(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明の液晶配向剤は、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合反応させることにより得られるポリアミック酸、及び、このポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体と、溶剤とを含有するものである。なお、液晶配向剤とは液晶配向膜を作製するための溶液であり、液晶配向膜とは液晶を所定の方向に配向させるための膜である。
【0016】
式(1)において、ベンゼン環に結合する−NH−同士は、パラ位又はメタ位に存在することが好ましい。
【0017】
この式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を、ジアミン成分と重合反応させることにより、ポリアミック酸が得られる。また、得られたポリアミック酸をイミド化することによりポリイミドが得られる。
【0018】
そして、本発明の液晶配向剤は、これら式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合反応させて得られるポリアミック酸や、このポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドと、溶剤を含有するものである。このように式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミック酸やポリイミドと、溶剤を含有する液晶配向剤を用いることにより、後述する実施例に示すように、紫外線(UV)耐性に優れ、UVの暴露による電圧保持率(VHR)等の電気特性の劣化が抑制された液晶配向膜を得ることができる。したがって、製造過程でUVを照射したり、UVに暴露される環境下で使用しても、電圧保持率等の電気特性の劣化が抑制され、優れた電気特性を有する液晶表示素子を提供することができる。
【0019】
また、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリイミドと、溶剤を含有する液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の塗膜均一性が高い、すなわち、塗膜面の端部に重合体の凝集物の発生(白化・凝集ともいう)が生じ難いものである。勿論、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリアミック酸と溶剤とを含有する液晶配向剤も、この白化・凝集が生じ難い。また、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料とするポリイミドは、N−メチル−2−ピロリドンや2−ブトキシエタノール等の液晶配向剤に使用される溶媒への溶解性が高く、液晶配向剤を長時間放置しても、析出せず、保存安定性が高い。
【0020】
なお、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の製造方法は特に限定されず、例えば、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸−1,2−無水物4−クロリドと、フェニレンジアミンとを反応させることにより製造することができる。具体的には、特開2012−72121号公報に記載される製造方法が挙げられる。
【0021】
また、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と共に、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物以外のテトラカルボン酸二無水物(以下、その他のテトラカルボン酸二無水物とも記載する)を、ジアミン成分と反応させてもよい。その際、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物は、ポリアミック酸の合成に用いるテトラカルボン酸二無水物成分全量の60〜95モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくはテトラカルボン酸二無水物成分の70〜90モル%が式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物である。なお、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物と、その他のテトラカルボン酸二無水物とを合わせて、テトラカルボン酸二無水物成分と記載する。
【0022】
その他のテトラカルボン酸二無水物としては、下記式(2)で示されるテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0023】
【化2】
(式(2)中、Z
1は炭素数4〜6の非芳香族環状炭化水素基を含有する炭素数4〜13の4価の有機基である。)
【0024】
式(2)中、Z
1の具体例としては、下記式(2a)〜式(2j)で表される4価の有機基が挙げられる。
【0025】
【化3】
(式(2a)中、Z
2〜Z
5は水素原子、メチル基、塩素原子またはベンゼン環であり、それぞれ、同じであっても異なってもよく、式(2g)中、Z
6およびZ
7は水素原子またはメチル基であり、それぞれ、同じであっても異なってもよい。)
【0026】
式(2)中、Z
1の特に好ましい構造は、重合反応性や合成の容易性から、式(2a)、式(2c)、式(2d)、式(2e)、式(2f)または式(2g)である。なかでも、式(2a)、式(2e)、式(2f)または式(2g)が好ましい。
【0027】
また、テトラカルボン酸二無水物成分全量に対する式(2)で示されるテトラカルボン酸二無水物の割合は特に限定されず、例えば、テトラカルボン酸二無水物成分全量の5〜40モル%が上記式(2)で示されるテトラカルボン酸二無水物であることが好ましく、より好ましくは、10〜30モル%である。
【0028】
