(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6320072
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】データ多重装置およびデータ分離装置並びにFPU受信支援情報伝送装置
(51)【国際特許分類】
H04H 20/04 20080101AFI20180423BHJP
H04J 3/00 20060101ALI20180423BHJP
H04N 21/236 20110101ALI20180423BHJP
【FI】
H04H20/04
H04J3/00 M
H04N21/236
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-29037(P2014-29037)
(22)【出願日】2014年2月19日
(65)【公開番号】特開2015-154428(P2015-154428A)
(43)【公開日】2015年8月24日
【審査請求日】2016年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】足立 剛史
(72)【発明者】
【氏名】臼井 康雄
【審査官】
後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−171681(JP,A)
【文献】
特開2003−333026(JP,A)
【文献】
特開2012−244459(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04H 20/00 − 20/46
H04H 20/51 − 20/86
H04H 20/91 − 20/95
H04H 40/00 − 40/27
H04H 40/90
H04H 60/00 − 60/98
H04J 3/00
H04N 21/236
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局に設けられたTSL受信機に送信するとともに、この放送局に設けられたFPU制御装置により上記中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおける上記中継基地局に具備されるデータ多重装置であって、
上記FPU受信機からの映像TS信号と、中継基地局に設けられている所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータと、当該所定機器のコマンド情報および/またはステータス情報であるTCPデータとを入力し、
上記UDPデータについてはTSカプセル化するとともに、このTSカプセル化されたUDP・TS信号と上記映像TS信号とを多重化して出力するようになし、
上記TCPデータについては、中継基地局に設けられた基地局側ルーターおよび放送局に設けられた放送局側ルーター並びに上記TCP/IP回線を介して、中継基地局の所定機器とFPU制御装置との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたことを特徴とするデータ多重装置。
【請求項2】
TCPデータおよびUDPデータを入力して別々に振り分けるデータの振分け部と、
この振分け部にて振り分けられたUDPデータを入力してTSカプセル化するTS変換部と、
このTS変換部で得られたUDP・TS信号および映像TS信号を入力し多重化して多重TS信号を出力する多重化部と、
上記振分け部にて振り分けられたTCPデータを入力して、FPU受信機からデータ多重装置宛に設定されているMACアドレスをデータ多重装置から中継基地局側ルーター宛に変換するとともに、FPU受信機からFPU制御装置宛に設定されているIPアドレスをデータ多重装置からデータ分離装置宛に変換する第1アドレス変換部と、
上記中継基地局側ルーターからのTCPデータを入力して、当該中継基地局側ルーターからデータ多重装置宛に設定されているMACアドレスを当該データ多重装置からFPU受信機宛に変換するとともに、放送局に設けられたデータ分離装置からデータ多重装置宛に設定されているIPアドレスをFPU制御装置からFPU受信機宛に変換する第2アドレス変換部とを具備したことを特徴とする請求項1に記載のデータ多重装置。
【請求項3】
FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局のTSL受信機に送信する際に、中継基地局に設けられた所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータにされ、このUDPデータをTSフレーム化されてなるUDP・TS信号にされ、このUDP・TS信号が上記映像TS信号に多重化されて多重TS信号にされるとともに、放送局に設けられたFPU制御装置により上記中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおける上記放送局に具備されるデータ分離装置であって、
放送局に設けられたTSL受信機にて受信された多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離した後、当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成して上記FPU制御装置に出力するようになし、
