(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(A)と樹脂バインダー(B)とを含む耐熱層(II層)が積層されている積層多孔フィルムであって、該樹脂バインダー(B)が、平均重合度が100〜1,000のアセタール変性された水溶性樹脂(b)を含み、該耐熱層(II層)の空孔率が、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率より高いことを特徴とする積層多孔フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の積層多孔フィルム、積層多孔フィルムの製造方法、非水電解液二次電池用セパレータ及び非水電解液二次電池の実施形態について詳細に説明する。
なお、本発明において、「主成分」と表現した場合には、特に記載しない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含むことを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を特定するものではないが、主成分は組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%含む)を占める意を包含するものである。
また、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」及び「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0017】
[積層多孔フィルム及び積層フィルムの製造方法]
以下に、本発明の積層多孔フィルムを構成する各成分について説明する。
<ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)>
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、及び1−ヘキセン等のα−オレフィンを重合した単独重合体又は共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体又は共重合体を2種以上混合することもできる。これらの中でもポリプロピレン系樹脂、又はポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0018】
(ポリプロピレン系樹脂)
本発明に用いることができるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、又はプロピレンと、エチレン、及び1−ブテン、1−ペンテン、1−へキセン、1−へプテン、1−オクテン、1−ノネンもしくは1−デセン等のα−オレフィンとのランダム共重合体又はブロック共重合体等が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性等を維持する観点から、ホモポリプロピレンがより好適に使用される。
【0019】
また、ポリプロピレン系樹脂としては、立体規則性を示すアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が、好ましくは80〜99%、より好ましくは83〜98%、更に好ましくは85〜97%であるものを使用することができる。アイソタクチックペンタッド分率が前記下限値以上であるとフィルムの機械的強度が向上する。一方、アイソタクチックペンタッド分率の上限については現時点において工業的に得られる上限値で規定しているが、将来的に工業レベルで更に規則性の高い樹脂が開発された場合についてはこの限りではない。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)とは、任意の連続する5つのプロピレン単位で構成される炭素−炭素結合による主鎖に対して側鎖である5つのメチル基がいずれも同方向に位置する立体構造の割合を意味する。
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は
13C−NMRの測定結果に基づき算出され、メチル基領域のシグナルの帰属は、A.Zambelli et al(Macromolecules8,687,(1975))に準拠する。
【0020】
また、ポリプロピレン系樹脂の分子量分布を示すパラメータであるMw/Mnは、2.0〜10.0が好ましく、2.0〜8.0がより好ましく、2.0〜6.0が更に好ましい。Mw/Mnがこの範囲内であると押出成形性が向上すると共に、積層多孔フィルムの機械的強度も向上する。
ポリプロピレン系樹脂のMw/MnはGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定される。
【0021】
前記ポリプロピレン系樹脂の密度は、0.890〜0.970g/cm
3が好ましく、0.895〜0.970g/cm
3がより好ましく、0.900〜0.970g/cm
3が更に好ましい。密度が0.890g/cm
3以上であれば適度なSD特性を有することができる。一方、0.970g/cm
3以下であれば適度なSD特性を有することができる他、延伸性を維持することができる。
ポリプロピレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
【0022】
ポリプロピレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.5〜15g/10分が好ましく、1.0〜10g/10分がより好ましく、1.5〜8.0g/10分が更に好ましく、2.0〜6.0g/10分が特に好ましい。MFRを0.5g/10分以上とすることで、成形加工時の樹脂の溶融粘度が高く、十分な生産性を確保することができる。一方、15g/10分以下とすることで、得られる積層多孔フィルムの機械的強度を十分に保持することができる。
ポリプロピレン系樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度230℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0023】
なお、前記ポリプロピレン系樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えばチーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン系触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた、懸濁重合法、溶融重合法、塊状重合法、気相重合法、またラジカル開始剤を用いた塊状重合法等が挙げられる。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、商品名「ノバテックPP」、「WINTEC」(以上、日本ポリプロ(株)製)、「ノティオ」、「タフマーXR」(以上、三井化学(株)製)、「ゼラス」、「サーモラン」(以上、三菱化学(株)製)、「住友ノーブレン」、「タフセレン」(以上、住友化学(株)製)、「プライムポリプロ」、「プライムTPO」(以上、(株)プライムポリマー製)、「Adflex」、「Adsyl」、「HMS−PP(PF814)」(以上、サンアロマー(株)製)、「バーシファイ」、「インスパイア」(以上、ダウケミカル(株)製)等市販されている商品を使用できる。
【0025】
(ポリエチレン系樹脂)
本発明に用いることができるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体等が挙げられる。
