特許第6319493号(P6319493)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6319493
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】中空糸膜モジュールの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20180423BHJP
   B01D 63/02 20060101ALI20180423BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20180423BHJP
   C02F 1/44 20060101ALI20180423BHJP
【FI】
   B01D65/02 520
   B01D63/02
   B01D65/06
   C02F1/44 A
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-65529(P2017-65529)
(22)【出願日】2017年3月29日
【審査請求日】2017年9月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】多田 景二郎
【審査官】 菊地 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−058968(JP,A)
【文献】 特開2003−053160(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/157057(WO,A1)
【文献】 国際公開第2017/086313(WO,A1)
【文献】 特開2003−053157(JP,A)
【文献】 特開平11−070324(JP,A)
【文献】 特開2010−069361(JP,A)
【文献】 特開2001−190936(JP,A)
【文献】 特開2012−115747(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 65/02
B01D 63/02
B01D 65/06
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理水出口及び濃縮水出口を有する容器と、
該容器内に原水を供給する導水管と、
原水を透過水と濃縮水とに分離するための中空糸膜であって、該容器内に上下方向に配置された複数の中空糸膜と、
該中空糸膜の上端部を固定しており、該容器内の上部に配置された上端固定部と、
該上端固定部の上側に形成され、各中空糸膜の内部が連通した処理水室と、
該中空糸膜の下側に配置された散気部材と、
を備え、
前記導水管は、前記上端固定部の下側に上下方向に延在し、側周面に原水を噴出する複数の噴出孔が設けられており、
前記容器の下部には、洗浄排水を排出する排水口が設けられている中空糸膜モジュールの洗浄方法であって、
前記散気部材から気体を吹き込むバブリング洗浄と、
前記処理水出口から前記中空糸膜内に逆洗水を供給する水逆洗と
を行い、
前記バブリング洗浄後、前記導水管から空気又は空気と原水を供給した後/又は同時に、前記水逆洗を行うことを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。
【請求項2】
請求項1において、前記導水管から空気又は空気と原水を供給した後/又は同時に、前記水逆洗を行うことを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。
【請求項3】
請求項2において、前記導水管から空気又は空気と原水を供給した後/又は水逆洗を行った後に、前記排水口から排水することを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかにおいて、前記逆洗水に薬液を添加することを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかにおいて、前記上端固定部でのみ前記中空糸膜が固定されていることを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかにおいて、前記導水管は前記容器の底面を貫通して前記容器内に延設されており、
該導水管に複数の噴出孔が設けられていることを特徴とする中空糸膜モジュールの洗浄方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は中空糸膜モジュールの洗浄方法及び中空糸膜濾過装置に関し、特に、膜に付着した濁質を十分に洗浄除去することができる中空糸膜モジュールの洗浄方法及び中空糸膜濾過装置に関する。
