(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0053】
<1.第1実施形態>
<1−1.装置概要>
図1は、本発明の第1実施形態に係る接合装置1(1Aとも称する)を示す縦断面図である。なお、以下、各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
【0054】
この接合装置1(1A)は、接合対象の2つの被接合物91,92を互いに対向させて両被接合物91,92を接合する装置である。より詳細には、接合装置1は、2つの両被接合物91,92の水平方向位置を合わせて、当該両被接合物91,92を接合する装置である。なお、接合装置1は、接合システムであるとも表現される。
【0055】
接合装置1は、その筐体2内に、ヘッド22およびステージ12を備えている。ヘッド22は、被接合物92を保持する保持部材であり、ステージ12は、被接合物91を保持する保持部材である。上側の被接合物92は、ヘッド22(より詳細にはその先端部に設けられた静電チャック部等)によって保持される。同様に、下側の被接合物91は、当該ステージ12(より詳細にはその先端部に設けられた静電チャック部等)によって保持される。被接合物92はヘッド22の保持面によって面支持され、被接合物91はステージ12の保持面によって面支持される。
【0056】
ヘッド22は、当該ヘッド22の静電チャック部227(
図2)に内蔵されたヒータによって加熱され、ヘッド22に保持された被接合物92の温度を調整(昇温等)することができる。また、ヘッド22の内部には水冷機構(強制冷却部)が設けられており、被接合物92を強制冷却することも可能である。
【0057】
同様に、ステージ12は、当該ステージ12の静電チャック部127(
図2)に内蔵されたヒータによって加熱され、ステージ12上の被接合物91の温度を調整(昇温等)することができる。また、ステージ12の内部には水冷機構(強制冷却部)が設けられており、被接合物91を強制冷却することも可能である。
【0058】
ステージ12は、XY駆動機構14によってX方向およびY方向に移動(並進移動)され、透光性部材等で構成されたベース部11に対して相対的に並進移動する。ステージ12は、後述する位置認識部28による位置検出結果等に基づいてXY駆動機構14によって駆動され、X方向、Y方向におけるアライメント動作が実行される。
【0059】
また、ヘッド22は、回転駆動機構25によってθ方向(Z軸回りの回転方向)に回転される。ヘッド22は、後述する位置認識部28による位置検出結果等に基づいて回転駆動機構25によって駆動され、θ方向におけるアライメント動作が実行される。
【0060】
さらに、ヘッド22は、Z軸昇降駆動機構(モータおよびボールネジ等を有する)26によってZ方向に移動(昇降)される。ヘッド22がステージ12に対して相対的に接近することによって、両被接合物91,92が互いに接合される。
【0061】
また、ヘッド(ヘッド部とも称する)22は、ベース部材221と先端側部材222とを有している。詳細には、ベース部材221に対して圧力センサ29が固定されており、当該圧力センサ29に対して先端側部材222が固定されている。圧力センサ29は、ベース部材221と先端側部材222との間に加わる圧力(ひいては、両被接合物91,92の相互間に作用する圧力)を検出することができる。
【0062】
ベース部材221は、Z軸昇降駆動機構26によってZ方向に駆動される高剛性部材(剛体)である。また、先端側部材222は、ベース部材221に対して圧力センサ29を介して固定されている高剛性部材である。先端側部材222は、静電チャック部227等を有して構成される。先端側部材222は、上記特許文献1のようなエアー式のツールホルダー(空気圧による摺動部材)を有さず、非摺動式の高剛性部材として構成されている。
【0063】
ここでは、接合対象の2つの被接合物として基板91とチップ(半導体チップ)92とを例示する。基板91は基板保持用のステージ12に保持され、チップ92はチップ載置用のヘッド22に保持される。
【0064】
