(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のパターン形成方法。
高エネルギー線による露光が、波長364nmのi線、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザー、波長13.5nmのEUVリソグラフィー、又は電子ビームであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載のパターン形成方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
脱保護反応によって酸性のカルボキシル基やフェノール基などが生成し、アルカリ現像液に溶解するポジ型レジストシステムに比べると、有機溶剤現像の溶解コントラストは低い。アルカリ現像液の場合、未露光部と露光部のアルカリ溶解速度の割合は1,000倍以上の違いがあるが、有機溶剤現像の場合ではせいぜい100倍、材料によっては10倍程度の違いしかない。これでは十分なマージンを確保することはできない。アルカリ水現像の場合はカルボキシル基との中和反応によって溶解速度が向上するが、有機溶剤現像の場合は反応を伴うことがなく、溶媒和による溶解だけなので溶解速度が低い。未露光部の溶解速度の向上だけでなく、膜が残る部分の露光領域での溶解速度を低くすることも必要である。露光部分の溶解速度が大きいと残膜厚が低くなって、現像後のパターンのエッチングによる下地の加工ができなくなる。更には、溶解から不溶解になる露光量に対する傾き(γ)を高くすることが重要である。γが低いと逆テーパー形状になり易く、ラインパターンではパターン倒れが生じ好ましくない。垂直なパターンを得るためには、なるべく高γの溶解コントラストである必要がある。
前述の特許文献1〜3には、従来型のアルカリ水溶液現像型のフォトレジスト組成物が記載されているが、これらの有機溶剤現像における溶解コントラストは低い。露光部と未露光部の溶解速度差を大きくし、かつ溶解のコントラスト(γ)を高くするための新規な材料開発が望まれている。
【0010】
ネガティブ現像でホールを形成しようとする場合、ホールの外側は光が当たっており、酸が過剰に発生している。酸がホールの内側に拡散してくるとホールが開口しなくなるため、酸拡散の制御も重要である。
【0011】
脱保護反応による極性変化によって有機溶剤の現像液への溶解性を変化させる従来型のネガティブレジストでは、脱保護反応による膜厚の減少によってエッチング耐性が低下する。脱保護反応によって環状の保護基が消失することによるエッチング耐性の低下と併せて膜のシュリンクによって大幅にエッチング耐性が低下する問題がある。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、有機溶剤現像において溶解コントラストが大きく、かつ高感度なネガ型レジスト組成物及び有機溶剤による現像によってポジネガ反転によるホールパターンやトレンチパターンを形成することができるパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、置換又は非置換のカルボキシル基やヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含むポリマーにフッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤を添加したレジスト組成物を用いた場合、露光、PEB後の有機溶剤現像において、高い溶解コントラストでかつ酸拡散を最小限に抑えることができることを見出した。このレジスト組成物は、露光によって発生したフッ素化されたテトラフェニルボレートの酸性度が非常に高いことによって高い脱保護コントラストを得ることができ、かつフッ素化されたテトラフェニルボレートの分子量が巨大なことによって酸拡散を抑えることができる。酸が発生した部分の現像液への溶解性が低下することによってネガパターンを形成することができる。従来型のフッ素化されたスルホン酸が発生する酸発生剤を添加した場合に比べて一段と高い溶解コントラストと、一段と小さな酸拡散を得ることが可能となる。これによって、現像後のパターンの寸法均一性を向上し、一段と小さなエッジラフネス(LWR)のパターンを形成することができる。
【0014】
従って、本発明は、下記のパターン形成方法及び化学増幅ネガ型レジスト組成物を提供する。
〔1〕
酸不安定基で置換されたカルボキシル基及び/又はαトリフルオロメチルヒドロキシ基を除く酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有するポリマーと、下記一般式(1)−1で表されるフッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤とを含むレジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線で上記レジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤による現像液を用いて未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得ることを特徴とするパターン形成方法。
【化1】
(式中
、R
102〜R
105はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。p、q、r、sは1〜5の整数である。
また、下記
【化85】
で表されるカチオン部分は、下記に示す構造から選ばれる。)
【化86】
【化87】
【化88】
【化89】
【化90】
【化91】
【化92】
〔2〕
上記一般式(1)−1中の下記
【化93】
で表されるカチオン部分が、下記に示す構造から選ばれることを特徴とする〔1〕記載のパターン形成方法。
【化94】
〔3〕
フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤が、下記一般式(3)−1又は(3)−2で表されることを特徴とする〔1〕記載のパターン形成方法。
【化2】
(式中、R
102〜R
105、p、q、r、sは前述の通り、R
8、R
11はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、ニトロ基、又はアミノ基であり、R
9及びR
10は水素原子である。Y
1は単結合、メチレン基、エチレン基、−O−、−S−、−NR
12−、−C(=O)−、又は−S(=O
2)−から選ばれる連結基であり、R
12は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Y
2は単結合、メチレン基又はエチレン基である。eは1〜5の整数、f、gは1〜4の整数、hは1〜7の整数である。)
〔4〕
酸不安定基で置換されたカルボキシル基及び/又はαトリフルオロメチルヒドロキシ基を除く酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位a1又はa2で表されることを特徴とする〔1〕、〔2〕又は〔3〕記載のパターン形成方法。
【化3】
(式中、R
1、R
3は水素原子又はメチル基、R
2、R
5は水素原子又は酸不安定基、X
1は単結合、フェニレン基、ナフチレン基、又は−C(=O)−O−R
6−(但し、R
6は−C(=O)−OR
2と結合)であり、R
6は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよく、あるいはフェニレン基もしくはナフチレン基であり、X
2は単結合、又はフェニレン基もしくはナフチレン基で、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを有していてもよく、あるいは−C(=O)−O−R
7−、−C(=O)−NH−R
7−、−O−R
7−、又は−S−R
7−(但し、R
7はR
4と結合)であり、R
7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよく、あるいはフェニレン基もしくはナフチレン基であり、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、炭素数2〜6
のアルケニル基、アルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを有していてもよい。R
4は単結合、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の2〜3価の脂肪族炭化水素基、又はフェニレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよい。0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0<a1+a2≦1.0の範囲である。mは1又は2である。)
〔5〕
現像液が、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチルから選ばれる1種以上であることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔6〕
