(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、溶媒和物および立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬。
変形性関節症、外傷性軟骨傷害、関節炎、疼痛、アロディニアおよび痛覚過敏からなる群より選択される、生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、溶媒和物および立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物を含むもののうちの1つを含む、医薬。
アルツハイマー病、ハンチントン病、ムコリピドーシス、癌、特に乳癌、接触性皮膚炎、遅発型過敏性反応、炎症、子宮内膜症、瘢痕、両性前立腺過形成、骨肉腫、くる病、例えば乾癬などの皮膚疾患、免疫学的疾患、自己免疫性疾患および免疫不全疾患からなる群より選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、請求項1〜7のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、溶媒和物および立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
変形性関節症は、世界中で最も広汎な関節疾患であり、変形性関節症の放射線医学的徴候は、65歳を超える人々の大多数において見出される。健康のシステムのためのこの主要な重要性にもかかわらず、変形性関節症の原因は現在まで不明であり、有効な予防手段はさらにまだ遠い目標である。関節の間隙の減少(関節軟骨の破壊により引き起こされる)は、肋軟骨下の骨および骨棘形成における変化と共に、疾患の放射線医学的特徴である。患者にとっては、疼痛(負荷依存的な疼痛および夜間安静時の疼痛)およびその後の機能障害が前面に来る。それはまた、対応する二次疾患により、患者を社会的孤立に追いやるものでもある。
【0003】
用語、変形性関節症とは、ドイツにおける非公式な定義によれば、その年齢にとって通常の範囲を超えた「関節の摩耗」を表す。原因は、過剰な負荷(例えば体重増加)、関節の位置異常、あるいはまた骨粗鬆症などの骨疾患に起因する骨変形などの、先天性または外傷性の原因であるものと考えられる。変形性関節症は、同様に、別の疾患、例えば関節の炎症(関節炎)の結果として起こり得る(二次性変形性関節症)か、または、過負荷により誘導される滲出(二次性炎症反応)に伴う(活性型変形性関節症(acitivated osteoarthritis))。英米の専門文献は、関節表面の破壊が、おそらくは主に負荷の効果に起因し得る変形性関節症(osteoarthrosis/osteoarthritis[OA])と、炎症成分に起因する関節の変形が前面に来る関節炎(関節リウマチ[RA])との間を、区別する。
【0004】
原則として、変形性関節症はまた、その原因に従って分類される。変形性関節症アルカプトン尿症は、先に存在するアルカプトン尿症の場合は、関節におけるホモゲンチジン酸の沈着の増加に基づく。血友病性変形性関節症の場合は、血友病の場合において定期的な関節内出血が起こる(血友病性関節症(haemophilic joint))。変形性関節症尿症(osteoarthritis uria)は、健康な軟骨に対する尿酸結晶(尿酸)の機械的影響により引き起こされる(W. Pschyrembelら:Klinisches Woerterbuch mit klinischen Syndromen and einem Anhang Nomina Anatomica[Clinical Dictionary with Clinical Syndromes and a Nomina Anatomica Annex].Verlag Walter de Gruyter & Co, 253版、1977年)。
【0005】
変形性関節症の古典的な原因は、関節の形成不全である。股関節の例を用いると、生理学的な股関節の位置の場合の最大の機械的ストレスを有する帯域は、形成不全の股関節の場合よりも著しく大きい領域を表すことが明らかとなる。しかし、関節に対して作用する力により引き起こされるストレスは、関節の形状に実質的に非依存的である。それらは、本質的に、主要なストレス帯域上に分布している。より大きな圧力は、したがって、より大きな帯域におけるものよりも、相対的に小さな帯域の場合において生じる。関節軟骨に対する生体力学的圧力は、したがって、形成不全の股関節の場合において、生理学的な股関節の位置の場合におけるものよりも大きい。この規則は、一般に、理想的な解剖学的形状とは異なる支持関節における関節の変化の発生の増大の原因であるものと考えられる。
【0006】
外傷の結果が若年における摩耗の原因である場合、外傷後変形性関節症という用語が用いられる。議論されている二次性変形性関節症のさらなる原因は、器質的、炎症性、代謝性、化学性(キノロン)、栄養性、ホルモン性、神経学的および遺伝学的理由である。しかし、ほとんどの場合においては、下される診断は、特発性の変形性関節症であり、これにより、医師は、因果関係のある疾患が見かけ上不在であると表現する(H. I. RoachおよびS. Tilley、Bone and Osteoarthritis、F. BronnerおよびM. C. Farach-Carson編、Verlag Springer、第4巻、2007年)。
【0007】
変形性関節症の基質的原因は、例えば、ギラーゼ阻害剤型の抗生物質(シプロフロキサシン、レボフロキサシンなどのフルオロキノロン)であり得る。これらの医薬は、血管形成が乏しい組織(関節硝子軟骨、腱組織)においてマグネシウムイオンの錯体化をもたらし、これは、結合組織に不可逆性の損傷を生じるという結果を有する。この損傷は、一般に、小児および若年の成長期において、より顕著である。腱障害および関節症は、このクラスの医薬の既知の副作用である。成人においては、これらの抗生物質は、独立した薬理学者およびリウマチ学者からの情報によれば、加速度的な関節硝子軟骨の生理学的変性をもたらす(M. Menschik et al., Antimicrob. Agents Chemother. 41, 1997, pp. 2562-2565; M. Egerbacher et al., Arch. Toxicol. 73, 2000, pp. 557-563; H. Chang et al., Scand. J. Infect. Dis. 28, 1996, pp. 641-643; A. Chaslerie et al.,Therapie 47, 1992, p. 80)。フェンプロクモンによる長期処置もまた、関節の内部構造のストレスの場合において、骨密度を増大することにより、変形性関節症に有利に働く。
【0008】
年齢以外には、変形性関節症についての既知のリスクファクターは、機械的な過負荷、(微小)外傷、保全機構の喪失により引き起こされる関節不安定化、および遺伝要因である。しかし、発症も、可能な介入も、完全には説明されていない(H. I. RoachおよびS. Tilley、Bone and Osteoarthritis、F. BronnerおよびM. C. Farach-Carson編、Verlag Springer、第4巻、2007年)。
【0009】
変形性関節症に冒された関節において、一酸化窒素の含有量が、いくつかの場合において増大する。類似の状況は、軟骨組織の高度な機械的刺激に起因して観察されたが(P. Das et al., Journal of Orthopaedic Research 15, 1997, pp. 87-93. A. J. Farrell et al. Annals of the Rheumatic Diseases 51, 1992, pp. 1219-1222; B. Fermor et al., Journal of Orthopaedic Research 19, 2001, pp. 729-737)、一方で、中程度の機械的刺激は、正の効果を有する傾向がある。機械力の作用は、したがって、必然的に、変形性関節症の進行に関与する(X. Liu et al., Biorheology 43, 2006, pp. 183-190)。
【0010】
原則として、変形性関節症治療は、2つの目的に従う:第1に、通常の負荷下における疼痛からの解放、および第2に関節における機械的制限または変化の予防。これらの目的は、純粋に対症的な治療アプローチなどの疼痛の処置により長期においては達成することができない。なぜならば、これは、疾患の進行を止めることができないからである。後者を達成すべき場合、軟骨の破壊を停止させなければならない。成人患者における関節軟骨は再生しないため、関節軟骨に対する点圧力の増大をもたらす関節の異形成または位置異常などの病因の除去が、加えて、著しく重要である。
【0011】
最後に、医薬を用いて、軟骨組織における変性プロセスを予防するかまたは停止させることが試みられる。
【0012】
関節軟骨が機能する状態のための、およびしたがってストレスに対するその耐性のための、必須の要因は、細胞外マトリックスであり、これは主にコラーゲン、プロテオグリカンおよび水からなる。細胞外マトリックスの変性に関与する酵素として、特にメタロプロテアーゼ、アグリカナーゼおよびカテプシン酵素が挙げられる。しかし、さらなる酵素は、原則としてまた、軟骨マトリックスを分解することができるもの、例えばプラスミン、カリクレイン、好中球エラスターゼ、トリプターゼおよびキマーゼである。
【0013】
カテプシンは、リソソームのプロテアーゼのパパインサブファミリーに属する。カテプシンは、通常のタンパク質分解ならびに標的タンパク質および組織の変換に、ならびにタンパク質分解カスケードの開始およびプロ酵素活性に関与する。さらに、それらはMHCクラスIIの発現に関与する(Baldwin (1993) Proc. Natl. Acad. Sci., 90: 6796-6800; Mixuochi (1994) Immunol. Lett., 43: 189-193)。しかし、異常なカテプシン発現は、重篤な疾患をもたらし得る。したがって、増大したカテプシン発現が、癌細胞において、例えば乳癌、肺癌、前立腺癌、神経膠芽腫および頭部頸部癌において検出されており、乳癌、肺癌、前立腺癌において、および脳腫瘍において、カテプシンが不十分な治療の成功に関与することが示されている(Kos et al. (1998) Oncol. Rep., 5: 1349-1361; Yan et al. (1998) Biol. Chem., 379: 113-123; Mort et al. ; (1997) Int. J. Biochem. Cell Biol., 29: 715-720; Friedrick et al. (1999) Eur. J Cancer, 35: 138-144)。さらに、異常なカテプシン発現は、見かけ上、例えば関節リウマチおよび変形性関節症などの炎症性および非炎症性疾患の発症に関与している(Keyszer (1995) Arthritis Rheum., 38: 976-984)。
【0014】
カテプシン活性の分子機構は、完全には説明されていない。一方、例えば、誘導されたカテプシン発現が、その血清が採取されたB細胞をアポトーシスから保護すること、およびカテプシンBのアンチセンスオリゴヌクレオチドによる細胞の処置がアポトーシスを誘導することが見出されている(Shibata et al. (1998) Biochem. Biophys. Res. Commun., 251: 199-20; Isahara et at. (1999) Neuroscience, 91: 233-249)。これらの報告は、カテプシンの抗アポトーシス性の役割を示唆する。しかし、それらは、カテプシンをアポトーシスのメディエーターとして記載するより初期の報告と完全に対照的である(Roberts et al (1997) Gastroenterology, 113: 1714-1726; Jones et al. (1998) Am. J. Physiol., 275: G723-730)。
【0015】
カテプシンは、不活性な酵素前駆体としてリボソームにおいて合成され、リソソーム系に移動される。タンパク質分解によるN末端プロペプチドの切断の後で、リソソームの酸性環境におけるカテプシン濃度は1mMまで増大し、リソソームにより細胞外の媒質中にカテプシンが放出される。
【0016】
カテプシンの場合、システインカテプシンB、C、H、F、K、L、O、S、VおよびW、アスパルチルカテプシンDおよびE、ならびにセリンカテプシンGの間で分類がなされる。
臨床的開発におけるカテプシン阻害剤の例は、変形性関節症の処置のためのカテプシンK阻害剤、ならびに関節炎、神経障害性疼痛および乾癬の処置のためのカテプシンS阻害剤である。
【0017】
カテプシンD以外には、アスパルチルプロテアーゼはまた、HIVアスパルチルプロテアーゼ(HIV-1プロテアーゼ)、レニン、ペプシンAおよびC、BACE(Asp2、メマプシン)、プラスメプシン、ならびにアスパルチルヘモグロビナーゼ(haemoglobinase)を含む(Takahashi, T.ら編、Aspartic Proteinases Structure, Function, Biology and Biomedical Implications(Plenum Press, New York, 1995)、Adams, J. et al., Ann. Rep. Med. Chem. 31, 279-288, 1996; Edmunds J. et al., Ann. Rep. Med. Chem. 31, 51-60, 1996; Miller, D. K. et al., Ann. Rep. Med. Chem 31, 249-268, 1996)。カテプシンDは、通常、細胞内のまたは貪食されたタンパク質の分解に関与し、したがって、タンパク質代謝において(Helseth, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81, 3302-3306, 1984)、タンパク質異化において(Kayら、Intracellular Protein Catabolism(Katunumaら編、155-162、1989年))、および抗原のプロセッシングにおいて(Guagliardi, et al., Nature, 343, 133-139, 1990; Van Noort, et al., J. Biol. Chem., 264, 14159-14164, 1989)重要な役割を果たす。
【0018】
増大したカテプシンDレベルは、多数の疾患と関連している。したがって、増大したカテプシンDレベルは、乳癌の予後不良と相関し、細胞の浸潤の増加および転移のリスクの増大、ならびに治療後のより短い無再発生存時間、およびより低い全体的な生存率と相関する(Westley B. R. et al., Eur. J. Cancer 32, 15-24, 1996; Rochefort, H., Semin. Cancer Biol. 1:153, 1990; Tandon, A. K. et al., N. Engl. J. Med. 322, 297, 1990)。乳癌におけるカテプシンD分泌速度は、遺伝子の過剰発現により、およびタンパク質のプロセッシングの改変により、促進される。成長中の腫瘍の至近において産生されるカテプシンDおよび他のプロテアーゼ(例えばコラゲナーゼなど)のレベルの増大は、腫瘍の環境における細胞外マトリックスを分解し得、したがって、腫瘍細胞の解離、ならびにリンパおよび循環系を介する新たな組織中への浸潤を促進し得た(Liotta L. A., Scientific American Feb:54, 1992; Liotta L. A. and Stetler-Stevenson W. G., Cancer Biol. 1:99, 1990; Liaudet E., Cell Growth Differ. 6:1045-1052, 1995; Ross J. S., Am. J. Clin. Pathol. 104:36-41, 1995; Dickinson A. J., J. Urol. 154:237-241, 1995)。
【0019】
カテプシンDは、さらに、例えばアルツハイマー病などの脳における変性変化と関連する。したがって、カテプシンDは、アミロイド−β前駆体タンパク質、またはトランスフェクトされた細胞においてアミロイドタンパク質の発現を増大する変異体前駆体の切断と関連する(Cataldo, A. M. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 87: 3861, 1990; Ladror, U. S. et al., J. Biol. Chem. 269: 18422, 1994, Evin G., Biochemistry 34: 14185-14192, 1995)。アミロイド−β前駆体タンパク質のタンパク質分解により形成されるアミロイド−βタンパク質は、脳における粥腫の形成をもたらし、アルツハイマー病の発症の原因であると考えられる。増大したカテプシンDレベルはまた、アルツハイマー病患者の脳脊髄液中においても見出されており、変異体アミロイド−β前駆体タンパク質と比較して高いカテプシンDのタンパク質分解活性が見出されている(Schwager, A. L., et al. J. Neurochem. 64:443, 1995)。さらに、カテプシンD活性の著しい増大が、ハンチントン病患者の生検から測定される(Mantle D., J. Neurol. Sci. 131: 65-70, 1995)。
【0020】
カテプシンDは、変形性関節症の発症における多様なレベルにおいて必須の役割を果たすと考えられる。したがって、健康なイヌと比較して特発性変形性関節症を有するイヌにおいて、股関節関節頭(hip joint head)の関節軟骨において、カテプシンDのmRNAレベルの増大を測定する(Clements D. N. et al., Arthritis Res. Ther.. 2006; 8(6): R158; Ritchlin C. et al., Scand. J. Immunnol. 40: 292-298, 1994)。Devauchelle V.ら(Genes Immun. 2004, 5(8): 597-608)はまた、ヒト患者において、変形性関節症の場合、関節リウマチと比較して異なるカテプシンDの発現率を示す(また、Keyszer G. M., Arthritis Rheum. 38: 976-984, 1995を参照)。カテプシンDはまた、ムコリピドーシスにおいて役割を果たすと考えられる(Kopitz J., Biochem. J. 295, 2: 577-580, 1993)。
【0021】
リソソームのエンドペプチダーゼであるカテプシンDは、軟骨細胞において最も広汎なプロテイナーゼである(Ruiz-Romero C. et al., Proteomics. 2005, 5(12): 3048-59)。さらに、カテプシンDのタンパク質分解活性は、変形性関節症患者からの培養滑膜において検出されており(Bo G. P. et al., Clin. Rheumatol. 2009, 28(2): 191-9)、増大したタンパク質分解活性はまた、関節リウマチを有する患者の滑膜切除組織において見出される(Taubert H. et al., Autoimmunity. 2002, 35(3): 221-4)。Lorenzら(Proteomics. 2003, 3(6): 991-1002)は、したがってまた、リソソームのおよび分泌型のアスパルチルプロテアーゼカテプシンDは、関節炎および変形性関節症に関して詳細には研究されていないが、カテプシンBおよびLと対照的に、Lorenzらは、しかし、変形性関節症を有する患者の滑膜組織において、関節リウマチを有する患者と比較して、より高いカテプシンDのタンパク質レベルを見出したことを記述する。
