸ジエステルとを縮合重合して得られる、カーボネート結合を有する樹脂であれば特に限定されない。
ここで、各種ジオールとしては、ビスフェノール−Aや各種フルオレン化合物などの芳香族ジオール、1,3−ブタンジオールや1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールやイソソルビド、トリシクロデカンジメタノール、スピログリコールなどの脂環族ジオールなどが挙げられる。これらのジオールは、1種のみ用いても、2種以上を共重合しても構わない。
また、炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネートが好ましく例示される。
【0017】
熱可塑性樹脂層は本基材の耐剥離性やハンドリング性を向上する機能を有するという観点から、その厚みが10μm以上、300μm以下であることが好ましく、15μm以上、250μm以下であることがさらに好ましく、20μm以上、200μm以下であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂層の厚みが10μm以上であれば、本基材を用いて作製した転写シートをもって転写後、剥離する際に転写シートが破損するおそれが小さい。一方、熱可塑性樹脂層の厚みが300μm以下であれば、本基材の曲げ弾性が大きくなり過ぎず、転写後に剥離する際に剥離性が良好となる。
なお、熱可塑性樹脂層の厚みは、後述するガラスフィルム層の厚みとの関係において、厚み比が後述する所定の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0018】
熱可塑性樹脂層は本基材の透明性を保持する機能を有するという観点から、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
また、全ヘーズが5%以下であることが好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
熱可塑性樹脂層の全光線(可視光)透過率が80%以上、全ヘーズが5%以下であれば、本基材が透明性に優れ、本基材を用いて作製した転写シートをもって転写する際に、転写する側の光硬化性樹脂を短時間で十分に硬化させることが可能となるような光を透過し得る。
なお、全光線透過率及び全ヘーズは、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0019】
また、転写する側の光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、熱可塑性樹脂層の紫外線透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
なお、紫外線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0020】
前記の通り、熱可塑性樹脂層が適度な伸びと強度を有することによって、本基材を耐剥離性とハンドリング性に優れるものとし、かつ転写ズレの生じない転写シートを構成することができる。この適度な伸びと強度は、より定量的には引張破断伸度と引張破断強度で評価することができる。
【0021】
すなわち、熱可塑性樹脂層の23℃における引張破断伸度は、50%以上、400%以下であることが好ましく、60%以上、300%以下であることがさらに好ましく、70%以上、200%以下であることが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂層の23℃における引張破断強度は、20MPa以上であることが好ましく、50MPa以上であることがより好ましく、100MPa以上であることがさらに好ましく、150MPa以上であることが特に好ましい。
【0022】
熱可塑性樹脂層の23℃における破断伸度が50%以上、400%以下であれば、本基材を用いて作製した転写シートによる転写後、剥離する際に良好に剥離することができ、転写ズレも防ぐことができる。
また、熱可塑性樹脂層の23℃における破断強度が20MPa以上であれば本基材を用いて作製した転写シートによる転写後、剥離する際にフィルムが破断することなく剥離できる。
熱可塑性樹脂層の引張破断伸度と引張破断強度は、JIS K7162(1994年)に準拠し、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0023】
なお、熱可塑性樹脂層には、上記の熱可塑性樹脂の他、本発明の効果を阻害しない範囲で、各種の添加剤を含有しても構わない。
【0024】
<ガラスフィルム層>
本基材におけるガラスフィルム層は、本基材を用いて作製した転写シートによる転写を行う際に、転写シートに張力がかかった場合の伸びを防止し、その結果として転写ズレを防止するという機能を有する層である。また、本基材の透明性を保持する機能を有することも求められる。
【0025】