高エネルギー線による露光が、波長364nmのi線、波長248nmのKrFエキシマレーザー、波長193nmのArFエキシマレーザー、波長13.5nmのEUVリソグラフィー、又は電子ビームであることを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のパターン形成方法。
〔7〕
酸不安定基で置換されたカルボキシル基及び/又はαトリフルオロメチルヒドロキシ基を除く酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有するポリマーと、下記一般式(1)−1で表されるフッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤とを含むことを特徴とする化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化4】
(式中
、R
102〜R
105はフッ素原子又はトリフルオロメチル基である。p、q、r、sは1〜5の整数である。
また、下記
【化95】
で表されるカチオン部分は、上記の〔1〕で示したものと同様の構造から選ばれる。)
〔8〕
フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤が、下記一般式(3)−1又は(3)−2で表されることを特徴とする〔7〕記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、R
102〜R
105、p、q、r、sは前述の通り、R
8、R
11はそれぞれ水素原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、ニトロ基、又はアミノ基であり、R
9及びR
10は水素原子である。Y
1は単結合、メチレン基、エチレン基、−O−、−S−、−NR
12−、−C(=O)−、又は−S(=O
2)−から選ばれる連結基であり、R
12は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Y
2は単結合、メチレン基又はエチレン基である。eは1〜5の整数、f、gは1〜4の整数、hは1〜7の整数である。)
〔9〕
酸不安定基で置換されたカルボキシル基及び/又はαトリフルオロメチルヒドロキシ基を除く酸不安定基で置換されたヒドロキシ基を有する繰り返し単位が、下記一般式(2)で示される繰り返し単位a1又はa2で表されることを特徴とする〔7〕又は〔8〕記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、R
1、R
3は水素原子又はメチル基、R
2、R
5は水素原子又は酸不安定基、X
1は単結合、フェニレン基、ナフチレン基、又は−C(=O)−O−R
6−(但し、R
6は−C(=O)−OR
2と結合)であり、R
6は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよく、あるいはフェニレン基もしくはナフチレン基であり、X
2は単結合、又はフェニレン基もしくはナフチレン基で、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを有していてもよく、あるいは−C(=O)−O−R
7−、−C(=O)−NH−R
7−、−O−R
7−、又は−S−R
7−(但し、R
7はR
4と結合)であり、R
7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよく、あるいはフェニレン基もしくはナフチレン基であり、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、炭素数2〜6
のアルケニル基、アルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを有していてもよい。R
4は単結合、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の2〜3価の脂肪族炭化水素基、又はフェニレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよい。0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0<a1+a2≦1.0の範囲である。mは1又は2である。)
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、有機溶剤現像において溶解コントラストが大きく、かつ高感度なレジスト組成物を提供でき、有機溶剤による現像によってポジネガ反転によるホールパターンやトレンチパターンを形成することができるパターン形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、酸不安定基で置換された又は非置換のカルボキシル基やヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有するポリマーにフッ素化されたテトラフェニルボレートが発生する酸発生剤を添加したレジスト組成物を塗布し、プリベークにより不要な溶剤を除去してレジスト膜を形成し、高エネルギー線を露光し、露光後加熱し、有機溶剤現像液で現像してネガ型パターンを得ることを特徴とするパターン形成方法及びこれに用いるレジスト組成物を提案するものである。
【0018】
有機溶剤現像後のホールパターンの寸法均一性の向上が要求されている。一般的にレジスト膜中における酸の拡散はミクロ的には不均一に進行するため、寸法均一性を向上させるには酸拡散を抑える必要がある。究極的に酸の拡散を抑えることができるのは、ポリマー主鎖にスルホン酸が結合したアニオンバウンド型の酸発生剤である。しかしながらアニオンバウンドPAGポリマーは、溶剤への溶解性が低く、ネガティブパターンを得るための有機溶剤の現像液に未露光部分が溶解しない。この場合、未露光部分に溶け残りが生じるため、ネガパターンを形成することができない。
【0019】
本発明者らは、ベース樹脂として酸不安定基で置換された又は非置換のカルボキシル基やヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有するポリマーにフッ素化されたテトラフェニルボレートが発生する酸発生剤を添加した化学増幅ネガ型レジストレジスト組成物は、フッ素化されたテトラフェニルボレートの分子量が非常に大きいために酸拡散が極めて小さく、しかもフッ素化されたテトラフェニルボレートの酸性度が非常に高いために脱保護コントラストも高い。低酸拡散かつ高コントラストの特性を有するために、パターンの寸法均一性に優れる特徴がある。
【0020】
本発明において、フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤としては、下記一般式(1)−1又は(1)−2で表されるものが好適である。
【化7】
(式中、R
101a、R
101b、R
101cはそれぞれ炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルキル基、ハロゲン原子で置換されたアルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、ニトロ基、又はアミノ基によって置換されていても、前記置換基の中にエーテル基、エステル基、ラクトン環、アミド基、ラクタム基、又はスルトン環を有していてもよい。また、R
101bとR
101cとは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R
101b、R
101cはそれぞれ炭素数1〜14のアルキレン基又はアリーレン基を示す。R
102〜R
105はフッ素原子又はトリフルオロメチル基であり、p、q、r、sは1〜5の整数である。)
【0021】
この場合、上記フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤としては、下記一般式(3)−1又は(3)−2で表されるものが好ましい。
【化8】
(式中、R
102〜R
105、p、q、r、sは前述の通り、R
8〜R
11は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、ニトロ基、又はアミノ基によって置換されていてもよい。Y
1は単結合、メチレン基、エチレン基、−O−、−S−、−NR
12−、−C(=O)−、又は−S(=O
2)−から選ばれる連結基であり、R
12は水素原子、又は炭素数1〜4のアルキル基であり、Y
2は単結合、メチレン基又はエチレン基である。eは1〜5の整数、f、gは1〜4の整数、hは1〜7の整数である。)
【0022】
上記一般式(1)−1、(1)−2のフッ素化されたテトラフェニルボレートのアニオン部分は、具体的には下記に例示することができる。
【化9】
【0023】
上記一般式(1)−1、(1)−2のスルホニウム塩、ヨードニウム塩のカチオン部分は、具体的には下記に例示することができる。
【化10】
【0032】
一般式(1)−1、(1)−2の酸発生剤の合成方法は、例えばフッ素化されたテトラフェニルボレートのアルキル金属塩やアンモニウム塩とスルホニウム塩化合物のイオン交換反応により目的のスルホニウム塩を得ることができる。イオン交換反応は特開2007−145797号公報などに詳しく記載されている。