さらに上記中継基地局に設けられた所定機器のコマンド情報および/またはステータス情報であるTCPデータについては、放送局側ルーターおよび基地局側ルーター並びにTCP/IP回線を介して、FPU制御装置と中継基地局の所定機器との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたことを特徴とするデータ分離装置。
【請求項4】
多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離するとともに当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成する分離部と、
FPU制御装置からのTCPデータを入力して、当該FPU制御装置からデータ分離装置宛に設定されているMACアドレスをデータ分離装置から放送局側ルーター宛に変換するとともに、FPU制御装置からFPU受信機宛に設定されているIPアドレスをデータ分離装置からデータ多重装置宛に変換する第3アドレス変換部と、
放送局側ルーターからのTCPデータを入力して、当該放送局側ルーターからデータ分離装置宛に設定されているMACアドレスをデータ分離装置からFPU制御装置宛に変換するとともに、中継基地局に設けられたデータ多重装置から放送局に設けられたデータ分離装置宛に設定されているIPアドレスをFPU受信機からFPU制御装置宛に変換する第4アドレス変換部とを具備したことを特徴とする請求項3に記載のデータ分離装置。
【請求項5】
FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局に設けられたTSL受信機に送信するとともに、放送局に設けられたFPU制御装置により中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおけるFPU受信支援情報伝送装置であって、
上記中継基地局に設けられるデータ多重装置と上記放送局に設けられるデータ分離装置とを具備し、
上記データ多重装置により、上記FPU受信機からの映像TS信号と、中継基地局の所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータと、当該所定機器のコマンド情報および/またはステータス情報であるTCPデータとをそれぞれ入力して、上記UDPデータをTSカプセル化するとともに、このTSカプセル化されたUDP・TS信号と映像TS信号とを多重化し、且つこの多重化された多重TS信号を上記TSL送信機に出力するようになし、
さらに上記データ分離装置により、放送局に設けられたTSL受信機からの多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離した後、当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成して上記FPU制御装置に出力するようになし、
且つ上記コマンド情報および/またはステータス情報であるTCPデータについては、中継基地局に設けられた基地局側ルーターおよび放送局に設けられた放送局側ルーター並びにTCP/IP回線を介して、中継基地局に設けられた所定機器とFPU制御装置との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたことを特徴とするFPU受信支援情報伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPU送信機から送られる映像TS信号を中継基地局を介して放送局に送る際に、中継基地局に設けられている所定機器、例えばFPU受信機の動作状態を表す支援情報についてもTSカプセル化して放送局に送信し得るデータ多重装置およびデータ分離装置並びにFPU受信支援情報伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、中継車などに搭載されたFPU装置からの映像・音声データはTS(MPEG-2におけるTransport Stream)信号として、例えば山上に設けられた中継基地局を介して放送局に伝送されている。
【0003】
そして、中継基地局には、少なくとも、パラボラアンテナなどの電波受信設備、FPU(Field Pick-up Unit)受信機、TSL(Transmitter-Studio Link)送信機などが設けられており、また放送局側にも、TSL受信機、FPU制御装置などが設けられており、さらに、中継基地局に設けられている少なくともFPU受信機などの機器はFPU制御装置により制御されている。
【0004】
ところで、例えばFPU受信機はFPU制御装置により制御されているため、FPU受信機とFPU制御装置との間では、機器を制御するためのコマンド情報および機器からの応答であるステータス情報が遣り取りされている。
【0005】
具体的には、機器を制御するためのコマンド情報および機器からの応答であるステータス情報などは、データ量が少ないため、TS信号とは別にISDN回線などのTCP/IP回線を介して放送局との間で双方向にて受け渡しされているが、機器の動作状態などを表す支援情報のデータについては、データ量が多いため、ISDNなどの狭帯域TCP/IP回線で送ることができない。
【0006】
