(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
針ハブにおける貫通孔の一方の開口部に針管が突設されていると共に、該針ハブの他方の開口部にライン接続用のポート部が形成されている一方、該針管の外周を覆う針保護フードが設けられており、流体ラインに設けられた弾性シールに対して該針管を穿刺することで該流体ラインへ接続される医療用のライン接続コネクタにおいて、
前記針管に弾性カバーが被せられて、該弾性カバーの基端側開口部が該針管の基端側に対して気密に装着されることにより、前記弾性シールへ穿刺される該針管の先端部分が該弾性カバーで覆われている一方、支持部材が取外し可能に組み付けられており、該支持部材に対してプライミング用の針先キャップが該針管に向かって軸方向で移動可能に装着されていると共に、該針先キャップの該針管側への移動により該弾性カバーの先端部分が該針管の基端側へ押されて該針管が該弾性カバーを貫通して該針先キャップ内に突出されるようになっていることを特徴とする医療用のライン接続コネクタ。
前記針先キャップを前記針管から軸方向外方に離れた初期位置と、該針先キャップを該針管側へ移動させて該針管を前記弾性カバーに貫通させた移動位置とに、選択的に位置決めするキャップ位置決め機構が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の医療用のライン接続コネクタ。
前記支持部材に対して前記針先キャップが移動方向で位置決めされることにより、請求項4に記載の前記キャップ位置決め機構が構成されている請求項5に記載の医療用のライン接続コネクタ。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、ポートの弾性シールに貫通穿刺される針管を介して外部から流体ライン内へ雑菌等が入り込むことを可及的に防止することのできる、新規な構造とされた医療用のライン接続コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、本発明の態様を記載するが、以下に記載の各構成は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
【0009】
本発明の第1の態様は、針ハブにおける貫通孔の一方の開口部に針管が突設されていると共に、該針ハブの他方の開口部にライン接続用のポート部が形成されている一方、該針管の外周を覆う針保護フードが設けられており、流体ラインに設けられた弾性シールに対して該
針管を穿刺することで該流体ラインへ接続される医療用のライン接続コネクタにおいて、前記針管に弾性カバーが被せられて、該弾性カバーの基端側開口部が該針管の基端側に対して気密に装着されることにより、前記弾性シールへ穿刺される該針管の先端部分が該弾性カバーで覆われている
一方、支持部材が取外し可能に組み付けられており、該支持部材に対してプライミング用の針先キャップが該針管に向かって軸方向で移動可能に装着されていると共に、該針先キャップの該針管側への移動により該弾性カバーの先端部分が該針管の基端側へ押されて該針管が該弾性カバーを貫通して該針先キャップ内に突出されるようになっていることを特徴とする。
【0010】
本態様に係るライン接続コネクタでは、針管を弾性シールへ穿刺する際に、針管が弾性カバーと弾性シールとを貫通することで、針管が流体ラインへ接続されることとなる。その際、弾性カバーは、先端側から弾性シールで押されて針管の基端側へ収縮移動させられる。それ故、弾性シールを貫通して流体ラインへ入れられる針管は、当初の弾性カバーで被覆された状態から、実質的に大気中へ晒されることなく、弾性シールに差し入れられて流体ラインへ接続される。これにより、大気中の雑菌等が針管に付着して流体ラインへ混入することが効果的に防止され得る。
また、本態様に係るライン接続コネクタでは、流体ラインの接続に先立って針管内のガスを排出するプライミングを行うに際して、弾性カバーから針管を突出させることが可能となる。それ故、弾性カバーで針管が覆われた状態でプライミングを行う場合に比して、容易にプライミングを行うことが可能になり、特に針先キャップを透明にすれば目視確認しつつプライミングを一層容易に行うことができる。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記第1の態様に記載のライン接続コネクタにおいて、前記弾性カバーの基端側開口部が、前記針ハブにおける前記貫通孔の一方の開口部に対して固着されているものである。
