(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のステージ装置、露光装置、及びデバイス製造方法の実施の形態を、
図1ないし
図9を参照して説明する。
図1は本発明の露光装置の一実施形態を示す概略構成図である。
(第1実施形態)
図1において、露光装置EXは、マスクMを支持するマスクステージMSTと、基板Pを支持する基板ステージPSTと、マスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明する照明光学系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターン像をステージ装置としての基板ステージPSTに支持されている基板Pに投影露光する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を統括制御する制御装置CONTとを備えている。
【0014】
本実施形態の露光装置EXは、露光波長を実質的に短くして解像度を向上するとともに焦点深度を実質的に広くするために液浸法を適用した液浸露光装置であって、投影光学系PLと基板Pとの間に液体1を供給する液体供給機構10と、基板P上の液体1を回収する液体回収機構20とを備えている。本実施形態において、液体1には純水が用いられる。露光装置EXは、少なくともマスクMのパターン像を基板P上に転写している間、液体供給機構10から供給した液体1により投影光学系PLの投影領域AR1を含む基板P上の少なくとも一部に液浸領域AR2を形成する。
具体的には、露光装置EXは、投影光学系PLの先端部の光学素子2と基板Pの表面(露光面)PA(
図4参照)との間に液体1を満たし、この投影光学系PLと基板Pとの間の液体1及び投影光学系PLを介してマスクMのパターン像を基板P上に投影し、基板Pを露光する。
【0015】
ここで、本実施形態では、露光装置EXとしてマスクMと基板Pとを走査方向における互いに異なる向き(逆方向)に同期移動しつつマスクMに形成されたパターンを基板Pに露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)を使用する場合を例にして説明する。以下の説明において、投影光学系PLの光軸AXと一致する方向をZ軸方向、Z軸方向に垂直な平面内でマスクMと基板Pとの同期移動方向(走査方向)をX軸方向、Z軸方向及びY軸方向に垂直な方向(非走査方向)をY軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわり方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。なお、ここでいう「基板」は半導体ウエハ上に感光性材料であるフォトレジストを塗布したものを含み、「マスク」は基板上に縮小投影されるデバイスパターンを形成されたレチクルを含む。
【0016】
照明光学系ILはマスクステージMSTに支持されているマスクMを露光光ELで照明するものであり、露光用光源、露光用光源から射出された光束の照度を均一化するオプティカルインテグレータ、オプティカルインテグレータからの露光光ELを集光するコンデンサレンズ、リレーレンズ系、露光光ELによるマスクM上の照明領域をスリット状に設定する可変視野絞り等を有している。マスクM上の所定の照明領域は照明光学系ILにより均一な照度分布の露光光ELで照明される。照明光学系ILから射出される露光光ELとしては、例えば水銀ランプから射出される紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)や、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)及びF
2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)などが用いられる。本実施形態においてはArFエキシマレーザ光が用いられる。上述したように、本実施形態における液体1は純水であって、露光光ELがArFエキシマレーザ光であっても透過可能である。また、純水は紫外域の輝線(g線、h線、i線)及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)も透過可能である。
【0017】
マスクステージMSTはマスクMを支持するものであって、投影光学系PLの光軸AXに垂直な平面内、すなわちXY平面内で2次元移動可能及びθZ方向に微小回転可能であ
