【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の幾つかの実施形態に係るアイスリンクの冷却設備は、
アイスリンク底部の冷却管群を流れるCO
2ブラインの潜熱を用いてアイスリンクを冷却するように構成されたアイスリンクの冷却設備であって、
前記冷却管群から前記CO
2ブラインの気液混合体を受け入れる受液器と、
前記受液器内の前記気液混合体のうちCO
2ガスを冷却して液化するように構成された冷却機構と、
前記受液器内のCO
2液を含む前記CO
2ブラインを前記冷却管群側へ供給する第1供給ラインと、
前記第1供給ラインに設けられたポンプと、
前記冷却管群よりも高所に配置され、前記冷却管群から前記気液混合体を受け入れ、該気液混合体を気液分離する気液分離器と、
前記気液分離器で気液分離されたCO
2液を含む前記CO
2ブラインを前記冷却管群側へ供給する第2供給ラインと、
前記第2供給ラインに設けられたバルブと、を備え、
前記ポンプ及び前記バルブは、それぞれ、前記アイスリンクの冷却負荷に応じて、前記第1供給ラインを含む循環ラインにおける前記ポンプを用いた前記CO
2ブラインの強制循環と、前記第2供給ラインを含む循環ラインにおける前記CO
2ブラインの自然循環と、を切り替えるように制御される構成であることを特徴とする。
この場合、前記ポンプは、前記冷却負荷が大きいときに稼働して前記CO
2ブラインを強制循環させ、前記冷却負荷が小さいときに停止して前記CO
2ブラインが自然循環するように構成されていてもよい。
【0008】
上記アイスリンクの冷却設備は、アイスリンクの冷却負荷に応じて、ポンプを用いたCO
2ブラインの強制循環と、ポンプを用いない(ポンプ停止状態)CO
2ブラインの自然循環と、を切り替えるようになっている。これにより、例えばアイスリンクの冷却負荷が小さいときには、ポンプを停止してポンプの動力コストを削減できる。この際、CO
2ブラインを自然循環させているので、アイスリンクの品質を維持可能な程度の冷却を行うことができる。また、例えばアイスリンクの冷却負荷が大きいときには、ポンプを用いてCO
2ブラインを強制循環させるので、アイスリンクを十分に冷却することができる。このように、アイスリンクの冷却負荷に応じて、CO
2ブラインの強制循環と自然循環とを切り替えることによって、アイスリンクの周囲環境や稼働状況等に応じて、アイスリンクを高品質に維持しながら冷却設備における省エネルギー化が図れる。
CO
2ブラインの自然循環に用いられる気液分離器は、冷却管群よりも高所に配置されているため、気液分離器と冷却管群との間でCO
2ブラインを円滑に自然循環させることができる。また、気液分離器からのCO
2ブラインを冷却管群へ供給する第2供給ライン上にはバルブが設けられており、このバルブを開閉することで気液分離器内のCO
2ブラインの冷却管群への供給を制御できる。
なお、本明細書において、強制循環とは、主として、ポンプによってCO
2ブラインが第1供給ラインを介して冷却管群へ供給される状態をいい、一部のCO
2ブラインが第2供給ラインを介して冷却管群へ供給される状態(このとき、バルブは開である)をも含む。また、自然循環とは、ポンプが停止しており、主として、CO
2ブラインが第2供給ラインを介して冷却管群へ供給される状態をいい、一部のCO
2ブラインが第1供給ラインを介して冷却管群へ供給される状態をも含む。この場合、受液器は冷却管群よりも高所に配置されていてもよい。
【0009】
幾つかの実施形態において、前記気液分離器内の前記CO
2ブラインの液量を計測するための液レベル計と、少なくとも前記バルブを制御するための制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記液レベル計の計測値に基づいて前記バルブを開閉制御するように構成されている。
このように、制御装置によって液レベル計の計測値に基づいてバルブを開閉制御するようにしたので、バルブを適正なタイミングで開閉制御することができる。
【0010】
一実施形態において、前記制御装置は、前記ポンプが停止しているとき、前記液レベル計の計測値が第1しきい値以下となった場合、前記バルブを閉じる制御を行い、前記液レベル計の計測値が、前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値以上となった場合、前記バルブを開く制御を行うように構成されている。
上記実施形態によれば、ポンプが停止している自然循環時、気液分離器内にCO
2液が溜まったら気液分離器からCO
2液を冷却管群に供給し、気液分離器内のCO
2液が少なくなったら気液分離器からのCO
2液の供給を停止し、気液分離器内にCO
2液を溜めることができる。
【0011】
