【実施例】
【0053】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下に本実施例、比較例における評価方法を記載する。
(1)金属元素の一次粒子径の測定方法
実施例1〜15、及び比較例1〜5における、「金属元素の一次粒子径の範囲」は、走査型電子顕微鏡(SEM(Scanning Electron Microscope))を使用した観察により、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径の測定値の範囲であり、「微粒子の平均一次粒子径」は該残り90%の粒子の一次粒子径の測定値の平均値である。観察用試料の調製は、エタノールに分散した微粒子をポーラスアルミナフィルター(Whatman社製、商品名:アノディスク)に通過させながら溶媒を乾燥除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行った。
(2)微粒子の平均二次粒子径の測定方法
動的光散乱型粒度分布測定装置(シスメックス社(Sysmex Corporation )製、型式:ゼータサイザーナノシリーズ(Zetasizer Nano Series) Nano-ZS)を用いて測定した値である。
【0054】
(3)微粒子の平均アスペクト比の測定方法
微粒子の一次粒子径の測定方法と同様に、実施例1〜15、及び比較例1〜5においては走査型電子顕微鏡(SEM)を使用した観察により、任意に80個の微粒子の一次粒子径を測定して、最も小さい側の粒子径の微粒子数の5%と、最も大きい側の粒子径の微粒子数の5%を除いた、残り90%の粒子の一次粒子径のアスペクト比の平均値である。
(4)デンドライト状の析出物の有無
走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して1000倍の倍率で観察した際に、観察像中にミクロンサイズのデンドライト状析出物が1%以下(該百分率は、「[デンドライト状に凝縮した微粒子数/全微粒子数]×100(%)」から求められる割合である。)の場合にはデンドライト状の凝集は無とし、1%を超える場合にはデンドライト状の凝集は有とした。
【0055】
(5)微粒子の金属組成の同定方法
走査型電子顕微鏡に付属のエネルギー分散型X線分光装置(SEM−EDX)を使用して、微粒子に対して金属組成の分析を実施した。また、X線回折測定装置((株)リガク製、型式:Geigerflex RAD-A)を用いて、X線源としてCuKαを用いたX線回折測定を行い、微粒子(P)の結晶構造分析も行った。
(6)微粒子の被覆分子構造の同定方法
顕微ラマン分光装置((株)東京インスツルメンツ製、型式:Nanofinder@30)とフーリエ変換赤外分光光度計(日本分光(株)製、型式:FT/IR−4100)を用いて、金属微粒子を被覆した化合物種を同定した。なお、顕微ラマン分光装置では必要に応じて、局在表面プラズモン共鳴によってラマン散乱強度を高めることが可能なナノサイズの凹凸構造体(Ag又はCu)に試料を塗布して解析した。
【0056】
(7)微粒子における有機添加剤被覆量の測定方法
炭素・硫黄分析計((株)堀場製作所製、型式:EMIA−920V2)を用いて、有機添加剤で被覆された微粒子(P)における有機添加剤(L+A)の割合([有機添加剤(L+A)/微粒子(P)]×100(質量%))を求めた。
また、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)については、まず質量比が既知のラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)をアルコールに分散させた溶液を標準試料としてラマン分光測定し、ラマンスペクトルにおけるピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属する1650cm-1付近のピーク強度と四級アンモニウム基(NR
4)に帰属する760cm-1付近のピーク強度の比率と質量比との検量線を作成した。この検量線に基づいて、微粒子(P)をアルコールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルのピロリドン基(C
4H
6NO)と四級アンモニウム基(NR
4)のピーク強度比からラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)を算出した。
【0057】
(8)X線回折ピーク強度比
酸化処理した微粒子(P)に対しては、粒子X線回折測定装置((株)リガク製、X線回折測定装置、型式:Geigerflex RAD-A)を用いて、X線源としてCuKαを用いたX線回折測定を行い、金属元素(M)の最大強度であるメインピークの2θでのピーク高さをH
1、金属元素(M)の酸化物の最大強度であるメインピークの2θでのピーク高さをH
2としたときのX線回折ピーク強度比(H
2/[H
1+H
2])を求めた。
本願の実施例においては、上記金属元素(M)が、銅の場合は2θ=43度付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH
1、2θ=36度付近に存在するCu
2O(111)面のピーク高さをH
2、亜鉛の場合は2θ=43度付近に存在するZn(101)面のピーク高さをH
1、2θ=34.5度付近に存在するZnO(002)面のピーク高さをH
2、スズの場合は2θ=32度付近に存在するSn(101)面のピーク高さをH
1、2θ=30度付近に存在するSnO(101)面のピーク高さをH
2、ニッケルの場合は2θ=44.5度付近に存在するNi(111)面のピーク高さをH
1、2θ=43.3度付近に存在するNiO(200)面のピーク高さをH
2としているが、金属元素(M)と酸素の比率が上記と異なる金属酸化物が形成されている場合も同様にメインピークの強度比によって定義できる。
【0058】
[実施例1]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液に添加する有機添加剤として、ラクタム系化合物(L)であるN−ビニル−2−ピロリドン、第4級アンモニウム化合物(A)であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをそれぞれ使用した。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液3.7gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]質量比:4.8)。還元反応水溶液のpHは約6.0であった。
次にこの溶液中でSUS304製棒陰極(カソード電極)と白金板陽極(アノード電極)との間を浴温15℃で、電流密度15A/dm
2で3分間通電して、カソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。
還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0059】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、3〜60nmの範囲で、平均一次粒子径は10nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
実施例1において、生成した銅微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を
図1に示し、該銅微粒子のエネルギー分散型X線分光(EDX)の測定チャートを
図2に示す。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、65nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0060】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、5.5質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、1であった。
【0061】