エチレンを主成分とする共重合体としては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等の炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;共役ジエン、非共役ジエン等の不飽和化合物の中から選ばれる1種以上のコモノマーとの共重合体又は多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
【0026】
これらのポリエチレン系樹脂の中では、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、及び高密度ポリエチレンから選ばれる1種以上のポリエチレン系樹脂が好ましく、高密度ポリエチレンがより好ましい。
【0027】
前記ポリエチレン系樹脂の密度は、0.910〜0.970g/cm
3が好ましく、0.930〜0.970g/cm
3がより好ましく、0.940〜0.970g/cm
3が更に好ましい。密度が0.910g/cm
3以上であれば適度なSD特性を有することができる。一方、0.970g/cm
3以下であれば適度なSD特性を有することができる他、延伸性が維持される。
ポリエチレン系樹脂の密度は、密度勾配管法を用いてJIS K7112(1999年)に準じて測定される。
【0028】
また、前記ポリエチレン系樹脂のメルトフローレート(MFR)は特に制限されるものではないが、0.03〜30g/10分が好ましく、0.3〜10g/10分がより好ましい。MFRが0.03g/10分以上であれば成形加工時の樹脂の溶融粘度が十分に低いため生産性に優れる。一方、30g/10分以下であれば、十分な機械的強度を得ることができる。
ポリエチレン系樹脂のMFRはJIS K7210(1999年)に従い、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定される。
【0029】
ポリエチレン系樹脂の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法、例えば、チーグラー・ナッタ型触媒に代表されるマルチサイト触媒やメタロセン触媒に代表されるシングルサイト触媒を用いた重合方法が挙げられる。ポリエチレン系樹脂の重合方法として、一段重合、二段重合、もしくはそれ以上の多段重合等があり、いずれの方法のポリエチレン系樹脂も使用可能である。
【0030】
(他の成分)
本発明においては、前述した樹脂の他、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤を前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性及びポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの諸物性を改良、調整する目的で添加される、耳等のトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂;シリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子;カーボンブラック等の顔料;難燃剤;耐候性安定剤;耐熱安定剤;帯電防止剤;溶融粘度改良剤;架橋剤;滑剤;核剤;可塑剤;老化防止剤;酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;中和剤;防曇剤;アンチブロッキング剤;スリップ剤;着色剤等の添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、各種樹脂や、ワックス等の低分子量化合物を添加してもよい。
【0031】
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの層構成)
本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。例えば、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「P層」と称する場合がある)の単層、当該P層の機能を妨げない範囲で、当該P層と他の層(以下「Q層」と称する場合がある)との積層とすることができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際には、特開平04−181651号に記載されているような高温雰囲気下で孔閉塞し、電池の安全性を確保する低融点樹脂層を積層させることができる。
具体的にはP層、Q層を積層した2層構造、P層、Q層、P層、若しくは、Q層、P層、Q層として積層した3層構造等が例示できる。また、他の機能を有する層と組み合わせて3種3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を有する層との積層順序は特に問わない。更に層数としては4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしてもよい。
【0032】
なお、本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの物性は、層構成や積層比、各層の組成、製造方法によって自由に調整できる。
【0033】
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法)
次に本発明に用いるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造されるポリオレフィン系樹脂多孔フィルムのみに限定されるものではない。
【0034】
具体的には、前記ポリオレフィン系樹脂を用いて、溶融押出によりポリオレフィン系樹脂無孔膜状物(以下、「無孔膜状物」とも称する)を作製し、当該無孔膜状物を延伸することにより厚さ方向に連通性を有する微細孔を多数形成した多孔フィルムを得ることができる。
【0035】
無孔膜状物の作製方法は特に限定されず公知の方法を用いてよいが、例えば押出機を用いて熱可塑性樹脂組成物を溶融し、Tダイから押出し、キャストロールで冷却固化するという方法が挙げられる。またチューブラー法により製造した無孔膜状物を切り開いて平面状とする方法も適用できる。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化等、公知の方法を用いてもよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法等の手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸以上の延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。
また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン系樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。
【0036】
なお、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムにポリプロピレン系樹脂を用いる場合には、前記無孔膜状物にいわゆるβ晶を生成させることが好ましい。無孔膜状物中にβ晶を生成していれば、フィラー等の添加剤を使用しない場合においても、延伸を施すことで微細孔が容易に形成されるため、優れた透気特性を有するポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得ることができる。
ポリプロピレン系樹脂の無孔膜状物中にβ晶を生成させる方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂のα晶の生成を促進させる物質を添加しない方法や、特許第3739481号公報に記載されているように過酸化ラジカルを発生させる処理を施したポリプロピレンを添加する方法、及び組成物にβ晶核剤を添加する方法などが挙げられる。