これに対処するものとして、データ量が多い動作状態などの支援情報に関するデータを送信容量が大きいTS信号として送信するようにした伝送システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−252755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1に記載された伝送システムでは、支援情報はTS信号にそのまま載せるようにされているため、以下のような問題がある。
すなわち、FPU受信機において、支援情報がTSフレーム化されて多重化されるが、FPU受信機の中には、フレーム化のフォーマットが異なっているものが存在する。
【0009】
したがって、放送局側では、全ての種類のFPU受信機のフォーマットに対応できる信号の分離装置が必要になるとともに、信号の処理作業も複雑となるため、設備コストが高くなるという問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、FPU受信機において、支援情報をTSフレーム化する際に、そのフォーマットが異なる場合でも、そのフォーマットの種類に関係なく、言い換えれば、安価な伝送設備でもって、データ量が多い動作状態などの支援情報に関するデータを送信容量が大きいTS信号に多重化して伝送し得るデータ多重装置およびデータ分離装置並びにFPU受信支援情報伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明のデータ多重装置は、FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局に設けられたTSL受信機に送信するとともに、この放送局に設けられたFPU制御装置により上記中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおける上記中継基地局に具備されるデータ多重装置であって、
上記FPU受信機からの映像TS信号
と、中継基地局に設けられている所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータ
と、当該所定機器のコマンド情報
および/またはステータス情報
であるTCPデータ
とを入力し、
上記UDPデータについてはTSカプセル化するとともに、このTSカプセル化されたUDP・TS信号と上記映像TS信号とを多重化して出力するようになし、
上記TCPデータについては、中継基地局に設けられた基地局側ルーターおよび放送局に設けられた放送局側ルーター並びに上記TCP/IP回線を介して、中継基地局の所定機器とFPU制御装置との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたものである。
【0012】
また、上記データ多重装置に、TCPデータおよびUDPデータを入力して別々に振り分けるデータの振分け部と、
この振分け部にて振り分けられたUDPデータを入力してTSカプセル化するTS変換部と、このTS変換部で得られたUDP・TS信号および映像TS信号を入力し多重化して多重TS信号を出力する多重化部と、
上記振分け部にて振り分けられたTCPデータを入力して、FPU受信機からデータ多重装置宛に設定されているMACアドレスをデータ多重装置から中継基地局側ルーター宛に変換するとともに、FPU受信機からFPU制御装置宛に設定されているIPアドレスをデータ多重装置からデータ分離装置宛に変換する第1アドレス変換部と、
上記中継基地局側ルーターからのTCPデータを入力して、当該中継基地局側ルーターからデータ多重装置宛に設定されているMACアドレスを当該データ多重装置からFPU受信機宛に変換するとともに、放送局に設けられたデータ分離装置からデータ多重装置宛に設定されているIPアドレスをFPU制御装置からFPU受信機宛に変換する第2アドレス変換部とを具備したものである。
【0013】
また、本発明のデータ分離装置は、FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局のTSL受信機に送信する際に、中継基地局に設けられた所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータ
にされ、このUDPデータをTSフレーム化
されてなるUDP・TS信号
にされ、このUDP・TS信号が上記映像TS信号に多重化されて多重TS信号にされるとともに、放送局に設けられたFPU制御装置により上記中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおける上記放送局に具備されるデータ分離装置であって、
放送局に設けられたTSL受信機にて受信された多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離した後、当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成して上記FPU制御装置に出力するようになし、
さらに上記中継基地局に設けられた所定機器のコマンド情報
および/またはステータス情報
であるTCPデータについては、放送局側ルーターおよび基地局側ルーター並びにTCP/IP回線を介して、FPU制御装置と中継基地局の所定機器との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたものである。