[実施例2]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液に添加する有機添加剤として、ラクタム系化合物(L)であるN−ビニル−2−ピロリドン、第4級アンモニウム化合物(A)であるトリオクチルメチルアンモニウムクロリドをそれぞれ使用した。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(炭素原子数:25)4.2gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]質量比:10)。還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0062】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜40nmの範囲で、平均一次粒子径は7nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、50nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0063】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとトリオクチルメチルアンモニウムクロリドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、10質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.47であった。
【0064】
[実施例3]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液に添加する有機添加剤として、ラクタム系化合物(L)である2−ピロリドン、第4級アンモニウム化合物(A)であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをそれぞれ使用した。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤として2−ピロリドン(炭素原子数:4)5g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液0.37gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]質量比:0.8)。還元反応水溶液のpHは約5.2であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0065】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、35〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は60nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、210nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0066】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤である2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.1質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.05であった。
【0067】
[実施例4]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液に添加する有機添加剤として、ラクタム系化合物(L)である1-n-オクチル-2-ピロリドン、第4級アンモニウム化合物(A)であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをそれぞれ使用した。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤として1-n-オクチル-2-ピロリドン(炭素原子数:12)2g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液1.84gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]質量比:0.38)。還元反応水溶液のpHは約5.4であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0068】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、10〜130nmの範囲で、平均一次粒子径は20nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、100nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0069】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、1-n-オクチル-2-ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤である1-n-オクチル-2-ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、1.5質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.21であった。
【0070】
[実施例5]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、得られた銅微粒子の評価を行った。尚、還元反応水溶液に添加する有機添加剤として、ラクタム系化合物(L)であるN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、第4級アンモニウム化合物(A)であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをそれぞれ使用した。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤としてN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン(炭素原子数:6)5g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液1.84gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/M]質量比:0.85)。還元反応水溶液のpHは約5.4であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0071】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、5〜65nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、70nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0072】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、2.3質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.1であった。
【0073】
[実施例6]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、さらに表面酸化処理を行うことで得られた、表面層が亜酸化銅(Cu
2O)からなる銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)5g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液0.37gをそれぞれ使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/M]質量比:0.8)。還元反応水溶液のpHは約5.3であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0074】
(2)銅微粒子の表面酸化処理
銅微粒子を酢酸(0.005モル/リットル)水溶液へ添加して、空気でバブリングして循環させることにより水溶液中の溶存酸素量を約8ppmになるように維持しながら、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、表面層が亜酸化銅(Cu
