(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位50〜90質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位50〜10質量%とを含む請求項1または2に記載のアクリル系樹脂フィルム。
請求項1〜6のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、金属および/または金属酸化物よりなる層、熱可塑性樹脂層または基材層を備えてなる積層フィルム。
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を構成する単量体を重合する工程と、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を構成する単量体を重合する工程とを含むことによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)40〜90質量%とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)10〜60質量%とを有するブロック共重合体(B)を製造し、
メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有するメタクリル樹脂(A)50〜99質量部と、前記ブロック共重合体(B)50〜1質量部(ただし、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)との合計が100質量部)とを溶融混錬し、得られたメタクリル樹脂組成物を成形することによる、
前記メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mw(A)、
前記メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)のうち最大の重量平均分子量Mw(b1)、および
前記アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)のうち最大の重量平均分子量Mw(b2)が、
下記(1)および(2)を満たすアクリル系樹脂フィルムの製造方法。
(1) 0.5≦Mw(A)/Mw(b1)≦2.3
(2) 30000≦Mw(b2)≦120000
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)とを含む。なお以下、メタクリル樹脂(A)とブロック共重合体(B)と任意成分の混合物をメタクリル樹脂組成物と称することがある。
【0019】
本発明に用いるメタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位の割合が、80質量%以上、好ましくは90質量%以上である。またメタクリル樹脂(A)は、メタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位の割合が、20質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
【0020】
かかるメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル;アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル;アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル;メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル;メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニル、メタクリル酸イソボニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0021】
メタクリル樹脂(A)の立体規則性は、特に制限されず、例えば、イソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。
【0022】
メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mw
(A)は、好ましくは30,000以上180,000以下、より好ましくは40,000以上150,000以下、特に好ましくは50,000以上130,000以下である。Mw
(A)が小さいと、得られるメタクリル樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性や靭性が低下する傾向がある。Mw
(A)が大きいとメタクリル樹脂組成物の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向がある。
【0023】
メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mw
(A)と数平均分子量Mn
(A)の比、Mw
(A)/Mn
(A)(以下、重量平均分子量と数平均分子量の比(重量平均分子量/数平均分子量)を「分子量分布」と称することがある。)は、好ましくは1.03以上2.6以下、より好ましくは1.05以上2.3以下、特に好ましくは1.2以上2.0以下である。分子量分布が小さいとメタクリル樹脂組成物の成形加工性が低下する傾向がある。分子量分布が大きいとメタクリル樹脂組成物から得られる成形品の耐衝撃性が低下し、脆くなる傾向がある。
なお、Mw
(A)およびMn
(A)は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算値である。
また、メタクリル樹脂の分子量や分子量分布は、重合開始剤および連鎖移動剤の種類や量などを調整することによって制御できる。
【0024】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む単量体(混合物)を重合することによって得られる。
【0025】
本発明は、メタクリル樹脂(A)として市販品を用いてもよい。かかる市販されているメタクリル樹脂としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))および「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
【0026】
本発明に用いるブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とを有する。ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を1つのみ有していても、複数有していてもよい。また、ブロック共重合体(B)は、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を1つのみ有していても、複数有していてもよい。
【0027】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0028】
かかるメタクリル酸エステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどを挙げることができる。これらの中でも、透明性、耐熱性を向上させる観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。これらメタクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
【0029】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、メタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)に含まれるメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下の範囲である。
【0030】
かかるメタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えば、アクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらメタクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のメタクリル酸エステルと共重合することによって、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を形成できる。
【0031】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)は、屈折率が1.485〜1.495の範囲となる重合体で構成されていることが、メタクリル樹脂組成物の透明性を高める観点から好ましい。
【0032】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上150,000以下、より好ましくは8,000以上120,000以下、さらにより好ましくは12,000以上100,000以下である。
【0033】
ブロック共重合体(B)中にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が複数ある場合、それぞれのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0034】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)のうち最大の重量平均分子量Mw
(b1)は、好ましくは12,000以上150,000以下、より好ましくは15,000以上120,000以下、さらに好ましくは20,000以上100,000以下である。ブロック共重合体(B)中にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を1つのみ有する場合は、該メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量がMw