図2に示すように、基板91の接合表面には複数のバンプ電極BM(BM1)が設けられており、チップ92の接合表面にも複数のバンプ電極BM(BM2)が設けられている。バンプ電極(はんだバンプ電極)BM1は、基板91上に設けられたバンプ下地金属UM(たとえば銅(Cu)あるいは金(Au)等)のさらに上に設けられている。換言すれば、バンプ電極BM1は、バンプ下地金属UMを介して、基板91の接合表面に設けられている。同様に、バンプ電極(はんだバンプ電極)BM2は、バンプ下地金属UMを介して、チップ92の接合表面に設けられている。
【0065】
基板91の複数のバンプ電極BMは、チップ92の複数のバンプ電極BMに対応する位置に設けられている。チップ92が基板91に対して正確に位置合わせされた状態では、基板91の各バンプ電極BMとチップ92の各バンプ電極BMとが対向する位置に配置される。
【0066】
接合装置1は、ヘッド22のZ方向位置Hを検出する位置検出センサ(リニアスケール(リニアエンコーダ)等)31をさらに備えている。後述するように、この位置検出センサ31による検出値を用いて、ヘッド22の高さ等が制御される。なお、ヘッド22のZ方向位置Hは、たとえば、Z軸昇降駆動機構26に内蔵されたモーターのエンコーダ値を用いて検出されるようにしてもよい。
【0067】
ヘッド22のZ方向位置Hは、Z方向(鉛直方向)においてヘッド22の下方先端位置に比較的近い位置で検出(計測)されることが好ましい。当該検出位置(位置検出センサ31の位置等)から下方先端位置までの長さが小さい方が、ヘッド22において当該長さに対応する熱膨張量が低減され、当該熱膨張量に関する誤差も低減されるからである。
【0068】
この接合装置1は、コントローラ7をさらに備えている。コントローラ7は、接合装置における各種の動作(たとえば、駆動動作、温度調整動作、アライメント動作等)を制御する。
【0069】
また、接合装置1に隣接して、チップ供給装置(不図示)が配置されている。各チップ92は、当該チップ供給装置(不図示)によって接合装置1へと随時供給される。
【0070】
<1−2.位置認識部>
また、接合装置1は、被接合物91,92の水平位置(詳細にはX,Y,θ)を認識する位置認識部(位置計測部とも称される)28(
図1)を備えている。ここでは、被接合物91,92として、赤外光(赤外線波長域の光)を透過するものが用いられるものとし、赤外光を用いて位置計測動作が実行される態様を例示する。
【0071】
位置認識部28は、2つの撮像部27a,27bを有している。
【0072】
撮像部27(詳細には27a,27b)は、マークMK1,MK2(後述)に関する光像を画像データとして取得する。位置認識部28は、撮像部27による撮影画像に基づいて、基板91上でのチップ92の位置を認識する。詳細には、位置認識部28は、マークMK1,MK2を用いて、基板平面に平行な方向におけるチップ92の位置(基板91に平行な面内におけるチップ92と基板91との相対位置関係)を認識する。
【0073】
各撮像部27a,27bは、それぞれ、撮像センサとレンズ部とを有している。また、各撮像部27a,27bは、それぞれ、同軸照明系を有し、当該同軸照明系の光源(出射部とも称される)から出射された照明光(ここでは赤外光)の反射光に関する画像データを取得する。
【0074】
具体的には、各撮像部27a,27bの各同軸照明系から水平方向に出射された照明光は、ミラー(光路変更部材)337で反射されて、その進行方向が鉛直下向きに変更される。そして、当該光は、ヘッド22に保持されたチップ92(
図2)と当該チップ92に対向配置された基板91とを含む撮影対象部分に向けて進行し、当該撮影対象部分で反射される。また、当該撮影対象部分からの反射光は、上方に向けて進行した後、ミラー(光路変更部材)337で再び反射されて、その進行方向が水平方向に変更されて、各撮像部27a,27bへと到達する。これにより、撮影対象部分の光像に関する画像データ(反射光による画像データ)が取得される。たとえば、ヘッド22に保持されたチップ92内に配置されるマークMK1(MK1a,MK1b)(
図2参照)と、当該チップ92に対向配置された基板91内に配置されるマークMK2(MK2a,MK2b)とを含む画像データが取得される。
【0075】
より詳細には、撮像部27aは、2種類のマークMK1a,MK2aを同時に読み取った撮影画像を取得する。位置認識部28は、基板91とチップ92とに付された或る1組のマーク(MK1a,MK2a)(