上記式(2)で示されるテトラカルボン酸二無水物以外のその他テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸または1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸の二無水物が挙げられる。
【0029】
なお、ポリアミック酸や、ポリイミドの原料として用いられる上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物や、その他のテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ1種類でもよく、また、2種類以上でもよい。
【0030】
式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物成分と反応させるジアミン成分は特に限定されず、液晶配向剤に一般的に使用されるジアミンを用いることができる。一般的なジアミンとしては、汎用ジアミン、液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン、液晶に高プレチルト角を発現させるジアミンや、光反応性基を有するジアミンなどが挙げられる。
【0031】
汎用ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−p−フェニレンジアミン、2,5−ジメチル−p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,5−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノフェノール、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−(3−アミノフェノキシ)ドデカンなどの芳香族ジアミン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカンなどの脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0032】
このような汎用ジアミンは、ポリアミック酸の合成に用いるジアミン成分の50〜95モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくはジアミン成分の70〜90モル%である。
【0033】
液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンや液晶に高プレチルト角を発現させるジアミンとしては、長鎖のアルキル基、長鎖アルキル基の途中に環構造や枝分かれ構造を有する基、ステロイド基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子に置き換えた基を側鎖として有するジアミンを挙げることができる。具体的には例えば下記式(3)、(4)、(5)、(6)で表されるジアミンを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
【化4】
(式(3)中、l、m及びnはそれぞれ独立に0又は1の整数を表し、R
3は炭素数2〜6のアルキレン基、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、又は炭素数1〜3のアルキレン−エーテル基を表し、R
4、R
5及びR
6はそれぞれ独立にフェニレン基又はシクロアルキレン基を表し、R
7は水素原子、炭素数2〜24のアルキル基又はフッ素含有アルキル基、一価の芳香環、一価の脂肪族環、一価の複素環、又はそれらからなる一価の大環状置換体を表す。)
【0035】
なお、上記式(3)中のR
3は、合成の容易性の観点からは、−O−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン−エーテル基が好ましい。
【0036】
また、式(3)中のR
4、R
5及びR
6は、合成の容易性及び液晶を垂直に配向させる能力の観点から、下記表1に示すl、m、n、R
4、R
5及びR
6の組み合わせが好ましい。
【0038】
そして、l、m、nの少なくとも一つが1である場合、式(3)中のR
7は、好ましくは水素原子または炭素数2〜14のアルキル基もしくはフッ素含有アルキル基であり、より好ましくは水素原子または炭素数2〜12のアルキル基もしくはフッ素含有アルキル基である。また、l、m、nがともに0である場合、R
7は、好ましくは炭素数12〜22のアルキル基またはフッ素含有アルキル基、一価の芳香環、一価の脂肪族環、一価の複素環、それらからなる一価の大環状置換体であり、より好ましくは炭素数12〜20のアルキル基またはフッ素含有アルキル基である。
【0039】
なお、液晶を垂直に配向させる側鎖を有する重合体が液晶を垂直に配向させる能力は、液晶を垂直に配向させる側鎖の構造によって異なるが、一般的に、液晶を垂直に配向させる側鎖の量が多くなると、すなわちジアミン成分中に含まれる液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミン含有量を多くすると、液晶を垂直に配向させる能力は上がり、少なくなると下がる。また、環状構造を有すると、環状構造を有さないものと比較して、液晶を垂直に配向させる能力が高い傾向がある。
【0040】
【化5】
(式(4)及び式(5)中、A
10は−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2−、−O−、−CO−、又は−NH−を表し、A
11は単結合若しくはフェニレン基を表し、aは−R
3−(R
4)
l−(R
5)
m−(R
6)
n−R
7(R
3、R
4、R
5、R
6、R
7、l、m、nは、上記式(3)における定義と同じである)を表し、a’は上記aと同一の構造から水素等の元素が一つ取れた構造である二価の基を表す。)
【0041】
【化6】
(式(6)中、A
14は、フッ素原子で置換されていてもよい、炭素数3〜20のアルキル基であり、A
15は、1,4−シクロへキシレン基、又は1,4−フェニレン基であり、A
