(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、偏向器208、および検出器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。また、XYステージ105上には、試料101を配置する位置とは異なる位置にマーク152が配置されている。また、XYステージ105上には、試料101を配置する位置とは異なる位置にミラー104が配置されている。
【0018】
制御部160は、メモリ51、制御計算機110、偏向制御回路120、検出回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプ132、磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144、及びレーザ測長装置300を有する。メモリ51、制御計算機110、偏向制御回路120、検出回路130、記憶装置140,142,144、及びレーザ測長装置300は、図示しないバスを介して互いに接続されている。DACアンプ132は、偏向制御回路120に接続される。
【0019】
制御計算機110内には、描画データ処理部50、イベント判定部52、ドリフト補正実行処理部54、ビームドリフト量測定部56、補正値演算部58、判定部62,64、決定部66、及び描画制御部68が配置される。描画データ処理部50、イベント判定部52、ドリフト補正実行処理部54、ビームドリフト量測定部56、補正値演算部58、判定部62,64、決定部66、及び描画制御部68といった機能は、それぞれ電気回路等のハードウェアで構成されてもよい、或いは、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。描画データ処理部50、イベント判定部52、ドリフト補正実行処理部54、ビームドリフト量測定部56、補正値演算部58、判定部62,64、決定部66、及び描画制御部68に入出力される情報および演算中の情報はメモリ51にその都度格納される。
【0020】
偏向制御回路120内には、加算器72、位置演算部76、及び偏向量演算部78が配置される。加算器72、位置演算部76、及び偏向量演算部78といった機能は、それぞれ電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。加算器72、位置演算部76、及び偏向量演算部78に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
【0021】
記憶装置140には、レイアウトデータとなる描画データが装置外部から入力され、格納される。例えば、チップAのチップデータ、チップBのチップデータ、チップCのチップデータ、・・・が格納される。各チップはパターン形成される。
【0022】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、偏向器208を用いているが、主副2段の多段偏向器を用いても好適である。或いは3段以上の多段偏向器を用いても好適である。
【0023】
図2は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図2において、実施の形態1における描画方法は、描画工程(S102)と、判定工程(S104)と、判定工程(S106)と、判定工程(S108)と、代表位置決定工程(S116)と、ドリフト測定工程(S118)と、補正量算出工程(S120)と、補正工程(S122)という一連の工程を実施する。また、判定工程(S104)と、判定工程(S106)と、判定工程(S108)と、代表位置決定工程(S116)と、ドリフト測定工程(S118)と、補正量算出工程(S120)と、補正工程(S122)との各工程は、実施の形態1における電子ビームのドリフト補正方法の要部工程を示している。
【0024】