(b1)となる。また、ブロック共重合体(B)中にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)を複数有する場合であって、該複数のメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量が互いに同じである場合は、かかる重量平均分子量がMw
(b1)となる。
【0035】
本発明に用いるメタクリル樹脂組成物においては、メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mw
(A)のMw
(b1)に対する比、すなわちMw
(A)/Mw
(b1)は、0.5以上2.3以下、好ましくは0.6以上2.1以下、より好ましくは0.7以上1.9以下である。Mw
(A)/Mw
(b1)が0.5を下回ると、メタクリル樹脂組成物から作製した成形品の耐衝撃性が低下、また表面平滑性が低下する傾向がある。一方、Mw
(A)/Mw
(b1)が大きすぎると、メタクリル樹脂組成物から作製した成形品の表面平滑性およびヘイズの温度依存性が悪化する傾向がある。Mw
(A)/Mw
(b1)が上記範囲にある場合は、ブロック共重合体(B)のメタクリル樹脂(A)中での分散粒径が小さくなるので、温度変化によらず低いヘイズを示すこととなり、広い温度範囲においてヘイズの変化が小さくなると考えている。
【0036】
ブロック共重合体(B)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の割合は、本発明のメタクリル樹脂組成物またはそれからなる成形品の透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは40質量%以上90質量%以下、より好ましくは45質量%以上80質量%以下である。ブロック共重合体(B)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)が複数含まれる場合には、上記の割合は、すべてのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の合計質量に基づいて算出する。
【0037】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、アクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0038】
かかるアクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられる。これらアクリル酸エステルを1種単独でまたは2種以上を組み合わせて重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0039】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、本発明の目的および効果の妨げにならない限りにおいて、アクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよい。アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)に含まれるアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位の割合は、好ましくは55質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは40質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0040】
かかるアクリル酸エステル以外の単量体としては、メタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。これらアクリル酸エステル以外の単量体を1種単独でまたは2種以上を組み合わせて、前述のアクリル酸エステルと伴に共重合することによって、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を形成できる。
【0041】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、本発明に用いるメタクリル系樹脂組成物の透明性を向上させる観点などから、アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸芳香族エステルとからなることが好ましい。
アクリル酸アルキルエステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0042】
(メタ)アクリル酸芳香族エステルはアクリル酸芳香族エステルまたはメタクリル酸芳香族エステルを意味し、芳香環を含む化合物が(メタ)アクリル酸にエステル結合して成る。かかる(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、例えば、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸スチリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸スチリルなどが挙げられる。中でも、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルが好ましい。
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が、アクリル酸アルキルエステルと(メタ)アクリル酸芳香族エステルとからなる場合、該アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位50〜90質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位50〜10質量%とを含むことが好ましく、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位60〜80質量%と(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位40〜20質量%とを含むことがより好ましい。
【0043】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)は、屈折率が1.485〜1.495の範囲となる重合体で構成されていることが、メタクリル樹脂組成物の透明性を高める観点から好ましい。
【0044】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量は、5,000以上120,000以下、好ましくは15,000以上110,000以下、より好ましくは30000以上100,0000以下である。
【0045】
ブロック共重合体(B)中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が複数ある場合、それぞれのアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0046】
アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)のうち最大の重量平均分子量Mw
(b2)は、30,000以上120,000以下、好ましくは40,000以上110,000以下、より好ましくは50,000以上100,0000以下である。Mw
(b2)が小さいと、メタクリル樹脂組成物から作製した成形品の耐衝撃性が低下する傾向がある。一方、Mw
(b2)が大きいと、メタクリル樹脂組成物から作製した成形品の表面平滑性が低下する傾向がある。ブロック共重合体(B)中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を1つのみ有する場合は、該アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量がMw
(b2)となる。また、ブロック共重合体(B)中にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)を複数有する場合であって、該複数のアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量が互いに同じである場合は、かかる重量平均分子量がMw
(b2)となる。
【0047】
なお、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量およびアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量は、ブロック共重合体(B)を製造する過程において、重合中および重合後にサンプリングを行なって測定した中間生成物および最終生成物(ブロック共重合体(B))の重量平均分子量から算出される値である。
各重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算値である。
【0048】
ブロック共重合体(B)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合は、透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは20質量%以上55質量%以下である。ブロック共重合体(B)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の割合が上記範囲内にあると、本発明のフィルムは、透明性、表面硬度、成形加工性、表面平滑性などに優れ、金属蒸着層をつけた際にも鏡面光沢性が優れたフィルムとなる。ブロック共重合体(B)にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)が複数含まれる場合には、上記の割合は、すべてのアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の合計質量に基づいて算出する。
【0049】
ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)との結合形態によって特に限定されない。例えば、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の一末端にアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の一末端が繋がったもの((b1)−(b2)構造のジブロック共重合体);メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の両末端のそれぞれにアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の一末端が繋がったもの((b2)−(b1)−(b2)構造のトリブロック共重合体);アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の両末端のそれぞれにメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)の一末端が繋がったもの((b1)−(b2)−(b1)構造のトリブロック共重合体)などのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)とが直列に繋がった構造のブロック共重合体が挙げられる。
【0050】
また、複数の(b1)−(b2)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b1)−(b2)−]
nX構造);複数の(b2)−(b1)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b2)−(b1)−]
nX構造);複数の(b1)−(b2)−(b1)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b1)−(b2)−(b1)−]
nX構造);複数の(b2)−(b1)−(b2)構造のブロック共重合体の一末端が繋がって放射状構造を成したブロック共重合体([(b2)−(b1)−(b2)−]
nX構造)などの星型ブロック共重合体や、分岐構造を有するブロック共重合体などが挙げられる。なお、ここでXはカップリング剤残基を表す。
これらのうち、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体が好ましく、(b1)−(b2)構造のジブロック共重合体がより好ましい。
【0051】
また、ブロック共重合体(B)は、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)およびアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)以外の重合体ブロック(b3)を有するものであってもよい。
重合体ブロック(b3)を構成する主たる構造単位はメタクリル酸エステルおよびアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位である。かかる単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどを挙げることができる。
【0052】
かかるブロック共重合体(B)における、メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)および重合体ブロック(b3)の結合形態は特に限定されない。メタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)および重合体ブロック(b3)からなるブロック共重合体(B)の結合形態としては、例えば、(b1)−(b2)−(b1)−(b3)構造のブロック共重合体、(b3)−(b1)−(b2)−(b1)−(b3)構造のブロック共重合体などが挙げられる。ブロック共重合体(B)中に重合体ブロック(b3)が複数ある場合、それぞれの重合体ブロック(b3)を構成する構造単位の組成比や分子量は、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
ブロック共重合体(B)は、必要に応じて、分子鎖中または分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物、アミノ基などの官能基を有していてもよい。
【0054】
ブロック共重合体(B)の重量平均分子量Mw
(B)は、好ましくは52,000以上400,000以下、より好ましくは60,000以上300,000以下である。
ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が小さいと、溶融押出成形において十分な溶融張力を保持できず、良好なフィルムが得られにくく、また得られたフィルムの破断強度などの力学物性が低下する傾向がある。一方、ブロック共重合体(B)の重量平均分子量が大きいと、溶融樹脂の粘度が高くなり、溶融押出成形で得られるフィルムの表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツが発生し、良好なフィルムが得られにくい傾向がある。
【0055】
また、ブロック共重合体(B)の分子量分布は、好ましくは1.0以上2.0以下、より好ましくは1.0以上1.6以下である。このような範囲内に分子量分布があることにより、本発明のアクリル系樹脂フィルムの機械的物性、耐熱性を高く保つことができる。
なお、重量平均分子量および数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
【0056】
前記ブロック共重合体(B)の屈折率は、好ましくは1.485〜1.495、より好ましくは1.487〜1.493である。屈折率がこの範囲内であると、メタクリル樹脂組成物の透明性が高くなる。なお、本明細書で「屈折率」とは、後述する実施例のとおり、測定波長587.6nm(d線)で測定した値を意味する。
【0057】
ブロック共重合体(B)の製造方法は、特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用することができる。例えば、各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法、有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法、α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下ラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて、各ブロックを構成するモノマーを重合させ、本発明に用いられるブロック共重合体(B)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、特に、ブロック共重合体(B)が高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0058】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、メタクリル樹脂(A)50〜99質量部とブロック共重合体(B)50〜1質量部を含み、好ましくはメタクリル樹脂(A)55〜90質量部とブロック共重合体(B)45〜10質量部を含み、より好ましくはメタクリル樹脂(A)70〜88質量部とブロック共重合体(B)30〜12質量部を含む。
アクリル系樹脂フィルムにおけるメタクリル樹脂(A)の含有量がブロック共重合体(B)に対して少ないと、Tダイを用いた溶融押出成形により得られるフィルムの表面硬度が低下する傾向がある。
【0059】
本発明に用いるメタクリル系樹脂組成物に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて各種の添加剤、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、着色剤、耐衝撃助剤などを添加してもよい。なお、本発明のアクリル系樹脂フィルムの力学物性および表面硬度の観点から発泡剤、充填剤、艶消し剤、光拡散剤、軟化剤や可塑剤は多量に添加しないことが好ましい。
【0060】
酸化防止剤は、酸素存在下においてそれ単体で樹脂の酸化劣化防止に効果を有するものである。例えば、リン系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤などが挙げられる。これらの酸化防止剤は1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中、着色による光学特性の劣化防止効果の観点から、リン系酸化防止剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく、リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤との併用がより好ましい。
リン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤とを併用する場合、その割合は特に制限されないが、リン系酸化防止剤/ヒンダードフェノール系酸化防止剤の質量比で、好ましくは1/5〜2/1、より好ましくは1/2〜1/1である。
【0061】
リン系酸化防止剤としては、2,2−メチレンビス(4,6−ジt−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(アデカ社製;商品名:アデカスタブHP−10)、トリス(2,4−ジt−ブチルフェニル)ホスファイト(BASF社製;商品名:IRGAFOS168)などが挙げられる。
【0062】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕(BASF社製;商品名IRGANOX1010)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASF社製;商品名IRGANOX1076)、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン(アデカ社製;商品名:アデカスタブPEP−36)などが挙げられる。