【0022】
同様に、Gedikogluら(Ann. Rheum. Dis. 1986, 45(4): 289-92)は滑膜組織において、BylissおよびAli(Biochem. J. 1978, 171(1): 149-54)は、変形性関節症を有する患者の軟骨において、カテプシンDのタンパク質分解活性の増大を検出した。
【0023】
変形性関節症の場合、軟骨の領域においてpHの低下が起こる。このpHの低下は、軟骨における異化の理解のためにきわめて重要である。
【0024】
変形性関節症の場合、したがってまた、関節組織における低pHと、疾患の重篤度および進行との間に、直接的な相関が見出される。5.5のpHにおいて、軟骨の自己消化が起こる。これは、外植片培養(例えばマウス、ウシまたはヒトからの)において、ペプスタチンまたはリトナビルにより、実質的に完全に阻害することができる。このことは、変形性関節症におけるカテプシンDの必須の役割、あるいは鍵となる役割を示唆する。なぜならば、ペプスタチンは、BACE 1を1つの例外として、アスパルチルプロテアーゼを阻害し、これら2つのアスパルチルプロテアーゼのみが、軟骨組織においてこれまでに同定されているためである。したがって、Bo G. P.ら(Clin. Rheumatol. 2009, 28(2): 191-9)はまた、関節における病理学的変化におけるカテプシンDの重要な役割を記載する。
【0025】
最もよく知られているアスパルチルプロテアーゼ阻害剤は、ペプスタチンであり、これは、元々はストレプトマイセス属の培養物から単離されたペプチドである。ペプスタチンは、ペプシン、カテプシンおよびレニンに対して有効である。多くのアスパルチルプロテアーゼ阻害剤は、したがって、ペプスタチンの構造の例においてモデル化されている(米国特許第4,746,648号;Umezawa, H, et al., J Antibiot (Tokyo) 23: 259-62, 1970; Morishima, H., et al., J. Antibiot. (Tokyo) 23: 263-5, 1970; Lin, Ty and Williams, H R., J. Biol. Chem. 254: 11875-83, 1979; Jupp, R A, et al., Biochem. J. 265: 871-8, 1990; Agarwal, N S and Rich, D H, J. Med. Chem. 29:2519-24, 1986; Baldwin, E T, et al., Proc. Natl. Acad. Sci., USA 90: 6796-800, 1993; Francis, S E et al., EMBO J 13: 306-17, 1994)。
【0026】
アスパルチルプロテアーゼおよびカテプシンDは、しばしば、神経変性疾患、認知障害、認知症、アルツハイマー病、癌、マラリア、HIV感染および心血管系の疾患の処置のための、活性化合物のための標的タンパク質として記載され、アスパルチルプロテアーゼまたはカテプシンDの阻害剤は、これらの疾患の処置のために、例えばWO 2009013293、EP 1987834、EP 1872780、EP 1867329、EP 1745778、EP 1745777、EP 1745776、WO 1999002153、WO 1999055687、US 6150416、WO 2003106405、WO 2005087751、WO 2005087215、WO 2005016876、US 2006281729、WO 2008119772、WO 2006074950、WO 2007077004、WO 2005049585、US 6251928およびUS 6150416などにおいて開示される。
【0027】
環状グアニジンは、WO 2006017836、WO 2006024932およびWO 2006017844において、アルツハイマー、認知障害、老化および認知症の処置のための、ベータ−セクレターゼ阻害剤(BACE阻害剤)として開示される。WO 2009045314、WO 2008103351、WO 2008063558、WO 2005111031、WO 2005058311、US 20080200445、US 20070287692、US 20060281730、US 20060281729およびUS 20060111370もまた、多数の化合物を開示する。
【0028】
既知のカテプシンD阻害剤および2つのモデル化合物ペプスタチンおよびリトナビルはカテプシンDの活性を効果的に阻害するが、それらは、しかし、他のアスパルチルプロテアーゼについてきわめて低い選択性を有する。血圧および体液と電解質とのバランスの制御におけるレニン−アンギオテンシン系(RAS)の役割(Oparil, S. et al., N. Engl. J. Med. 1974; 291: 381-401/446-57)、ならびに心血管系の疾患におけるレニンおよびペプシン阻害剤の効力は、適切に知られており、したがって、特にこれらの低選択性カテプシンD阻害剤の経口または全身投与においては、多数の副作用が予測され得、局所適用においては、化合物の拡散に起因する全身性の合併症もまた予測され得る。さらに、ペプチド性化合物は、特に低い安定性を有し、したがって、経口または全身投与のために好適ではない。
【0029】
本発明は、有益な特性を有する新規化合物、特に医薬の調製のために用いることができるものを発見する目的に基づいた。本発明の目的は、特に、新規の活性化合物、および特に好ましくは、変形性関節症の予防および処置のために使用することができ、特に、レニンおよびペプシンと比較してカテプシンDについて高い選択性を有する、新規のカテプシンD阻害剤を発見することであった。さらに、目的は、少なくとも局所または関節内投与において十分に安定である、新規のカテプシンD阻害剤を発見することであった。
【発明の概要】
【0030】
発明の要旨
驚くべきことに、本発明による環状グアニジンは、カテプシンDの高度に効果的な阻害剤であると同時に、レニンおよびペプシンと比較して、カテプシンDについての高い選択性を有し、したがって、変形性関節症の処置のためのその使用において副作用が少ないことが期待されることを見出した。さらに、本発明による化合物は、滑液中で適切に良好な安定性を有し、このことは、それらが関節内投与のために、したがって変形性関節症の処置のために好適であることを意味する。同様に、本発明による環状グアニジンは、用量に依存して、炎症により誘導される温痛覚過敏を軽減することができることを見出した。
【0031】
本発明は、一般式I:
【化1】
式中
I
1、I
2、I
3は、互いに独立して、CR
1またはCTを表し、
Xは、HまたはNH
2を表し、
Yは、1または2の芳香族環Arが5個または6個のC原子を有する環式アルキル上に縮合していることを特徴とする、環式アルキルアリール基を表し、ここで、1個または2個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NR、−OCO−、−NRCONR’−、−NRCO−、−NRSO
2R’−、−COO−、−CONR−によって置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、R、T、OR、NRR’、SOR、SO
2R、SO
2NRR’、CN、COOR、CONRR’、NRCOR’、NRCONR’R’’および/もしくはNRSO
2R’によって一もしくは二置換されており、
【0032】
Arは、各々が未置換であるか、またはR
1によって一、二、三もしくは四置換されている、フェニルまたはナフチル、あるいは、未置換であるか、またはR、=S、=NR’および/または=Oにより一、二もしくは三置換されている、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式または二環式の芳香族複素環を表し、
Qは、CH
2、CR
1R
2またはC=Oを表し、
Tは、各々が未置換であるか、またはR
1によって一、二、三もしくは四置換されている、フェニルまたはナフチル、あるいは、R、=S、=NR’および/または=Oによって一、二または三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する、単環式または二環式の、飽和、不飽和または芳香族の複素環を表し、
【0033】
R
1、R
2は、互いに独立して、H、OR、Hal、C(Hal)
3、NRR’、SOR、SO
2R、SO
2NRR’、CN、COOR、CONRR’、NRCOR’、NR’CONR’R’’、NRSO
2R’、1〜10個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NR、−OCO−、−NRCONR’−、−NRCO−、−NRSO
2R’−、−COO−、−CONR−、−NRCO−、−C≡C−基により、および/または−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜20個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、Hal、C(Hal)
3、OR、NRR’、SO
2R、SO
2NRR’、CN、CONRR’、NRCOR’および/もしくはNRCONRR’により一、二もしくは三置換されている、あるいは、3〜7個のC原子を有する環式アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NR、−OCO−、−NRCONR’−、−NRCO−、−NRSO
2R’−、−COO−、−CONR−、−NRCO−により、および/または−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、Hal、OR、NRR’、SO
2R、SO
2NRR’、CN、CONRR’、NRCOR’および/もしくはNRCONRR’により一、二もしくは三置換されている、を表し、
【0034】
R、R’、R’’は、互いに独立して、H、T、OH、Hal、C(Hal)
3、NH
2、SO−アルキル、SO
2−アルキル、SO
2NH
2、CN、COOH、CONH
2、NHCO−アルキル、NHCONH
2、NHSO
2−アルキルおよび/またはNHCO−アルキル、1〜10個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、−OCO−、−NHCONH−、−NHCO−、−NHSO
2−アルキル−、−COO−、−CONH−、−NCH
3CO−、−CONCH
3−、−C≡C−基により、および/または−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜20個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、Hal、C(Hal)
3、OH、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3および/もしくはNHCONH
2により一、二もしくは三置換されている、あるいは、3〜7個のC原子を有する環式アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、NCH
3、−OCO−、−NHCONH−、−NHCO−、−NHSO
2−アルキル−、−COO−、−CONH−、−NCH
3CO−、−CONCH
3−により、および/または−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、C(Hal)
3、OH、NH
2、SO
2CH
3、SO
2NH
2、CN、CONH
2、NHCOCH
3および/またはNHCONH
2により一、二もしくは三置換されている、あるいは、RおよびR’、またはRおよびR’’、またはR’およびR’’は、両方が1個のNに結合している場合、該Nを組み込む3〜7個のC原子を有する環を形成してもよく、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、N−アルキル、N−アリール、−CHT−、−CH(CH
2T)−、−OCO−、−NHCONH−、−NHCO−、−NHSO
2−、−COO−、−CON−アルキル−により、および/または−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、1または2の芳香族環Arがこの環上に縮合していてもよいことを特徴とする、を表し、ならびに
Halは、互いに独立して、F、Cl、BrまたはIを表す、
の環状グアニジン、
およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物
に関する。
【0035】
本発明は、好ましくは、全ての上述の式I、式中、
Yは、以下のラジカル:
【化2】
からなる群より選択され、これらは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、R、R
1、T、OR、NRR’、SOR、SO
2R、SO
2NRR’、CN、COOR、CONRR’、NRCOR’、NRCONR’R’’および/もしくはNRSO
2R’により一もしくは二置換されており、
Qは、CH
2またはC=Oを表し、ならびに
【0036】
R
1は、互いに独立して、H、CF
3、OR、Hal、CN、CONRR’、1〜10個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは3〜7個のC原子を有する環式アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、−CH=CH−基によって置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClによって置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=O、Hal、C(Hal)
3、OR、NRR’、SO
2R、SO
2NRR’、CN、CONRR’、NRCOR’および/またはNRCONRR’により一、二もしくは三置換されている、を表し、
ならびに、I
1、I
2、I
3、X、Ar、T、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する
の化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物に関する。
【0037】
本発明は、特に好ましくは、式I、式中、
I
1は、CHを表し、
I
2は、CR1またはCTを表し、
I
3は、CHまたはCClを表し、
Xは、Hを表し、
【0038】
Yは、以下のラジカル:
【化3】
からなる群より選択され、これらは、未置換であるか、または=S、=NR、=O、R、R
1、T、OR、NRR’、SOR、SO
2R、SO
2NRR’、CN、COOR、CONRR’、NRCOR’、NRCONR’R’’および/またはNRSO
2R’によって一もしくは二置換されており、
Qは、CH
2を表し、
【0039】
R
1は、互いに独立して、H、CF
3、OR、Hal、CN、CONRR’、1〜10個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは3〜7個のC原子を有する環式アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=O、Hal、C(Hal)
3、OR、NRR’、SO
2R、SO
2NRR’、CN、CONRR’、NRCOR’および/またはNRCONRR’によって一、二もしくは三置換されている、を表し、
ならびにAr、T、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する、
の化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物に関する。
【0040】
本発明は、特に好ましくは、式I、式中
I
1は、CHを表し、
I
2は、CR
1またはCTを表し、
I
3は、CHまたはCClを表し、
Xは、Hを表し、
Yは、以下のラジカル:
【化4】
からなる群より選択され、これらは、未置換であるか、またはメトキシルによって一もしくは二置換されており、
Qは、CH
2を表し、
【0041】
R
1は、互いに独立して、H、CF
3、OR、Hal、CN、CONRR’、1〜10個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキルまたは3〜7個のC原子を有する環式アルキル、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、これは、未置換であるか、または=O、Hal、C(Hal)
3、OR、NRR’、SO
2R、SO
2NRR’、CN、CONRR’、NRCOR’および/またはNRCONRR’によって一、二もしくは三置換されている、を表し、
ならびに、Ar、T、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する、
の化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物に関する。
【0042】
本発明は、特に好ましくは、式I、式中、
RおよびR’、またはRおよびR’’、またはR’およびR’’は、両方が1個のNに結合している場合、該Nを組み込む3〜7個のC原子を有する環を形成し、ここで、1、2または3個のCH
2基は、互いに独立して、O、S、SO、SO
2、NH、N−アルキル、N−アリール、−CHT−、−CH(CH
2T)−、−OCO−、−NHCONH−、−NHCO−、−NHSO
2−、−COO−、−CON−アルキル−により、および/または−CH=CH−基により置き換えられていてもよく、および/または、さらに、1〜11個のH原子は、Fおよび/またはClにより置き換えられていてもよく、1または2の芳香族環Arは、この環上に縮合していてもよいことを特徴とし、
ならびに、I
1、I
2、I
3、X、Y、Q、Ar、T、R
1、R
2およびHalは、上で示される意味を有する、
の化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物に関する。
【0043】
本発明は、非常に特に好ましくは、全ての上述の式I、式中、
I
1は、を表しCH、
I
2は、CR
1またはCTを表し、R
1またはTは、以下:
【化5】
からなる群より選択され、
【0044】
I
3は、CHまたはCClを表し、
Xは、Hを表し、
Yは、以下のラジカル:
【化6】
からなる群より選択され、これは、未置換であるか、またはメトキシルにより一もしくは二置換されており、
Qは、CH
2を表す、
の化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物に関する。
【0045】
本発明は、非常に特に好ましくは、Yがキラルである全ての上述の式Iの化合物に関する。
本発明はさらに、非常に特に好ましくは、RおよびR’、またはRおよびR’’、またはR’およびR’’から形成される環がキラルである、全ての上述の式Iの化合物に関する。
【0046】
上述の式Iの化合物のラジカルの全ての上述の好ましい、特に好ましいおよび非常に特に好ましい意味は、これらの好ましい、特に好ましいおよび非常に特に好ましい意味または態様が、式Iの化合物を生じる任意の可能な組み合わせにおいて互いに組み合わせることができるものと、ならびに、この型の好ましい、特に好ましいおよび非常に特に好ましい式Iの化合物が、同様に本明細書により明示的に開示されるものと、理解されるべきである。
【0047】