描画工程(S102)として、まず、描画データ処理部50は、記憶装置140から描画データを読み出し、複数段のデータ変換処理を行なって、描画装置100用のフォーマットのショットデータを生成する。描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズにチップのパターンデータに定義された図形パターンを分割する必要がある。そこで、描画データ処理部50は、実際に描画するために、各図形パターンを1回のビームのショットで照射できるサイズに分割してショット図形を生成する。そして、ショット図形毎にショットデータを生成する。ショットデータには、例えば、図形種、図形サイズ、及び照射位置といった図形データが定義される。その他、照射量に応じた照射時間が定義される。生成されたショットデータは記憶装置142に格納される。そして、かかるショットデータを用いて描画が行なわれる。
【0025】
描画制御部69による制御のもと、偏向制御回路120は、記憶装置142からショットデータを読み出し、加算器72によってショットデータが示すショット図形の位置に対してドリフト補正量が加算される。ドリフト補正量は、当初は無くてもよいし、描画前にドリフト補正量を後述する手法と同様の手法で演算しておいてもよい。XYステージ105の位置は、レーザ測長装置300からレーザをミラー104に照射し、ミラー104からの反射光を受光してレーザ測長装置300によって測長される。そして、測定結果は位置演算部76に出力され、位置演算部76によって描画座標系の基準位置が演算される。加算器72で加算された後のショット図形の位置データと描画座標系の基準位置データを用いて偏向量演算部78は、偏向電圧に相当する偏向量を演算し、デジタル信号の偏向量信号をDACアンプ132に出力する。DACアンプ132では、偏向量を示すデジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して偏向電圧として主偏向器208に偏向電圧として印加することになる。
【0026】
そして、描画部150は、電子ビーム200を用いて試料101にパターンを描画する。具体的には、次のように動作する。電子銃201から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像の位置は、偏向器205によって制御され、ビーム形状と寸法を変化させることができる(可変成形)。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、偏向制御回路120により制御された主偏向器208及び副偏向器209により偏向されて、移動可能に配置されたXYステージ105上の試料101の所望する位置に照射される。
【0027】
図3は、実施の形態1におけるXYステージ移動の様子を説明するための図である。
図3において、試料101の描画領域10は、主偏向器208の偏向可能幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、副偏向器209の偏向可能サイズで、メッシュ状に図示しない複数のサブフィールド(SF)(小領域)に仮想分割される。そして、各SF内の各ショット位置に対応するショット図形が描画される。
【0028】
描画装置100では、複数段の偏向器を用いて、ストライプ領域毎に描画処理を進めていく。ここでは、一例として、主偏向器208、及び副偏向器209といった2段偏向器が用いられる。ステージ105が例えば−x方向に向かって連続移動しながら、1番目のストライプ領域20についてx方向に向かって描画を進めていく。そして、1番目のストライプ領域20の描画終了後、同様に、或いは逆方向に向かって2番目のストライプ領域20の描画を進めていく。以降、同様に、3番目以降のストライプ領域20の描画を進めていく。そして、主偏向器208が、XYステージ105の移動に追従するように、SFの基準位置に電子ビーム200を順に偏向する。また、副偏向器209が、各SFの基準位置から当該SF30内に照射されるビームの各ショット位置に電子ビーム200を偏向する。このように、主偏向器208、及び副偏向器209は、サイズの異なる偏向領域をもつ。
【0029】
判定工程(S104)として、判定部62は、描画進行中の描画処理位置がいずれかのストライプ領域20の終端位置かどうかを判定する。終端位置の場合には判定工程(S106)に進む。終端位置ではない場合には描画工程(S102)に戻る。
【0030】