る。マスクステージMSTはリニアモータ等のマスクステージ駆動装置MSTDにより駆動される。マスクステージ駆動装置MSTDは制御装置CONTにより制御される。マスクステージMST上には移動鏡50が設けられている。また、移動鏡50に対向する位置にはレーザ干渉計51が設けられている。マスクステージMST上のマスクMの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計51によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計51の計測結果に基づいてマスクステージ駆動装置MSTDを駆動することでマスクステージMSTに支持されているマスクMの位置決めを行う。
【0018】
投影光学系PLはマスクMのパターンを所定の投影倍率βで基板Pに投影露光するものであって、基板P側の先端部に設けられた光学素子(レンズ)2を含む複数の光学素子で構成されており、これら光学素子は鏡筒PKで支持されている。本実施形態において、投影光学系PLは、投影倍率βが例えば1/4あるいは1/5の縮小系である。なお、投影光学系PLは等倍系及び拡大系のいずれでもよい。また、本実施形態の投影光学系PLの先端部の光学素子2は鏡筒PKに対して着脱(交換)可能に設けられており、光学素子2には液浸領域AR2の液体1が接触する。
【0019】
光学素子2は螢石で形成されている。螢石は水との親和性が高いので、光学素子2の液体接触面2aのほぼ全面に液体1を密着させることができる。すなわち、本実施形態においては光学素子2の液体接触面2aとの親和性が高い液体(水)1を供給するようにしているので、光学素子2の液体接触面2aと液体1との密着性が高く、光学素子2と基板Pとの間の光路を液体1で確実に満たすことができる。なお、光学素子2は水との親和性(親水性)が高い石英であってもよい。また光学素子2の液体接触面2aに親水化(親液化)処理を施して、液体1との親和性をより高めるようにしてもよい。また、鏡筒PKは、その先端付近が液体(水)1に接することになるので、少なくとも先端付近はTi(チタン)等の錆びに対して耐性のある金属で形成される。
【0020】
基板ステージPSTは基板Pを支持するものであって、基板ホルダPHを介して基板Pを保持する基板テーブル(ステージ)52と、基板テーブル52を支持するXYステージ53と、XYステージ53を支持するベース54とを備えている。基板ステージPSTはリニアモータ等の基板ステージ駆動装置PSTDにより駆動される。基板ステージ駆動装置PSTDは制御装置CONTにより制御される。基板テーブル52を駆動することにより、基板テーブルに保持されている基板PのZ軸方向における位置(フォーカス位置)、及びθX、θY方向における位置が制御される。また、XYステージ53を駆動することにより、基板PのXY方向における位置(投影光学系PLの像面と実質的に平行な方向の位置)が制御される。すなわち、基板テーブル52は、基板Pのフォーカス位置及び傾斜角を制御して基板Pの表面をオートフォーカス方式、及びオートレベリング方式で投影光学系PLの像面に合わせ込むZステージとして機能し、XYステージ53は基板PのX軸方向及びY軸方向における位置決めを行う。なお、基板テーブルとXYステージとを一体的に設けてよいことは言うまでもない。
【0021】
基板ステージPST(基板テーブル52)上には移動鏡55が設けられている。また、移動鏡55に対向する位置にはレーザ干渉計56が設けられている。基板ステージPST上の基板Pの2次元方向の位置、及び回転角はレーザ干渉計56によりリアルタイムで計測され、計測結果は制御装置CONTに出力される。制御装置CONTはレーザ干渉計56の計測結果に基づいて基板ステージ駆動装置PSTDを駆動することで基板ステージPSTに支持されている基板Pの位置決めを行う。
【0022】
また、基板ステージPST(基板テーブル52)上には基板Pを囲むリング状のプレート部30が設けられている。プレート部30は基板テーブル52と外周で嵌合した状態で
固定されており、プレート部30の内側には凹部32が形成されている。なお、プレート部30と基板テーブル52とは一体で設けられていてもよい。基板Pを保持する基板ホルダPHは凹部32に配置されている(
図4参照)。プレート部30は、凹部32に配置された基板ホルダPHに保持されている基板Pの表面PAとほぼ同じ高さの平坦面31を有している。なお、プレート部30及び基板ホルダPHの詳細については後述する。
【0023】
液体供給機構10は所定の液体1を基板P上に供給するものであって、液体1を供給可能な第1液体供給部11及び第2液体供給部12と、第1液体供給部11に流路を有する供給管11Aを介して接続され、この第1液体供給部11から送出された液体1を基板P上に供給する供給口13Aを有する第1供給部材13と、第2液体供給部12に流路を有する供給管12Aを介して接続され、この第2液体供給部12から送出された液体1を基板P上に供給する供給口14Aを有する第2供給部材14とを備えている。第1、第2供給部材13、14は基板Pの表面に近接して配置されており、基板Pの面方向において互いに異なる位置に設けられている。具体的には、液体供給機構10の第1供給部材13は投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、第2供給部材14は他方側(+X側)に設けられている。