【0033】
なお、上記酸発生剤の配合量は、後述するベース樹脂100質量部に対し0.1〜200質量部が好ましく、より好ましくは1〜100質量部、更に好ましくは2〜50質量部である。配合量が少なすぎると、感度が低すぎるおそれがあり、またLWRが大きくなりすぎるおそれがある。一方、配合量が多すぎると、酸発生剤の吸収の影響で逆テーパー形状のネガパターンになったり、パターン倒れが発生したり、パターンの残膜厚量が低下したりするおそれが生じる。
【0034】
ここで、ベース樹脂を構成する酸不安定基で置換又は非置換のカルボキシル基及び/又はαトリフルオロメチルヒドロキシ基を除く酸不安定基で置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位は、それぞれ下記一般式(2)中のa1、a2で表すことができる。
【化19】
(式中、R
1、R
3は水素原子又はメチル基、R
2、R
5は水素原子又は酸不安定基、X
1は単結合、フェニレン基、ナフチレン基、又は−C(=O)−O−R
6−であり、R
6は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよく、あるいはフェニレン基もしくはナフチレン基であり、X
2は単結合、又はフェニレン基もしくはナフチレン基で、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを有していてもよく、あるいは−C(=O)−O−R
7−、−C(=O)−NH−R
7−、−O−R
7−、又は−S−R
7−であり、R
7は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基であり、エーテル基、エステル基、ラクトン環、ヒドロキシ基のいずれかを有していてもよく、あるいはフェニレン基もしくはナフチレン基であり、炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、炭素数2〜6アルケニル基、アルコキシカルボニル基、炭素数6〜10のアリール基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子のいずれかを有していてもよい。R
4は単結合、炭素数1〜16の直鎖状、分岐状又は環状の2〜3価の脂肪族炭化水素基、又はフェニレン基であり、エーテル基又はエステル基を有していてもよい。0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0<a1+a2≦1.0の範囲である。mは1又は2である。)
【0035】
ここで、繰り返し単位a1、a2を得るためのモノマーMa1、Ma2は、それぞれ下記式で示される。
【化20】
(式中、R
1〜R
5、X
1、X
2、mは前述と同様である。)
【0036】
モノマーMa1のX
1を変えた構造は、具体的には下記に例示することができる。R
1、R
2は前述と同様である。
【化21】
【0037】
モノマーMa2のX
2、R
4を変えた構造は、具体的には下記に例示することができる。R
3、R
5は前述と同様である。
【化22】
【0053】
一般式(1)中のカルボキシル基を置換した酸不安定基R
2、ヒドロキシ基を置換した酸不安定基R
5は種々選定され、互いに同一であっても異なっていてもよいが、特に下記式(AL−10)で示される基、下記式(AL−11)で示されるアセタール基、下記式(AL−12)で示される三級アルキル基、炭素数4〜20のオキソアルキル基等が挙げられる。
【化38】
【0054】
式(AL−10)、(AL−11)において、R
51、R
54は炭素数1〜40、特に1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。R
52、R
53は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよく、a5は0〜10、特に1〜5の整数である。R
52とR
53、R
52とR
54、又はR
53とR
54はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子又は炭素原子と酸素原子と共に炭素数3〜20、好ましくは4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
R
55、R
56、R
57はそれぞれ炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基であり、酸素、硫黄、窒素、フッ素等のヘテロ原子を含んでもよい。あるいはR
55とR
56、R
55とR
57、又はR
56とR
57はそれぞれ結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20、好ましくは4〜16の環、特に脂環を形成してもよい。
【0055】
式(AL−10)で示される基を具体的に例示すると、tert−ブトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニルメチル基、tert−アミロキシカルボニル基、tert−アミロキシカルボニルメチル基、1−エトキシエトキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロピラニルオキシカルボニルメチル基、2−テトラヒドロフラニルオキシカルボニルメチル基等、また下記一般式(AL−10)−1〜(AL−10)−10で示される置換基が挙げられる。
【化39】
【0056】
式(AL−10)−1〜(AL−10)−10中、R
58は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。R
59は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。R
60は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。a5は上記の通りである。
【0057】
前記式(AL−11)で示されるアセタール基を下記式(AL−11)−1〜(AL−11)−112に例示する。
【化40】
【0063】
また、酸不安定基として、下記一般式(AL−11a)あるいは(AL−11b)で示される基が挙げられ、該酸不安定基によってベース樹脂が分子間あるいは分子内架橋されていてもよい。
【化46】
【0064】
上記式中、R
61、R
62は水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基を示す。又は、R
61とR
62は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよく、環を形成する場合にはR
61、R
62は炭素数1〜8の直鎖状又は分岐状のアルキレン基を示す。R
63は炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、b5、d5は0又は1〜10の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、c5は1〜7の整数である。Aは、(c5+1)価の炭素数1〜50の脂肪族もしくは脂環式飽和炭化水素基、芳香族炭化水素基又はヘテロ環基を示し、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在してもよく、又はその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、カルボニル基又はフッ素原子によって置換されていてもよい。Bは−CO−O−、−NHCO−O−又は−NHCONH−を示す。
この場合、好ましくはAは2〜4価の炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルカントリイル基、アルカンテトライル基、又は炭素数6〜30のアリーレン基であり、これらの基は酸素、硫黄、窒素等のヘテロ原子を介在していてもよく、またその炭素原子に結合する水素原子の一部が水酸基、カルボキシル基、アシル基又はハロゲン原子によって置換されていてもよい。また、c5は好ましくは1〜3の整数である。
【0065】
一般式(AL−11a)、(AL−11b)で示される架橋型アセタール基は、具体的には下記式(AL−11)−113〜(AL−11)−120のものが挙げられる。
【化47】
【0066】
次に、前記式(AL−12)に示される三級アルキル基としては、tert−ブチル基、トリエチルカルビル基、1−エチルノルボニル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−エチルシクロペンチル基、tert−アミル基等、あるいは下記一般式(AL−12)−1〜(AL−12)−16で示される基を挙げることができる。
【化48】
【0067】
上記式中、R
64は同一又は異種の炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示し、R
64同士が結合して環を形成してもよい。R
65、R
67は水素原子、メチル基又はエチル基を示す。R