16は、酸素原子、又は−COO−*(ただし、「*」を付した結合手がA
15と結合する)であり、A
17は酸素原子、又は−COO−*(ただし、「*」を付した結合手が(CH
2)a
2と結合する。)である。また、a
1は0又は1であり、a
2は2〜10の整数であり、a
3は0又は1である。)
【0042】
式(3)における二つのアミノ基(−NH
2)の結合位置は限定されない。具体的には、側鎖(−R
3−(R
4)
l−(R
5)
m−(R
6)
n−R
7)に対して、ベンゼン環上の2,3の位置、2,4の位置、2,5の位置、2,6の位置、3,4の位置、3,5の位置が挙げられる。なかでも、ポリアミック酸を合成する際の反応性の観点から、2,4の位置、2,5の位置、又は3,5の位置が好ましい。ジアミンを合成する際の容易性も加味すると、2,4の位置、又は3,5の位置がより好ましい。
【0043】
式(3)の具体的な構造としては、下記の式[A−1]〜式[A−24]で示されるジアミンを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0044】
【化7】
(式[A−1]〜式[A−5]中、A
1は、炭素数2〜24のアルキル基又はフッ素含有アルキル基である。)
【0045】
【化8】
(式[A−6]及び式[A−7]中、A
2は、−O−、−OCH
2−、−CH
2O−、−COOCH
2−、又は−CH
2OCO−を示し、A
3は炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0046】
【化9】
(式[A−8]〜式[A−10]中、A
4は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、又は−CH
2−を示し、A
5は炭素数1〜22のアルキル基、アルコキシ基、フッ素含有アルキル基又はフッ素含有アルコキシ基である。)
【0047】
【化10】
(式[A−11]及び式[A−12]中、A
6は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH
2−、−CH
2OCO−、−CH
2O−、−OCH
2−、−CH
2−、−O−、又は−NH−を示し、A
7はフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基、又は水酸基である。)
【0048】
【化11】
(式[A−13]及び式[A−14]中、A
8は、炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0049】
【化12】
(式[A−15]及び式[A−16]中、A
9は、炭素数3〜12のアルキル基であり、1,4−シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である。)
【0051】
式(4)で表されるジアミンの具体例としては、下記の式[A−25]〜式[A−30]で示されるジアミンを挙げることができるが、これに限るものではない。
【0052】
【化14】
(式[A−25]〜式[A−30]中、A
12は、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH
2−、−O−、−CO−、又は−NH−を示し、A
13は炭素数1〜22のアルキル基又はフッ素含有アルキル基を示す。)
【0053】
式(5)で表されるジアミンの具体例としては、下記の式[A−31]〜式[A−32]で示されるジアミンを挙げることができるが、これに限るものではない。
【0054】
【化15】
この中でも、液晶を垂直に配向させる能力、液晶の応答速度の観点から、[A−1]、[A−2]、[A−3]、[A−4]、[A−5]、[A−25]、[A−26]、[A−27]、[A−28]、[A−29]、[A−30]のジアミンが好ましい。
【0055】
このような液晶を垂直に配向させる側鎖を有するジアミンや液晶に高プレチルト角を発現させるジアミンは、ポリアミック酸の合成に用いるジアミン成分の0〜50モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくはジアミン成分の10〜40モル%である。
【0056】
光反応性基を有するジアミンとしては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、シンナモイル基、カルコニル基、クマリン基、マレイミド基などの光反応性基を側鎖として有するジアミン、例えば下記の一般式(7)で表されるジアミンを挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0057】
【化16】
(式(7)中の、R
8は単結合又は−CH
2−、−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−NH−、−CH
2O−、−N(CH
3)−、−CON(CH
3)−、−N(CH
3)CO−、のいずれかを表し、R
9は単結合、又は、非置換またはフッ素原子によって置換されている炭素数1〜20のアルキレン基を表し、アルキレン基の−CH
2−は−CF
2−又は−CH=CH−で任意に置き換えられていてもよく、次に挙げるいずれかの基が互いに隣り合わない場合において、これらの基に置き換えられていてもよい;−O−、−COO−、−OCO−、−NHCO−、−CONH−、−NH−、二価の炭素環、二価の複素環。R
10はビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、−N(CH
2CHCH
2)
2、又は下記式で表される構造を表す。)
【0059】
なお、上記式(7)中のR
8は、通常の有機合成的手法で形成させることができるが、合成の容易性の観点から、−CH
2−、−O−、−COO−、−NHCO−、−NH−、−CH
2O−が好ましい。
【0060】
また、R
9の任意の−CH
2−を置き換える二価の炭素環や二価の複素環の炭素環や複素環としては、具体的には以下のような構造が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0062】