【0024】
第1、第2液体供給部11、12のそれぞれは、液体1を収容するタンク、及び加圧ポンプ等を備えており、供給管11A、12A及び供給部材13、14のそれぞれを介して基板P上に液体1を供給する。また、第1、第2液体供給部11、12の液体供給動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは第1、第2液体供給部11、12による基板P上に対する単位時間あたりの液体供給量をそれぞれ独立して制御可能である。また、第1、第2液体供給部11、12のそれぞれは液体の温度調整機構を有しており、装置が収容されるチャンバ内の温度とほぼ同じ温度(例えば23℃)の液体1を基板P上に供給するようになっている。
【0025】
液体回収機構20は基板P上の液体1を回収するものであって、基板Pの表面に近接して配置された回収口23A、24Aを有する第1、第2回収部材23、24と、この第1、第2回収部材23、24に流路を有する回収管21A、22Aを介してそれぞれ接続された第1、第2液体回収部21、22とを備えている。第1、第2液体回収部21、22は例えば真空ポンプ等の吸引装置、及び回収した液体1を収容するタンク等を備えており、基板P上の液体1を第1、第2回収部材23、24、及び回収管21A、22Aを介して回収する。第1、第2液体回収部21、22の液体回収動作は制御装置CONTにより制御され、制御装置CONTは第1、第2液体回収部21、22による単位時間あたりの液体回収量を制御可能である。
【0026】
図2は液体供給機構10及び液体回収機構20の概略構成を示す平面図である。
図2に示すように、投影光学系PLの投影領域AR1はY軸方向(非走査方向)を長手方向とするスリット状(矩形状)に設定されており、液体1が満たされた液浸領域AR2は投影領域AR1を含むように基板P上の一部に形成される。そして、投影領域AR1の液浸領域AR2を形成するための液体供給機構10の第1供給部材13は投影領域AR1に対して走査方向一方側(−X側)に設けられ、第2供給部材14は他方側(+X側)に設けられている。
【0027】
第1、第2供給部材13、14のそれぞれは平面視略円弧状に形成されており、その供給口13A、14AのY軸方向におけるサイズは、少なくとも投影領域AR1のY軸方向におけるサイズより大きくなるように設定されている。そして、平面視略円弧状に形成されている供給口13A、14Aは、走査方向(X軸方向)に関して投影領域AR1を挟むように配置されている。液体供給機構10は、第1、第2供給部材13、14の供給口13A、14Aを介して投影領域AR1の両側で液体1を同時に供給する。
【0028】
液体回収機構20の第1、第2回収部材23、24のそれぞれは基板Pの表面に向くように円弧状に連続的に形成された回収口23A、24Aを有している。そして、互いに向き合うように配置された第1、第2回収部材23、24により略円環状の回収口が形成されている。第1、第2回収部材23、24それぞれの回収口23A、24Aは液体供給機構10の第1、第2供給部材13、14、及び投影領域AR1を取り囲むように配置されている。また、投影領域AR1を取り囲むように連続的に形成された回収口の内部に複数の仕切部材25が設けられている。
【0029】
第1、第2供給部材13、14の供給口13A、14Aから基板P上に供給された液体1は、投影光学系PLの先端部(光学素子2)の下端面と基板Pとの間に濡れ拡がるように供給される。また、投影領域AR1に対して第1、第2供給部材13、14の外側に流出した液体1は、この第1、第2供給部材13、14よって投影領域AR1に対して外側に配置されている第1、第2回収部材23、24の回収口23A、24Aより回収される。
【0030】
本実施形態において、基板Pを走査露光する際、走査方向に関して投影領域AR1の手前から供給する単位時間あたりの液体供給量が、その反対側で供給する液体供給量よりも多く設定される。例えば、基板Pを+X方向に移動しつつ露光処理する場合、制御装置CONTは、投影領域AR1に対して−X側(すなわち供給口13A)からの液体量を+X側(すなわち供給口14A)からの液体量より多くし、一方、基板Pを−X方向に移動しつつ露光処理する場合、投影領域AR1に対して+X側からの液体量を−X側からの液体量より多くする。また、走査方向に関して、投影領域AR1の手前での単位時間あたりの液体回収量が、その反対側での液体回収量よりも少なく設定される。例えば、基板Pが+X方向に移動しているときには、投影領域AR1に対して+X側(すなわち回収口24A)からの回収量を−X側(すなわち回収口23A)からの回収量より多くする。