【0037】
(β晶核剤)
本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の生成及び成長を増加させるものであれば特に限定される訳ではなく、また2種類以上を混合して用いてもよい。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;ナノスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第2族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平08−144122号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
【0038】
β晶核剤の市販品としては、新日本理化(株)製β晶核剤「エヌジェスターNU−100」、β晶核剤の添加されたポリプロピレン系樹脂の具体例としては、Aristech社製ポリプロピレン「Bepol B−022SP」、Borealis社製ポリプロピレン「Beta(β)−PP BE60−7032」、Mayzo社製ポリプロピレン「BNX BETAPP−LN」などが挙げられる。
【0039】
前記ポリプロピレン系樹脂に添加するβ晶核剤の割合は、β晶核剤の種類又はポリプロピレン系樹脂の組成などにより適宜調整することが必要であるが、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを構成するポリプロピレン系樹脂100質量部に対し、0.0001〜5質量部が好ましく、0.001〜3質量部がより好ましく、0.01〜1質量部が更に好ましく、0.1〜0.8質量部が特に好ましい。
β晶核剤の割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.0001質量部以上であれば、製造時において十分にポリプロピレン系樹脂のβ晶を生成、成長させることができ、非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際にも十分なβ晶活性が確保でき、所望の透気性能が得られる。また、β晶核剤の割合がポリプロピレン系樹脂100質量部に対して5質量部以下であれば、製造コストと得られる効果とのバランスに優れるほか、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム表面へのβ晶核剤のブリードなどがなく好ましい。
【0040】
また、本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを前記積層のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムにする場合、製造方法は、多孔化と積層の順序等によって以下の3つに大別される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法。
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法。
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法。
本発明においては、その工程の簡略さ、生産性の観点から(ii)の方法を用いることが好ましく、なかでも2層の層間接着性を確保するために、共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
【0041】
以下に、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの好適な製造方法の詳細を説明する。
まず、ポリオレフィン系樹脂と、必要に応じて使用される熱可塑性樹脂、添加剤との混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、及び所望によりその他添加物等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、又は袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融混練後、カッティングしてペレットを得る。
【0042】
前記のペレットを押出機に投入し、Tダイ押出用口金から押出して無孔膜状物を成形する。Tダイの種類としては特に限定されない。例えば本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)が2種3層の積層構造をとる場合、Tダイは2種3層用マルチマニホールドタイプでもよく、2種3層用フィードブロックタイプでもよい。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件等から決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度であり、0.5〜1.0mmが好ましい。Tダイのギャップを0.1mm以上とすることで生産速度を向上させることができる。また、3.0mm以下とすることでドラフト率が大きくなり過ぎないため生産安定性を向上させることができる。
【0043】
押出成形において、押出加工温度は混合樹脂組成物の流動特性や成形性等によって適宜調整されるが、概ね180〜350℃が好ましく、200〜330℃がより好ましく、220〜300℃が更に好ましい。180℃以上の場合、溶融樹脂の粘度が十分に低く成形性に優れ生産性を向上させることができる。一方、350℃以下にすることにより、樹脂組成物の劣化、ひいては得られる積層多孔フィルムの機械的強度の低下を抑制できる。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、無孔膜状物中のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。冷却固化温度は、80〜150℃が好ましく、90〜140℃がより好ましく、100〜130℃が更に好ましい。冷却固化温度を80℃以上とすることで無孔膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができる。また、150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻き付いてしまう等のトラブルが起こり難く、効率よく膜状物化することが可能となる。
【0044】
次いで、得られた無孔膜状物を延伸する。延伸工程としては、少なくとも二軸延伸することが好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であってもよいし、逐次二軸延伸であってもよいが、各延伸工程で延伸条件(倍率、温度)を簡便に選択でき、多孔構造を制御し易い逐次二軸延伸がより好ましい。
なお、本明細書中、膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また、長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
上記逐次二軸延伸は連続的に実施してもよいが、優れた透気性を有する積層多孔フィルムを製造する観点から、下記工程(1)〜(3)を有することが好ましい。
工程(1):ポリオレフィン系樹脂を膜状に形成した前記ポリオレフィン系樹脂無孔膜状物を一軸方向、好ましくは縦方向に延伸してポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得る工程
