(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明をその好ましい形態に基づき説明する。本発明者は、上述した課題を解決するために種々検討した結果、特定の原料粉を用いた生地を高圧押出して製造した生パスタ類を具材とすることにより、該生パスタ類をソースと共に長期間保存しても軟化しないことを見出し、本発明を完成させた。詳細には、デュラム小麦粉に練り水を加えて混捏して生地を製造し、この生地を100〜200kgf/cm
2の圧力で高圧押出して生パスタ類を製造し、該生パスタ類を茹で調理した後、これをソースと共に凍結して冷凍グラタンを製造すると、長期間冷蔵保存後にこれを解凍して喫食しても、茹で立ての生パスタのようなコシと弾力を備えており、ソースとの調和がよく、極めて良好な食感が発現する。
【0008】
本発明の冷凍グラタンの製造方法に用いる具材としては、グラタンに通常に用いられるパスタ類、例えばマカロニやペンネ等が挙げられる。これらのパスタ類に加えて、グラタンに通常に用いられる具材である肉類や野菜類等を加えてもよい。
【0009】
本発明の冷凍グラタンの製造方法に用いるパスタ類は、特定の原料粉を特定の方法で製造して得られる点に特徴の一つを有する。原料粉としては、デュラム小麦粉を主体とするものを用いる。デュラム小麦粉は、デュラム種の小麦の胚乳部を粉砕したものであり、目開き210μmの篩に残留するセモリナ粉よりも微粒な粉である。デュラム小麦粉の粒子径は、平均粒子径として300μm以下が好ましく、50μm〜300μmが更に好ましく、50μm〜200μmが一層好ましい。平均粒子径を300μm以下にすることで、セモリナ粉の割合を低くすることができる。これとは対照的に、セモリナ粉を用いて、本発明で用いるパスタ類を製造すると、セモリナ粉は粒子が粗いため、製造時にパスタ類をソースと共に冷凍する際に、ソースの水分がより多くパスタ中に移行することになる結果、食感が悪くなる。本明細書におけるデュラム小麦粉の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法、例えば、マイクロトラックMT3000II(日機装株式会社)により測定したときの、体積の積算値50%での値をいう。
【0010】
本発明の冷凍グラタンの製造方法に用いるパスタ類の生地に、原料のデュラム小麦粉に加えて、植物性蛋白質を配合すると、コシと弾力のある食感が向上するため好ましい。植物性蛋白質としては、小麦に含まれるグルテン(グルテニン及びグリアジン)、タカキビに含まれるカフィリン、トウモロコシに含まれるゼイン等が挙げられる。これらのうち、グルテンを用いることが特に好ましい。植物性蛋白質の配合量は、デュラム小麦粉100質量部に対して好ましくは2質量部〜6質量部であり、更に好ましくは4質量部〜6質量部である。配合量を2質量部以上にすることで、パスタ類の食感向上が知覚されやすくなる。一方。配合量を8質量部以下にすることで、パスタ類が硬くなりすぎることを効果的に防止できる。
【0011】
パスタ類の生地の原料には、デュラム小麦粉及び植物性蛋白質に加えて、パスタ類の製造に通常用いられるその他の原料、例えば、デュラム小麦粉以外の小麦粉、デュラムセモリナ粉、澱粉類、糖類、卵、食塩、油脂、乳化剤、増粘剤等を配合することができる。これらその他の原料の配合量は、デュラム小麦粉100質量部に対して0〜30質量部であり得る。
【0012】
本発明においては、前記生地を用いて生パスタ類を製造する。詳細には、前記原料に水を加えて混捏して生地とし、これを直接に高圧で押出して生パスタ類を製造する。「直接に」とは、混捏して得られた生地に他の操作を施すことなく、高圧押出しを行う趣旨である。他の操作には、例えば低圧(100kgf/cm
2未満)での押出し操作等が含まれる。生地の製造に使用される練り水としては、水、食塩水及びかん水など、通常の製麺に用いられるいずれの水も使用することができる。練り水の添加量は、得られた生地に後述のような高い押出し圧力が加わることを考慮すると、粉原料100質量部に対して15質量部〜35質量部であることが好ましく、18質量部〜35質量部であることがより好ましい。
【0013】
本発明においては、上述の生地を高い圧力下で直接に押出しすることによって、生パスタ類を得る。詳細には、本発明においては、前記生地を、好ましくは100kgf/cm
2〜200kgf/cm
2、更に好ましくは120〜160kgf/cm
2という高い圧力で直接に押出して、生パスタ類を製造する。従来、この範囲の圧力は乾燥パスタ類の製造に用いられていたが、生パスタ類の製造に際して生地にこのような高圧を直接に加えて押出製造することは行われていなかった。この点において、本発明の製造方法は際だった特徴を有する。押出の際の減圧度は好ましくは−200mmHg〜真空、更に好ましくは−600mmHg〜真空であり得る。
【0014】