また、以下:
a)3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
b)7−クロロ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
c)5−クロロ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
d)3−インダン−2−イル−7−フェニル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
e)7−クロロ−3−(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
f)3−インダン−2−イル−7−プロピル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
g)7−クロロ−3−(5,6−ジメトキシインダン−2−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
h)3−インダン−2−イル−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
i)7−クロロ−3−(4,5−ジメトキシインダン−2−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
j)7−クロロ−3−(4−メトキシインダン−2−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
k)3−インダン−1−イル−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
l)7−クロロ−3−(5−メトキシインダン−2−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
m)3−(9H−フルオレン−9−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
n)3−(5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イル−アミン
o)7−エチル−3−(5−メトキシインダン−2−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
p)3−((S)−5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
q)3−((R)−5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
r)3−(1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン
s)(2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−7−イル)−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)メタノン
t)(2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−7−イル)−(5−メトキシ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)メタノン
u)N,N−ジエチル−2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−7−カルボキサミド
v)(2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−7−イル)モルホリン−4−イル−メタノン
w)2−アミノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロメチル−3H−キナゾリン−4−オン
x)2−ヒドラジノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロメチル−3H−キナゾリン−4−オン
y)(2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−7−イル)−(2−ベンジルピロリジン−1−イル)メタノン
z)(2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロキナゾリン−7−イル)−(2,3−ジヒドロベンゾ[1,4]オキサジン−4−イル)メタノン
aa)3−((1R,2S)−1−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−1H−キナゾリン−2−イリデンアミン
からなる群より選択される以下の式Iの化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物が、非常に特に好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0048】
全ての考え得る式Iの化合物の互変異性体、例えば:
【化7】
などは、本発明により明らかである。
Halは、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素、特にフッ素または塩素を表す、
−(C=O)−または=Oは、カルボニル酸素を表し、
【化8】
または、二重結合により炭素原子に結合した酸素原子を表す。
【0049】
アルキルまたはAは、飽和、非分枝状(直鎖状)または分枝状の炭化水素鎖であって、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のC原子を有する。アルキルは、好ましくは、メチル、さらにエチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−もしくは4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−もしくは3,3−ジメチルブチル、1−もしくは2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−もしくは1,2,2−トリメチルプロピル、直鎖状または分枝状のヘプチル、オクチル、ノニルまたはデシル、さらに好ましくは、例えば、トリフルオロメチルを表す。
【0050】
環状アルキルまたはシクロアルキルは、飽和した環状炭化水素鎖であって、3〜10個、好ましくは3〜7個のC原子を有し、好ましくは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを表す。シクロアルキルはまた、部分的に不飽和の環状アルキル、例えばシクロヘキセニルまたはシクロヘキシニルなどを表す。
【0051】
アリール、Arまたは芳香族環は、芳香族または完全に不飽和の環状炭化水素鎖、例えば未置換のフェニル、ナフチルまたはビフェニル、さらに好ましくはフェニル、ナフチルまたはビフェニルを表し、それらの各々は、例えば、A、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、ヒドロキシル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ニトロ、シアノ、ホルミル、アセチル、プロピオニル、トリフルオロメチル、アミノ、メチルアミノ、エチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ベンジルオキシ、スルホンアミド、メチルスルホンアミド、エチルスルホンアミド、プロピルスルホンアミド、ブチルスルホンアミド、ジメチルスルホンアミド、フェニルスルホンアミド、カルボキシル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、アミノカルボニルにより、一、二もしくは三置換されている。
【0052】
単環または二環式の飽和、不飽和、または芳香族の複素環は、好ましくは、未置換の、または一、二もしくは三置換された2−もしくは3−フリル、2−もしくは3−チエニル、1−、2−もしくは3−ピロリル、1−、2、4−もしくは5−イミダゾリル、1−、3−、4−もしくは5−ピラゾリル、2−、4−もしくは5−オキサゾリル、3−、4−もしくは5−イソオキサゾリル、2−、4−もしくは5−チアゾリル、3−、4−もしくは5−イソチアゾリル、2−、3−もしくは4−ピリジル、2−、4−、5−もしくは6−ピリミジニル、さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−もしくは−5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、3−もしくは4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−インドーリル、4−もしくは5−イソインドーリル、1−、2−、4−もしくは5−ベンゾイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾオキサゾリル、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾイソチアゾリル、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キナゾリニル、5−もしくは6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−もしくは8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは1,3−ベンゾ−ジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−もしくは−5−イル、または2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イルを表す。
【0053】
複素環式ラジカルはまた、部分的にまたは完全に水素化されていてもよく、また、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−もしくは−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−もしくは−5−フリル、テトラヒドロ−2−もしくは−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−もしくは−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピロリル、1−、2−もしくは3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−もしくは−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−もしくは−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−もしくは−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−もしくは−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−もしくは−6−ピリジル、1−、2−、3−もしくは4−ピペリジニル、2−、3−もしくは−4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−もしくは−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−もしくは−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−もしくは−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−もしくは−5−ピリミジニル、1−、2−もしくは3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−もしくは−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−もしくは−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−もしくは8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、さらに好ましくは2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−もしくは−6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニル、あるいはまた3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾ−ジオキセピン−6−もしくは−7−イル、さらに好ましくは2,3−ジヒドロベンゾフラニルまたは2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニルを表す。
【0054】
複素環は、さらに、例えば、2−オキソピペリジン−1−イル、2−オキソ−ピロリジン−1−イル、2−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、3−オキソモルホリン−4−イル、4−オキソ−1H−ピリジン−1−イル、2,6−ジオキソピペリジン1−イル、2−オキソピペラジン−1−イル、2,6−ジオキソピペラジン−1−イル、2,5−ジオキソピロリジン−1−イル、2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−3−イル、3−オキソ−2H−ピリダジン−2−イル、2−カプロラクタム−1−イル (=2−オキソアゼパン−1−イル)、2−ヒドロキシ−6−オキソピペラジン−1−イル、2−メトキシ−6−オキソピペラジン−1−イル、または2−アザビシクロ[2.2.2]オクタン−3−オン−2−イルを表す。
【0055】
ヘテロシクロアルキルは、ここで、完全に水素化されているかまたは飽和した複素環を表し、ヘテロシクロアルケニル(1または2以上の二重結合)またはヘテロシクロアルキニル(1または2以上の三重結合)は、部分的にもしくは不完全に水素化されているか、または不飽和の複素環を表し、ヘテロアリールは、芳香族または完全に不飽和の複素環を表す。
【0056】
環式アルキルアリール基は、本発明に関して、1個または2個の芳香族環Arが、未置換の、または一もしくは二置換された環状アルキル上に縮合していることを意味し、ここで、1個または2個のCH
2基および/または、さらに、1〜11個のH原子が、例えば以下に表されるラジカルなどで置き換えられていてもよい:
【化9】
OAは、アルコキシルを表し、好ましくはメトキシル、さらにまたエトキシル、n‐プロポキシル、イソプロポキシル、n‐ブトキシル、イソブトキシル、sec−ブトキシルまたはtert−ブトキシルである。
【0057】
さらに、以下の略語は、以下の意味を有する:
Boc tert−ブトキシカルボニル
CBZ ベンジルオキシカルボニル
DNP 2,4−ジニトロフェニル
FMOC 9−フルオレニルメトキシカルボニル
imi-DNP イミダゾール環の1位における2,4−ジニトロフェニル
OMe メチルエステル
POA フェノキシアセチル
DCCI ジシクロヘキシルカルボジイミド
HOBt 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
【0058】
これらの化合物の全ての生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物および立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物もまた、本発明に従う。
一般式Iの化合物は、1または2以上のキラルの中心を含んでもよく、したがって、一般式Iの化合物の全ての立体異性体、鏡像異性体、ジアステレオマーなどもまた、本発明において請求される。
本発明はまた、光学活性形態(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ体、ジアステレオマー、ならびにこれらの化合物の水和物および溶媒和物に関する。
【0059】
本発明による式Iの化合物は、それらの分子構造に起因してキラルであってもよく、したがって、多様な鏡像異性体の形態において現れてもよい。それらはしたがって、ラセミ形態または光学活性形態におけるものであってもよい。本発明による化合物のラセミ体または立体異性体の薬学的効力は異なり得るため、鏡像異性体を使用することが望ましい場合がある。これらの場合において、最終生成物のみならず中間体ですら、当業者に公知の、または合成においてそのようにして既に使用されている化学的または物理学的手段により、鏡像異性体化合物に分離してもよい。
【0060】
薬学的にまたは生理学的に受容可能な誘導体とは、例えば、本発明による化合物の塩およびいわゆるプロドラッグ化合物も意味するものと考えられる。プロドラッグ化合物とは、例えばアルキルまたはアシル基(また以下のアミノおよびヒドロキシル保護基を参照)、糖またはオリゴペプチドにより修飾されている式Iの化合物であって、生体内において迅速に切断されるかまたは遊離して、本発明による有効な化合物を形成するものを意味するものと考えられる。それらはまた、例えば、Int. J. Pharm. 115 (1995), 61-67において記載されるような、本発明による化合物の生分解性ポリマー誘導体を含む。
【0061】
好適な酸付加塩は、全ての生理学的にまたは薬理学的に受容可能な酸の無機または有機塩、例えばハロゲン化物、特に塩酸塩または臭化水素酸塩、乳酸塩、硫酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、リン酸塩、メチルスルホン酸塩、またはp−トルエンスルホン酸塩である。
本発明による化合物の塩酸塩、トリフルオロ酢酸塩またはビストリフルオロ酢酸塩が、非常に特に好ましい。
【0062】
式Iの化合物の溶媒和物とは、式Iの化合物への不活性な溶媒分子の付加を意味するものと考えられ、これは、それらの相互誘引力により形成する。溶媒和物は、例えば、一水和物もしくは二水和物などの水和物、またはアルコラート、すなわちアルコール、例えばメタノールもしくはエタノールなどとの付加化合物である。
【0063】
式Iの化合物は、その同位体標識された形態を含むことが、さらに意図される。式Iの化合物の同位体標識された形態は、当該化合物の1または2以上の原子が、通常天然に存在する原子の原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子により置き換えられているという事実を除いて、この化合物と同一である。容易に市販で入手可能であり、周知の方法により式Iの化合物中に組み込むことができる同位体の例として、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素および塩素の同位体、例えばそれぞれ、
2H、
3H、
13C、
14C、
15N、
18O、
17O、
31P、
32P、
35S、
18Fおよび
36CIが挙げられる。いずれかが上述の同位体および/または他の原子の他の同位体の1または2以上を含む、式Iの化合物、そのプロドラッグまたは薬学的に受容可能な塩は、本発明の部分であることが意図される。同位体標識された式Iの化合物は、多数の有益な方法において用いることができる。例えば、例えば
3Hまたは
14Cなどの放射性同位体が組み込まれている同位体標識された式Iの化合物は、医薬および/または基質の組織分布アッセイのために好適である。これらの放射性同位体、すなわちトリチウム(
3H)および炭素−14(