【0012】
本態様に係るライン接続コネクタでは、針ハブから突出された針管が全長に亘って弾性カバーで覆われることとなり、針管への雑菌等の付着が一層効果的に防止され得る。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様に記載のライン接続コネクタにおいて、
前記針先キャップには、
前記弾性カバーを貫通して突出された
前記針管の先端部分が露呈される内部空所が設けられており、該内部空所が外部空間に対してフィルタを通じて連通されているものである。
【0015】
本態様に係るライン接続コネクタでは、針管が露出される針先キャップの内部空所と外部空間との間にはフィルタが設けられていることから、針管への雑菌の付着を防止しつつプライミングを行うことができると共に、流体ライン中の薬液の外部空間への飛散も防止され得る。
【0016】
本発明の第4の態様は、前記第
1〜第3の何れかの態様に記載のライン接続コネクタにおいて、前記針先キャップを前記針管から軸方向外方に離れた初期位置と、該針先キャップを該針管側へ移動させて該針管を前記弾性カバーに貫通させた移動位置とに、選択的に位置決めするキャップ位置決め機構が設けられているものである。
【0017】
本態様に係るライン接続コネクタでは、針先キャップの位置を選択的に位置決めすることで、針管が弾性カバーで覆われた状態と、針管が弾性カバーを貫通して内部空所に突出された状態とを、選択的に且つ安定して発現させることができる。それ故、例えば針管を内部空所に突出させた状態下、プライミングの操作を一層安定して行うことも可能になる。
【0018】
本発明の第5の態様は、前記第
1〜第4の何れかの態様に記載のライン接続コネクタにおいて、前記針ハブから前記針管の先端側に向かって延びる
前記支持部材が、該針ハブに対して取外し可能に組み付けられており、該支持部材に対して前記針先キャップが該針管に向かって軸方向で移動可能に装着されているものである。
【0019】
本態様に係るライン接続コネクタでは、支持部材を介して、針先キャップを針ハブに取り付けることにより、針先キャップを針管に対して軸方向に移動可能な状態で且つ安定して組み付けることが可能になる。また、支持部材は針ハブに対して着脱可能とされていることから、例えばプライミングの完了後に針先キャップを支持部材と共に針ハブから取り外すことで、プライミングから穿通に至る操作を容易とすることも可能である。
【0020】
本発明の第6の態様は、前記第5の態様に記載のライン接続コネクタにおいて、前記支持部材に対して前記針先キャップが移動方向で位置決めされることにより、第4の態様に記載の前記キャップ位置決め機構が構成されているものである。
【0021】
本態様に係るライン接続コネクタでは、針ハブや針管などの基本構造を複雑にする必要なく、支持部材と針先キャップとによってキャップ位置決め機構を構成することが可能になる。これにより、例えば針ハブや針管として従来と同様な構造のものを採用しつつ、キャップ位置決め機構を備えた針先キャップ付きのライン接続コネクタを容易に提供することも可能になる。
【0022】
本発明の第7の態様は、前記第
1〜第6の何れかの態様に記載のライン接続コネクタにおいて、前記支持部材の外周が前記針保護フードで覆われていると共に、該支持部材を外部から操作するための操作用窓が該針保護フードに設けられているものである。
【0023】
本態様に係るライン接続コネクタでは、支持部材を針保護フードの外部から操作用窓を通じて直接に操作することができるから、例えば支持部材を針ハブに装着等する際に、針先キャップを操作することで意図せずに針先キャップが移動してしまう不具合も回避され得る。
【発明の効果】
【0024】
本発明に従う構造とされた医療用ラインの接続コネクタでは、針管の先端部分が弾性カバーで覆われて無菌状態に維持されたままの状態で、医療用ラインの弾性シールに対して弾性カバーを重ね合わせ、それら弾性カバーと弾性シールに対して針管を穿通させることにより、針管の先端部分を外気に晒すことなく、流体ラインへ連通させることが可能になる。従って、流体ラインへの菌体の混入を効果的に防止しつつ、流体ラインを連通させる操作が容易に実現可能となるのである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