【0014】
また、上記データ分離装置に、多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離するとともに当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成する分離部と、
FPU制御装置からのTCPデータを入力して、当該FPU制御装置からデータ分離装置宛に設定されているMACアドレスをデータ分離装置から放送局側ルーター宛に変換するとともに、FPU制御装置からFPU受信機宛に設定されているIPアドレスをデータ分離装置からデータ多重装置宛に変換する第3アドレス変換部と、
放送局側ルーターからのTCPデータを入力して、当該放送局側ルーターからデータ分離装置宛に設定されているMACアドレスをデータ分離装置からFPU制御装置宛に変換するとともに、中継基地局に設けられたデータ多重装置から放送局に設けられたデータ分離装置宛に設定されているIPアドレスをFPU受信機からFPU制御装置宛に変換する第4アドレス変換部とを具備したものである。
【0015】
さらに、本発明のFPU受信支援情報伝送装置は、FPU
送信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局に設けられたTSL受信機に送信するとともに、放送局に設けられたFPU制御装置により中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおけるFPU受信支援情報伝送装置であって、
上記中継基地局に設けられるデータ多重装置と上記放送局に設けられるデータ分離装置とを具備し、
上記データ多重装置により、上記FPU受信機からの映像TS信号
と、中継基地局の所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータ
と、当該所定機器のコマンド情報
および/またはステータス情報
であるTCPデータ
とをそれぞれ入力して、上記UDPデータをTSカプセル化するとともに、このTSカプセル化されたUDP・TS信号と映像TS信号とを多重化し、且つこの多重化された多重TS信号を上記TSL送信機に出力するようになし、
さらに上記データ分離装置により、放送局に設けられたTSL受信機からの多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離した後、当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成して上記FPU制御装置に出力するようになし、
且つ上記コマンド情報
および/またはステータス情報
であるTCPデータについては、中継基地局に設けられた基地局側ルーターおよび放送局に設けられた放送局側ルーター並びにTCP/IP回線を介して、中継基地局に設けられた所定機器とFPU制御装置との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0016】
上記各構成によると、FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局を介して放送局に送信する際に、且つ中継基地局に設けられている所定機器、例えばFPU受信機に関する動作状態を表す支援情報をTSカプセル化し、上記映像TS信号に多重化して放送局に送る際に、上記支援情報をUDPカプセル化するようにしたので、FPU受信機と放送局側の受信機との間で受け渡しされるデータの種類がUDPだけで良く、従来のように、機器に対する支援情報を、直接、TSパケット化する場合に比べて、放送局側に設けられる機器を種々のフォーマットに対応させる必要がないので、非常に経済的である。
【0017】
また、データ多重装置およびデータ分離装置が介在されることになるが、コマンド情報およびステータス情報であるTCPデータの送元、宛先については、それぞれアドレス変換部で変換するようにしているので、支障なく、TCPデータの遣り取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施例に係るFPU伝送システムの全体の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】同FPU伝送システムにおけるデータ多重装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図3】同データ多重装置でのアドレス変換を説明する図である。
【
図4】同データ多重装置でのアドレス変換を説明する図である。
【
図5】同FPU伝送システムにおけるデータ分離装置でのアドレス変換を説明する図である。
【
図6】同データ分離装置でのアドレス変換を説明する図である。
【
図7】同実施例における中継基地局側でのデータ等の流れを説明する図である。
【
図8】同実施例における放送局側でのデータ等の流れを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例に係るデータ多重装置およびデータ分離装置並びにFPU受信支援情報伝送装置を、
図1〜
図8に基づき説明する。
本実施例では、本発明に係る各装置が、
