特許第6323364号(P6323364)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6323364表面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法及び合成石英ガラス基板のセンシング方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6323364
(24)【登録日】2018年4月20日
(45)【発行日】2018年5月16日
(54)【発明の名称】表面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法及び合成石英ガラス基板のセンシング方法
(51)【国際特許分類】
   C03C 15/00 20060101AFI20180507BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20180507BHJP
   B08B 3/12 20060101ALI20180507BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20180507BHJP
   B24B 1/00 20060101ALI20180507BHJP
【FI】
   C03C15/00 B
   C03C19/00 Z
   B08B3/12 C
   B08B3/08 Z
   B24B1/00 B
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-36504(P2015-36504)
(22)【出願日】2015年2月26日
(65)【公開番号】特開2015-193527(P2015-193527A)
(43)【公開日】2015年11月5日
【審査請求日】2017年2月22日
(31)【優先権主張番号】特願2014-53468(P2014-53468)
(32)【優先日】2014年3月17日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(74)【代理人】
【識別番号】100157831
【弁理士】
【氏名又は名称】正木 克彦
(72)【発明者】
【氏名】上田 修平
(72)【発明者】
【氏名】竹内 正樹
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−263569(JP,A)
【文献】 特開2002−323751(JP,A)
【文献】 特開2006−232624(JP,A)
【文献】 特開2002−187736(JP,A)
【文献】 特開2000−330263(JP,A)
【文献】 特開平10−041236(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00−23/00
B08B 3/08
B08B 3/12
B24B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともラッピング工程、エッチング工程、表面鏡面研磨工程及び洗浄工程を経て、表面を鏡面に研磨する面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法において、前記エッチング工程をpH4〜7のフッ化水素酸又はバッファードフッ酸により行うことを特徴とする面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項2】
前記エッチング工程と表面鏡面研磨工程の間に熱処理工程を含むことを特徴とする請求項1記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項3】
前記ラッピング工程終了後の合成石英ガラス基板の裏面(粗面側)の面粗さ(Ra)が、0.1〜0.2μmである請求項1又は2記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項4】
前記エッチング工程終了後の合成石英ガラス基板の裏面(粗面側)の面粗さ(Ra)が、0.15〜0.25μmである請求項1〜3のいずれか1項記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項5】
前記表面鏡面研磨工程終了後の合成石英ガラス基板の裏面(粗面側)の面粗さ(Ra)が、0.15〜0.25μmである請求項1〜4のいずれか1項記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項6】
前記表面鏡面研磨工程終了後の合成石英ガラス基板の表面の面粗さ(Ra)が、0.1〜0.8nmであり、裏面の面粗さ(Ra)より小さいものである請求項1〜5のいずれか1項記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項7】
前記洗浄工程が、合成石英ガラス基板の表裏面に中間周波帯域又は高周波超音波を印加しながら、0.1〜2質量%のフッ化水素酸及び/又は純水で洗浄を行うものである請求項1〜6のいずれか1項記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項8】
前記洗浄工程後、合成石英ガラス基板の裏面に気相めっき法による薄膜を形成する工程を有する請求項1〜7のいずれか1項記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項記載の加工方法により得られた面鏡面の合成石英ガラス基板を半導体製造装置内に投入して、該装置内の光電センサーの投光部より前記基板の一方の面に光を入射し、他方の面より出射する光を受光部で受光して前記基板を検知するようにした合成石英ガラス基板のセンシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面(表面)鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法及び合成石英ガラス基板のセンシング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置内では、基板の投入、加工、搬出の一連の流れの中で、基板の有無についてのセンサー、基板の位置や姿勢を確認するセンサー、エッジの検出、ノッチの検出、オリフラの検出、厚みの検出、はみ出しの検出、傾きの検出等、様々な目的でセンサーが組み込まれている。そして、これらには、光を利用して物体の有無や表面状態の変化等を検出する光電センサーが多く使われる。