2O)からなる銅微粒子を得た。
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、30〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。また、該銅微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。さらに、銅微粒子の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH
1、2θ=36°付近に存在するCu
2O(111)面のピーク高さをH
2としたときのX線回折ピーク強度比(H
2/[H
1+H
2])は、0.5であった。
【0075】
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.5質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.05であった。
【0076】
[実施例7]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、さらに第4級アンモニウム化合物の追加被覆を行うことで得られた、銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとしてピロリン酸銅(II)の3水和物(Cu
2P
2O
7・3H
2O)19.7g、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液3.7g、アルカリ金属イオンとしてピロリン酸ナトリウムの10水和物(Na
4P
2O
7・10H
2O)113gをそれぞれ使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]:12.7)。該反応水溶液のpHは約10.5であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0077】
(2)第4級アンモニウム化合物の追加被覆
銅微粒子をテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(0.01モル/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが追加被覆された銅微粒子を得た。
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)銅微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、8〜80nmの範囲で、平均一次粒子径は25nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0078】
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、80nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN−メチル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、12質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、5.6であった。
【0079】
[実施例8]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、さらに第4級アンモニウム化合物の追加被覆を行うことで得られた、銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド(炭素原子数:25)4.2g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]質量比:10)。還元反応水溶液のpHは約5.6であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0080】
(2)第4級アンモニウム化合物の追加被覆
銅微粒子をトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(0.01モル/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが追加被覆された銅微粒子を得た。
(3)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した銅微粒子の一次粒子径は、1〜40nmの範囲で、平均一次粒子径は7nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。
【0081】
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、50nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.1で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、トリオクチルメチルアンモニウムクロリドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとトリオクチルメチルアンモニウムクロリドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、20質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、19であった。
【0082】
[実施例9]
銅イオンの電解還元反応により銅微粒子を生成させ、さらに表面酸化処理と第4級アンモニウム化合物の追加被覆を行うことで得られた、表面層が亜酸化銅(Cu
2O)からなる銅微粒子の評価を行った。
(1)銅微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)60g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液3.7g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅(M)]質量比:9.6)。還元反応水溶液のpHは約5.8であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により銅イオンを電解還元してカソード外表面付近に銅微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0083】
(2)銅微粒子の表面酸化処理
銅微粒子を酢酸(0.02モル/リットル)水溶液へ添加して、空気でバブリングして循環させることにより水溶液中の溶存酸素量を約4ppmになるように維持しながら、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、表面層が亜酸化銅(Cu
2O)からなる銅微粒子を得た。
(3)第4級アンモニウム化合物の追加被覆
表面層が亜酸化銅(Cu
2O)からなる銅微粒子をトリオクチルメチルアンモニウムクロリド(0.01モル/リットル)メタノール溶液へ添加して、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドが追加被覆された銅微粒子を得た。
【0084】
(4)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した微粒子の一次粒子径は、5〜70nmの範囲で、平均一次粒子径は15nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅100質量%であった。さらに、銅微粒子の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するCu(111)面のピーク高さをH
1、2θ=36°付近に存在するCu
2O(111)面のピーク高さをH
2としたときのX線回折ピーク強度比(H
2/[H
1+H