工程(2):工程(1)で得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの少なくとも片面に、後述するフィラー(A)と後述する樹脂バインダー(B)とを含む耐熱層(II層)を積層することにより、積層フィルムを得る工程
工程(3):工程(2)で得られた積層フィルムを前記一軸方向に対して垂直方向、好ましくは横方向に延伸することにより積層多孔フィルムを得る工程
【0045】
逐次二軸延伸を行う場合、延伸温度は、用いる樹脂組成物の組成、結晶融解ピーク温度、結晶化度等に応じて適宜変更すればよいが、縦延伸での延伸温度は0〜130℃が好ましく、10〜120℃がより好ましく、20〜110℃が更に好ましい。また、縦延伸倍率は、2〜10倍が好ましく、3〜8倍がより好ましく、4〜7倍が更に好ましい。
前記範囲内で縦延伸を行うことで、延伸時の破断を抑制しつつ、適度な空孔起点を発現させることができる。
一方、横延伸での延伸温度は100〜170℃が好ましく、110〜160℃がより好ましく、120〜155℃が更に好ましい。また、横延伸倍率は、1.2〜10倍が好ましく、1.5〜8倍がより好ましく、2〜7倍が更に好ましい。
前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、500〜12,000%/分が好ましく、1,500〜10,000%/分がより好ましく、2,500〜8,000%/分が更に好ましい。
【0046】
このようにして得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)は、寸法安定性の改良を目的として熱処理を施すことが好ましい。この際、熱処理温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは140℃以上である。熱処理温度が100℃以上であれば、寸法安定性を向上させることができる。一方、熱処理温度は好ましくは170℃以下、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは160℃以下である。熱処理温度が170℃以下であれば、熱処理によってポリオレフィン系樹脂の融解が起こり難く、多孔構造を良好に維持することができる。
なお、本明細書において、寸法安定性の改良を目的とする熱処理を「熱固定」と称する場合がある。
また、熱処理工程中には、必要に応じて1〜20%の弛緩処理を施してもよい。なお、熱処理後、均一に冷却して巻き取ることにより、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)が得られる。
【0047】
また、層間接着性を向上させる目的で、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、化学的酸化処理等の表面処理を施すことが好ましい。表面処理を行なう工程は、前記のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造工程において、押出成形工程の後であってもよいし、縦延伸工程の後であってもよいし、横延伸工程の後であってもよい。中でも、生産ラインの短縮や生産性の向上の観点から、縦延伸工程の後であることが好ましい。
【0048】
<耐熱層(II層)>
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(A)と樹脂バインダー(B)とを含む耐熱層(II層)が積層されているものである。
【0049】
(フィラー(A))
本発明に用いることができるフィラー(A)としては無機フィラー、有機フィラー等が挙げられ、耐熱性及び放熱性の観点から、無機フィラーが好ましい。
【0050】
本発明に用いることができる無機フィラーの例としては、具体的には、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等の金属硫酸塩;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、酸化チタン等の金属酸化物;塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化銀、塩化カルシウム等の金属塩化物;タルク、クレー、マイカ、モンモリロナイト等の粘土鉱物が挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムを電池用セパレータとして電池に組み込んだ際に、化学的に不活性であるという観点から、金属酸化物がより好ましく、アルミナが更に好ましい。
【0051】
本発明に用いることができる有機フィラーの例としては、超高分子量ポリエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、メラミン、ベンゾクナミン等の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂からなる有機フィラーが挙げられる。これらの中でも、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして用いた場合における、耐電解液膨潤性の観点より、架橋ポリスチレン等が好ましい。
【0052】
前記フィラー(A)の平均粒径の下限としては、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは0.2μm以上である。一方、上限として好ましくは3.0μm以下、より好ましくは1.5μm以下である。前記平均粒径を0.01μm以上とすることで、本発明の積層多孔フィルムが十分な耐熱性を発現することができる。また、前記平均粒径を3.0μm以下とすることで、前記フィラーの分散性を向上させることができる。
なお、本実施の形態において「フィラーの平均粒径」とは、例えば画像解析装置を用いて、任意の方向(方向Zとする)から当該フィラーを投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値と、前記方向Zと直交する任意の方向(方向Xとする)から当該フィラーを投影した場合の二次元的な投影像の短径と長径を平均した値とを、平均した値として算出される。算出に用いるフィラー粒子の個数は50個以上であればよい。
【0053】
前記フィラー(A)の比表面積は、1m
2/g以上、30m
2/g未満であることが好ましい。比表面積が1m
2/g以上であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液の浸透が速くなり、生産性が良好となる。また、比表面積が30m
2/g未満であれば、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池にセパレータとして組み込む際に電解液成分の吸着を抑えることができる。
【0054】
耐熱層(II層)中の、フィラー(A)の含有量は、50〜95質量%が好ましく、55〜93質量%がより好ましく、60〜90質量%が更に好ましい。フィラー(A)の含有量がこの範囲内であることにより、優れた耐粉落ち性、製膜性、透気性、寸法安定性、及び耐熱性を有する積層多孔フィルムを得ることができる。
【0055】
(樹脂バインダー(B))
樹脂バインダー(B)は、平均重合度が100〜1,000のアセタール変性された水溶性樹脂(b)(以下、「水溶性樹脂(b)」とも称する)を含むものである。
耐熱層(II層)中の樹脂バインダーの含有量は、優れた耐粉落ち性、製膜性、透気性、寸法安定性、及び耐熱性を有する積層多孔フィルムを得る観点から、5〜50質量%が好ましく、7〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。
