特許第6322583号(P6322583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6322583マイクロリソグラフィのための投影露光方法及び投影露光装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6322583
(24)【登録日】2018年4月13日
(45)【発行日】2018年5月9日
(54)【発明の名称】マイクロリソグラフィのための投影露光方法及び投影露光装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20180423BHJP
【FI】
   G03F7/20 521
【請求項の数】11
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-558069(P2014-558069)
(86)(22)【出願日】2013年2月14日
(65)【公表番号】特表2015-511405(P2015-511405A)
(43)【公表日】2015年4月16日
(86)【国際出願番号】EP2013052963
(87)【国際公開番号】WO2013124205
(87)【国際公開日】20130829
【審査請求日】2016年2月12日
(31)【優先権主張番号】102012202536.7
(32)【優先日】2012年2月20日
(33)【優先権主張国】DE
(31)【優先権主張番号】61/601,126
(32)【優先日】2012年2月21日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100158469
【弁理士】
【氏名又は名称】大浦 博司
(72)【発明者】
【氏名】グレシュス フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】グルナー トラルフ
【審査官】 赤尾 隼人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/051069(WO,A1)
【文献】 特表2010−541259(JP,A)
【文献】 特表2010−502027(JP,A)
【文献】 特開2005−328050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影露光装置の照明系と投影レンズの間にパターンが該投影レンズの物体平面の領域に配置されるようにマスクを保持する段階と、
基板を該基板の感放射線面が前記物体平面に対して光学的に共役である前記投影レンズの像平面の領域に配置されるように保持する段階と、
前記マスクの照明領域を前記照明系によって供給される照明放射線で照明する段階と、 前記投影レンズを用いて前記照明領域内に位置する前記パターンの一部を前記基板での像視野上に投影する段階と、
を含み、
前記像視野内の像発生に寄与する投影放射線の全ての光線が、前記投影レンズ内で光クイバーを形成する、
マスクのパターンの少なくとも1つの像で感放射線基板を露光するための投影露光方法であって、
前記光クイバーは、3次元空間内の空間領域であって、少なくとも1つの連続的な光線が、この領域の点の各々を物体側使用開口の物体視野から像側使用開口の像視野に通過することによって定められる空間領域であり、
前記光クイバーの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定する段階と、
前記光クイバーパラメータを考慮して前記投影露光装置の動作を制御する段階と、
を特徴とし、
前記光クイバーに対して横断方向に延びる測定面が、該光クイバーが形態、位置、及びサイズに関して定められた交差面の領域内で該測定面と交差するように選択され、
前記交差面内の前記投影放射線の強度に依存する少なくとも1つの交差面特性が、光クイバーパラメータを決定する目的で決定され、
前記交差面の前記形態が決定され、光クイバー形態パラメータが、そこから導出され、及び/又は
基準座標系に対する前記交差面の前記位置が決定され、光クイバー位置パラメータが、そこから導出され、及び/又は
前記交差面の前記サイズが決定され、光クイバーサイズパラメータが、そこから導出され、及び/又は
前記交差面内の強度分布の重心が決定され、光クイバー重心パラメータが、そこから導出され、
光クイバー特性が、交差面の重心の位置の決定を実施し、それに基づいて、該交差面の縁部曲線と該重心の間の距離を表す縁部曲線関数を方位角の関数として決定することによって決定され、
前記縁部曲線関数は、解析され、
前記縁部曲線関数のフーリエ解析が、前記解析中に実施される、
ことを特徴とする投影露光方法。
【請求項2】
前記光クイバーの少なくとも1つの特性が、マニピュレータの駆動によって変更されることを特徴とする請求項1に記載の投影露光方法。
【請求項3】
前記光クイバーを変更するためのマニピュレータの感受性が、動作制御系のメモリに格納され、
感受性が、マニピュレータでの定められた作動値変化と前記投影露光装置の結像品質に対する得られる効果との間の関係を表し、
前記投影露光装置の前記動作は、前記感受性を考慮して制御され、
マニピュレータの作動値変化が、前記感受性を考慮して作動値極限値よりも低い大きさに制限される、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の投影露光方法。
【請求項4】
少なくとも2つの交差面特性が、時間的に近接して又は同時に決定され、対応する光クイバーパラメータが、互いに計算上で考慮されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の投影露光方法。
【請求項5】
光学要素の光学面が、前記測定面として選択され、
光クイバーパラメータが、前記光学要素上に入射している投影放射線の結果として可変である前記光学面の少なくとも1つの特性を測定することによって決定され、
局所温度分布が、測定面として選択された前記光学面で測定され、少なくとも1つの交差面特性が、そこから決定される、
ことを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の投影露光方法。
【請求項6】
前記選択された測定面は、放射線伝達方向に第1のマニピュレータの下流に配置され、該第1のマニピュレータのアクチュエータの操作される様々な変化が、該測定面で決定された少なくとも1つの光クイバーパラメータに依存する方式で制御されることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載の投影露光方法。
【請求項7】
1次放射線源の1次放射線を受光し、かつ照明領域内でマスク(M)上に向けられる照明放射線(ILR)を発生させるための照明系(ILL)と、
投影放射線を用いて前記照明領域に位置するパターンの一部を基板での像視野上に投影するための投影レンズ(PO)であって、該像視野内の像発生に寄与する該投影放射線の全ての光線が、該投影レンズ内に光クイバー(LK)を形成する前記投影レンズ(PO)と、
前記パターンが前記投影レンズの物体平面(OS)の領域に配置されるように前記マスクを前記照明系と該投影レンズの間に保持するためのマスク保持デバイス(RST)と、 前記基板を該基板の感放射線面が前記物体平面に対して光学的に共役である前記投影レンズの像平面(IS)の領域に配置されるように保持するための基板保持デバイス(WST)と、
を含むマスクのパターンの少なくとも1つの像で感放射線基板を露光するための投影露光装置であって、
光クイバーは、3次元空間内の空間領域であって、少なくとも1つの連続的な光線が、この領域の点の各々を物体側使用開口の物体視野から像側使用開口の像視野に通過することによって定められる空間領域であり、
前記光クイバーの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定するための光クイバー検出系と、
前記光クイバーパラメータを考慮して投影露光装置の動作を制御するように構成された動作制御系と、
を特徴とし、
前記光クイバーは、形態、位置、及びサイズに関して定められた交差面の領域内で該光クイバーに対して横断方向に延びる測定面と交差し、