66は炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基を示す。
【0068】
更に、酸不安定基として、下記式(AL−12)−17に示す基が挙げられ、2価以上のアルキレン基、又はアリーレン基であるR
68を含む該酸不安定基によってベース樹脂が分子内あるいは分子間架橋されていてもよい。式(AL−12)−17のR
64は前述と同様、R
68は単結合、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、又はアリーレン基を示し、酸素原子や硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。b6は0〜3の整数である。式(AL−12)−17は酸不安定基R
2、R
5の全てに適用される。
【化49】
【0069】
なお、上述したR
64、R
65、R
66、R
67は酸素、窒素、硫黄等のヘテロ原子を有していてもよく、具体的には下記式(AL−13)−1〜(AL−13)−7に示すことができる。
【化50】
【0070】
特に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−19に示されるエキソ体構造を有するものが好ましい。
【化51】
(式中、R
69は炭素数1〜8の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基又は炭素数6〜20の置換されていてもよいアリール基を示す。R
70〜R
75及びR
78、R
79はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキル基等の1価炭化水素基を示し、R
76、R
77は水素原子を示す。あるいは、R
70とR
71、R
72とR
74、R
72とR
75、R
73とR
75、R
73とR
79、R
74とR
78、R
76とR
77、又はR
77とR
78は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環(特に脂環)を形成していてもよく、その場合には環の形成に関与するものは炭素数1〜15のヘテロ原子を含んでもよいアルキレン基等の2価炭化水素基を示す。またR
70とR
79、R
76とR
79、又はR
72とR
74は隣接する炭素に結合するもの同士で何も介さずに結合し、二重結合を形成してもよい。また、本式により、鏡像体も表す。)
【0071】
ここで、一般式(AL−12)−19に示すエキソ体構造を有する下記繰り返し単位
【化52】
を得るためのエステル体のモノマーとしては、特開2000−327633号公報に示されている。R
1は上記の通りである。具体的には下記に示すものを挙げることができるが、これらに限定されることはない。
【0073】
更に、上記式(AL−12)の酸不安定基としては、下記式(AL−12)−20に示されるフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基を挙げることができる。
【化54】
(式中、R
80、R
81はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。又は、R
80、R
81は互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に炭素数3〜20の脂肪族炭化水素環を形成してもよい。R
82はフランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基から選ばれる2価の基を示す。R
83は水素原子又はヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基等の1価炭化水素基を示す。)
【0074】
フランジイル基、テトラヒドロフランジイル基又はオキサノルボルナンジイル基を有する酸不安定基で置換された繰り返し単位
【化55】
を得るためのモノマーとしては、下記に例示される。なお、R
1は上記の通りである。また、下記式中Meはメチル基、Acはアセチル基を示す。
【化56】
【0076】
前記式(AL−12)に示される三級アルキル基の酸不安定基として、環に直結した分岐アルキル基を有する場合、有機溶剤への溶解性が高い。このような酸不安定基は下記に例示することができる。なお、下記例において、括弧内から外部に突出している手が結合手を示す。
【化58】
【0078】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物は、一般式(1)の繰り返し単位a1、a2の酸不安定基を有する繰り返し単位を有することが好ましいが、更にはヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、ラクトン環、カルボキシル基、カルボン酸無水物基、スルホン酸エステル基、ジスルホン基、カーボネート基等の密着性基を有するモノマーに由来する繰り返し単位bを共重合させてもよい。これらの中で、ラクトン環を密着性基として有するものが最も好ましく用いられる。
繰り返し単位bを得るためのモノマーとしては、具体的に下記に挙げることができる。
【0089】
更に、下記一般式で示されるスルホニウム塩(c1)〜(c3)のいずれかを共重合することもできる。
【化69】
(式中、R
20、R
24、R
28は水素原子又はメチル基、R
21は単結合、フェニレン基、−O−R
33−、又は−C(=O)−Y−R
33−である。Yは酸素原子又はNH、R
33は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基(−CO−)、エステル基(−COO−)、エーテル基(−O−)又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。R
22、R
23、R
25、R
26、R
27、R
29、R
30、R
31は同一又は異種の炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、カルボニル基、エステル基又はエーテル基を含んでいてもよく、又は炭素数6〜12のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基又はチオフェニル基を表す。Z
0は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、フッ素化されたフェニレン基、−O−R
32−、又は−C(=O)−Z
1−R
32−である。Z
1は酸素原子又はNH、R
32は炭素数1〜6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、アルケニレン基又はフェニレン基であり、カルボニル基、エステル基、エーテル基又はヒドロキシ基を含んでいてもよい。M
-は非求核性対向イオンを表す。0≦c1≦0.4、0≦c2≦0.4、0≦c3≦0.4、0≦c1+c2+c3≦0.4の範囲である。)
【0090】
上記繰り返し単位以外には、特開2008−281980号公報に記載の非脱離性炭化水素基を有する繰り返し単位dを挙げることができる。特開2008−281980号公報に記載されていない非脱離性炭化水素基としてはインデン類、アセナフチレン類、ノルボルナジエン類を重合体として挙げることができる。非脱離性炭化水素基を有する繰り返し単位dを共重合することによって、有機溶剤現像液への溶解性を向上させることができる。
【0091】
更には、オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位eを共重合することもできる。オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位eを共重合することによって、露光部が架橋するために、露光部分の残膜特性とエッチング耐性が向上する。
オキシラン環又はオキセタン環を有する繰り返し単位eは、具体的には下記に例示される。なお、下記例中、R
41は水素原子又はメチル基である。
【0094】
上記繰り返し単位a1、a2、b、c1、c2、c3、d、eにおいて、繰り返し単位の比率は、0≦a1≦1.0、0≦a2≦1.0、0<a1+a2≦1.0、0≦b<1.0、0≦c1≦0.4、0≦c2≦0.4、0≦c3≦0.4、0≦c1+c2+c3≦0.4、0≦d<0.4、0≦e≦0.4、好ましくは0≦a1≦0.9、0≦a2≦0.9、0.1≦a1+a2≦0.9、0.1≦b≦0.9、0≦c1≦0.3、0≦c2≦0.3、0≦c3≦0.3、0≦c1+c2+c3≦0.3、0≦d<0.3、0≦e≦0.3の範囲である。なお、a1+a2+b+c1+c2+c3+d+e=1である。
【0095】
本発明に用いられるレジストベースポリマーの重合方法としては、有機溶剤中、ラジカル重合開始剤を加えて加熱重合を行い、共重合体の高分子化合物を得ることができる。
【0096】
重合時に使用する有機溶剤としてはトルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。
【0097】
ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンを共重合する場合は、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシビニルナフタレンの代わりにアセトキシスチレン、アセトキシビニルナフタレンを用い、重合後上記アルカリ加水分解によってアセトキシ基を脱保護してポリヒドロキシスチレン、ヒドロキシポリビニルナフタレンにする方法もある。アルカリ加水分解時の塩基としては、アンモニア水、トリエチルアミン等が使用できる。
【0098】
また、反応温度としては−20〜100℃、好ましくは0〜60℃であり、反応時間としては0.2〜100時間、好ましくは0.5〜20時間である。
【0099】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物は、テトラヒドロフラン(THF)溶液によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000〜500,000、特に2,000〜30,000であることが好ましい。重量平均分子量が小さすぎると有機溶剤現像時に膜減りを生じ易くなったり、大きすぎると有機溶剤への溶解性が低下し、パターン形成後に裾引き現象が生じ易くなる可能性がある。
【0100】
更に、本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物のベース樹脂となる高分子化合物においては、分子量分布(Mw/Mn)が広い場合は低分子量や高分子量のポリマーが存在するために露光後、パターン上に異物が見られたり、パターンの形状が悪化したりするおそれがある。それ故、パターンルールが微細化するに従ってこのような分子量、分子量分布の影響が大きくなり易いことから、微細なパターン寸法に好適に用いられるレジスト組成物を得るには、使用する多成分共重合体の分子量分布は1.0〜2.0、特に1.0〜1.5と狭分散であることが好ましい。
また、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーや直線状のポリマーをブレンドしたりすることも可能である。
【0101】
これら高分子化合物を合成するには、一つの方法としては繰り返し単位a1、a2、b、c1、c2、c3、d、eを得るための不飽和結合を有するモノマーを有機溶剤中、ラジカル開始剤を加えて加熱重合を行う方法があり、これにより高分子化合物を得ることができる。重合時に使用する有機溶剤としては、トルエン、ベンゼン、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等が例示できる。重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等が例示でき、好ましくは50〜80℃に加熱して重合できる。反応時間としては2〜100時間、好ましくは5〜20時間である。酸不安定基は、モノマーに導入されたものをそのまま用いてもよいし、重合後保護化あるいは部分保護化してもよい。
【0102】
更には、カルボキシル基あるいはヒドロキシ基が酸不安定基で置換された繰り返し単位を有するポリノルボルネン、シクロオレフィン無水マレイン酸、ROMPなどをブレンドすることも可能である。
【0103】
上記ベース樹脂を含有するレジスト組成物は、基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に高エネルギー線をこのレジスト膜の所用部分に照射、露光し、加熱処理後に有機溶剤の現像液を用いて上記レジスト膜の未露光部分を溶解、露光部分が膜として残りホールやトレンチ等のネガティブトーンのレジストパターンを形成する。
【0104】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物は、有機溶剤、高エネルギー線に感応して酸を発生する化合物(酸発生剤)、必要に応じて溶解制御剤、塩基性化合物、界面活性剤、アセチレンアルコール類、その他の成分を含有することができる。
【0105】
本発明のパターン形成方法に用いられるレジスト組成物は、上記フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤以外の酸発生剤を含んでもよい。この場合、上記フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤以外の酸発生剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し0〜30質量部、好ましくは0.5〜30質量部、特に1〜20質量部とすることが好ましい。光酸発生剤の成分としては、高エネルギー線照射により酸を発生する化合物であればいずれでも構わない。好適な光酸発生剤としてはスルホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニルジアゾメタン、N−スルホニルオキシイミド、オキシム−O−スルホネート型酸発生剤等がある。これらは単独であるいは2種以上混合して用いることができる。
【0106】
これら酸発生剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0122]〜[0142]に記載されている。酸発生剤から発生してくる酸としては、スルホン酸、イミド酸、メチド酸を挙げることができる。これらの中でα位がフッ素化されたスルホン酸が最も一般的に用いられるが、α位がフッ素化されている場合の方がエポキシ基の反応性が高くなるので好適である。更には特開平11−52562号公報に記載のテトラアリールボレート、又はヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロホスファートを発生させる酸発生剤は、発生酸がエポキシの反応性を高めるルイス酸触媒なので、特に好適に用いることができる。但し、ヘキサフルオロアンチモネートは毒性の問題がある。ベースポリマーとして酸発生剤の繰り返し単位c1、c2、c3を共重合している場合は、添加型の酸発生剤は必ずしも必須ではない。
【0107】
有機溶剤の具体例としては、特開2008−111103号公報の段落[0144]〜[0145]に記載のシクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類及びその混合溶剤が挙げられる。アセタール系の酸不安定基を用いる場合は、アセタールの脱保護反応を加速させるために高沸点のアルコール系溶剤にはジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール等を加えることもできる。
【0108】
本発明は、クエンチャーとしてアミン類などの塩基性化合物を添加することもできる。塩基性化合物としては、特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載の1級、2級、3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカルバメート基を有する化合物を挙げることができる。
【0109】
また、特開2008−158339号公報に記載されているα位がフッ素化されていないスルホン酸、及び特許第3991462号公報に記載のカルボン酸のスルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩をクエンチャーとして併用することもできる。
【0110】
酸不安定基が酸に対して特に敏感なアセタールである場合は、保護基を脱離させるための酸は必ずしもα位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸、メチド酸でなくてもよく、α位がフッ素化されていないスルホン酸でも脱保護反応が進行する場合がある。
【0111】
界面活性剤は段落[0165]〜[0166]、溶解制御剤は特開2008−122932号公報の段落[0155]〜[0178]、アセチレンアルコール類は段落[0179]〜[0182]に記載のものを用いることができる。
【0112】
スピンコート後のレジスト表面の撥水性を向上させるための高分子化合物を添加することもできる。この添加剤はトップコートを用いない液浸リソグラフィーに用いることができる。このような添加剤は特定構造の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有し、特開2007−297590号公報、特開2008−111103号公報に例示されている。レジスト組成物に添加される撥水性向上剤は、現像液の有機溶剤に溶解する必要がある。前述の特定の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する撥水性向上剤は、現像液への溶解性が良好である。撥水性の添加剤として、アミノ基やアミン塩を繰り返し単位として共重合した高分子化合物は、PEB中の酸の蒸発を防いで現像後のホールパターンの開口不良を防止する効果が高い。撥水性向上剤の添加量は、レジスト組成物のベース樹脂100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。
【0113】
なお、有機溶剤の配合量はベース樹脂100質量部に対し100〜10,000質量部、特に300〜8,000質量部とすることが好ましい。また、塩基性化合物の配合量はベース樹脂100質量部に対し0.0001〜30質量部、特に0.001〜20質量部とすることが好ましい。