【0063】
熱劣化防止剤は、実質上無酸素の状態下で高熱にさらされたときに生じるポリマーラジカルを捕捉することによって樹脂の熱劣化を防止できるものである。
該熱劣化防止剤としては、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−メチル−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGM)、2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)フェニルアクリレート(住友化学社製;商品名スミライザーGS)などが挙げられる。
【0064】
紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する能力を有する化合物である。紫外線吸収剤は、主に光エネルギーを熱エネルギーに変換する機能を有すると言われる化合物である。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ベンゾエート類、サリシレート類、シアノアクリレート類、蓚酸アニリド類、マロン酸エステル類、ホルムアミジン類などが挙げられる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、紫外線被照による樹脂劣化が抑えられる、樹脂との相容性の観点からベンゾトリアゾール類、トリアジン類が好ましい。
【0065】
ベンゾトリアゾール類としては、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)6−(2H−ベンゾトリアゾール−イル)フェノール](旭電化工業(株)製;商品名アデカスタブLA−31)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN329)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製;商品名TINUVIN234)などが挙げられる。
トリアジン類としては、2,4ビス(2−ヒドロキシ−4−ブチロキシフェニル)−6−(2,4−ブチロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(BASF社製:商品名チヌビン460)、などが挙げられる。
【0066】
光安定剤は、主に光による酸化で生成するラジカルを捕捉する機能を有すると言われる化合物である。好適な光安定剤としては、2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン骨格を持つ化合物などのヒンダードアミン類が挙げられる。
【0067】
高分子加工助剤は、メタクリル樹脂組成物を成形する際、厚さ精度および薄膜化に効果を発揮する化合物である。高分子加工助剤は、通常、乳化重合法によって製造することができる、0.05〜0.5μmの粒子径を有する重合体粒子である。
該重合体粒子は、単一組成比および単一極限粘度の重合体からなる単層粒子であってもよいし、また組成比または極限粘度の異なる2種以上の重合体からなる多層粒子であってもよい。この中でも、内層に低い極限粘度を有する重合体層を有し、外層に5dl/g以上の高い極限粘度を有する重合体層を有する2層構造の粒子が好ましいものとして挙げられる。
【0068】
高分子加工助剤は、極限粘度が3〜6dl/gであることが好ましい。極限粘度が小さすぎると成形性の改善効果が低い。極限粘度が大きすぎるとメタクリル樹脂組成物の溶融流動性の低下を招きやすい。
【0069】
高分子加工助剤の具体例としては、三菱レイヨン社製メタブレンP530A、P550A、P570A、ローム・アンド・ハース社製パラロイドK125などが好適に用いられる。
【0070】
また、本発明に用いるメタクリル樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、メタクリル樹脂(A)およびブロック共重合体(B)以外の他の重合体と混合して用いることができる。かかる他の重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリー4−メチルペンテンー1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AAS樹脂、ACS樹脂、MBS樹脂などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレンービニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;SEPS、SEBS、SISなどのスチレン系熱可塑性エラストマー;IR、EPR、EPDMなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0071】
本発明に用いる熱可塑性重合体組成物を調製する方法は特に制限されないが、該熱可塑性重合体組成物を構成する各成分の分散性を高めるため、例えば、溶融混練して混合する方法が推奨される。メタクリル系樹脂(A)およびブロック共重合体(B)を溶融混練する方法では、必要に応じてこれらと添加剤とを同時に混合しても良いし、メタクリル系樹脂(A)を、添加剤とともに混合後、ブロック共重合体(B)と混合してもよい。混合操作は、例えば、ニ一ダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合または混練装置を使用して行なうことができる。特に、メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)の混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は、使用するメタクリル系樹脂(A)、ブロック共重合体(B)等の溶融温度などに応じて適宜調節するのがよく、通常110℃〜300℃の範囲内の温度で混合するとよい。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融混練および、あるいは窒素気流下での溶融混練を行うことが好ましい。このようにして、本発明のアクリル系樹脂組成物を、ペレット、粉末などの任意の形態で得ることができる。ペレット、粉末などの形態のアクリル系樹脂組成物は、成形材料として使用するのに好適である。
また、ブロック共重合体(B)を、メタクリル系樹脂(A)の単量体単位であるアクリル系モノマーとトルエン等の溶媒の混合溶液に溶解し、該アクリル系モノマーを重合することにより、ブロック共重合体(B)を含む、本発明に用いられる熱可塑性重合体組成物を調製することもできる。
【0072】
本発明のアクリル系樹脂フィルムの製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、上記溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面または鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロールまたはベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。このように押し出された溶融混練物の両面を鏡面に接触させて製膜する場合には、フィルム両面を鏡面ロール若しくは鏡面ベルトで加圧し挟むことが好ましい。鏡面ロール若しくは鏡面ベルトによる挟み込み圧力は、高いほうが好ましく、線圧として10N/mm以上であることが好ましく、30N/mm以上であることがさらに好ましい
【0073】
Tダイ法による製造方法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は好ましくは200〜300℃、より好ましくは220〜270℃である。また、溶融押出装置を使用し、溶融押出しする場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融押出し、あるいは窒素気流下での溶融押出しを行なうことが好ましい。
【0074】
また、良好な表面平滑性、良好な表面光沢、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、フィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの少なくとも一方の表面温度を60℃以上で且つフィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度を130℃以下とすることが好ましい。フィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度が60℃未満であると得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性、ヘイズが不足する傾向にあり、少なくとも一方の表面温度が130℃を超えるとフィルムと鏡面ロール若しくは鏡面ベルトが密着しすぎるため、鏡面ロール若しくは鏡面ベルトからフィルムを引き剥がす際にフィルム表面が荒れやすくなり、得られるアクリル系樹脂フィルムの表面平滑性が低くなるか、またはヘイズが高くなる傾向になる。
【0075】
本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも片面の粗度は1.5nm以下、好ましくは0.1〜1.0nmである。これにより、表面平滑性に優れ、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢に優れ、また本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷がされた場合には絵柄層等の鮮明さに優れる。また、光学用途においては、光線透過率等の光学特性や表面賦形を行う際の賦形精度に優れる。なお、フィルムの粗度は、実施例に記載の方法で求めた値である。
【0076】