図1に示すように、中継車(中継局の一例)1に設けられたFPU送信機2からのFPUデータであるTSパケット化された映像TS信号(音声信号も含まれる)を中継基地局3を介して放送局4に送るためのFPU伝送システム5に具備されるものとして説明する。
【0020】
まず、中継基地局3について説明する。
この中継基地局3には、FPU送信機2からの映像TS信号を受信するFPU受信機11と、このFPU受信機11で受信された映像TS信号、および当該中継基地局3に設けられた所定機器、具体的には、FPU受信機11を含む受信設備の支援情報、すなわち、少なくともFPU受信機11の動作状態(例えば、受信状態などを表す)を表す支援情報をUDPフレーム化してなるUDPデータを入力してTSフレーム化し且つこのTSフレーム化されてなるUDP・TS信号と映像TS信号とを多重化して多重TS信号を得るとともにデータ(後述する)の送元アドレスおよび宛先アドレス(MACアドレスおよびIPアドレス)の変換を行うデータ多重装置12と、このデータ多重装置12にて多重化された多重TS信号を無線にて送信するTSL送信機13と、当該中継基地局3と放送局4との間に設けられたTCP/IPプロトコルが用いられるTCP/IP回線(通信回線で、具体的には、ISDN回線などが用いられる)6に接続されて上記所定機器の制御に関するコマンド情報および所定機器のステータス情報(応答情報)であるTCPデータの受け渡しをスイッチングハブ14を介して行うための基地局側ルーター15とが具備されている。
【0021】
また、上記放送局4には、中継基地局3からの多重化された多重TS信号を受信するTSL受信機21と、このTSL受信機21にて受信された多重TS信号を入力して映像TS信号からUDP・TS信号を分離するとともに当該UDP・TS信号の非TSカプセル化を行い(TSパケットの識別部分を外してIPパケットとして取り出す)且つデータの送元アドレスおよび宛先アドレス(MACアドレスおよびIPアドレス)の変換を行うデータ分離装置22と、このデータ分離装置22で分離されたUDPデータを入力するとともにこのUDPデータの内容に基づき中継基地局3側の所定機器、すなわち、少なくともFPU受信機などにコマンド情報であるTCPデータを送信するためのFPU制御装置23と、このFPU制御装置23からのTCPデータの受け渡しをスイッチングハブ24を介して行うための放送局側ルーター25とが具備されている。
【0022】
上記データ多重装置12には、
図2に示すように、所定機器、例えばFPU受信機などのステータス情報であるTCPデータおよび動作状態を表す支援情報のUDPデータを入力して別々に振り分けるデータの振分け部31と、この振分け部31にて振り分けられたUDPデータを入力してTSカプセル化するTS変換部32と、このTS変換部32
で得られたTSカプセル化されたUDP・TS信号およびFPU受信機11からの映像TS信号を入力し多重化(例えば、時分割による多重)して多重TS信号を出力する多重化部33と、
図2および
図3に示すように、上記振分け部31にて振り分けられたTCPデータを入力して、FPU受信機11からデータ多重装置12宛に設定されているMACアドレスをデータ多重装置12から基地局側ルーター15宛に変換するとともに、FPU受信機11からFPU制御装置23宛に設定されているIPアドレスをデータ多重装置12からデータ分離装置22宛に変換する第1アドレス変換部34と、
図2および
図4に示すように、上記基地局側ルーター15からのコマンド情報であるTCPデータを入力して、当該基地局側ルーター15からデータ多重装置12宛に設定されているMACアドレスをデータ多重装置12からFPU受信機11宛に変換するとともに、放送局4に設けられたデータ分離装置22から当該データ多重装置12宛に設定されているIPアドレスをFPU制御装置23からFPU受信機11宛に変換する第2アドレス変換部35とが具備されている。
【0023】
なお、本実施例では、FPU受信機11とFPU制御装置23との間でTCPデータの受け渡しを行う際に、データ多重装置12とデータ分離装置22とを介在させるとともに、基地局側ルーター15および放送局側ルーター25を介して行うようにされており、したがってTCPデータのMACアドレスおよびIPアドレスが、データ多重装置12またはデータ分離装置22が介在するように変更される。
【0024】
また、上記データ分離装置22には、
図1に示すように、TSL受信機21からの多重TS信号が入力されてUDP・TS信号を分離するとともに非TSカプセル化を行いUDPデータを得る分離部41と、
図1および
図5に示すように、FPU制御装置23からのTCPデータを入力して、FPU制御装置23からデータ分離装置22宛に設定されているMACアドレスをデータ分離装置22から放送局側ルーター25宛に変換するとともに、FPU制御装置23からFPU受信機11宛に設定されているIPアドレスをデータ分離装置22からデータ多重装置12宛に変換する第3アドレス変換部42と、
図1および
図6に示すように、放送局側ルーター25からのステータス情報であるTCPデータを入力して、放送局側ルーター25からデータ分離装置22宛に設定されているMACアドレスをデータ分離装置22からFPU制御装置23宛に変換するとともに、データ多重装置12からデータ分離装置22宛に設定されているIPアドレスをFPU受信機11からFPU制御装置23宛に変換する第4アドレス変換部43とが具備されている。