【0003】
光電センサーは、光を出す投光部と光を受ける受光部から構成されている。投光された光が検出物体によって遮られたり、反射したりすると、受光部に到達する量が変化する。受光部はこの変化を検出して、電気信号に変換して出力される。使用される主な光源は、可視光(主に、赤、色判別用に緑、青)と赤外光である。
【0004】
多くの半導体素子は単結晶シリコンを基板として使用するが、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム(GaAs)、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム(GaN)、炭化珪素(SiC)等も用いられる。これらの基板はいずれも不透明体であるため、半導体装置内のセンサーも不透明体の基板を対象とした設計となっている。
【0005】
半導体装置内の基板の検知には、確実性を高めるために、基板の表裏面にも工夫がされている。例えば、シリコン基板の製造方法において、ウェーハの両面が鏡面の場合表裏面の判別がつかず、プロセス装置のセンサーが働かない又は搬送中に鏡面ウェーハが滑ってしまう場合があり、基板の表裏面の加工を別々にすることにより、表裏面の面質に差を出して半導体装置のセンサーが働くようにする方法が提案されている(特許文献1:特開平9−199465号公報)。
【0006】
近年、これら不透明体基板とは別に、透明体基板上に素子を作製する等の新たなニーズが出てきている。中でも合成石英ガラスは不純物が極めて少なく、光透過性、耐熱性、熱膨張係数、絶縁性等、優れた特性を有するため、半導体素子である高温ポリシリコン薄膜トランジスタ(TFT:thin film transistor)やMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)分野等、あらゆる分野での利用が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−199465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、不透明体基板を投入することを前提として製造された一般の半導体製造ライン又は製造装置に透明体を投入すると、装置内で光電センサーが基板を検出しないため、新たな装置の導入が必要になる。また、合成石英ガラス基板を半導体ライン又は装置に投入する場合、ラインや装置内において可能な限りパーティクルを発生させないようにする必要がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、透明体である合成石英ガラス基板を半導体装置内に導入しても、確実な光遮蔽能を有し、不透明体基板と同様にセンシング可能であり、かつ裏面からのダストの発生を抑えることができる片面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法及び合成石英ガラス基板のセンシング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、本発明に到達したもので、本発明は下記の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法及び合成石英ガラス基板のセンシング方法を提供する。
〔1〕
少なくともラッピング工程、エッチング工程、表面鏡面研磨工程及び洗浄工程を経て、表面を鏡面に研磨する面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法において、前記エッチング工程をpH4〜7のフッ化水素酸又はバッファードフッ酸により行うことを特徴とする面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔2〕
前記エッチング工程と表面鏡面研磨工程の間に熱処理工程を含むことを特徴とする〔1〕記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔3〕
前記ラッピング工程終了後の合成石英ガラス基板の裏面(粗面側)の面粗さ(Ra)が、0.1〜0.2μmである〔1〕又は〔2〕記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔4〕
前記エッチング工程終了後の合成石英ガラス基板の裏面(粗面側)の面粗さ(Ra)が、0.15〜0.25μmである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔5〕
前記表面鏡面研磨工程終了後の合成石英ガラス基板の裏面(粗面側)の面粗さ(Ra)が、0.15〜0.25μmである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔6〕
前記表面鏡面研磨工程終了後の合成石英ガラス基板の表面の面粗さ(Ra)が、0.1〜0.8nmであり、裏面の面粗さ(Ra)より小さいものである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔7〕
前記洗浄工程が、合成石英ガラス基板の表裏面に中間周波帯域又は高周波超音波を印加しながら、0.1〜2質量%のフッ化水素酸及び/又は純水で洗浄を行うものである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔8〕