ガラスフィルム層に使用可能なガラスは、透明性が高く、また本基材の伸びを防止することが可能なものであれば特に限定されない。具体的には、ソーダライムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどを例示することができる。
【0026】
ガラスフィルム層の厚みは、10μm以上、300μm以下であることが好ましく、15μm以上、250μm以下であることがさらに好ましく、20μm以上、200μm以下であることが特に好ましい。
ガラスフィルム層の厚みが10μm以上であれば、本基材を用いて作製した転写シートによる転写を行う際に、転写シートに張力がかかった場合の伸びを防止することができ、その結果転写ズレを防止することができる。一方、ガラスフィルム層の厚みが300μm以下であれば、本基材の曲げ弾性が大きくなり過ぎず、転写後に剥離する際に剥離性が良好となる。
なお、ガラスフィルム層の厚みは、前記熱可塑性樹脂層の厚みとの関係において、厚み比が後述する所定の範囲内となるように調整することが好ましい。
【0027】
ガラスフィルム層は、本基材の透明性を保持する機能を有するという観点から、全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
また、全ヘーズが5%以下であることが好ましく、4%以下であることがさらに好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
ガラスフィルム層の全光線(可視光)透過率が80%以上、全ヘーズが5%以下であれば、本基材が透明性に優れ、本基材を用いて作製した転写シートをもって転写する際に、転写する側の光硬化性樹脂を短時間で十分に硬化させることが可能となるような光を透過し得る。
なお、全光線透過率及び全ヘーズは、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0028】
また、転写する側の光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、ガラスフィルム層の紫外線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。
なお、紫外線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0029】
ガラスフィルム層のガラスは市販品を使用することができ、具体的には例えば、旭硝子株式会社製の商品名「Spool」、Corning社製の商品名「Willow Glass」、日本電気硝子株式会社製の商品名「OA−10G」などを挙げることができる。
【0030】
<接着層>
本基材において、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層は、後述するように良好な層間接着性を有する場合には直接積層することもできるが、層間接着性をより向上し、本基材を用いて作製した転写シートによる転写を行う際の転写ズレを確実に防止するという観点から、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の間に接着層を設けることが好ましい。
【0031】
接着層に使用することができる材料としては、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間接着性を十分発現し、かつ本基材の透明性やハンドリング性を損なわないものであれば特に限定されず、例えば公知の紫外線硬化性接着剤や熱硬化性接着剤を使用することができる。
また、使用する材料の形態としては、液体状であって塗布により使用するものであっても、予め所定の厚みのフィルム形状に成形されておりラミネートして使用するものであっても良い。
【0032】
接着層の厚みは、1μm以上、30μm以下であることが好ましく、3μm以上、28μm以下であることがさらに好ましく、5μm以上、25μm以下であることが特に好ましい。
接着層の厚みが1μm以上であれば、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間接着性を十分に発現し、本基材を用いて作製した転写シートによる転写を行う際の転写ズレを防止できるほか、転写後に本基材を剥離する際に熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間で剥離して本基材が破損するおそれが小さくなる。また、接着層の厚みが30μm以下であれば、本基材の透明性を損なうおそれが小さいほか、接着層を硬化する際の硬化収縮による本基材の反りや弛みを抑制することができる。
【0033】
<転写用基材>
本基材は、その外側表面に転写用凹凸パターンを形成するための前記熱可塑性樹脂層と、前記ガラスフィルム層を有し、さらに必要に応じて前記熱可塑性樹脂層と前記ガラスフィルム層の間に前記接着層を有する。
【0034】
