(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1電極、前記第1電極に接する正孔輸送層、前記正孔輸送層に接する前記第1発光層、前記第1発光層に接する前記電子輸送層、前記電子輸送層に接する前記電荷発生層を有する請求項1又は2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、第1電極と、第1電極の上方に配置され、第1発光層及び電子輸送層を有する第1発光ユニットと、第1発光ユニットの上方に配置された電荷発生層と、電荷発生層の上方に配置され、第2発光層を有する第2発光ユニットと、第2発光ユニットの上方に配置された第2電極とを有する。
電荷発生層は、第1電極側に配置されたN層と第2電極側に配置されたP層を有する。
ここで「上方」は、接する場合と接しない場合の両方の意味を包含し、例えば第1電極の上方に配置される第1発光ユニットは、第1電極と第1発光ユニットが接している場合と、第1電極と第1発光ユニットの間に他の層が介在してる場合を含む。
【0011】
図1は、本発明の一形態に係る有機EL素子の一実施形態の概略断面図である。有機EL素子1は、基板10上に、陽極20、第1の発光ユニット30A、電荷発生層40、第2の発光ユニット30B及び陰極50を、この順に備える。
【0012】
第1の発光ユニット30A及び第2の発光ユニット30Bは、電子及び正孔の再結合により発光するものである。2つの発光ユニットはそれぞれ、少なくとも発光層32A、32Bを有する単層又は積層構造を有する。本実施形態では、発光ユニットは陽極側から、正孔輸送層31、発光層32及び電子輸送層33を積層した多層膜構造を有している。
【0013】
電荷発生層40は、電圧印加時において正孔と電子を発生し、電荷発生層40の陰極50側に配置された発光ユニット、即ち、第2の発光ユニット30Bに対して正孔を注入する一方、電荷発生層40の陽極20側に配置された発光ユニット、即ち、第1の発光ユニット30Aに対して電子を注入する役割を果たす層である。
【0014】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、第1の発光ユニットの電子輸送層(例えば第1の発光ユニット30Aの電子輸送層33)が、下記式(1)で表わされる化合物を含む。
【化2】
(式(1)において、
X
1〜X
6は、それぞれ独立に、窒素原子、又はCRである。但し、X
1〜X
6のうち少なくとも1つは窒素原子である。
Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、メルカプト基、置換若しくは無置換のボリル基、置換若しくは無置換のホスフィノ基、置換若しくは無置換のアシル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキルチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40のアリールチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数5〜40のヘテロアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40のアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数5〜40のヘテロアリールオキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは無置換の環形成原子数5〜40の複素環基からなる群から選ばれる基である。前記置換基同士は環を形成していてもよい。)
【0015】
第1発光ユニットの電子輸送層が式(1)で表わされる化合物を含むことにより、第1発光ユニット中の発光層に強い正孔注入しつつ、発光層中の励起子エネルギーを閉じ込めることができ、色度ズレを防ぐことができる。
【0016】
式(1)で表わされる化合物は、好ましくは下記式(2)で表わされる化合物である。
【化3】
(式(2)において、
X
1〜X
6は、それぞれ独立に、窒素原子、CR又はCWである。
但し、X
1〜X
6のうち少なくとも1つは窒素原子であり、X
1〜X
6のうち少なくとも1つはCWである。
Rは、式(1)のRと同じである。
Wは、下記式(11)で表される基である。
尚、Wは、X
1〜X
6のいずれかの炭素原子に結合する。)
【化4】
(式(11)において、
aは、1以上5以下の整数である。aが2以上5以下のとき、Ar
1は、互いに同一又は異なる。
L
1は、単結合又は連結基であり、L
1における連結基は、置換若しくは無置換の炭素数1〜30の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の多価の脂肪族炭化水素基、置換若しくは無置換の多価のアミノ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の多価の芳香族炭化水素環基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜40の多価の複素環基、又は前記芳香族炭化水素環基及び前記複素環基から選ばれる2〜3個の基が結合してなる多価の多重連結基である。
尚、前記多重連結基において、前記多重連結基を構成する前記芳香族炭化水素環基及び前記複素環基は、互いに同一又は異なり、隣り合う前記芳香族炭化水素環基及び前記複素環基は環を形成していてもよい。
Ar
1は、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜40の複素環基である。但し、Ar
1の少なくとも1つは下記式(21)で表わされる基である。
Ar
1とL
1は、環構造を形成する場合と、形成しない場合とがある。)
【化5】
(式(21)中、
Xは、NR、C(R)
2、酸素原子又は硫黄原子である。
X
7〜X
14は、それぞれ独立に、窒素原子、又はCRである。
Rは、式(1)と同じである。
但し、式(21)中の結合手は、前記式(11)中のL
1に結合する結合手を意味し、X及びX
7〜X
14の少なくとも1つ、好ましくは1つに結合する。)
【0017】
式(1)及び(2)において、好ましくはX
1及びX
3が窒素原子であり、より好ましくはX
1及びX
3が窒素原子であり、X
5がCHであり、X
2がCR
11であり、X
4がCR
12であり、X
6が式(11)で表わされる基である。
上記R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜40の複素環基である。
【0018】
式(1)及び(2)において、好ましくはX
1、X
3及びX
5が窒素原子であり、より好ましくはX
1、X
3及びX
5が窒素原子であり、X
2がCR
11であり、X
4がCR
12であり、X
6が式(11)で表わされる基である。
上記R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜40の複素環基である。
【0019】
式(1)及び(2)において、好ましくはX
1及びX
5が窒素原子であり、X
3がCHであり、X
2がCR
11であり、X
4がCR
12であり、X
6が前記式(11)で表わされる基である。
上記R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜40の複素環基である。
【0020】
式(11)のL
1は、好ましくは置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の2価の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜40の3価の芳香族炭化水素基である。
上記L
1の芳香族炭化水素基は、好ましくはフェニル基に対応する2価又は3価の基である。
【0021】
式(21)のXは、好ましくはNR若しくは酸素原子である。
式(21)のXは、好ましくはXがNRであり、当該RがL
1と連結する。
【0022】
式(11)のaは、好ましくは1又は2である。
【0023】
式(11)で表わされる基は、好ましくは下記式(11−1)又は下記式(11−2)で表わされる基である。
【化6】
(式(11−1)中、L
1は前記式(11)のL
1と同じである。
nは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、R’は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリールチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選ばれる基である。前記置換基同士は環を形成していてもよい。)
【化7】
(式(11−2)中、L
1は前記式(11)のL
1と同じである。
nは、それぞれ独立に、0〜4の整数であり、R’は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の炭素数1〜30のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルケニル基、置換若しくは無置換の炭素数2〜30のアルキニル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜30のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリールチオ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、及び置換若しくは無置換の環形成原子数5〜20の複素環基からなる群から選ばれる基である。前記置換基同士は環を形成していてもよい。)
【0024】
上記式(11−1)及び式(11−2)において、R’が複数ある場合、複数のR’は互いに同じでも異なってもよい。
【0025】
式(1)で表わされる化合物は、好ましくは下記式(11−3)で表わされる化合物である。
【化8】
(式中、X
2、X
5及びX
6は、前記式(1)のX
2、X
5及びX
6とそれぞれ同じである。
Ar
1、L
1及びaは、前記式(11)のAr
1、L
1及びaとそれぞれ同じである。
Bは以下から一つ選択される基である。以下に記載した基の結合手のそれぞれは、前記式(11−3)中の炭素原子とBとを連結する結合手を意味し、選択される基を構成する任意の炭素原子と結合する(但し、水素原子と結合できない炭素原子を除く)。
【化9】
【0026】
尚、本明細書において、アリール基は、単環の芳香族炭化水素環基及び複数の炭化水素環が縮合した縮合芳香族炭化水素環基を含み、ヘテロアリール基は、単環のヘテロ芳香族環基、並びに複数のヘテロ芳香族環が縮合したヘテロ縮合芳香族環基、及び芳香族炭化水素環とヘテロ芳香族環とが縮合したヘテロ縮合芳香族環基を含む。
【0027】
本明細書において、環形成炭素数とは、原子が環状に結合した構造の化合物(例えば、単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子のうちの炭素原子の数を表す。当該環が置換基によって置換される場合、置換基に含まれる炭素は環形成炭素数には含まない。以下で記される「環形成炭素数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ベンゼン環は環形成炭素数が6であり、ナフタレン環は環形成炭素数が10であり、ピリジニル基は環形成炭素数5であり、フラニル基は環形成炭素数4である。また、ベンゼン環やナフタレン環に置換基として例えばアルキル基が置換している場合、当該アルキル基の炭素数は、環形成炭素数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の炭素数は環形成炭素数の数に含めない。