2])は、0.75であった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、75nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0085】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、及びテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとトリオクチルメチルアンモニウムクロリド、及びテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、15質量%であった。また、銅微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、11.5であった。
【0086】
[実施例10]
亜鉛イオンの電解還元反応により亜鉛微粒子を生成させ、さらに表面酸化処理を行うことで得られた、表面層が酸化亜鉛(ZnO)からなる亜鉛微粒子の評価を行った。
(1)亜鉛微粒子の調製
亜鉛イオンとして酢酸亜鉛(II)の2水和物((CH
3COO)
2Zn・2H
2O)22g、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液0.37g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/亜鉛(M)]質量比:12.2)。還元反応水溶液のpHは約5.6であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により亜鉛イオンを電解還元してカソード外表面付近に亜鉛微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの亜鉛微粒子を得た。
【0087】
(2)亜鉛微粒子の表面酸化処理
亜鉛微粒子を純水へ添加して、空気でバブリングして循環させることにより水中の溶存酸素量を約8ppmになるように維持しながら、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、表面層が亜酸化亜鉛(ZnO)からなる亜鉛微粒子を得た。
(3)生成した亜鉛微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した微粒子の一次粒子径は、10〜200nmの範囲で、平均一次粒子径は65nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、亜鉛100質量%であった。さらに、亜鉛微粒子の一部をエタノールに分散させた銅微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=43°付近に存在するZn(101)のピーク高さをH
1、2θ=34.5度付近に存在するZnO(002)面のピーク高さをH
2としたときのX線回折ピーク強度比(H
2/[H
1+H
2])は、0.55であった。
【0088】
(ロ)亜鉛微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて亜鉛微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該亜鉛微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの亜鉛微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた亜鉛微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた亜鉛微粒子の分析では、有機添加剤であるN−メチル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された亜鉛微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/亜鉛微粒子(P)]×100(質量%))は、2.1質量%であった。また、亜鉛微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.087であった。
【0089】
[実施例11]
スズイオンの電解還元反応によりスズ微粒子を生成させ、さらに表面酸化処理を行うことで得られた、表面層が酸化スズ(SnO)からなるスズ微粒子の評価を行った。
(1)スズ微粒子の調製
スズイオンとして酢酸スズ(II)((CH
3COO)
2Sn)25g、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液0.37g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/スズ(M)]質量比:6.7)。還元反応水溶液のpHは約5.6であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法によりスズイオンを電解還元してカソード外表面付近にスズ微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgのスズ微粒子を得た。
【0090】
(2)スズ微粒子の表面酸化処理
スズ微粒子を純水へ添加して、空気でバブリングして循環させることにより水中の溶存酸素量を約8ppmになるように維持しながら、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、表面層が酸化スズ(SnO)からなるスズ微粒子を得た。
(3)生成したスズ微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した微粒子の一次粒子径は、10〜250nmの範囲で、平均一次粒子径は65nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、スズ100質量%であった。さらに、スズ微粒子の一部をエタノールに分散させたスズ微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=32度付近に存在するSn(101)のピーク高さをH
1、2θ=30度付近に存在するSnO(101)面のピーク高さをH
2としたときのX線回折ピーク強度比(H
2/[H
1+H
2])は、0.6であった。
【0091】
(ロ)スズ微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いてスズ微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該スズ微粒子の平均二次粒子径は、220nmであった。これらのスズ微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られたスズ微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いたスズ微粒子の分析では、有機添加剤であるN−メチル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆されたスズ微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/スズ微粒子(P)]×100(質量%))は、1.8質量%であった。また、スズ微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.075であった。
【0092】
[実施例12]
ニッケルイオンの電解還元反応によりスズ微粒子を生成させ、さらに表面酸化処理を行うことで得られた、表面層が酸化ニッケル(NiO)からなるスズ微粒子の評価を行った。
(1)スズ微粒子の調製
ニッケルイオンとして酢酸ニッケル(II)の4水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O)26g、有機添加剤としてN−メチル−2−ピロリドン(炭素原子数:5)80g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液0.37g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/スズ(M)]質量比:13.6)。還元反応水溶液のpHは約5.6であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法によりニッケルイオンを電解還元してカソード外表面付近にニッケル微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgのニッケル微粒子を得た。
【0093】
(2)ニッケル微粒子の表面酸化処理