R
10は、光反応性の観点から、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基、−N(CH
2CHCH
2)
2又は下記式で表される構造であることが好ましい。
【0064】
また、上記式(7)の−R
8−R
9−R
10は、より好ましくは下記の構造である。
【0066】
式(7)における二つのアミノ基(−NH
2)の結合位置は限定されない。具体的には、側鎖(−R
8−R
9−R
10)に対して、ベンゼン環上の2,3の位置、2,4の位置、2,5の位置、2,6の位置、3,4の位置、3,5の位置が挙げられる。なかでも、ポリアミック酸を合成する際の反応性の観点から、2,4の位置、2,5の位置、又は3,5の位置が好ましい。ジアミンを合成する際の容易性も加味すると、2,4の位置、又は3,5の位置がより好ましい。
【0067】
光反応性基を有するジアミンとしては、具体的には以下のような化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0068】
【化21】
(式中、Xは単結合、又は、−O−、−COO−、−NHCO−、−NH−より選ばれる結合基、Yは単結合、又は、非置換またはフッ素原子によって置換されている炭素数1〜20のアルキレン基を表す。)
【0069】
また、このような光反応性基を有するジアミンは、ポリアミック酸の合成に用いるジアミン成分の0〜70モル%となる量を用いることが好ましく、より好ましくは0〜60モル%である。
【0070】
上記ジアミンは、液晶配向膜とした際の液晶配向性、プレチルト角、電圧保持特性、蓄積電荷、液晶表示素子とした際の液晶の応答速度などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0071】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分との重合反応は、通常、有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリアミック酸が溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、γ−ブチロラクトン、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、ジペンテン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、ジグライムまたは4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリアミック酸を溶解させない溶媒であっても、生成したポリアミック酸が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリアミック酸を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0072】
ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸二無水物成分をそのまま、または有機溶媒に分散、あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸二無水物成分を有機溶媒に分散、あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分またはテトラカルボン酸二無水物成分を、それぞれ複数種用いて反応させる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させてもよい。その際の重合温度は−20℃〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量のポリアミック酸(ひいてはポリイミド)を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、ジアミン成分及びテトラカルボン酸二無水物成分の総量の濃度は、反応液中で好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0073】
ポリアミック酸の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸二無水物成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリアミック酸の分子量は大きくなる。
【0074】
このようにして重合されたポリアミック酸は、例えば、下記式[a]で示される繰り返し単位を有する重合体である。
【0075】
【化22】
(式[a]中、R
11は、原料である上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物成分に由来する4価の有機基であり、R
12は、原料であるジアミン成分H
2N−R
12−NH
2に由来する2価の有機基であり、jは正の整数を示す。)
【0076】
上記式[a]において、R
11およびR
12がそれぞれ1種類であり同一の繰り返し単位を有する重合体でもよく、また、R
11やR
12が複数種であり異なる構造の繰り返し単位を有する重合体でもよい。
【0077】
そして、このようなポリアミック酸を脱水閉環させることにより、ポリイミドが得られる。
【0078】
ポリアミック酸をイミド化させる方法としては、ポリアミック酸の溶液をそのまま加熱する熱イミド化またはポリアミック酸の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0079】
ポリアミック酸を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0080】
ポリアミック酸の触媒イミド化は、ポリアミック酸の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミンまたはトリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0081】
