【課題を解決するための手段】
【0019】
これら及び他の課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の特徴を含む投影露光方法を提供する。更に、請求項10に記載の特徴を含む投影露光方法を実施するのに適する投影露光装置を提供する。
【0020】
有利な発展形態を従属請求項において指定する。請求項の全ての文言は、本明細書の内容に引用によって組み込まれている。
【0021】
本発明の一態様は、例えば、光学系の1つ又は複数の光学要素に関して、及び/又はマスク及び/又は基板に関して発生する光クイバーの見込み変化を投影露光装置を制御するための目的関数(メリット関数)内に最適化パラメータとして、好ましくは、1つ又は複数の他の最適化パラメータに加えて含めることを提案する。
【0022】
この場合に、「光クイバー」は、3次元空間内の空間領域(「R
3の部分集合」)であって、少なくとも1つの連続的な光線が、この領域の点の各々を物体側使用開口の物体視野から像側使用開口の像視野に通過することによって定められる空間領域を表している。処理中の光クイバー形態及び位置は、一般的に現在の視野サイズと回折次数とに依存する。インコヒーレント照明による最大視野サイズを考える場合に、「最大光クイバー」に言及することができる。
【0023】
矢のための容器と説明することができる従来のクイバーと同様に、光チューブは、物体視野から像視野に通過する光線に対する「容器」と見なすことができる。光クイバーは、例えば、「光線クイバー」という表現によって同等に表すことができる。
【0024】
光クイバーに属さない光線は、いわゆる「超開口光線」を予め含む。本明細書では、これらの光線は、構造付与マスクによって回折され、かつ投影ビーム経路を区切る開口絞りの現在の直径によって決定される結像に使用される物体側開口角よりも大きい角度で放出される光線を意味すると理解される。この物体側開口角は、物体側使用開口を定める。同じことは、像側、すなわち、物体に対して光学的に共役な像の側にも適用される。
【0025】
多くの実際の状況では、マニピュレータの移動又は他の系の変化に対する光クイバーの感受性は、主光線の追跡と、各々視野コーナ及び視野中心におけるサジタル光線及び子午光線という2つの光線の追跡とによって十分に正確に決定することができる。従って、光クイバーは、計算によって取り扱い可能な変数である。同時に光クイバーは、測定を用いて取り扱い可能な変数である。
【0026】
従来の系では、光クイバーの変更、例えば、光学要素に対する光クイバーの横方向変位は、1つ又は複数のマニピュレータの調節(作動値変化)において考慮されない。しかし、この効果は、例えば、使用光が投影ビーム経路から少なくとも1つの光学要素の光学的使用領域の外側の危険領域内に進み、それによって結像性能が全体的に低下するという影響を有する可能性がある。一例として、使用光は、光学要素が全く有効ではない領域内にもたらされる可能性がある。また、光学適合品質が、光学的使用領域内のものよりも有意に貧弱である(適合誤差が有意に大きい)領域、及び/又は光学的に有効な層系(ミラー層、反射防止コーティング)がもはや最適な効果を持たない領域内に進入する可能もある。
【0027】
光クイバーの変更が、例えば、開口絞りが置かれた瞳平面の領域内での光クイバーの位置の横方向変位を招く場合に、結像において有効な回折光の非対称な切除が発生する可能性があり、それによって更に、テレセントリック性収差、水平構造と垂直構造の間の結像差、及び/又は類似のリソグラフィ収差をもたらす可能性がある。
【0028】
従って、光クイバーの変化は、様々なリソグラフィ収差、取りわけ、口径食及び/又はテレセントリック性収差を引き起こす可能性がある。取りわけ、そのようなリソグラフィ収差は、安全値に制限するか又は完全に回避することができる。
【0029】
光クイバー、特に、基準座標系に対する光クイバーの場所又は位置、光クイバーの断面寸法、及び/又は光クイバーの断面形状は、異なる原因に起因して変化する可能性がある。光クイバーの特性が1つ又は複数のマニピュレータの駆動によって変更される場合に、特に大きい変化が生じる可能性がある。マニピュレータを含む投影露光装置では、投影露光装置の制御中の光クイバーの変化又は変更を考慮するための1つの可能性は、動作制御系の補正アルゴリズム内に光クイバーの変更に対するマニピュレータの感受性を同じく格納するか又はそのような感受性を決定して動作制御系のメモリに格納し、感受性を考慮して投影露光装置の動作を制御することにある。この場合に、「感受性」という表現は、マニピュレータにおいて定められる作動値変化と結像品質又はリソグラフィ収差に対して得られる効果との間の関係を表している。
【0030】