【0028】
本明細書において、環形成原子数とは、原子が環状に結合した構造(例えば単環、縮合環、環集合)の化合物(例えば単環化合物、縮合環化合物、架橋化合物、炭素環化合物、複素環化合物)の当該環自体を構成する原子の数を表す。環を構成しない原子(例えば環を構成する原子の結合手を終端する水素原子)や、当該環が置換基によって置換される場合の置換基に含まれる原子は環形成原子数には含まない。以下で記される「環形成原子数」については、特筆しない限り同様とする。例えば、ピリジン環は環形成原子数は6であり、キナゾリン環は環形成原子数が10であり、フラン環の環形成原子数が5である。ピリジン環やキナゾリン環の炭素原子にそれぞれ結合している水素原子や置換基を構成する原子については、環形成原子数の数に含めない。また、フルオレン環に置換基として例えばフルオレン環が結合している場合(スピロフルオレン環を含む)、置換基としてのフルオレン環の原子数は環形成原子数の数に含めない。
【0029】
本明細書において、「置換もしくは無置換の炭素数XX〜YYのZZ基」という表現における「炭素数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の炭素数を表すものであり、置換されている場合の置換基の炭素数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
【0030】
本明細書において、「置換もしくは無置換の原子数XX〜YYのZZ基」という表現における「原子数XX〜YY」は、ZZ基が無置換である場合の原子数を表すものであり、置換されている場合の置換基の原子数は含めない。ここで、「YY」は「XX」よりも大きく、「XX」と「YY」はそれぞれ1以上の整数を意味する。
【0031】
「置換もしくは無置換の」という場合における「無置換」とは前記置換基で置換されておらず、水素原子が結合していることを意味する。水素原子とは、中性子数が異なる同位体、即ち、軽水素(protium)、重水素(deuterium)、三重水素(tritium)を包含する。
【0032】
上記「置換もしくは無置換の・・・」における置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、メルカプト基、ボリル基、ホスフィノ基、アシル基、アミノ基、シリル基、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のアラルキル基、炭素数1〜30のアルコキシ基、環形成炭素数6〜40のアリールオキシ基、環形成炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基、炭素数1〜30のアルキルチオ基、環形成炭素数6〜40のアリールチオ基、環形成炭素数5〜40のヘテロアリールチオ基、炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基、環形成炭素数6〜40のアリールオキシカルボニル基、環形成炭素数5〜40のヘテロアリールオキシカルボニル基、環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基、及び環形成原子数5〜40の複素環基等が挙げられる。
これらの置換基には、上記の置換基によってさらに置換されてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成してもよい。
【0033】
上記式における各基の具体例を以下に挙げる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
アミノ基としては、アルキルアミノ、アリールアミノ及びアルキルアリールアミノ等が挙げられる。窒素原子に結合するアルキル基及びアリール基の例としては後述するアリール基及びアルキル基が挙げられる。
シリル基としては、アルキルシリル、アリールシリル及びアルキルアリールシリル等が挙げられる。ケイ素原子に結合するアルキル基及びアリール基の例としては後述するアリール基及びアルキル基が挙げられる。
【0034】
炭素数1〜30のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基があり、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
炭素数1〜30の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の多価の脂肪族炭化水素基としては、上記アルキル基に対応する多価の基が挙げられる。
炭素数2〜30のアルケニル基、アルキニル基としては、上述したアルキル基の分子内に不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
炭素数6〜30(好ましくは炭素数7〜30)のアラルキル基は、−Y−Zと表され、Yの例として上記のアルキル基の例に対応するアルキレンの例が挙げられ、Zの例として後述するアリール基の例が挙げられる。アラルキル基のアリール部分は、炭素数が6〜30が好ましい。アルキル部分は炭素数1〜10が好ましく、特に好ましくは1〜6である。
【0035】
炭素数1〜30のアルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のアルキル基の例が挙げられる。アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
環形成炭素数6〜40のアリールオキシ基は、−OYと表され、Yの例として後述するアリール基の例が挙げられる。好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。
環形成炭素数5〜40のヘテロアリールオキシ基は、−OYと表され、Yの例として後述するヘテロアリール基の例が挙げられる。ヘテロアリールオキシ基は、好ましくは環形成原子数5〜40である。
【0036】
炭素数1〜30のアルキルチオ基は、−SYと表され、Yの例として上記のアルキル基の例が挙げられる。好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8である。
環形成炭素数6〜40のアリールチオ基は、−SYと表され、Yの例として後述するアリール基の例が挙げられる。好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。
環形成炭素数5〜40のヘテロアリールチオ基は、−SYと表され、Yの例として後述するヘテロアリール基の例が挙げられる。ヘテロアリールチオ基は、好ましくは環形成原子数5〜40である。
【0037】
炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基は、上記のアルキル基、酸素原子及びカルボニル基からなる基であり、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。
環形成炭素数6〜40のアリールオキシカルボニル基は、後述するアルキル基、酸素原子及びカルボニル基からなる基であり、好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12である。
環形成炭素数5〜40のヘテロアリールオキシカルボニル基は、後述するヘテロアリール基、酸素原子及びカルボニル基からなる基である。ヘテロアリールオキシカルボニル基は、好ましくは環形成原子数5〜40である。
【0038】
環形成炭素数6〜40の芳香族炭化水素基(アリール基)は、好ましくは環形成炭素数6〜20であり、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾアントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基である。
環形成炭素数6〜40の多価の芳香族炭化水素環基としては、上記アリール基に対応する多価の基が挙げられる。
【0039】
環形成原子数5〜40の複素環基(ヘテロアリール基)は、好ましくは環形成原子数5〜20であり、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピリジル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、ベンズオキサゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンズチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基である。
環形成原子数5〜40の多価の複素環基としては、上記ヘテロアリール基に対応する多価の基が挙げられる。
【0040】
式(1)で表される化合物は、3重項のエネルギーが2.5〜3.3eVであり、2.5〜3.2eVであると好ましい。式(1)で表される化合物は、1重項のエネルギーが2.8〜3.8eVであり、2.9〜3.7eVであると好ましい。
【0041】
1重項エネルギーは、ベンゼン中の吸収スペクトルの吸収端から測定した。具体的には、市販の可視・紫外分光光度計を用いて、吸収スペクトルを測定し、そのスペクトルが立ち上がり始める波長から算出できる。
【0042】
3重項エネルギー(E
T)は、例えば市販の装置F−4500(日立社製)を用いて測定できる。E
Tの換算式は以下の通りである。
換算式: E
T(eV)=1239.85/λedge
式中、「λedge」とは、縦軸に燐光強度、横軸に波長をとって、燐光スペクトルを表したときに、燐光スペクトルの短波長側の立ち上がりに対して接線を引き、その接線と横軸の交点の波長値を意味する(単位:nm)。
また、3重項エネルギーE
Tは、下記の量子化学計算によっても求めることができる。
量子化学計算は,米Gaussian社製の量子化学計算プログラムGaussian03を用いて行うことができる。Gaussian03は1998年にノーベル化学賞を受賞したJ.A.Popleらによって開発されたプログラムであり、多種多様な分子系に対して、様々な量子化学計算法により、分子のエネルギー、構造、基準振動等の物性を予測することが可能である。計算には密度汎関数理論(DFT)を用いる。汎関数としてB3LYP、基底関数として6-31G*を用いて最適化した構造に対して、時間依存密度汎関数理論(TD-DFT)により、3重項エネルギーの計算値を求めることができる。
特定の有機化合物においては燐光スペクトルが観測されない場合がある。そのような有機化合物においては、上記に示したような量子化学計算を用いて求めた3重項エネルギーE
Tを推定に使うことにする。
【0043】
式(1)で表わされる化合物の具体例を以下に示す。但し、式(1)で表わされる化合物は、下記具体例に限定されない。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【0044】
(発光ユニット)
発光ユニットは、少なくとも発光層を有する単層又は積層構造を有する。発光ユニットは、陽極側から第1有機層、発光層、第2有機層からなる多層膜構造であるものが好ましく、具体的には、正孔輸送帯域/発光層/電子輸送帯域、からなる多層膜構造が挙げられる。
正孔輸送帯域は、正孔注入層、正孔輸送層を単層又は複数層積層することにより構成される。電子輸送帯域は、電子注入層、電子輸送層を単層又は複数層積層することにより構成される。
【0045】
第1発光ユニットは、好ましくは、第1電極、第1電極に接する正孔輸送層、正孔輸送層に接する第1発光層、第1発光層に接する電子輸送層をこの順に有する。