本基材においては、前記熱可塑性樹脂層と、前記ガラスフィルム層の厚み比が重要であり、その厚み比(=熱可塑性樹脂層/ガラスフィルム層)の下限は0.15以上であることが重要であり、0.4以上であることがさらに好ましく、0.8以上であることが特に好ましい。前記熱可塑性樹脂層と、前記ガラスフィルム層の厚み比が0.15以上であれば、本基材を用いて作製した転写シートによる転写後、剥離時にガラスが破損することなく剥離できる。
一方、前記熱可塑性樹脂層と、前記ガラスフィルム層の厚み比の上限は、10以下であることが重要であり、7以下であることがより好ましく、5以下であることがさらに好ましく、3以下であることが特に好ましい。前記熱可塑性樹脂層と、前記ガラスフィルム層の厚み比が10以下であれば、熱可塑性樹脂層の伸びによる転写ズレを抑制することができる。
【0035】
また、本基材はその効果を損なわない限りで、必要に応じて、前述の3種の層以外の他の層を有していても良い。但し、本基材においては前記熱可塑性樹脂層の外側表面に他の層を設けないことが好ましい。
【0036】
他の層としては例えば、前記ガラスフィルム層を保護するために、前記ガラスフィルム層の外側表面に設ける保護層や、前記ガラスフィルム層と前記接着層の層間接着性を向上させるために、前記ガラスフィルム層と前記接着層の間に設けるプライマー層などが挙げられる。
【0037】
本基材の製造方法は特に限定されない。例えば、熱可塑性樹脂層として用いるため予め作製した熱可塑性樹脂シートと、ガラスフィルム層として用いるため予め作製したガラスフィルムとを、直接積層しながら加熱ラミネートして製造する熱ラミネート法や、ガラスフィルム上に熱可塑性樹脂を口金から溶融押出しながら冷却ロールなどで冷却し、同時に熱可塑性樹脂層の厚みを調整して製造する押出ラミネート法などが挙げられる。
【0038】
なお、本基材に接着層を設けない場合には、前記熱可塑性樹脂層と前記ガラスフィルム層の層間接着性を向上するために、例えば予め作製した熱可塑性樹脂シートやガラスフィルムの表面について、本基材の効果を損なわない程度において、プラズマ処理やコロナ処理などの表面処理を行っても構わない。
【0039】
一方、本基材に接着層を設ける場合には、例えば、予め作製した熱可塑性樹脂シートの片側表面に、塗布やドライラミネートなどによって接着層を形成した後、さらにガラスフィルムを積層し、加熱や乾燥、紫外線照射によって接着層を硬化させて本基材を製造する方法や、ガラスフィルムの片側表面に接着層を形成した後、さらに熱可塑性樹脂シートを積層し、加熱や乾燥、紫外線照射などによって接着層を硬化させて本基材を製造する方法などが挙げられる。
【0040】
本基材の総厚みは、45μm以上、500μm以下であることが重要であり、55μm以上、400μm以下であることがさらに好ましく、70μm以上、300μm以下であることが特に好ましい。
本基材の総厚みが45μm以上であれば、凹凸パターン転写時に取扱いやすい。また、本基材の総厚みが500μm以下であれば、ロールtoロールによる精密な転写が可能となる。
【0041】
本基材は透明性に優れており、全光線(可視光)透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがさらに好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、全ヘーズが10%以下であることが好ましく、8%以下であることがさらに好ましく、6%以下であることが特に好ましい。
本基材の全光線透過率が80%以上、全ヘーズが10%以下であれば、本基材が透明性に優れ、本基材を用いて作製した転写シートをもって転写する際に、転写する側の光硬化性樹脂を短時間で十分に硬化させることが可能となるような光を透過し得る。
なお、全光線透過率及び全ヘーズは、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0042】
また、転写する側の光硬化性樹脂が紫外線硬化性樹脂である場合には、本基材の紫外線透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
なお、紫外線透過率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0043】
本基材は、前記熱可塑性樹脂層の外側表面に凹凸パターンを設けて転写面とすることから、本基材を用いて作製した転写シートにより転写した後に剥離する際の耐剥離性に優れる。耐剥離性は転写後の90°剥離試験において、本基材が破損しない最大の剥離強度(耐剥離強度)によって評価され、0.2N/cm以上であることが好ましく、0.5N/cm以上であることがさらに好ましく、1.0N/cm以上であることが特に好ましい。一方、耐剥離性の上限は特に限定されず、可能な限り高いことが好ましい。
なお、耐剥離強度の測定・評価は後述の実施例に記載の方法で実施される。
【0044】
本基材の熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間の剥離強度は、1N/cm以上であることが好ましく、3N/cm以上がさらに好ましく、5N/cm以上であることが特に好ましい。一方、層間剥離強度の上限は特に限定されず、可能な限り高いことが好ましい。
熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間剥離強度が1N/cm以上であれば、本基材を用いて作製した転写シートにより転写を行う際に転写ズレを生じることがなく、かつ本基材が破損するおそれが小さい。
なお、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間剥離強度は後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0045】
<転写シート>
本シートは、本基材の熱可塑性樹脂層の外側表面に、転写用凹凸パターンを設けたものである。
転写用凹凸パターンの形成方法は特に限定されない。具体的には例えば、まず熱可塑性樹脂層の外側表面に、光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の層を、塗布やラミネートにより設ける。
【0046】
次に、転写用凹凸パターンを形成するための、マスターサンプルを準備する。マスターサンプルは平板形状であっても、ロール形状であっても構わない。また、マスターサンプルは樹脂製、金属製などいかなる材質でも構わないが、形状安定性が高い材質であることが好ましい。例えば本シートが半導体ウェハーの製造に係る転写シートであれば、当該半導体ウェハーに係る結晶シリコン製の原版であることが好ましい。
【0047】
このマスターサンプルを用いて、前述のように熱可塑性樹脂層の外側表面に設けた光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂の層に、凹凸パターンを転写し、速やかに硬化することによって、転写用凹凸パターンを形成する。
【0048】
このように転写用凹凸パターンを熱可塑性樹脂層の外側表面に形成した本シートを用いて、ロールtoロールによる精密な連続転写を効率良く行うことができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が以下の実施例に記載の態様に限定されるものではない。
なお、実施例における測定・評価は以下の方法・基準で行った。
【0050】
<測定・評価>
(1)全光線(可視光)透過率・全ヘーズ
日本電色工業株式会社製のヘーズメーター「NDH5000」を用いて、JIS K7136(2000年)及びJIS K7361−1(1997年)に準じて、全ヘーズ及び全光線透過率を測定した。
【0051】
(2)紫外線透過率
株式会社日立ハイテクノロジーズ日立分光光度計「U−3900H」を用いて波長360nmにおける紫外線透過率を測定した。
【0052】
(3)転写後の耐剥離強度(90°剥離試験)
まず、0.15N/cm、0.30N/cm、1.37N/cmの粘着強度を各々有する3種類の粘着シートを準備した。続いて、厚み20mmのアルミニウム板の上に両面テープで、この粘着シートを粘着面が上になるように固定した。この粘着面に、作製した転写用基材の転写面を空気が入らないように貼り合わせた。次に、転写用基材を手で静かに90°剥離し、各粘着強度におけるガラスフィルムの破損の有無を目視で観察し、以下の基準で評価した。
○:ガラスフィルム層が破損していない。
×:ガラスフィルム層が破損している。
【0053】
(4)転写用基材の層間剥離強度(180°剥離試験)
作製した転写用基材において、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層との間を、180°剥離試験で剥離した際の剥離強度を層間剥離強度とした。180°剥離試験はJIS K6854−2(1999年)に準拠し、株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機を用いて、雰囲気温度25℃、剥離速度を5cm/分で実施した。層間剥離強度の単位はN/cmとした。
【0054】
(5)引張破断伸度・引張破断強度
フィルムの長手方向および幅方向に、幅10mm、長さ100mmの試料を切り出した。試料を23℃、35%RHの雰囲気下で12時間放置した後、JIS K 7162(1994年)に準拠して、23℃、35%RHの雰囲気下、株式会社島津製作所製「オートグラフAG5000A」を用いて、チャック間距離40mm、引っ張り速度200mm/分の条件で試験を行い、試料が破断した時の伸び比率と荷重を測定した。これを5回繰り返し、長手方向と幅方向の計10回の測定結果の平均値を試料の引張破断伸度及び引張破断強度とした。
【0055】
[実施例1]
熱可塑性樹脂層として、ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム(三菱樹脂株式会社製「T100−38」、厚み:38μm、全光線透過率:88%、全ヘーズ:3%、紫外線透過率:83%、引張破断伸度:114%、引張破断強度:192MPa)を準備した。また、ガラスフィルム層に使用するガラスフィルム(日本電気硝子株式会社製「OA−10G」、厚み:40μm、全光線透過率:92%、全ヘーズ:0.2%、紫外線透過率:92%)を準備した。熱可塑性樹脂層の片側表面に、光学粘着剤(綜研化学社製「SK−1478」)を25μmの厚みとなるようにバーコーターで塗布し、接着層を形成した。これにガラスフィルム層をドライラミネートし、転写用基材を作製した。