一実施形態において、前記制御装置は、前記バルブの開閉制御及び前記ポンプの回転数制御を行うように構成され、前記制御装置は、前記ポンプが稼働しているとき、前記液レベル計の計測値が第1しきい値以下となった場合、前記バルブを閉じるとともに前記ポンプの回転数を設定値に維持する制御を行い、前記液レベル計の計測値が、前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値以上となった場合、前記バルブを開くとともに前記ポンプの回転数を前記設定値よりも低下させる制御を行うように構成されている。
上記実施形態によれば、ポンプが稼働している強制循環時、気液分離器内のCO
2液が少ない場合には、バルブを閉じて、第1供給ラインを介したCO
2ブラインの供給のみを行い、気液分離器内にCO
2液が溜まったら、バルブを開いて、気液分離器から第2供給ラインを介してCO
2液を冷却管群に供給する。これにより、気液分離器内にCO
2液が過剰に溜まってしまい、気液分離器の機能が損なわれることを防止できる。
【0012】
一実施形態では、前記冷却管群と前記気液分離器とを接続する第1返送ラインと、
前記気液分離器と前記受液器とを接続する第2返送ラインと、をさらに備える。
例えば、CO
2ブラインの強制循環時には、気液混合体は冷却管群から第1返送ライン及び第2返送ラインを介して受液器に戻る。CO
2ブラインの自然循環時には、気液混合体は第1返送ラインを介して気液分離器に返送され、気液分離されたCO
2ガスが第2返送ラインを介して受液器に返送される。このような構成とすることにより、気液混合体のうちCO
2ガスを効率よく受液器に導くことができ、よって冷却機構によるCO
2ガスの液化を効果的に行うことができる。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記受液器は、前記アイスリンクの冷却設備における前記CO
2ブラインの総量よりも小さい容量を有する。
すなわち、上記実施形態においては、CO
2ブラインを貯留するタンクとして機能する受液器とは別に、アイスリンクに敷設された冷却管群も同様にCO
2ブラインを貯留するタンクとしての役割を担うことになる。
一般に、アイスリンクは広大な被冷却エリアを擁するため、これを冷却するためのCO
2ブラインも大量に必要とされることが多い。そのため、上記実施形態のように、受液器をCO
2ブラインの総量よりも小さい容量とし、冷却管群をタンクとして利用することによって、設備の小型化が図れる。
【0014】
一実施形態では、前記第1しきい値が前記第2しきい値よりも低く設定されている。
このように、第1しきい値と第2しきい値との間にヒステリシスを持たせることによって、制御の安定性を確保することができる。
【0015】
幾つかの実施形態では、前記冷却機構が、冷凍機及びクーリングタワーを有し、アンモニア冷媒が循環するアンモニア冷凍サイクルと、前記CO
2ガスと前記アンモニア冷媒とを熱交換し、前記アンモニア冷媒により前記CO
2ガスを冷却して再液化するカスケードコンデンサとを含む。
これにより、CO
2ガスを効率的に冷却して液化することができる。
【0016】
一実施形態に係るアイスリンクの冷却設備は、前記アイスリンク上の空気を除湿するための除湿機構をさらに備えており、前記除湿機構は、前記アイスリンク上の空間内の空気が空気送給ラインを介して供給されて、該空気中の水分を吸着して除湿するためのデシカントロータと、前記デシカントロータで除湿された前記空気を冷却するエアクーラ、及び、前記デシカントロータを再生する再生用空気を予熱するエアヒータを含むヒートポンプと、前記空気送給ラインに設けられ、再生空気と熱流体とを熱交換させる第1の熱交換器、又は、前記デシカントロータで除湿された前記空気を前記空間に返送するための空気返送ラインに設けられ、前記空気と前記熱流体とを熱交換させる第2の熱交換器の少なくとも一方と、を含み、前記熱流体が、前記冷却機構の前記クーリングタワーの廃熱を用いて加熱されている。
これにより、アイスリンクが設けられる空間の除湿を効果的に行うことができ、氷面への着霜を防止できる。そのため、アイスリンクの冷却負荷を軽減してCO
2ブラインの自然循環の運転時間を多くでき、冷却設備の省エネルギー化が可能となる。さらに、除湿機構では冷却機構の廃熱を用いるようにしたので、アイスリンクの冷却設備全体としての省エネルギー化も可能となる。また、除湿機構におけるヒートポンプのCOP低下を防止でき、かつヒートポンプの正常運転を維持できる。
【0017】
本発明の幾つかの実施形態に係るアイスリンクの冷却方法は、
アイスリンク底部の冷却管群を流れるCO
2ブラインの潜熱を用いてアイスリンクを冷却するアイスリンクの冷却方法であって、
受液器に貯留された前記CO
2ブラインの気液混合体のうちCO
2ガスを冷却して液化する液化ステップと、
前記冷却管群よりも高所に配置された気液分離器によって、前記冷却管群から返送された前記気液混合体を気液分離する気液分離ステップと、
前記受液器内のCO
2液を含む前記CO