判定工程(S106)として、判定部64は、複数のストライプ領域20の全ストライプ領域20の描画が終了したかどうかを判定する。全ストライプ領域20の描画が終了していない場合には、判定工程(S108)に進む。全ストライプ領域20の描画が終了した場合には描画終了となる。
【0031】
判定工程(S108)として、イベント判定部52は、前回のドリフト補正時から所定の補正期間が経過したかどうかを判定する。所定の補正期間が経過した場合には代表位置決定工程(S116)に進む。所定の補正期間が経過していない場合には描画工程(S102)に戻る。
【0032】
図4は、実施の形態1におけるビームドリフトと時間との関係を示す図である。電子ビーム200の照射を開始すると、電子ビームはビームドリフトを起こす。
図4に示すように、照射開始直後は、電子ビーム自身が持つ、或いは電子ビーム照射に起因するビームドリフト(初期ドリフト)が生じる。初期ドリフトが生じる初期ドリフト期は、ビームドリフトの変化量が大きく、時間の経過と共に、その変化量が小さくなる傾向がある。
図4では、変化量が小さくなった領域を安定期として記載している。
【0033】
そこで、実施の形態1では、ビームドリフトの変化量が大きい照射開始直後、言い換えると描画開始直後は、ビーム位置ドリフト補正を行なう時期の間隔を短くし、時間の経過と共に描画が進むにつれてドリフト補正を行なう時期の間隔を長くする。
図4の例では、ドリフト補正ステップ(1)として、期間t1の間隔で3回補正し、その後、ドリフト補正ステップ(2)として、t1より長い期間である期間t2の間隔で4回補正し、その後、ドリフト補正ステップ(3)として、t2より長い期間である期間t3の間隔で3回補正した後、ドリフト補正ステップ(4)として、t3より長い期間である期間t4の間隔で補正する。例えば、ドリフト補正ステップ(1)では、初期のビームドリフトが大きいので補正間隔の期間t1を5分に設定する。ドリフト補正ステップ(2)では、ある程度ビームドリフトが減ってくるので補正間隔の期間t2を10分に設定する。ドリフト補正ステップ(3)では、さらにビームドリフトが減ってくるので補正間隔の期間t3を30分に設定する。ドリフト補正ステップ(4)では、ほとんどビームドリフトがないので補正間隔の期間t4を60分に設定する。ここで、ドリフト補正ステップを何ステップに分けるかは、所望する最適と思われる任意のステップ数で構わない。そして、各ドリフト補正ステップにおける期間tの長さも所望する最適と思われる任意の長さで構わない。同様に、各ドリフト補正ステップにおける補正回数も所望する最適と思われる任意の回数で構わない。
【0034】
代表位置決定工程(S116)として、決定部66は、主偏向器208を用いて過去に描画方向に対して電子ビームを偏向した実績範囲の代表位置を決定する。実績範囲は、描画工程(S102)において描画ログとして記憶装置144に記録され、蓄積される。実施の形態1では、ドリフト補正を主偏向器208の偏向位置を用いて行う。そのため、ここでは、主偏向器208の描画ログが用いられる。
【0035】
図5は、実施の形態1における主偏向器の偏向実績と代表位置との一例を示す図である。描画ログでは、主偏向器208の偏向領域13の中心から、実際の描画処理に使用した最大偏向位置Xmaxと最小偏向位置Xminとが記録される。VSB型の描画装置100では、通常、偏向領域13の一部、例えば、偏向領域13のうち描画方向側の一部分の領域しか使用しない場合が多い。そのため、描画ログでは、偏向領域13の中心から描画方向(x方向)に向かっての最大偏向位置Xmaxと最小偏向位置Xminとが定義される。そして、かかる描画方向(x方向)に向かっての最大偏向位置Xmaxと最小偏向位置Xminとの間の位置にあるSFへの偏向が実績範囲となる。また、描画方向(x方向)と直交する方向(y方向)には、SFが埋め尽くされているので、パターンが無いSFが存在しない限り、主偏向器208はy方向には偏向しているため実績があることになる。よって、x方向に向かっての最大偏向位置Xmaxと最小偏向位置Xminとがわかれば、主偏向器の偏向実績領域11が取得できる。
【0036】
従来、かかる偏向実績領域11ではなく、主偏向器208の偏向領域13の中心位置でのドリフト量を測定し、補正に用いていたため、実際の偏向とは異なる位置で補正が成されてきた。そのため、ドリフト補正を行っても補正残差が生じることとなった。そこで、実施の形態1では、実際に主偏向器208が描画のためにビーム偏向を行っていた実績範囲領域11内の位置を代表位置12として、かかる代表位置12でドリフト補正を行う。