重合体(ポリイミドやポリアミック酸)の反応溶液から、生成した重合体(ポリイミドやポリアミック酸)を回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼンまたは水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させた重合体は濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類または炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0082】
本発明の液晶配向剤が含有するポリイミドのアミド酸基の脱水閉環率(イミド化率)は必ずしも100%である必要はなく、0%から100%の範囲で用途や目的に応じて任意に選ぶことが出来るが、50%〜90%が好ましく、70%〜86%がより好ましい。
【0083】
また、ポリアミック酸やポリイミドの分子量は、得られる重合体被膜(液晶配向膜)の強度、重合体被膜形成時の作業性、重合体被膜の均一性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0084】
<溶剤>
また、本発明の液晶配向剤が含有する溶剤は、上記ポリイミドや、ポリアミック酸を溶解することができるものであれば、特に限定はされず、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルカプロラクタム、2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニルピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、エチルアミルケトン、メチルノニルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジグライムおよび4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンなどの有機溶媒が挙げられる。これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。
【0085】
本発明の液晶配向剤中の溶剤は、塗布により均一な重合体被膜を形成するという観点から、溶剤の含有量は70〜99質量%であることが好ましい。この含有量は、目的とする液晶配向膜の膜厚によって適宜変更することができる。
【0086】
<その他の液晶配向剤の成分>
本発明の液晶配向剤は、重合体成分が、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合反応させることにより得られるポリアミック酸及びこのポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体のみであってもよく、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合反応させることにより得られるポリアミック酸及びこのポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体にそれ以外の他の重合体が混合されていてもよい。その際、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物とジアミン成分とを重合反応させることにより得られるポリアミック酸及びこのポリアミック酸をイミド化して得られるポリイミドから選択される少なくとも一種の重合体の総量に対して、それ以外の他の重合体の含有量は0.5〜15質量%、好ましくは1.0〜10質量%である。それ以外の他の重合体としては、上記式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含まないテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分とから得られるポリアミック酸や、ポリイミドが挙げられる。さらには、ポリアミック酸およびポリイミド以外の重合体、具体的には、ポリアミック酸エステル、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレンまたはポリアミドなども挙げられる。
【0087】
本発明の液晶配向剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向剤を塗布した際の重合体被膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる有機溶媒(貧溶媒ともいわれる)または化合物を含有してもよい。さらに、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを含有してもよい。
【0088】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる貧溶媒の具体例としては、イソプロピルアルコール、メトキシメチルペンタノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノアセテートモノプロピルエーテル、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、トリプロピレングリコールメチルエーテル、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジイソプロピルエーテル、エチルイソブチルエーテル、ジイソブチレン、アミルアセテート、ブチルブチレート、ブチルエーテル、ジイソブチルケトン、メチルシクロへキセン、プロピルエーテル、ジヘキシルエーテル、n−へキサン、n−ペンタン、n−オクタン、ジエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−ブトキシ−2−プロパノール、1−フェノキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテル−2−アセテート、プロピレングリコール−1−モノエチルエーテル−2−アセテート、ジプロピレングリコール、2−(2−エトキシプロポキシ)プロパノール、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステルまたは乳酸イソアミルエステルなどの低表面張力を有する有機溶媒などが挙げられる。