【0031】
図3は、基板ステージPSTの基板テーブル52を上方から見た平面図である。平面視矩形状の基板テーブル52の互いに垂直な2つの縁部に移動鏡55が配置されている。移動鏡55、55の交叉部近傍には、マスクM及び基板Pを所定位置に対してアライメントする際に使う基準マークFMが設けられている。また、図示しないものの、基板ステージPST上の基板Pの周囲には、照度センサ等の各種センサも設けられている。
【0032】
また、基板テーブル52のほぼ中央部に平面視円形に凹部32が形成されており、この凹部32には基板ホルダPHを支持するための支持部52aが突設されている(
図4参照)。そして、基板Pを保持する基板ホルダPHは、
図4に示すように、支持部52aに支持されて基板テーブル52とは隙間をあけた状態で凹部32内に配置されている。なお、基板テーブル52と基板ホルダPHとの間の隙間は大気圧に設定(開放)されている。そして、基板Pの周囲には、基板Pの表面とほぼ同じ高さの平坦面31を有するプレート部30が設けられている。
【0033】
基板ホルダPHは、基板Pの外周よりも内側で基板Pの裏面PCを保持する略円環状の周壁部33と、この周壁部33の内側に配置され、基板Pを保持する複数の支持部34とを備えている。周壁部33及び支持部34は、基板ホルダPHの一部を構成する略円板状のベース部35上に設けられている。支持部34のそれぞれは断面視台形状であり、基板Pはその裏面PCを周壁部33の上端面(基板保持面)33A及び複数の支持部34の上端面(基板保持面)34Aに保持される。支持部34は周壁部33の内側において一様に配置されている。本実施形態においては、基板ホルダPHのうち、周壁部33の上端面33A、及び側面37が撥液性を有している。基板ホルダPHに対する撥液処理としては、例えば、フッ素系樹脂材料あるいはアクリル系樹脂材料等の撥液性材料を塗布、あるいは前記撥液性材料からなる薄膜を貼付する。撥液性にするための撥液性材料としては液体1に対して非溶解性の材料が用いられる。
【0034】
図4は基板Pを保持した基板ステージPSTの要部拡大断面図である。
リング状のプレート部30は、外周を基板テーブル52に嵌合させて、凹部32内に設置されており、基板Pの側面(外周部)PBと対向し基板Pの厚さよりも薄く形成された内周面3と、内周面3の下端部(第1部分)4を起点として外側へ向かうに従って漸次下方に傾斜する傾斜面(傾斜部)5とを有している。傾斜面5の上端部(つまり、内周面3の下端部)4は、周壁部33の上端面33A及び支持部34の上端面34Aよりも高い位置に配されている。
【0035】
本実施の形態では、プレート部30の平坦面31は液体1に対して撥液性を有しており、プレート部30の内周面3及び傾斜面4は親液部として液体1に対して親液性を有している。平坦面31に対する撥液処理としては、上述した基板ホルダPHと同様の処理を採用できる。また、内周面3及び傾斜面4に対する親液処理としては、紫外光の照射や酸素を反応ガスとするプラズマ処理、オゾン雰囲気にさらす処理を採用できる。なお、撥液性を有する材料(フッ素系樹脂など)でプレート部30を形成し、内周面3及び傾斜面4に上記親液処理を施したり、親液性の金属(あるいは金属膜)を貼設(あるいは成膜)してもよい。
【0036】
また、プレート部30には、プレート部30と基板Pの側面PBとの間に形成される空間39に流入した液体を吸引する吸引装置60が設けられている。本実施形態において、吸引装置60は、液体1を収容可能なタンク61と、プレート部30及び基板テーブル52内部に設けられ、空間39とタンク61とを接続する流路62と、タンク61にバルブ63を介して接続されたポンプ64とを備えている。そして、この流路62は、傾斜面5の下端部近傍(下方)において空間39に開口しており、その内壁面にも上記の撥液処理が施されている。
これら親液性を有するプレート部30の内周面3及び傾斜面5と、吸引装置60とにより、本発明に係る回収装置が構成される。
【0037】
なお、基板Pの露光面である表面PAにはフォトレジスト(感光材)90が塗布されている。本実施形態において、感光材90はArFエキシマレーザ用の感光材(例えば、東京応化工業株式会社製TARF−P6100)であって撥液性(撥水性)を有しており、その接触角は70〜80°程度である。また、本実施形態において、基板Pの側面PBは撥液処理(撥水処理)されている。具体的には、基板Pの側面PBにも、撥液性を有する上記感光材90が塗布されている。更に、基板Pの裏面PCにも上記感光材90が塗布されて撥液処理されている。