まず、
図1,2には、本発明の1実施形態としての医療用のライン接続コネクタ10が示されている。このライン接続コネクタ10は、一方の端部(
図1中の右端)がカテーテル等の医療用チューブを介して輸液バッグ等に連通されると共に、他方の端部(
図1中の左端)が、弾性シールが設けられた別のポート等を介して、患者へと至る流体ラインに連通される。これにより、輸液バッグ等から患者へと至る流体ラインが確保されて、患者に輸液が供給される。なお、以下の説明において、先端側とは
図1中の左方をいい、基端側とは
図1中の右方をいう。
【0028】
より詳細には、ライン接続コネクタ10は円筒形状を有する針ハブ12を含んで構成されている。そして、この針ハブ12の貫通孔14の一方(
図1中の左方)の開口部に対して針管16の基端側が挿入されることにより、針ハブ12に対して針管16が突設されている。一方、貫通孔14の他方(
図1中の右方)には、流体ラインに接続するためのポート部18が形成されている。このポート部18に対してカテーテル等の医療用チューブ20の一方の端部が接続されるようになっており、医療用チューブ20の他方の端部が輸液バッグ等に接続される。なお、針ハブ12は、例えば塩化ビニル等の硬質の合成樹脂などで形成される一方、針管16は、例えばステンレス鋼等の金属などで形成される。
【0029】
また、針ハブ12の軸方向中間部分には、径方向外方に突出する係合突部22が、周方向の全周に延びる円環状に形成されている。更に、針ハブ12の先端には、小径の筒状部23が一体形成されており、この筒状部23の開口端において、外周面に突出する返しが設けられている。また一方、ポート部18が形成された針ハブ12の基端側の外径寸法は、先端側に比べて小径とされて、医療用チューブ20が外挿接続されるようになっている。
【0030】
さらに、針管16の外周には、針管16を覆う針保護フード24が設けられている。本実施形態では、この針保護フード24は略円筒形状とされており、針ハブ12に対して外挿されて、針ハブ12よりも先端側に延び出している。詳細には、針保護フード24は、軸方向中間部分に段付部26を備えており、段付部26より基端側が小径筒部28とされている一方、段付部26より先端側が大径筒部30とされている。
【0031】
小径筒部28は、針ハブ12の基端側の外径よりも僅かに大きな内径寸法とされている。そして、小径筒部28が針ハブ12の基端側に対して外挿されることにより、針保護フード24が針ハブ12に対して回転可能に組み付けられている。なお、小径筒部28の内径寸法は係合突部22の外径より小さくされており、小径筒部28の先端面である段差面32が係合突部22に当接することで、針保護フード24の先端側への抜け出しが防止されている。また、針保護フード24における針ハブ12の基端側への抜け出しは、針ハブ12の基端側に接続された医療用チューブ20へ小径筒部28の基端面が当接することで防止されるようになっている。
【0032】
また一方、大径筒部30は、針ハブ12の先端部分とそこから突出する針管16とを軸方向の全長に亘って覆う状態で、それら針ハブ12および針管16の外周に離間して配されている。また、大径筒部30の軸方向中間部分には、周上で複数(本実施形態では径方向に対向して一対)の操作用窓34,34が形成されている。
【0033】
さらに、針保護フード24における操作用窓34よりも先端側は、基端側に比して内径寸法が大きくされて薄肉の先端筒部36とされている。そして、この先端筒部36には、内周面に突出する一対の係止突部40,40が形成されていると共に、かかる係止突部40,40を周方向に外れた位置に一対の切欠き42,42が形成されて、軸方向先端側に開放されている。
【0034】
なお、針保護フード24には、その大径筒部30の基端側外周面において、リブ44や窪み46(
図11参照)が形成されて周方向に凹凸が付されており、手指による針保護フード24の把持や回転操作が容易となっている。また、大径筒部30の先端側外周面には、係止突部40,40の位置や操作方向を示す指標48,48および矢印50,50が付されている。