【背景技術】
【0002】
中空糸膜モジュールは、濁質成分や有機物を除去する手段として、純水製造や排水回収分野などで広く用いられている。中空糸膜モジュールの膜には、精密濾過膜(MF膜)や限外濾過膜(UF膜)などが分離対象に応じて使い分けられており、前者は0.1μm前後、後者は0.005〜0.05μmの細孔が一般的である。
【0003】
中空糸膜モジュールに供給する懸濁水中に濁質や有機物が大量に含まれている場合、膜の目詰まりが発生し、逆洗頻度、薬品洗浄頻度が高くなるだけでなく、膜交換頻度も高くなる。膜の目詰まりを防止するために、膜の単位面積当たりの通水量を低下させる方法が一般的であるが、この方法では膜設置本数が多くなるという課題があった。
【0004】
膜の汚染を低減するために、中空糸膜モジュールの前段で凝集処理工程を行う方法が知られている。しかし、凝集剤による濁質量増加により、膜の濁質汚染が引き起こされる。このような状況の下、膜の濁質除去性を高めるための膜モジュール構造や、逆洗方法の確立が、強く求められている。
【0005】
特許文献1には、膜の濁質除去性を向上させるため、空気と水を使った逆洗方法が提案されている。しかし、この方法は、濁質の種類、量によっては、濁質除去性があまり向上しない場合があり、より高性能な逆洗方法が求められている。
【0006】
一般的な空気洗浄では、膜モジュール下部から上部へ空気を流すが、空気の強さに上下で差が生まれるために、膜モジュール全体に空気が行き届かず、洗浄不足の箇所が生じる。また、空気洗浄時に下部排水すると、空気が膜モジュール内部に浸透せずに排出されてしまうため、モジュール上部、例えば循環部からしか排水できない。そのため、空気洗浄で剥がれた膜モジュール全体の濁質が膜の上部に付着してしまうことがあった。
【0007】
また、上端のみ固定した中空糸膜の場合、強い空気洗浄は膜モジュール下部の中空糸膜のヨレ、折れを引き起こしてしまう懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−88008号公報
【特許文献2】特開平5−96136号公報
【特許文献3】特開2002−204930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであり、中空糸膜に付着した濁質を万遍なく十分に除去できる中空糸膜モジュールの洗浄方法及び中空糸膜濾過装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の中空糸膜モジュールの洗浄方法は、処理水出口及び濃縮水出口を有する容器と、該容器内に原水を供給する導水管と、原水を透過水と濃縮水とに分離するための中空糸膜であって、該容器内に上下方向に配置された複数の中空糸膜と、該中空糸膜の上端部を固定しており、該容器内の上部に配置された上端固定部と、該上端固定部の上側に形成され、各中空糸膜の内部が連通した処理水室と、該中空糸膜の下側に配置された散気部材と、を備え、前記導水管は、前記上端固定部の下側に上下方向に延在し、側周面に原水を噴出する複数の噴出孔が設けられており、前記容器の下部には、洗浄排水を排出する排水口が設けられている中空糸膜モジュールの洗浄方法であって、前記散気部材から気体を吹き込むバブリング洗浄と、前記処理水出口から前記中空糸膜内に逆洗水を供給する水逆洗とを行うことを特徴とするものである。
【0011】
本発明の一態様では、前記導水管から空気又は空気と原水を供給した後/又は同時に、前記水逆洗を行う。
【0012】
本発明の一態様では、前記導水管から空気又は空気と原水を供給した後/又は水逆洗を行った後に、前記排水口から排水する。
【0013】
本発明の一態様では、前記バブリング洗浄後、前記導水管から空気又は空気と原水を供給した後/又は同時に、前記水逆洗を行う。
【0014】
本発明の一態様では、前記逆洗水に薬液を添加する。
【0015】
本発明の一態様では、前記上端固定部でのみ前記中空糸膜が固定されている。
【0016】
本発明の一態様では、前記導水管は前記容器の底面を貫通して前記容器内に延設されており、該導水管に複数の噴出孔が設けられている。
【0017】