【0038】
また、基板Pの外周には当該基板Pの位置合わせ用に外周を切り欠いてノッチ部PVがV字形状に形成されている(
図3参照)。なお、
図4は、ノッチ部PVにおける断面図であり、ノッチ部以外の基板外周は二点鎖線で示されている。この場合、ノッチ部以外のプレート部30の内周面3と基板外周とのギャップは、例えば0.3〜0.5mmとなり、ノッチ部PVのプレート部30の内周面3と基板外周とのギャップは、例えば1.5〜2.0mmとなる。
【0039】
一方、基板ステージPSTは、基板ホルダPHの周壁部33に囲まれた空間38を負圧にする吸引装置40を備えている。吸引装置40は、基板ホルダPHのベース部35上面に設けられた複数の吸引口41と、基板ステージPST外部に設けられた真空ポンプを含むバキューム部42と、ベース部35内部に形成され、複数の吸引口41のそれぞれとバキューム部42とを接続する流路43とを備えている。吸引口41はベース部35上面の
うち支持部34以外の複数の所定位置にそれぞれ設けられている。吸引装置40は、周壁部33と、ベース部35と、支持部34に支持された基板Pとの間に形成された空間38内部のガス(空気)を吸引してこの空間38を負圧にすることで、周壁部33及び支持部34に基板Pを吸着保持させる。上記回収装置(吸引装置60)及び吸引装置40の動作は制御装置CONTに制御される。
【0040】
次に、上述した構成を有する露光装置EXにより基板Pのエッジ領域Eを液浸露光する方法について説明する。
図4に示すように、基板Pのエッジ領域Eを液浸露光する際、液浸領域AR2の液体1が、基板Pの表面PAの一部及びプレート部30の平坦面31の一部に配置される。このとき、露光対象となるエッジ領域Eが基板Pのノッチ部PVではない位置にある場合、基板Pの表面PA及びプレート部30の平坦面31は撥液処理されており、またこれらの間のギャップ(以下ギャップAと称する)も大きくないため、液浸領域AR2の液体1はギャップAに浸入し難く、その表面張力によりギャップAに流れ込むことがほとんどない。
【0041】
一方、露光対象となるエッジ領域Eが基板Pのノッチ部PVにある場合、基板Pの外周PBとプレート部30の内周面3との間のギャップは、例えば2mm程度に大きくなるため、
図4に示す空間39に液体1が浸入する可能性がある。
ここで、基板Pの外周PBは撥液性を有しており、またプレート部30の内周面3及び傾斜面5は親液性を有しているため、空間39に流れ込んだ液体1は、内周面3との親和力及び自重により内周面3から傾斜面5に沿って(伝って)移動し流路62の開口部に到達する。吸引装置60においては、常時ポンプ64を作動させておくことで、液体1により流路62が塞がれたときに負圧が大きくなるため、流路62の開口部に到達した液体1を流路62を介してタンク61に吸引・回収することができる。タンク61には排出流路61Aが設けられており、液体1が所定量溜まったら排出流路61Aより排出される。
【0042】
なお、万一、液体1が基板Pの裏面PC側へ回り込んだ場合でも、裏面PC及び周壁部33の上端面33Aが撥液性を有しているので、裏面PCと周壁部33との間の隙間から空間38へ浸入することを阻止できる。
また、凹部32内は大気圧に開放されているため、流路62を液体1が塞がない状態では凹部32内の圧力は一定に保たれ、吸引に伴う振動が基板Pに伝わることはなく、振動に起因する悪影響を防止することができる。
また、プレート部30においては、液体回収機構20の回収部材23、24との間に隙間が形成されるが、平坦面31が撥液性を有しているので、この隙間から液体1が流出することを防止でき、露光処理に支障を来すことを回避できる。
【0043】
このように、本実施の形態では、基板Pのエッジ領域Eを露光する場合にも、液体1が基板PとホルダPH(周壁部33)との間に回り込むことを防止するので、投影光学系PLの下に液体1を良好に保持しつつ液浸露光できる。特に本実施の形態では、空間39に流入した液体1を親液部である内周面3及び傾斜面5を用いて、基板Pから離間した位置にある吸引装置60の流路62まで導いて容易に回収できるので、位置合わせ用のノッチ部PVが形成された基板Pを用いる場合でも、ノッチ部PVにおける液体1の回り込みを防止して良好な液浸露光を実施できる。さらに、本実施の形態では、傾斜面5の上端部4が基板保持面である上端面33Aよりも高い位置にあるため、空間39に流入した液体1が上端面33Aへ達する前に傾斜面5に導くことが可能となり、液体1の吸引・回収がより確実になる。
【0044】