【0089】
これらの貧溶媒は1種類でも複数種類を混合して用いてもよい。上記のような貧溶媒を用いる場合は、液晶配向剤に含まれる有機溶媒全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜60質量%である。
【0090】
膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(トーケムプロダクツ製)、メガファックF171、F173、R−30(大日本インキ製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向剤に含有される重合体成分の100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0091】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物としては、官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられ、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンまたはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0092】
これら基板との密着させる化合物を使用する場合は、液晶配向剤に含有される重合体成分の100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶の配向性が悪くなる場合がある。
【0093】
本発明の液晶配向剤には、上記の貧溶媒および化合物の他に、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0094】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。また、垂直配向用途などの場合では配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO(Indium Tin Oxide)電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミなどの光を反射する材料も使用できる。
【0095】
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。本発明の上記液晶配向剤は、白化・凝集が抑制されるため、例えば、基板等へ塗布した後の放置時間を長くしても、均一性や透明性に優れた液晶配向膜を製造することができる。
【0096】
液晶配向剤を基板上に塗布した後の乾燥工程は、必ずしも必要とされないが、塗布後から焼成までの時間が基板ごとに一定していない場合、又は塗布後ただちに焼成されない場合には、乾燥工程を含めることが好ましい。この乾燥は、基板の搬送等により塗膜形状が変形しない程度に溶媒が除去されていればよく、その乾燥手段については特に限定されない。例えば、温度40℃〜150℃、好ましくは60℃〜100℃のホットプレート上で、0.5〜30分、好ましくは1〜5分乾燥させる方法が挙げられる。
【0097】
上記の方法で液晶配向剤を塗布して形成される塗膜を焼成することにより、液晶配向膜(重合体被膜)とすることができる。その際、焼成温度は、100℃〜350℃の任意の温度で行うことができるが、好ましくは140℃〜300℃であり、より好ましくは150℃〜230℃、更に好ましくは160℃〜220℃である。焼成時間は5分〜240分の任意の時間で焼成を行うことができる。好ましくは10〜90分であり、より好ましくは20〜80分である。加熱は、通常公知の方法、例えば、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブン、ベルト炉などを用いることができる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビングまたは偏光紫外線照射などで処理する。このように偏光紫外線照射で処理した場合であっても、本発明の液晶配向剤を用いた液晶配向膜はUV耐性に優れているため、偏光紫外線照射による電圧保持率等の電気特性の劣化が抑制され、良好な電気特性を有する。
【0098】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。一例を挙げるならば、対向するように配置された2枚の基板と、基板間に設けられた液晶層と、基板と液晶層との間に設けられ本発明の液晶配向剤により形成された上記液晶配向膜とを有する液晶セルを具備する液晶表示素子である。このような本発明の液晶表示素子としては、ツイストネマティック(TN:Twisted Nematic)方式、垂直配向(VA:Vertical Alignment)方式や、水平配向(IPS:In-Plane Switching)方式、OCB配向(OCB:Optically Compensated Bend)等、種々のものが挙げられる。
【0099】
液晶セルの作製方法としては、上記液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサーを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサーを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
【0100】