本発明の中空糸膜濾過装置は、処理水出口及び濃縮水出口を有する容器と、該容器内に原水を供給する導水管と、原水を透過水と濃縮水とに分離するための中空糸膜であって、該容器内に上下方向に配置された複数の中空糸膜と、該中空糸膜の上端部を固定しており、該容器内の上部に配置された上端固定部と、該上端固定部の上側に形成され、各中空糸膜の内部が連通した処理水室と、該中空糸膜の下側に配置された散気部材と、を有する中空糸膜モジュールを備え、前記導水管は、前記上端固定部の下側に上下方向に延在し、側周面に原水を噴出する複数の噴出孔が設けられており、前記容器の下部には、洗浄排水を排出する排水口が設けられており、前記導水管に原水配管及び気体導入手段が接続されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の中空糸膜濾過装置では、中空糸膜の下側に設けられた散気部材から気体を吹き込んでバブリング洗浄を行うようになっているため、膜モジュール全体に空気が行き届き、中空糸膜に付着した濁質を万遍なく十分に除去できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施の形態に係る中空糸膜濾過装置の模式図である。
図2】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図3】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図4】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図5】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図6】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図7】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図8】洗浄処理時の中空糸膜濾過装置の模式図である。
図9】容器底部に設けられた排水口の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図1図4を参照して実施の形態について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る中空糸膜モジュールを備えた中空糸膜濾過装置の濾過工程を示す模式図である。図1に示すように、中空糸膜モジュールは、円筒の軸心線方向を上下方向(この実施形態では鉛直方向)にして配置された容器1を備えている。この容器1内に、複数の中空糸膜2が配置されている。
【0022】
中空糸膜2は、容器1の上部側において、固定部としての合成樹脂製ポッティング部3で固定され、容器1の下部側では固定されていない。ポッティング部3の合成樹脂としては例えばエポキシ樹脂を用いることができる。
【0023】
例えば、中空糸膜2をU字型に組み込み、中空糸膜の両端をポッティング部3で固定する。この場合、中空糸膜2の中間部が容器1の下部に位置する。
【0024】
また、一端が開口し、他端が封止された中空糸膜2を用いる場合は、開口している中空糸膜2の一端側をポッティング部3で固定し、封止された他端側を容器1の下部に配置する。
【0025】
中空糸膜2は、UF膜やMF膜などのいずれでもよい。中空糸膜2は特に制限はないが、通常、内径0.2〜1.0mm、外径0.5〜2.0mm、有効長さ300〜2500mm程度のものが用いられる。このような中空糸膜2が容器1内に500〜70,000本装填された全膜面積5〜100m程度のものが適当である。中空糸膜2の膜素材についても特に制限はないが、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いることができる。本実施形態では、中空糸膜2を有する中空糸膜モジュールについて説明するが、管状膜を用いた膜モジュールであればよい。
【0026】
ポッティング部3の上側には処理水室7が区画形成されている。中空糸膜2の上端側はポッティング部3を貫通しており、その上端の開口は処理水室7に臨み、中空糸膜2の内部は処理水室7に連通している。中空糸膜2をU字型に組み込む場合は、中空糸膜2の両端がポッティング部3を貫通する。
【0027】
ポッティング部3は例えば円盤状であり、その外周面又は外周縁部が容器1の内面に水密的に接している。
【0028】
容器1内の下部には、中空糸膜2の下方に、散気部材として散気管10が設けられている。該散気管10に、バルブV9を有した配管L9の一端が接続されている。配管L9の他端は、エアポンプ等を有した空気圧源(図示略)に接続されている。
【0029】