電子輸送層は、前記第1発光層側から第1電子輸送層と第2電子輸送層をこの順に含んでもよく、好ましくは第1発光層側の第1電子輸送層がEEL(Efficiency-enhancement layer)として用いられる。当該EELとは、前記第1発光層で発生した3重項励起子の前記電子輸送層側への拡散を抑制するための層である。前記EELは、好ましくは上記式(1)で表わされる化合物を含む。また、前記EELの膜厚は、好ましくは1nm〜50nmであり、特に好ましくは5nm〜20nmである。
【0046】
さらに、本発明の一形態に係る有機EL素子は、第1電極、第1電極に接する正孔輸送層、正孔輸送層に接する第1発光層、第1発光層に接する電子輸送層、電子輸送層に接する電荷発生層を有する。
上記のように各層を配置することで、EELによる、発光の励起子エネルギーをブロックする効果が得られる。
【0047】
本発明の一形態に係る有機EL素子は2以上の発光ユニットを有するが、各発光ユニットは同じ材料から構成されていてもよく、また、それぞれ異なる材料で構成されてもよい。
また、各発光ユニットの層構成は、同じでも、異なっていてもよい。
【0048】
第1発光ユニットは、好ましくは波長帯が430〜500nmである青色発光ユニットである。また、第1発光ユニットの発光波長ピークは、好ましくは第2発光ユニットの発光波長ピークよりも短い。
本発明の一形態に係る有機EL素子では、第1発光ユニットに強く正孔注入されるため、第1発光ユニットの発光色が最もエネルギーを必要とする青色発光ユニットとするとよい。例えば、
図1に示す素子1において、第1の発光ユニット30Aの発光色を青色とし、第2の発光ユニット30Bの発光色を黄色とする。この場合、2つの光が混合して白色発光し、しかも白色色ズレの少ない有機EL素子が得られる。
波長帯とは、各発光ユニットのEL発光から得られる発光スペクトルのピーク波長であり、各発光ユニットをスタックせずに単色EL素子としてEL発光させたときの発光を分光放射計を用いて測定する。
【0049】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、好ましくは第2発光ユニットの上方に配置された第3発光ユニットを有し、より好ましくは第1発光ユニットの発光波長ピークが、第2発光ユニットの発光波長ピーク及び第3発光ユニットの発光波長ピークよりも短い。
例えば第1発光ユニットを青色発光ユニットとし(ピーク波長430〜500nm)、第2発光ユニットを緑色発光ユニットとし(ピーク波長500〜570nm)、第3発光ユニットを赤色発光ユニット(ピーク波長570nm以上)とするRGB構成を採用することができる。
【0050】
以下、発光ユニットを構成する発光層、正孔輸送帯域及び電子輸送帯域について説明する。
(A)発光層
[ホスト材料]
発光層としては、ホスト材料とドーパント材料から構成される層が好ましい。
有機EL素子のホスト材料は、ルブレン、アントラセン、テトラセン、ピレン、ペリレン等が使用でき、好ましくはアントラセン誘導体である。
特に好ましくは、陽極に接する発光ユニットの発光層が、ホスト材料としてアントラセン誘導体を含む。ホスト材料がアントラセン誘導体である場合、当該ホストを含む発光層は青色に発光することができ、陽極に接する発光層が波長の短い青色発光層であることで、式(1)で表わされる化合物による正孔注入効果の恩恵を最も受けることができる。
【0051】
上記アントラセン誘導体は、好ましくは下記式(3)で表わされる化合物である。
【化20】
(式(3)中、B
1及びB
2は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、
R
11〜R
18は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3〜10のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3〜30のアルキルシリル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数8〜30のアリールシリル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30の芳香族炭化水素基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基である。)
【0052】
アルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基がある。例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0053】
アルコキシ基は、−ORと表され、Rの例として上記のアルキル基の例が挙げられる。アルコキシ基は、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
アリールオキシ基は、−OArと表され、Arの例として上記のアリール基の例が挙げられる。アリールオキシ基は、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0054】
アルキルシリル基は、−Si(R
a)(R
b)(R
c)と表され、(R
a)、(R
b)及び(R
c)の例としては上述したアルキル基及び水素原子が挙げられる。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、ビニルジメチルシリル基、プロピルジメチルシリル基等が挙げられる。
アリールシリル基は、トリアリールシリル基、アルキルアリールシリル基、トリアルキルシリル基等を含み、フェニルジメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0055】
芳香族炭化水素基の具体例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ベンゾ[c]フェナントリル基、ベンゾ[g]クリセニル基、ベンゾアントリル基、トリフェニレニル基、フルオレニル基、9,9−ジメチルフルオレニル基、ベンゾフルオレニル基、ジベンゾフルオレニル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオランテニル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基である。
【0056】
複素環基の具体例としては、ピロリル基、ピラゾリル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピリジル基、トリアジニル基、インドリル基、イソインドリル基、イミダゾリル基、ベンズイミダゾリル基、インダゾリル基、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル基、フリル基、ベンゾフラニル基、イソベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、アザジベンゾフラニル基、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジベンゾチオフェニル基、アザジベンゾチオフェニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、ナフチリジニル基、カルバゾリル基、アザカルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナントロリニル基、フェナジニル基、フェノチアジニル基、フェノキサジニル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、フラザニル基、ベンズオキサゾリル基、チエニル基、チアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンズチアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基等が挙げられ、好ましくは、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチオフェニル基、カルバゾリル基である。
【0057】
[ドーパント材料]
発光性ドーパントとしては、蛍光性ドーパントと燐光性ドーパントがある。
蛍光性ドーパントは一重項励起子から発光することのできる化合物である。蛍光性ドーパントとしては、アミン系化合物、芳香族化合物、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体等のキレート錯体、クマリン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ビススチリルアリーレン誘導体、オキサジアゾール誘導体等から、要求される発光色に合わせて選ばれる化合物であることが好ましく、スチリルアミン化合物、スチリルジアミン化合物、アリールアミン化合物、アリールジアミン化合物、芳香族化合物がより好ましく、縮合多環アミン誘導体、芳香族化合物がさらに好ましい。これらの蛍光性ドーパントは単独でも、また複数組み合わせて使用してもよい。
【0058】
縮合多環アミン誘導体としては、下記式(4)で表されるものが好ましい。
【化21】
【0059】
式中、Yは環形成炭素数10〜50の置換若しくは無置換の縮合アリール基を示す。
Ar
21、Ar
22は、それぞれ置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基、又は置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50の複素環基を示す。
縮合アリール基とは、上記アリール基の中で2環以上の環構造が縮環した基である。
縮合アリール基としては、環形成炭素数10〜50(好ましくは環形成炭素数10〜30、より好ましくは環形成炭素数10〜20)の縮合アリール基であり、上記アリール基の具体例中、好ましくは、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基、クリセニル基、フェナントリル基、フルオレニル基、フルオランテニル基、アセナフトフルオランテニル基、ナフタセニル基等が挙げられる。
【0060】
Yの具体例としては、上記の縮合アリール基が挙げられ、好ましくは置換若しくは無置換のアントリル基、置換若しくは無置換のピレニル基、置換若しくは無置換のクリセニル基、アセナフトフルオランテニル基である。
Ar
21、Ar
22の好ましい例としては、置換若しくは無置換のフェニル基、置換若しくは無置換のジベンゾフラニル基等である。Ar
21、Ar
22の置換基の好ましい例としては、アルキル基、シアノ基、置換若しくは無置換のシリル基、置換若しくは無置換のアリール基である。nは1〜4の整数である。nは1〜2の整数であることが好ましい。
【0061】
上記芳香族化合物としては、下記式(5)で表されるフルオランテン化合物が好ましい。
【化22】
(式中、X
101〜X
106及びX
108〜X
111は、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換若しくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜8のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基、置換若しくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基、置換若しくは無置換の環形成原子数6〜50のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜50のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基及びカルボキシル基から選ばれる。