また、溶解制御剤、界面活性剤、アセチレンアルコール類の配合量は、その配合目的に応じて適宜選定し得る。
【0114】
本発明に係るパターニング方法は、
図1に示される。この場合、
図1(A)に示したように、本発明においては基板10上に形成した被加工基板20に直接又は中間介在層30を介してポジ型レジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜40を形成する。レジスト膜の厚さとしては、10〜1,000nm、特に20〜500nmであることが好ましい。このレジスト膜は、露光前に加熱(プリベーク)を行うが、この条件としては60〜180℃、特に70〜150℃で10〜300秒間、特に15〜200秒間行うことが好ましい。
なお、基板10としては、シリコン基板が一般的に用いられる。被加工基板20としては、SiO
2、SiN、SiON、SiOC、p−Si、α−Si、TiN、WSi、BPSG、SOG、Cr、CrO、CrON、MoSi、低誘電膜及びそのエッチングストッパー膜が挙げられる。中間介在層30としては、SiO
2、SiN、SiON、p−Si等のハードマスク、カーボン膜による下層膜と珪素含有中間膜、有機反射防止膜等が挙げられる。
【0115】
次いで、
図1(B)に示すように露光50を行う。ここで、露光は波長140〜250nmの高エネルギー線、波長13.5nmのEUV、電子ビーム(EB)が挙げられるが、中でもArFエキシマレーザーによる193nmの露光が最も好ましく用いられる。露光は大気中や窒素気流中のドライ雰囲気でもよいし、水中の液浸露光であってもよい。ArF液浸リソグラフィーにおいては液浸溶剤として純水、又はアルカン等の屈折率が1以上で露光波長に高透明の液体が用いられる。液浸リソグラフィーでは、プリベーク後のレジスト膜と投影レンズの間に、純水やその他の液体を挿入する。これによってNAが1.0以上のレンズ設計が可能となり、より微細なパターン形成が可能になる。液浸リソグラフィーはArFリソグラフィーを45nmノードまで延命させるための重要な技術である。液浸露光の場合は、レジスト膜上に残った水滴残りを除去するための露光後の純水リンス(ポストソーク)を行ってもよいし、レジスト膜からの溶出物を防ぎ、膜表面の滑水性を上げるために、プリベーク後のレジスト膜上に保護膜を形成させてもよい。液浸リソグラフィーに用いられるレジスト保護膜を形成する材料としては、例えば、水に不溶でアルカリ現像液に溶解する1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料が好ましい。この場合、保護膜形成用組成物は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位等のモノマーから得られるものが挙げられる。保護膜は有機溶剤の現像液に溶解する必要があるが、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位からなる高分子化合物は前述の有機溶剤現像液に溶解する。特に、特開2007−25634号公報、特開2008−3569号公報に例示の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する保護膜材料の有機溶剤現像液に対する溶解性は高い。
【0116】
保護膜形成用組成物にアミン化合物又はアミン塩を配合あるいはアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した高分子化合物を用いることは、フォトレジスト膜の露光部から発生した酸の未露光部分への拡散を制御し、ホールの開口不良を防止する効果が高い。アミン化合物を添加した保護膜材料としては特開2008−3569号公報に記載の材料、アミノ基又はアミン塩を共重合した保護膜材料としては特開2007−316448号公報に記載の材料を用いることができる。アミン化合物、アミン塩としては、上記フォトレジスト添加用の塩基性化合物として詳述したものの中から選定することができる。アミン化合物、アミン塩の配合量は、ベース樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.02〜8質量部が好ましい。
【0117】
フォトレジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによってレジスト膜表面からの酸発生剤等の抽出、あるいはパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。PEB中に露光部から蒸発した酸が未露光部に付着し、未露光部分の表面の保護基を脱保護させると、現像後のホールの表面がブリッジして閉塞する可能性がある。特にネガティブ現像におけるホールの外側は、光が照射されて酸が発生している。PEB中にホールの外側の酸が蒸発し、ホールの内側に付着するとホールが開口しないことが起きる。酸の蒸発を防いでホールの開口不良を防ぐために保護膜を適用することは効果的である。更に、アミン化合物又はアミン塩を添加した保護膜は、酸の蒸発を効果的に防ぐことができる。一方、カルボキシル基やスルホ基等の酸化合物を添加、あるいはカルボキシル基やスルホ基を有するモノマーを共重合したポリマーをベースとした保護膜を用いた場合は、ホールの未開口現象が起きることがあり、このような保護膜を用いることは好ましくない。
【0118】
本発明においては、一般式(2)で示される酸不安定基で置換又は非置換のカルボキシル基及び/又はαトリフルオロメチルヒドロキシ基を除く酸不安定基で置換又は非置換のヒドロキシ基を有する繰り返し単位を含有するポリマー(高分子化合物)と、上記フッ素化されたテトラフェニルボレートを発生させる酸発生剤と、有機溶剤とを含むレジスト組成物を基板上に塗布してレジスト膜を形成し、加熱処理後に保護膜を形成し、高エネルギー線で上記レジスト膜を露光し、加熱処理後に有機溶剤による現像液を用いて保護膜と未露光部を溶解させ、露光部が溶解しないネガ型パターンを得ることが好ましく、この場合、保護膜を形成する材料として、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する高分子化合物をベースとしてアミノ基又はアミン塩を有する化合物を添加した材料、あるいは前記高分子化合物中にアミノ基又はアミン塩を有する繰り返し単位を共重合した材料をベースとし、炭素数4以上のアルコール系溶剤、炭素数8〜12のエーテル系溶剤、又はこれらの混合溶剤に溶解させた材料を用いることが好ましい。
1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール残基を有する繰り返し単位としては、[化66]、[化67]、[化68]で示したモノマーの内、ヒドロキシ基を有するモノマーを挙げることができる。
【0119】
アミノ基を有する化合物としては、フォトレジスト組成物に添加される特開2008−111103号公報の段落[0146]〜[0164]に記載のアミン化合物を用いることができる。
アミン塩を有する化合物としては、前記アミン化合物のカルボン酸塩又はスルホン酸塩を用いることができる。
炭素数4以上のアルコール系溶剤としては、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールなどを挙げることができる。
炭素数8〜12のエーテル系溶剤としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルなどを挙げることができる。
【0120】
露光における露光量は1〜200mJ/cm
2程度、好ましくは10〜100mJ/cm
2程度となるように露光することが好ましい。次に、ホットプレート上で60〜150℃、1〜5分間、好ましくは80〜120℃、1〜3分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0121】
更に、
図1(C)に示されるように有機溶剤の現像液を用い、0.1〜3分間、好ましくは0.5〜2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することにより未露光部分が溶解するネガティブパターンが基板上に形成される。この時の現像液としては、2−オクタノン、2−ノナノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、蟻酸イソブチル、蟻酸アミル、蟻酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、2−ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、蟻酸ベンジル、蟻酸フェニルエチル、3−フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸2−フェニルエチル等のエステル類を好ましく用いることができる。現像液は上記現像液の1種以上を用いることができ、複数種を任意の割合で混合することができる。現像液に界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤の種類としては、レジストに添加するものと同じ種類を適用することができる。