容器1の内部には、導水管4が略鉛直方向(容器1の軸方向)に延びている。導水管4は、例えば容器1の中心軸に沿って配置されている。導水管4は先端(上端)が閉じた円管であり、側周面には上下にわたって、かつ周方向に、間隔を空けて複数の噴出孔4aが全体的に設けられている。噴出孔4aの数は特に限定されないが、例えば5〜50個程度である。
【0030】
導水管4の高さ(上下方向の長さ)は特に限定されないが、導水管4の上端がポッティング部3の下面近傍に位置していることが好ましい。噴出孔4aの大きさや形状は特に限定されないが、例えば口径5〜50mmの円形である。導水管4の内径は例えば10〜100mm程度である。また、導水管の上端がポッティング部3に埋設されていてもよい。
【0031】
導水管4の下部は、容器1の底面を貫通して延設し、容器1の外部にまで延びている。導水管4には原水配管L1が接続され、原水配管L1にはポンプP1及びバルブV1が設けられている。原水配管L1には空気導入用配管L2の一端が接続されており、空気導入用配管L2にはバルブV2が設けられている。該配管L2の他端は、エアポンプ等を有した空気圧源(図示略)に接続されている。
【0032】
バルブV1とバルブV2の開閉を切り替えることで、容器1への原水/空気の供給を切り替えることができる。バルブV1を開、バルブV2を閉とし、ポンプP1により原水配管L1を介して原水を送り出すことで、導水管4の噴出孔4aから放射方向に原水を噴出させ、容器1内に原水を供給することができる。
【0033】
バルブV1を閉、バルブV2を開とし、空気導入用配管L2から空気を供給することで、導水管4の噴出孔4aから放射方向に気泡を噴出させ、バブリング洗浄を行うことができる。バルブV1及びV2を開とし、噴出孔4aから気液混合流を噴出させることもできる。
【0034】
容器1の頂部には処理水(濾過水)の出口5が設けられている。また、容器1の側面の上部には濃縮水出口8が設けられている。濃縮水出口8はポッティング部3の下面近傍に設けられている。ポッティング部3から濃縮水出口8の上縁までの距離は0〜30mm、特に0〜10mm程度が好ましい。濃縮水出口8には配管L5が接続され、配管L5にはバルブV5が設けられている。
【0035】
容器1の側面の下部には排水口6が設けられている。排水口6は、容器1の底面近傍に設けられている。排水口6には配管L6が接続され、配管L6にはバルブV6が設けられている。
【0036】
処理水出口5には処理水取出配管L3が接続されており、処理水取出配管L3を介して処理水(濾過水)が排出される。処理水は処理水タンク9に貯留される。
【0037】
処理水取出配管L3には、処理水取出配管L3に設けられたバルブV3と処理水出口5との間の位置に逆洗水配管L4の一端が接続されている。逆洗水配管L4の他端側はバルブV4及びポンプP2を介して処理水タンク9に接続されている。バルブV3を閉、バルブV4を開とし、ポンプP2を作動させることにより逆洗水配管L4を介して処理水出口5から容器1に濾過水を流し、中空糸膜2の逆洗を行うことができる。図1は、逆洗水配管L4を処理水タンク9に接続し、逆洗水に濾過水を用いる構成を示しているが、逆洗水は原水であってもよい。
【0038】
逆洗水配管L4を流れる逆洗水に薬液を添加するように、配管L7及びバルブV7を有した薬液添加手段(図示略)が配管L4のポンプP2の上流側に接続されている。添加する薬液は、次亜塩素酸ナトリウム、強アルカリ性剤、強酸性剤等であり、膜付着物によって選択される。例えば、膜付着物が有機物、有機物を含む濁質等の場合、次亜塩素酸ナトリウムが0.05〜0.3mgCl/L残留するように添加することが好ましい。
【0039】
バルブV3と処理水出口5との間の配管L3に空気を供給するように、バルブV8を有した配管L8の一端が配管L3に接続されている。配管L8の他端には、エアポンプ等を有した空気圧源(図示略)への接続と大気への開放とを切り替える切替バルブ(図示略)が設けられている。
【0040】
[濾過処理]
この中空糸膜濾過装置による濾過処理では、図1に示すように、バルブV1、V3、V5を開、バルブV2、V4、V6、V7、V8、V9を閉とし、ポンプP1を作動させ、導水管4へ原水を供給する。導水管4から孔4aを介して容器1内に供給された原水のうち、中空糸膜2を透過した透過水が処理水として処理水出口5から取り出され、処理水取出配管L3を介して処理水タンク9に貯留される。
【0041】
中空糸膜2を透過しなかった濃縮水は、濃縮水出口8から配管L5を介して排出される。排出された濃縮水を原水と混合して容器1に供給するように循環させてもよい。
【0042】