14C)は、それらの簡易な調製および優れた検出能のために、特に好ましい。より重い同位体、例えばデューテリウム(
2H)の式Iの化合物中への組み込みは、この同位体標識化合物の高い代謝安定性のために、治療上の利点を有する。より高い代謝安定性は、直接的に、より長いin vivoでの半減期またはより低い投与量と言い換えられ、これらは、殆どの状況下において、本発明の好ましい態様を表わすであろう。同位体標識された式Iの化合物は、通常は、本文における合成スキームおよび関連する記載において、例のパートにおいて、および調製のパートにおいて開示される手順を、同位体標識されていない反応物を容易に利用可能な同位体標識された反応物で置き換えて行うことにより、調製することができる。
【0064】
化合物の酸化的代謝を一次動的同位体効果(primary kinetic isotope effect)により操作することを目的として、デューテリウム(
2H)をまた、式Iの化合物中に組み込んでもよい。一次動的同位体効果とは、同位体の核の交換から生じる化学反応についての速度の変化であり、これは、今度はこの同位体交換の後での共有結合の形成のために必要な基底状態エネルギーの変化により引き起こされる。より重い同位体の交換は、通常は、化学結合のための基底状態エネルギーの低下をもたらし、したがって、律速的な結合の切断における速度の低下を引き起こす。結合の切断が、多生成物反応の座標に沿った鞍点領域においてまたはその付近において起こる場合、生成物の分布比は、実質的に変更され得る。説明すると、デューテリウムが交換不可能な位置において炭素原子に結合している場合、kM/kD=2〜7の速度差が典型的である。この速度差が、酸化に対して感受性である式Iの化合物に対してうまく適用される場合、この化合物のin vivoでのプロフィールは、それにより劇的に改変され得、改善された薬物動態学的特性をもたらし得る。
【0065】
治療剤を発見および開発する場合、当業者は、所望のin vitro特性を保持しつつ薬物動態学的パラメーターを最適化することを試みる。低い薬物動態学的プロフィールを有する多くの化合物は、酸化的代謝に対して感受性であると仮定することは妥当である。現在利用可能なin vitroでの肝臓ミクロソームアッセイは、この型の酸化的代謝の経過についての有益な情報を提供し、これが次いで、かかる酸化的代謝に対する耐性を通して改善された安定性を有する、重水素化された式Iの化合物の合理的な設計を可能にする。式Iの化合物の薬物動態学的プロフィールの著しい改善は、これにより得られ、in vivoでの半減期(T/2)、最大治療効果における濃度(C
max)、用量応答曲線下面積(AUC)、およびFの増大に関して;ならびに、クリアランスの低下、用量および材料のコストの減少に関して、定量的に表わすことができる。
【0066】
以下は、上記を説明することを意図する:酸化的代謝のための複数の可能な攻撃の部位、例えばベンジルの水素原子および窒素原子に結合している水素原子を有する式Iの化合物を、それらの水素原子の幾つか、殆どまたは全てが、デューテリウム原子により置き換えられるように、多様な組み合わせの水素原子がデューテリウムにより置き換えられた一連の類似体として調製する。半減期の決定は、酸化的代謝に対する耐性の改善がなされた程度を、有利に、かつ正確に決定することを可能にする。この方法において、親化合物の半減期が、この型のデューテリウム−水素交換の結果として100%まで延長され得ることが決定される。
【0067】
式Iの化合物におけるデューテリウム−水素交換はまた、望ましくない毒性の代謝物を減少させるかまたは除去するために、出発化合物の代謝物スペクトルの有利な改変を達成するためにも用いることができる。例えば、毒性の代謝物が酸化的な炭素−水素(C−H)結合の切断を通して生じる場合、重水素化された類似体が、特定の酸化が律速段階でない場合ですら、望ましくない代謝物の産生を著しく減少させるかまたは除去するであろうことが、妥当に仮定することができる。デューテリウム−水素交換に関するさらなる最先端の情報は、例えば、Hanzlik et al., J. Org. Chem. 55, 3992-3997, 1990, Reider et al., J. Org. Chem. 52, 3326-3334, 1987, Foster, Adv. Drug Res. 14, 1-40, 1985, Gillette et al., Biochemistry 33(10), 2927-2937, 1994、およびJarman et al., Carcinogenesis 16(4), 683-688, 1993において提供される。
【0068】
本発明はまた、本発明による式Iの化合物の混合物、例えば2つのジアステレオマーの、例えば1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比における混合物に関する。これらは、特に好ましくは、2つの立体異性体化合物の混合物である。しかし、2または3種以上の式Iの化合物の混合物もまた好ましい。
【0069】
さらに、本発明は、式I、式中、
Xは、Hを表し、
Qは、CH
2を表し、
ならびにI
1、I
2、I
3、Y、Ar、T、R
1、R
2、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する、
の化合物の調製のためのプロセスに関し、該プロセスは、式IIの化合物を、還元的アミノ化により式IIIの化合物に変換し、式IIIの化合物を、触媒の存在下において、水素化により式IVの化合物に変換し、式IVの化合物を臭化シアンと反応させて、臭化水素酸塩として式Vの化合物を得、式Vの化合物を、塩基による処理により、式Iの化合物に変換することを特徴とする。
【化10】
【0070】
さらに、本発明は、式I、式中、
Xは、HまたはNH
2を表し、
Qは、C=Oを表し、
ならびにI
1、I
2、I
3、Y、Ar、T、R
1、R
2、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する、
の化合物の調製のためのプロセスに関し、該プロセスは、
式VIの化合物を、チオホスゲンまたは類似の試薬との反応により、式VIIの化合物に変換し、式VIIの化合物を、塩基性条件下において、および任意に塩基性試薬を添加して、好適なアミンと反応させて、式VIIIの化合物を得、式VIIIの化合物をヒドラジンと反応させて、式Iaの化合物または式Iの化合物、式中、
Xは、NH
2を表し、
Qは、C=Oを表し、
ならびにI
1、I
2、I
3、Y、Ar、T、R
1、R
2、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する、
を得ること、
あるいは、式VIIIの化合物を、任意にtert−ブチルヒドロペルオキシドを用いて、アンモニアまたはヒドロキシルアミンと反応させて、式Ibの化合物または式Iの化合物、式中、
Xは、Hを表し、
Qは、C=Oを表し、
ならびにI
1、I
2、I
3、Y、Ar、T、R
1、R
2、R、R’、R’’およびHalは、上で示される意味を有する、
を得ることを特徴とする。
【化11】
【0071】
さらに、本発明は、式Iの化合物の調製のためのプロセスに関し、該プロセスは、
a)式Iの化合物の塩基を、酸による処理によりその塩の1つに変換すること、または
b)式Iの化合物の酸を、塩基による処理によりその塩の1つに変換すること
を特徴とする。
【0072】
また、反応を各々の場合において段階的に行うこと、および構成要素の架橋反応のシークエンスを保護基の概念の適応により改変することが可能である。
出発材料または出発化合物は、一般に公知である。それらが新規である場合、それらは、それ自体公知の方法により調製することができる。
所望される場合、出発材料はまた、それらを反応混合物から単離することによってではなく、代わりにそれらをさらに式Iの化合物へと直ちに変換することにより、in situで形成させることができる。
【0073】
式Iの化合物は、好ましくは、加溶媒分解により、特に加水分解により、または水素化分解により、それらの機能的誘導体から遊離させることにより得られる。加溶媒分解または水素化分解のための好ましい出発材料は、1または2以上の遊離のアミノ、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基の代わりに、対応して保護されたアミノ、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基を含むもの、好ましくはN原子に連結されたH原子の代わりにアミノ保護基を担持するものである。さらに、ヒドロキシル基のH原子の代わりにヒドロキシル保護基を担持する出発材料が好ましい。また、遊離カルボキシル基の代わりに保護されたカルボキシル基を担持する出発材料が好ましい。複数の同一のまたは異なる保護されたアミノ、カルボキシルおよび/またはヒドロキシル基が、出発材料の分子中に存在することもまた可能である。存在する保護基が互いに異なる場合、それらは、多くの場合、選択的に切断することができる。
【0074】
用語「アミノ保護基」は、一般に知られており、アミノ基を化学反応に対して保護する(遮断する)ために好適であるが、所望される化学反応が当該分子中の別の場所で行われた後で容易に取り除くことができる基に関する。かかる基の典型は、特に、未置換または置換アシル基、さらに未置換または置換アリール(例えば2,4−ジニトロフェニル)またはアラルキル基(例えばベンジル、4−ニトロベンジル、トリフェニルメチル)である。アミノ保護基は、所望される反応または反応シークエンスの後で取り除かれるので、それらの型およびサイズは、さらには重要ではないが、1〜20個、特に1〜8個のC原子を有するものが好ましい。用語「アシル基」は、本発明のプロセスに関して最も広い意味において理解されるべきである。それは、脂肪族、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族または複素環式のカルボン酸またはスルホン酸から誘導されるアシル基、特に、アルコキシ−カルボニル、アリールオキシカルボニル、および特にアラルコキシカルボニル基を包含する。かかるアシル基の例は、アセチル、プロピオニル、ブチリルなどのアルカノイル、フェニルアセチルなどのアラルカノイル、ベンゾイルまたはトルイルなどのアロイル、フェノキシアセチルなどのアリールオキシアルカノイル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、BOC、2−ヨードエトキシカルボニルなどのアルキルオキシカルボニル、CBZ、4−メトキシベンジルオキシカルボニルまたはFMOCなどのアラルコキシカルボニルである。好ましいアシル基は、CBZ、FMOC、ベンジルおよびアセチルである。
【0075】
用語「酸保護基」または「カルボキシル保護基」も、同様に一般に知られており、−COOH基を化学反応に対して保護するために好適であるが、所望される化学反応が当該分子中の別の場所で行われた後で容易に取り除くことができる基に関する。遊離酸の代わりに、エステル、例えば、置換されたおよび未置換のアルキルエステル(メチル、エチル、tert−ブチルおよびそれらの置換された誘導体など)、置換されたおよび未置換のベンジルエステルまたはシリルエステルの使用が典型的である。酸保護基の型およびサイズは重要ではないが、1〜20個、特に1〜10個のC原子を有するものが好ましい。
【0076】
用語「ヒドロキシル保護基」も、同様に一般に知られており、ヒドロキシル基を化学反応に対して保護するために好適であるが、所望される化学反応が当該分子中の別の場所で行われた後で容易に取り除くことができる基に関する。かかる基の典型は、上述の未置換のまたは置換されたアリール、アラルキルまたはアシル基、さらにまたアルキル基である。ヒドロキシル保護基保護基の型およびサイズは重要ではないが、1〜20個、特に1〜10個のC原子を有するものが好ましい。ヒドロキシル保護基の例は、とりわけ、ベンジル、p−ニトロベンゾイル、p−トルエンスルホニルおよびアセチルであり、ここでベンジルおよびアセチルが好ましい。
【0077】
アミノ−、酸−およびヒドロキシル保護基のさらなる典型的な例は、例えば「Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis」、第4版(Wiley-Interscience、2007年)において見出される。
出発材料として用いられるべき式Iの化合物の機能的誘導体は、例えば前記の標準的な研究および特許出願において記載されるような、アミノ酸およびペプチド合成の公知の方法により調製することができる。
【0078】
式Iの化合物は、用いられる保護基に依存して、例えば強酸を用いて、それらの機能的誘導体から遊離させ、有利にはトリフルオロ酢酸または過塩素酸を用いるが、塩酸または硫酸などの他の無機強酸、トリクロロ酢酸などの、またはベンゾイル−もしくはp−トルエンスルホン酸などの有機強酸もまた用いる。さらなる不活性な溶媒および/または触媒の存在は可能であるが、必ずしも必要ではない。
【0079】
それぞれの合成経路に依存して、出発材料は、任意に、不活性な溶媒の存在下において反応させてもよい。
好適な不活性な溶媒は、例えば、ヘプタン、ヘキサン、石油エーテル、DMSO、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリクロロエチレン−、1,2−ジクロロエタン四塩化炭素、クロロホルムまたはジクロロメタン;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはtert−ブタノールなどのアルコール;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル(好ましくはインドール窒素上での置換のために)、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン;エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(diglyme)などのグリコールエーテル;アセトンまたはブタノンなどのケトン;アセタミド、ジメチルアセタミド、N−メチルピロリドン(NMP)またはジメチルホルムアミド(DMF)などのアミド;アセトニトリルなどのニトリル;酢酸エチルなどのエステル、例えば酢酸または酢酸無水物などのカルボン酸または酸無水物、ニトロメタンまたはニトロベンゼンなどのニトロ化合物、任意にまた前記溶媒と一つの別のものとの混合物、または水との混合物である。
溶媒の量は、重要ではない;反応させる式Iの化合物1gあたり10g〜500gの溶媒を、好ましくは添加することができる。
【0080】
酸結合剤、例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩もしくは炭酸水素塩、または他のアルカリもしくはアルカリ土類金属の弱酸の塩、好ましくはカリウム、ナトリウムもしくはカルシウム塩を添加すること、あるいは、例えばトリエチルアミン、ジメチルアミン、ピリジンまたはキノリン、または過剰のアミン成分などに対して有機塩基を添加することが、有利である場合がある。
【0081】
生じた本発明による化合物を、それらが調製された対応する溶液から分離してもよく(例えば遠心分離および洗浄により)、分離の後で別の組成物中で貯蔵してもよく、またはそれらを調製溶液中に直接残してもよい。生じた本発明による化合物をまた、特定の用途のために、所望される溶媒中に取り込んでもよい。
【0082】
反応期間は、選択される反応条件に依存する。一般的に、反応期間は、0.5時間〜10日間、好ましくは1〜24時間である。マイクロ波の使用に際しては、反応時間は1〜60分間の値まで短縮され得る。
【0083】
式Iの化合物およびまたそれらの調製のための出発材料は、さらに、文献において(例えばHouben-Weyl, Methoden der organischen Chemie[Methods of Organic Chemistry]、Georg-Thieme-Verlag, Stuttgartなどの標準的な研究において)記載されるような公知の方法により、例えば公知であり前記反応のために好適である反応条件下において、調製される。ここでまた、それ自体は公知であるバリアントも使用され、これらはここではより詳細には記載しない。
【0084】
慣用的な仕上げの工程、例えば反応混合物への水の添加および抽出などは、溶媒の除去の後で化合物を得ることを可能にする。生成物のさらなる精製のために、蒸留または結晶化と共にこれに従うか、クロマトグラフィーによる精製を行うことが有利である場合がある。
【0085】
式Iの酸を、塩基を用いて、例えばエタノールなどの不活性な溶媒中での等量の酸と塩基との反応および包括的蒸発により、関連する付加塩に変換することができる。この反応のために好適な塩基は、特に、生理学的に受容可能な塩を生じるものである。したがって、式Iの酸は、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウム)を用いて、対応する金属塩、特にアルカリまたはアルカリ土類金属塩に、あるいは対応するアンモニウム塩に、変換することができる。生理学的に受容可能な塩を生じる有機塩基、例えばエタノールアミンなどもまた、この反応のために好適である。
【0086】
一方、式Iの塩基は、酸を用いて、例えばエタノールなどの不活性な溶媒中での等量の塩基と酸との反応、およびその後の蒸発により、関連する酸付加塩に変換することができる。この反応のために好適な酸は、特に、生理学的に受容可能な塩を生じるものである。したがって、無機酸、例えば硫酸、硝酸、塩酸または臭化水素酸などのハロゲン化水素酸、オルトリン酸などのリン酸、スルファミン酸、さらに有機酸、特に脂肪族、脂環式、芳香脂肪族(araliphatic)、芳香族または複素環式の一または多塩基式カルボン酸、スルホン酸または硫酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ピバル酸、ジエチル酢酸、マロン酸、琥珀酸、ピメリン酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、グルコン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、メタン−もしくはエタンスルホン酸、エタンジジスルホン酸、2−ヒドロキシスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンモノ−およびジスルホン酸、またはラウリル硫酸を用いることが可能である。生理学的に受容可能な酸、例えばピクリン酸塩による塩を、式Iの化合物の単離および/または精製のために用いることができる。
【0087】
式Iの化合物は、アスパルチルプロテアーゼ、および特にカテプシンDを選択的に阻害するため、良好に耐容され、価値ある薬理学的特性を有することを見出した。
本発明は、したがってさらに、カテプシンDにより、および/またはカテプシンDにより促進されるシグナル伝達により、引き起こされるか、促進されるか、および/または伝播される疾患の処置および/または予防のための医薬の調製のための、本発明による化合物の使用に関する。
【0088】
本発明は、したがってまた特に、生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、少なくとも1種の本発明による化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬に関する。
【0089】
特に、カテプシンDに関連付けられる生理学的および/または病態生理学的状態が、特に好ましい。
生理学的および/または病態生理学的状態とは、例えば、疾患または疾病および医学的障害、愁訴、症状または合併症など、特に疾患などの、医学的に関連付けられる生理学的および/または病態生理学的状態を意味する。