ニッケル微粒子を純水へ添加して、空気でバブリングして循環させることにより水中の溶存酸素量を約8ppmになるように維持しながら、浴温10℃で10分間、撹拌状態を保持した。その後、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に微粒子を採取し、水洗して溶媒を乾燥除去することで、表面層が酸化ニッケル(NiO)からなるニッケル微粒子を得た。
(3)生成したニッケル微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した微粒子の一次粒子径は、10〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は70nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、ニッケル100質量%であった。さらに、ニッケル微粒子の一部をエタノールに分散させたニッケル微粒子分散溶液をガラス基板上に塗布後、真空乾燥させてX線回折による分析を行ったところ、2θ=44.5度付近に存在するNi(111)のピーク高さをH
1、2θ=43.3度付近に存在するNiO(200)面のピーク高さをH
2としたときのX線回折ピーク強度比(H
2/[H
1+H
2])は、0.6であった。
【0094】
(ロ)ニッケル微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いてニッケル微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該ニッケル微粒子の平均二次粒子径は、270nmであった。これらのニッケル微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られたニッケル微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−メチル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いたニッケル微粒子の分析では、有機添加剤であるN−メチル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆されたニッケル微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/ニッケル微粒子(P)]×100(質量%))は、1.9質量%であった。また、ニッケル微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.064であった。
【0095】
[実施例13]
銅イオンと亜鉛イオンの電解還元反応により銅-亜鉛合金微粒子を生成させ、得られた銅-亜鉛合金微粒子の評価を行った。
(1)銅-亜鉛合金微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、亜鉛イオンとして酢酸亜鉛(II)の2水和物((CH
3COO)
2Zn・2H
2O)3.3g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液3.7g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([有機添加剤(L+A)/銅-亜鉛(M)]質量比:4.8)。還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により電解還元してカソード外表面付近に銅-亜鉛合金微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅-亜鉛合金微粒子を得た。
【0096】
(2)生成した銅-亜鉛合金微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した微粒子の一次粒子径は、3〜75nmの範囲で、平均一次粒子径は12nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90.2質量%、亜鉛9.8質量%(以下、銅−9.8%亜鉛合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅-亜鉛合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅-亜鉛合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅-亜鉛合金微粒子の平均二次粒子径は、80nmであった。これらの銅-亜鉛合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0097】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅-亜鉛合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅-亜鉛合金微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅-亜鉛合金微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅-亜鉛合金微粒子(P)]×100(質量%))は、4.5質量%であった。また、銅-亜鉛合金微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、0.9であった。
【0098】
[実施例14]
銅イオンとスズイオンの電解還元反応により銅-スズ合金微粒子を生成させ、得られた銅-スズ合金微粒子の評価を行った。
(1)銅-スズ合金微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、スズイオンとして酢酸スズ(II)((CH
3COO)
2Sn)1.23g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液3.7g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅-スズ(M)]質量比:4.6)。還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により電解還元してカソード外表面付近に銅-スズ合金微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅-スズ合金微粒子を得た。
【0099】
(2)生成した銅-スズ合金微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、生成した微粒子の一次粒子径は、10〜150nmの範囲で、平均一次粒子径は35nmであった。また、該微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅90.5質量%、スズ9.5質量%(以下、銅−9.5%スズ合金のように表示することがある。)であった。
実施例14において生成した銅-スズ合金微粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真を
図3に示し、該銅-スズ合金微粒子のエネルギー分散型X線分光(EDX)の測定チャートを
図4に示す。
(ロ)銅-スズ合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅-スズ合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅-スズ合金微粒子の平均二次粒子径は、140nmであった。これらの銅-スズ合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0100】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅-スズ合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅-スズ合金微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅-スズ合金微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅-スズ合金微粒子(P)]×100(質量%))は、4.2質量%であった。また、銅-スズ合金微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、1.1であった。
【0101】
[実施例15]