【0035】
更にまた、針ハブ12から突出した針管16には、ゴムやエラストマー等の弾性材からなる弾性カバー52が被せられている。この弾性カバー52は、先端が閉じられた管形状とされており、基端の開口部において針管16の先端から被せられることにより、針管16に外挿状態で装着されている。なお、弾性カバー52の内面は針管16に密着していても良いが、弾性変形が容易に許容されるように、針管16の外径よりも弾性カバー52の内径が大きくされて僅かな隙間をもって外挿されている。
【0036】
また、弾性カバー52の基端側開口部54は、弾性的に拡開変形されて、針ハブ12の先端筒状部23に外嵌されており、先端筒状部23の外周面に設けられた返しで離脱が阻止されている。これにより、針管16の針ハブ12からの突出部分全体が、弾性カバー52により、外部空間から遮断された気密状態で覆われている。
【0037】
このような構造とされたライン接続コネクタ10の使用に際しては、一般に、流体ラインへの接続に先立って、針管16中の空気を抜き、針管16の先端まで輸液等を満たすプライミングが行われる。そこで、本実施形態では、
図3,4に示されているプライミング用キャップ56が装着されている。
【0038】
かかるプライミング用キャップ56は、それぞれ略円筒形状とされた針先キャップ58と支持部材60を軸方向で連結することにより構成されており、支持部材60の先端側(
図3中の左方)が、針先キャップ58の基端側(
図3中の右方)に挿し入れられて相互に組み合わされている。
【0039】
針先キャップ58には、軸方向中間部分に外テーパ部62が設けられており、この外テーパ部62よりも基端側が大径筒部64とされている一方、外テーパ部62よりも先端側が小径筒部66とされている。また、大径筒部64の内部には、外テーパ部62の内周面から突出して軸方向に延びる押込筒部70が形成されている。この押込筒部70は、大径筒部64の軸方向中間部分までストレートに延びており、押込筒部70の外周面と大径筒部64との径方向間に環状の摺動溝72が形成されている。なお、針先キャップ58の内部には、押込筒部70の内周面から小径筒部66の内周面につながる内孔75が形成されている。そして、かかる内孔75により、後述するプライミング時に針管16の先端部分が露出される内部空所76が構成されるようになっている。
【0040】
さらに、大径筒部64の先端側の周壁には、径方向で対向する位置に一対の係止孔78,78が形成されている。そして、この係止孔78,78には、支持部材60に形成された後述の第1の係止突起86および第2の係止突起92が内周面から係止され得るようになっている。
【0041】
また一方、針先キャップ58の小径筒部66の先端側には、内孔75の開口部分に対してフィルタ80が装着されている。そして、内孔75で構成される内部空所76が、フィルタ80を介して、外部に連通されるようになっている。このフィルタ80は空気の透過を許容する一方、菌や粒子等の透過を阻止するものであり、要求されるフィルタ特性に応じて、公知の各種のフィルタ材が適切に選択されて採用される。なお、小径筒部66の先端外周面には、フランジ状の外周突部81が形成されており、手指等による取り扱いが容易となっている。
【0042】
一方、支持部材60の先端側の周壁には、一対の第1の係合孔82,82が形成されていると共に、各第1の係合孔82内において、その先端周縁部から基端側に向って舌片状に突出する第1の弾性突片84が形成されている。また、かかる第1の弾性突片84の突出先端部分の外周面には第1の係止突起86が形成されている。なお、第1の係止突起86は、その先端側および基端側が何れもなだらかな傾斜面とされている。
【0043】
さらに、支持部材60の周壁には、第1の係合孔82,82よりも基端側に位置して、一対の第2の係合孔88,88が形成されている。かかる一対の第2の係合孔88,88は、支持部材60の周上で第1の係合孔82,82と同じ位置に形成されており、軸方向で所定距離を隔てて並設されている。また、各第2の係合孔88には、第1の係合孔82と同様に、第2の係合孔88内に突出する第2の弾性突片90が形成されていると共に、かかる第2の弾性突片90の突出先端部分の外周面に第2の係止突起92が形成されている。なお、第2の係止突起92は、その先端側はなだらかな傾斜面とされているが、基端側は支持部材60の外周面に対して略直角な立上面とされている。