光クイバーパラメータを決定するためのデバイスが、前記交差面内の前記投影放射線の強度に依存する少なくとも1つの交差面特性を決定するように構成され、
交差面特性が、
前記交差面の形態、
基準座標系に対する前記交差面の位置、
前記交差面のサイズ、
前記交差面内の強度分布の重心、
の群から選択され、
光クイバー特性が、交差面の重心の位置の決定を実施し、それに基づいて、該交差面の縁部曲線と該重心の間の距離を表す縁部曲線関数を方位角の関数として決定することによって決定され、
前記縁部曲線関数は、解析され、
前記縁部曲線関数のフーリエ解析が、前記解析中に実施される、
ことを特徴とする投影露光装置。
【請求項8】
前記動作制御系の制御記号によって駆動することができる少なくとも1つのマニピュレータを特徴とする請求項に記載の投影露光装置。
【請求項9】
前記光クイバーを変更するためのマニピュレータの感受性が、前記動作制御系のメモリに格納され、
感受性が、マニピュレータで定められた作動値変化と投影露光装置の結像品質に対する得られる効果との間の関係を表し、
前記動作制御系は、投影露光装置の前記動作を前記感受性を考慮して制御することができるように設計され、
マニピュレータの作動値変化を前記感受性を考慮して作動値極限値よりも低い大きさに制限することができる、
ことを特徴とする請求項に記載の投影露光装置。
【請求項10】
前記光クイバー検出系は、前記光クイバーを取り囲んで該光クイバーの円周の周りに配分された複数の感光検出器(DET)を含む配置を有する少なくとも1つの光クイバー検出デバイス(LKD)を有し、及び/又は
光クイバー検出デバイス(LKD)の感光検出器(DET)が、それらが前記光クイバー(LK)の外側でそれらの直近を伝播する、望ましくない放射線部分として迷光及び超開口光を含む外光を検出することができるように配置される、
ことを特徴とする請求項及び請求項のいずれか1項に記載の投影露光装置。
【請求項11】
前記動作制御系は、請求項1から請求項のいずれか1項に記載の投影露光方法が実施されるように投影露光装置を制御するように構成されることを特徴とする請求項から請求項10のいずれか1項に記載の投影露光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、引用によって本出願に組み込まれている2012年2月20日出願のドイツ特許出願第10 2012 202 536.7号明細書に基づくものである。
【0002】
本発明は、請求項1の前文に記載のマスクのパターンの少なくとも1つの像で感放射線基板を露光するための投影露光方法、及び請求項10の前文に記載の本方法を実施するのに適する投影露光装置に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、半導体構成要素及び他の微細パターン付き構成要素を生成するのに主にフォトリソグラフィ投影露光方法が使用されている。これらの方法は、結像される構造のパターン、例えば、半導体構成要素の層の線パターンを担持又は形成するマスク(フォトマスク、レチクル)の使用を有する。マスクは、投影露光装置内の照明系と投影レンズの間でパターンが投影レンズの物体平面の領域内に位置するように配置される。露光される基板、例えば、感放射線層(レジスト、フォトレジスト)で被覆された半導体ウェーハは、基板の感放射線面が、物体平面に対して光学的に共役である投影レンズの像平面の領域に配置されるように保持される。露光処理中には、パターンは、照明系を用いて照明され、照明系は、パターン上に向けられ、かつ特定の照明パラメータによって特徴付けられ、かつ定められた形状及びサイズを有する照明視野内のパターン上に入射する照明放射線を1次放射線源の放射線から成形する。パターンによって変更された放射線は、投影レンズを投影放射線として通過し、投影レンズは、感放射線層で被覆された露光される基板上にパターンを結像する。マイクロリソグラフィ投影露光方法は、例えば、マスク(レチクル)を製造するのに使用することができる。
【0004】
投影露光装置の開発における目的の1つは、リソグラフィを用いて基板上に益々小さい寸法を有する構造を生成することである。より小さい構造は、例えば、半導体構成要素の場合に、製造される微細構造化構成要素の性能に対して好ましい効果を一般的に有するより高い集積密度をもたらす。生成することができる構造のサイズは、使用される投影レンズの分解力に決定的に依存し、第1に投影に使用される投影放射線の波長を短くすることにより、第2に処理に使用される投影レンズの像側開口数NAを増大させることによって拡大することができる。
【0005】
過去において、光学リソグラフィでは、主に屈折投影レンズが使用されてきた。屈折投影レンズ又は屈折結像投影レンズの場合に、屈折力を有する光学要素の全ては、透過屈折要素(レンズ要素)である。
【0006】
短い波長の場合であっても収差、特に色収差及び像視野湾曲の十分な補正を確実にするために、反射屈折投影レンズ、すなわち、屈折力を有する透過屈折光学要素、すなわち、レンズ要素と、屈折力を有する反射要素、すなわち、湾曲ミラーとの両方を含む投影レンズが次第に使用されてきている。典型的には、少なくとも1つの凹ミラーが含まれる。
【0007】
更に、中程度の開口数で動作し、基本的に極紫外範囲(EUV)からの短い波長の使用電磁放射線、特に5nmと30nmの間の範囲の動作波長を有するものを用いて分解力の改善を得るマイクロリソグラフィのための光学系が開発されている。これらの短い波長は、長い波長では透過性を有する公知の光学材料によって吸収されるので、極紫外範囲からの放射線(EUV放射線)は、屈折光学要素を用いてはフォーカス又はガイドすることができない。従って、EUVリソグラフィではミラー系が使用される。使用されるマスクは反射マスクである。
【0008】
投影レンズは、一般的に、結像収差の補正に関する部分的に相反する要件を適切な場合には大きい開口数が使用される場合にも可能にするために、複数の光学要素を有する。マイクロリソグラフィの分野の屈折結像系と反射屈折結像系との両方は、多くの場合に10個又はそれよりも多い透過光学要素を有する。EUVリソグラフィのための系では、可能な限り少ない反射要素、例えば、4つ又は6つのミラーしか制御しない試みが行われている。
【0009】
光学要素は、保持デバイスを用いて、投影レンズのビーム投影ビーム経路に沿って定められた位置に保持される。レンズ要素及び他の光学要素は、多くの場合に、それぞれの光学要素の周囲に配置された複数の保持要素を用いて保持される。この場合に、光学要素は、投影ビーム経路に位置する光学的使用領域と、光学的使用領域の外側に位置する縁部領域とを有し、光学要素に割り当てられた保持デバイスの1つ又は複数の保持要素が縁部領域上で係合する。光学的使用領域内には、光学品質を有する屈折面又は鏡面反射面が与えられ、それに対して縁部領域内には光学品質を達成しなくてもよい。光学的使用領域は、多くの場合に、光学要素の「自由光学直径」とも表している。
【0010】
投影レンズがその光学設計及び製造に起因して有する可能性がある固有の結像収差に加えて、使用期間中、例えば、ユーザによる投影露光装置の動作中に結像収差が発生する可能性もある。そのような結像収差は、多くの場合に、使用過程に使用される投影放射線の結果として投影レンズ内に組み込まれる光学要素の変更によって引き起こされる。一例として、この投影放射線のある一定の部分は、投影レンズ内の光学要素によって吸収される可能性がある。吸収の程度は、取りわけ、光学要素に使用される材料、例えば、レンズ要素材料、ミラー材料、及び/又は設けられる可能性がある反射防止コーティング又は反射コーティングの特性に依存する。投影放射線の吸収は、光学要素の加熱をもたらす場合があり、その結果、面変形及び屈折要素の場合には屈折率変化が、熱誘起機械的応力によって直接的及び間接的に光学要素内にもたらされる可能性がある。屈折率変化及び面変形は、次に、個々の光学要素の結像特性の変更をもたらし、従って、投影レンズ全体の変更ももたらされる。この問題の分野は、多くの場合に、「レンズ加熱」というキーワードの下を考慮される。
【0011】