また、基板に対して垂直に配向している液晶分子を電界によって応答させる方式(垂直配向方式)の液晶表示素子のうち、あらかじめ液晶組成物中に光重合性化合物を添加するPSA(Polymer Sustained Alignment)型液晶ディスプレイや、液晶配向膜(液晶配向剤)中に添加するSC−PVA型液晶ディスプレイを製造する場合は、上記液晶配向膜の形成された一対の基板の間に液晶を注入等して封止した後、液晶配向膜及び液晶に電圧を印加しながら紫外線を照射することにより、重合性化合物を重合させればよい。このように紫外線を照射した場合であっても、本発明の液晶配向剤を用いた液晶配向膜はUV耐性に優れているため、紫外線照射による電圧保持率等の電気特性の劣化が抑制され、良好な電気特性を有する。
【0101】
液晶には、正の誘電異方性を有するポジ型液晶や負の誘電異方性を有するネガ型液晶、具体的には、例えば、メルク社製のMLC−2003、MLC−6608、MLC−6609などを用いることができる。
【0102】
以上のようにして、本発明の液晶配向剤を用いて作製された液晶表示素子は、紫外線耐性に優れている液晶配向膜を有するため、紫外線に暴露される環境下で使用される液晶表示素子の液晶配向膜として用いても、電圧保持率等の電気特性の劣化が抑制され、良好な電気特性を有し、信頼性に優れたものとなる。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。尚、本発明はこれらに限定して解釈されるものではない。実施例および比較例で使用する略号は以下のとおりである。
【0104】
<テトラカルボン酸二無水物>
PPHT:下記式で示されるN,N’−ビス(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物−4−イル)カルボニル−1,4−フェニレンジアミン
PSHT:下記式で示されるN,N’−ビス(1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物−4−イル)カルボニル−3,3’−ジアミノジフェニルスルホン
CBDA:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
TDA:3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物
【0105】
【化23】
【0106】
<ジアミン>
BAPU:1,3−ビス(4−アミノフェニチル)ウレア
DDM:4,4’−ジアミノジフェニルメタン
DADA:N,N−ジアリル−2,4−ジアミノアニリン
APC16:1,3−ジアミノ−4−ヘキサデシルオキシベンゼン
APC18:1,3−ジアミノ−4−オクタデシルオキシベンゼン
p−PDA:p−フェニレンジアミン
【0107】
<有機溶媒>
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
BCS:2−ブトキシエタノール
【0108】
以下に、本実施例で行った測定方法について示す。
<分子量の測定>
ポリアミック酸およびポリイミドの分子量は、該ポリアミック酸やポリイミドをGPC(常温ゲル浸透クロマトグラフィー)装置によって測定し、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド換算値として数平均分子量と重量平均分子量を算出した。
GPC装置:Shodex社製(GPC−101)
カラム:Shodex社製(KD803、KD805の直列)
カラム温度:50℃
溶離液:N,N−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・H
2O)が30ミリモル/L、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30ミリモル/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作製用標準サンプル:東ソー社製 TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量約900000、150000、100000、30000)、および、ポリマーラボラトリー社製ポリエチレングリコール(分子量約12000、4000、1000)。
【0109】
<イミド化率の測定>
ポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。
ポリイミド粉末20mgをNMRサンプル管に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d
6、0.05%TMS(テトラメチルシラン)混合品)0.53mlを添加し、完全に溶解させた。この溶液を日本電子データム社製NMR測定器(JNM−ECA500)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm〜10.0ppm付近に現れるアミック酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い次式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
上記式において、xはアミック酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミック酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミック酸のNH基プロトン一個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0110】
(合成例1)
テトラカルボン酸二無水物成分として、PPHTを1.33g、ジアミン成分として、p−PDAを0.32g用い、NMP14.93g中、室温で18時間反応させ、ポリアミック酸(PAA−1)の固形分濃度10wt%の溶液を得た。
【0111】
(合成例2〜10)
表2に示す組成にした以外は上記合成例1と同様の方法を用いて、合成例2〜10のポリアミック酸(PAA−2〜PAA−10)の溶液を得た。
【0112】
【表2】
【0113】
(合成例11)