図2参照)の位置を当該撮影画像に基づいて認識するとともに、当該1組のマークMK1a,MK2aの相互間の位置ずれ量(Δxa,Δya)を求める(
図3参照)。
【0076】
同様に、撮像部27bは、2種類のマークMK1b,MK2bを同時に読み取った撮影画像を取得する。位置認識部28は、基板91とチップ92とに付された別の1組のマーク(MK1b,MK2b)の位置を認識するとともに、当該1組のマークMK1b,MK2bの相互間の位置ずれ量(Δxb,Δyb)を求める。
【0077】
位置認識部28は、これら2組のマークの位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)に基づいて、水平方向(X方向、Y方向およびθ方向)におけるチップ92と基板91との相対的位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)を算出する。ここで、値ΔxはX方向における両被接合物91,92の相対的な位置ずれであり、値ΔyはY方向における両被接合物91,92の相対的な位置ずれである。また、値Δθはθ方向(回転方向)における両被接合物91,92の相対的な位置ずれ(相対姿勢誤差とも称される)である。両被接合物91,92の相対的位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)は、当該両被接合物91,92の相対位置誤差であるとも表現される。
【0078】
そして、位置認識部28により認識された当該相対的ずれ量が低減されるように、ステージ12が2つの並進方向(X方向およびY方向)に駆動(並進駆動)されるとともに、ヘッド22がθ方向に駆動(回転駆動)される。これにより、基板91とチップ92とが相対的に移動され、上記の位置ずれ量が補正される。
【0079】
チップ92の(X方向、Y方向およびθ方向に関する)アライメント動作はこのようにして実行される。
【0080】
<1−3.接合動作>
図4は、第1実施形態に係る動作を示すフローチャートである。また、
図5は、第1実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
図5においては、バンプ電極BMの温度TMの変化曲線L1(上段)とヘッド22のZ方向位置Hの変化曲線L2(中段)と圧力センサ29(
図1)の検出圧力値Pの変化曲線P3(下段)とが示されている。
【0081】
ここでは、ヘッド22のヒータによってチップ92(そのバンプ電極BM2も含む)が加熱され、ステージ12のヒータによって基板91(そのバンプ電極BM1も含む)が加熱される態様を例示する。ただし、これに限定されず、たとえば、ヘッド22のヒータのみによってチップ92(バンプ電極BM2)のみが加熱され、ステージ12のヒータによる基板91(バンプ電極BM1)の加熱がなされないようにしてもよい。
【0082】
ヘッド22のヒータ温度とバンプ電極BM2の温度との関係は、予め実験等によって求められているものとする。ヘッド22のヒータ温度を所定の温度に制御することによって、バンプ電極BM2の温度を目標の温度に制御することが可能である。たとえば、ヘッド22の温度を250℃に昇温することによって、バンプ電極BM2の温度を215℃に昇温することが可能である。また、ヘッド22の温度を260℃に昇温することによって、バンプ電極BM2の温度を225℃に昇温することが可能である。
【0083】
同様に、ステージ12のヒータ温度を所定の温度に制御することによって、バンプ電極BM1の温度を目標の温度に制御することが可能である。
【0084】
このように、ヘッド22および/またはステージ12のヒータ温度を調整することによって、バンプ電極BMの温度が制御される。換言すれば、ヘッド22および/またはステージ12のヒータ温度とバンプ電極BMの温度との相関関係に基づいてヒータ温度を制御することによって、バンプ電極BMの温度が制御される。
【0085】
以下、これらの図等を参照しながら、第1実施形態に係る動作について説明する。
【0086】
この実施形態では、ステップS11(
図4)の加熱直前において、両被接合物91,92に関する平面方向(XYθ方向)における位置合わせ動作(アライメント動作)が予め行われているものとする。これにより、チップ92が基板91の平面方向において所定の位置に配置される。ただし、両被接合物91,92は、鉛直方向(Z方向)において離間して配置されており、両被接合物91,92は未だ接触していない。