X
107及びX
112は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基、置換若しくは無置換の環形成原子数5〜30の複素環基、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、及び置換若しくは無置換の環形成炭素数3〜8のシクロアルキル基から選ばれる。
但し、X
103とX
104は、互いに異なる置換基である。
また、X
101〜X
112において、隣接する置換基同士は互いに結合して飽和若しくは不飽和の環状構造を形成してもよく、これら環状構造は置換されてもよい。)
【0062】
式(5)のX
103又はX
104は、好ましくは置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜30のアリール基である。また、式(5)の「置換若しくは無置換」の好ましい置換基は、シアノ基又はハロゲン原子である。
式(5)おいて、アリール基、複素環基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アラルキル基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子の例として上記で例示したものが挙げられる。
【0063】
りん光発光に好適なホストは、その励起状態からりん光発光性化合物へエネルギー移動が起こる結果、りん光発光性化合物を発光させる機能を有する化合物である。ホスト化合物としては三重項エネルギーギャップが大きく、励起子エネルギーをりん光発光性化合物にエネルギー移動できる化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0064】
このようなホスト化合物の具体例としては、ベンゼン環やナフタレン環、複素環の組み合わせで構成される縮合環化合物、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、ポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。ホスト化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
具体例としては、以下のような化合物が挙げられる。
【0066】
りん光発光性のドーパントは三重項励起子から発光することのできる化合物である。三重項励起子から発光する限り特に限定されないが、Ir、Ru、Pd、Pt、Os及びReからなる群から選択される少なくとも一つの金属を含む金属錯体であることが好ましく、ポルフィリン金属錯体又はオルトメタル化金属錯体が好ましい。ポルフィリン金属錯体としては、ポルフィリン白金錯体が好ましい。りん光発光性化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては種々のものがあるが、好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7、8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。特に、フッ素化物、トリフルオロメチル基を導入したものが、青色系ドーパントとしては好ましい。さらに補助配位子としてアセチルアセトナート、ピクリン酸等の上記配位子以外の配位子を有していてもよい。
【0068】
りん光発光性のドーパントの発光層における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.1〜70質量%であり、1〜30質量%が好ましい。りん光発光性化合物の含有量が0.1質量%以上であることで、発光が微弱となるのを防ぎ、その含有効果が十分に発揮させることができる。70質量%以下とすることで、濃度消光と言われる現象を抑え、素子性能が低下を防ぐことができる。
【0069】
発光層は、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ポリマーバインダーを含有してもよい。
発光層の膜厚は、5〜50nmであることが好ましく、7〜50nmであることがより好ましく、10〜50nmであることが最も好ましい。5nm以上とすることで発光層形成が容易となり、色度の調整がしやすくなる。50nm以下とすることで駆動電圧が上昇するのを防ぐことができる。
【0070】
(B)正孔輸送帯域
正孔輸送帯域の層としては、正孔輸送層や正孔注入層等がある。正孔輸送層は、発光層への正孔注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、正孔移動度が大きく、イオン化エネルギーが通常5.5eV以下と小さい。このような正孔輸送層としてはより低い電界強度で正孔を発光層に輸送する材料が好ましく、さらに正孔の移動度が、例えば10
4〜10
6V/cmの電界印加時に、少なくとも10
−4cm
2/V・秒であれば好ましい。
【0071】
正孔輸送層の材料の具体例として、例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、ポリシラン系、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴマー(特にチオフェンオリゴマー)等を挙げることができる。
【0072】
正孔注入層又は正孔輸送層(正孔注入輸送層も含む)には、芳香族アミン化合物、例えば、下記式(6)で表わされる芳香族アミン誘導体が好適に用いられる。
【化24】
【0073】
式(6)において、Ar
31〜Ar
34は、環形成炭素数6〜50の芳香族炭化水素基(但し、置換基を有してもよい。)、環形成炭素数6〜50の縮合芳香族炭化水素基(但し、置換基を有してもよい。)、環形成炭素数2〜40の芳香族複素環基(但し、置換基を有してもよい。)環形成炭素数2〜40の縮合芳香族複素環基(但し、置換基を有してもよい。)、それら芳香族炭化水素基とそれら芳香族複素環基とを結合させた基、それら芳香族炭化水素基とそれら縮合芳香族複素環基とを結合させた基それら縮合芳香族炭化水素基とそれら芳香族複素環基とを結合させた基、又はそれら縮合芳香族炭化水素基とそれら縮合芳香族複素環基とを結合させた基を表す。
Lは、単結合又はAr
31〜Ar
34と同様な基を表す。
【0074】
また、下記式(7)の芳香族アミンも正孔注入層又は正孔輸送層の形成に好適に用いられる。
【化25】
【0075】
式(7)において、Ar
31〜Ar
33の定義は式(6)のAr
31〜Ar
34の定義と同様である。
【0076】
正孔注入層は、さらに正孔の注入を助けるために設けられる層である。正孔注入層の材料としては正孔輸送層と同様の材料を使用することができる。他に、ポルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物及びスチリルアミン化合物を用いることもできる。さらに、電荷発生層のP層で用いられるHATやF4TCNQ、式(6)で示される化合物を使用する事もできる。
【0077】
また、含チオフェンオリゴマーや特開平8−193191号公報に開示してある含アリールアミンオリゴマー等の導電性オリゴマー、含アリールアミンデンドリマー等の導電性デンドリマー等も用いることができる。
さらに、芳香族ジメチリディン系化合物の他、p型Si、p型SiC等の無機化合物も正孔注入層の材料として使用することができる。
【0078】
正孔注入層又は正孔輸送層は、例えば、上述した化合物を真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の公知の方法により薄膜化することにより形成することができる。正孔注入層、正孔輸送層としての膜厚は特に制限はないが、通常は1nm〜5μmである。
【0079】
(C)電子輸送帯域
電子輸送帯域の層としては、電子注入層や電子輸送層等(以下、電子注入層・輸送層という)がある。
電子注入層・輸送層は、発光層への電子の注入を助け、発光領域まで輸送する層であって、電子移動度が大きい。
電子注入層・輸送層は数nm〜数μmの膜厚で適宜選ばれるが、特に膜厚が厚いとき、電圧上昇を避けるために、10
4〜10
6V/cmの電界印加時に電子移動度が少なくとも10
−5cm
2/Vs以上であることが好ましい。
電子注入層・輸送層に用いられる材料としては、8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体や含窒素複素環誘導体が好適である。
上記8−ヒドロキシキノリン又はその誘導体の金属錯体の具体例としては、オキシン(一般に8−キノリノール又は8−ヒドロキシキノリン)のキレートを含む金属キレートオキシノイド化合物、例えばトリス(8−キノリノール)アルミニウムを電子注入材料として用いることができる。
含窒素複素環誘導体としては、例えば、オキサゾール、チアゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、ピリジン、ピリミジン、トリアジン、フェナントロリン、ベンズイミダゾール、イミダゾピリジン等が好ましく、中でもベンズイミダゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、イミダゾピリジン誘導体が好ましい。
【0080】
(電荷発生層)
電荷発生層は、電圧印加時において、電荷発生層の陰極側に配置された発光ユニットに対して正孔を注入する一方、電荷発生層の陽極側に配置された発光ユニットに対して電子を注入する役割を果たす層である。
本発明の一形態に係る電荷発生層は、陽極側に形成されるN層と、陰極側に形成されるP層を有する。電荷発生層は、N層及びP層を有すればよく、N層及びP層からなる積層体であっても、N層及びP層の間にさらに他の層が介在してもよい。
【0081】
N層は、好ましくはπ電子欠乏性化合物と、電子供与性材料を含む。
π電子欠乏性化合物としては、例えば、金属原子に配位可能な化合物等が挙げられる。具体的には、フェナントロリン系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物、キノリノール等が挙げられる。
【0082】
フェナントロリン系化合物としては、下記式(I’)〜(III’)で表される化合物が好ましい。なかでも下記式(I’)又は(II’)で表される化合物が好ましい。
【化26】
【0083】
上記式(I’)〜(III’)中、R
1a〜R
7a、R
1b〜R
7b、及びR
1c〜R
6cは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換のピリジル基、置換若しくは無置換のキノリル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数7〜50のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基である。
R
1a〜R
7a、R
1b〜R
7b、又はR
1c〜R
6cのうち、隣接するものは互いに結合して環を形成してもよい。環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピラジン環、ピリジン環、フラン環等が挙げられる。
L
1a及びL
1bは、それぞれ、単結合又は連結基である。連結基としては、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜20の芳香族基、置換若しくは無置換の炭素数1〜8のアルキレン鎖、置換若しくは無置換の複素環が挙げられる。具体的としては、置換若しくは無置換のベンゼン環、置換若しくは無置換のナフタレン環、置換若しくは無置換のメチレン鎖、又は置換若しくは無置換のピリジン環が好ましい。