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムのヘイズは、厚さ75μmにおいて、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。これにより、切断時や打抜時等での取扱い性に優れるとともに、意匠性を要求される用途に用いられる場合には、表面光沢や本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷された絵柄層の鮮明さに優れる。また、液晶保護フィルムや導光フィルムなどの光学用途においては、光源の利用効率が高まるため好ましい。さらに、表面賦形を行う際の賦形精度に優れるため好ましい。
【0077】
また、本発明のアクリル系樹脂フィルムのヘイズ温度依存性はより小さいことが好ましい。これにより広い温度範囲において透明性を求められている用途や、高温で使用される場合において、透明性が損なわれず、優位である。
【0078】
本発明のアクリル系樹脂フィルムの厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。当該フィルムの厚さとしては40〜300μmがより好ましく、50〜200μmが特に好ましい。
【0079】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、延伸処理が施されたものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。延伸時の温度は、均一に延伸でき、高い強度のフィルムが得られるという観点から、下限がメタクリル樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度であり、上限がメタクリル樹脂のガラス転移温度より40℃高い温度である。延伸温度が低くすぎると延伸中に成形体が破断しやすくなる。延伸温度が高すぎると延伸処理の効果が十分に発揮されず成形品の強度が高くなりにくい。延伸は、通常、100〜5000%/分で行われる。延伸速度が小さいと強度が高くなりにくく、また生産性も低下する。また延伸速度が大きいと成形体が破断したりして均一な延伸が困難になることがある。延伸の後、熱固定を行うことが好ましい。熱固定によって、熱収縮の少ないフィルムを得ることができる。延伸して得られるフィルムの厚さは、10〜200μmであることが好ましい。
【0080】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは着色されていてもよい。着色法としては、メタクリル系樹脂(A)とブロック共重合体(B)との組成物自体に、顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;アクリル系樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0081】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、少なくとも一方の面に、印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、後述する他の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂と接する側に施すのが好ましい。
【0082】
本発明のアクリル系樹脂フィルムは、表面がJIS鉛筆硬度(厚さ75μm)で、好ましくはHBまたはそれよりも硬く、より好ましくはFまたはそれよりも硬く、さらに好ましくはHまたはそれよりも硬い。表面が硬い本発明のアクリル系樹脂フィルムは、傷つき難いので、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。
【0083】
(積層フィルム)
本発明の積層フィルムは、前述の本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に、金属および/または金属酸化物よりなる層または他の熱可塑性樹脂層が少なくとも1層、直接または接着層を介して設けられているものである。また、本発明の積層フィルムは、前述の本発明のアクリル系樹脂フィルムの少なくとも一方の面に熱可塑性樹脂、木製基材、ケナフなどの非木質繊維からなる基材層が設けられてなるものであってもよい。
本発明の積層フィルムの厚さとしては、500μm以下であることが好ましい。
積層に適した他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。
【0084】
積層フィルムの製法は、特に制限されない。例えば、(1)本発明のアクリル系樹脂フィルムと、他の熱可塑性樹脂フィルムとを別々に用意しておき、加熱ロール間で連続的にラミネートする方法、プレスで熱圧着する方法、圧空又は真空成形すると同時に積層する方法、接着層を介在させてラミネートする方法(ウェットラミネーション); (2)本発明のアクリル系樹脂フィルムを基材にして、Tダイから溶融押出した他の熱可塑性樹脂をラミネートする方法; (3)前述のメタクリル系樹脂(A)および前述のブロック共重合体(B)の混合物と、別の熱可塑性樹脂とを共押出することにより、本発明のアクリル系樹脂フィルムの層と、他の熱可塑性樹脂フィルムの層とが積層されたフィルムを得る方法などが挙げられる。
これらの方法のうち、(1)または(2)の方法では、ラミネート前に、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは他の熱可塑性樹脂フィルムの貼り合せ面側にコロナ処理などの表面処理を施してもよい。
【0085】
また、本発明の積層フィルムにおいて、金属および/または金属酸化物よりなる層を設ける場合、金属としては、例えば、アルミニウム、珪素、マグネシウム、パラジウム、亜鉛、錫、ニッケル、銀、銅、金、インジウム、ステンレス鋼、クロム、チタンなどを使用することができ、また金属酸化物としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化カルシウム、酸化カドミウム、酸化銀、酸化金、酸化クロム、珪素酸化物、酸化コバルト、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化ニッケル、酸化白金、酸化パラジウム、酸化ビスマス、酸化マグネシウム
、酸化マンガン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、酸化バリウムなどを使用することができる。これらの金属及び金属酸化物は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上の混合物として用いてもよい。これらのなかで、インジウムは、優れた意匠性を有し、この積層体を深絞り成形する際にも光沢が失われにくいことから好ましい。また、アルミニウムは、優れた意匠性を有し、かつ工業的にも安価に入手できるので、特に深い絞りを必要としない場合には特に好ましい。これらの金属及び/又は金属酸化物の層を設ける方法としては真空蒸着法が通常用いられるが、イオンプレーティング、スパッタリング、CVD(ChemicalVapor Deposition :化学気相堆積)などの方法を用いてもよい。金属及び/又は金属酸化物からなる蒸着膜の厚さは、一般的には5〜100nm程度である。層形成後に深絞り成形を行う場合には、5〜250nmが好ましい。
【0086】
本発明の積層フィルムでは、本発明のアクリル系樹脂フィルムを積層フィルムの内層またはその一部に用いてもよいし、最外層に用いてもよい。フィルムの積層数に関しては特に制限はない。積層フィルムに用いられる他の樹脂は、フィルムの意匠性の観点から、メタクリル系樹脂などの透明な樹脂が好ましい。フィルムに傷がつきにくく、意匠性が長く持続するという観点から、最外層は、表面硬度および耐候性が高いものが好ましく、例えば、メタクリル系樹脂からなるフィルム又は本発明のアクリル系熱可塑性樹脂フィルムが好ましい。
【0087】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、他の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、木質基材または非木質繊維基材の表面に設けられてなるものである。
【0088】
該積層体に用いられる他の熱可塑性樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、他の(メタ)アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合)樹脂、エチレンビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。他の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などが挙げられる。また、本発明の積層体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、木製基材やケナフなどの非木質繊維からなる基材の表面に設けられてなるものであってもよい。
【0089】
本発明の積層体の製法は、特に制限されない。例えば、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムを、他の熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂の表面にまたは木製基材もしくは非木質繊維基材の表面に、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形することにより、本発明の積層体を得ることができる。本発明の積層体は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムが、成形体や基材の最表層に設けられており、それによって、表面平滑性、表面硬度、表面光沢などに優れる。またさらに本発明のアクリル系樹脂フィルムに印刷が施された場合には絵柄等が鮮明に表示される。また、金属層を有する積層フィルムにおいては、金属並みの鏡面光沢性が得られる。
【0090】
本発明の積層体の製法のうち、好ましい方法は、射出成形同時貼合法と一般に呼ばれている方法である。