2ブラインを前記冷却管群側へ供給する第1供給ラインに設けられたポンプを稼働した状態で、前記第1供給ラインを含む循環ラインにおいて前記CO
2ブラインを強制循環させる強制循環ステップと、
前記ポンプが停止した状態で、前記気液分離器で気液分離されたCO
2液を含む前記CO
2ブラインを前記冷却管群側へ供給する第2供給ラインに設けられたバルブを開いて、前記第2供給ラインを含む循環ラインにおいて前記CO
2ブラインを自然循環させる自然循環ステップと、
前記アイスリンクの冷却負荷に応じて、前記強制循環ステップと前記自然循環ステップとを切り替える運転切替ステップと、を備えることを特徴とする。
この場合、前記運転切替ステップは、前記アイスリンクの冷却負荷が大きいとき、前記強制循環ステップに切り替え、前記アイスリンクの冷却負荷が小さいとき、前記自然循環ステップに切り替えてもよい。
【0018】
上記アイスリンクの冷却方法は、運転切替ステップにおいて、アイスリンクの冷却負荷に応じて、ポンプを用いたCO
2ブラインの強制循環ステップと、ポンプを用いない(ポンプ停止状態)CO
2ブラインの自然循環ステップと、を切り替えるようになっている。これにより、例えばアイスリンクの冷却負荷が小さいときには、ポンプを停止してポンプの動力コストを削減できる。この際、CO
2ブラインを自然循環させているので、アイスリンクの品質を維持可能な程度の冷却を行うことができる。また、例えばアイスリンクの冷却負荷が大きいときには、ポンプを用いてCO
2ブラインを強制循環させるので、アイスリンクを十分に冷却することができる。このように、アイスリンクの冷却負荷に応じて、運転切替ステップにおいてCO
2ブラインの強制循環ステップと自然循環ステップとを切り替えることによって、アイスリンクの周囲環境や稼働状況等に応じて、アイスリンクを高品質に維持しながら冷却設備における省エネルギー化が図れる。
【0019】
一実施形態において、前記自然循環ステップでは、前記気液分離器内の前記CO
2液の液量が第1しきい値以下となった場合、前記バルブを閉じ、前記気液分離器内の前記CO
2液の液量が、前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値以上となった場合、前記バルブを開く。
上記実施形態によれば、ポンプが停止している自然循環時、気液分離器内にCO
2液が溜まったら気液分離器からCO
2液を冷却管群に供給し、気液分離器内のCO
2液が少なくなったら気液分離器からのCO
2液の供給を停止し、気液分離器内にCO
2液を溜めることができる。
【0020】
一実施形態において、前記強制循環ステップでは、前記気液分離器内の前記CO
2液の液量が第1しきい値以下となった場合、前記バルブを閉じるとともに前記ポンプの回転数を設定値に維持し、前記気液分離器内の前記CO
2液の液量が、前記第1しきい値よりも大きい第2しきい値以上となった場合、前記バルブを開くとともに前記ポンプの回転数を前記設定値よりも低下させる。
上記実施形態によれば、ポンプが稼働している強制循環時、気液分離器内のCO
2液が少ない場合には、バルブを閉じて、第1供給ラインを介したCO
2ブラインの供給のみを行い、気液分離器内にCO
2液が溜まったら、バルブを開いて、気液分離器から第2供給ラインを介してCO
2液を冷却管群に供給する。これにより、気液分離器内にCO
2液が過剰に溜まってしまい、気液分離器の機能が損なわれることを防止できる。
【0021】
一実施形態において、前記アイスリンク上の空気を除湿するための除湿ステップをさらに備えており、前記除湿ステップは、前記アイスリンク上の空間内の空気が空気送給ラインを介して供給されて、デシカントロータによって前記空気中の水分を吸着する水分吸着ステップと、前記デシカントロータで除湿された前記空気をエアクーラによって冷却する空気冷却ステップと、前記デシカントロータを再生する再生空気をエアヒータによって予熱する予熱ステップと、前記空気送給ラインに設けられた第1熱交換器によって、再生空気と熱流体とを熱交換させる第1熱交換ステップ、又は、前記デシカントロータで除湿された前記空気を前記空間に返送するための空気返送ラインに設けられが第2熱交換器によって、前記空気と前記熱流体とを熱交換させる第2熱交換ステップの少なくとも一方と、を含み、前記熱流体が、前記冷却機構からの廃熱を用いて加熱される。
これにより、アイスリンクが設けられる空間の除湿を効果的に行うことができ、氷面への着霜を防止できる。そのため、アイスリンクの冷却負荷を軽減してCO
2ブラインの自然循環の運転時間を多くでき、冷却設備の省エネルギー化が可能となる。さらに、除湿機構において冷却機構の廃熱を用いるようにしたので、アイスリンクの冷却設備全体としての省エネルギー化も図れる。また、除湿機構におけるヒートポンプのCOP低下を防止でき、かつヒートポンプの正常運転を維持できる。すなわち、除湿機構におけるデシカントロータの再生熱量の確保と、アイスリンクの適正な調湿が可能となる。