他の内部外乱又は外部外乱が、結像性能の阻害を招く可能性もある。これらの外乱は、取りわけ、起こり得るマスクのスケール誤差、周囲の空気圧の変更、元のレンズ調節の場所と顧客による使用場所との間の重力場の強度差、高エネルギ放射線の結果としての材料変更(例えば、収縮)に起因する光学要素の屈折率変化及び/又は形態変更、保持デバイスにおける緩和処理に起因する変形、及び光学要素のドリフトなどを含む。
【0012】
通常、動作寿命中に発生する結像収差、特に、動作中に発生する結像収差をマニピュレータを用いて少なくとも部分的に補償する試みが行われている。この場合に、「マニピュレータ」という表現は、取りわけ、個々の光学要素又は光学要素群の光学効果を変更し、特に、発生する収差が少なくとも部分的に補償されるように光学効果を変更するために、動作制御系の対応する制御記号に基づいてこれらの光学要素に能動的に作用するように設計された光学機械デバイスを表している。「マニピュレータ」という表現は、マスク又は基板を例えば変位させる、傾斜させる、及び/又は変形するために、動作制御系の対応する制御記号に基づいてマスク又は基板に作用するデバイスも包含する。マニピュレータは、例えば、光学要素を基準軸に沿って又はそれと垂直に偏心させ、光学要素を傾斜させ、光学要素を局所的又は広域的に加熱又は冷却し、及び/又は光学要素を変形するように設計することができる。
【0013】
マニピュレータは、1つ又は複数の作動要素又はアクチュエータを含み、これらの現在の作動値は、動作制御系の制御記号に基づいて変化させるか又は調節することができる。作動値の変化が、例えば、光学要素を変位又は傾斜させるためのアクチュエータの移動に係わるものである場合に、作動値変化は、「マニピュレータ進行」で表すこともできる。作動値変化は、例えば、温度変化又は電圧変化として存在させることができる。
【0014】
マイクロリソグラフィのための高生産性投影露光装置は、環境の影響及び他の外乱に応答して投影露光装置の結像関連特性のほぼ瞬時の緻密な最適化を実施することを可能にする動作制御系を含む。この目的のために、現在の系の状態に対して適切であるように、少なくとも1つのマニピュレータが、結像性能に対して不利な外乱効果を打ち消すように駆動される。この場合に、系の状態は、例えば測定に基づいて、シミュレーションから及び/又は較正結果に基づいて推定することができ、又は何らかの他の方法で決定することができる。この場合、一般的に、結像されるパターンの回折構造及び/又は位相変更構造に関する情報、及び/又は使用照明モード(照明設定)に関する情報を特に含む現在の使用に関する情報も考慮される。
【0015】
系への望ましい介入に必要とされるマニピュレータ又はマニピュレータのアクチュエータに対する作動値変化は、目的関数(メリット関数)を最適化する補正アルゴリズムを有する制御プログラムに基づいて公知の動作制御系内で決定される。取り分け、達成されるようにこのように意図することは何かというと、個々の残存収差を他のものを代償にして最小にするのではなく、全ての関連する影響変数の許容範囲を与えることができる値への好適で均衡のとれた還元を達成することである。
【0016】
欧州特許EP 1 251 402 B1は、目的関数を使用する動作制御系を記載している。この場合に、目的関数は、露光処理の品質を複数の「リソグラフィ収差」の重み付き和として表している。この場合に、「リソグラフィ収差」という表現は、結像中のリソグラフィに関する全ての欠陥を網羅するように意図したものである。リソグラフィ収差は、取りわけ、歪曲、横方向像位置の偏位、像の回転、非対称な倍率、フォーカス位置の変形のような収差を含むが、それだけではなく、像視野にわたる臨界寸法の変化(CD変化)、互いに直交する方向の臨界寸法の差(HV収差)等も含む。これらのリソグラフィ収差は、基板、基板上の感放射線層、光源によって供給される投影光線、マスク、及び投影系を含む投影露光装置又は投影露光処理の様々な特性による影響を受ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】ドイツ特許出願第10 2012 202 536.7号明細書
【特許文献2】EP 1 251 402 B1
【特許文献3】WO 2009/100856 A1
【特許文献4】US 6,927,901 B2
【特許文献5】WO 2011/038840
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明が対処する1つの課題は、改善されたほぼ瞬時の緻密な結像特性の最適化が可能である冒頭に示したタイプの投影露光方法を提供することである。対処する更に別の課題は、様々な動作条件下におけるリソグラフィ投影露光中に良好な結像品質を可能にする投影露光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
これら及び他の課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の特徴を含む投影露光方法を提供する。更に、請求項10に記載の特徴を含む投影露光方法を実施するのに適する投影露光装置を提供する。
【0020】
有利な発展形態を従属請求項において指定する。請求項の全ての文言は、本明細書の内容に引用によって組み込まれている。
【0021】
本発明の一態様は、例えば、光学系の1つ又は複数の光学要素に関して、及び/又はマスク及び/又は基板に関して発生する光クイバーの見込み変化を投影露光装置を制御するための目的関数(メリット関数)内に最適化パラメータとして、好ましくは、1つ又は複数の他の最適化パラメータに加えて含めることを提案する。
【0022】
この場合に、「光クイバー」は、3次元空間内の空間領域(「R3の部分集合」)であって、少なくとも1つの連続的な光線が、この領域の点の各々を物体側使用開口の物体視野から像側使用開口の像視野に通過することによって定められる空間領域を表している。処理中の光クイバー形態及び位置は、一般的に現在の視野サイズと回折次数とに依存する。インコヒーレント照明による最大視野サイズを考える場合に、「最大光クイバー」に言及することができる。
【0023】
矢のための容器と説明することができる従来のクイバーと同様に、光チューブは、物体視野から像視野に通過する光線に対する「容器」と見なすことができる。光クイバーは、例えば、「光線クイバー」という表現によって同等に表すことができる。
【0024】
光クイバーに属さない光線は、いわゆる「超開口光線」を予め含む。本明細書では、これらの光線は、構造付与マスクによって回折され、かつ投影ビーム経路を区切る開口絞りの現在の直径によって決定される結像に使用される物体側開口角よりも大きい角度で放出される光線を意味すると理解される。この物体側開口角は、物体側使用開口を定める。同じことは、像側、すなわち、物体に対して光学的に共役な像の側にも適用される。
【0025】
多くの実際の状況では、マニピュレータの移動又は他の系の変化に対する光クイバーの感受性は、主光線の追跡と、各々視野コーナ及び視野中心におけるサジタル光線及び子午光線という2つの光線の追跡とによって十分に正確に決定することができる。従って、光クイバーは、計算によって取り扱い可能な変数である。同時に光クイバーは、測定を用いて取り扱い可能な変数である。
【0026】
従来の系では、光クイバーの変更、例えば、光学要素に対する光クイバーの横方向変位は、1つ又は複数のマニピュレータの調節(作動値変化)において考慮されない。しかし、この効果は、例えば、使用光が投影ビーム経路から少なくとも1つの光学要素の光学的使用領域の外側の危険領域内に進み、それによって結像性能が全体的に低下するという影響を有する可能性がある。一例として、使用光は、光学要素が全く有効ではない領域内にもたらされる可能性がある。また、光学適合品質が、光学的使用領域内のものよりも有意に貧弱である(適合誤差が有意に大きい)領域、及び/又は光学的に有効な層系(ミラー層、反射防止コーティング)がもはや最適な効果を持たない領域内に進入する可能もある。
【0027】
光クイバーの変更が、例えば、開口絞りが置かれた瞳平面の領域内での光クイバーの位置の横方向変位を招く場合に、結像において有効な回折光の非対称な切除が発生する可能性があり、それによって更に、テレセントリック性収差、水平構造と垂直構造の間の結像差、及び/又は類似のリソグラフィ収差をもたらす可能性がある。