この場合に、例えば、マニピュレータの小さい作動値変化でも危険領域内への光クイバーの大きい変位を招くことが分った場合に、光クイバーの変位又は光クイバーのあらゆる他の変更によってもたらされるリソグラフィ収差を十分に小さく保つために、光クイバーの変化を考慮して、このマニピュレータの作動値変化を比較的小さい大きさに制限することができる。この制限は、マニピュレータの許容作動値変化を感受性を考慮しての制御操作によって作動値極限値よりも低い大きさに制限することによって達成することができる。この手法は、許容作動値範囲、いわゆるマニピュレータの「範囲」が、光クイバー変化を考慮した場合に光クイバー変化を考慮しない投影露光装置と比較して変化する可能性があることを考慮する。
【0031】
単一マニピュレータの調節又は移動は、光クイバーの位置及び/又は形態の大きい変更を引き起こす可能性がある。従って、多くの場合に、2つ又はそれよりも多くのマニピュレータが、生成される像に対するこれらのマニピュレータの効果が互いに少なくとも部分的に補償するように協働方式で起動する。この場合にも、光クイバーの位置及び/又は形態の変化を考慮することが、改善された結果をもたらすことができる。
【0032】
光クイバーの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定するための様々な可能性が存在する。光クイバーが、この光クイバーに対して横断方向に延びる少なくとも1つの測定面と形態、位置、及びサイズに関して定められた交差面領域内で交差するようにこの測定面が選択される場合に好適であることが見出されており、この場合に、この交差面内の投影放射線の強度に依存する少なくとも1つの交差面の特性が、光クイバーパラメータを決定するために決定される。交差面は、例えば、投影放射線の強度が予め定められた強度閾値よりも大きく、測定面の全ての点の総計として定めることができる。
【0033】
測定面は、平坦な測定面とするか又は球面湾曲又は非球面湾曲したものとすることができる少なくとも領域的に湾曲した測定面とすることができる。高い対称性を有する測定面形態、例えば、平坦な測定面又は球面湾曲測定面は、交差面特性の簡単な評価に関して有利とすることができる。
【0034】
光クイバーの変位を確実に検出することを可能にするために、基準座標系に対する交差面の場所又は位置を決定し、そこから、交差面の位置に関する情報を含む光クイバー位置パラメータを導出するようにすることができる。光クイバーの位置の大きい変更は、例えば、光学ビーム経路内の要素が傾斜された場合に発生する可能性がある。
【0035】
これに代えて又はこれに加えて、交差面の形態又は形状を決定することができ、そこから、交差面の形態を表す光クイバー形態パラメータを導出することができる。この場合に、一例として、光クイバーの名目上円形の断面領域の楕円形又は他のタイプの変形を特に正確に定性的、半定量的、又は定量的に検出することができる。交差面形態の変形は、例えば、測定面の上流に置かれた光学要素の光学面が変形された場合に生じる可能性がある。
【0036】
これに代えて又はこれに加えて、基準座標系に対する交差面のサイズ又は範囲を決定し、そこから光クイバーサイズパラメータを導出するようにすることができる。交差面のサイズは、例えば、光伝播方向に測定面の上流に置かれた光学要素が変形された場合に、又はマスクと投影レンズの間の距離が変更された場合に変化する可能性がある。
【0037】
一部の実施形態において、これに代えて又はこれに加えて、交差面内の強度分布のエネルギ重心又は幾何学重心を決定し、そこから光クイバー重心パラメータを導出するようになっている。すなわち、強度分布の重心の位置の変更を招く全ての光クイバー変更、例えば、光クイバーの広域横方向変位又は非対称形態変化を検出することができる。
【0038】
交差面内の強度シフトを決定することが望ましい場合に、交差面内の局所強度分布又は強度プロファイルを決定することができる。
【0039】
好ましくは、少なくとも2つの交差面特性が、時間的に近接して又は同時に決定され、その対応する光クイバーパラメータが、計算上で互いに考慮されるか、又は交差面特性を特徴付けるのに使用される。それによって多くの場合に、光クイバー変化に対して、1つの光クイバーパラメータしか決定しない場合よりも信頼性が高く、及び/又は良好な詳細情報を取得することが可能になる。更に、適切な場合に、個々の交差面特性の各々自体からは取得することができない追加情報を取得することができる。一例として、交差面の形態変化は、幾何学重心が変位することなく発生する可能性がある。この場合に、そのような形態変化は、重心変位を有する形態変化とは区別することができる。その結果、例えば、形態変化の対称性に関する説明が可能である。
【0040】