【0087】
ステップS11(
図4)において、両被接合物91,92のバンプ電極BMの加熱が開始され(時刻T0)、バンプ電極BMが室温RTから温度TM1にまで昇温される(時刻T1)(
図5上段の曲線L1参照)。温度TM1は、バンプ電極(詳細にはバンプ電極材料)の融点(溶融温度)TMmよりも所定温度ΔTU1(たとえば、数℃〜数十℃程度)低い温度である。たとえば、バンプ電極BMの融点TMmが220℃であり且つ値ΔTU1が5℃であるときには、温度TM1は215℃(融点よりも5℃低い値)に設定される。温度TM1は、融点近傍且つ融点未満の温度である、とも表現される。なお、値ΔTU1が小さいほど(換言すれば、温度TM1が融点TMmに近いほど)、ヘッド22等の熱膨張の影響を抑制して正確な高さ制御を行うことが可能である。値ΔTU1は、10℃以内の値であることが好ましく、5℃以内の値であることが更に好ましい。
【0088】
ここにおいて、ステップS11での加熱処理に応じたヘッド22等の熱膨張によって、ヘッド22の下方先端位置(およびヘッド22に保持されたチップ92のバンプ電極BM2の下方先端位置)は更に下方に(たとえば数十μm(マイクロメートル)程度)移動し、両被接合物91,92は互いに接近する。ただし、ステップS11の実行後においても、両被接合物91,92は、鉛直方向(Z方向)において未だ離間しており、両被接合物91,92(詳細には、基板91のバンプ電極BM1、およびチップ92のバンプ電極BM2)は未だ接触していない(
図6の左端(t=T1)参照)。逆に言えば、ステップS11の加熱処理の実行前の時点T0においては、ステップS11の加熱処理に応じた熱膨張の影響によってヘッド22の下方先端位置が下方に移動しても両被接合物91,92が未だ接触しない程度に、比較的大きく(たとえば100μm(マイクロメートル)程度)離間されて両被接合物91,92が配置される。
【0089】
ステップS11の加熱処理の後のステップS12においては、バンプ電極BMが温度TM1にまで昇温された状態(温度TM1に維持された状態)で、アライメント動作が再び実行される(時刻T1)。これにより、水平平面方向における両被接合物91,92の相対位置がさらに正確に合わせられる。特に、ステップS11の前に予備的なアライメント動作が行われているとしても、ステップS11の加熱処理に伴う基板の熱膨張等によって水平方向における位置ずれ(たとえば20μm(マイクロメートル)程度の位置ずれ)が生じ得る。ステップS11の加熱処理後のステップS12においてアライメント動作を行うことによれば、ステップS11の加熱処理に伴う位置ずれを抑制することが可能である。
【0090】
なお、この実施形態においては、ステップS11の加熱直前にもアライメント動作が行われているが、これに限定されず、ステップS11の加熱直前にはアライメント動作が行われないようにしてもよい。
【0091】
次のステップS13においては、バンプ電極BMが温度TM1に維持された状態で、Z軸昇降駆動機構26による駆動動作に応じてヘッド22が下降していく(
図5中段の曲線L2参照(時刻T1〜時刻T2))。このヘッド22の下降動作に応じて、ヘッド22とステージ12との相互間距離DH(
図2も参照)、ひいては、ステージ12に保持された基板91とヘッド22に保持されたチップ92との相互間距離DC(より詳細には、基板91のバンプ電極BM1とチップ92のバンプ電極BM2との相互間距離DB、および基板91の下地金属UM1とチップ92の下地金属UM2との相互間距離DU)が低減されていく。換言すれば、ヘッド22およびステージ12(ひいては基板91およびチップ92)が互いに接近していく。この下降動作は、両被接合物91,92が互いに接触するまで継続される。より詳細には、基板91のバンプ電極BMとチップ92のバンプ電極BMとが互いに接触するまで継続される。
【0092】
そして、ステップS14においてチップ92のバンプ電極BM2が基板91(より詳細には基板91のバンプ電極BM1)に接触したことが圧力センサ29によって検出される(時刻T2)。具体的には、