このように、図1に示す中空糸膜濾過装置は、中空糸膜2の外側に原水をクロスフロー方式で通水する外圧式で濾過処理する。
【0043】
この濾過処理を継続して行うと、中空糸膜2に濁質が蓄積してくる。そこで、濾過処理を所定時間行った後、又は処理水量が減少してきた場合、中空糸膜2に捕捉された濁質を洗浄する洗浄処理を次の通り行う。
【0044】
[洗浄処理]
中空糸膜濾過装置の洗浄処理では、まず、図2に示すように、空気逆洗を行う。即ち、バルブV1、V2、V3、V4、V6、V7、V9を閉、バルブV5、V8を開とし、配管L8を介して空気を処理水室7から中空糸膜2内に供給し、中空糸膜2内の透過水を原水側に押し出す空気逆洗を行う。
【0045】
その後、バルブV8を閉とし、バルブV3を開とする等して中空糸膜2内及び処理水室7内を大気に開放させ、圧力を解放する。
【0046】
次いで、図3の通り、バルブV5、V6を開とし、容器1内の水を配管L6を介して排水する。
【0047】
次いで、図4の通り、バルブV6を閉とし、バルブV1、V5を開とし、配管L1、導水管4及び孔4aを介して容器1内に原水を供給し、容器1内に水張りする。
【0048】
次いで、図5の通り、バルブV1を閉とし、バルブV5、V9を開とし、散気管10から空気を容器1に吹き込み散気管バブリングを行う。洗浄排水は、濃縮水出口8から配管L5を介して系外に排出される。
【0049】
なお、この場合、図5の通り、バブリング洗浄と逆洗浄とを同時に行ってもよい。即ち、バルブV1、V2、V3、V6、V8を閉、バルブV9、V4、V5を開とし、散気管10から空気を容器1に吹き込みバブリングを行うと共に、ポンプP2を作動させ、処理水室7を介して濾過水を中空糸膜2内に送り込み、逆洗浄を行ってもよい。この際、バルブV7を開とすることにより、逆洗水に薬液を添加してもよい。また、バルブV7に代えてチャッキ弁を設置し薬注ポンプ(図示しない)を稼働させることによって薬液を添加するようにしてもよい。さらに、濾過水の代わりに濾過水を逆浸透膜で処理した水を送り込むようにしてもよく、その場合、薬液は当該処理した水に添加するようにバルブ、配管等を設置する。
【0050】
図示は省略するが、このバブリング洗浄処理時に、バルブV5を閉、バルブV6を開とし、洗浄排水を排水口6から排出してもよい。また、濃縮水出口8からの逆洗水の排出を所定時間行った後、バルブV6を開、バルブV5を閉として、排水口6から逆洗排水を排出するようにしてもよい。
【0051】
次いで、図6の通り、バルブV1を閉とした後、バルブV2を開とし、配管L2から空気を導水管4に供給し、噴出孔4aから気泡を噴出させ、中空糸膜2を洗浄する。
【0052】
導水管4には上下方向の全体にわたって多数の噴出孔4aが設けられているため、中空糸膜2の上端固定部近傍(ポッティング部3近傍)も含め中空糸膜2の全体に気泡を噴射し、濁質を万遍なく十分に洗浄し、除去することができる。また、バブリング洗浄の際の空気量を多くしても、モジュール下部から上部へ空気を流す方式と比較して、中空糸膜2のヨレや折れを防止できる。
【0053】
なお、図6では、導水管4内に配管L2から空気のみを供給しているが、バルブV1、V2を開とし、水及び空気を噴出孔4aから噴出させてもよい。
【0054】
その後、バルブV1、V2を閉とし、バルブV6を開とすることにより、前記図4と同一要領で容器1内の水を配管L6から排水する。
【0055】
次いで、図7の通り、バルブV4を開とし、ポンプP2を作動させ、処理水タンク9内の処理水(濾過水)を処理水室7を介して中空糸膜2内に供給し、中空糸膜2を水逆洗する。図7では、この際、バルブV7を開とし、処理水タンク9からの濾過水に対し薬剤を添加し、薬液にて中空糸膜2を逆洗するようにしているが、この薬剤添加は行わなくてもよい。なお、前述の通り、チャッキ弁と薬注ポンプを用いる構成としても良く、逆浸透膜の処理水を送り込む構成としても良い。
【0056】
図7では、バルブV6を開、バルブV5を閉とし、洗浄排水を排水口6から排出しているが、バルブV6を閉、バルブV5を開として、濃縮水出口8から逆洗排水を排出するようにしてもよい。また、図7では、濾過水によって中空糸膜2を逆洗しているが、原水によって中空糸膜2を逆洗してもよい。なお、図6に示した導水管への空気又は空気と原水の供給工程と同時に、水逆洗を実施してもよい。
【0057】
その後、図8の通り、バルブV4、V7を閉とし、バルブV2、V6を開とし、導水管4内に空気を供給し、噴出孔4aから気泡を噴出させて中空糸膜2を洗浄すると共に、容器1内の水を配管L6から排水する。
【0058】