この射出成形同時貼合法は、本発明のアクリル系樹脂フィルムまたは本発明の積層フィルムを射出成形用雌雄金型間に挿入し、その金型に該フィルムの片方の面から溶融した熱可塑性樹脂を射出して、射出成形体を形成すると同時に、その成形体に前記フィルムを貼合する方法である。
【0091】
金型に挿入されるフィルムは、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形して凹凸形状に賦形されたものであってもよい。
フィルムの予備成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で予備成形を行ってもよい。後者の方法、すなわち、フィルムを予備成形した後その片面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。
フィルムに本発明の積層フィルムを用いる場合には、積層された他の熱可塑性樹脂の層が射出成形される樹脂側になるように、すなわち、本発明のアクリル系樹脂フィルムが最表面となるように配置することが好ましい。このようにして、最表層に本発明のアクリル系樹脂フィルムが設けられた積層体を得ることができる。
【0092】
本発明のアクリル系樹脂フィルム、積層フィルムまたは積層体は、良好な取扱い性、良好な表面平滑性および高表面硬度を活かして、意匠性の要求される成形品や高度な光学特性が要求される成形品、すなわち、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品;航空機風防、パイロット用バイザー、オートバイ、モーターボート風防、バス用遮光板、自動車用サイドバイザー、リアバイザー、ヘッドウィング、ヘッドライトカバー、自動車内装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、テレビ保護マスク、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、レントゲン部品等の医療機器部品;機械カバー、計器カバー、実験装置、定規、文字盤、観察窓等の機器関係部品;道路標識、案内板、カーブミラー、防音壁等の交通関係部品;その他、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、熔接時の顔面保護用マスク等の表面の加飾フィルム兼保護フィルム、壁紙;マーキングフィルム;液晶保護フィルム、導光フィルム、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、各種ディスプレイの前面フィルム、拡散フィルム等の光学関係部品等に好適に用いられる。
【実施例】
【0093】
以下に実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。また、本発明は、以上までに述べた、特性値、形態、製法、用途などの技術的特徴を表す事項を、任意に組み合わせて成るすべての態様を包含している。
【0094】
実施例および比較例における物性値の測定等は以下の方法によって実施した。
【0095】
〔重量平均分子量(Mw)および分子量分布〕
ブロック共重合体(B)およびメタクリル樹脂(A)の重合中および重合終了後の重量平均分子量(Mw)および分子量分布はGPC(ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー)によりポリスチレン換算分子量で求めた。
・装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8320」
・分離カラム:東ソー株式会社製の「TSKguardcolum SuperHZ−H」、「TSKgel HZM−M」および「TSKgel SuperHZ4000」を直列に連結
・溶離剤:テトラヒドロフラン
・溶離剤流量:0.35ml/分
・カラム温度:40℃
・検出方法:示差屈折率(RI)
【0096】
〔各重合体ブロックの構成割合〕
各重合体ブロックの構成割合は
1H−NMR(
1H−核磁気共鳴)測定によって求めた。
・装置:日本電子株式会社製核磁気共鳴装置「JNM−LA400」
・重溶媒:重水素化クロロホルム
【0097】
〔ブロック共重合体(B)の屈折率〕
3cm×3cm、厚さ3mmのシートをプレス成形にて作製し、カルニュー光学工業株式会社「KPR−200」を用いて、23℃にて測定波長587.6nm(d線)で屈折率を測定した。
【0098】
〔フィルムのヘイズ〕
65mmΦベント式一軸押出機を用い、幅900mmのダイより押出温度250℃にて、吐出量47kg/hにて押出し、65℃と70℃の金属鏡面ロールでニップし、10m/分で引き取り、厚さ75μmのフィルムを製膜した。得られたフィルムを50mm×50mmに切り出して試験片とし、JIS K7105に準拠して23℃にてヘイズを測定した。
【0099】
〔フィルムの鉛筆硬度〕
前述の製膜条件より製膜されたフィルムを10cm×10cmに切り出して試験片とし、JIS−K5600−5−4に準拠して鉛筆硬度を測定した。
【0100】
〔表面粗度(フィルムの表面平滑性の測定)〕
前述の製膜条件より製膜されたフィルムを5mm×5mmに切り出して試験片とした。原子間力顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPI4000プローブステーションE−sweep環境制御ユニット)を用いて、表面の形状をDFMモードによって測定した。プローブはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製SI−DF20(背面Al)を用いた。試料測定に先立ち、ピッチ10μm、段差100nmの参照試料を測定し、装置のX軸、Y軸の測定誤差が10μmに対して5%以下、Z軸の誤差が100nmに対して5%以下であることを確認した。
【0101】
試料の観察領域は5μm×5μmとし、測定周波数を0.5Hzとした。スキャンライン数はX軸を512、Y軸を512とした。測定は25℃±2℃、湿度30±5%の大気環境で行った。得られた測定データを、装置に付属のデータ処理ソフトウェアにより解析し、平均面粗さRaを求めた。すなわち、装置の測定ソフトウェアの[ツール]メニューの[3次傾き補正]コマンドを選択し、フィルムの傾きや大きなうねりの全面傾きを補正した後、[解析]メニューの[表面粗さ解析]コマンドを選択し、平均面粗さRaを得た。平均面粗さRaは、以下のように定義される。
※平均面粗さRa:基準面から指定面までの偏差の絶対値を平均した値。
【0102】
【数1】
ここでF(X,Y)は(X,Y)座標での高さの値を表す。Z
0は以下で定義されるZデータの平均値を表す。
【0103】
【数2】
また、S
0は、測定領域の面積を表す。
【0104】
この平均面粗さRaをフィルムの両面(便宜上、A面およびB面とする)において異なる10箇所の領域で測定し、10箇所の平均面粗さRaの平均値をフィルム表面の粗度とした。
3次傾き補正は、測定した試料表面を3次の曲面で最小2乗近似によってフィッティングすることによって行い、フィルム試料の傾きおよびうねりの影響を排除するために行った。
【0105】
〔応力白化〕
前述の製膜条件より製膜されたフィルムを用いて、JIS−K7127のダンベル1B型の試験片を作成し、オートグラフ(株式会社島津製作所製 オートグラフAG−5kN)で、5kNロードセル、チャック間距離110mm、引張速度20mm/分で引っ張り、破断直前の白化の状態で評価した。
○:白化が見られない。
△:やや白化が見られる。
×:白化が見られる。
【0106】
〔温度白化(ヘイズ温度依存性)〕
前述の製膜条件より製膜されたフィルムを用いて、50mm×50mmの試験片を切り出し、80℃のオーブンの中に10分間放置した。試験片をオーブンから取り出し、直に、ヘイズメーター(村上色彩技術研究所社製 ヘイズメーターHM−150)によりJIS K7136に準拠してヘイズを測定した。
○:ヘイズの変化が0.1%以下
△:ヘイズの変化が0.5%以下
×:ヘイズの変化が0.5%より大きい
【0107】
[積層フィルムの鏡面光沢性]
前述の製膜条件により製膜されたフィルムを20cm×30cmに切り出して、その片面にコロナ放電処理を施し、次いでアルミニウムを真空蒸着法により蒸着し、積層フィルムを得た。アルミニウム層の厚さは30nmであった。この積層フィルムの非蒸着面の鏡面光沢性を目視にて外観評価した。
○:鏡面光沢あり。
△:やや鏡面光沢あり。
×:鏡面光沢なし。
【0108】
[積層体の製法]
下記実施例1の条件により得られた積層フィルムに真空圧空成形機を用いて、加熱温度160℃でABS樹脂を貼り合わせることで積層体を得た。
【0109】
以下に示す参考例においては、化合物は常法により乾燥精製し、窒素にて脱気したものを使用した。また、化合物の移送および供給は窒素雰囲気下で行なった。
【0110】
参考例1 [ブロック共重合体(B−1)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン735g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20mmolを含有するトルエン溶液39.4gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム1.17mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル35.0gを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw
(b1-1)と称する)を測定したところ、40,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)」と称する)となる。
【0111】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.5gおよびアクリル酸ベンジル10.5gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、80,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量は40,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw
(b2))を40,000であると決定した。
【0112】
続いて、メタクリル酸メチル35.0gを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することで、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)」と称する)を形成した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−1)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−1)の重量平均分子量Mw
(B)は120,000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は80,000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量(Mw
(b1-2)と称する)を40,000であると決定した。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw
(b1-1)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量Mw
(b1-2)が共に40,000なので、Mw
(b1)は40,000である。得られたブロック共重合体(B−1)の分析結果を表1に示す。
なお、表1中、メタクリル酸メチルに由来する構造単位は「メタクリル酸メチル単位」、アクリル酸n−ブチルに由来す構造単位は「アクリル酸n−ブチル単位」、アクリル酸ベンジルに由来する構造単位は「アクリル酸ベンジル単位」と、それぞれ表記した。
【0113】
参考例2 [ブロック共重合体(B−2)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン567g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.1g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム4.1mmolを含有するトルエン溶液8.3gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム0.42mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル33.3gを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw
(b1-1)と称する)を測定したところ、80,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)」と称する)となる。
【0114】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.8gおよびアクリル酸ベンジル8.5gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、160,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量は80,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw
(b2))を80,000であると決定した。
【0115】
続いて、メタクリル酸メチル33.3gを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することで、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)」と称する)を形成した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−1)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−2)の重量平均分子量Mw
(B)は240,000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は160,000であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量(Mw
(b1-2)と称する)を80,000であると決定した。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw
(b1-1)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量Mw
(b1-2)が共に80,000なので、Mw
(b1)は80,000である。得られたブロック共重合体(B−2)の分析結果を表1に示す。
【0116】
参考例3 [ブロック共重合体(B−3)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン567g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン1.52g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム15.5mmolを含有するトルエン溶液8.3gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム6.28mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル25.0gを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw
(b1-1)と称する)を測定したところ、4,500であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)」と称する)となる。
【0117】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル35.0gおよびアクリル酸ベンジル15.0gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、13,500であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量は4,500であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw
(b2))を9,000であると決定した。
【0118】
続いて、メタクリル酸メチル25,0gを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することで、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)」と称する)を形成した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−1)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−3)の重量平均分子量Mw
(B)は18,000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は13,500であったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量(Mw
(b1-2)と称する)を4,500であると決定した。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw
(b1-1)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量Mw
(b1-2)が共に4,500なので、Mw
(b1)は4,500である。得られたブロック共重合体(B−3)の分析結果を表1に示す。
【0119】
参考例4 [ブロック共重合体(B−4)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン567g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.09g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム3.73mmolを含有するトルエン溶液8.3gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム0.38mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル25.0gを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw
(b1-1)と称する)を測定したところ、75,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)」と称する)となる。
【0120】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル35.0gおよびアクリル酸ベンジル15.0gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、225,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量は75,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw
(b2))を150,000であると決定した。
【0121】