【0044】
また、支持部材60における第2の係合孔88,88よりも基端側には、外周面上に突出するフランジ状の突部94が一体形成されている。更にまた、支持部材60の基端側開口部の内周面には、軸方向に延びるリブ96が周上で複数箇所に形成されており、支持部材60の基端側開口部における針ハブ12に対する外嵌固定力が適切に調節されている。
【0045】
更にまた、支持部材60の先端部分の外径は、針先キャップ58の基端部の内径よりも僅かに小さくされており、支持部材60の先端部分が、針先キャップ58の基端側開口部から摺動溝72内に挿し入れられることにより、支持部材60と針先キャップ58が軸方向に組み合わされている。そして、
針先キャップ58の係止孔78,78内に
支持部材60の第1の係止突起86,86が入り込んで係止されることにより、針先キャップ58と支持部材60が相互に位置決めされて組み付けられている。かかる状態下、針先キャップ58と支持部材60は非固定的に係止されており、係止孔78,78と第1の係止突起86,86との係止が解除されることにより、支持部材60の先端部分が摺動溝72内を軸方向に移動可能とされている。
【0046】
そして、このような構造とされたプライミング用キャップ56は、
図5,6に示されているように、針保護フード24の開口部から差し入れられて、針管16および弾性カバー52に外挿された状態で、支持部材60の基端側開口部が針ハブ12の先端部分に外嵌されることによって、ライン接続コネクタ10に組み付けられている。なお、針ハブ12と支持部材60は非接着で嵌着されており、後述するように、支持部材60は針ハブ12から取り外し可能とされている。
【0047】
ここにおいて、針保護フード24で覆われた支持部材60に対して、針保護フード24の操作用窓34を通じて、外部から直接にアクセスすることが可能となっている。それ故、例えば操作用窓34を通じて差し入れた冶具等を用いて、支持部材60の突部94に外力を加えることで、支持部材60を針ハブ12に対して外嵌固定することができる。これにより、プライミング用キャップ56の装着に際して、針先キャップ58を押すことで意図せずに針先キャップ58が支持部材60の基端側へ移動してしまう不具合が防止される。
【0048】
また、この組付状態では、針先キャップ58の係止孔78,78に対して支持部材60の第1の係止突起86,86が入り込んでいると共に、針先キャップ58における押込筒部70は、針管16を覆う弾性カバー52よりも軸方向外方、即ち先端側に離れて位置している。かかる状態がプライミングにおける針先キャップ58の初期位置とされて、針管16の先端は弾性カバー52により覆われたままである。
【0049】
上述の如き構造とされた本実施形態のライン接続コネクタ10は、例えば滅菌状態でパッキングされて医療現場に供給される。そして、医療現場で使用する際に、針先キャップ58を支持部材60に対して針管16側へ押し込む操作を行う。これにより、
図7に示されているように、第1の弾性突片84,84が内周側へ弾性変形させられて、係止孔78,78と第1の係止突起86,86との係止が解除される。更に、支持部材60の先端部分が針先キャップ58の摺動溝72内に入り込むように、針先キャップ58が針管側16へ移動させられる。
【0050】
その結果、針先キャップ58の押込筒部70がライン接続コネクタ10の弾性カバー52を基端側に押し込むこととなり、針管16の先端部分が弾性カバー52を貫通して露呈し、針先キャップ58の内部空所76に位置することとなる。この状態で、輸液バッグ等からの流体ラインとしての医療用チューブ20上に設置されたクランプ等を開放することにより、輸液バッグ等から針ハブ12のポート部18を介して針管16の先端まで輸液が充填される。その際、針管16の内部に存在していた空気が針先キャップ58の内孔75およびフィルタ80を通過して外部空間へと排出される。従って、このような操作により、針管16を外部空間に露呈させることなくプライミングを行うことが可能になる。その後、再び輸液バッグ等からの流体ラインにおけるクランプ等を閉止してプライミングを完了することができる。
【0051】