【0090】
本発明は、さらに、変形性関節症、外傷性軟骨傷害、および関節炎、特に関節リウマチからなる群より選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、少なくとも1種の本発明による化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬に関する。
【0091】
本発明は、さらに、アルツハイマー病、ハンチントン病、ムコリピドーシス、癌、特に乳癌、接触性皮膚炎、遅発型過敏性反応、炎症、子宮内膜症、瘢痕、両性前立腺過形成、骨肉腫、くる病、例えば乾癬などの皮膚疾患、免疫学的疾患、自己免疫性疾患および免疫不全疾患からなる群より選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、少なくとも1種の本発明による化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬に関する。
【0092】
このことに関して、脳癌、肺癌、扁平上皮細胞癌、膀胱癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、腎臓癌、大腸癌、乳癌、頭部癌、頸部癌、食道癌、婦人科系の癌(gynaecological cancer)、甲状腺癌、リンパ腫、慢性白血病および急性白血病は、癌性の疾患であるとみなされ、それらのすべては、通常、過剰増殖性疾患の群の中にカウントされる。
【0093】
疼痛は、複雑な感覚性認知であり、急性のイベントとしては警告および制御シグナルの特徴を有するが、慢性疼痛はこれを失っており、この場合において(慢性疼痛症候群としては)、今日では独立した症候群としてみなされ、処置されるべきである。痛覚過敏は、疼痛および刺激に対する反応に対する過剰な感受性について医学において用いられる用語であり、通常、有痛性である。疼痛を惹起し得る刺激は、例えば圧力、熱、寒冷または炎症である。痛覚過敏は、刺激に対する過剰な感受性についての一般的用語である知覚過敏(hyperaesthesia)の1つの形態である。アロディニアは、通常は疼痛を引き起こさない刺激により惹起される疼痛の感覚について、医学において用いられる用語である。
【0094】
本発明は、したがってさらに、疼痛、アロディニアおよび痛覚過敏からなる群より選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、少なくとも1種の本発明による化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬に関する。
【0095】
本発明は、したがって、特に好ましくは、変形性関節症、外傷性軟骨傷害、関節炎、疼痛、アロディニアおよび痛覚過敏からなる群より選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における使用のための、少なくとも1種の本発明による化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを含む、医薬に関する。
【0096】
上で開示される医薬は、上の生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防のための医薬の調製のための、本発明による化合物の、対応する使用を包含することが意図される。
【0097】
さらに、上で開示される医薬は、上の生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防のための、対応する方法であって、少なくとも1種の本発明による化合物が、かかる処置を必要とする患者に投与される前記方法を含むことが意図される。
【0098】
本発明による化合物は、好ましくは、例において記載されるように、酵素アッセイおよび動物実験において容易に実証することができる有利な生物学的活性を示す。かかる酵素ベースのアッセイにおいて、本発明による抗体は、好ましくは、阻害効果を示し、およびこれを引き起こし、これは通常は、IC
50値により、好適な範囲、好ましくはマイクロモル範囲において、およびより好ましくはナノモル範囲において記述される。
【0099】
本発明による化合物は、ヒトまたは動物、特に類人猿、イヌ、ネコ、ラットまたはマウスなどの哺乳動物に投与することができ、ヒトまたは動物の身体の治療的処置において、および上述の疾患の組み合わせにおいて、用いることができる。それらはさらに、診断剤として、または試薬として用いることができる。
【0100】
さらに、本発明による化合物は、カテプシンDの単離およびこれの活性または発現の研究のために用いることができる。さらに、それらは、妨害されたカテプシンD活性に関連する疾患の診断方法における使用のために、特に好適である。本発明は、したがってさらに、カテプシンDの単離およびこれの活性または発現の研究のための、またはカテプシンDの結合剤および阻害剤としての、本発明による化合物の使用に関する。
【0101】
診断目的のために、本発明による化合物は、例えば、放射活性標識してもよい。放射活性標識の例は、
3H、
14C、
231Iおよび
125Iである。好ましい標識方法は、ヨードゲン(iodogen)法(Frakerら、1978年)である。さらに、本発明による化合物は、酵素、フルオロフォアおよびケモフォア(chemophore)により標識してもよい。酵素の例は、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼおよびグルコースオキシダーゼであり、フルオロフォアの例はフルオレセインであり、ケモフォアの例はルミノールであり、例えば蛍光呈色のための自動検出系は、例えばUS 4,125,828およびUS 4,207,554において記載される。
【0102】
式Iの化合物は、特に非化学的方法による医薬調製物の調製のために、用いることができる。この場合、それらを、少なくとも1種の固体、液体および/または半液体の賦形剤またはアジュバントと一緒に、および任意に1または2以上のさらなる活性化合物と組み合わせて、好適な投与形態にする。
【0103】
本発明は、したがってさらに、少なくとも1種の式Iの化合物、および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物および立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物を含む、医薬調製物に関する。特に、本発明はまた、さらなる賦形剤および/またはアジュバントを含む医薬調製物に関し、およびまた、少なくとも1種のさらなる医薬活性化合物を含む医薬調製物に関する。
【0104】
特に、本発明はまた、医薬調製物の調製のためのプロセスに関し、当該プロセスは、式Iの化合物および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物および立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物のうちの1つを、固体、液体または半液体の賦形剤またはアジュバントと一緒に、および任意にさらなる医薬活性化合物と共に、好適な投与形態にすることを特徴とする。
【0105】
本発明による医薬調製物は、ヒト医学または獣医学における医薬として用いることができる。患者または宿主は、任意の哺乳動物種、例えば霊長類種、特にヒト;マウス、ラットおよびハムスターを含むげっ歯類;ウサギ;ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属していてよい。動物モデルは、ヒト疾患の処置のためのモデルを提供する実験による研究のために重要である。
【0106】
好適なキャリア物質は、経腸(例えば経口)、非経口または局所投与のために好適であり、新規化合物と反応しない、有機または無機の物質、例えば水、植物油(ヒマワリ油またはタラ肝油)、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、乳糖またはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラノリンまたはワセリンである。当業者は、その専門的知識におり、どのアジュバントが所望される医薬処方物のために好適であるかについて知悉している。溶媒、例えば水、生理食塩水、または、例えばエタノール、プロパノールもしくはグリセロールなどのアルコール、ブドウ糖もしくはマンニトール溶液などの糖の溶液、または前記の溶媒の混合物、ゲル化剤、錠剤補助剤、およびほかの活性成分キャリア以外に、例えば潤滑剤、安定化剤および/または湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼすための塩、抗酸化剤、分散剤、消泡剤、緩衝化物質、香味剤および/または香料もしくは香味矯正剤、保存剤、可溶化剤または色素もまた用いることが可能である。所望される場合、本発明による調製物または医薬は、1または2以上のさらなる活性化合物、例えば1または2以上のビタミンを含んでもよい。
【0107】
所望される場合、本発明による調製物または医薬は、1または2以上のさらなる活性化合物および/または1または2以上の作用増強剤(アジュバント)を含んでもよい。
用語「医薬処方物」および「医薬調製物」は、本発明の目的のために、類義語として用いられる。
【0108】
ここで用いられる場合、「薬学的に耐容される」とは、それらから得られる医薬調製物の、哺乳動物への、例えば悪心、眩暈、消化の問題などの望ましくない生理学的副作用を伴わない投与を容易にする、医薬、沈降試薬、賦形剤、アジュバント、安定化剤、溶媒、および他の剤を指す。
【0109】
非経口投与のための医薬調製物において、等張性、体水分正常状態(euhydration)、ならびに処方物の、使用されるアジュバントの、および一次包装の、耐容性および安全性(低毒性)についての要求が存在する。驚くべきことに、本発明による化合物は、好ましくは、直接的な使用が可能であり、したがって、医薬処方物における本発明による化合物の使用の前の、毒物学的に受容不可能な剤(例えば高濃度の有機溶媒または他の毒物学的に受容不可能なアジュバントなど)の除去のためのさらなる精製ステップが不要であるという利点を有する。
【0110】
本発明は、特に好ましくはまた、沈降した非結晶、沈降した結晶、または溶解もしくは懸濁した形態における、少なくとも1種の本発明による化合物、ならびに任意に賦形剤および/またはアジュバントおよび/またはさらなる医薬活性化合物を含む、医薬調製物に関する。
【0111】
本発明による化合物は、好ましくは、不都合であり望ましくない本発明による化合物の凝集が起こすことなく、高濃縮された処方物の調製を可能にする。したがって、高い活性成分含有量を有するすぐ使用できる溶液を、水性溶媒を用いてまたは水性媒質中で本発明による化合物を用いて調製することができる。
化合物および/またはその生理学的に受容可能な塩および溶媒和物はまた、凍結乾燥してもよく、生じた凍結乾燥物は、例えば、注射用調製物の調製のために用いることができる。
【0112】
水性調製物は、本発明による化合物を、水溶液中に溶解または懸濁し、任意にアジュバントを添加することにより、調製することができる。この目的のために、既定の容積の、前記のさらなるアジュバントを既定の濃度において含むストック溶液を、既定の濃度の本発明による化合物を有する溶液または懸濁液に有利に添加し、混合物を、任意に、あらかじめ計算された濃度まで、水で希釈する。あるいは、アジュバントを固体の形態において添加してもよい。各々の場合において必要とされる量のストック溶液および/または水を、その後、得られた水性の溶液または懸濁液に添加することができる。本発明による化合物はまた、有利に、全てのさらなるアジュバントを含む溶液中で直接的に溶解または懸濁してもよい。
【0113】
本発明による化合物を含み、4〜10のpHを有し、好ましくは5〜9のpHを有し、250〜350mOsmol/kgの重量モル浸透圧濃度を有する溶液または懸濁液を、有利に調製することができる。医薬調製物を、したがって直接的にその後、疼痛を伴うことなく、静脈内に、動脈内に、関節内に、皮下にまたは経皮的に投与することができる。さらに、調製物をまた、例えばブドウ糖溶液、等張食塩水またはリンガー溶液などの注入溶液に添加してもよく、これはまたさらなる活性化合物を含んでもよく、したがってまた、相対的に大量の活性化合物を投与することを可能にする。
本発明による医薬調製物はまた、複数の本発明による化合物の混合物を含んでもよい。
【0114】
本発明による調製物は、生理学的に良好に耐容され、調製が容易であり、正確に分配することができ、好ましくは、アッセイに関して、貯蔵および輸送を通して分解生成物および凝集物に関して、ならびに複数回の凍結融解プロセスの間、安定である。それらは、好ましくは、安定な様式において、少なくとも3か月間〜2年間の期間にわたり、冷蔵温度(2〜8℃)において、ならびに室温(23〜27℃)および60%の相対的雰囲気湿度(R.H.)において、貯蔵することができる。
【0115】
例えば、本発明による化合物は、乾燥により、安定な様式において貯蔵することができ、必要な場合に、溶解または懸濁により、すぐ使用できる医薬調製物に変換することができる。可能な乾燥方法は、例えば、これらの例に限定されることなく、窒素気体乾燥、真空オーヴン乾燥、凍結乾燥、有機溶媒による洗浄とその後の空気乾燥、液体層(liquid-bed)乾燥、流動層乾燥、スプレー乾燥、ローラー乾燥、層乾燥(layer drying)、室温における空気乾燥、およびさらなる方法である。
【0116】
用語「有効量」は、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば研究者または医師により探求または所望される生物学的または医学的応答を引き起こす、医薬の量または医薬活性化合物の量を表す。
【0117】
さらに、用語「治療有効量」は、この量を投与されていない対応する対象と比較して、以下の帰結を有する量を表す:疾患、症候群、疾患状態、愁訴、障害の処置、治癒、予防または除去の改善、または副作用の予防、あるいはまた疾患、愁訴または障害の進行の軽減。用語「治療有効量」はまた、正常な生理学的機能の増大のために有効な量を包含する。
【0118】
本発明による調製物または医薬、本発明による化合物および/またはその生理学的に受容可能な塩および溶媒和物の使用においては、一般に、既知の市販の製剤または調製物と同様に、好ましくは使用単位当たり0.1〜500mg、特に5〜300mgの投与量において用いられる。日用量は、好ましくは体重1kg当たり0.001〜250mg、特に0.01〜100mgである。調製物は、1日当たり1回または2回以上、例えば1日当たり2回、3回または4回投与することができる。しかし、患者についての個々の用量は、多数の個々の要因に、例えば、用いられる特定の化合物の効力に、年齢、体重、一般的な健康の状態、性別、栄養に、投与の時間および方法に、排出速度に、他の医薬との組み合わせに、ならびに特定の疾患の重篤度および期間に依存する。
【0119】
生体における医薬活性化合物の取り込みの尺度が、そのバイオアベイラビリティーである。医薬活性化合物が、静脈内で、注射溶液の形態において、生体に送達される場合、その絶対的なバイオアベイラビリティー、すなわち、変化していない形態において全身の血液(すなわち大循環(major circulation))に到達する薬剤の割合は、100%である。治療活性化合物の経口投与の場合は、活性化合物は、一般に、処方物中で固体の形態にあり、したがって、第1に、それが侵入障壁、例えば胃腸管、口腔粘膜、鼻粘膜または皮膚、特に角質層を超えることができるためには、あるいは身体により吸収されることができるためには、溶解しなければならない。薬物動態についての、すなわちバイオアベイラビリティーについてのデータは、J. Shaffer et al., J. Pharm. Sciences, 88 (1999), 313-318の方法と同様に、得ることができる。
【0120】
さらに、この型の医薬は、薬学の分野において一般に公知のプロセスのうちの1つにより、調製することができる。
医薬は、任意の望ましい好適な経路を介する、例えば経口(頬側もしくは舌下を含む)、直腸、肺、鼻、局所(頬側、舌下もしくは経皮を含む)、膣、または非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、および特に関節内を含む)経路による投与のために、適応させることができる。この型の医薬は、薬学の分野において公知のすべてのプロセスにより、例えば活性化合物を賦形剤またはアジュバントと組み合わせることにより、調製することができる。
【0121】
非経口投与は、好ましくは、本発明による医薬の投与のために好適である。非経口投与の場合、関節内投与が特に好ましい。
本発明は、したがって、好ましくはまた、変形性関節症、外傷性軟骨傷害、関節炎、疼痛、アロディニアまたは痛覚過敏からなる群より選択される生理学的および/または病態生理学的状態の処置および/または予防における関節内投与のための、本発明による医薬調製物の使用に関する。
【0122】
関節内投与は、本発明による化合物を、関節軟骨の近傍において滑液中に直接的に投与することができ、そこから軟骨組織中に拡散させることができるという利点を有する。本発明による医薬調製物は、したがってまた、関節の間隙中に直接的に注射してもよく、これにより、意図される作用の部位において直接的にそれらの作用を生じることができる。本発明による化合物はまた、活性化合物のゆっくりした(slow)、持続的なおよび/または制御された放出を有する、非経口で投与されるべき医薬の調製のために好適である。それらはまた、遅延放出型(delayed-release)処方物の調製のためにも好適であり、これは、相対的に長い時間間隔においてのみ投与が必要であるため、患者にとって有利である。
【0123】
非経口投与に適応された医薬として、水性および非水性の無菌の注射溶液であって、抗酸化剤、緩衝化財、静菌剤、および、処方物に処置されるべきレシピエントの血液または滑液との等張性を付与する溶質を含むもの;ならびに懸濁媒および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の無菌の懸濁液が挙げられる。処方物は、単回用量または複数用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアルにおいて送達することができ、使用が必要となる直前に、無菌のキャリア液体、例えば注射用の水を添加するだけでよいように、フリーズドライ(凍結乾燥)状態において貯蔵することができる。処方に従って調製される注射用の溶液および懸濁液は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0124】
本発明による化合物はまた、例えば小さい単層の小胞、大きな単層の小胞、および複層の小胞などのリポソーム送達系の形態において投与してもよい。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの多様なリン脂質から形成することができる。
【0125】
本発明による化合物はまた、ターゲティングされた医薬賦形剤のように、可溶性ポリマーに結合していてもよい。かかるポリマーは、パルミトイルラジカルにより置換された、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリジンを包含し得る。本発明による化合物は、さらに、医薬の遅延型放出を達成するために好適である生分解性ポリマーのクラス、例えばポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリレート、ポリ酪酸−コ−グリコール酸、デキストランとメタクリレートとのコンジュゲートなどのポリマー、ポリリン酸エステル、多様な多糖およびポリアミンおよびポリ−ε−カプロラクトン、アルブミン、キトサン、コラーゲンまたは加工ゼラチン、および架橋されているかまたは両親媒性のハイドロゲルのブロックコポリマーに結合していてもよい。