【0025】
以下、FPU伝送システ全体における信号およびデータの流れについて説明する。
FPU送信機2から送信されるFPUデータである映像TS信号はFPU受信機11により受信されてデータ多重装置12に送られるとともに、中継基地局3の所定機器、すなわち、少なくともFPU受信機11の動作状態を表す支援情報のUDPデータおよびそのステータス情報を表すTCPデータがデータ多重装置12に送られる。なお、支援情報はFPU受信機11にてUDPフレーム化されて出力される。
【0026】
このデータ多重装置12においては、映像TS信号は多重化部33に送られるとともに、UDPデータおよびTCPデータは振分け部31に送られ、ここで、UDPデータとTCPデータとが振り分けられる。
【0027】
そして、UDPデータはTS変換部32に送られて、UDPパケットのデータに対してTSカプセル化が行われる。すなわち、UDPパケットのデータに対して、データ長、ポインタフィールド、TSヘッダなどの識別部分が付加されるとともに、所定のバイト数となるように、UDPパケットのデータ分が取り込まれ、TSカプセル化される。なお、UDPパケットのデータが多い場合に分割されるとともに、次のパケットとなるデータの先頭位置がポインタフィールドにて示される。
【0028】
このようにTSカプセル化されたUDP・TS信号は多重化部33に送られ、ここで映像TS信号に多重化される。例えば、時分割による多重化が行われる。
そして、多重化されてなる多重TS信号は、TSL送信機11から送信され、放送局のTSL受信機21にて受信される。
【0029】
このTSL受信機21で受信された多重TS信号はデータ分離装置22の分離部41に送られ、ここで、UDP・TS信号が取り出されるとともに非TSカプセル化が行われる。すなわち、UDP・TS信号に対してTSヘッダなどの識別部分が取り除かれ、パケットとしてのUDPデータを得る。ところで、UDPパケットが複数に分割されて送られている場合には、一つのパケットに再構成される。そして、このUDPデータは放送局側ルーター25を介してFPU制御装置23に送られる。
【0030】
なお、映像TS信号については、TSL受信機21で受信された多重TS信号がそのまま映像信号の抽出部(図示せず)に送られ、本来の映像データ(音声も)が取り出されて放送に供される。
【0031】
以下、TCPデータに着目して信号およびデータ(以下、データ等という)の流れについて詳しく説明する。
(1)まず、中継基地局3側でのデータ等の流れを、
図3、
図4および
図7に基づき詳しく説明する。
【0032】
すなわち、FPU受信機11における受信時における動作状態のUDPデータおよびFPU受信機11のステータス情報であるTCPデータが一緒にデータ多重装置12に送られ、振分け部31でTCPデータとUDPデータとに振り分けられる。このUDPデータはTS変換部32に送られてTSカプセル化されてUDP・TS信号とされる。そして、このUDP・TS信号は多重化部33に送られ、FPU受信機11からの映像TS信号に多重化される。そして、この多重化された多重TS信号は、TSL送信機13から送信され、放送局4のTSL受信機21にて受信される。この受信された多重TS信号はデータ分離装置22に送られ、分離部41にてUDP・TS信号が取り出された後、非TSカプセル化される。この非TSカプセル化されたUDPデータはFPU制御装置23に送られ、中継基地局3側の機器、少なくともFPU受信機11の動作状況が把握される。
【0033】
ところで、FPU受信機11から基地局側ルーター15を介してFPU制御装置23に送られるFPU受信機11の動作のステータス情報であるTCPデータについては、
図3および
図7に示すように、第1アドレス変換部34で、FPU受信機11からデータ多重装置12宛に設定されているMACアドレスが、データ多重装置12から基地局側ルーター15宛に変換される(付け替えられる)とともに、FPU受信機11からFPU制御装置23宛てに設定されているIPアドレスが、データ多重装置12からデータ分離装置22宛てに変換されて、基地局側ルーター15および放送局側ルーター25を経てデータ分離装置22に送られる。
【0034】
他方、FPU制御装置23からTCP/IP回線6を介して送られるFPU受信機11を制御するコマンド情報であるTCPデータは、基地局側ルーター15を経て、データ多重装置12に送られる。
【0035】
そして、このデータ多重装置12では、
図4および
図7に示すように、TCPデータは第2アドレス変換部35に入り、ここで、基地局側ルーター15からデータ多重装置12宛に設定されてMACアドレスが、データ多重装置12からFPU受信機11宛に変換されるとともに、データ分離装置22からデータ多重装置12宛に設定されているIPアドレスが、FPU制御装置23からFPU受信機11宛に変換されてFPU受信機11に送られ、当該受信機における受信状態の最適化が図られる。
(2)次に、放送局側でのデータ等の流れについて、
図5、
図6および
図8に基づき詳しく説明する。
【0036】
すなわち、FPU制御装置23から中継基地局3側のFPU受信機11のコマンド情報であるTCPデータが出力されるが、このTCPデータは第3アドレス変換部42に入り、ここで、
図5および