なお、この状態では、係止孔78,78と第1の係止突起86,86との係止は解除されており、係止孔78,78内に第2の係止突起92,92が入り込んで係止されることにより、針先キャップ58と支持部材60が相互の差込状態で位置決めされている。そして、かかる状態における針先キャップ58の位置が、プライミングにおける針先キャップ58の移動位置として、安定して保持されるようになっている。
【0052】
このことから明らかなように、本実施形態のライン接続コネクタ10に装着されるプライミング用キャップ56では、針先キャップ58の位置を初期位置と移動位置に選択的に位置決めするキャップ位置決め機構が、係止孔78と第1及び第2の係止突起86,92により構成されている。
【0053】
なお、上述のプライミングで針管16の先端まで輸液を充填させた後は、ライン接続コネクタ10からプライミング用キャップ56を軸方向外方に引き抜く。これにより、押込筒部70による弾性カバー52への押込力が解除されて、弾性カバー52は前述の
図1に示される如き針管16を覆う状態へ直ちに復元する。なお、プライミング用キャップ56の引抜きに際しては、針先キャップ58の係止孔78に対して第2の係止突起92の立上面が係止されて、支持部材60に対する針先キャップ58の引抜側への移動が阻止されていることから、針先キャップ58の先端を把持して引き抜くだけで、プライミング用キャップ56の全体を針ハブ12から容易に取り外すことができる。
【0054】
上述の如き操作でプライミングが終了したライン接続コネクタ10には、例えば
図8,9に示されている如きポート98を通じて、別の流体ラインへの接続が行われる。このポート98は、例えば患者側からの流体ラインの末端に設けられており、ライン接続コネクタ10とポート98を接続することにより、輸液バッグ等から患者へと至る流体ラインが確保される。なお、このポート98は単なる例示であって、ライン接続コネクタ10に接続されるポート等を限定するものではない。
【0055】
このポート98は、ハウジング100として、中心軸上に貫通孔102を有する小径の筒状部104と大径の周壁部106を備えており、周壁部106側の端部は雌ねじ110を有するルアーとされている。また、筒状部104側の端部は、貫通孔102の内径が大きくされて収容部112が形成され、この収容部112に弾性シール114が組み付けられて開口が封止されている。更に、筒状部104側の開口部には、カバー118が嵌着固定されており、このカバー118の針挿通孔120を通じて、弾性シール114の外面が外部に露呈されている。なお、カバー118は、針挿通孔120が設けられた天面部122の外周端縁部に対して筒壁部124が一体形成された略キャップ形状とされており、針挿通孔120の開口周縁部は、穿刺される針先を案内するテーパ状の中央案内面126とされている。
【0056】
また、筒壁部124の外周面には、一対の案内溝128,128が径方向で対向して形成されている。かかる案内溝128は、筒壁部124の軸方向全長に延びる軸方向案内溝130と、軸方向案内溝130の先端から筒壁部
124の端縁部に沿って周方向に延びる周方向案内溝132と、周方向案内溝132の端部から筒壁部
124の軸方向に所定長さで延びる係止凹所134とを、含んで構成されている。なお、周方向案内溝132の側壁部は、係止凹所134と軸方向案内溝130とを仕切るように周方向案内溝132内に突出する解除防止突起136とされている。
【0057】
そして、
図10〜12に示されているように、上述の如き患者へと至る流体ラインの末端に設けられたポート98の弾性シール114に対して、プライミングの完了したライン接続コネクタ10の針管16が穿通されることにより、輸液バッグ等から医療用チューブ20、針ハブ12、針管16、ポート98のそれぞれの内孔を経由して患者へと至る流体ライン138が連通状態とされる。
【0058】
ここにおいて、ライン接続コネクタ10とポート98を接続する際には、先ず、ポート98の弾性シール114とライン接続コネクタ10の針管66の針先とを対峙させて、針保護フード24の係止突部40,40をポート98の軸方向案内溝130,130に対して軸方向に差し入れる。そして、係止突部40,40と軸方向案内溝130,130との案内作用に基づいて、ライン接続コネクタ10をポート98に更に接近させて押し込むことにより、弾性カバー52の先端面が弾性シール114の表面に重ね合わされる。