高圧押出は、例えばシリンダを備え、該シリンダ内にスクリューが配置され、かつシリンダの一端にダイスが取り付けられている成形機(パスタ製造機)を用いて行うことができる。このような構造の成形機を用い、シリンダ内でスクリューをその軸周りに回転させた状態下に、シリンダ内に生地を供給する。供給された生地は、シリンダの内壁とスクリューとの間で高圧の圧縮を受ける。シリンダ内での生地の圧力は、成形機に取り付けられている圧力計によって計測することができる。シリンダ内の生地は摩擦によって発熱するので、シリンダを冷却してシリンダ内の生地を一定温度に保つことが品質の点から好ましい。
【0015】
スクリューの回転に伴いシリンダ内の生地は練り出されて前進し、シリンダの一端に取り付けられたダイスの孔から連続的に押し出される。ダイスの孔の形状を種々異ならせることで、様々な形状の生パスタ類を製造することができる。なお、本発明の生パスタの製造過程においては、原料を混練して得られた生地を生パスタとしては高圧で押出製麺すればよいので、製麺工程は1回でよい。本発明においては、製麺後の生地を再度混練したり、製麺後の生地を再度製麺にかけたりするなどの2回以上の混練工程や製麺工程は必要ない。
【0016】
本発明において、生パスタ類の形状は特に限定されず、押出しによって製造することができ、通常グラタンに用いられる形状を採用できる。例えば、マカロニ、リガトーニ、フジッリやペンネ等のショートパスタ形状を挙げることができる。生パスタ類の高圧押出製造においては、該生パスタ類の肉厚が1.0mm〜1.8mm、特に1.2〜1.6mmとなるように押出製造することが好ましい。このような厚みとなるように生パスタ類を製造することで、ソースと共に保存した際に食感が大きく低下することを効果的に防止できる。ここでいう肉厚とは、中実のパスタの場合は、直径(断面が円形の場合)又は厚み(断面が扁平の場合)のことであり、管状のパスタの場合には肉厚のことである。また、マカロニのような管状のショートパスタ形状の場合、管状断面の直径は4mm〜10mmが好ましく、6mm〜10mmが更に好ましい。
【0017】
以上の方法で得られた生パスタ類を、特別の乾燥等の工程を経ることなく、そのまま茹で調理する。つまり生パスタ類を直接茹で調理する。茹で調理は、生パスタの通常の茹で方法を採用すればよく、一般的には沸騰水中、2〜8分間茹で調理する。好ましくは、本発明で用いるパスタ類は、茹で歩留まりが好ましくは190%〜250%程度、より好ましくは210%〜220%程度になるように茹で調理すると、茹で調理後のパスタ類をソースと共に保管した際に食感が大きく低下することを効果的に防止できる。茹で調理したパスタ類は、必要に応じて湯切、冷却した後、ソースと共に凍結処理に付される。別法として、本発明で用いるパスタ類は、ソースによって茹で調理されてもよい。上述した高圧押出によって製造されたパスタ類は、ソースやソース中の水分を過剰に吸って軟化しにくいため、ソースを用いて茹で調理することで、簡便に調理を行うことが可能である。前述したパスタ類の茹で歩留まりや、後述するパスタとソースの量関係を適切に調整する関係からは、パスタ類はソースと別途茹で調理することが好ましい。
【0018】
茹で調理したパスタ類とソースとの分量は、通常グラタンで適用される分量を採用できる。例えば茹であげたパスタ類100質量部に対して、200質量部〜300質量部程度の分量のソースが用いられる。
【0019】
茹で調理したパスタ類は、ソースと共に凍結される。必要に応じて凍結に先立ち焼成が行われる。焼成は、温度180℃〜250℃、特に200℃〜230℃で行うことが好ましい。焼成時間は、この範囲の焼成温度において5分〜20分、特に7分〜15分であることが好ましい。焼成には、例えばオーブンを用いることができる。
【0020】
凍結処理は、冷凍グラタン類に対して通常行われる凍結処理を採用することができる。例えば、前記の茹で調理したパスタ類を、必要に応じて予備冷却を行い、所定の分量、例えば、一人分として50g〜160g取り分け、トレイ等に盛り付けた後、ソースを充填し、焼成して表面に焦げ目を付けた後、凍結処理に付すのが好ましい。又は、茹で調理したパスタ類を、ソースと混合した後、トレイ等に盛り付けてもよい。凍結処理は急速冷凍及び緩慢冷凍のいずれも採用できる。これらのうち急速冷凍を採用することが好ましい。一旦急速冷凍で凍結させた後は、通常の冷凍保存条件で保存すればよい。
【0021】
茹で調理したパスタ類と共に凍結されるソースとしては、通常のグラタン用ソースのいずれを用いてもよい。例えば、クリームソース、カルボナーラソース等のホワイト系ソース、ミートソース、ナポリタンソース、アラビアータソース等のトマト系ソース、ブラウン系ソース等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