加えて、本実施の形態では、基板ホルダPHにおける側面37及び周壁部33の上端面33Aを撥液性にしているので、液体1が基板Pの裏面側に回り込んだ場合でも、空間38への浸入を阻止可能となっている。また、プレート部30の平坦面31も撥液処理されているので、液浸領域AR2を形成する液体1の、プレート部30外側への過剰な濡れ拡がりが防止され、液浸領域AR2を良好に形成可能であるとともに、液体1の流出や飛散等の不都合を防止することができる。
【0045】
(第2実施形態)
図5及び
図6は、本発明のステージ装置の第2の実施の形態を示す図である。
第1実施形態では、液体1をプレート部30の傾斜面に自重により伝わせて基板Pから離間する方向に導いたが、第2実施形態では毛細管現象を用いて液体を吸引する構成を採っている。
以下、
図5及び
図6を参照して説明する。
なお、
図5及び
図6において、
図4等で示した第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
図5に示すように、本実施形態におけるプレート部30は、内周面3の下端部4を基端として水平方向に延びる(基板保持面33Aと略平行に)裏面7を有している。裏面7には、基板Pの側面PBと内周面3との間の空間39に一端を開口させて複数のスリット(凹部)8が形成されている。
図6の部分平面拡大図に示すように、スリット8は微小幅を有し、内周面3の全周に亘って放射状に所定間隔で複数形成されている。そして、スリット8の先端部には、吸引装置60の流路62の開口部が配置されている。スリット8を含む底面7は上述した親液化処理が施されて親液性を有する構成となっている。
なお、
図6では理解を容易にするためにスリット8の本数を少なくした状態で図示しているが、実際には効率的に液体を吸引できるようにスリット8は微小ピッチで多数形成されている。
他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0047】
本実施の形態では、空間39に流れ込んだ液体1は、スリット8における親和力及び毛細管現象によりスリット8に吸引され、スリット8の端部から流路62を介して吸引・回収されるため、基板Pの裏面側へ液体1が回り込むことを防止して良好な液浸露光を実施できる。
なお、本実施の形態のスリットを第1実施形態における傾斜面5に適用する構成も好適である。この場合、毛細管現象による吸引力に自重が加わるため、吸引力を高めてより確実に液体1を吸引・回収することが可能になる。
【0048】
(第3実施形態)
図7は、本発明のステージ装置の第3の実施の形態を示す図である。
本実施の形態では、プレート部と基板とに対する吸引圧力差及び親液部を用いて液体を吸引・回収する。
以下、
図7を参照して説明する。
なお、
図7において、
図4等で示した第1実施形態の構成要素と同一の要素については同一符号を付し、その説明を省略する。
【0049】
図7に示すように、本実施形態ではプレート部30はリング板状に形成され、基板テーブル52上に載置・固定されている。基板テーブル52には、プレート部30に覆われる位置に、上方に開口する溝9が全周に亘って形成されている。そして、吸引装置60の流路62は、基板テーブル52に設けられ、溝9とタンク61とを接続している。また、基板テーブル52における溝9よりも内周側には、プレート部30の裏面7との間に微小ギャップを形成する段部52Aが形成されており、このギャップを介して溝9と空間39とが連通する構成となっている。この段部52A及びプレート部30の裏面7は、上述した親液化処理が施された親液部となっている。
【0050】
上記の構成の露光装置EXでは、制御装置CONTは基板Pを基板ホルダPHに保持させるために空間38を吸引する負圧吸引力よりも、溝9内を吸引する負圧吸引力が大きくなるように、吸引装置40、60を制御する。従って、液体1が空間39に流入した場合、溝9(プレート部30側)の負圧が空間38(基板ホルダPH側)の負圧よりも大きいため、液体1はプレート部30の裏面7と基板テーブル52の段部52Aとのギャップを介して溝9へ吸引され、さらに流路62を介してタンク61に吸引・回収される。特に、本実施の形態では、基板Pの裏面PC及び基板ホルダPH(周壁部33)の上端面33Aが撥液性を有しているのに対して、プレート部30の裏面7と基板テーブル52の段部52Aが親液性を有しているため、液体1に対する親和力により液体1をプレート部30側に容易に吸引して確実に回収することができる。
【0051】
なお、上記第1実施形態では、プレート部30が親液性を有する内周面3及び傾斜面5を有する構成としたが、これに限定されるものではなく、
図8に示すように、傾斜面が形成されずに内周面3がプレート部30の厚さ方向全体に亘って形成される構成であってもよい。この場合、内周面3には親液化処理が施されるとともに、吸引装置60における流路62の開口部が設けられる。