【0028】
従って、光クイバーの変化は、様々なリソグラフィ収差、取りわけ、口径食及び/又はテレセントリック性収差を引き起こす可能性がある。取りわけ、そのようなリソグラフィ収差は、安全値に制限するか又は完全に回避することができる。
【0029】
光クイバー、特に、基準座標系に対する光クイバーの場所又は位置、光クイバーの断面寸法、及び/又は光クイバーの断面形状は、異なる原因に起因して変化する可能性がある。光クイバーの特性が1つ又は複数のマニピュレータの駆動によって変更される場合に、特に大きい変化が生じる可能性がある。マニピュレータを含む投影露光装置では、投影露光装置の制御中の光クイバーの変化又は変更を考慮するための1つの可能性は、動作制御系の補正アルゴリズム内に光クイバーの変更に対するマニピュレータの感受性を同じく格納するか又はそのような感受性を決定して動作制御系のメモリに格納し、感受性を考慮して投影露光装置の動作を制御することにある。この場合に、「感受性」という表現は、マニピュレータにおいて定められる作動値変化と結像品質又はリソグラフィ収差に対して得られる効果との間の関係を表している。
【0030】
この場合に、例えば、マニピュレータの小さい作動値変化でも危険領域内への光クイバーの大きい変位を招くことが分った場合に、光クイバーの変位又は光クイバーのあらゆる他の変更によってもたらされるリソグラフィ収差を十分に小さく保つために、光クイバーの変化を考慮して、このマニピュレータの作動値変化を比較的小さい大きさに制限することができる。この制限は、マニピュレータの許容作動値変化を感受性を考慮しての制御操作によって作動値極限値よりも低い大きさに制限することによって達成することができる。この手法は、許容作動値範囲、いわゆるマニピュレータの「範囲」が、光クイバー変化を考慮した場合に光クイバー変化を考慮しない投影露光装置と比較して変化する可能性があることを考慮する。
【0031】
単一マニピュレータの調節又は移動は、光クイバーの位置及び/又は形態の大きい変更を引き起こす可能性がある。従って、多くの場合に、2つ又はそれよりも多くのマニピュレータが、生成される像に対するこれらのマニピュレータの効果が互いに少なくとも部分的に補償するように協働方式で起動する。この場合にも、光クイバーの位置及び/又は形態の変化を考慮することが、改善された結果をもたらすことができる。
【0032】
光クイバーの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定するための様々な可能性が存在する。光クイバーが、この光クイバーに対して横断方向に延びる少なくとも1つの測定面と形態、位置、及びサイズに関して定められた交差面領域内で交差するようにこの測定面が選択される場合に好適であることが見出されており、この場合に、この交差面内の投影放射線の強度に依存する少なくとも1つの交差面の特性が、光クイバーパラメータを決定するために決定される。交差面は、例えば、投影放射線の強度が予め定められた強度閾値よりも大きく、測定面の全ての点の総計として定めることができる。
【0033】
測定面は、平坦な測定面とするか又は球面湾曲又は非球面湾曲したものとすることができる少なくとも領域的に湾曲した測定面とすることができる。高い対称性を有する測定面形態、例えば、平坦な測定面又は球面湾曲測定面は、交差面特性の簡単な評価に関して有利とすることができる。
【0034】
光クイバーの変位を確実に検出することを可能にするために、基準座標系に対する交差面の場所又は位置を決定し、そこから、交差面の位置に関する情報を含む光クイバー位置パラメータを導出するようにすることができる。光クイバーの位置の大きい変更は、例えば、光学ビーム経路内の要素が傾斜された場合に発生する可能性がある。
【0035】
これに代えて又はこれに加えて、交差面の形態又は形状を決定することができ、そこから、交差面の形態を表す光クイバー形態パラメータを導出することができる。この場合に、一例として、光クイバーの名目上円形の断面領域の楕円形又は他のタイプの変形を特に正確に定性的、半定量的、又は定量的に検出することができる。交差面形態の変形は、例えば、測定面の上流に置かれた光学要素の光学面が変形された場合に生じる可能性がある。
【0036】
これに代えて又はこれに加えて、基準座標系に対する交差面のサイズ又は範囲を決定し、そこから光クイバーサイズパラメータを導出するようにすることができる。交差面のサイズは、例えば、光伝播方向に測定面の上流に置かれた光学要素が変形された場合に、又はマスクと投影レンズの間の距離が変更された場合に変化する可能性がある。
【0037】
一部の実施形態において、これに代えて又はこれに加えて、交差面内の強度分布のエネルギ重心又は幾何学重心を決定し、そこから光クイバー重心パラメータを導出するようになっている。すなわち、強度分布の重心の位置の変更を招く全ての光クイバー変更、例えば、光クイバーの広域横方向変位又は非対称形態変化を検出することができる。
【0038】
交差面内の強度シフトを決定することが望ましい場合に、交差面内の局所強度分布又は強度プロファイルを決定することができる。
【0039】
好ましくは、少なくとも2つの交差面特性が、時間的に近接して又は同時に決定され、その対応する光クイバーパラメータが、計算上で互いに考慮されるか、又は交差面特性を特徴付けるのに使用される。それによって多くの場合に、光クイバー変化に対して、1つの光クイバーパラメータしか決定しない場合よりも信頼性が高く、及び/又は良好な詳細情報を取得することが可能になる。更に、適切な場合に、個々の交差面特性の各々自体からは取得することができない追加情報を取得することができる。一例として、交差面の形態変化は、幾何学重心が変位することなく発生する可能性がある。この場合に、そのような形態変化は、重心変位を有する形態変化とは区別することができる。その結果、例えば、形態変化の対称性に関する説明が可能である。
【0040】
1つの方法変形では、重心の位置の決定を実施し、それに基づいて交差面の縁部曲線の距離半径、すなわち、縁部曲線と重心の間の半径方向距離を表す縁部曲線関数を方位角の関数として決定することによって光クイバー特性が決定され、次いで、この縁部曲線関数が解析される。好ましくは、解析中に縁部曲線関数のフーリエ解析が実施される。それによって交差面の縁部曲線又は形態のある一定の特徴、例えば、凹凸等に関する特定の対称特性を決定することができる。
【0041】
測定面は、隣接する光学要素の光学面からある距離の場所にある数学的に定義可能な仮想面とすることができる。一例として、測定面は、投影レンズの開口絞りにより、又はあらゆる他の平坦である又は湾曲した絞りの位置及び形態によって定められる平面又は曲面とすることができる。
【0042】
これに代えて又はこれに加えて、測定面として光学要素の光学面を選択するようにすることができる。一例として、測定面は、凸湾曲レンズ要素面又は凹湾曲レンズ要素面、又は凸湾曲ミラー面又は凹湾曲ミラー面だけではなく、適切な場合にはレンズ要素又はプリズムの平面、又は偏向ミラーの平面とすることができる。
【0043】
光学要素の光学面が測定面として選択される場合に、一部の実施形態において、この光学要素上に入射する投影放射線の結果として可変である光学面の少なくとも1つの特性を測定することによって光クイバーパラメータが決定するようにする。一例として、測定面として選択される光学面において局所温度分布を測定することができ、そこから、少なくとも1つの交差面特性が決定される。
【0044】
測定面がミラー面である場合に、例えば、ミラー面によってミラーの裏側から伝達される残留光の局所強度分布を測定し、そこから、少なくとも1つの交差面特性を決定するようにすることができる(空間分解伝達測定)。
【0045】
多くの場合に、測定面の領域内での強度測定が可能である。一例として、光クイバー検出デバイスは、光クイバーを取り囲み、光クイバーの周囲の周りに均一又は不均一に配分された複数の感光センサを含む配置を有することができる。この光クイバー検出デバイスは、例えば、ダイオード又はカメラセンサを適切な場合には光線ガイド又は光線偏向のための上流光学系と共に含むことができる。そのようなセンサは、例えば、測定面を形成する光学要素に直接に、又はその直近で光学的使用領域の直ぐ外側に、又は他に迷光絞り上に、又は開口絞りに配置することができる。