【0122】
現像の終了時には、リンスを行う。リンス液としては、現像液と混溶し、レジスト膜を溶解させない溶剤が好ましい。このような溶剤としては、炭素数3〜10のアルコール、炭素数8〜12のエーテル化合物、炭素数6〜12のアルカン、アルケン、アルキン、芳香族系の溶剤が好ましく用いられる。
【0123】
具体的に、炭素数6〜12のアルカンとしては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、メチルシクロペンタン、ジメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナンなどが挙げられる。炭素数6〜12のアルケンとしては、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、ジメチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどが挙げられ、炭素数6〜12のアルキンとしては、ヘキシン、ヘプチン、オクチンなどが挙げられ、炭素数3〜10のアルコールとしては、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1−ブチルアルコール、2−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、tert−アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル−3−ペンタノール、シクロペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2,3−ジメチル−2−ブタノール、3,3−ジメチル−1−ブタノール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2−エチル−1−ブタノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−1−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、4−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−3−ペンタノール、シクロヘキサノール、1−オクタノールなどが挙げられる。
炭素数8〜12のエーテル化合物としては、ジ−n−ブチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ジ−sec−ブチルエーテル、ジ−n−ペンチルエーテル、ジイソペンチルエーテル、ジ−sec−ペンチルエーテル、ジ−tert−アミルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテルから選ばれる1種以上の溶剤が挙げられる。
前述の溶剤に加えてトルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系の溶剤を用いることもできる。
リンスを行うことによってレジストパターンの倒れや欠陥の発生を低減させることができる。また、リンスは必ずしも必須ではなく、リンスを行わないことによって溶剤の使用量を削減することができる。
【0124】
反転後のホールパターンをRELACS
TM技術でシュリンクすることもできる。ホールパターン上にシュリンク剤を塗布し、ベーク中のレジスト層からの酸触媒の拡散によってレジストの表面でシュリンク剤の架橋が起こり、シュリンク剤がホールパターンの側壁に付着する。ベーク温度は70〜180℃、好ましくは80〜170℃で、時間は10〜300秒であり、余分なシュリンク剤を除去しホールパターンを縮小させる。
【0125】
ネガティブトーン現像によってホールパターンを形成する場合、X、Y方向の2回のラインパターンのダイポール照明による露光を行うことが最もコントラストが高い光を用いることができる。ダイポール照明に併せてs偏光照明を加えると、更にコントラストを上げることができる。
【0126】
特開2011−170316号公報の段落[0097]に記載のようにハーフトーン位相シフトマスクを用い、格子状のシフター格子の交点に現像後のホールパターンを形成することもできる。格子状パターンが透過率3〜15%のハーフトーン位相シフトマスクであることが好ましい。この場合、ハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜30nm太い第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成すること、あるいはハーフピッチ以下のライン幅による格子状の第1のシフターと、第1のシフター上に第1のシフターの線幅よりもウエハー上の寸法で2〜100nm太いドットパターンの第2のシフターが配列された位相シフトマスクを用い、太いシフターが配列されたところだけにホールパターンを形成することが好ましい。
【0127】
以下、更に詳述すると、X、Y方向のラインを2回のダイポール照明と偏光照明を組み合わせた露光は、最も高コントラストの光が形成される方法であるが、2回の露光とその間のマスクの交換によってスループットが大幅に低下する欠点がある。マスクを交換しながら2回の露光を連続して行うためには、露光装置側のマスクのステージを2つ設ける必要があるが、現在の露光装置のマスクのステージは1つである。この場合、1枚露光する毎にマスクを交換するのではなく、FOUP(ウエハーケース)に入った25枚ウエハーをX方向のラインの露光を連続して行い、次にマスクを交換して同じ25枚のウエハーを連続してY方向のラインの露光を行う方がスループットを上げることができる。しかしながら、25枚のウエハーの最初のウエハーが次の露光されるまでの時間が長くなることによって環境の影響で現像後のレジスト膜の寸法や形状が変化してしまう問題が生じる。2回目の露光までのウエハー待機中の環境の影響を遮断するために、レジスト膜の上層に保護膜を敷くことが有効である。
マスクを1枚で済ませるために、格子状のパターンのマスクを用いてX、Y方向のそれぞれのダイポール照明で2回露光する方法が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5377, p.255 (2004))。この方法では、前述の2枚のマスクを用いる方法に比べると光学コントラストが若干低下するが、1枚のマスクを用いることができるためにスループットが向上する。格子状のパターンのマスクを用いてX方向のダイポール照明によってX方向のラインを形成し、光照射によってX方向のラインを不溶化し、この上にもう一度フォトレジスト組成物を塗布し、Y方向のダイポール照明によってY方向のラインを形成し、X方向のラインとY方向のラインの隙間にホールパターンを形成している。この方法では、マスクは1枚で済むが、2回の露光の間に1回目のフォトレジストパターンの不溶化処理と2回目のフォトレジストの塗布と現像のプロセスが入るために、2回の露光間にウエハーが露光ステージから離れ、この時にアライメントエラーが大きくなる問題が生じる。2回の露光間のアライメントエラーを最小にするためには、ウエハーを露光ステージから離さずに連続して2回の露光を行う必要がある。ダイポール照明にs偏光照明を加えると更にコントラストが向上するので好ましく用いられる。格子状のマスクを用いてX方向のラインとY方向のラインを形成する2回の露光を重ねて行ってネガティブトーンの現像を行うと、ホールパターンが形成される。
格子状のマスクを用いて1回の露光でホールパターンを形成する場合は、4重極照明(クロスポール照明)を用いる。これにX−Y偏光照明あるいは円形偏光のAzimuthally偏光照明を組み合わせてコントラストを向上させる。
【0128】
本発明の組成物を用いたホールパターンの形成方法では、露光を2回行う場合、1回目の露光と2回目の露光の照明とマスクを変更して露光を行う方法が最も高コントラストで微細なパターンを寸法均一性よく形成できる。1回目の露光と2回目の露光に用いられるマスクは1回目のラインパターンと2回目のラインとが交差した交点に現像後のレジストのホールパターンを形成する。1回目のラインと2回目のラインの角度は直交が好ましいが、90度以外の角度でも構わなく、1回目のラインの寸法と2回目のラインの寸法やピッチが同じであっても異なってもよい。1回目のラインと、これと異なる位置に2回目のラインが1枚のマスクに有するマスクを用いて1回目の露光と2回目の露光を連続露光することも可能であるが、この場合露光できる最大の面積が半分になる。但し連続露光を行う場合は、アライメントエラーを最小にすることができる。もちろん1回の露光では、2回の連続露光よりもアライメントのエラーを小さくすることができる。
1枚のマスクを用いて、露光面積を縮小することなく2回の露光を行うためには、マスクパターンとしては、格子状のパターンを用いる場合、ドットパターンを用いる場合、ドットパターンと格子状パターンを組み合わせる場合がある。
格子状のパターンを用いる方が最も光のコントラストが向上するが、光の強度が低下するためにレジスト膜の感度が低下する欠点がある。一方ドットパターンを用いる方法は光のコントラストが低下するが、レジスト膜の感度が向上するメリットがある。