合成例1で得られたポリアミック酸(PAA−1)の溶液15.1gに、NMPを12.59g加えて希釈し、固形分濃度6wt%のポリアミック酸溶液を調製した。このポリアミック酸溶液に無水酢酸2.95gとピリジン1.37gを加え、50℃で3時間反応させてイミド化した。得られたポリイミド溶液を室温程度まで冷却後、メタノール150g中に投入し、沈殿した固形物を回収した。さらに、この固形物をメタノールで2回洗浄した後、100℃で減圧乾燥して、ポリイミド(SPI−1)の黄土色粉末を得た。ポリイミド(SPI−1)のイミド化率を測定した結果、79%であった。
【0114】
(合成例12〜18)
表3に示す組成にした以外は上記合成例11と同様の方法を用いて、合成例12〜18のポリイミド(SPI−2〜SPI−8)の粉末を得た。
【0115】
【表3】
【0116】
(実施例1)
上記合成例1にて得られたポリマー(ポリアミック酸PAA−1)の溶液3.25gに、NMP3.25gを加え、室温で3時間攪拌した。攪拌終了時点でポリアミック酸は完全に溶解していた。さらにこの溶液にBCS1.63gを加え、室温で1時間攪拌し、固形分濃度が4.0wt%のポリマー溶液(A1)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0117】
(実施例2〜7、比較例1〜2)
表4に示す組成にした以外は、実施例1と同様の方法を用いて、実施例2〜7のポリマー溶液(A2〜A7)、及び、比較例1〜2のポリマー溶液(B1〜B2)を得た。
【0118】
【表4】
【0119】
(実施例8)
上記合成例11にて得られたポリマー(ポリイミドSPI−1)0.50gに、NMP7.53gを加え、室温で3時間攪拌した。攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。さらにこの溶液にBCS2.01gを加え、室温で1時間攪拌し、固形分濃度が5.0wt%、のポリマー溶液(A8)を得た。このポリマー溶液は、そのまま液晶配向膜を形成するための液晶配向剤となる。
【0120】
(実施例9〜13、比較例3〜4)
表5に示す組成にした以外は、実施例8と同様の方法を用いて、実施例9〜13のポリマー溶液(A9〜A13)、及び、比較例3〜4のポリマー溶液(B3〜B4)を得た。なお、いずれの実施例9〜13においても、実施例8と同様に、攪拌終了時点でポリイミドは完全に溶解していた。
【0121】
【表5】
【0122】
[液晶セルの作製]
実施例1で得られたポリマー溶液(A1)すなわち液晶配向剤(A1)を1.0μmのフィルターで濾過した後、透明電極付きガラス基板上にスピンコートし、80℃のホットプレート上で80秒間乾燥後、230℃で10分間焼成して膜厚100nmの塗膜(ポリイミド膜)を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ロール径120mm、回転数1000rpm、移動速度50mm/sec、押し込み量0.3mm)した後、純水中にて1分間超音波照射を行い、80℃で10分間乾燥して、液晶配向膜を形成した。このような液晶配向膜付き基板を2枚用意し、一方の基板の液晶配向膜面に6μmのスペーサを設置した後、2枚の基板のラビング方向が直交するようにして組み合わせ、液晶注入口を残して周囲をシールし、セルギャップが6μmの空セルを作製した。このセルに液晶(MLC−2003(C080)、メルク・ジャパン社製)を常温で真空注入し、注入口を封止して、液晶が90度ツイスト配向した液晶セルを得た。
【0123】
また、実施例2〜13で得られた液晶配向剤(A2〜A13)、及び、比較例1〜4で得られた液晶配向剤(B1〜B4)に関しても、実施例1で得られた液晶配向剤(A1)と同様の方法を用いて液晶セルを作製した。
【0124】
[電圧保持率(VHR)評価]
電圧保持率の評価は、得られた液晶セルに、90℃の温度下で4Vの電圧を60μs間印加し、16.67ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているか、すなわち、初期値からの変動を電圧保持率として計算した。なお、電圧保持率の測定には、東陽テクニカ社製の電圧保持率測定装置VHR−1を使用した。この評価結果(表6において「初期」と記載する。)を表6に示す。
【0125】
次に、液晶セルに365nmの紫外線を1J照射し、紫外線照射後のVHRを同様に評価した。この評価結果(表6において「UV1J」と記載する。)を表6に示す。
【0126】
[プレチルト角の評価]
得られた液晶セルについて、120℃で1時間加熱した後、プレチルト角の測定を行った。プレチルト角はAxo Metrix社の「Axo Scan」にて、ミュラーマトリクス法を用いて測定した。結果を表6に示す。
【0127】
[白化・凝集特性の評価]
実施例1〜13及び比較例1〜4で得られた各液晶配向剤(ポリマー溶液)を、Cr基板上にそれぞれ約0.1ml滴下し、温度23℃、湿度55%の環境に放置した。この液滴の端近傍付近を10分毎に顕微鏡で観察した。尚、観察は100倍の倍率で行った。凝集物が発生した時間が10分以下のものを×、10分超1時間未満を△、1時間以上3時間未満を○、3時間以上を◎として評価した。評価結果を表6に示す。
【0128】
【表6】
【0129】
表6に示すように、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料としたポリアミック酸やポリイミドを含有する実施例1〜13の液晶配向剤(ポリマー溶液)を用いた場合は、比較例1〜4と比較して、紫外線照射前後での電圧保持率の変化が小さく、紫外線照射による性能劣化が顕著に低減されていることが分かった。
【0130】
また、式(1)で表されるテトラカルボン酸二無水物を原料としたポリアミック酸やポリイミドを含有する実施例1〜13の液晶配向剤(ポリマー溶液)は、白化・凝集特性の評価において3時間以上放置しても凝集物が全く生じず、優れた白化・凝集特性を備えていることが分かった。また、実施例1〜13の液晶配向剤は、配向処理によって液晶の良好な配向(プレチルト角)を実現することも確認された。