Ar
1a、Ar
1b、Ar
1c及びAr
2cは、それぞれ、置換若しくは無置換の炭素数6〜60の芳香族基である。
nは、1〜4であり、nが2以上の場合、括弧の内のフェナントロリン骨格を有する基は、同一でも異なっていてもよい。
【0084】
式(I’)又は(II’)で表される化合物としては、下記式(I’−a)、(I’−b)、(II’−a)又は(II’−b)で表される化合物が好ましい。
【化27】
【0085】
フェナントロリン骨格を有する基とアントラセン骨格を有する基を有することにより、電子アクセプターとしての機能と電子輸送層としての輸送能を両立することが可能となる。更には、蒸着安定性や成膜性が向上する。
【0086】
式(I’−a)、(I’−b)、(II’−a)及び(II’−b)において、R
1a〜R
7a、R
1b〜R
7b、L
1a及びL
1bは、それぞれ式(I’)及び(II’)におけるR
1a〜R
7a、R
1b〜R
7b、L
1a及びL
1bと同様な基を表す。
R
11a〜R
20a及びR
11b〜R
20bは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換のピリジル基、置換若しくは無置換のキノリル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7〜50のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数5〜50のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基である。
R
11a〜R
20a又はR
11b〜R
20bのうち、隣接するものは互いに結合して環を形成してもよい。環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピラジン環、ピリジン環、フラン環等が挙げられる。
【0087】
環形成炭素数6〜60のアリール基は、好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20であり、例えばフェニル、フルオレニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、クリセニル、ピレニル、トリフェニレニル、フルオランテニル等が挙げられる。
Ar
1a、Ar
1b、Ar
1c及びAr
2cが示す芳香族基としては、上述したアリール基、及びアリール基から水素原子を除くことにより導かれる2価以上の基が挙げられる。
式(I’)及び(II’)におけるR
1a〜R
7a及びR
1b〜R
7bとしては、水素、フェニル、ナフチルが好ましい。
【0088】
炭素数1〜50のアルキル基としては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基がある。好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。
【0089】
環形成炭素数3〜50のシクロアルキル基としては、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
【0090】
炭素数7〜50のアラルキル基は、−Y−Zと表され、Yの例として上記のアルキル基の例に対応するアルキレンの例が挙げられ、Zの例として上記のアリール基の例が挙げられる。アラルキル基のアリール部分は、炭素数が6〜30が好ましい。アルキル部分は炭素数1〜10が好ましく、特に好ましくは1〜6である。例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、2−フェニルプロパン−2−イル基である。
【0091】
炭素数1〜50のアルコキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のアルキル基の例が挙げられる。アルコキシ基は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
【0092】
環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基は、−OYと表され、Yの例として上記のアリール基の例が挙げられる。好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0093】
環形成炭素数6〜50のアリールチオ基は、−SYと表され、Yの例として上記のアリール基の例が挙げられる。好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオ等が挙げられる。
【0094】
炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基は、好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等が挙げられる。
【0095】
置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基で置換されたアミノ基としては、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ及びアリールアミノが挙げられる。窒素原子に結合するアルキル基及びアリール基の例としては上述のアリール基及びアルキル基が挙げられる。好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜12、特に好ましくは炭素数6であり、例えば、ジフェニルアミノ等が挙げられる
【0096】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子及び臭素原子が挙げられ、好ましくはフッ素原子である。
【0097】
上記各基の置換基としては、それぞれ独立に、炭素数1〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数2〜20の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基、環形成炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数1〜20のアルキル基を有するトリアルキルシリル基、環形成炭素数6〜24のアリール基又はアルキル基を有するシリル基、炭素数1〜20のアルキル基及び環形成炭素数6〜24のアリール基を有するアルキルアリールシリル基、環形成炭素数6〜24のアリール基、環形成原子数5〜24のヘテロアリール基、炭素数1〜20のアルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基である。具体的には、上記のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、ハロゲン原子又はシアノ基が挙げられる。さらに、これらの基が同様の置換基を有していてもよい。
アルケニル基としては、上述したアルキル基の分子内に不飽和結合を有する置換基が挙げられる。
アリール基を有するシリル基としては、トリアリールシリル基、アルキルアリールシリル基、トリアルキルシリル基がある。
好適な置換基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、トリメチルシリル、トリフェニルシリルが挙げられる。
以下に式(I’)〜(III’)で表される化合物の具体例を示す。
【0099】
式(I’)及び(II’)で表される化合物の合成については、WO2007/018004、WO2006/64484,WO2006/021982を参照できる。
【0100】
ベンゾイミダゾール系化合物としては、下記式(III’)で表わされるベンゾイミダゾール誘導体を挙げることができる。
【化29】
【0101】
式中、A
14は、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、3〜40個の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素基を有する、炭素数6〜60の置換若しくは無置換の炭化水素基、又は含窒素複素環基である。
ハロゲン原子及び炭素数1〜20のアルキル基の具体例は、上述した式(I’)と同様である。
【0102】
3〜40個の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素基を有する、炭素数6〜60の置換若しくは無置換の炭化水素基について、3〜40個の芳香族環が縮合した多環芳香族炭化水素基としては、アントラセン、ナフタセン、ペンタセン、ピレン、クリセン等が挙げられる。炭素数6〜60の炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基等が挙げられる。尚、これらの具体例は上述した式(I’)と同様である。炭化水素基としてはアリール基が好ましく、なかでも、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フルオレニル基等が好ましい。これらは置換基を有していてもよい。
含窒素複素環基としては、ピリジン環、トリアジン等が挙げられる。
【0103】
Bは、単結合、又は置換若しくは無置換の芳香族環基である。芳香族環基としては、フェニレン基、アントラセニレン基が好ましい。
R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数6〜60の芳香族炭化水素基、置換若しくは無置換の含窒素複素環基、又は、置換若しくは無置換の炭素数1〜20のアルコキシ基である。各基の具体例は、上述した式(I’)、A
14と同様である。
式(III’)に示した化合物の具体例を以下に示す。
【0105】
キノリノールとしては、8−ヒドロキシキノリンが好ましい。
【0106】
電子供与性材料としては、電子供与性金属単体、金属化合物及び金属錯体が挙げられる。具体的には、アルカリ金属、アルカリ金属化合物、アルカリ金属を含む有機金属錯体、アルカリ土類金属、アルカリ土類金属化合物、アルカリ土類金属を含む有機金属錯体、希土類金属、希土類金属化合物及び希土類金属を含む有機金属錯体のうち、少なくとも1つを含有する層が好ましい。なかでも、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属の単体、希土類金属の化合物及び希土類金属の錯体のうち、少なくとも1つを含有することが好ましい。
【0107】
アルカリ金属としては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。これらのうち好ましくはLi、K、Rb、Cs、さらに好ましくはLi、Rb又はCsであり、最も好ましくはLiである。
アルカリ土類金属としては、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
希土類金属としては、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、テルビウム(Tb)、イッテルビウム(Yb)等が挙げられ、仕事関数が2.9eV以下のものが特に好ましい。
以上の金属のうち好ましい金属は、特に還元能力が高く、電子注入域への比較的少量の添加により、有機EL素子における発光輝度の向上や長寿命化が可能である。
【0108】
アルカリ金属化合物としては、酸化リチウム(Li
2O)、酸化セシウム(Cs
2O)、酸化カリウム(K