また、樹脂バインダー(B)中の水溶性樹脂(b)の含有量は、優れた耐粉落ち性、製膜性、透気性、寸法安定性、及び耐熱性を有する積層多孔フィルムを得る観点から、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましく、95〜100質量%が更に好ましく、100質量%が特に好ましい。
樹脂バインダー(B)は、製膜性付与のために、耐熱性を損なわない範囲で可塑剤、延伸助剤、密着剤等を必要に応じて添加してもよい。
可塑剤及び延伸助剤としては、エチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、N−メチルピロリドン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、γ−ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチル尿素等が挙げられる。密着剤としては、変性ポリオレフィン樹脂、変性ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、脂肪族カーボネート樹脂等が挙げられる。
【0056】
(水溶性樹脂(b))
水溶性樹脂(b)は、平均重合度が100〜1,000のアセタール変性された樹脂である。
本発明に用いる水溶性樹脂(b)としては、前記フィラーと、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムとを良好に接着でき、電気化学的に安定であり、かつ積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合に有機電解液に対して安定であることが好ましい。
なお、本明細書において、「水溶性」とは、25℃における水への溶解度が50g/L以上であることをいう。
【0057】
アセタール変性される樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール等の不飽和アルコール重合体;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体;ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリメタクリル酸ヒドロキシエチル等のアクリル系樹脂等が挙げられる。これらの中でも、水中でも比較的安定であることから、不飽和アルコール重合体が好ましく、ポリビニルアルコールがより好ましい。
【0058】
〔アセタール化〕
本発明に用いる水溶性樹脂(b)は、アセタール変性されていることが重要である。一般的にアセタール化処理は、酸性条件下、アルデヒド化合物と反応させることにより行うことができる。アルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アクロレイン等が挙げられる。
アセタール化度は5〜50モル%が好ましい。5モル%以上であることで、バインダーとして好適な柔軟性が発現する。また、50モル%以下であることで、十分な耐溶剤性が担保できる。
このような水溶性樹脂(b)としては、ポリビニルアセタールが好ましく挙げられる。ポリビニルアセタールとしては、例えば、ポリビニルブチラール、ポリビニルプロピラール、ポリビニルエチラール、ポリビニルメチラール等が挙げられ、これらの中でも、優れた耐粉落ち性、製膜性、透気性、寸法安定性、及び耐熱性を有する積層多孔フィルムを得る観点から、ポリビニルブチラールがより好ましい。ポリビニルブチラールとしては、積水化学工業(株)製「エスレック」、クラレ(株)製「モビタール」等が商業的に入手可能である。
水溶性樹脂(b)は1種を単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0059】
〔平均重合度〕
本発明に用いる水溶性樹脂(b)の平均重合度は100〜1,000であり、400〜900が好ましく、400〜800がより好ましい。平均重合度が100以上であることで、非水電解液二次電池に組み込まれた際に電解液中に溶出し難くなるという効果がある。また、1,000以下であることで、塗工時の塗膜安定性に優れ、延伸性に優れるという効果がある。
【0060】
耐熱層(II層)中の、水溶性樹脂(b)の含有量は、5〜50質量%が好ましく、7〜45質量%がより好ましく、10〜40質量%が更に好ましい。水溶性樹脂(b)の含有量がこの範囲内であることにより、耐熱層(II層)が優れた製膜性、透気性、及び結着性を維持することができる。
【0061】
(耐熱層(II層)の形成方法)
本発明の積層多孔フィルムにおける耐熱層(II層)は、溶融押出法、塗布乾燥法、ラミネート法等により形成可能であるが、生産安定性及び量産性の観点から、塗布乾燥法が好ましい。以下、塗布乾燥法について具体的態様を説明する。
【0062】
耐熱層(II層)を塗布乾燥法により製膜する場合、まず、少なくともフィラー(A)と、水溶性樹脂(b)を含有する樹脂バインダー(B)とを、水等の溶媒に溶解又は分散させた塗工液を調製する。
前記塗工液を調製する工程において、フィラー(A)及び樹脂バインダー(B)を溶媒に溶解又は分散させる方法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌法等が挙げられる。
また、フィラー(A)及び樹脂バインダー(B)を溶媒に分散させる際に、塗工液の安定性を向上し、かつ、粘性の最適化をするために分散助剤、安定剤、増粘剤等を添加してもよい。
【0063】
次に得られた塗工液を前述のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに塗布する。塗工液を塗布する工程は、前記のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの製造工程において、押出成形工程の後であってもよいし、縦延伸工程の後であってもよいし、横延伸工程の後であってもよい。中でも、生産ラインの短縮や生産性の向上の観点から、縦延伸工程の後であることが好ましい。
また、塗工液は、その用途に照らし、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの片面のみに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。
【0064】
前記塗工液の塗布方式としては、必要とする層厚や塗布面積を実現できる方式であれば特に限定されない。このような塗布方法としては、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
塗布後の乾燥方法としては、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法等が挙げられる。
【0065】
<積層多孔フィルムの形状及び物性>
(積層多孔フィルムの総厚み)
本発明の積層多孔フィルムの総厚みは5〜100μmが好ましく、8〜50μmがより好ましく、10〜30μmが更に好ましい。電池用セパレータとして使用する場合、5μm以上であれば、実質的に必要な電気絶縁性を得ることができ、例えば電極の突起部分に大きな力がかかった場合でも、電池用セパレータを突き破って短絡し難く安全性に優れる。また、100μm以下であれば、積層多孔フィルムの電気抵抗を小さくすることができるので、電池の性能が十分に確保することができる。積層多孔フィルムの総厚みは後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0066】
(耐熱層(II層)の厚み)