なお、図8ではバルブV1を閉とし、導水管4内に配管L2から空気のみを供給しているが、バルブV1及びV2を開とし、導水管4に原水及び空気を供給してもよい。
【0059】
その後、バルブV2、V6を閉、バルブV1、V3、V5を開とし、容器1内に原水の水張りを行い、次いで、図1の通り濾過工程を再開する。
【0060】
上記説明では、図7に示した水逆洗を行った後、図8に示した導水管4への空気(又は空気と原水)供給及び配管L6からの排水を行うものとしているが、図7の水逆洗を行っているときに併せて導水管4への空気(又は空気と原水)供給及び配管L6からの排水を行ってもよい。また、図7に示した水逆洗を行っている途中で、水逆洗を続行した状態で、導水管4への空気(又は空気と原水)供給及び配管L6からの排水を開始してもよい。
【0061】
なお、図6,8に示した導水管への空気又は空気と原水の供給工程のいずれかは省略することもできる。また、図6〜8に示した洗浄工程においては、各工程を順番に行うのではなく、導水管への空気又は空気と原水の供給を行っている時間帯の一部で水逆洗を同時に行うようにしてもよいし、水逆洗を行っている時間帯の一部で導水管への空気又は空気と原水の供給を同時に行うようにしてもよい。この場合、最終的な洗浄排水は排水口6から排出することが好適である。
【0062】
上記説明では、図5に示した散気管バブリングの後、図6に示した導水管への空気(又は空気と原水)供給を行うものとしているが、その間に図3図4で示した排水と水張りを行ってもよい。
【0063】
上記説明では、排水口6は容器1の下部側面に設けられているが、排水口6は、容器1の底部に設けられてもよい。例えば、図9に示すように、容器1の底部において、導水管4の周囲が排水口6が形成されていると、濁質が容器内から効率良く排出され、濁質除去率が向上する。
【0064】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、一部の洗浄処理工程は省略されてもよい。また、一部の洗浄処理工程の順番を入れ替えてもよい。
【実施例】
【0065】
[実施例1]
原水槽に富栄養化が進む濁度が6.7NTUのA地区工業用水を貯水した。原水槽からポンプで凝集槽に送水し、滞留時間を10分とした。凝集槽前で工業用塩化第二鉄(濃度38%)を100mg/L添加した。凝集剤添加後、塩酸と水酸化ナトリウムでpHを6.2に調整した。
【0066】
<濾過処理>
この凝集槽内の水(以下原水という。)を図1に示す中空糸膜モジュールの導水管4にポンプP1及び原水配管L1を介して供給し、図1の通り濾過処理を行った。処理量は、80L/min×30min×5サイクルである(1サイクル:12m)。
【0067】
中空糸膜モジュールの構成は次の通りである。
容器1:内径200mm、高さ1300mm
中空糸:内径0.75mm、外径1.25mm、有効長さ990mmのポリフッ化ビニルデン製UF膜、膜面積30m
導水管4:容器1内に延在する長さ1000mm、内径20mm、外径25mm
噴出孔4a:口径10mm、10個
【0068】
<洗浄処理>
洗浄は次の(1)〜(4)により行った。
【0069】
(1) 濾過処理後、図2のように配管L8を介して空気を0.15MPaで10秒間処理水室7から中空糸膜2内に供給し、中空糸膜2内の透過水を原水側に押し出す空気逆洗を行った後、図3,4のように排水、水張りを行った。その後、図5のように、散気管10から空気を50NL/minで供給してバブリング洗浄を30秒間行った。
(2) 次いで、図6のように、導水管4から空気を50NL/minで30秒間供給した。
(3) その後、処理水タンク9内の濾過水を配管L4から処理水室7を介して中空糸膜2に供給して水逆洗を行った。この水逆洗は80L/miで30秒間行った。逆洗排水は濃縮水出口8から排出した。
(4) その後、導水管4から原水を80L/minで30秒間供給し、濾過せず、濃縮水出口8から排出した。
【0070】
<濁質除去率の測定>
上記の濾過処理及び洗浄処理を交互にそれぞれ5回行った。サイクル毎に排出される洗浄排水を採取し、洗浄排水中の濁質量を計測した。5サイクルの間に供給した全濁質量に対する洗浄で排出された濁質量(濁質除去率)を表1に示す。
【0071】
[実施例2]
導水管4から空気を送る工程(2)において、併せて配管L4及び処理水室7を介して中空糸膜2内に濾過水を80L/minで供給して逆洗したこと以外は実施例1と同様の処理を行った(つまり、工程(2)と工程(3)を同時に行った後に工程(4)を行う。)。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0072】