前記洗浄工程後、合成石英ガラス基板の裏面に気相めっき法による薄膜を形成する工程を有する〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法。
〔9〕
〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の加工方法により得られた面鏡面の合成石英ガラス基板を半導体製造装置内に投入して、該装置内の光電センサーの投光部より前記基板の一方の面に光を入射し、他方の面より出射する光を受光部で受光して前記基板を検知するようにした合成石英ガラス基板のセンシング方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表面を鏡面とし、裏面を非鏡面(粗面)としたことで、不透明体基板と同様な設定下の光電センサーを用いた場合でも確実な光遮蔽能を有し、不透明体基板と同様にセンシング可能であり、かつ裏面からのダストの発生を抑えた片面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の片面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法は、少なくともラッピング工程、エッチング工程、表面鏡面研磨工程及び洗浄工程を含む片面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法において、前記エッチング工程をpH4〜7のフッ化水素酸又はバッファードフッ酸により行う片面鏡面の合成石英ガラス基板の加工方法である。
【0013】
原料基板となる合成石英ガラス基板は、カケや割れの発生を抑制する観点から、予め端面が面取りされ、鏡面化されたものが好ましい。
【0014】
ラッピング工程では、エッチング前の必要な粗さを作りこむために基板の表裏面について、例えば、番手が好ましくは#800〜#1500、より好ましくは#1000〜#1200であるアルミナを主成分とした研磨材を用いて両面ラップ装置により行うことが好ましい。
JIS D 1601に準拠したラッピング工程終了後の裏面側(粗面)の面粗さ(Ra)は、シリコンウェーハと同じように基板検知を行うことができて、かつ、パーティクルを出さないような観点から、好ましくは0.1〜0.2μm、より好ましくは0.13〜0.16μmである。
【0015】
次に行うエッチング工程は、センシング及びパーティクルを除去し易くするために基板の表裏面について行う。エッチング液はpH4〜7、好ましくは4.5〜7.0のフッ化水素酸又はバッファードフッ酸を用いる。pH4未満だとパーティクルと合成石英ガラス基板表面のゼーター電位が異符号になり、パーティクルが除去できにくくなり、pH7を超えるとエッチングスピードが極めて遅くなる。具体的には、上記pHの範囲内で、5〜25質量%のフッ化水素酸水溶液又はフッ化アンモニウム5〜40質量%、フッ化水素5〜25質量%であるバッファードフッ酸を用いることができる。
【0016】
JIS D 1601に準拠したエッチング工程終了後の裏面側(粗面)の面粗さ(Ra)は、センサーの光を遮蔽し、確実にセンシングを行う観点から、好ましくは0.15〜0.25μm、より好ましくは0.19〜0.24μmである。
【0017】
本発明では、エッチング工程と表面鏡面研磨工程の間に、必要に応じて熱処理を行う。温度のかかる成膜工程やアニールの工程において、熱処理に起因する粗面側から脱落するガラス屑が出現することがあるが、予め熱処理をしておくことにより、後工程の成膜やアニールの工程におけるガラス屑の出現を極力抑え、最終製品のダスト発生個数を抑えることができる。熱処理工程における最高温度は、熱処理による十分なガラス屑の出現の観点から、好ましくは600〜1,200℃、更に好ましくは900〜1,200℃である。また、昇温速度は特に決まりはないが、十分なガラス屑の出現の観点から、好ましくは100〜300℃/hr、更に好ましくは200〜300℃/hrである。更に、最高温度保持時間は特に制約はないが、十分なガラス屑の出現の観点から、5〜30分間、更に望ましくは10〜30分間である。
【0018】
次に、合成石英ガラス基板の裏面側はそのままにして、表面側を片面研磨装置により鏡面化する。研磨中に研磨剤が粗面側に回り込んで固着するとその後の洗浄工程においても除去しにくく、ダストの発生源となり得ることから、コロイダルシリカを用いるのが好ましい。
【0019】
JIS D 1601に準拠した片面研磨工程終了後の裏面側(粗面)の面粗さ(Ra)は、センサーの光を遮蔽し、確実にセンシングを行う観点から、好ましくは0.15〜0.25μm、より好ましくは0.19〜0.24μmである。
この場合、表面鏡面研磨工程終了後の合成石英ガラス基板の表面の面粗さ(Ra)が、0.1〜0.8nm、特に0.1〜0.4nmであることが好ましく、表面の面粗さ(Ra)は前記裏面の面粗さ(Ra)より小さいものである。
【0020】
最後に行う洗浄工程は、基板の表裏面について、DIP洗浄又は枚葉式スピン洗浄のいずれも可能であるが、粗面側から除去されるパーティクルが鏡面側に回り込まないようにする観点から枚葉式スピン洗浄が好ましい。具体的には、合成石英ガラス基板の表裏面に中間周波帯域(78kHz〜430kHz)及び「メガソニック」帯域(500kHz〜5MHz)である高周波超音波を印加しながら、0.1〜2質量%のフッ化水素酸及び/又は純水で洗浄、特にスピン洗浄を行い、スピン乾燥を行うのが望ましい。
【0021】
なお、必要に応じて遮蔽率を上げ、よりセンシングを確実に良好にするために、膜厚0.2〜1.0μmのSi膜、Al膜、Ti膜等の気相めっき法(蒸着法、CVD法等)による薄膜を合成石英ガラス基板の粗面(裏面)に成膜してもよい。
【0022】
得られた合成石英ガラス基板の形状は制限されないが、四角形、円形のいずれでも構わない。また、合成石英ガラス基板の大きさは制限されないが、対角長又は直径が50〜300mmが好ましい。
更に、片面鏡面の合成石英ガラス基板の厚さは適宜選定されるが、好ましくは0.1〜30mm、より好ましくは0.15〜10mm、更に好ましくは0.3〜1.2mmである。