耐熱層(II層)の厚みとしては、耐熱性の観点から、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは2μm以上、特に好ましくは3μm以上である。一方で上限としては、連通性の観点から、好ましくは90μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは30μm以下、特に好ましくは10μm以下である。
【0067】
(空孔率)
本発明の積層多孔フィルムにおいて、耐熱層(II層)の空孔率が、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率より高いことが重要である。
耐熱層(II層)の空孔率をポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率より高くすることにより、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム本来の透気性を阻害することが無くなる。また、SD温度を超えて異常発熱した際においても、溶融したポリオレフィン基材を構造体として保持し易くなるという効果がある。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率は、30%以上が好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましい。空孔率が30%以上であれば、連通性を確保し透気特性に優れた積層多孔フィルムとすることができる。一方、上限については80%以下が好ましく、75%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。空孔率が80%以下であれば、積層多孔フィルムの強度を十分に保持することができ、ハンドリングの観点からも好ましい。
耐熱層(II層)の空孔率は、37%以上が好ましく、42%以上がより好ましく、47%以上が更に好ましい。空孔率が37%以上であれば、透気特性に優れた積層多孔フィルムとすることができる。一方、上限については87%以下が好ましく、82%以下がより好ましく、77%以下が更に好ましい。空孔率が87%以下であれば、積層多孔フィルムの耐熱性を十分に保持することができる。
耐熱層(II層)の空孔率と、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率との差〔(耐熱層(II層)の空孔率)−(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率)〕は、優れた耐粉落ち性、製膜性、透気性、寸法安定性、及び耐熱性を有する積層多孔フィルムを得る観点から、好ましくは1〜50%、より好ましくは3〜30%、更に好ましくは5〜20%である。
空孔率は後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0068】
(透気度)
本発明の積層多孔フィルムの透気度は、500秒/100mL以下が好ましく、10〜400秒/100mLがより好ましく、50〜300秒/100mLが更に好ましい。透気度が500秒/100mL以下であれば、積層多孔フィルムに連通性があることを示し、優れた透気性能を示すことができる。
透気度はフィルム厚み方向の空気の通り抜け易さを表し、具体的には100mlの空気が当該フィルムを通過するのに必要な時間で表現されている。そのため、数値が小さい方が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性に優れることを意味し、その数値が大きい方がフィルム厚み方向の連通性に劣ることを意味する。連通性とはフィルム厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れる。
透気度は後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0069】
本発明の積層多孔フィルムは、電池用セパレータとしての使用時において、SD特性を有することが好ましい。具体的には、135℃で5秒間加熱後の透気度は10,000秒/100mL以上が好ましく、25,000秒/100mL以上がより好ましく、50,000秒/100mL以上が更に好ましい。135℃で5秒間加熱後の透気度を10,000秒/100mL以上とすることで、異常発熱時において空孔が速やかに閉塞し、電流が遮断されるため、電池の破裂等のトラブルを回避することができる。
【0070】
(加圧面収縮率)
本発明の積層多孔フィルムの200℃における加圧面収縮率は、0%以上25%未満が好ましく、0%以上20%未満がより好ましい。200℃における加圧面収縮率が25%未満であれば、SD温度を超えて異常発熱した際においても、寸法安定性がよく、耐熱性を有することを示唆しており、破膜を防ぎ、内部短絡温度を向上することができる。積層多孔フィルムの加圧面収縮率は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0071】
[非水電解液二次電池用セパレータ、及び電池]
本発明の積層多孔フィルムは、前述のとおり非水電解液二次電池用セパレータとして有用である。以下、本発明の積層多孔フィルムを電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について、
図1を参照して説明する。
正極板21、負極板22の両極は電池用セパレータ10を介して互いに重なるようにして渦巻き状に捲回し、巻き止めテープで外側を止めて捲回体とする。
前記捲回工程について詳しく説明する。電池用セパレータの片端をピンのスリット部の間に通し、ピンを少しだけ回転させて電池用セパレータの一端をピンに巻きつけておく。この時、ピンの表面と電池用セパレータの被覆層とが接触する。その後、電池用セパレータを間に挟むようにして正極と負極を配置し、捲回機によってピンを回転させて、正負極と電池用セパレータを捲回する。捲回後、ピンは捲回物から引き抜かれる。
【0072】
前記正極板21、電池用セパレータ10及び負極板22を一体的に巻き付けた捲回体を有底円筒状の電池ケース内に収容し、正極及び負極のリード体24、25と溶接する。ついで、電解液を電池缶内に注入し、電池用セパレータ10等に十分に電解液が浸透した後、電池缶の開口周縁にガスケット26を介して正極蓋27を封口し、予備充電、エージングを行い、筒型の非水電解液二次電池を作製する。
【0073】
電解液としては、リチウム塩を電解質とし、これを有機溶媒に溶解した電解液が用いられる。有機溶媒としては特に限定されるものではないが、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ジメチルカーボネート、プロピオン酸メチルもしくは酢酸ブチル等のエステル類;アセトニトリル等のニトリル類;1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジメトキシメタン、ジメトキシプロパン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランもしくは4−メチル−1,3−ジオキソラン等のエーテル類;スルホラン等が挙げられ、これらを単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。なかでも、エチレンカーボネート1質量部に対してメチルエチルカーボネートを2質量部混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解液が好ましい。
【0074】