図8に示すように、FPU制御装置23からデータ分離装置22宛に設定されているMACアドレスが、データ分離装置22から放送局側ルーター25宛に変換されるとともに、FPU制御装置23からFPU受信機11宛に設定されているIPアドレスが、データ分離装置22からデータ多重装置12宛に変換される。このTCPデータは、上述したように、データ多重装置12に入り、第2アドレス変換部35で、MACアドレスがデータ多重装置12からFPU受信機11宛に変換されるとともに、IPアドレスについても、FPU制御装置23からFPU受信機11宛に変換されて、FPU受信機11に送られる。
【0037】
一方、基地局側ルーター15から放送局側ルーター25に送られる所定機器のステータス情報であるTCPデータは、第4アドレス変換部43に入り、ここで、
図6および
図8に示すように、放送局側ルーター25からデータ分離装置22宛に設定されているMACアドレスが、データ分離装置22からFPU制御装置23宛に変換されるとともに、データ多重装置12からデータ分離装置22宛に設定されているIPアドレスが、FPU受信機11からFPU制御装置23宛に変換され、そして最終的には、FPU制御装置23に送られる。
【0038】
上述した構成によると、FPU送信機からの映像TS信号を中継基地局3を介して放送局4に送信する際に、中継基地局3側の所定機器、例えば少なくともFPU受信機11に関する動作状態を示すUDPデータをデータ多重装置
12にてTSカプセル化してUDP・TS信号を得るとともに多重化部33でこのUDP・TS信号と映像TS信号とを多重化して中継基地局3から放送局4に送るにようしたので、TCP/IP回線6で送ることができないデータ量が多いUDPデータについても映像TS信号と一緒に送ることができ、したがって中継基地局3側における所定機器、少なくともFPU受信機11の動作状態を十分に把握することができるので、品質の良い映像・音声データの送信が可能となる。
【0039】
また、中継基地局3側のデータ多重装置12および放送局4側のデータ分離装置22が介在されることになるが、コマンド情報およびステータス情報であるTCPデータの送元アドレスおよび宛先アドレスについては、それぞれアドレス変換部で変換するようにしているので、支障なく、TCPデータの遣り取りを行うことができる。
【0040】
特に、FPU受信機から出力される動作状態を表す支援情報がUDPフレーム化されてUDPデータにされているため、少なくともFPU受信機と放送局側の受信機との間で受け渡しされるデータはUDPデータにされた状態でTSフレーム化されているため、各機器での取り扱い対象が1種類で済み、従来のように、支援情報を、直接、TSフレーム化した場合に比べて、例えば放送局側に種々のフォーマットに対応し得るようにしておく必要がないので、非常に経済的である。
【0041】
ところで、
図1に示すように、FPU受信支援情報伝送装置7は、上述したデータ多重装置12、基地局側ルーター15、データ分離装置22および放送局側ルーター25により構成されるものであり、この構成を簡単に纏めると以下のようになる。
【0042】
すなわち、このFPU受信支援情報伝送装置7は、FPU受信機からの映像TS信号を中継基地局に設けられたFPU受信機およびTSL送信機を介して放送局に設けられたTSL受信機に送信するとともに、放送局に設けられたFPU制御装置により中継基地局に設けられた所定機器をTCP/IP回線を介して制御するようにされたFPU伝送システムにおけるFPU受信支援情報伝送装置であって、
上記中継基地局に設けられるデータ多重装置と上記放送局に設けられるデータ分離装置とを具備し、
上記データ多重装置により、上記FPU受信機からの映像TS信号並びに中継基地局の所定機器の動作状態を表す支援情報が当該所定機器でUDPフレーム化されてなるUDPデータおよび当該所定機器のコマンド情報、ステータス情報などのTCPデータをそれぞれ入力して、上記UDPデータをTSカプセル化するとともに、このTSカプセル化されたUDP・TS信号と映像TS信号とを多重化し、且つこの多重化された多重TS信号を上記TSL送信機に出力するようになし、
さらに上記データ分離装置により、放送局に設けられたTSL受信機からの多重TS信号を入力してUDP・TS信号を分離した後、当該UDP・TS信号を非TSカプセル化してUDPデータを再構成して上記FPU制御装置に出力するようになし、
且つ上記コマンド情報、ステータス情報などのTCPデータについては、中継基地局に設けられた基地局側ルーターおよび放送局に設けられた放送局側ルーター並びにTCP/IP回線を介して、中継基地局に設けられた所定機器とFPU制御装置との間で双方向にて受け渡しを行うようにしたものである。
【符号の説明】
【0043】
1 中継車
2 FPU送信機
3 中継基地局
4 放送局
5 FPU伝送システム
6 TCP/IP回線
7 FPU受信支援情報伝送装置
11 FPU受信機
12 データ多重装置
13 TSL送信機
14 スイッチングハブ
15 基地局側ルーター
21 TSL受信機
22 データ分離装置
23 FPU制御装置
24 スイッチングハブ
25 放送局側ルーター
31 振分け部
32 TS変換部
33 多重化部
34 第1アドレス変換部
35 第2アドレス変換部
41 分離部
42 第3アドレス変換部
43 第4アドレス変換部