【0126】
経腸投与(経口または直腸)のために好適であるのは、特に、錠剤、糖衣錠、カプセル、シロップ、ジュース、ドロップまたは坐剤であり、局所使用のために好適であるのは、軟膏、クリーム、ペースト、ローション、ゲル、スプレー、泡体、エアロゾル、溶液(例えば、エタノールもしくはイソプロパノールなどのアルコール、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセタミド、1,2−プロパンジオール、またはこれらの、これらのうちの1つの別のものとの、および/または水との混合物中の溶液)、あるいは粉末である。また局所使用のために特に好適であるのは、リポソーム調製物である。
【0127】
軟膏を得るための処方の場合、活性化合物は、パラフィン性または水混和性のクリーム基剤と共に使用することができる。あるいは、活性化合物は、水中油型のクリーム基剤または湯中水型の基剤と共にクリームに処方することができる。
経皮投与のために適応させた医薬は、レシピエントの表皮との伸長した密接な接触のための、独立した硬膏剤として送達してもよい。したがって、例えば、Pharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)において一般論として記載されるように、活性化合物を硬膏剤からイオン泳動により供給することができる。
【0128】
言うまでもないことであるが、特に上述した構成要素以外に、本発明の医薬はまた、特定の型の医薬処方物に関して当該分野において通常のものである他の剤を含んでもよい。
【0129】
本発明はまた以下の別々のパックからなる、セット(キット)に関する:
a)式Iの化合物および/またはその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物の有効量、ならびに
b)さらなる医薬活性化合物の有効量。
【0130】
セットは、箱またはカートン、個々のボトル、バッグまたはアンプルなどの好適な容器を含む。セットは、例えば、各々が、式Iの化合物および/またはその薬学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物の有効量、ならびにさらなる医薬活性化合物の有効量を、溶解または凍結乾燥形態において含む、別々のアンプルを含んでもよい。
【0131】
さらに、本発明による医薬は、特定の既知の治療において相加的または相乗的効果を提供するために用いることができ、あるいは、特定の既存の治療の効力を回復させるために用いることができる。
【0132】
本発明による化合物以外に、本発明による医薬調製物はまた、さらなる医薬活性化合物、例えば変形性関節症の処置における使用のために、他のカテプシンD阻害剤、NSAIDS、Cox-2阻害剤、糖質コルチコイド、ヒアルロン酸、アザチオプリン、メトトレキサート、抗CAM抗体(例えば抗ICAM-1抗体であるFGF-18など)を含んでもよい。言及される他の疾患の処置のために、本発明による医薬調製物はまた、本発明による化合物以外に、その処置における分野における当業者に公知である、さらなる医薬活性化合物を含んでもよい。
【0133】
ここで開示される癌の処置は、本発明の化合物による治療として、または手術、放射線もしくは化学療法と組み合わせて行うことができる。この型の化学療法は、以下のカテゴリーの抗腫瘍活性化合物のうちの1または2以上の活性化合物の使用を含んでもよい:
(i)癌医学において用いられるような抗増殖/抗新形成/DNA傷害活性化合物、およびそれらの組み合わせ、例えばアルキル化活性化合物(例えばシスプラチン、パルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファンおよびニトロソウレア);抗代謝薬(例えば、5−フルオロウラシルおよびテガフールなどのフルオロピリミジンなどの葉酸代謝拮抗薬、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシウレアおよびゲムシタビン);抗腫瘍性抗生物質(例えば、アドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミスラマイシンなどのアントラサイクリン);抗有糸分裂活性化合物(例えば、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイド、ならびにタキソールおよびタキソテールなどのタキソイド);トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、エトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロトキシン、アムサクリン、トポテカン、イリノテカンおよびカンプトテシン)、ならびに細胞分化活性化合物(例えばオールトランスレチノイン酸、13−シス−レチノイン酸およびフェンレチニド);
【0134】
(ii)細胞分裂停止活性化合物、例えば、抗エストロゲン(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびイドキシフェン)、エストロゲン受容体調節剤(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、リュープロレリンおよびブセレリン)、プロゲステロン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾールおよびエキセメスタン)、ならびにフィナステリドなどの5α−レダクターゼの阻害剤;
(iii)癌の浸潤を阻害する活性化合物(例えばマリマスタットなどのメタロプロテイナーゼ阻害剤、およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤);
【0135】
(iv)増殖因子機能の阻害剤、例えば増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体、例えば、抗erbb2抗体トラスツズマブ[Herceptin
TM]および抗erbbl抗体セツキシマブ[C225])、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤、例えば上皮増殖因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えばN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィニチブ、AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSI-774)および6−アクリルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI 1033)、例えば血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、ならびに、例えば、肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤;
【0136】
(v)抗血管新生活性化合物、例えば、血管内皮増殖因子の効果を阻害するもの(例えば、抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ[Avastin
TM]、国際特許出願WO 97/22596、WO 97/30035、WO 97/32856およびWO 98/13354において公開されている化合物)、ならびに別の機序により作用する化合物(例えばリノミド、インテグリンαvβ3の機能の阻害剤およびアンジオスタチン);
【0137】
(vi)コンブレスタチンA4ならびに国際特許出願WO 99/02166、WO 00/40529、WO 00/41669、WO 01/92224、WO 02/04434およびWO 02/08213において公開されている化合物などの血管破壊剤;
(vii)アンチセンス治療、例えば上述の標的に向けられたもの(抗RasアンチセンスであるISIS 2503など);
【0138】
(viii)遺伝子治療アプローチであって、例えば、異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2などの異常な改変された遺伝子の置き換えのためのアプローチ、シトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロレダクターゼ酵素を用いるものなどのGDEPTアプローチ(遺伝子特異的(gene-directed)酵素プロドラッグ治療)、ならびに、多剤耐性治療などの化学療法または放射線療法に対する患者の耐容性を増大するアプローチを含むもの;
【0139】
(ix)免疫治療アプローチであって、例えば、患者の腫瘍細胞の免疫原性を増大させるためのex-vivoおよびin-vivoアプローチ(インターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインによるトランスフェクションなど)、T細胞アネルギーを軽減するためのアプローチ、サイトカインをトランスフェクトされた樹状細胞などのトランスフェクトされた免疫細胞を用いるアプローチ、サイトカインをトランスフェクトされた腫瘍細胞の使用のためのアプローチ、ならびに抗イディオタイプ抗体の使用のためのアプローチを含むもの。
【0140】
表1からの医薬は、式1の化合物と好ましく組み合わせることができるが、これは排他的なものではない。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【0141】
さらなる態様がなくとも、当業者は、上の記載を最も広い範囲において用いることができるであろうことが想定される。好ましい態様は、したがって、単に説明的な開示としてみなされるべきであり、これは決して限定的なものではない。
【0142】
以下の例は、したがって、本発明をそれを限定することなく説明することを意図される。他に示されない限りにおいて、パーセントのデータは、重量パーセントを表す。すべての温度は摂氏において示される。「慣用的な仕上げ」:必要な場合は水を添加し、必要な場合は最終生成物の構成に依存してpHを2〜10の間の値に調製し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンで抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させ、生成物をシリカゲル上でのクロマトグラフィーにより、および/または結晶化により精製する。
シリカゲル上でのRf値;質量分析:EI(電子衝突イオン化):M
+、FAB(高速原子衝撃):(M+H)
+、THF(テトラヒドロフラン)、NMP(N−メチルピロリドン)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、EA(酢酸エチル)、MeOH(メタノール)、TLC(薄層クロマトグラフィー)
【0143】
以下の物質を、合成して特徴づけた。しかし、物質の調製および特徴づけはまた、当業者にとっての他の方法によっても行い得る。
例1:説明的な式Iの化合物
表2
以下の化合物、およびその生理学的に受容可能な塩、誘導体、溶媒和物、プロドラッグおよび立体異性体、および全ての比におけるそれらの混合物は、本発明に従う。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
安定:4時間後に75%を回収。
【0144】
疑問を避けるために、本発明による化合物の化学名と、本発明による化合物の化学構造の表現とが、誤って一致しない全ての場合においては、本発明による化合物は、化学構造の表現により明確に定義される。
【0145】
保持時間を決定した:
Chromolith Speed Rod RP 18e 50-4.6 mm LCMS;polar.m、2.4ml/分、220nm、バッファーA 0.05%のHCOOH/H2O、バッファーB 0.04%のHCOOH/ACN、0.0〜2.8分 4%〜100%のバッファーB;2.8〜3.3分 100%のバッファーB、3.3〜3.4分 100%〜4%のバッファーBまたはChromolith Speed Rod RP 18e 50-4.6 mm LCMS;polar.m、2.4ml/分、220nm、バッファーA 0.05%のHCOOH/H2O、バッファーB 0.04%のHCOOH/ACN、0.0〜3.0分5%〜100%のバッファーB;3.0〜3.5分 100%のバッファーB
【0147】
例2:X=HおよびQ=CH
2である本発明による式Iの化合物の調製
請求されるX=HおよびQ=CH
2である式Iの化合物は、例えば当業者に公知の方法により、以下の合成シークエンスにより、調製することができる。示される例は、合成を説明するが、これを例に限定するものではない。
【0148】
【化12】
置換オルト−ニトロベンズアルデヒドから出発して、好適なアミンを用いる還元的アミノ化により、置換オルト−ニトロベンジルアミンを調製し、触媒、例えばラネーニッケルの存在下における水素化により、対応するアニリン誘導体に変換する。ラジカルRが、触媒、例えばラネーニッケル、および水素の存在下において反応性である官能基を含む場合、これらのユニットの還元が起こり得(例えばアルケニルがアルキルに変換される)、これはプロセスの一部である。10℃〜80℃の高温における、好ましくはRT〜60℃臭化シアンとの反応による環化は、本発明によるグアニジン誘導体を臭化水素酸塩として生じる。これから、塩基による処理により、遊離グアニジン誘導体を得る。
このシークエンスの後に、例えばキラル分離、酸化、還元、金属触媒反応、保護基の除去、アミドカップリングなどのさらなるステップを、方法をこれらの反応に限定することなく行ってもよい。
【0149】
出発材料として必要とされる置換オルト−ニトロベンズアルデヒドは、市販されているか、または例えば鈴木反応、加水分解、水素化、アミドカップリングなどの対応する方法により、調製することができる。
A)アミド官能基を有する置換オルト−ニトロベンズアルデヒドの調製のためのプロセス:
【化13】
【0150】
このプロセスは、例えば以下の(これまで知られていなかった)化合物の調製を可能にする:
【化14】
【0151】
B)鈴木反応によるアリールラジカルまたはアルケニルラジカルを含むオルト−ニトロベンズアルデヒドの調製のためのプロセス:
【化15】
アリールラジカルまたはアルケニルラジカルを含むオルト−ニトロベンズアルデヒドは、上の式に従って、好適なボロン酸を用いる鈴木反応により、調製することができる。遊離ボロン酸の代わりに、ボロン酸エステルを、同等の首尾により使用することができる。リガンドとしてSPhos、および塩基としてリン酸カリウムを用いる場合の収率は、典型的には、60〜99%である。反応の温度は、10℃〜80℃、好ましくはRT〜60℃、特に好ましくは30℃〜50℃である。このプロセスは、例えば以下の(これまで知られていなかった)化合物の調製を可能にする:
【0153】
この方法において調製した化合物を、本発明による式Iの化合物の調製のために、以下の通りさらに反応させる:
【化17】
【0154】
置換オルト−ニトロベンジルアミンを、好適なアミンを用いる還元的アミノ化により調製し、触媒、例えばラネーニッケルの存在下における水素化により、対応するアニリン誘導体に変換する。このプロセスにおいて、アルケニル基の二重結合もまた、同時に還元される。
【0155】
上のとおり、高温での臭化シアンとの反応による環化は、本発明によるグアニジン誘導体を臭化水素酸塩として生じ、これから、塩基との処置により、遊離グアニジン誘導体が遊離する。
【0156】
例3:本発明によるX=HまたはX=NH
2およびQ=C=Oである式Iの化合物の調製
請求されるX=H(式Ib)またはX=NH
2(式Ia)およびQ=C=Oである式Iの化合物は、例えばBioorganic Medicinal Chemistry (2007), 4009-4015において記載されるような、当業者に公知の方法により調製することができる。この方法の改変において、請求されるX=H(式Ib)またはX=NH
2(式Ia)およびQ=C=Oである式Iの化合物は、以下の合成シークエンスにより、調製することができる。示される例は、合成を説明するが、これを例に限定するものではない。
【0157】
【化18】
置換オルト−アミノ安息香酸エステルから出発して、チオホスゲンまたは類似の試薬との反応により、対応するイソシアナートを調製する。対応する環状チオウレア誘導体を生じるための環化を、好適なアミンとの反応により、塩基性条件下において、40℃〜100℃、好ましくは60℃〜90℃、特に好ましくは75℃〜85℃の温度において、非常に特に好ましくは80℃において行う。幾つかの場合において、塩基性試薬、例えばカリウムtert−ブトキシドの添加が好ましいことが判明している。チオウレア誘導体を、80℃〜200℃、好ましくは100℃〜150℃、特に好ましくは110℃〜130℃の高温での、例えばまた電子レンジ中での、ヒドラジンとのさらなる反応により、標的である本発明による化合物(X=NH
2)に変換する。
対照的に、標的である本発明による化合物(X=H)は、アンモニアまたはヒドロキシルアミンとの反応により得られる。tert−ブチルヒドロペルオキシドの存在下における反応の性能が、ここで好ましいことが判明している。
【0158】
このシークエンスの後で、例えば、酸化、還元、金属触媒反応、保護基の除去、アミドカップリングなどのさらなるステップを、方法をこれらの反応に限定することなく行ってもよい。
出発材料として必要とされる置換オルト−アミノ安息香酸エステルは、市販されているか、または、例えば、対応するオルト−アミノ安息香酸からエステル化により調製する。
【0159】
例4:A21(2−アミノ−3−インダン−2−イル−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−7−イル)−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)メタノンの調製
ステップ1:4(2,3−ジヒドロインドール−1−カルボニル)−2−ニトロベンズアルデヒド.
【化19】
4−ホルミル−3−ニトロ安息香酸(650.00mg;3.33mmol;100.00mol%)を、N,N−ジメチルホルムアミド(20.00ml;257.20mmol;7721.20mol%)中で溶解し、INDOLINE(0.37ml;3.33mmol;100.00mol%)およびエチルジイソプロピルアミン(578.04μl;3.33mmol;100.00mol%)を添加した。反応混合物を、氷槽中で冷却し、Hatu C10H15N6O * F6P(1.39g;3.66mmol;110.00mol%)を、攪拌しながら添加し、RT一晩、撹拌を続けた。仕上げのために、反応混合物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液中に攪拌しながら注入し、30分間撹拌を続け、形成された結晶を、吸引によりろ過除去し、水でリンスしした。少量のEAからの再結晶化は、430mgの4−(2,3−ジヒドロインドール−1−カルボニル)−2−ニトロベンズアルデヒドを、ベージュ色の結晶として生じた(収率42%、含有量>97%)。MS-FAB(M
+H
+)=297.0Rf(polar method):2.22分(MSトラック)。
【0160】
以下の化合物は、このステップと同様に調製することができる:
【化20】
【0161】