負極としてはアルカリ金属又はアルカリ金属を含む化合物をステンレス鋼製網等の集電材料と一体化させたものが用いられる。前記アルカリ金属としては、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム等が挙げられる。前記アルカリ金属を含む化合物としては、例えばアルカリ金属とアルミニウム、鉛、インジウム、カリウム、カドミウム、スズもしくはマグネシウム等との合金、さらにはアルカリ金属と炭素材料との化合物、低電位のアルカリ金属と金属酸化物もしくは硫化物との化合物等が挙げられる。負極に炭素材料を用いる場合、炭素材料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭等を用いることができる。
【0075】
正極としては、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物、二酸化マンガン、五酸化バナジウムもしくはクロム酸化物等の金属酸化物、二硫化モリブデン等の金属硫化物等が活物質として用いられ、これらの正極活物質に導電助剤やポリテトラフルオロエチレン等の結着剤等を適宜添加した合剤を、ステンレス鋼製網等の集電材料を芯材として成形体に仕上げたものが用いられる。
【実施例】
【0076】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の積層多孔フィルムについて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
(1)フィラーの含有率
耐熱層(II層)中のフィラーと樹脂バインダーとの総質量に占めるフィラーの質量の割合をフィラー含有率(質量%)とした。
【0078】
(2)樹脂バインダーの含有率
耐熱層(II層)中のフィラーと樹脂バインダーとの総質量に占める樹脂バインダーの質量の割合を樹脂バインダーの含有率(質量%)とした。
【0079】
(3)製膜性
耐熱層(II層)の塗布延伸後に得られる積層多孔フィルムの製膜性を以下の基準で判定した。
○:目視で欠陥又は剥離が無い。
△:目視で数ミリの細かい割れ又は剥離がある。
×:目視で数センチ以上の大きな割れ又は剥離がある。
【0080】
(4)マイクロクラック
耐熱層(II層)の塗布延伸後に得られる積層多孔フィルムのマイクロクラックの有無を走査型電子顕微鏡(SEM)の表面画像にて以下の要領で判定した。
○:長径20μmを超えるような亀裂が認められない。
×:長径20μm〜50μm程度の虎縞状の亀裂がある。
【0081】
(5)積層多孔フィルムの総厚み
積層多孔フィルムの総厚みは、1/1000mmのダイアルゲージにて、積層多孔フィルムの面内を不特定に5箇所測定し、その平均値として算出した。
【0082】
(6)透気度(ガーレ値)
透気度は、JIS P8117に準拠して測定した。
【0083】
(7)I層の空孔率
積層多孔フィルムを、50mm角に切り出し、イオン交換水にて洗浄し、耐熱層(II層)を洗い流した後、充分乾燥した。
得られたポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の質量を天秤にて、厚みをダイアルゲージにて測定し、以下の式にてI層の空孔率を算出した。
I層の空孔率(%)=100−{W
I/(50×50×T
I×I層の真密度/1000)×100}
W
1:ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の質量(g)
T
1:ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の厚み(mm)
I層の真密度:(g/cm
3)
【0084】
(8)II層の空孔率
積層多孔フィルムを、50mm角に切り出し、質量を天秤にて、厚みをダイアルゲージにて測定し、以下の式にてII層の空孔率を算出した。
II層の空孔率(%)=100−{W
II/(50×50×T
II×II層の真密度/1000)×100}
W
I+II:積層多孔フィルムの質量(g)
W
II:耐熱層(II層)の質量(g)(ただし、W
II=W
I+II−W
1とする)
T
I+II:積層多孔フィルムの厚み(mm)
T
II:耐熱層(II層)の厚み(mm)(ただし、T
II=T
I+II−T
1とする)
【0085】
(9)200℃における加圧面収縮率
40℃に設定したホットプレート(アズワン(株)製、ND−2)上に、115mm×140mmに切り出した耐水研磨紙#1000(理研コランダム(株)製)を研磨面が上になるように乗せ、研磨紙の上に炭酸プロピレンと炭酸エチレンの混合液(質量比7:3)を0.5g滴下した。次いで、100mm×100mm四方に切り出した積層多孔フィルムを空気が入らないように研磨紙に重ね合わせ、更に180℃で1時間熱処理したPETフィルム(三菱樹脂(株)製、ダイアホイル T100−38)を200mm×200mm四方に切り出して積層多孔フィルムの上に乗せた。次に、200mm×200mm×5mmの耐熱ガラス((株)東新理興製)を更に2枚PETフィルムの上に乗せ、研磨紙、上記混合液が浸透した積層多孔フィルム、PETフィルム、及び耐熱ガラスがこの順に積層されたサンプルを作製した。
次にホットプレートの設定温度を200℃に設定し、昇温速度50℃/minで昇温を開始した。ホットプレートの温度が200℃に到達後、1分間保持し、室温25℃の下で空冷によって40℃まで冷却した後、当該サンプルを取り出した。
上記で得られた200℃熱処理後の積層多孔フィルムの加圧面収縮率を以下の方法で算出した。
新たに熱処理していないPETフィルム(三菱樹脂(株)製、ダイアホイル T100−38)を100mm×100mm四方に切り出し、その質量を測定しW
1とした。
次に該PETフィルムを、熱処理後の積層多孔フィルム上に重ね、収縮後の積層多孔フィルムの形状をPETフィルムに写し取り、その形状にPETフィルムを切り出した。得られた切り出し後のPETフィルムの質量を測定しW
2とした。W
1及びW
2を用いて、以下の式にて加圧面収縮率を算出した。
加圧面収縮率(%)={1−(W
2/W
1)}×100
【0086】
(10)耐粉落ち性
積層多孔フィルムを50mm×50mm四方に切り出し、一方を厚紙に貼りつけ固定した後、耐熱層(II層)側に綿布で覆った直径40mm、700gの分銅を乗せ、これらを50rpmの回転数で10分間擦り合わせ、その後の表面を観察し、以下の評価基準により耐粉落ち性を評価した。
◎:耐熱層(II層)の脱落部分が接触面積(約12.56cm
2)の10%未満。
○:耐熱層(II層)の脱落部分が接触面積(約12.56cm
2)の10%以上、30%未満(実用上問題ないレベル)。
×:耐熱層(II層)の脱落部分が接触面積(約12.56cm
2)の30%以上。
【0087】
(11)耐熱性
耐熱性については、以下の評価基準にて評価した。
○:200℃における加圧面収縮率が25%未満
×:200℃における加圧面収縮率が25%以上
【0088】
[製造例1]
(ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム)
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ(株)製、ノバテックPP FY6HA、密度:0.90g/cm
3、MFR:2.4g/10分、Mw/Mn=3.22)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、β晶核剤を0.2質量部の割合で各原材料をブレンドし、東芝機械(株)製の同方向二軸押出機(口径:40mm、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂組成物のペレットを作製した。得られたポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶活性は80%であった。
【0089】
前記のペレットを用いて、口金より押出し、124℃のキャスティングロールで冷却固化させてポリオレフィン系樹脂多孔フィルム無孔膜状物を作製した。