銅イオンとニッケルイオンの電解還元反応により銅-ニッケル合金微粒子を生成させ、得られた銅-ニッケル合金微粒子の評価を行った。
(1)銅-ニッケル合金微粒子の調製
銅イオンとして酢酸銅(II)の1水和物((CH
3COO)
2Cu・1H
2O)20g、ニッケルイオンとして酢酸ニッケル(II)の4水和物((CH
3COO)
2Ni・4H
2O)2.6g、有機添加剤としてN−ビニル−2−ピロリドン(炭素原子数:6)30g、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(炭素原子数:4)の25%水溶液3.7g、及びアルカリ金属イオンとして酢酸ナトリウムの3水和物(CH
3COONa・3H
2O)1.36gを使用して、還元反応水溶液1L(リットル)を調製した([(L+A)/銅-ニッケル(M)]質量比:4.9)。還元反応水溶液のpHは約5.5であった。
次に該還元反応水溶液中で実施例1に記載したと同様の方法により電解還元してカソード外表面付近に銅-ニッケル合金微粒子を析出させた。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅-ニッケル合金微粒子を得た。
【0102】
(2)生成した銅-ニッケル合金微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、微粒子の一次粒子径は、10〜200nmの範囲で、平均一次粒子径は40nmであった。また、微粒子に対してエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による分析を行ったところ、金属組成は、銅89.8質量%、ニッケル10.2質量%(以下、銅−10.2%ニッケル合金のように表示することがある。)であった。
(ロ)銅-ニッケル合金微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅-ニッケル合金微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅-ニッケル合金微粒子の平均二次粒子径は、155nmであった。これらの銅-ニッケル合金微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0103】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅-ニッケル合金微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅-ニッケル合金微粒子の分析では、有機添加剤であるN−ビニル−2−ピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅-ニッケル合金微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L+A)/銅-ニッケル合金微粒子(P)]×100(質量%))は、4.3質量%であった。また、銅-ニッケル合金微粒子をメタノールに分散させた溶液から得られたラマンスペクトルから、ラクタム系化合物(L)と第4級アンモニウム化合物(A)の質量比(A/L)は、1.2であった。
【0104】
[比較例1]
(1)銅微粒子の調製
還元反応水溶液中の有機添加剤としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの代わりに2−アミノエタノール(E)を使用し、その濃度を100g/L(1.63モル/リットル)とした以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、銅イオンを電解還元により還元して銅微粒子を得た。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0105】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、微粒子の一次粒子径は、100〜500nmの範囲で、平均一次粒子径は150nmであった。また、結晶形状がデンドライト状に凝集した、1〜10μmの凝集体が混在していることが観察された。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、500nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.7であった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、2−アミノエタノールに由来する第1級アミン基(NH
2R)に帰属するピークが検出された。しかし、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピークは検出されなかった。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(E)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.05質量%であった。
【0106】
[比較例2]
(1)銅微粒子の調製
還元反応水溶液中の有機添加剤としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドの代わりにN,N−ジメチルホルムアミド(E)を使用し、その濃度を100g/L(1.36モル/リットル)とした以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、銅イオンを電解還元により還元して銅微粒子を得た。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0107】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、微粒子の一次粒子径は、55〜470nmの範囲で、平均一次粒子径は90nmであった。また、結晶形状がデンドライト状に凝集した、1〜10μmの凝集体が混在していることが観察された。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、420nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.5であった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N,N−ジメチルホルムアミドに由来する第3級アミド基(NR
2CO)に帰属するピークが検出された。しかし、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピークは検出されなかった。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(E)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.05質量%であった。
【0108】
[比較例3]
(1)銅微粒子の調製
還元反応水溶液中の有機添加剤として2−ピロリドンの代わりにポリビニルピロリドン(E)を使用した以外は実施例3と同様に、還元反応水溶液を調製し、銅イオンを電解還元により還元して銅微粒子を得た。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0109】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、微粒子の一次粒子径は、40〜400nmの範囲で、平均一次粒子径は80nmであった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、350nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.3で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
【0110】
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、ポリビニルピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークと、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるポリビニルピロリドンとテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(A+E)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.06質量%であった。