上記の構成では、空間39に流入した液体1は、内周面3との親和性及び自重により内周面3を伝わり、流路62を介してタンク61に吸引・回収されるため、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0052】
なお、上記実施の形態におけるプレート部30の平坦面31は、全面が撥液性を有している必要はなく、少なくとも液体回収機構20の第1、第2回収部材23、24と対向する位置が撥液性を有していればよい。また、基板ホルダPHにおいても、全面が撥液性を有する必要はなく、基板Pの裏面PCと対向する周壁部33の上端面33A及びプレート部30(空間39)と対向する側面37が撥液性を有していればよい。
親液性についても、例えば第2実施形態においてスリット8が親液性を有していれば、裏面7は必ずしも親液性を有している必要はない。
【0053】
また、上記実施形態では、基板Pの表面PA、側面PB、及び裏面PCの全面に撥液処理のために感光材90が塗布されているが、基板Pの側面PBと、基板Pの裏面PCのうち周壁部33に対向する領域のみを撥液処理する構成であってもよい。
基板Pの側面PB及び裏面PCの撥液処理としては、撥液性を有する感光材90を塗布しているが、側面PBや裏面PCには感光材90以外の撥液性(撥水性)を有する所定の材料を塗布するようにしてもよい。例えば、基板Pの露光面である表面PAに塗布された感光材90の上層にトップコート層と呼ばれる保護層(液体から感光材90を保護する膜)を塗布する場合があるが、このトップコート層の形成材料(例えばフッ素系樹脂材料)は、例えば接触角110°程度で撥液性(撥水性)を有する。従って、基板Pの側面PBや裏面PCにこのトップコート層形成材料を塗布するようにしてもよい。もちろん、感光材90やトップコート層形成用材料以外の撥液性を有する材料を塗布するようにしてもよい。
【0054】
同様に、基板ステージPSTや基板ホルダPHの撥液処理として、フッ素系樹脂材料やアクリル系樹脂材料を塗布するものとして説明したが、上記感光材やトップコート層形成材料を基板ステージPSTや基板ホルダPHに塗布するようにしてもよいし、逆に、基板Pの側面PBや裏面PCに、基板ステージPSTや基板ホルダPHの撥液処理に用いた材料を塗布するようにしてもよい。
上記トップコート層は、液浸領域AR2の液体1が感光材90に浸透するのを防止するために設けられる場合が多いが、例えばトップコート層上に液体1の付着跡(所謂ウォーターマーク)が形成されても、液浸露光後にこのトップコート層を除去することにより、
ウォーターマークをトップコート層とともに除去した後に現像処理等の所定のプロセス処理を行うことができる。ここで、トップコート層が例えばフッ素系樹脂材料から形成されている場合、フッ素系溶剤を使って除去することができる。これにより、ウォーターマークを除去するための装置(例えばウォーターマーク除去用基板洗浄装置)等が不要となり、トップコート層を溶剤で除去するといった簡易な構成で、ウォーターマークを除去した後に所定のプロセス処理を良好に行うことができる。
【0055】
また、上記実施形態では、基板Pの位置合わせ用の切欠部として平面視V字形状のノッチ部が設けられるものとして説明したが、半径方向と直交する方向に基板Pが切り欠かれる、いわゆるオリフラ(オリエンテーション・フラット)が設けられる基板にも適用でき、さらに位置合わせ用の切欠部が形成されていない基板にも適用できることは言うまでもない。
【0056】
上記各実施形態において、液体1は純水により構成されている。純水は、半導体製造工場等で容易に大量に入手できるとともに、基板P上のフォトレジストや光学素子(レンズ)等に対する悪影響がない利点がある。また、純水は環境に対する悪影響がないとともに、不純物の含有量が極めて低いため、基板Pの表面、及び投影光学系PLの先端面に設けられている光学素子の表面を洗浄する作用も期待できる。
なお、液体1として、PFPE(過フッ化ポリエーテル)を用いてもよい。
【0057】
そして、波長が193nm程度の露光光ELに対する純水(水)の屈折率nはほぼ1.44であるため、露光光ELの光源としてArFエキシマレーザ光(波長193nm)を用いた場合、基板P上では1/n、すなわち約134nmに短波長化されて高い解像度が得られる。更に、焦点深度は空気中に比べて約n倍、すなわち約1.44倍に拡大されるため、空気中で使用する場合と同程度の焦点深度が確保できればよい場合には、投影光学系PLの開口数をより増加させることができ、この点でも解像度が向上する。
【0058】
本実施形態では、投影光学系PLの先端に光学素子2が取り付けられており、このレンズにより投影光学系PLの光学特性、例えば収差(球面収差、コマ収差等)の調整を行うことができる。なお、投影光学系PLの先端に取り付ける光学素子としては、投影光学系PLの光学特性の調整に用いる光学プレートであってもよい。あるいは露光光ELを透過可能な平行平面板であってもよい。