前記無孔膜状物を、ロール式縦延伸機を用いて縦方向に100℃で4.6倍延伸し、続いてこれに、0.8kWの出力、10m/minの速度でコロナ処理を施し、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを作製した。
【0090】
[実施例1]
アルミナ(日本軽金属(株)製、LS−410、平均粒径:0.5μm)22質量部、と水35.8質量部、イソプロピルアルコール2.2質量部、20質量%の濃度のポリビニルブチラール水溶液(積水化学工業(株)製、エスレックKW−1、平均重合度:600、アセタール化度:9モル%)15質量部を混合攪拌し、固形分33質量%の塗工液を得た。
得られた塗工液を用い、製造例1で作製した前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムに目付け量#10のバーコーターを用いて塗布した後、60℃の乾燥炉にて2分間乾燥させた。その後、フィルム横延伸装置(京都機械(株)製)にて、ライン速度3m/min、150℃で延伸倍率2.1倍に延伸し、続いて153℃で熱固定することで積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0091】
[実施例2]
実施例1において、ポリビニルブチラール水溶液(積水化学工業(株)社製、エスレックKW−1、平均重合度:600、アセタール化度:9モル%)の代わりに、ポリビニルブチラール水溶液(積水化学工業(株)製:エスレックKW−3、重合度600、アセタール化度:30モル%)を使用した点以外は実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0092】
[実施例3]
アルミナ(日本軽金属製、LS−410、平均粒径:0.5μm)19質量部、と水24.1質量部、イソプロピルアルコール1.9質量部、20質量%の濃度のポリビニルブチラール水溶液(積水化学工業(株)製、エスレックKW−3、平均重合度600、アセタール化度:30モル%)30質量部を混合攪拌し、固形分33質量%の塗工液を得た。
得られた塗工液を用い、実施例1と同様にして、積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0093】
[比較例1]
実施例1において、ポリビニルブチラールの代わりにエチレン変性ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、エクセバール RS2117、平均重合度:1,700、エチレン変性度:3%)を使用した点以外は実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0094】
[比較例2]
ポリビニルブチラールの代わりにポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール(株)製、JMR−10HH、重合度:240)を使用した点以外は実施例1と同様にして積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0095】
[比較例3]
製造例1で作製した前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを、フィルム横延伸装置(京都機械(株)製)にて、ライン速度5.3m/min、145℃で延伸倍率2.5倍に延伸し、続いて160℃で0.9倍に熱弛緩することで、二軸延伸ポリオレフィン多孔フィルム(I層)を得た。
得られた二軸延伸ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に、実施例3で使用した塗工液を実施例1と同様の条件で塗工し、60℃で2分間乾燥することにより積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0096】
[比較例4]
製造例1で作製した前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを、フィルム横延伸装置(京都機械(株)製)にて、ライン速度5.3m/min、145℃で延伸倍率2.5倍に延伸し、続いて160℃で0.9倍に熱弛緩することで、二軸延伸ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)を得た。
得られた二軸延伸ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に、アルミナ(日本軽金属(株)社製、LS−410、平均粒径:0.5μm)32.7質量部、水60.6質量部、イソプロピルアルコール5質量部、20質量%の濃度のポリビニルブチラール水溶液(積水化学工業(株)製、エスレックKW−3、平均重合度600、アセタール化度:30モル%)1.7質量部を混合攪拌してなる固形分33質量%の塗工液を実施例1と同様の条件で塗工し、60℃で2分間乾燥することにより積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0097】
[比較例5]
製造例1で作製した前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムをフィルム横延伸装置(京都機械(株)製)にて、ライン速度3m/min、150℃で延伸倍率2.1倍に延伸し、続いて153℃で熱固定することで二軸延伸ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムの物性評価を行い、その結果を表1にまとめた。
【0098】
【表1】
【0099】
表1より、実施例1〜3で得られた積層多孔フィルムは、優れた製膜性、通気性、耐粉落ち性、寸法安定性、及び耐熱性を有していた。これは、アセタール変性されたポリビニルアルコール樹脂が、優れたフィラーの結着性と、延伸性とを有するためと考えられる。
【0100】
一方、比較例1で得られた積層多孔フィルムは、樹脂バインダーの伸びが悪く、延伸時に耐熱層(II層)の割れが生じ、製膜性に劣っていた。
比較例2で得られた積層多孔フィルムは、目視では均一であったが、SEMで表面を確認すると、マイクロクラックが多数認められた(
図4)。その為、耐粉落ち性も不十分であった。これに対して、実施例1及び2で得られた積層多孔フィルムのSEM写真(
図2及び
図3)からは、マイクロクラックが確認されず、耐粉落ち性も良好であった。
比較例3で得られた積層多孔フィルムは、耐熱層(II層)が延伸されていないため、空孔率が低く、通気性が発現しなかった。
比較例4で得られた積層多孔フィルムは、耐熱層(II層)が延伸されていないが、その空孔率がポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の空孔率よりやや低いものの、ほぼ同等レベルの通気性を発現している。しかし、このような通気性を実現するためにII層中の樹脂バインダー(B)の含有量を極めて少量とせねばならず、耐粉落ち性が不十分であった。
比較例5のポリオレフィン系樹脂多孔フィルムは、耐熱層(II層)が積層されていないため、耐熱性が不十分であった。
【0101】
本発明の積層多孔フィルムは、透気特性が要求される種々の用途に応用することができる。リチウムイオン二次電池用セパレータ;使い捨て紙オムツ、生理用品等の体液吸収用パットもしくはベッドシーツ等の衛生材料;手術衣もしくは温湿布用基材等の医療用材料;ジャンパー、スポーツウエアもしくは雨着等の衣料用材料;壁紙、屋根防水材、断熱材、吸音材等の建築用材料;乾燥剤;防湿剤;脱酸素剤;使い捨てカイロ;鮮度保持包装もしくは食品包装等の包装材料等の資材として極めて好適に利用できる。