ステップ2:(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−[4−(インダン−2−イルアミノメチル)−3−ニトロフェニル]−メタノン
【化21】
4−(2,3−ジヒドロインドール−1−カルボニル)−2−ニトロベンズアルデヒド(430.00mg;1.41mmol;100.00mol%)を、1,2−ジクロロエタン(10.00ml;126.31mmol;8963.18mol%)中に、2−アミノインダン(262.78mg;1.97mmol;140.00mol%)と共に溶解し、氷酢酸(81.41μl;1.41mmol;100.00mol%)およびトリアセトキシ水酸化ホウ素ナトリウム(95%)(418.15mg;1.97mmol;140.00mol%)を添加し、混合物を、RTで一晩撹拌した。トリアセトキシ水酸化ホウ素ナトリウム(95%)(40.00mg;0.19mmol;13.39mol%)を再び加え、混合物を、RTで3時間撹拌した。水/ジクロロメタンを反応混合物に添加し、水相をジクロロメタンで1回抽出し、有機相を、飽和NaCl溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過して蒸発させた。CombiflashRfユニットにおけるカラムクロマトグラフィー(120gのRediSepシリカカラム、60ml/分のヘプタン/酢酸エチル、25分間において5〜100%のEA)による粗生成物の精製は、330mgの(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−[4−(インダン−2−イルアミノメチル)−3−ニトロフェニル]−メタノンを、ベージュ色の結晶として生じた。
(収率56.6%、含有量100%)。MS-FAB(M
+H
+)=414.5Rf(polar method):1.80分(MSトラック)。
【0162】
ステップ3:[3−アミノ−4−(インダン−2−イルアミノメチル)−フェニル]−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)メタノン
【化22】
330mgの(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−[4−(インダン−2−イルアミノメチル)−3−ニトロフェニル]−メタノンを、300mgのスポンジ状ニッケル(水で濡らしたもの)の存在下において、10mlのTHF中で、大気圧および室温において、水素を用いて、一晩、還元した。溶媒の除去は、267mgの[3−アミノ−4−(インダン−2−イルアミノメチル)フェニル]−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−メタノンを、ロウ様の固体として生じた。
(収率71.7%、含有量82.2%)。MS-FAB(M
+H
+)=384.6Rf(polar method):1.74分(MSトラック)。
【0163】
ステップ4:[3−アミノ−4−(インダン−2−イルアミノメチル)フェニル]−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−メタノン
エラー!フィールドコードのオブジェクトを編集して作成することはできません。
3−アミノ−4−(インダン−2−イルアミノメチル)フェニル]−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−メタノン(267.00mg;0.70mmol;100.00mol%)を、1,4−ジオキサン(最大0.005%のH
2O)SeccoSolv(登録商標)(6.00ml;70.14mmol;10074.56mol%)中で溶解し、臭化シアン(81.12mg;0.77mmol;110.00mol%)を、攪拌しながら添加し、混合物を、80℃で3時間にわたり撹拌した。懸濁液を1,4−ジオキサンで希釈し、120℃でさらに5時間にわたり還流した。臭化シアン(20.00mg;0.19mmol;27.12mol%)を再び添加し、混合物を120℃で3時間にわたり還流した。
【0164】
冷却により沈殿した結晶を、吸引によりろ過除去し、2NのNaOHで処理し、EA中に取り込んだ。EA相を飽和NaCl溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、ろ過し、蒸発させた。少量のアセトニトリルを用いる残渣の粉砕および吸引ろ過による溶媒の除去は、72mgの[3−アミノ−4−(インダン−2−イルアミノメチル)フェニル]−(2,3−ジヒドロインドール−1−イル)−メタノンを白色結晶として生じた。
(収率24.1%、含有量95.2%)。MS-FAB(M
+H
+)=409.5Rf(polar method):1.91分(MSトラック)。
化合物A1、A3、A4、A6、A8〜A16、A20〜23、A25、A26、A29〜31は、この方法により調製することができる(データについてはExcelデータシートを参照)。
【0165】
例5:A9(7−クロロ−3−(5,6−ジメトキシインダン−2−イル)−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミンヒドロブロミド)の調製
【化23】
(2−アミノ−4−クロロベンジル)−(5,6−ジメトキシインダン−2−イル)アミン(580.00mg;1.74mmol;100.00mol%)を、10mlの1,4−ジオキサン中で溶解し、合成のために臭化シアン(203.04mg;1.92mmol;110.00mol%)を、攪拌しながら添加し、混合物を3時間にわたり還流した。冷却により沈殿した結晶を、吸引によりろ過除去し、ジオキサンでリンスし、凍結乾燥機中で乾燥させた(白色結晶、含有量100%)。MS-FAB(M
+H
+)=358.1Rf(polar method):1.73分(MSトラック)。
化合物A2、A9、A24およびA26を、この方法により調製した。
【0166】
例6:A7(3−インダン−2−イル−7−プロピル−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−2−イルアミン)の調製
ステップ1:鈴木反応による2−ニトロ−4−プロぺニルベンズアルデヒド
【化24】
4−クロロ−2−ニトロベンズアルデヒド(3.200g;16.382mmol;100.00mol%)、トランス−プロぺニルボロン酸(1.610g;18.556mmol;113.27mol%)およびリン酸三カリウム一水和物(11.913g;49.147mmol;300.00mol%)(乳鉢で擂り潰したもの(mortared))を、100mlの二口フラスコにおいて、15mlのテトラヒドロフランおよび150.000μlの水中で懸濁した。懸濁液を真空中で脱気し、アルゴンで覆い、合成のための酢酸パラジウム(II)(47%のPd)(18.390mg;0.082mmol;0.50mol%)および2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル(34.667mg;0.082mmol;0.50mol%)を、アルゴンの反流中で添加した。反応混合物を、40℃で、アルゴン雰囲気下において、数時間にわたり撹拌した。反応の後で、混合物をろ過し、ろ過物を乾燥するまで蒸発させた。シリカゲル上での残渣のクロマトグラフィーによる精製(溶離液ヘプタン/EA=11:1)は、3.000gの2−ニトロ−4−プロぺニル−ベンズアルデヒドを生じた(収率95.8%、含有量100%)。MS-FAB(M
+H
+)=192.0Rf(polar method):2.28分(MSトラック)。
【0167】
以下の化合物は、このステップと同様に調製することができる:
【化25】
【0168】
ステップ2:インダン−2−イル−[2−ニトロ−4−((E)−プロぺニル)ベンジル]アミン
【化26】
2−ニトロ−4−プロぺニルベンズアルデヒド(1.000g;0.005mol;100.00mol%)および2−アミノインダン(0.949ml;0.007mol;140.00mol%)を、100mlの一口フラスコにおいて、12mlの1,2−ジクロロエタン中に溶解し、0.302mlの酢酸(氷酢酸)を添加した。95%のトリアセトキシホウ化水素ナトリウム(1.634g;0.007mol;140.00mol%)を、攪拌しながら添加し、反応混合物を、RTで一晩撹拌した。反応の後で、水性の飽和NaHCO
3溶液を添加し、混合物をDCMで希釈した。有機相を分離除去し、Na
2SO
4上で乾燥させ、溶媒を、真空中で取り除く。シリカゲル上での残渣のクロマトグラフィーによる精製(溶離液ヘプタン/EA=3:1)は、1.401gのインダン−2−イル−[2−ニトロ−4−((E)−プロぺニル)−ベンジル]アミンを生じた(収率86.8%、含有量100%)。MS-FAB(M
+H
+)=309.1Rf(polar method):1.83分(MSトラック)。
【0169】
ステップ3:(2−アミノ−4−プロピルベンジル)インダン−2−イルアミン
【化27】
20mlのTHF中の1.200gのインダン−2−イル−[2−ニトロ−4−((E)−プロぺニル)ベンジル]アミンの溶液を、水素を用いて、RTおよび大気圧において、0.200gのスポンジ状ニッケル(水で濡らしたもの)の存在下において、一晩水素化した。溶液をろ過除去し、溶媒を取り除き、1.001gの(2−アミノ−4−プロピルベンジル)インダン−2−イルアミンを無色のオイルとして得た(収率:90.7%、含有量99.0%)。MS-FAB(M
+H
+)=281.1Rf(polar method):1.82分(MSトラック)。
【0170】
ステップ4:3−インダン−2−イル−7−プロピル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミンを得るための環化
【化28】
ジオキサン中に溶解した臭化シアン(0.227ml;0.004mol;120.00mol%)を、100mlの二口フラスコにおいて、20mlの1,4−ジオキサン中の2−アミノ−4−プロピルベンジル)−インダン−2−イル−アミン(1.000g;0.004mol;100.00mol%)の溶液に撹拌しながら添加し、混合物を、80℃で4時間にわたり撹拌した。反応の後で、反応混合物を、氷槽中で冷却し、形成された沈殿を吸引によりろ過除去し、2NのNaOH溶液中に懸濁した。吸引ろ過および乾燥は、0.730gの3−インダン−2−イル−7−プロピル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミンを白色固体として生じた(収率67.7%、含有量100%)。MS-FAB(M
+H
+)=306.2Rf(polar method):1.96分(MSトラック)。
化合物A5、A7およびA17は、この例と同様に調製することができる。
【0171】
例7:A28(2−ヒドラジノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロ−メチル−3H−キナゾリン−4−オン)の調製
ステップ1:メチル2−イソチオシアナート−4−トリフルオロメチルベンゾアート
【化29】
チオホスゲン(1.595ml;20.186mmol;200.00mol%)を、20mlのジクロロメタンおよび20mlのNaHCO
3溶液中のメチル2−アミノ−4−トリフルオロメチルベンゾアート(2.212g;10.093mmol;100.00mol%)の混合物に、氷冷しながら滴下した。反応混合物を、ゆっくりと35℃まで加温し、4〜5時間にわたり撹拌し、さらなる1当量および約10mlのNaHCO
3溶液を添加し、混合物を、35℃で一晩撹拌し、1当量のチオホスゲンおよび10mlのNaHCO
3溶液を再び添加し、混合物を、さらに2時間にわたり撹拌した。相を分離し、水相をDCMで3回抽出した。組み合わせた有機相を、Na
2SO
4上で乾燥させ、溶媒を取り除いた。シリカゲル上での残渣のクロマトグラフィーによる精製(溶離液ヘプタン/EA=5:1)は、2.40gのメチル2−イソチオシアナート−4−トリフルオロメチルベンゾアートを黄色固体として生じた(収率91.1%、含有量100%)。MS FAB(M−31)
+=230.0Rf(polar method):2.71分(MSトラック)。
【0172】
ステップ2:3−インダン−2−イル−2−チオキソ−7−トリフルオロメチル−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オン
【化30】
メチル2−イソチオシアナート−4−トリフルオロメチルベンゾアート(2.397g;9.176mmol;100.00mol%)を、N,N−ジメチルホルムアミド中で合成のために溶解し(20.000ml;0.257mol)、2−アミノインダン(1.372g;10.094mmol;110.00mol%)を添加し、混合物を、80℃で一晩撹拌した。水の添加は沈殿を生じ、これを吸引によりろ過除去し、乾燥の後で、3.30gの3−インダン−2−イル−2−チオキソ−7−トリフルオロメチル−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オンを褐色がかった固体として生じた(収率99.2%、含有量100%)。MS-FAB(M+H+)=363.0Rf(polar method):2.74分(MSトラック)。
【0173】
ステップ3:2−ヒドラジノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロメチル−3H−キナゾリン−4−オン
【化31】
3−インダン−2−イル−2−チオキソ−7−トリフルオロメチル−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オン(350.000mg;0.966mmol;100.00mol%)およびヒドラジン(0.316ml;9.659mmol;1000.00mol%)の溶液を、120℃で、電子レンジ中で45分間、tert−ブタノール中で10分間、撹拌した。水を反応混合物に添加し、形成されたものを吸引によりろ過除去し、水で洗浄して乾燥した。クロマトグラフィーによる精製(逆相、溶離液5%〜65%のACN、20分間)は、乾燥の後で、43mgの4−2−ヒドラジノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロ−メチル−3H−キナゾリン−4−オンを白色粉末として生じた(収率12.0%、含有量97%)。MS-FAB(M
+H
+)=361.1Rf(polar method):2.00分(MSトラック)。
【0174】
例8:7−ブロモ−3−インダン−2−イル−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オンの調製
ステップ1:メチル4−ブロモ−2−イソチオシアナートベンゾアート
【化32】
メチル2−アミノ−4−ブロモベンゾアート(5.000g;21.734mmol;100.00mol%)を、を、50mlのジクロロメタン中に溶解し、50mlのNaHCO
3溶液を添加した。チオホスゲン(3.435ml;43.467mmol;200.00mol%)を、0℃で撹拌しながら添加し、混合物を20分間撹拌し、次いで、ゆっくりとRTまで加温した。反応混合物を、35℃で一晩撹拌し、次いで、1当量のチオホスゲンを添加し、混合物を、35℃で3時間にわたり撹拌し、さらなる1当量のチオホスゲンおよび10mlのNaHCO
3溶液を添加し、混合物を、再びさらに4.5時間にわたり撹拌した。相分離の後で、水相をさらに3回DCMで抽出し、組み合わせた有機相をNaHCO
3で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させた。溶媒の除去およびシリカゲル上でのクロマトグラフィーによる精製(溶離液ヘプタン/EA=3:1)は、3.6gのメチル4−ブロモ−2−イソチオシアナートベンゾアートを白色粉末として生じた(収率61.5%、含有量100%)。MS-FAB(M−31)
+=241.8/239.8Rf(polar method):2.74分(MSトラック)。
【0175】
ステップ2:7−ブロモ−3−インダン−2−イル−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オン
【化33】
25mlのDMF中のメチル4−ブロモ−2−イソチオシアナートベンゾアート(2.00g;7.35mmol;100.00mol%)および2−アミノインダン(0.99g;7.35mmol;100.00mol%)の溶液を、80℃で一晩撹拌した。合成のためのカリウムtert−ブトキシド(0.42g;3.68mmol;50.00mol%)を、反応混合物に添加し、反応が完了するまで80℃で撹拌を続けた。冷却した後、混合物を水中に注ぎ、形成された固体を、吸引によりろ過除去した。乾燥により2.68gの7−ブロモ−3−インダン−2−イル−2−チオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オンを生じた(収率97.7%、含有量100%)。MS-FAB(M−30)=373.0/375.0Rf(polar method):2.69分(MSトラック)。
この化合物を、例6と同様に、対応するヒドラジン誘導体に変換することができる。
【0176】
例9:A27(2−アミノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロメチル−3H−キナゾリン−4−オン)の調製
【化34】
5mlの2−プロパノール中の3−インダン−2−イル−2−チオキソ−7−トリフルオロメチル−2,3−ジヒドロ−1H−キナゾリン−4−オン(350.000mg;0.966mmol;100.00mol%)、ヒドロキシルアミン(50%水溶液、3.000ml;50.863mmol;5266.05mol%)およびtert−ブチルヒドロペルオキシド(3.233g;25.112mmol;2600.00mol%)の溶液を、RTで一晩撹拌した。混合物を水中に注ぎ、形成された固体を、吸引によりろ過除去した。シリカゲル上でのクロマトグラフィーによる精製(溶離液ヘプタン/EA=3:2)は、211mgの2−アミノ−3−インダン−2−イル−7−トリフルオロメチル−3H−キナゾリン−4−オンを黄色固体として生じた(収率61.4%、含有量97%)。MS-FAB(M
+H
+)=346.0Rf(polar method):2.25分(MSトラック)。
【0177】
例10:キラル分離によるA18(3−((S)−5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロ−メチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン)およびA19(3−((R)−5−メトキシ−インダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミン)の調製:
【化35】
80mgのラセミ体の3−(5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロ−キナゾリン−2−イルアミンを、2mlのメタノール中で溶解し、SFCユニット上で、対応する鏡像異性体に分離した(50μlの40ラン)。固定相:ChiralCel OD-H、溶離液CO2、メタノールDEA 0.5(30%)。31mgの3−((S)5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミンおよび31mgの3−((R)5−メトキシインダン−2−イル)−7−トリフルオロメチル−3,4−ジヒドロキナゾリン−2−イルアミンを得た。
MS-FAB(M
+H
+)=362.1Rf(polar method):1.86分(MSトラック)。
A18 Rf(ChiralCel OD-H、溶離液CO2、メタノールDEA 0.5(30%):3.90分。