【0046】
本発明は、更に、投影露光方法を実施するのに適する投影露光装置を提供する。この投影露光装置は、光クイバーの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定するための光クイバー検出デバイスと、光クイバーパラメータを考慮して投影露光装置の動作を制御するように構成された動作制御系とによって特徴付けられる。
【0047】
光クイバー検出デバイスは、上述の方法の段階を実施するための1つ又は複数のデバイス又は手段を有することができる。
【0048】
実際に複雑に構成された光学系では、放射線は、物体平面から像平面内への結像に望ましい投影ビーム経路を通過するだけでなく、結像に寄与しない放射線部分が生じる可能性もある。一例として、投影露光方法においていわゆる「超開口光」が生じる可能性がある。本明細書では、「超開口光」又は「超開口放射線」という表現は、構造付与マスクによって回折され、結像に使用され、投影ビーム経路を区切る開口絞りの現在の直径によって決定される物体側開口角よりも大きい角度で放出される放射線を表している。
【0049】
これに代えて又はこれに加えて、像平面に直接進入した場合に、一般的に生成像のコントラストを劣化させる迷光が生成される可能性もある。本明細書では、「迷光」という表現は、取りわけ、例えば、反射防止層で覆われた透過光学要素の面、ミラーの裏側、及び/又は投影ビーム経路の領域内の他の場所での残留反射の結果として生じる可能性がある放射線を表している。本出願の状況では、これらの望ましくない放射線部分、特に迷光及び超開口光をその原因に関係なく「外光」とも表している。
【0050】
一部の実施形態において、光クイバー検出デバイスの感光センサは、これらの感光センサの直近にある光クイバーの外側で伝播する外光を検出することができるように配置される。光クイバーの特性に関する情報は、対応する強度信号から導出することができる。
【0051】
上述の特徴及び更に別の特徴は、特許請求の範囲からだけではなく、本明細書及び図面からも明らかになり、個々の特徴は、本発明の実施形態及び他の分野において各々これらの特徴単独で又は部分結合の形態で複数でもたらすことができ、有利で本質的に保護可能な実施形態を構成することができる。本発明の例示的実施形態を図面に例示し、下記でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1図1A及び図1Bは、2つの異なる動作状態にある本発明の一実施形態によるEUVマイクロリソグラフィ投影露光装置の構成要素を示す概略図である。
図2図2A及び図2Bは、他の動作状態にある図1に記載の投影露光装置の構成要素を示す図である。
図3図3A及び図3Bは、異なる動作状態にある本発明の一実施形態による反射屈折投影レンズを含むDUVマイクロリソグラフィ投影露光装置の構成要素を示す概略図である。
図4】幾何学重心の変位を招く光学要素上での光クイバーのフットプリントの変位を示す概略図である。
図5】幾何学重心の変位を招かない光学要素上での光クイバーのフットプリントの対称な縮小を示す概略図である。
図6図6Aは、光学要素上での光クイバーのフットプリントの複雑な形態変化を示す概略図であり、図6Bは、図6Aの形態変化から導出された縁部曲線関数を示す概略図である。
図7図7Aから図7Gは、1つのミラーの非点収差変形によってもたらされる別のミラー上での光クイバーのフットプリントの複雑な形態変化の異なる態様と、それに関連付けられた光クイバー変化の定量表現の可能性とを示す図である。
図8図8A及び図8Bは、二重極照明設定で動作される投影露光装置の開口絞りの軸線方向平面図である。
図9】光クイバー検出デバイスの一実施形態の断面図及び平面図である。
図10】光クイバー検出デバイスの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1Aは、投影レンズPOの像平面ISの領域に配置された感放射線基板Wを投影レンズの物体平面OSの領域に配置された反射マスクMのパターンPATの少なくとも1つの像で露光するためのEUVマイクロリソグラフィ投影露光装置WSCの構成要素を略示している。
【0054】
投影露光装置は、1次放射線源RSの放射線によって動作される。照明系ILLは、1次放射線源の放射線を受光して、パターン上に向けられる照明放射線ILRを成形するように機能する。投影レンズPOは、パターンの構造を感光基板W上に結像するように機能する。
【0055】
1次放射線源RSは、取りわけ、レーザプラズマ光源、ガス放電光源、又はシンクロトロン利用放射線源とすることができる。そのような放射線源は、極紫外範囲(EUV範囲)内の放射線、特に5nmと15nmの間の波長を有する放射線を生成する。照明系及び投影レンズは、この波長領域で動作させることができるようにEUV放射線に対して反射性を有する構成要素を用いて構成される。
【0056】
放射線源RSから射出する放射線は、コレクターを用いて集光され、照明系ILL内に向けられる。照明系は放射線を成形し、成形した照明放射線ILRを用いて、投影レンズPOの物体平面OS内又はその近くに位置する照明視野を照明する。この場合に、照明視野の形態及びサイズは、物体平面OS内の有効使用物体視野OFの形態及びサイズを決定する。照明視野は、幅と高さの間に大きいアスペクト比を有するほぼスロット形のものである。
【0057】
この場合に、投影レンズPOは、サイズミラーM1からM6を有し、マスクパターンを露光される基板、例えば、半導体ウェーハが配置された像平面に縮小スケールで結像する。像平面には、物体視野に対して光学的に共役な像視野IFが位置する。ミラーの全てが、EUV放射線に対して反射効果を有し、例えば、Mo/Si層の対(二重層)を含むことができる多層反射コーティングで覆われる。
【0058】
マスクMから基板に進む投影放射線PRは、6つのミラー(最初のミラーM1から6番目のミラーM6)で順次反射される。物体視野から像視野に進み、像発生に寄与する全ての光線は、3次元「光クイバー」LKを形成する。図1の2次元断面図では、作図面内に位置する光クイバーLKの縁部R1及びR2しか見ることができない。
【0059】
マスク上に配置されたパターンPATが、本明細書ではレチクル平面とも表す投影レンズPOの光学平面OS内に位置するように、マスクM(レチクル)を保持して操作するためのデバイスRSTが配置される。マスクは、スキャナ動作において、投影レンズの基準軸AX(z方向)に対して垂直な走査方向(y方向)に走査ドライバを用いて移動可能である。
【0060】
露光される基板Wは、基板をマスクMと同期して基準軸AXと垂直に走査方向(y方向)に移動するためのスキャナドライバを含むデバイスWSTによって保持される。投影レンズPOの設計に基づいて、マスク及び基板のこれらの移動は、互いに平行又は逆平行な方式で起こすことができる。
【0061】
「ウェーハ台」とも呼ぶデバイスWST、及び「レチクル台」とも呼ぶデバイスRSTは、この実施形態では投影露光装置の中央制御デバイスCU内に統合された走査制御デバイスを用いて制御されるスキャナデバイスの一部である。
【0062】
投影露光装置WSCの全ての光学構成要素は、排気可能ハウジングに含まれる。投影露光装置は真空下で動作される。
【0063】
類似の基本構造を有するEUV投影露光装置は、例えば、WO 2009/100856 A1から公知である。類似の基本構造を有する投影レンズは、例えば、US 6,927,901 B2から公知である。これらの文献の開示内容は、この点に関して引用によって本明細書の内容に組み込まれている。
【0064】
投影露光装置WSCは、環境の影響及び他の外乱に応答して、及び/又は格納された制御データに基づいて投影露光装置の結像関連特性のほぼ瞬時の緻密な最適化を実施するように構成された動作制御系を有する。この目的のために、動作制御系は、装置の投影挙動への目標を定めた介入を可能にする複数のマニピュレータを有する。能動的に駆動可能なマニピュレータは、動作制御系の制御記号に基づいて、定められた作動値変更を実施することによって現在の作動値を変化させることができる1つ又は複数の作動要素又はアクチュエータを含む。