この転写用基材について、前記の各特性を測定・評価した。また、熱可塑性樹脂層側を転写用として使用する想定で前記の90°剥離試験を実施した。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例2]
実施例1において、SK−1478の代わりに、熱可塑性樹脂層の片側表面に紫外線硬化性接着剤(第一工業製薬株式会社製「R1213」とチバスペシャリティケミカルズ社製重合開始剤「IRGACURE184」の質量比100/3の混合物)をバーコーターで10μmの厚みとなるように塗布して接着層を形成し、ガラスフィルムを積層して紫外線を照射した以外は同様にして転写用基材を作製し、各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例3]
実施例2において、熱可塑性樹脂層として、ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム(ユニチカ株式会社製「エンブレットPET」、厚み:12μm、全光線透過率:88%、全ヘーズ:3%、紫外線透過率:85%、引張破断伸度:85%、引張破断強度:270MPa)を用いた以外は同様にして転写用基材を作製し、各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例4]
実施例2において、熱可塑性樹脂層として、ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム(三菱樹脂株式会社製「T100−100」、厚み:100μm、全光線透過率:88%、全ヘーズ:4%、紫外線透過率:82%、引張破断伸度:112%、引張破断強度:190MPa)を用いた以外は同様にして転写用基材を作製し、各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例5]
実施例4において、ガラスフィルム層として、ガラスフィルム(日本電気硝子株式会社製「OA−10G」、厚み:100μm、全光線透過率:92%、全ヘーズ:0.2%、紫外線透過率:92%)を用いた以外は同様にして転写用基材を作製し、各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0060】
[実施例6]
実施例5において、熱可塑性樹脂層として、ポリエチレンテレフタレートの二軸延伸フィルム(三菱樹脂株式会社製「T910」、厚み:250μm、全光線透過率:91%、全ヘーズ:1%、紫外線透過率:83%、引張破断伸度:162%、引張破断強度:166MPa)を用いた以外は同様にして転写用基材を作製し、各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0061】
[比較例1]
実施例1で作製した転写用基材について、ガラスフィルム層側を転写用として使用する想定で前記の90°剥離試験を実施した。結果を表1に示す。
【0062】
[比較例2]
実施例2で作製した転写用基材について、ガラスフィルム層側を転写用として使用する想定で前記の90°剥離試験を実施した。結果を表1に示す。
【0063】
[比較例3]
実施例3において、ガラスフィルム層として、ガラスフィルム(日本電気硝子株式会社製「OA−10G」、厚み:100μm、全光線透過率:92%、全ヘーズ:0.2%、紫外線透過率:92%)を用いた以外は同様にして転写用基材を作製し、各種の測定・評価を実施した。結果を表1に示す。
【0064】
[比較例4]
実施例1で使用したガラスフィルムのみを用いて、前記の90°剥離試験を実施した。結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1より明らかである通り、実施例1〜6で作製した本発明の転写用基材は、熱可塑性樹脂層側を転写面とした場合に破損することがないため耐剥離性に優れ、かつ透明性や紫外線透過性に優れるものであり、適度な厚みを有し、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の層間接着性も十分であって、ハンドリング性が良好である。
一方、比較例1及び2のように、ガラスフィルム層側を転写面とした場合は転写後の剥離時に破損するため、本転写用基材は熱可塑性樹脂層側を転写面として用いることが重要であると確認できる。
また、比較例3においては、熱可塑性樹脂層とガラスフィルム層の厚み比が小さく、熱可塑性樹脂層が薄いため、熱可塑性樹脂層側を転写面としても、本基材が破損し、耐剥離性やハンドリング性に劣っていた。
比較例4においては、熱可塑性樹脂層を設けていないため、比較例3以上に容易に破損し、耐剥離性やハンドリング性に劣っていた。