【0059】
ライン接続コネクタ10をポート98へ押し込み続けると、針管16の針先が弾性カバー52を貫通し、針挿通孔120から弾性シール114に穿通されることとなり、その結果、針管16の針先がハウジング100の内部空間に露呈されて連通される。なお、かかるライン接続コネクタ10のポート98への押込端は、針保護フード24の先端筒部36とハウジング100の周壁部106との当接によって規定され得る。
【0060】
また、ライン接続コネクタ10をポート98へ押し込んでから、針保護フード24をポート98に対して回動させて、解除防止突起136を周方向に乗り越えさせた係止突部40を係止凹所134に差し入れ、弾性シール114への押付反力で係止突部40を係止凹所134内に止まらせる。これにより、弾性シール114からの針管16の抜け出しが防止されて、ライン接続コネクタ10とポート98の接続状態が安定して保持されることとなる。
【0061】
なお、上記の如きライン接続コネクタ10のポート98への押込みによる流体ラインの連通操作は、
図11等に示されている矢印50,50の向きにライン接続コネクタ10の針保護フード24をポート98に対して相対的に操作することによって容易に実現可能とされている。
【0062】
また、ポート98からのライン接続コネクタ10の取外しは、上記と逆の操作を行うことにより実施される。そして、ポート98からライン接続コネクタ10を取り外すことにより、即ち、弾性シール114から針管16を抜去することにより、針管16の穿刺孔は弾性シール114の弾性復元作用により封止されて、患者側からの流体ラインは気密に閉止される。また、ライン接続コネクタ10の針管16の先端は、弾性カバー52の弾性復元作用により、直ちに
図1の如き状態に覆われて、針管16からの輸液等の漏洩や針管16の誤穿刺が防止され得る。
【0063】
上記の如き構造とされたライン接続コネクタ10では、流体ライン138の連通操作を略無菌状態で行うことが可能となる。即ち、針管16の弾性シール114への穿刺前の状態では針管16が弾性カバー52で覆われているため、大気中の菌体が針管16に付着したり、施術者が誤って接触して針管16に菌体が付着することが防止され得る。これにより、略無菌状態で針管16を弾性シール114に穿刺できることから、流体ライン138に菌体が混入することが回避され得る。
【0064】
また、本実施形態のライン接続コネクタ10では、流体ライン138の連通に先立って実施されるプライミング操作の前後においても、針管16が弾性カバー52で覆われるため、流体ライン138への菌体の混入が更に効果的に防止され得る。
【0065】
さらに、本実施形態では、プライミングの操作に際しても、プライミング用キャップ56で針管16の外部空間への露出が可及的に防止されて、針管16への菌体の付着が回避され得る。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、必要に応じて針保護フード24と針ハブ12には接着や溶着等が施されて固着されていても良い。
【0067】
また、前記実施形態では、弾性カバー52が針管16の針ハブ12からの突出部分の全体を覆うようにされていたが、その必要はない。即ち、針管16において、少なくとも弾性シール114に穿刺された際に弾性シールを貫通してポートの内部に位置する部分が、弾性カバー52で覆われていればよい。例えば、針管16の突出先端部分を覆う弾性カバーの基端側開口部分を、針ハブ12まで至らない長さとして、針管16の外周面に嵌着させて装着することも可能である。
【0068】
更にまた、プライミング用キャップは、ライン接続コネクタ10へ予め組み付けた状態で滅菌処理して医療現場へ提供する他、ライン接続コネクタ10と別体に提供して使用に際して組み付けるようにしても良い。なお、プライミング用キャップの具体的構造やライン接続コネクタ10への取付構造は限定されるものでなく、例えば、支持部材60を針保護フードに対して取外し可能に装着することも可能であり、また、支持部材60を設けることなく、針先キャップ58を針ハブや針保護フードに対して軸方向へ移動可能に且つ取外し可能に取り付けるようにしても良い。
【0069】
さらに、患者側からの流体ラインの末端に設けられる弾性シールを備えたコネクタ等は、前記実施形態の如きポートに限定されない。