2O)等のアルカリ酸化物、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カリウム(KF)等のアルカリハロゲン化物等が挙げられ、フッ化リチウム(LiF)、酸化リチウム(Li
2O)、フッ化ナトリウム(NaF)が好ましい。
アルカリ土類金属化合物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)及びこれらを混合したストロンチウム酸バリウム(Ba
xSr
1−xO)(0<x<1)、カルシウム酸バリウム(Ba
xCa
1−xO)(0<x<1)等が挙げられ、BaO、SrO、CaOが好ましい。
希土類金属化合物としては、フッ化イッテルビウム(YbF
3)、フッ化スカンジウム(ScF
3)、酸化スカンジウム(ScO
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化セリウム(Ce
2O
3)、フッ化ガドリニウム(GdF
3)、フッ化テルビウム(TbF
3)等が挙げられ、YbF
3、ScF
3、TbF
3が好ましい。
【0109】
有機金属錯体としては、上記の通り、それぞれ金属イオンとしてアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、希土類金属イオンの少なくとも一つ含有するものであれば特に限定はない。また、配位子にはキノリノール、ベンゾキノリノール、アクリジノール、フェナントリジノール、ヒドロキシフェニルオキサゾール、ヒドロキシフェニルチアゾール、ヒドロキシジアリールオキサジアゾール、ヒドロキシジアリールチアジアゾール、ヒドロキシフェニルピリジン、ヒドロキシフェニルベンゾイミダゾール、ヒドロキシベンゾトリアゾール、ヒドロキシフルボラン、ビピリジル、フェナントロリン、フタロシアニン、ポルフィリン、シクロペンタジエン、β−ジケトン類、アゾメチン類、及びそれらの誘導体等が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0110】
上記金属、化合物及び錯体の添加形態としては、界面領域に層状又は島状に形成することが好ましい。形成方法としては、抵抗加熱蒸着法により上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを蒸着しながら、界面領域を形成する発光材料や電子注入材料である有機物を同時に蒸着させ、有機物中に上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを分散する方法が好ましい。分散濃度は通常、膜厚比で有機物(π電子欠乏性化合物):上記金属、化合物及び錯体=1000:1〜1:1000であり、好ましくは100:1〜1:1である。
【0111】
上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを層状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を層状に形成した後に、上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは層の厚み0.1nm以上15nm以下で形成する。
【0112】
上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを島状に形成する場合は、界面の有機層である発光材料や電子注入材料を島状に形成した後に、上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかを単独で抵抗加熱蒸着法により蒸着し、好ましくは島の厚み0.05nm以上1nm以下で形成する。
【0113】
また、N層における、主成分と、上記金属、化合物及び錯体の少なくともいずれかの割合としては、膜厚比で、主成分:電子供与性ドーパント及び/又は有機金属錯体=100:1〜1:1であると好ましく、50:1〜4:1であるとさらに好ましい。
N層の膜厚は、0.1nm〜100nmが好ましく、特に、1nm〜50nmが好ましい。
【0114】
P層は、好ましくは下記式(III)で表わされる化合物を含む。
式(III)で表される化合物は、素子の効率、電圧、寿命等の特性を向上させることができる。
【化31】
(式中、R
1c〜R
6cは、それぞれ独立に、水素原子、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基、置換若しくは無置換のピリジル基、置換若しくは無置換のキノリル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルキル基、置換若しくは無置換の炭素数3〜50のシクロアルキル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数7〜50のアラルキル基、置換若しくは無置換の炭素数1〜50のアルコキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールオキシ基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリールチオ基、置換若しくは無置換の炭素数2〜50のアルコキシカルボニル基、置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜50のアリール基で置換されたアミノ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基又はカルボキシル基である。)
【0115】
上記の置換若しくは無置換の環形成炭素数6〜60のアリール基等の具体例は、上述の例と同様である。
式(III)の化合物の具体例を以下に示す。その他の例は、特表2011―521414を参照できる。
【化32】
【0116】
P層は、上記式(III)で表わされる化合物の他に、下記式(IV)で表わされる化合物を含んでも好ましい。式(IV)で表される化合物は、素子の効率、電圧、寿命等の特性を向上させることができる。
【化33】
【0117】
上記式(IV)中、Ar
1は、環形成炭素数6〜24の芳香環又は環形成原子数5〜24の複素環、好ましくは環形成炭素数6〜14の芳香環又は環形成原子数5〜14の複素環である。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、フルオレン環、9,9−ジメチルフルオレン環、9,9−ジオクチルフルオレン環等が挙げられる。複素環としては、ピラジン環、ピリジン環、キノキサリン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、フラン環、ベンゾフラン環、ジベンゾフラン環、フェナントロリン環、ナフチリジン環、テトラアザアントラセン環等が挙げられる。前記芳香環及び複素環は、以下に記載するR
1〜R
4が表す置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のフルオロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフルオロアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のシリル基又は、シアノ基で置換されていてもよい。
【0118】
式(IV)中、R
1〜R
4は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアルケニル基、置換若しくは無置換のアリール基、置換若しくは無置換の複素環基、ハロゲン原子、置換若しくは無置換のフルオロアルキル基、置換若しくは無置換のアルコキシ基、置換若しくは無置換のフルオロアルコキシ基、置換若しくは無置換のアリーロキシ基、置換若しくは無置換のアラルキルオキシ基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換のシリル基又は、シアノ基である。R
1とR
2及びR
3とR
4は互いに結合して環を形成してもよい。
【0119】
アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、オクチル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としてはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としてはビニル基、プロペニル基(二重結合の位置異性体を含む)、ブテニル基(二重結合の位置異性体を含む)、ペンテニル基(二重結合の位置異性体を含む)等があげられる。
(置換)アリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、(トリフルオロメチル)フルオロフェニル基、トリフルオロフェニル基、ビス(トリフルオロメチル)フェニル基、(トリフルオロメチル)ジフルオロフェニル基、トリフルオロメトキシフェニル基、トリフルオロメトキシフルオロフェニル基等が挙げられる。
複素環基としては、ピリジン、ピラジン、フラン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、チオフェン等の残基が挙げられる。
【0120】
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が挙げられる。
フルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロアダマンチル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
フルオロアルコキシ基としては、トリフルオロメトキシ基、ペンタフルオロエトキシ基、2,2,2−トリフルオロエトキシ基、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロポキシ基、2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン‐2−イルオキシ基等が挙げられる。
(置換)アリールオキシ基の例としては、フェニルオキシ基、ペンタフルオロフェニルオキシ基、4−トリフルオロフェニルオキシ基等が挙げられる。
(置換)アラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、ペンタフルオロベンジルオキシ基、4−トリフルオロメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。
(置換)アミノ基の例としては、アミノ基、モノ若しくはジメチルアミノ基、モノ若しくはジエチルアミノ基、モノ若しくはジフェニルアミノ基等が挙げられる。
(置換)シリル基の例としては、シリル基、モノ、ジ若しくはトリメチルシリル基、モノ、ジ若しくはトリエチルシリル基、モノ、ジ若しくはトリフェニルシリル基等が挙げられる。
【0121】
また、R
1〜R
4の任意の置換基の例としては、上記で挙げたハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基及び複素環基が挙げられる。
尚、以下、特筆しない限り“置換若しくは無置換”というときの任意の置換基の例としては、上記で挙げたハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリール基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基及び複素環基が挙げられる。
【0122】
既述のようにR
1とR
2及びR
3とR
4は互いに結合して環を形成してもよい。環の例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、ピラジン環、ピリジン環、フラン環等が挙げられる。