【0065】
例えば、個々の光学要素又は光学要素群をその位置に関して変更するか又は変形するようにすることができる。対応するマニピュレータは、例えば、光学系の光軸と平行又は垂直に変位させることができ、及び/又は光軸と垂直に延びる軸の回りに傾斜させることができる移動可能に装着された光学要素を含むことができる。他のマニピュレータは、1つ又は複数の変形可能な光学要素又は局所的に加熱可能及び/又は冷却可能な光学要素を含むことができる。他のマニピュレータは、例えば、非球面を有する板の形態にある互いに対して変位可能な光学要素を含むことができる。マニピュレータは、交換可能な光学要素を含むことができる。更に、目標を定めた加熱効果を生成するために、リソグラフィ結像の使用波長又はそこからずれた波長で光学要素の光学的使用領域の内部又は外部の区画の放射照度の変化を引き起こす熱マニピュレータは公知である。基板又はマスクに対して作用する対応するデバイスを同じく設けることができる。
【0066】
マスクマニピュレータMMは、駆動に依存して基準軸AXと平行又は垂直なマスクMの変位及び全体としてのマスクの傾斜をもたらすことができるアクチュエータを有する。マスクマニピュレータは、これに代えて又はこれに加えてマスクの変形を実施することができるように設計することができる。
【0067】
基板マニピュレータMSUBは、基準軸と平行又は垂直な変位、及び/又は傾斜によって投影レンズに対する基板の位置を変更し、及び/又は基板を変形することを可能にするアクチュエータを有する。
【0068】
放射線伝達方向にマスク又は物体平面の直後にある第1のミラーM1は、第1のミラーマニピュレータMM1を用いて光伝播方向に対して横断方向に傾斜及び/又は変位させ、及び/又は変形することができる。
【0069】
他のミラーのうちの1つ又はそれよりも多くに対して対応するミラーマニピュレータを設けることができる。特にこの事例では、第3のミラーを全体として光伝播方向に対して横断方向に又は平行に変位及び/又は傾斜させ、及び/又は変形することができる第3のミラーマニピュレータMM3が第3のミラーM3に設けられる。
【0070】
更に、投影露光装置は、光クイバーLKの特性を表す少なくとも1つの光クイバーパラメータを決定するための光クイバー検出系を有する。光クイバー検出系は、第1のミラーM1と第3のミラーM3の間の光線経路に位置する第2のミラーM2に割り当てられた光クイバー検出デバイスLKDを含む。光クイバー検出デバイスLKDは、第2のミラーM2上での光クイバーの「フットプリント」の位置、形態、及び/又はサイズに関する光クイバーパラメータを定量的に検出することができるように構成される。適切な光クイバー検出デバイスの様々な実施形態に対しては、下記でより詳細に説明する。
【0071】
本明細書では、「フットプリント」という表現は、第2のミラーの凹湾曲ミラー面と第2のミラーで反射される光クイバーとの間の空間的に境界が定められた交差面を表している。従って、フットプリントは、この場合は光クイバーの特性を決定するための測定面として機能するミラー面への光クイバー内を進む光線の光線入射点の全ての総計に対応する。
【0072】
第2のミラーM2のミラー面上での光クイバーのフットプリントFPを図1Bに略示している。この例の場合に、フットプリントは、単一周縁曲線によって境界が定められる。フットプリントは、各々が縁部曲線によって固有に囲まれた複数の空間的に分離された交差面を有することができる。
【0073】
次いで、図1を参照して一例として、光クイバーの特性を考慮して投影露光装置のマニピュレータの制御を実施することができる方式の説明を提供する。この目的のために、動作制御系が、投影レンズの結像特性に対する外部外乱の悪影響を打ち消すために、外部外乱に応答して実線で示すゼロ位置から破線で示す傾斜位置に第1のミラーM1を傾斜させたと仮定しなければならない。その結果、第1のミラーによって反射された光線が他の方向に進むように第1のミラーの照明領域内(すなわち、「フットプリント」内)で放射線の入射角が変化し、それによって全体的に傾斜がもたらされ、適切な場合には第1のミラーの下流の光クイバーの断面変化ももたらされる。光クイバーの変位は、破線形式に示した傾斜した光クイバーの縁部R1’、R2’で例示している。
【0074】
光クイバーのこの傾斜は、下流の第2のミラーM2のミラー面上でFPからFP’へのフットプリントの横方向変位として明らかになり、この場合は位置変化が特に明瞭であるが、適切な場合にはフットプリントの形態及び/又はサイズの僅かな変化においても明らかになる。
【0075】
第1のミラーM1の傾斜に起因して変更された第2のミラーM2における反射条件は、第1のミラーの傾斜によって低減するように意図した収差は実際に低減されるが、他のリソグラフィ収差が生成又は増幅されるという影響、特に光クイバーの変位からもたらされるものを後発的に有する可能性がある。
【0076】
しかし、光クイバー検出系を使用することにより、そのような収差を少なくとも部分的に制限し、適切な場合には補償することができる。第2のミラー上でのフットプリントの横方向変位は検出され、動作制御系に報告し戻される。それを受けて動作制御系は、許容範囲外のリソグラフィ収差を回避するために、下流のミラーにおける作動値変化を計算する。この例の場合に、第2のミラーM2における光クイバーの位置変化を考慮して、第3のミラーM3に割り当てられた第3のミラーマニピュレータMM3、又はこのミラーマニピュレータのアクチュエータが、この第3のミラーの下流の光クイバーの進路がマニピュレータの介入なしの場合にもたらされたであろう進路から偏位せず、又は僅かしか偏位しないようにこのミラーのミラー面が傾斜されるように駆動される。
【0077】
光クイバーを変更するための別の可能性は、別の動作状態にある図1に記載の投影露光装置を示す図2を参照することで明らかになる。この場合に、動作制御系は、内部外乱及び/又は外部外乱に応答して第1のミラーマニピュレータMM1を用いて第1のミラーM1を前方に、すなわち、破線形式で示すように変位位置に入射放射線の方向に、又は第2のミラーに近い方に変位した状態にある。それに関連付けられた反射条件の変化は、破線形式で示す変更された光クイバーのフットプリントFP’が、第1のミラーの変位の前のフットプリントFPに対して拡大されるという効果を有する。この例の場合に、最初のフットプリントの範囲は、第2のミラー面内で全ての方向に拡大される。この場合に、このフットプリントのサイズ変化は、第2のミラーM2に割り当てられた光クイバー検出デバイスLKDを用いて定量的に検出され、対応する光クイバー形態パラメータが動作制御系に報告し戻される。全体の結像性能に対するこの光クイバーの変更の影響を最小にするために、この変更に応答して、第3のミラーの下流の光クイバーの進路が、第1のミラーから第3のミラーまでの領域内で光クイバーの変更がない場合にもたらされたであろう進路に実質的に対応するように、第3のミラーM3が、設計によって所定のゼロ位置(実線)から破線形式で示す後退位置まで後方に変位している。
【0078】
図3は、深紫外範囲からの193nmの1次放射線で動作し、屈折要素及び反射要素を用いて構成され、マスクMを照明するための照明系ILLと反射屈折投影レンズPOとを有する投影露光装置WSCに基づく光クイバーの変化の更に別の例を示している。投影レンズは、複数のレンズ要素(例えば、レンズ要素L1、L2、及びL3)に加えて、光学的に物体平面OSと像平面ISの間にある投影レンズの瞳面の領域に配置された単一の凹ミラーCMを有する。透過マスクMから射出する放射線は、平坦な第1の折り返しミラーFM1を通して凹ミラーに向けられる。凹ミラーによって反射された放射線は、第2の折り返しミラーFM2により、物体平面OSと平行な像平面IS内に位置する基板の方向に偏向される。投影レンズは、第1のものが第1の折り返しミラーFM1の近くに位置し、第2のものが第2の折り返しミラーFM2の近くに位置する2つの実中間像が物体平面と像平面の間に生成されるように、3つの相互接続部分レンズを有する。この種の投影レンズは、その原理に関して、例えば、国際特許出願公開番号WO 2011/038840から公知であり、従って、更なる詳細説明を割愛する。この文献の開示内容は、この点に関して引用によって本明細書の内容に組み込まれている。