図5の例では、例えば、実績範囲領域11の中心位置を代表位置12として、かかる代表位置12でドリフト補正を行う。代表位置12として実績範囲領域11の中心位置を用いる場合には、x方向に向かっての最大偏向位置Xmaxと最小偏向位置Xminとの平均位置Xaveを演算することで、中心位置のx方向位置を求めることができる。y方向位置は、もともと主偏向器208の偏向領域13のy方向中心位置で良い。
【0037】
ドリフト測定工程(S118)として、ビームドリフト量測定部56は、実績範囲領域13の代表位置12において電子ビーム200のドリフト量を測定する。
【0038】
図6は、実施の形態1におけるXYステージの上面概念図である。
図6に示すように、試料101が載置されるXYステージ105上には、電子ビーム200のビームドリフト量を検査するためのマーク152が設けられている。マーク152は、電子ビーム200で走査することで位置を検出しやすいように例えば十字型の形状に形成される。なお、
図6の例では、
図1のミラー104については記載を省略している。具体的には、まず、ビーム位置ドリフト補正について、ドリフト補正実行処理部54は、ビームドリフト補正のための動作を実行(開始)するように実行指示(コマンド)を出力して、各制御回路に動作させる。
【0039】
描画装置100内では、実行指示を受けて、試料101とは別にXYステージ105上に設置されたビームキャリブレーション用のマーク152が対物レンズ207の中心位置からずれた上述した偏向領域13内の代表位置12に合うようにXYステージ105を移動させる。そして、主偏向器208で電子ビーム200を代表位置12の前後左右(x方向及びy方向)へと偏向することで、マーク152の十字を電子ビーム200で走査して、マーク152からの反射電子を検出器209で検出し、検出回路130で増幅し、デジタルデータに変換した上で、測定データをビームドリフト量測定部56に出力する。ビームドリフト量測定部56は、入力された代表位置12の測定データから代表位置12において設定された偏向位置との位置ずれ量を電子ビーム200のドリフト量として測定する。
【0040】
補正量算出工程(S120)として、補正値演算部58は、ビームドリフト量測定部56により測定された位置ドリフト量に基づいて、ビーム位置ドリフト補正用の補正値を演算する。例えば、位置ドリフト量(Δx,Δy)の符号を逆にした値(−Δx,−Δy)を補正量とすればよい。そして、補正値は加算器72に出力される。
【0041】
補正工程(S122)として、加算器72に出力された補正値は図示しない記憶装置内の現状までの補正値に上書きされ、補正値を更新する。以上により、ビーム位置ドリフト量を補正するための補正量が設定されたことになる。そして、描画工程(S102)に戻る。
【0042】
描画工程(S102)では、次のストライプ領域20の描画を行う際に、更新された補正値でドリフト補正を行う。具体的には、加算器72にて、ショットデータから得られる元々の設計値のデータと補正値のデータとを加算して合成し、設計データを書き換えることによりビーム位置ドリフトを補正する。加算器72で加算された後のショット図形の位置データと位置演算部76で演算された描画座標系の基準位置データを用いて偏向量演算部78は、偏向電圧に相当する偏向量を演算し、デジタル信号の偏向量信号をDACアンプ132に出力する。DACアンプ132では、偏向量を示すデジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して偏向電圧として主偏向器208に偏向電圧として印加することになる。以上のように、実績範囲の代表位置12におけるドリフト量を用いて、電子ビーム200のドリフトを補正する。描画工程(S102)のその他の内容は上述した内容と同様である。
【0043】
以上のように、実施の形態1によれば、従来のビームを偏向する偏向器の偏向領域中心での位置ずれ量ではなく、実績範囲領域13の代表位置12での位置ずれ量で補正するので、ビーム位置ドリフトを高精度に補正できる。
【0044】
実施の形態2.