A19 Rf(ChiralCel OD-H、溶離液CO2、メタノールDEA 0.5(30%):7.09分。鏡像異性体の絶対的な立体配置は、知られておらず、任意に割り当てた。
【0178】
略号:
DCM=ジクロロメタン
DMA=ジメチルアセタミド
DMF=ジメチルホルムアミド
EA=酢酸エチル
h=時間 MTBE=メチルtert−ブチルエーテル
PE=石油エーテル
RT=室温
SPhos=2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシビフェニル
TFA=トリフルオロ酢酸
【0179】
例11:カテプシンD阻害剤の同定のためのin-vitro蛍光アッセイ
カテプシンD活性のモジュレーターを同定するために、同じ分子上のDpn(2,4−ジニトロフェニル)基からのエネルギー移動によりクエンチされる蛍光基(MCA=(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル)を担持する合成ペプチドを用いて、Greinerの384ウェルのnbマイクロタイタープレートにおいて、連続的酵素試験を行った。カテプシンDによるペプチド性基質の切断は、蛍光強度の増大を引き起こす。物質の効力を決定するために、物質の存在下における時間依存的な蛍光強度の増大を、物質の不在下における時間依存的な蛍光の増大と比較した。用いた参照物質は、ペプスタチンA(Sigma-Aldrich)であった。用いた基質は、MCA-GKPILFFRLK(Dnp)d-R-NH2(Enzo Life Sciences, Loerrach)であった。使用された酵素は、1.4nMの最終濃度におけるヒト肝臓から単離されたカテプシンDであった(Sigma-Aldrich)。試験は、100mMの酢酸ナトリウムバッファー、1.25%(v/v)のDMSO、0.25%(w/v)のChaps(pH5.5)中で行った。連続希釈された物質濃度を有する各2μlの物質溶液を、各々の場合において4μlのカテプシンD溶液に添加し、室温において10分間、インキュベートした。2μlの基質溶液(最終濃度5μM)の添加により、反応を開始させた。Envisionマルチ標識リーダー(Perkin Elmer)を用いて開始点蛍光測定(励起波長340nm/発光波長450nm)を行った後で、反応を室温で60分間インキュベートした。反応時間の間に切断されたペプチドフラグメントの量を、その後、450nmにおける蛍光強度の増大の決定により測定した(励起波長340nm)。
本発明による化合物のIC
50値は、例1からの表2から得ることができる。
【0180】
例12:軟骨外植片アッセイ
軟骨の分解に対する潜在的なカテプシンD阻害剤の効果を研究するために、ウシ外植片をベースにしたpHにより誘導したモデルを用いる。外植片を培養する培地のpHは、ここでは、関節炎を患った膝の病態生理学的pHに合わせてある。このpHはpH5.5である。このex vivoモデルにおいて、潜在的なカテプシンD阻害剤を、その後、軟骨の分解プロセスの停止に関するそれらの作用について研究する。軟骨が破壊されると、グリコサミノグリカン(GAG)が、細胞培養上清中に放出される。放出されるGAGの量は、DMMB(塩酸ジメチルメチレンブルー)を用いて、定量的に決定することができる。塩酸ジメチルメチレンブルーを用いて硫化されたGAGが検出される場合、633nmにおける吸光度の低下が利用される。研究は、非常に低いGAG濃度において行われる場合があるので、色素/GAG複合体は、DMMBのGAGとの長時間のインキュベーションの後ですら沈殿しない(沈殿は、他の測定方法においては短時間の後ですらしばしば起こる)。濃度を決定するために、硫酸コンドロイチンを用いるカリブレーション曲線もまた、記録する。GAG値は、IC
50値、すなわち物質がその作用の50%を示す濃度を計算するために用いることができる。
【0181】
溶液:
インキュベーション培地、pH7.4:
FBSを含まないDMEMに、1%のPen/Strepおよび30μg/mlのアスコルビン酸を添加し、培地は貯蔵しない。
インキュベーション培地、pH5.5:
FBSを含まないDMEMを、MESの添加によりpHを調製し、pHメーターを用いてモニタリングし、1%のPen/Strepおよび30μg/mlのアスコルビン酸を添加する。
GAG測定のための溶液:
DMMB呈色溶液(V=500ml):
8mgのDMMB(ジメチルメチレンブルー)を2.5mlのエタノール+1gのギ酸ナトリウム+1mlのギ酸中に溶解し、500mlになるまで再蒸留水を加える。
インキュベーション培地:FBS(FBSを含まない培地)
硫酸コンドロイチン溶液(標準曲線)
以下の濃度を有する標準溶液の調製:50μg/ml;25μg/ml;12.5μg/ml;6.25μg/ml;3.125μg/ml;1.56μg/ml;0.78μg/mlおよび培地のブランク対照。実験も行う培地において、標準溶液の調製を行う。
【0182】
1.)手順:pHにより誘導したウシ外植片の軟骨の分解
ウシ外植片を初めに調製する。96マルチウェルプレートにおいて、軟骨の分解の誘導を行う。1ウェルあたり1つの外植片を培養する。各々の場合において、200μlのFBSを含まないDMEM(インキュベーション培地、pH5.5)+30μg/mlのアスコルビン酸を添加する。このようにして、陰性対照である外植片(n=4)を、pH7.4においてインキュベートする(FBSなし)。この対照は、データの計算には含まれないが、その代わり、pHの変化がGAGの放出に対して所望される効果を有することを保証する。この点において、試験されるべき物質を添加する。外植片のプレインキュベーションは行わない。外植片を、対応する物質と共に、インキュベーター中で、37℃および7.5%CO
2において、3日間にわたり培養する。
【0183】
2.)インキュベーション手順
GAG(グリコサミノグリカン)の放出に対するカテプシンD阻害剤の効果を研究するために、物質を、所望される濃度において使用し、3日間にわたり培養する。試験されるべき化合物を、第1の実験において、1μMの濃度において1%のDMSO中で試験する。GAGの放出に対して>50%の効果を有する物質(これは、Assay Explorerにおいて、対照の<50%に対応する)を、次の試験において、100nMにおいて、1%のDMSO中で試験する。これらの条件下においてGAGの放出に対して>50%の効果を有する物質(これは、Assay Explorerにおいて、対照の<50%に対応する)を、濃度/効果の関係において試験する。ここでは、化合物を以下の濃度において研究する:30μM、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM、0.01μM。
【0184】
用いる陽性対照は、0.01μMの濃度によるペプスタチンAである。アッセイウィンドウは、0%効果として定義される対照(pH5.5)、および100%効果として定義される対照(pH5.5+0.01μMペプスタチンA)により定義される。3日間のインキュベーションの後で、細胞培養上清を収集し、―20℃で貯蔵するか、直接的に測定する。放出されるGAGの量を、測光法により測定する。
【0185】
陽性対照(pH5.5+0.01μMペプスタチンA)および陰性対照(pH5.5)に基づく%におけるそれぞれの物質の効果(1値)を、1μMおよび100nMの濃度について報告する。値は、4回の複製の平均を表す。濃度/効果の関係の決定において、IC
50値をデータベース(Assay Explorer)に報告する。
【0186】
4.)測定
細胞培養上清(200μl)は、直接的に測定するか、または−20℃で貯蔵される。GAGの濃度(上清中のGAGのμg/ml)の正確な決定を確実にするために、測定値は、標準曲線の直線領域中に位置しなければならない。このことを確実にするために、多様な希釈を慣用的に導入する(1/5、1/10、1/20、1/40)。希釈物は、培地を用いて調製し、384ウェルのプレート(15μl)中に自動的に(Hamilton)導入される。60μlのDMMB溶液を、同様に自動的に(またはマルチチャネルピペットを用いて)添加する。迅速な呈色反応が起こり、これをその後、633nmにおいてプレートリーダー(例えばEnvision)を用いて測定する。
存在する試料の量に依存して、少なくとも1回の二重決定を行う。
【0187】
データは、MTPリーダーによりcsvまたはxlsファイルとして提供され、この形式(xls)に基づく生データとして保存されるか、または特定の化合物の効果の%の計算のために用いられる。
【0188】
5.)クオリティーコントロール
pHにより誘導した軟骨の分解の誘導についての対象として、4つの外植片をpH7.4においてインキュベートする。これは、軟骨の生理学的pHに対応し、したがって、GAGの放出に対する効果はここでは予測されない。これらのGAG値(上清のμg/ml)は、したがって、pH5.5でのインキュベーションについてのGAG値よりも常に著しく低い。
実験のチェックのために役立つが、またアッセイウィンドウの定義のためにも重要であるさらなる対照は、ペプスタチン対照(pH5.5+0.01μMペプスタチンA)である。この物質は、殆どのプロテアーゼの活性を非特異的に遮断し、したがって、化合物の最大の可能な効果を決定する。
【0189】
6.)結果
測定された全ての化合物は、GAGアッセイにおいて10
−8〜10
−10MのIC
50値を示した。
(1)Klompmakers, A. & Hendriks, T. (1986) Anal. Biochem. 153, 80-84, Spectrophotometric Determination of Sulfated Glycosaminoglycans.
(2)Groves, P.J. et al. (1997) Anal. Biochem. 245, 247-248
Polyvinyl alcohol-stabilised binding of sulfated GAGs to dimethylene blue.
【0190】
例13:動物における抗痛覚過敏効果の研究
炎症反応を誘導するために、カラゲニン溶液(CAR、1%、50μl)を、ラット膝関節中に、片側において、関節内注射した。注射をされなかった側を、対照の目的のために用いた。1群あたり6個体の動物を用いた。閾値は、マイクロメーターねじ(膝関節について内側−外側)により決定し、温痛覚過敏は、Hargreaves法(Hargreavesら、1988年)による、足底に対する方向づけされた赤外光源により決定した。炎症の部位(膝関節)が測定の部位(足底)とは異なることから、ここでは、用語、二次性温痛覚過敏を用いる。二次性温痛覚過敏の機構は、有効な鎮痛剤の発見のために重要である。
【0191】
温痛覚過敏の実験の説明(Hargreaves試験):実験動物を、石英シート上のプラスチックチャンバー中に置く。試験の前に、実験動物に、初めに、それらが環境に慣れるために約5〜15分間の時間を与える。実験動物がもはやそれほどに頻繁に動かなくなったらすぐに、馴化期間の後で(探索期間の終了)、ガラス底の平面上に焦点を合わせた赤外光源を、刺激するべき後足の下に直接配置する。次いで、ボタンを押すことにより実験の実行を開始する:赤外光は、後足の皮膚温度の上昇をもたらす。実験は、実験動物が後足を上げることにより(疼痛閾値の表現に達したものとして)、または、予め特定された最高温度に達した場合には赤外光源の自動的なスイッチオフにより、停止させる。実験動物が静止して座っている限り、足により反射した光を記録する。足の引き込みがこの反射を中断し、その後は、赤外光源はスイッチオフされ、スイッチオンからスイッチオフまでの時間を記録する。機器を、赤外光源が、皮膚温度を10秒間に摂氏約45℃まで上昇させるようにカリブレーションする(Hargreavesら、1988年)。この目的のためにUgo Basileにより製造された機器を、試験のために用いた。
【0192】
CARは、Sigma-Aldrichから購入した。本発明による特異的カテプシンD阻害剤の投与は、CARの30分前に、関節内で行った。10μg/関節の量におけるトリアムシノロン(TAC)を陽性対照として用い、溶媒(ビヒクル)を陰性対照として用いた。痛覚過敏は、赤外光を当てた足と赤外光を当てていない足との間の引き込み時間の差異として引用される。
【0193】
結果:TACは、CARにより誘導される膨張を軽減することができたが、本発明による特異的カテプシンD阻害剤はできなかった。対照的に、本発明による特異的カテプシンD阻害剤は、温痛覚過敏の程度を、用量の関数として減少させることができた。
評価:本発明の化合物が抗痛覚過敏作用を発揮することが示された。これは、化合物が炎症性膨張に対して影響を及ぼさず、したがって痛覚過敏のトリガーに対して影響を及ぼさなかったことから、推論することができる。したがって、化合物は、ヒトにおいて疼痛軽減作用を生じることを推論することができる。
【0194】
例14:ウシ滑液中での本発明による化合物の安定性
1.)
ウシ滑液の抽出
ウシ外植片の調製において(拡散チャンバーまたは他のアッセイのためのもの)、ウシの蹄(中手骨関節)またはウシの膝のいずれかを用いる。滑液は、両方の関節から得ることができる。この目的のために、滑液を、開いた関節から10mlのシリンジおよびカニューレを用いて慎重に取り除き、準備してあった2mlのエッペンドルフ容器中に移す。エッペンドルフ容器を、動物に応じてラベルする(ウシのパスポートが利用可能である)。ここで、関節の調製の間に血液が関節の間隙に侵入しないことを確実にしなければならない。そうなってしまった場合、滑液が赤っぽい色となり、結果として破棄しなければならない。滑液は、基本的に、高粘性であり、透明から黄色っぽい色である。除去は、滑液の顕微鏡分析と共に、記述する。
【0195】
2.)SFにおける物質の安定性試験のためのバッチ
個々の化合物の安定性をチェックするために、4つの異なるウシ滑液のプールを混合する。この目的のために、SFあたり約1mlを用いる。混合物は、5mlのガラスバイアル中で直接調製する。SFは、徹底的に、しかし慎重に混合する。気泡または泡は形成されるべきではない。この目的のために、ボルテックスユニットを、最も低い速度において用いる。試験されるべき化合物を、(他に必要とされない限りにおいて)1μMの初期濃度において試験する。物質の添加の後で、バッチを再び徹底的に、かつ注意深く混合する。可視的なモニタリングのために、全てのSFバッチを撮影し、写真を、対応する実験のために、eLabBioファイル中にファイルする。
図1は、この型の写真による記述を例として示す。バッチを、インキュベーター中で48時間にわたり37℃および7.5%CO
2においてインキュベートする。
【0196】
3.)サンプリング
サンプリングは、あらかじめ了承された時間(他に必要とされない限りにおいて;以下を参照)の後で行う。1時間あたりSFのうちの200μlを、混合物から取り除き、直接的に、0.5mlの「低結合」エッペンドルフ容器中に移す。「低結合」エッペンドルフ容器は、物質と、容器のプラスチックとの相互作用を最小化するために用いる。SFの1+1混合物が後で形成されるように、200μlのアセトニトリルが、既にエッペンドルフ容器中に導入されている。このことが、その後の分析を単純にするが、SFの添加の直後に、タンパク質の沈殿が起こる場合がある。これは、プロトコルにおいて記述すべきである。0時間の試料を、物質の添加の直後に採取する。これは、安定性の計算において100%値に対応する。理想的には、使用される濃度を、ここで検索すべきである。試料は、−20℃で凍結することができる。
・0時間
・6時間
・24時間
・48時間
【0197】
用いる陰性対照は、物質を含まないSFである。用いる陽性対照は、1μMの物質を含むSFである。これは、0時間の値に対応し、したがって100%の安定性に対応する。
飼料は、「低結合」エッペンドルフ容器中で、−20℃で貯蔵する。試料を、次いで、定量的に測定する。
【0198】
4.)データの処理
測定された濃度(ng/ml)を、グラフにおいて時間に対してプロットする(GraphPad Prism(登録商標))。物質の安定性のパーセンテージを、ここで決定する。用いられる100%値は、0時間の時間におけるSFにおける初期値である。データを、それぞれの実験番号下においてeLabBio中に保存し、MSRデータベースにおいて報告する(対応するインキュベーション時間の後での安定性のパーセントとして)。
【0199】
5.)結果
測定された全ての化合物は、安定なままであった。
【0200】
例15:レニン阻害活性の同定のためのin-vitro蛍光アッセイ
レニン活性のモジュレーターを同定するために、同じ分子上のDabcyl(4’−ジメチルアミノアゾベンゼン−4−カルボキシラート)基からのエネルギー移動によりクエンチされる蛍光基Edans(=(5−(アミノエチル)アミノナフタレンスルホナート)を担持する合成ペプチドを用いて、Greinerの384ウェルのマイクロタイタープレートにおいて、連続的酵素試験を行った。レニンによるペプチド性基質の切断は、蛍光強度の増大を引き起こす。物質の効力を決定するために、物質の存在下における時間依存的な蛍光強度の増大を、物質の不在下における時間依存的な蛍光の増大と比較した。用いた参照物質は、レニン阻害剤2(Z−Arg−Arg−Pro−Phe−His−Sta−Ile−His N−Boc−LysメチルエステルZ)(Sigma-Aldrich)であった。用いた基質は、レニンFRET基質I(DABCYL−g−Abu−Ile−His−Pro−Phe−His−Leu−Val−Ile−His−Thr−EDANS)(Anaspec, Fremont CA)であった。使用された酵素は、10nMの最終濃度における組み換えヒトレニン(Proteos, Kalamazoo, MI)であった。試験は、50mMのMopsバッファー、1.5%(v/v)のDMSO、0.1%(w/v)のIgepal(登録商標)(pH7.2)、0.5%(w/v)のBSA中で行った。連続希釈された物質濃度を有する各2μlの物質溶液を、各々の場合において4μlのレニン溶液に添加し、室温において15分間、インキュベートした。4μlの基質溶液(最終濃度5μM)の添加により、反応を開始させた。Envisionマルチラベルリーダー(Perkin Elmer)を用いて開始点蛍光測定(励起波長340nm/発光波長495nm)を行った後で、反応を37℃で60分間、インキュベートした。反応時間の間に切断されたペプチドフラグメントの量を、その後、495nmにおける蛍光強度の増大の決定により測定した(励起波長340nm)。
結果:測定された全ての化合物は、>30μMのレニン選択性のIC
50を有した。
【0201】
例16:注射バイアル
3リットルの再蒸留水中の100gの式Iの化合物および5gのリン酸水素ナトリウムの溶液を、2Nの塩酸を用いてpH6.5に調整し、無菌条件下においてろ過し、注射バイアル中に移し、無菌条件下において凍結乾燥し、無菌条件下において密封する。各注射バイアルは、5mgの式Iの化合物を含む。
【0202】
例17:溶液
940mlの再蒸留水中で、1gの式Iの化合物、9.38gのNaH
2PO
4・2H
2O、28.48gのNa
2HPO
4・12H
2Oおよび0.1gの塩化ベンザルコニウムから、溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1リットルにし、照射により滅菌する。この溶液を、点眼剤としての形態において用いることができる。
【0203】
例18:軟膏
500mgの式Iの化合物を、無菌的条件下において99.5gのワセリンと混合する。
例19:アンプル
60リットルの再蒸留水中の1kgの式Iの化合物の溶液を、無菌条件下においてろ過し、アンプル中に移し、無菌条件下において凍結乾燥し、無菌条件下において密封する。各アンプルは、10mgの式Iの化合物を含む。