1つの方法変形では、重心の位置の決定を実施し、それに基づいて交差面の縁部曲線の距離半径、すなわち、縁部曲線と重心の間の半径方向距離を表す縁部曲線関数を方位角の関数として決定することによって光クイバー特性が決定され、次いで、この縁部曲線関数が解析される。好ましくは、解析中に縁部曲線関数のフーリエ解析が実施される。それによって交差面の縁部曲線又は形態のある一定の特徴、例えば、凹凸等に関する特定の対称特性を決定することができる。
【0041】
測定面は、隣接する光学要素の光学面からある距離の場所にある数学的に定義可能な仮想面とすることができる。一例として、測定面は、投影レンズの開口絞りにより、又はあらゆる他の平坦である又は湾曲した絞りの位置及び形態によって定められる平面又は曲面とすることができる。
【0042】
これに代えて又はこれに加えて、測定面として光学要素の光学面を選択するようにすることができる。一例として、測定面は、凸湾曲レンズ要素面又は凹湾曲レンズ要素面、又は凸湾曲ミラー面又は凹湾曲ミラー面だけではなく、適切な場合にはレンズ要素又はプリズムの平面、又は偏向ミラーの平面とすることができる。
【0043】
光学要素の光学面が測定面として選択される場合に、一部の実施形態において、この光学要素上に入射する投影放射線の結果として可変である光学面の少なくとも1つの特性を測定することによって光クイバーパラメータが決定するようにする。一例として、測定面として選択される光学面において局所温度分布を測定することができ、そこから、少なくとも1つの交差面特性が決定される。
【0044】
測定面がミラー面である場合に、例えば、ミラー面によってミラーの裏側から伝達される残留光の局所強度分布を測定し、そこから、少なくとも1つの交差面特性を決定するようにすることができる(空間分解伝達測定)。
【0045】
多くの場合に、測定面の領域内での強度測定が可能である。一例として、光クイバー検出デバイスは、光クイバーを取り囲み、光クイバーの周囲の周りに均一又は不均一に配分された複数の感光センサを含む配置を有することができる。この光クイバー検出デバイスは、例えば、ダイオード又はカメラセンサを適切な場合には光線ガイド又は光線偏向のための上流光学系と共に含むことができる。そのようなセンサは、例えば、測定面を形成する光学要素に直接に、又はその直近で光学的使用領域の直ぐ外側に、又は他に迷光絞り上に、又は開口絞りに配置することができる。
【0046】
本発明は、更に、投影露光方法を実施するのに適する投影露光装置を提供する。この投影露光装置は、光クイバーの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定するための光クイバー検出デバイスと、光クイバーパラメータを考慮して投影露光装置の動作を制御するように構成された動作制御系とによって特徴付けられる。
【0047】
光クイバー検出デバイスは、上述の方法の段階を実施するための1つ又は複数のデバイス又は手段を有することができる。
【0048】
実際に複雑に構成された光学系では、放射線は、物体平面から像平面内への結像に望ましい投影ビーム経路を通過するだけでなく、結像に寄与しない放射線部分が生じる可能性もある。一例として、投影露光方法においていわゆる「超開口光」が生じる可能性がある。本明細書では、「超開口光」又は「超開口放射線」という表現は、構造付与マスクによって回折され、結像に使用され、投影ビーム経路を区切る開口絞りの現在の直径によって決定される物体側開口角よりも大きい角度で放出される放射線を表している。
【0049】
これに代えて又はこれに加えて、像平面に直接進入した場合に、一般的に生成像のコントラストを劣化させる迷光が生成される可能性もある。本明細書では、「迷光」という表現は、取りわけ、例えば、反射防止層で覆われた透過光学要素の面、ミラーの裏側、及び/又は投影ビーム経路の領域内の他の場所での残留反射の結果として生じる可能性がある放射線を表している。本出願の状況では、これらの望ましくない放射線部分、特に迷光及び超開口光をその原因に関係なく「外光」とも表している。
【0050】
一部の実施形態において、光クイバー検出デバイスの感光センサは、これらの感光センサの直近にある光クイバーの外側で伝播する外光を検出することができるように配置される。光クイバーの特性に関する情報は、対応する強度信号から導出することができる。
【0051】
上述の特徴及び更に別の特徴は、特許請求の範囲からだけではなく、本明細書及び図面からも明らかになり、個々の特徴は、本発明の実施形態及び他の分野において各々これらの特徴単独で又は部分結合の形態で複数でもたらすことができ、有利で本質的に保護可能な実施形態を構成することができる。本発明の例示的実施形態を図面に例示し、下記でより詳細に説明する。