【0111】
[比較例4]
(1)銅微粒子の調製
還元反応水溶液中に1-n-オクチル-2-ピロリドンを添加しなかった以外は実施例4と同様に、還元反応水溶液を調製し、銅イオンを電解還元により還元して銅微粒子を得た。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、微粒子の一次粒子径は、45〜420nmの範囲で、平均一次粒子径は85nmであった。また、結晶形状がデンドライト状に凝集した、1〜10μmの凝集体が混在していることが観察された。
【0112】
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、380nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.5であった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドに由来する四級アンモニウム基(NR
4)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(A)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.04質量%であった。
【0113】
[比較例5]
(1)銅微粒子の調製
還元反応水溶液中の有機添加剤としてテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを使用しなかった以外は実施例1と同様に、還元反応水溶液を調製し、銅イオンを電解還元により還元して銅微粒子を得た。還元反応終了後の反応水溶液を、カーボン支持膜をとりつけたアルミメッシュ上に採取し、水洗して溶媒を乾燥除去した後、200mgの銅微粒子を得た。
【0114】
(2)生成した銅微粒子の評価
(イ)微粒子の一次粒子径、金属種の同定
前記走査型電子顕微鏡(SEM−EDX)による観察の結果、微粒子の一次粒子径は、20〜300nmの範囲で、平均一次粒子径は55nmであった。
(ロ)銅微粒子の二次粒子径、アスペクト比等
動的光散乱型粒度分布測定装置を用いて銅微粒子の二次粒子径の測定を行ったところ、該銅微粒子の平均二次粒子径は、200nmであった。これらの銅微粒子の平均アスペクト比は1.2で、形状は顆粒状であり、デンドライト状の凝集は観察されなかった。
(ハ)被覆有機添加剤の分子構造の同定
得られた銅微粒子をナノ構造電極上に塗布して顕微ラマン分光装置、及びフーリエ変換赤外分光光度計で解析したところ、N−ビニル−2−ピロリドンに由来するピロリドン基(C
4H
6NO)に帰属するピークが検出された。
(ニ)有機添加剤の被覆量
炭素・硫黄分析計を用いた銅微粒子の分析では、有機添加剤であるテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドで被覆された銅微粒子(P)における、有機添加剤の割合([有機添加剤(L)/銅微粒子(P)]×100(質量%))は、0.5質量%であった。
上記実施例1〜10における、実験条件と評価結果を表1に、上記実施例11〜15、及び比較例1〜5における、実験条件と評価結果を表2にそれぞれまとめて示す。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
[実施例16]
上記実施例で作製した微粒子を焼結して得られた焼結導電体の抵抗率の評価を行った。
上記実施例1〜4、8〜9、13〜15で得られた微粒子を、濃度が50質量%となるようにエタノールを添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌して微粒子分散溶液とした。乾燥後の塗布膜の厚みが3μm程度となるように微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)に塗布して、試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中、50〜70℃の温度範囲で加熱して塗膜からエタノールを除去させて乾燥粉末膜とした。その後、熱処理炉内で3%水素混合窒素ガス雰囲気中、200〜300℃の温度範囲で10分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結導電体を得た。直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼結導電体の抵抗率を測定した。測定結果を表3に示す。
【0118】
【表3】
【0119】
[比較例6]
実施例16の微粒子を比較例1、3〜5で得られた生成物とした以外は実施例16と同様の方法で、実験試料を調製した後、熱処理炉内における乾燥粉末膜の加熱処理による焼成を実施して、形成された焼結導電体の抵抗率を測定した。これらの評価結果を表5に示す。
【0120】
[実施例17]
(1)実験試料の調製
上記実施例1〜4、8〜9、13〜15で得られた微粒子に、濃度が20〜70質量%の範囲となるように有機化合物(S1)を含有している有機溶媒(S)を添加した後、超音波ホモジナイザーを用いてよく撹拌し、評価用の微粒子分散溶液を得た。
(2)焼結導電体の抵抗率
得られた微粒子分散溶液をスピンコータでガラス基板(サイズ:2cm×2cm)上の全面に、焼結後の焼結導電体の厚みが10μmとなるようにそれぞれ塗布した。その後、試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中150〜300℃の温度範囲で20〜40分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結導電体を得た。直流四端子法(使用測定機:三菱化学(株)製、型式:ロレスターGP(四端子電気抵抗測定モード))を使用して、該焼結導電体の抵抗率を測定した。測定結果を表4に示す。
(3)導電接続部材のダイシェア強度
得られた微粒子分散溶液を銅基板(サイズ:2cm×2cm)に焼結後の導電接続部材の厚みが40μmとなるように乾燥塗布した。その後、半導体シリコンチップ(サイズ:4mm×4mm)を4MPaの加圧力で塗布膜上に押し付けた試料を雰囲気制御型の熱処理炉内に設置し、窒素ガス雰囲気中150〜300℃の温度範囲で20〜40分間加熱・焼成した後、熱処理炉中でゆっくりと室温まで炉冷し、焼結体を介して半導体素子と導体基板とを接合した。基板表面に接合されたシリコンチップを米国MIL‐STD‐883に準拠したダイシェア強度評価装置を用いて、25℃において、ダイシェア強度を評価した。測定結果を表4に示す。
【0121】
【表4】
【0122】
[比較例7]
実施例17の微粒子を比較例1、3〜5で得られた生成物とした以外は実施例17と同様の方法で、実験試料を調製した後、熱処理炉内における加熱処理による焼成を実施して、形成された焼結導電体の抵抗率、及び導電接続部材のダイシェア強度を測定した。これらの評価結果を表5に示す。
【0123】
【表5】
【0124】
[焼結膜の導電性についての考察]
比較例1〜5で得た微粒子又は微粒子分散液から調製した焼成膜についての抵抗率は、170〜1500μΩ・cmであったのに対し、実施例1〜15で得た微粒子又は微粒子分散液から調製した焼成膜についての抵抗率は、25〜165μΩ・cmと小さい抵抗率を示した。このように、本発明の炭素原子数4〜25の第4級アンモニウム化合物(A)と炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)で被覆された微粒子を用いることで、銅、亜鉛、スズ、及びニッケルの中から選択される微粒子の焼結性を向上させることが可能であることが確認された。
【0125】
[接合体の接合強度についての評価]
実施例1〜15で得た微粒子の分散液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は10〜35N/mm
2、比較例1〜5で得られた微粒子の分散液を用いて基板表面に接合されたシリコンチップのダイシェア強度は1〜7N/mm
2であった。このように、本発明の本発明の炭素原子数4〜25の第4級アンモニウム化合物(A)と炭素原子数4〜12のラクタム系化合物(L)で被覆された微粒子の分散溶液を用いることで、半導体素子と導体基板の接合強度を向上させることが可能であることが確認された。