実施の形態1では、主偏向領域13の実績範囲領域11内の代表位置12でドリフト量を測定していたが、実施の形態2では、主偏向領域13内の複数個所でドリフト量を測定し、かかる測定結果を用いて代表位置での位置ずれ量で補正する場合について説明する。
【0045】
図7は、実施の形態2における描画装置の構成を示す概念図である。
図7において、制御計算機110内のビームドリフト量測定部56の代わりに、フィッティング部61、偏向感度測定部67、及びドリフト量演算部69が配置された点、及び、偏向制御回路120内に感度補正位置演算部71が配置された点、以外は
図1と同様である。
【0046】
制御計算機110内の描画データ処理部50、イベント判定部52、ドリフト補正実行処理部54、補正値演算部58、フィッティング部61、判定部62,64、決定部66、偏向感度測定部67、描画制御部68、及びドリフト量演算部69といった機能は、それぞれ電気回路等のハードウェアで構成されてもよい、或いは、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。描画データ処理部50、イベント判定部52、ドリフト補正実行処理部54、補正値演算部58、フィッティング部61、判定部62,64、決定部66、偏向感度測定部67、描画制御部68、及びドリフト量演算部69に入出力される情報および演算中の情報はメモリ51にその都度格納される。
【0047】
偏向制御回路120内の感度補正位置演算部71、加算器72、位置演算部76、及び偏向量演算部78といった機能は、それぞれ電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。感度補正位置演算部71、加算器72、位置演算部76、及び偏向量演算部78に入出力される情報および演算中の情報は図示しないメモリにその都度格納される。
【0048】
図8は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図8において、判定工程(S108)と代表位置決定工程(S116)との間に、偏向感度測定工程(S110)と、フィッティング工程(S112)と、感度補正工程(S114)と、を追加した点、及びドリフト測定工程(S118)の代わりにドリフト量演算工程(S119)を配置した点、以外は
図2と同様である。また、判定工程(S104)と、判定工程(S106)と、判定工程(S108)と、偏向感度測定工程(S110)と、フィッティング工程(S112)と、感度補正工程(S114)と、代表位置決定工程(S116)と、ドリフト量演算工程(S119)、補正量算出工程(S120)と、補正工程(S122)との各工程は、実施の形態2における電子ビームのドリフト補正方法の要部工程を示している。また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0049】
描画工程(S102)から判定工程(S108)までの各工程の内容は実施の形態1と同様である。
【0050】
偏向感度測定工程(S110)として、偏向感度測定部67は、主偏向器208の偏向範囲13内の複数の位置にて電子ビーム200のドリフト量を測定する。
【0051】
図9は、実施の形態2における主偏向器の偏向領域と偏向感度測定位置と偏向実績と代表位置との一例を示す図である。
図9の例では、主偏向器208の偏向領域13内を例えば均等に3×3の合計9か所で電子ビーム200のドリフト量を測定する。具体的には、まず、ビーム位置ドリフト補正について、ドリフト補正実行処理部54は、ビームドリフト補正のための動作を実行(開始)するように実行指示(コマンド)を出力して、各制御回路に動作させる。描画装置100内では、実行指示を受けて、
図9に示すように、XYステージ105を移動させることでマーク152を所望する偏向領域13内の各位置に移動させる。そして、主偏向器208で偏向領域13内の各位置に電子ビーム200を偏向してマーク152上を電子ビーム200で走査して、マーク152からの反射電子を検出器209で検出し、検出回路130で増幅し、デジタルデータに変換した上で、測定データをビームドリフト量測定部56に出力する。ビームドリフト量測定部56は、入力された各位置の測定データから各位置において設定された偏向位置との位置ずれ量を電子ビーム200のドリフト量として測定する。
【0052】
フィッティング工程(S112)として、フィッティング部61は、主偏向器208の偏向領域13の複数の位置でのドリフト量をフィッティングして近似式を求める。具体的には、測定された主偏向器208の偏向領域13の各位置の位置ずれ量(ドリフト量)を例えば以下の多項式(1)でフィッティング(近似)する。
(1) Δx’=a
0+a
1x+a
2y+a
3x
2+a
4xy+a
5y
2
+a
6x
3+a
7x
2y+a
8xy
2+a
9y
3
Δy’=b
0+b
1x+b
2y+b
3x
2+b
4xy+b
5y
2
+b
6x
3+b
7x
2y+b
8xy
2+b
9y
3
【0053】
かかるフィッティングにより近似式を求める。言い換えれば、近似式の係数a