続いて、メタクリル酸メチル25,0gを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌することで、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)(以下、「メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)」と称する)を形成した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、トリブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−1)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−4)の重量平均分子量Mw
(B)は300,000であった。ジブロック共重合体の重量平均分子量は225,000であったので、メタクリル酸メチル重量平均分子量(Mw
(b1-2)と称する)を75,000であると決定した。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−1)の重量平均分子量Mw
(b1-1)と、メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1−2)の重量平均分子量Mw
(b1-2)が共に75,000なので、Mw
(b1)は75,000である。得られたブロック共重合体(B−4)の分析結果を表1に示す。
【0122】
参考例5 [ブロック共重合体(B−5)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン735g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20mmolを含有するトルエン溶液39.4gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム1.17mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル35.0gを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw
(b1)と称する)を測定したところ、40,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)となる。
【0123】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.5gおよびアクリル酸ベンジル10.5gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、80,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量は40,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw
(b2))を40,000であると決定した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、ジブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−5)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−5)の分析結果を表1に示す。
【0124】
参考例6 [ブロック共重合体(B−6)の合成]
内部を脱気し、窒素で置換した三口フラスコに、室温にて乾燥トルエン567g、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.1g、およびイソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム4.1mmolを含有するトルエン溶液8.3gを加え、さらに、sec−ブチルリチウム0.42mmolを加えた。これにメタクリル酸メチル33.3gを加え、室温で1時間反応させた。反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量(以下、Mw
(b1)と称する)を測定したところ、80,000であった。かかるメタクリル酸メチル重合体はさらにアクリル酸エステルをブロック共重合することで、該メタクリル酸メチル重合体はメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)となる。
【0125】
次いで、反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.8gおよびアクリル酸ベンジル8.5gの混合液を0.5時間かけて滴下した。滴下直後、反応液に含まれる重合体をサンプリングして重量平均分子量を測定したところ、160,000であった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(b1)の重量平均分子量は80,000であったので、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(b2)の重量平均分子量(Mw
(b2))を80,000であると決定した。その後、反応液にメタノール4gを添加して重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、ジブロック共重合体であるブロック共重合体(B)(以下、「ブロック共重合体(B−6)」と称する)を析出させ、ろ過し、80℃にて、1torr(約133Pa)で、12時間乾燥して単離した。得られたブロック共重合体(B−6)の分析結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
参考例7 [メタクリル樹脂(A−1)の合成]
メタクリル酸メチル95質量部、アクリル酸メチル5質量部からなる単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部および連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.77質量部を加え溶解させて原料液を得た。
イオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部および懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に、前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら、温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後、3時間経過時に、温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。なお、重合槽壁面あるいは撹拌翼にポリマーが若干付着したが、泡立ちもなく、円滑に重合反応が進んだ。
得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機により、ビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥し、ビーズ状のメタクリル樹脂(A)(以下「メタクリル樹脂(A−1)」と称する)を得た。
得られたメタクリル樹脂(A−1)の重量平均分子量Mw
(A)は30,000、分子量分布は1.8であった。
【0128】
参考例8 [メタクリル樹脂(A−2)の合成]
連鎖移動剤の量を0.45質量部に変更した以外は、参考例5と同様にして、Mw
(A)は55,000、分子量分布1.8のメタクリル樹脂(A−2)を得た。
【0129】
参考例9 [メタクリル樹脂(A−3)の合成]
連鎖移動剤の量を0.28質量部に変更した以外は、参考例5と同様にして、Mw
(A)は80,000、分子量分布1.8のメタクリル樹脂(A−3)を得た。
【0130】
参考例10 [メタクリル樹脂(A−4)の合成]
連鎖移動剤の量を0.16質量部に変更した以外は、参考例5と同様にして、Mw
(A)は130,000、分子量分布1.8のメタクリル樹脂(A−4)を得た。
【0131】
実施例1
ブロック共重合体(B−2)20質量部と、メタクリル樹脂(A−3)80質量部とを、二軸押出機により230℃で溶融混練した。その後、押出し、切断することによって、メタクリル樹脂組成物のペレットを製造した。
得られたメタクリル樹脂組成物を65mmΦベント式1軸押出機を用い、幅900mmのダイより押出温度250℃にて、吐出量47kg/hにて押出し、30℃と40℃の金属鏡面ロールでニップし、10m/分で引き取り、厚さ75μmのフィルムを製膜した。このフィルムのヘイズ、鉛筆硬度、表面粗度、応力白化、温度白化(80℃)を測定した。
また、このフィルムの片面にコロナ放電処理を施し、次いでアルミニウムを真空蒸着法により蒸着した。アルミニウム層の厚さは30nmであった。こうして得られた積層フィルムの鏡面光沢性を評価した。表2にこれらの結果を示した。
【0132】
実施例2〜7
表2に示す配合処方に従った以外は実施例1と同じ方法でペレットを製造した。これらペレットを用いて実施例1と同じ方法で物性を測定した。結果を表2に示す。
【0133】
比較例1〜7
表2に示す配合処方に従った以外は実施例1と同じ方法でペレットを製造した。
これらペレットを用いて実施例1と同じ方法で物性を測定した。結果を表2に示す。なお、比較例6においては、ブロック共重合体(B)に代えて、株式会社クラレ製、架橋ゴム粒子配合樹脂「パラペットEB−SN」、比較例7においては、ブロック共重合体(B)に代えて、株式会社クラレ製、架橋ゴム粒子配合樹脂「パラペットGR−100」を用いた。
【0134】
【表2】
【0135】
これらの結果から、メタクリル樹脂(A)の重量平均分子量Mw
(A)がメタクリル酸エステル重合体ブロック(b1)のうちの最大の重量平均分子量Mw
(b1)に対して0.5以上2.3以下の範囲にあるメタクリル樹脂と、アクリル酸エステル重合体ブロック(b2)のうちの最大の重量平均分子量Mw
(b2)が30000以上120000以下の範囲にあるブロック共重合体(B)とを50/50〜99/1の質量比で配合したメタクリル樹脂組成物を用いて作成したフィルムが、表面平滑性、透明性、表面硬度などに優れ、且つ延伸した時、加熱した時でも白化を抑制できていることがわかる。
また、実施例1の積層フィルムを用いて作製した積層体においても良好な鏡面光沢性が得られた。