【0059】
なお、液体1の流れによって生じる投影光学系PLの先端の光学素子と基板Pとの間の圧力が大きい場合には、その光学素子を交換可能とするのではなく、その圧力によって光学素子が動かないように堅固に固定してもよい。
また、本実施形態では、投影光学系PLと基板P表面との間は液体1で満たされている構成であるが、例えば基板Pの表面に平行平面板からなるカバーガラスを取り付けた状態で液体1を満たす構成であってもよい。
【0060】
なお、本実施形態の液体1は水であるが水以外の液体であってもよい。例えば露光光ELの光源がF
2レーザである場合、このF
2レーザ光は水を透過しないので、液体1としてはF
2レーザ光を透過可能な例えばフッ素系オイル等のフッ素系流体であってもよい。
また、液体1としては、その他にも、露光光ELに対する透過性があってできるだけ屈折率が高く、投影光学系PLや基板P表面に塗布されているフォトレジストに対して安定なもの(例えばセダー油)を用いることも可能である。この場合も表面処理は用いる液体1の極性に応じて行われる。
【0061】
なお、上記各実施形態の基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板や、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、
あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0062】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。また、本発明は基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写するステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0063】
また、本発明は、特開平10−163099号公報、特開平10−214783号公報、特表2000−505958号公報などに開示されているツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0064】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0065】
基板ステージPSTやマスクステージMSTにリニアモータ(USP No.5,623,853またはUSP No.5,528,118参照)を用いる場合は、エアベアリングを用いたエア浮上型およびローレンツ力またはリアクタンス力を用いた磁気浮上型のどちらを用いてもよい。また、各ステージPST、MSTは、ガイドに沿って移動するタイプでもよく、ガイドを設けないガイドレスタイプであってもよい。
【0066】
各ステージPST、MSTの駆動機構としては、二次元に磁石を配置した磁石ユニットと、二次元にコイルを配置した電機子ユニットとを対向させ電磁力により各ステージPST、MSTを駆動する平面モータを用いてもよい。この場合、磁石ユニットと電機子ユニットとのいずれか一方をステージPST、MSTに接続し、磁石ユニットと電機子ユニットとの他方をステージPST、MSTの移動面側に設ければよい。
【0067】
基板ステージPSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−166475号公報(USP No.5,528,118)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。
マスクステージMSTの移動により発生する反力は、投影光学系PLに伝わらないように、特開平8−330224号公報(USP No.5,874,820)に記載されているように、フレーム部材を用いて機械的に床(大地)に逃がしてもよい。また、特開平8−63231号公報(USP No.6,255,796)に記載されているように運動量保存則を用いて反力を処理してもよい。
【0068】
本願実施形態の露光装置EXは、本願特許請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0069】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、
図9に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、前述した実施形態の露光装置EXによりマスクのパターンを基板に露光する露光処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。