【0079】
マスク又はそれによって担持又は形成されるパターンの投影レンズに対する位置は、マスクマニピュレータMMを用いて、例えば、軸AXと平行なマスクの変位によって変更することができる。その結果、この場合に、本明細書ではマスクパターンの位置と第1のレンズ要素L1の入射面の位置との間の光軸に沿った軸線方向距離として定める入力頂点焦点距離ESの変化も存在する。基板SUBの位置は、基板マニピュレータMSUBを用いて、傾斜及び/又は光軸に沿った変位によって変化させることができる。光軸に沿った変位の時に、本明細書では基板の感光上面の位置と最後のレンズ要素L3の射出面との間で光軸に沿って測定された軸線方向距離として定める作動距離WDが変化する。
【0080】
右に示す詳細図に破線に示すように、この場合に、入力頂点焦点距離ESは、動作制御系の制御指令に基づいてマスクの軸線方向変位によって短縮され、更にこれは、取りわけ、マスクから第1のレンズ要素面L1−1上に射出する光クイバーLKのフットプリントFPが全ての辺において縮小されるという影響を有する(図3Bを参照されたい)。投影レンズの他の光学面において、例えば、第1の折り返しミラーFM1及び第2の折り返しミラーFM2において、他のレンズ要素面において、及び/又は第2の折り返しミラーFM2と像平面の間に配置された開口絞りASの領域内で、光クイバーの位置、サイズ、及び/又は形態の変更も生じる。この光クイバーの変化は、1つ又は複数の光クイバー検出デバイスによって検出され、投影露光装置の動作を制御するのに使用することができる。
【0081】
図4から図6を参照して、光クイバーの変化、すなわち、基準状態に対するその変更を定量的に決定するために、実施形態において決定し、個々に又は組合せで使用することができる一部の光クイバーパラメータの説明を以下に提供する。
【0082】
図4から、フットプリントの(又は光クイバーの交差面と光クイバーを捕捉する測定面との交差面の)全体としての変位を交差面の重心Sの変位に基づいて特徴付けることができることが明らかである。この場合に、横方向変位の前のフットプリントFPを実線に示しており、破線は、変位後の変位されたフットプリントFP’の縁部曲線を示している。幾何学重心Sは、変位した重心S’の位置にシフトされたことが明らかである。
【0083】
図5を参照すると、光クイバーのどの変更も必ずしも重心Sの変位を同じく招くわけではないことが明らかになる。図5の例では、フットプリントFPは、元の形態から全ての辺で全体として縮小しているが(破線FP’)、重心Sの位置は変化しないままに留まり、従って、フットプリントFP’は、変化後に同じ場所又は同じ位置に配置される。
【0084】
この簡単な比較から、交差面内の強度分布(例えば、フットプリント)の重心の位置である光クイバー重心パラメータの決定は、例えば、光クイバーの全体としての変位を光クイバーの断面の全ての辺における均一な拡大又は縮小から区別するのに有利なパラメータであることは既に明らかである。
【0085】
重心の位置の決定は、一部の実施形態では交差面の形態、すなわち、その形態の定量的な表現を得るのに使用される。図6の例では、交差面の重心Sは、2次元座標系の原点として選択される。交差面の縁部の形態は、重心への縁部又は縁部曲線の半径方向距離Rの依存性を方位角αの関数として表す縁部曲線関数R(α)によって表される。この場合に、関数R(α)は、変更の前の交差面の形態の表現を表し、R’(α)は、光クイバーの変化後の対応する表現を表している。図6Bは、図6Aの状況からもたらされる関数ΔR(α)=R’(α)−R(α)のグラフを例示的に示している。形態変化の更に別の定量化に向けて、これらの関数を例えば更に別の処理(図7に含まれる表現を参照されたい)のための基礎として採用されるフーリエ係数に分解することができる。
【0086】
図7を参照して上述したことをより詳細に説明するために、光クイバーに対する非点収差ミラー変形の効果、及びフットプリントの縁部曲線変形のフーリエ分解を用いたこの効果の定量表現を詳細に以下に説明する。この目的のために、図7Aは、光伝播方向に互いに直接連続する2つのミラーMi及びMi+1を示し、更にこれらのミラーの領域内での光クイバーLKの進路を示している。図7BのミラーMiの平面図は、非点収差変形を特徴付けており、「+」に示す真反対の扇形は、例えば、前方に変形されており、これらの扇形に対して90°だけオフセットして置かれ、「−」で表す扇形は、反対方向に変形されている。対応する変形は、図7Cにx方向の区画に基づいて、かつ図7Dにy方向の区画に基づいて再度例示している。図7Eは、光伝播方向に下流に、すなわち、その後に置かれたミラーMi+1におけるフットプリントの形態に対する対応する効果を示している。この場合に、実線FPは、ミラーMi+1のミラー面上での光クイバーの変形がない場合のフットプリントの形態を示しており、それに対して破線FP’は、その変形からもたらされる断面形態を示している。図7Fの縁部曲線関数ΔR(α)の対応する関数プロファイルは、フーリエ分解F(ΔR(α))を用いて解析される。このフーリエ分解(図7G)は、変形の2次凹凸を示している。
【0087】
更なる説明の目的で、投影レンズの瞳面の領域に配置された瞳ミラーにおける操作を想像し、それよりも後ろの光路に存在し、同じく瞳の近くに位置する面の領域内に向けられる効果に着目する。図3の例に対して、この操作は、例えば、凹ミラーCMの傾斜とすることができ、光路内で下流に置かれた開口絞りASの領域内でのその効果を考察する。
【0088】
図8は、投影レンズの第3の瞳面の領域に配置され、作図面内に位置する絞り平面を定める平坦な開口絞りASの軸線方向平面図を例示目的で図8A及び図8Bに示している。開口絞りは、絞り縁部AEによって封入されて光軸AXに関して中心に置かれた円形の絞り開口部を有する。X方向に延びる微細な線パターンの結像には二重極照明設定が使用され、この設定の場合に、瞳平面内の強度分布は、光軸に関してY方向にほぼ正反対に位置する2つの照明極P1、P2によって特徴付けられる。これらの極は、光クイバーと絞り平面との交差面に対応し、すなわち、光クイバーは、この領域内で2つに分割される。
【0089】
非外乱系(図8A)の場合に、極は、絞り開口部内に対称にちょうど収まり、従って、極内に集中する全強度が、外乱を受けることなく開口絞りを通過することができる。しかし、光クイバーのY方向の傾斜が生じた場合に、極は、例えば、左に向けて移動することができ、変位した第1の極P1’は、絞り縁部と部分的に重なり、それに対して第2の極P2’は、絞り縁部から離れて絞り開口部の内部に移動する。それによって変位した左手の第1の極P1’は、部分的に切除又は遮蔽される。絞り縁部の外側の光は、像視野内に進まない。その結果、像視野内で光強度及び結像コントラストが低下するだけでなく、傾斜して延びる空間像、すなわち、像空間内で傾斜して延びる3次元強度分布も生じる。このいわゆるテレセントリック性誤差は、理想的なフォーカス位置からの像平面の偏位の場合に(例えば、高低差のある基板及び/又は基板ホルダの望ましくない位置揺動によって引き起こされる)、結像される構造の横方向の移動を歪曲と類似の方式で引き起こす可能性がある。この場合に、回折光の非対称切除は、取りわけ、テレセントリック性誤差、及び水平構造と垂直構造の間の結像差(HV差)を招く可能性がある。このリソグラフィ収差は、投影露光装置の制御において光クイバー変化を考慮した場合に、小さく保ち、補償し、又は回避することができる。
【0090】