【0023】
このようにして得られた片面鏡面の合成石英ガラス基板を半導体製造装置内に投入して、該装置内の光電センサーの投光部より前記基板の一方の面に光を入射し、他方の面より出射する光を受光部で受光して前記基板を検知するようにして、合成石英ガラス基板のセンシングを行うことができる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0025】
[実施例1]
両面が粗面で端面が面取り及び鏡面化された合成石英ガラス基板の表裏面について、番手が#1200のアルミナ系の研磨材を用いて両面ラップ装置により粗面化して、外径が200mmφ、厚みが1mmの合成石英ガラス基板を原料基板として用意した。JIS D 1601に準拠したラッピング工程後の合成石英ガラス基板の表裏面の面粗さ(Ra)は0.10μmであった。
ラッピング工程後の合成石英ガラス基板の表裏面をpH4.0のフッ化水素酸水溶液(HF)で5分間エッチングした後に、JIS D 1601に準拠してエッチング工程後の合成石英ガラス基板の表裏面の面粗さ(Ra)を測定したところ、0.15μmであった。
次に、表面となる一方の面を、40質量%コロイダルシリカを研磨剤として用いて片面研磨装置で研磨し、JIS D 1601に準拠して片面鏡面の合成石英ガラス基板の表面の面粗さ(Ra)を測定したところ、0.15nmを得た。一方、裏面側(粗面側)の面粗さ(Ra)を測定したところ、0.15μmであった。
その後、合成石英ガラス基板の表裏面に1.5MHzのメガソニックを印加しながら、フッ化水素酸0.5質量%でスピン洗浄及び純水による洗浄を行い、スピン乾燥を行った後、合成石英ガラス基板の粗面側に、CVD法にて1μmの厚みのSi膜を成膜した。
得られた片面鏡面の合成石英ガラス基板について以下のような評価を行い、その結果を表1に示した。
【0026】
<ダストの評価>
シリコンウェーハ用の清浄なプラスチックケースの中に、得られた片面鏡面の合成石英ガラス基板と、片面鏡面の合成石英ガラス基板の粗面側に隣り合うようにして、予め清浄であることを確認した両面鏡面の合成石英ガラス基板を交互に水平に挿入し、2枚1セットとして、計20枚入れて蓋をし、密閉した。
次に、JIS Z 0232(包装貨物の振動試験方法)に従い、加速度は0.75G、周波数は20Hzにて30分間振動を与えた。上方の片面鏡面の合成石英ガラス基板の裏面側(粗面側)から、下方の両面鏡面の向かい合う基板面上に落下したダストの個数を暗室にて、20万ルクスの光をあてて目視で数えたところ、平均8.9個であった。
一方、比較対照用に片面鏡面の合成石英ガラス基板の代わりに、予め清浄であることを確認した両面鏡面の合成石英ガラス基板を入れる以外は、上記と同じ方法でプラスチックケースに挿入して同様に評価したところ、上方の両面鏡面の合成石英ガラス基板の裏面側から下方の両面鏡面の向かい合う基板面上に落下したダストの個数は平均8.5個であり、片面鏡面の合成石英ガラス基板と比較対照用の両面鏡面の合成石英ガラス基板とは、ダスト転写個数において大きな差はなかった。
【0027】
<センシングの評価>
投光側にはキーエンス社のFS−V21X(950nm)、受光側にはFS−V22Xを使用して、950nmの波長に対する合成石英ガラス基板の有無を検出可能か評価した。
「検知良好」とは、受光側へ光が抜けることなく、十分に光を遮蔽し、合成石英ガラス基板を認識することができたことをいう。
一方、「検知不可」とは、透過式の場合は受光側へ光が抜けてしまい、十分に光を遮蔽できず、合成石英ガラス基板を認識することができないことをいう。
いずれの波長においても、十分な感度で合成石英ガラス基板の有無を検出できた。
【0028】
[実施例2]
番手が#1000のアルミナ系の研磨材を用いて両面ラップ装置により粗面化した以外は実施例1と同様にして片面鏡面の合成石英ガラス基板を得た後、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
ダストの平均個数は8.9個であった。
【0029】
[実施例3]
pH4.0のフッ化水素酸水溶液の代わりに、pH7.0のバッファードフッ化水素酸水溶液(フッ化アンモニウムが30質量%、フッ化水素が10質量%の混合水溶液;BHF)を用いた以外は、実施例1と同様にして片面鏡面の合成石英ガラス基板を得た後、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0030】
[実施例4]
実施例の1のエッチング工程と表面鏡面化工程の間に加熱炉(光洋サーモシステム株式会社 KBF663N1)を用いて熱処理工程を入れたこと以外は、実施例1と同様に行った。室温から最高温度の700℃までの昇温速度は150℃/hrであり、その後、最高温度のまま10分間保持した。その結果を表1に示す。
【0031】
[実施例5]
実施例の1のエッチング工程と表面鏡面化工程の間に実施例4と同様にして熱処理工程を入れたこと以外は、実施例1と同様に行った。室温から最高温度の1,100℃までの昇温速度は250℃/hrであり、その後、最高温度のまま30分間保持した。その結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
pH4.0のフッ化水素酸水溶液の代わりに、pH1.0である硝酸とフッ化水素との混合水溶液(硝酸が10質量%、10質量%フッ化水素が10質量%の混合水溶液)を使用した以外は、実施例1と同様にして片面鏡面の合成石英ガラス基板を得た後、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0033】
[比較例2]
pH4.0のフッ化水素酸水溶液の代わりにpH7.5の水酸化ナトリウム水溶液を使用した以外は、実施例1と同様にして片面鏡面の合成石英ガラス基板を得た後、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0034】
【表1】