ホールパターンが水平と垂直方向に配列されている場合は前記の照明とマスクパターンを用いるが、これ以外の角度、例えば45度の方向に配列している場合は、45度に配列しているパターンのマスクとダイポール照明あるいはクロスポール照明を組み合わせる。
2回の露光を行う場合はX方向ラインのコントラストを高めるダイポール照明に偏光照明を組み合わせた露光と、Y方向ラインのコントラストを高めるダイポール照明に偏光照明を組み合わせた2回の露光を行う。1枚のマスクを用いてX方向とY方向のコントラストを強調した2回の連続した露光は、現在の市販のスキャナーで行うことが可能である。
格子状のパターンのマスクを使って、X、Yの偏光照明とクロスポール照明を組み合わせる方法は、2回のダイポール照明の露光に比べると若干光のコントラストが低下するものの1回の露光でホールパターンを形成することができ、かなりのスループットの向上が見込まれるし、2回露光によるアライメントずれの問題は回避される。このようなマスクと照明を用いれば、実用的なコストで40nmクラスのホールパターンを形成することが可能になる。
【0129】
格子状のパターンが配されたマスクでは、格子の交点が強く遮光される。このようなパターンのマスクを用いて露光を行い、ポジネガ反転を伴う有機溶剤による現像を行うことによって微細なホールパターンを形成することができる。
ドットパターンが配置されたマスクにおける光学像コントラストは格子状パターンのマスクに比べて低くなるものの、黒い遮光部分が存在するためにホールパターンの形成は可能である。
ピッチや位置がランダムに配列された微細なホールパターンの形成が困難である。密集パターンは、ダイポール、クロスポール等の斜入射照明に位相シフトマスクと偏光を組み合わせた超解像技術によってコントラストを向上することができるが、孤立パターンのコントラストはそれほど向上しない。
【0130】
密集の繰り返しパターンに対して超解像技術を用いた場合、孤立パターンとの粗密(プロキシミティー)バイアスが問題になる。強い超解像技術を使えば使うほど密集パターンの解像力が向上するが、孤立パターンの解像力は変わらないために、粗密バイアスが拡大する。微細化に伴うホールパターンにおける粗密バイアスの増加は深刻な問題である。粗密バイアスを抑えるために、一般的にはマスクパターンの寸法にバイアスを付けることが行われている。粗密バイアスはフォトレジスト組成物の特性、即ち、溶解コントラストや酸拡散によっても変わるために、フォトレジスト組成物の種類毎にマスクの粗密バイアスが変化する。フォトレジスト組成物の種類毎に粗密バイアスを変えたマスクを用いることになり、マスク製作の負担が増している。そこで、強い超解像照明で密集ホールパターンのみを解像させ、パターンの上に1回目のポジ型レジストパターンを溶解させないアルコール系溶剤のネガ型レジスト膜を塗布し、不必要なホール部分を露光、現像することによって閉塞させて密集パターンと孤立パターンの両方を作製する方法(Pack and unpack;PAU法)が提案されている(Proc. SPIE Vol. 5753 p171 (2005))。この方法の問題点は、1回目の露光と2回目の露光の位置ずれが挙げられ、この点については文献の著者も指摘している。また、2回目の現像で塞がれないホールパターンは2回現像されることになり、これによる寸法変化も問題として挙げられる。
【0131】
ランダムピッチのホールパターンをポジネガ反転の有機溶剤現像で形成するためには、特開2011−170316号公報の段落[0102]に記載の格子状のパターンが全面に配列され、ホールを形成する場所だけに格子の幅を太くしたマスクを用いる。同じく格子状のパターンを全面に配列し、ホールを形成する場所だけに太いドットを配置したマスクを用いることもできる。
格子状パターンが配列されていないマスクを用いた場合はホールの形成が困難であるか、もし形成できたとしても光学像のコントラストが低いために、マスク寸法のバラツキがホールの寸法のバラツキに大きく反映する結果となる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例等に制限されるものではない。なお、下記例において、分子量及び分散度はテトラヒドロフラン(THF)溶液のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより確認した。なお、分子量及び分散度はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0133】
レジスト組成物の調製
下記高分子化合物(レジストポリマー)を用いて、下記表1及び表3に示す組成で溶解させた溶液を0.2μmサイズのフィルターで濾過してそれぞれ第1レジスト溶液、第2レジスト溶液を調製した。
【0134】
表中の各組成は次の通りである。
酸発生剤:PAG1〜12(下記構造式参照)
【化72】
【0135】
【化73】
【0136】
酸発生剤:比較PAG1〜3(下記構造式参照)
【化74】
【0137】
酸発生剤:ブレンドPAG1(下記構造式参照)
【化75】
【0138】
レジストポリマー1
分子量(Mw)=8,200
分散度(Mw/Mn)=1.82
【0139】
【化76】
【0140】
レジストポリマー2
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.67
【0141】
【化77】
【0142】
レジストポリマー3
分子量(Mw)=7,800
分散度(Mw/Mn)=1.88
【0143】
【化78】
【0144】
レジストポリマー4
分子量(Mw)=7,200
分散度(Mw/Mn)=1.82
【0145】
【化79】
【0146】
レジストポリマー5
分子量(Mw)=8,900
分散度(Mw/Mn)=1.88
【0147】
【化80】
【0148】
レジストポリマー6
分子量(Mw)=8,500
分散度(Mw/Mn)=1.69
【0149】
【化81】
【0150】
レジストポリマー7
分子量(Mw)=8,200
分散度(Mw/Mn)=1.82
【0151】
【化82】
【0152】
塩基性化合物:Quencher1、弱酸発生剤化合物:Quencher2〜6(下記構造式参照)
【化83】
【0153】
撥水性ポリマー1(下記構造式参照)
【化84】
【0154】
有機溶剤:PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)
CyH(シクロヘキサノン)
GBL(γ−ブチロラクトン)
【0155】
EUV露光パターニング評価
表1に示すレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜した基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを60nmにした。
これをEUVマイクロステッパー(NA0.30、σ0.93/0.36、クアドルポール照明)で50nmピッチ、26nmのホールパターンを露光し、露光後表2に記載の温度で60秒間ベーク(PEB)し、表2に記載の現像液で静止パドル現像を30秒間行い、スピンドライしてネガ型のパターンを得た。
溶剤現像のイメージ反転された50nmピッチ、26nmのホールパターンの寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(CG−4000)で測定し、26nm±3nmになっているホールパターンの寸法を50ポイント測定し、バラツキ(CDU、3σ)を求めた。結果を表2に示す。
【0156】
【表1】
【0157】
【表2】
【0158】
ArF露光パターニング評価
表3に示すレジスト組成物を、シリコンウエハーに信越化学工業(株)製スピンオンカーボン膜ODL−101(カーボンの含有量が80質量%)を200nm、その上に珪素含有スピンオンハードマスクSHB−A940(珪素の含有量が43質量%)を35nmの膜厚で成膜したトライレイヤープロセス用の基板上にスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、レジスト膜の厚みを80nmにした。
これをArFエキシマレーザー液浸スキャナー((株)ニコン製、NSR−610C、NA1.30、σ0.98/0.78、クロスポール開口20度、Azimuthally偏光照明、6%ハーフトーン位相シフトマスク、ウエハー上寸法がピッチ90nm、45nmのドットパターン)により露光量を変化させながら露光を行い、露光後表4に記載の温度で60秒間ベーク(PEB)し、現像ノズルから表4に記載の現像液を3秒間30rpmで回転させながら吐出させ、その後静止パドル現像を27秒間行い、4−メチル−2−ペンタノールでリンス後スピンドライし、100℃で20秒間ベークしてリンス溶剤を蒸発させ、ネガ型のパターンを得た。
溶剤現像のイメージ反転されたホールパターンの寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製TDSEM(CG−4000)で測定し、45nm±5nmになっている50個のホールパターンの寸法を測長し、寸法バラツキ(CDU、3σ)を求めた。結果を表4に示す。
【0159】
【表3】
【0160】
【表4】
【0161】
表2及び表4の結果より、本発明の酸発生剤を添加することにより、有機溶剤現像後のパターンの寸法均一性に優れる結果を得られることが確認された。