[実施例3]
工程(3)で逆洗排水を排水口6から排出したこと以外は実施例1と同様の処理を行った。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0073】
[実施例4]
工程(2)において、導水管4から空気と共に原水を80L/minで供給したこと以外は実施例3と同様の処理を行った。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0074】
[実施例5]
工程(2)において、導水管4から空気と共に原水を80L/minで供給し、併せて処理水室7を介して中空糸膜2内に濾過水を80L/minで供給し、逆洗排水を排水口6から排出したこと以外は実施例3と同様の処理を行った(つまり、空気と原水を供給するようにした工程(2)と排水口6から排出ようにした工程(3)を同時に行った後に、工程(4)を行う。)。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0075】
[実施例6]
工程(2)におけるバブリング用空気の供給量を150NL/minとしたこと以外は実施例5と同様の処理を行った。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0076】
[実施例7]
工程(2)及び(3)において、逆洗水(濾過水)に次亜塩素酸ナトリウムを100mgCl/Lとなるように添加したこと以外は実施例6と同様の処理を行った。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0077】
[比較例1]
導水管4が設けられていない中空糸膜モジュールを使用し、工程(2),(4)を省略したこと以外は実施例1と同様の処理を行った。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0078】
[比較例2]
中空糸膜の下端をポッティング部に埋設して固定したこと以外は比較例1と同様の処理を行った。濁質除去率の測定結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
<考察>
表1の通り、上記実施例及び比較例より、次の(i)〜(viii)が認められた。
(i) 実施例1〜7では、導水管4を設置していない比較例1,2と比較して、濁質除去率が高い。
【0081】
(ii) 工程(3)において、容器1の下部の排水口6から洗浄排水を排出する実施例3は、容器1の上部の濃縮水出口8から洗浄排水を排出する実施例1、2よりも濁質除去性が高い。
【0082】
(iii) 導水管4から空気を送る工程(2)において、さらに原水によって中空糸膜2を洗浄する実施例4は、実施例3よりも濁質除去性が高い。
【0083】
(vi) 導水管4から空気及び原水を送る工程(2)において、さらに原水によって中空糸膜2を逆洗する実施例5は、実施例4よりも濁質除去性が高い。
【0084】
(v) 導水管4から空気を送る工程(3)において、さらに濾過水によって中空糸膜2を逆洗する実施例2は、実施例1よりも濁質除去性が高い。
【0085】
(vi) バブリング用空気の供給量を実施例5の3倍に増大させた実施例6によると、実施例5よりも濁質除去性が向上する。
【0086】
(vii) 実施例7の通り、次亜塩素酸ナトリウムを逆洗水に添加することにより、濁質除去性が向上する。
【0087】
(viii) 中空糸膜の上下両端を固定した比較例2より、上端のみ固定した比較例1の方が高い濁質除去性を示す。
【符号の説明】
【0088】
1 容器
2 中空糸膜
3 ポッティング部
4 導水管
5 処理水出口
6 排水口
7 処理水室
8 濃縮水出口
9 処理水タンク
10 散気管
【要約】
【課題】中空糸膜に付着した濁質を万遍なく十分に除去できる中空糸膜モジュールの洗浄方法及び中空糸膜濾過装置を提供する。
【解決手段】中空糸膜濾過装置は、処理水出口5及び濃縮水出口8を有する容器1と、中空糸膜2と、中空糸膜2の上端部を固定する上端固定部3と、上端固定部3の上側に形成された透過水室7と、容器1内に原水を供給する導水管4と、中空糸膜2の下側に設けられた散気管10とを有する中空糸膜モジュールを備える。導水管4の側周面に複数の噴出孔4aが設けられている。導水管4に原水配管及び気体導入手段が接続されている。容器1の下部には、排水口6が設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9