冷凍保存した本発明のグラタンを喫食する際には、加熱処理することが好ましい。加熱処理としては、オーブン、電子レンジ、スチームオーブン、蒸煮等が挙げられる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「部」は「質量部」を意味する。
【0024】
〔参考例〕
デュラム小麦の種子胚乳部を粉砕後、篩い分けて、平均粒子径が140μmのデュラム小麦粉を製造した。
【0025】
〔実施例1〜5及び比較例1〜2〕
参考例のデュラム小麦粉100部に対して水25部を混合し、混練して生地を調製した。該生地を、マカロニ用のダイスを取り付けたパスタ製造機を用いて、−600mmHgの減圧条件下、それぞれ90kgf/cm
2、100kgf/cm
2、120kgf/cm
2、140kgf/cm
2、160kgf/cm
2、200kgf/cm
2及び210kgf/cm
2の圧力条件で押出し、7種類の生マカロニ(直径8mm、肉厚1.2mm)を得た。
得られた各生マカロニを、歩留まり220%になるように熱湯で5分間茹で、次いで水冷して茹でマカロニを製造した。
該茹でマカロニ65gをそれぞれ、防水加工した紙トレイ(140mm径×深さ5cm)に取り分け、更に市販のレトルトグラタンソース(日清フーズ製)150g(茹でマカロニ100部に対して230部)をのせた。このグラタンをオーブンにて200℃で1分間焼成し、調理済みグラタンを製造した。これらを−35℃で急速凍結し、実施例1〜5及び比較例1〜2の冷凍調理済みグラタンを製造した。
【0026】
〔試験例1〕
実施例1〜5及び比較例1〜2の冷凍調理済みグラタンを、アルミ製の袋に包装し、−18℃で保存した。1週間後、グラタンを袋から取り出し、電子レンジ(600W)で加熱解凍した。加熱時間は6分間とした。そして、解凍後のグラタンの外観を評価した。また、グラタンからマカロニを1個取り出し、ソースを除いてマカロニの食感を評価した。更にグラタンの食感を評価した。
比較例3として、市販の乾燥マカロニ(日清フーズ製;直径6mm、肉厚1mm)を歩留まり220%になるように熱湯で茹でたものを用いて、実施例1〜5及び比較例1〜2と同様にして製造した冷凍調理済みグラタンを同じように評価した。
評価結果を以下の表1に示す。評価は、10名のパネルにより表2の評価基準で行い、平均点を求めた。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
〔製造例1〜6〕
茹で歩留まりを表3のように変更して茹で調理した以外は、実施例3と同様の手順で(押出製麺の圧力140kgf/cm
2)、製造例1〜6の冷凍調理済みグラタンを製造した。
製造例1〜6の冷凍調理済みグラタンを用いて、試験例1と同様の手順で解凍後のマカロニの食感並びにグラタンの外観及び食感を評価した。結果を表3に示す。なお、表3には実施例3の結果を再掲する。
【0030】
【表3】
【0031】
〔製造例7〜12〕
マカロニの粉原料として、デュラム小麦粉100質量部に対してグルテンを表4の量で配合したものを用いた以外は、実施例3と同様の手順で(押出製麺の圧力140kgf/cm
2)、製造例7〜12の冷凍調理済みグラタンを製造した。
製造例7〜12の冷凍調理済みグラタンを用いて、試験例1と同様の手順で解凍後のマカロニの食感、グラタンの外観と食感を評価した。結果を表4に示す。なお、表4には実施例3の結果を再掲する。
【0032】
【表4】
【0033】
〔製造例13〜17〕
押出したマカロニの直径を表5のように変更した以外は(肉厚1.2mm)、実施例3と同様の手順で(押出製麺の圧力140kgf/cm
2)、製造例13〜17の冷凍調理済みグラタンを製造した。
製造例13〜17の冷凍調理済みグラタンを用いて、試験例1と同様の手順で解凍後のマカロニの食感並びにグラタンの外観及び食感を評価した。結果を表5に示す。なお、表5には実施例3の結果を再掲する。
【0034】
【表5】
【0035】
〔製造例18〜23〕
押出したマカロニの肉厚を表6のように変更した以外は(直径8mm)、実施例3と同様の手順で(押出製麺の圧力140kgf/cm
2)、製造例18〜23の冷凍調理済みグラタンを製造した。
製造例18〜23の冷凍調理済みグラタンを用いて、試験例1と同様の手順で解凍後のマカロニの食感、グラタンの外観と食感を評価した。結果を表6に示す。なお、表6には実施例3の結果を再掲する。
【0036】
【表6】
【0037】
〔製造例24〜28〕
茹でマカロニにかけるソース量を表7のように変更した以外は、実施例3と同様の手順で(押出製麺の圧力140kgf/cm
2)、製造例24〜28の冷凍調理済みグラタンを製造した。
製造例24〜28の冷凍調理済みグラタンを用いて、試験例1と同様の手順で解凍後のマカロニの食感、グラタンの外観と食感を評価した。結果を表7に示す。なお、表7には実施例3の結果を再掲する。
【0038】
【表7】