さらに、R
1〜R
4の少なくとも一つは、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基、又は、フッ素、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基から選ばれる少なくとも1種の基を有するアリール基若しくは複素環基であることが好ましい。これらを置換基にすることで電子受容性を高めたり、適度な昇華温度を得られたり、あるいは結晶化を抑制したりすることができる。
【0123】
式(IV)中のRg
1及びRg
2は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、下記式(i)若しくは(ii)である。
【化34】
【0124】
上記式中、X
1及びX
2は互いに同一でも異なっていてもよく、下記(a)〜(g)に示す2価の基のいずれかである。特に(a)〜(c)であれば、耐熱性に優れる、あるいは合成のし易さ等の点から好ましい。
【化35】
【0125】
上記式中、R
21〜R
24は、それぞれ互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、置換若しくは無置換のフルオロアルキル基、置換若しくは無置換のアルキル基、置換若しくは無置換のシクロアルキル基、置換若しくは無置換のアリール基又は置換若しくは無置換の複素環基であり、R
22とR
23は互いに結合して環を形成してもよい。フルオロアルキル基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基及び複素環基の具体例としては、R
1〜R
4に関して例示した基が挙げられる。
【0126】
式(IV)中、Y
1〜Y
4は互いに同一でも異なっていてもよく、それぞれ、N、CH、又はC(R
5)であり、R
5はR
1〜R
4と同様な基を表す。
また、Y
1〜Y
4のうち少なくとも1つは窒素原子であることが好ましい(後述のY
21〜Y
26及びY
31〜Y
38についても同様)。少なくとも1つは窒素原子であることで、電子受容性を高めたり、耐熱性を高めたり、あるいは結晶化を抑制したりすることができる。
【0127】
式(IV)のインデノフルオレンジオン誘導体は、下記式(IV−A)あるいは(IV−B)で表されることが好ましい。下記式(IV−A)中のAr
1等の各符号は、式(IV)と同義である。下記式(IV−B)中のAr
2は式(IV)におけるAr
1と同義であり、X
3及びX
4は式(IV)におけるX
1及びX
2と同義であり、Y
5〜Y
8は式(IV)におけるY
1〜Y
4と同義であり、R
1〜R
4は式(IV)におけるR
1〜R
4と同義である。
【化36】
【0128】
さらに好ましくは、式(IV)のインデノフルオレンジオン誘導体は下記式(IVa)〜(IVi)で表される。
【化37】
【0129】
上記式中、X
1及びX
2、R
1〜R
4は式(IV)におけるX
1及びX
2、R
1〜R
4と同義であり、Y
21〜Y
26、Y
31〜Y
38及び、Y
41〜Y
50は式(IV)におけるY
1〜Y
4と同義である。
【0130】
特に好ましい式(IV)のインデノフルオレンジオン誘導体は下記式(IV−a)〜(IV−r)で表される。尚、下記式(IV−b)、(IV−d)、(IV−f)、(IV−h)、(IV−j)、(IV-l)、(IV-n)、(IV-p)、及び(IV-r)は、2つのシアノイミノ基のシアノ基の立体配置により、複数の異性体が存在するが、特定の異性体のみでもよいし、2つ若しくは2より大きい異性体の混合物であってもよい。
【化38】
【化39】
【0131】
上記式中、R
31〜R
52は式(IV)におけるR
1〜R
4と同義である。R
31〜R
52のうち互いに隣接するものは互いに結合して環を形成してもよい。特に、R
31〜R
52の少なくとも一つが、フッ素原子、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基、又は、フッ素、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、シアノ基から選ばれる基を少なくとも1種有するアリール基若しくは複素環基であることが好ましい。
【0132】
インデノフルオレンジオン誘導体は、上記の各式の構造を有することで、電子受容性を有し、また、耐熱性に優れ、昇華温度が約200℃以上を有し、昇華精製も可能であるため高純度化が可能となる。また、有機EL素子に使用することで素子の駆動電圧を低下させることができ、また、寿命を向上させることができる。さらに、素子の製造時において、昇華温度が約200℃以上を有することから、蒸着用成膜装置内部に飛散することがないため、成膜装置又は有機EL素子を汚染することもない。
【0133】
以下に式(IV)のインデノフルオレンジオン誘導体の具体例を示すが、これらに限られるものではない。
【化40】
【0134】
P層は、式(III)又は(IV)で表される化合物のみからなる層でもよく、他の材料との混合物からなる層であってもよい。本発明の一形態では、P層が式(III)又は(IV)で表される化合物のみからなる層、若しくは少なくとも1種類の正孔輸送材料を含む層であることが好ましい。
正孔輸送材料としては、上述した正孔輸送帯域で使用される材料が使用できる。なかでも、芳香族第三級アミン化合物が好ましい。
P層における、式(III)又は(IV)で表される化合物の含有率は、0.1重量%〜100重量%であることが好ましく、特に、10重量%〜100重量%であることが好ましい。
【0135】
P層の膜厚は、1nm〜50nmが好ましく、特に、5nm〜20nmが好ましい。
【0136】
(基板)
本発明の一形態に係る有機EL素子は基板上に作製する。基板は有機EL素子を支持するものである。発光ユニットからの光を、基板を通して取り出す場合には、基板は透光性である必要がある。この場合、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であることが好ましい。
具体的には、ガラス板、ポリマー板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等が挙げられる。またポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。
尚、光取り出し方向の反対側に支持基板が位置する場合には透光性は不要である。
【0137】
(陽極)
有機EL素子の陽極は、正孔輸送層又は発光層に正孔を注入する役割を担うものである。陽極側に透明性を必要とする場合は、酸化インジウム錫合金(ITO)、酸化錫(NESA)、酸化インジウム亜鉛合金(IZO)、金、銀、白金、銅等が適用できる。また、透明性を必要としない、反射型電極とする場合には、これらの金属の他に、銀、アルミニウム、モリブデン、クロム、ニッケル等の金属や他の金属との合金を使用することもできる。
これら材料は単独で用いることもできるが、これら材料同士の合金や、その他の元素を添加した材料も適宜選択して用いることができる。
【0138】
陽極はこれらの電極物質を蒸着法やスパッタリング法等の方法で薄膜を形成させることにより作製することができる。発光層からの発光を陽極から取り出す場合、陽極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また陽極のシート抵抗は、数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜200nmの範囲で選択される。
【0139】
(陰極)
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム・銀合金、アルミニウム、アルミニウム/酸化アルミニウム、アルミニウム・リチウム合金、インジウム、希土類金属等が挙げられる。
この陰極はこれらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
【0140】
ここで発光層からの発光を陰極から取り出す場合、陰極の発光に対する透過率は10%より大きくすることが好ましい。また陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜1μm、好ましくは50〜200nmである。
【0141】
(他の構成部材)
本発明の一形態においては陰極と有機層との間に絶縁体や半導体で構成される電子注入層を設けてもよい。これにより、電流のリークを有効に防止して、電子注入性を向上させることができる。
【0142】
このような絶縁体としては、アルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物からなる群から選択される少なくとも1つの金属化合物を使用するのが好ましい。電子注入層がこれらのアルカリ金属カルコゲナイド等で構成されていれば、電子注入性をさらに向上させることができる点で好ましい。
【0143】
具体的に、好ましいアルカリ金属カルコゲナイドとしては、例えば、Li
2O、LiO、Na
2S、Na
2Se及びNaOが挙げられ、好ましいアルカリ土類金属カルコゲナイドとしては、例えば、CaO、BaO、SrO、BeO、BaS、及びCaSeが挙げられる。また、好ましいアルカリ金属のハロゲン化物としては、例えば、LiF、NaF、KF、CsF,LiCl、KCl及びNaCl等が挙げられる。また、好ましいアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、例えば、CaF
2、BaF
2、SrF
2、MgF
2及びBeF
2といったフッ化物や、フッ化物以外のハロゲン化物が挙げられる。
【0144】
電子注入層を構成する半導体としては、Ba、Ca、Sr、Yb、Al、Ga、In、Li、Na、Cd、Mg、Si、Ta、Sb及びZnの少なくとも一つの元素を含む酸化物、窒化物又は酸化窒化物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
また、電子注入層を構成する無機化合物が、微結晶又は非晶質の絶縁性薄膜であることが好ましい。
尚、このような無機化合物としては、上述したアルカリ金属カルコゲナイド、アルカリ土類金属カルコゲナイド、アルカリ金属のハロゲン化物及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等が挙げられる。
【0145】
本発明の有機EL素子の一形態について、
図1の有機EL素子1を例示して説明したが、本発明は有機EL素子1の形態に限定されるものではない。例えば、有機EL素子1では発光ユニットを2つ形成したが、3つ以上形成してもよい。
【0146】
図2は本発明の一形態に係る有機EL素子の第2の実施形態の概略断面図である。
有機EL素子2は、基板10上に、陽極20、第1の発光ユニット30A、電荷発生層40A、第2の発光ユニット30B、電荷発生層40B、第3の発光ユニット30C及び陰極50を、この順に備える。有機EL素子2は、発光ユニットを3つ形成した他は
図1に示す有機EL素子1と同じ構成を有する。
本実施形態では、例えば、各発光ユニットの発光色を異ならせ、赤色、緑色、青色とすることにより、3つの波長領域の光を調和よく有する演色性の高い白色発光EL素子が得られる。
【0147】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、例えば、表示装置の画素のように、複数の素子が基板上に形成されている場合に、特に、優れた効果を発揮する。
図3は、基板上に3つの有機EL素子A−C(100A〜100C)を形成した例を示す概略図である。