上述したように、1つの可能な分類は、交差面の重心の移動と、次にそれにも関わらずもたらされる光クイバー縁部の変化の方位角方向のフーリエ分解(図6)とを考察することに基づくことができると考えられる。この目的のために、縁部曲線の適切な個数の点に対して、重心Sに対するこれらの点の接続線に基づいて方位角を定めることができる。この場合に、重心は、十分に大きい本数の光線、例えば、視野及び瞳の等距離ラスター化によって与えられる光線の平均化を用いて定めることができる。この場合に、外乱を受けていない基準系が必ず考慮に入れられ、この基準系に対して、各光線Siは、測定面Fj上に交点Dijを生成する。これらの点の空間内での位置は、直交座標(xij,yij,zij)によって表すことができる。外乱系では、すなわち、光クイバーの変位及び/又は形態変化の場合に、最初に同じ光線が考慮に入れられ、対応する交点がD’ij(x’ij,y’ij,z’ij)によって表される。そこから変位ベクトル(vij=D’ij−Dij=x’ij−xij,y’ij−yij,z’ij−zij)を決定することができる。これらの変位ベクトルは、平均化することができ、かつ重心変位をもたらす。
【0091】
1つの分類により、与えられた測定面上での光クイバーの変化は、3次元空間内での重心変位と、この重心変位の補正後の方位角方向の差のある円上への投影のフーリエ係数とによって表すことができる。
【0092】
光クイバー変化のこの分類の場合に、純粋な半径方向変化(全ての辺において均一な拡大又は縮小)は、ゼロ次の変化として表されることになる。2次の変化は、重心を通って延びる軸の両方の側の拡大と、それと同時に発生する重心を通ってこの軸と垂直に延びる軸上での縮小とを合わせたものになる。3次の変更は、卵形変形等であると考えられる。
【0093】
この光クイバー変化の定量化の1つの利点は、上記に定めた重心変位と縁部曲線変形のフーリエ分解とを各系変化に対して光線追跡を用いて事前に計算することができ、動作制御系のメモリに格納することができる点である。光クイバーの変更の定量化を可能にする対応する光クイバーパラメータは、マニピュレータにおいて定められた作動値変化に対して相応に計算することができる。従って、マニピュレータにおいて定められた作動値変化と、得られる光クイバーの変更又は得られる投影露光装置の結像品質に対する効果との間の関係を定量的に検出することができる。この関係は、感受性又は感受性値の形式でメモリに格納することができる。それによって動作中に過度に大きい作動値変化が光クイバーの危険な変更を引き起こすことになる場合にこれらの変化が回避されるように、マニピュレータの作動値変化をそれによってもたらされる光クイバー変化に関して、感受性の使用により、作動値極限値よりも小さい比較的危険性のない範囲に制限することができる。
【0094】
これらの簡単な例は、一部の実施形態において、動作制御系を用いて目標を定めた方式で結像性能に対する望ましくない効果に対する対抗策を回避するために、光クイバーの変化を如何にして定量的に表すか、及び適切な場合には如何に分類するかを示している。
【0095】
光クイバー検出系における光クイバー変化の定量的な検出のための光クイバー検出デバイスを提供するための可能性は数多く存在する。特に、ミラーの場合に、フットプリントの領域内に伝達される残留光、すなわち、例えばミラーの裏側の局所強度分布を検出することができる。変形及び/又は屈折率変化によって像内で明らかになる光学要素の加熱を用いて放射線エネルギ入力の局所分布に関する結論を引き出すことができる。また、別個の観察光学ユニットを用いて動作中の光学要素をその形態に関して観察し、観察目標の面形態の温度誘起時間依存変形からフットプリント内での放射線重心の位置を推測することができる。同様に、温度依存方式で変化する電気抵抗を示すワイヤ又は他の要素を光学要素内に統合することができ、電気抵抗を空間分解方式で決定することができ、その結果、温度マップ又は空間分解温度プロファイルを導出し、そこから放射線負荷の空間分解プロファイルを導出することができる。
【0096】
図9を参照して、投影露光装置の動作波長を有する放射線に敏感な複数の光学検出器DETを有する光クイバー検出デバイスLKDの例示的実施形態の説明を提供する。光クイバー検出デバイスの検出器DETは、投影ビーム経路に位置する光学的使用領域OUAと光学的使用領域の外側に位置する環形の縁領域ERとを有する凹湾曲前面を有する凹ミラーCMの場所に置かれる。光学的使用領域内には、ミラー面に光学品質が与えられ、それに対して、外側に位置する縁領域は、フィットなどから構成されるそれ程厳しくない要件しか満たさなくてもよい。光学的使用領域の形態及びサイズは、非外乱系の光クイバーのフットプリントFPが完全に光学的使用領域内に収まり、非理想系の場合に放射線がそれにも関わらず進入することを許される許容領域TOLがそれにも関わらず残るようなレンズ設計に基づいて設計される。検出器DETは、許容領域に直接に接する方式でミラーの縁領域内に環形配置で等距離の場所に配置される。投影露光装置の動作中には、すなわち、放射線が投影露光装置を通過するときには、感光検出器は、光クイバーの周囲に均一配分方式で置かれる。
【0097】
この配置は、非外乱光クイバーの場合に全ての検出器が特定の強度レベルの超開口光を取得するように設計され、適切な場合に、この強度レベルを事前に計算することができる。一部の場合に、例えば、鏡面対称分布が生じる可能性があるが、分布は、非対称である可能性もある。フットプリントの横方向変位及び/又は形態変形の場合に、環形配置内に強度分布の経時変化が生じ、そこから光クイバーパラメータを導出するために、この変化は検出器によって検出され、光クイバー検出系によって評価される。それによって初期状態(放射線伝達条件の変更前)と終了状態(変更後)の間の定性的又は定量的な比較を実施することができる。これに代えて又はこれに加えて、初期状態を比較基準として採用し、それに基づいて強度分布の経時変更を評価することができる。
【0098】
対応する方式で、感光検出器の配置を外光絞り及び/又は開口絞り上に配置することができる。この点に関して、図3Aは、像に最も近い瞳面の領域内の光クイバーの変化を検出するために、開口絞りASの光入射側に光クイバー検出デバイスの検出器DETを示している。
【0099】
一般的に、光クイバー検出デバイスによって検出される開口領域全体(瞳平面の近く)又は部分開口領域(瞳平面からある距離の場所にある)が、等距離又はほぼ等距離で走査される場合であれば有利である。
【0100】
図10は、光クイバー検出デバイスが楔形の外光絞りSBの側部に配置された検出器を有する例を示している。左の検出器DET1は、ミラーMi上に入射する光線を含む光クイバー区画の位置変更を検出するように設計され、それに対して右の検出器DET2は、ミラーMiによって反射された光線を含む光クイバー区画の位置変更を検出するように設計される。従って、この場合に、光チューブ検出デバイスの検出器は、ミラーから分離された要素上に装着される。この装着は、例えば、検出器を伴わないミラーを検出器を有するものよりも小型、軽量、かつ動的に良好に制御可能なものとすることができるので有利とすることができる。ミラー上で検出器のために使用されない構造空間は、他のデバイス、例えば、位置センサ、冷却デバイス、及び/又はマニピュレータのために使用することができる。
【0101】
光検出デバイスを装着するのに好ましい場所の選択は、様々な基準に従って行うことができる。多くの場合に、投影露光装置の設計中に事前にマニピュレータの全ての効果をシミュレートし、特別に大きい重心変位に対して特に強い信号が計算される場所にセンサ系を装着することが好適である。更に、光検出デバイスのための検出器を装着するのに好ましい場所は、例えば、そこでは機械構成要素が光クイバーの直近に配置されるので、非外乱基準状態からの光クイバーの大きいずれが特定の影響を有することになる場所とすることができる。この場所に対して光学的に共役な位置に、対応するセンサを装着することができる。一般的に、図9の例の場合と同様に、検出器は、光クイバーに可能な限り近く、しかし、光クイバーと並んで装着することが好適であることになり、その形態及び/又は位置は、元の設計に許容範囲を加えたものからもたらされる。
【符号の説明】
【0102】
ILR 照明放射線
LK 光クイバー
LKD 光クイバー検出デバイス
M マスク
PR 投影放射線
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図8A
図8B
図9
図10