0〜a
9、b
0〜b
9を求める。そして、求めた係数のうち、0次項(係数a
0、b
0)を除く、1次項以上の係数を偏向制御回路120に感度補正係数として出力する。
【0054】
図10は、実施の形態1における偏向感度補正の前後の主偏向領域の一例を示す図である。
図10に示すように、補正前の主偏向器208の偏向領域13bは、測定の結果、偏向領域13aのように位置ずれを生じている。よって、近似式によってかかる位置ずれを補正することで主偏向器208の偏向感度が補正されることになる。
【0055】
感度補正工程(S114)として、感度補正位置演算部71に出力された感度補正係数は図示しない記憶装置内の現状の感度補正係数に加算され、感度補正係数を更新する。
【0056】
代表位置決定工程(S116)として、決定部66は、主偏向器208を用いて過去に描画方向に対して電子ビーム200を偏向した実績範囲11の代表位置12を決定する。代表位置12の決定手法は実施の形態1と同様である。よって、
図9に示すように、実施の形態2では、実施の形態1と同様、例えば、実績範囲11の中心位置を代表位置12を決定する。
【0057】
ドリフト量演算工程(S119)として、ドリフト量演算部69は、フィッティング工程(S112)で得られた近似式を用いて、代表位置12における電子ビーム200の位置ずれ量(ドリフト量)を演算する。
【0058】
補正量算出工程(S120)と補正工程(S122)との内容は実施の形態1と同様である。
【0059】
以上により、偏向感度とビーム位置ドリフト量とを補正するための補正量が設定されたことになる。そして、描画工程(S102)に戻る。
【0060】
描画工程(S102)では、次のストライプ領域20の描画を行う際に、更新された補正値での偏向感度補正と更新された補正値でのドリフト補正を行う。具体的には、偏向制御回路120は、記憶装置142からショットデータを読み出し、感度補正位置演算部71は、ショットデータが示すショット図形の位置(x,y)を近似式に代入することによって偏向感度ずれ後の位置ずれ量(Δx’,Δy’)を演算する。
【0061】
次に、加算器72によって、ショットデータが示すショット図形の位置(x,y)に対して、偏向感度ずれ後の位置ずれ量(Δx’,Δy’)の補正量(−Δx’,−Δy’)とドリフト補正量とが加算される。加算器72で加算された後のショット図形の位置データと位置演算部76によって演算された描画座標系の基準位置データを用いて偏向量演算部78は、偏向電圧に相当する偏向量を演算し、デジタル信号の偏向量信号をDACアンプ132に出力する。DACアンプ132では、偏向量を示すデジタル信号をアナログ信号に変換の上、増幅して偏向電圧として主偏向器208に偏向電圧として印加することになる。以上のように、実績範囲の代表位置12におけるドリフト量を偏向感度補正用の測定値から演算して、電子ビーム200の位置ドリフトを主偏向感度と共に補正する。描画工程(S102)のその他の内容は上述した内容と同様である。
【0062】
以上のように、実施の形態2によれば、従来のビームを偏向する偏向器の偏向領域中心での位置ずれ量ではなく、実績範囲領域13の代表位置12での位置ずれ量で補正するので、ビーム位置ドリフトを高精度に補正できる。
【0063】
上述した各実施の形態では、測定した1つのストライプ領域20の測定値を用いて、代表位置12でのドリフト量(及びドリフト補正量)を求めているが、これに限るものではない。上述したように、電子ビーム20は、描画対象となる試料101が仮想分割された複数のストライプ領域20の各ストライプ領域に対して順に照射される。そこで、複数のストライプ領域20のうち、既に電子ビーム200が照射された2以上のストライプ領域20において電子ビームを偏向した各実績範囲領域11の代表位置12でのドリフト量の平均値を用いて、電子ビーム200のドリフトが補正されるようにしても好適である。複数のストライプ領域20の平均値を用いることで、補正精度を高めることができる。
【0064】
また、
図5において、実績範囲領域11は、描画方向に対して前方の一部が示されていたが、これに限るものではない。中央部の場合あれば、後方部の場合もあり得る。但し、中央部の場合には、代表位置12が主偏向領域13の中心に近くなるので、従来手法でのドリフト補正残差が小さくなると思われる。しかし、実際には、実績範囲領域11が主偏向領域13の中央部になる可能性は小さい。よって、前方或いは後方に偏ることが予想される。特に、前方部になる可能性が高い。よって、あえて実績範囲領域11を求めて、その代表位置を選択することで、より補正精度を高めることができる。
【0065】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0066】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0067】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビームのドリフト補正方法、荷電粒子ビーム描画装置及び描画方法は、本発明の範囲に包含される。