基板10上には、ストライプ状にパターン化された陽極20A,20B,20Cがある。基板10及び各陽極上に、第一の発光ユニット30A、電荷発生層40及び第2の発光ユニット30Bが共通してこの順に形成されている。第2の発光ユニット30B上に、陰極50が陽極20に直交するようにストライプ状に形成されている。
有機EL素子A〜Cは、対向する陽極20A〜20C及び陰極50間に電圧が印加されたときに発光する。例えば、陽極20Bと陰極50間に電圧を印加すると、素子Bが発光する。
【0148】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、特に、カラーフィルターを使用したカラー表示装置の発光素子として好適である。
図4は本発明の一形態に係る有機EL素子を使用したカラー表示装置の概略断面図である。
カラー表示装置3は、
図3に示す有機EL素子の光取り出し側に、赤色カラーフィルター(RCF)61、緑色カラーフィルター(GCF)62及び青色カラーフィルター(BCF)63を有するカラーフィルター60を形成したものである。本実施形態では、第1の発光ユニット30Aの発光色を青色とし、第2の発光ユニット30Bの発光色を黄色とすることにより、白色発光する有機EL素子とする。カラーフィルターにより白色光から所望の色のみを表示装置の外部に取り出す。
【0149】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、公知の方法によって作製できる。具体的に、陽極や陰極は、蒸着やスパッタリング等の方法により形成できる。発光ユニット等の各有機層は、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法等の方法により行うことができる。
【実施例】
【0150】
以下、有機EL素子を製造して評価した。製造に用いた材料は以下の通りである。
【化41】
【化42】
【0151】
実施例1
30mm×30mmのガラス板からなる基板上に、陽極としてITOを240nmの膜厚で形成した。次に、SiO
2蒸着により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機EL素子用のセルを作製した。
陽極上に、正孔注入層として、上記の構造を有するヘキサニトリルアザトリフェニレン(HAT)を10nmの膜厚で形成した。
正孔注入層上に、正孔輸送層、青色発光層及び電子輸送層からなる青色発光ユニット(第1の発光ユニット)を形成した。具体的に、正孔輸送層として上記α−NPDを真空蒸着法により90nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。続いて、正孔輸送層上に、青色発光層を形成した。発光層のホストにはB−Host化合物を、ドーパントにはBD−1化合物を使用した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。次いで、青色発光層上に、電子輸送層であるEELとしてEEL−1を20nmの膜厚で形成した。
青色発光ユニットに続けて電荷発生層を形成した。発光ユニットのEEL上に、N層として電子注入性材料BphenとLiの混合層を10nmの膜厚で形成し、P層としてHATを10nmの膜厚で形成した。
電荷発生層に続いて、黄色発光ユニット(第2の発光ユニット)を形成した。形成方法は上述した青色発光ユニットと同様にした。電荷発生層のP層上に、正孔輸送層として、α−NPDを真空蒸着法により60nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。続いて正孔輸送層上に、黄色発光層を形成した。黄色発光層のホストにはCBPを、ドーパントにはIr(bzq)
3を使用した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。
次いで、黄色発光層上に、正孔ブロック層としてBCPを10nmの膜厚で形成した。BCP上に電子輸送層として、ET−1を20nmの膜厚で形成した。
その後、LiFを真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度〜0.01nm/sec)の膜厚で形成し、次いで、Alを真空蒸着法により200nmの膜厚で形成し、2層構造の陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
【0152】
作製した有機EL素子について、10mAcm
−2の電流密度における実施例1の青発光スペクトル強度に対する青発光スペクトル強度比と、50mAcm
−2駆動での300時間後の青発光スペクトルの初期値に対する相対値を測定した。
また、分光放射計により測定した発光スペクトルについて、CIE 1976 UCS色度図(u’v’色度図)における1000nitでのu’v’座標と1nitでのu’v’座標の距離(Δu’v’と表記する)により色度のずれを評価した。結果を表1に示す。
【0153】
実施例2
EEL材料としてEEL−2を用いた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0154】
実施例3
EEL材料としてEEL−3を用いた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0155】
実施例4
EEL材料としてEEL−4を用いた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0156】
実施例5
EEL材料としてEEL−5を用いた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0157】
実施例6
青色発光層のドーパントとしてBD−2を用いた他は実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0158】
実施例7
青色発光層のドーパントとしてBD−2を用い、EEL材料としてEEL−4を用い、電子注入材料としてET−2を用いた他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0159】
実施例8
青色発光層のドーパントとしてBD−2を用い、EEL材料としてEEL−2を用い、電子注入材料としてET−2を用いた他は、実施例1と同様にして有機EL素子を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0160】
比較例1
30mm×30mmのガラス板からなる基板上に、陽極としてITOを240nmの膜厚で形成した。次に、SiO
2蒸着により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機EL素子用のセルを作製した。
陽極上に、正孔注入層として、上記の構造を有するヘキサニトリルアザトリフェニレン(HAT)を10nmの膜厚で形成した。
正孔注入層上に、正孔輸送層、青色発光層及び電子輸送層からなる青色発光ユニット(第1の発光ユニット)を形成した。具体的に、正孔輸送層として上記α−NPDを真空蒸着法により90nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。続いて、正孔輸送層上に、青色発光層を形成した。発光層のホストにはB−Host化合物を、ドーパントにはBD−1を使用した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。
次いで、青色発光層上に、電子輸送層であるEELとしてEEL−2を20nmの膜厚で形成した。さらに、EEL上に電子輸送層として、ET−1を20nmの膜厚で形成した。
その後、LiFを真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度〜0.01nm/sec)の膜厚で形成し、次いで、Alを真空蒸着法により200nmの膜厚で形成し、2層構造の陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0161】
比較例2
30mm×30mmのガラス板からなる基板上に、陽極としてITOを240nmの膜厚で形成した。次に、SiO
2蒸着により2mm×2mmの発光領域以外を絶縁膜(図示省略)でマスクした有機EL素子用のセルを作製した。
陽極上に、正孔注入層として、上記の構造を有するヘキサニトリルアザトリフェニレン(HAT)を10nmの膜厚で形成した。
正孔注入層上に、正孔輸送層、青色発光層及び電子輸送層からなる黄色発光ユニット(第1の発光ユニット)を形成した。具体的に、正孔輸送層として上記α−NPDを真空蒸着法により90nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。続いて、正孔輸送層上に、黄色発光層を形成した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。黄色発光層のホストにはCBPを、ドーパントにはIr(bzq)3を使用した。
黄色発光ユニットに続けて正孔ブロック層としてBCPを10nmの膜厚で形成した。
正孔ブロック層上に電荷発生層を形成した。発光ユニットのEEL上に、N層として電子注入性材料BphenとLiの混合層を10nmの膜厚で形成し、P層としてHATを10nmの膜厚で形成した。
電荷発生層に続いて、青色発光ユニットを形成した。形成方法は上述した青色発光ユニットと同様にした。
電荷発生層のP層上に、正孔輸送層として、α−NPDを真空蒸着法により60nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した。続いて正孔輸送層上に、青色発光層を形成した。
青色発光層のホストにはB−Host化合物を、ドーパントにはBD−1を使用した。ドーパントの添加量が膜厚比で5%となるように真空蒸着し膜厚30nmの発光層とした。次いで、青色発光層上に、電子輸送層であるEELとしてEEL−2を20nmの膜厚で形成した。
次いで、EEL上に、ET−1を20nmの膜厚で形成した。
その後、LiFを真空蒸着法により約0.3nm(蒸着速度〜0.01nm/sec)の膜厚で形成し、次いで、Alを真空蒸着法により200nmの膜厚で形成し、2層構造の陰極を形成し、有機EL素子を作製した。
作製した有機EL素子について、実施例1と同様に評価した。結果を表1に示す。
【0162】
比較例3
比較例3は、EELを用いず、電荷発生層のP層上に、正孔輸送層として、α−NPDを真空蒸着法により80nm(蒸着速度0.2〜0.4nm/sec)の膜厚で形成した以外については、実施例1と同様の素子構成を作製し、評価した。結果を表1に示す。
【0163】
尚、表1中のB/Y(EELあり)構造、B単色構造、Y/B構造、及びB/Y(EELなし)構造を表2に示す。表2における各数値は膜厚を示し、単位はnmである。
【0164】
【表1】
【0165】
【表2】
【0166】
実施例1−8では、色度ズレの少ない素子が得られた。
【0167】
本発明の一形態に係る有機EL素子は、有機ELパネルモジュール等の表示部品、テレビ、携帯電話、若しくはパーソナルコンピュータ等の表示装置、及び、照明、若しくは車両用灯具の発光装置等の電子機器に使用できる。
【0168】
上記に本発明の実施形態及び/又は実施例を幾つか詳細に説明したが、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施形態及び/又は実施例に多くの変更を加えることが容易である。従って、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
本願のパリ優先の基礎となる日本出願明細書の内容を全てここに援用する。