図5下段の曲線L3に示すように、圧力センサ29の検出値が急激に増大した時刻T2が、バンプ電極BMの接触時点として検出される。なお、上記の下降動作は、バンプ電極BMの温度を値TM1(<TMm)に維持した状態で実行されるため、バンプ電極BMは未だ溶融していない。すなわち、バンプ電極BMはステップS13,S14においては固相状態を有している。また、圧力センサ29のドリフトの影響を好適に抑制するため、圧力センサ29は時刻T1においてリセットされることが好ましい。
【0093】
このようにして圧力センサ29によってバンプ電極BMの接触が検出されると、ヘッド22の駆動動作(下降動作)は停止される。また、この時刻T2におけるヘッド22のZ方向位置が、位置検出センサ31によって検出される。
【0094】
ここでは、2つの保持部材(ヘッド22およびステージ12)の相互間距離DHに応じた物理量(詳細には変位量)として、ヘッド22のZ方向位置Hを用いる。ヘッド22が下降してヘッド22のZ方向位置Hの値が低減すると相互間距離DHも低減する。逆に、ヘッド22が上昇してヘッド22のZ方向位置の値が増大すると相互間距離DHも増大する。このように、ヘッド22のZ方向位置は、2つの保持部材22,12の相互間距離DHに応じて変更される物理量(変位量)の1つである。
【0095】
上記の接触時刻T2において、相互間距離DHに応じた変位量の値(ここでは、ヘッド22のZ方向位置H)が検出され、当該時刻T2における検出値が変位量に関する基準値SVとして検出される。
【0096】
以後、相互間距離DHに関する変位量(ヘッド22のZ方向位置H)が、基準値SVに対して相対的に制御されることによって、相互間距離DHが制御される。この実施形態においては、ヘッド22のZ方向位置Hが基準値SVで維持されるように、2つの保持部材22,12の相互間距離DHが制御される。より詳細には、時刻T2から時刻T7(
図5参照)までの期間においては、ヘッド22のZ方向位置は、接触時点T2での位置SVに維持され、変更されない。すなわち、両被接合物91,92の接触時点T2でのヘッド22のZ方向位置Hがそのまま維持される。
【0097】
このような相互間距離DHの制御(換言すれば、ヘッド22の高さ制御)が開始された後、ステップS15の処理が実行される。ただし、ヘッド22等による加熱処理等に伴ってヘッド22、ステージ12、チップ92および基板91等が熱膨張する。そのため、ヘッド22とステージ12との相互間距離DHが同じ値に維持されるとしても、ヘッド22およびステージ12等の熱膨張量(総熱膨張量)に応じて、ステージ12に保持された基板91とヘッド22に保持されたチップ92との相互間距離DC(
図2参照)等は変動(低減ないし増大)する。より詳細には、当該相互間距離DCの他、基板91のバンプ電極
BM1とチップ92のバンプ電極BM2との相互間距離DB、および基板91の下地金属UM1とチップ92の下地金属UM2との相互間距離DU等が変動する(
図6参照)。
【0098】
ステップS15においては、まず、バンプ電極BMを温度TM1から融点(溶融温度)TMmにまで昇温する温度上昇処理が実行される(時刻T3〜時刻T4)。このとき、上述のようなヘッド22の高さ制御によってヘッド22は同じ位置に固定されている。しかしながら、温度TM1から温度TMmへの温度上昇(ΔTU1=TMm−TM1)によって、ヘッド22のリニアセンサ31の位置からヘッド22の下方先端位置(詳細にはチップ92の下方先端位置)までのZ方向長さが熱膨張により増大する。このような膨張量ΔEX1は、たとえば、5℃の温度上昇(ΔTU1=5℃)で、数μm(マイクロメートル)程度発生する。そのため、ヘッド22の位置が固定されている状態において、チップ92と基板91との相互間距離DCは更に低減され、チップ92と基板91とはさらに接近する。これにより、2つの被接合物91,92の表面の相互間に挟まれているバンプ電極BMに加わる圧力が増大する(
図5の変化曲線L3、および
図6の左端から3番目の状態を参照)。
【0099】
そして、バンプ電極BMの温度が融点TMmに到達すると、バンプ電極BMが溶融する(時刻T4)。換言すれば、バンプ電極BMの状態が固相状態から液相状態へと遷移する。このとき、バンプ電極BMに加わっていた圧力は、液相状態への遷移に応じて急激に低減する。そのため、バンプ電極BMの当該状態遷移は、圧力センサ29によって検出することができる。具体的には、
図5の変化曲線L3に示すように、時刻T3の後において圧力センサ29による検出圧力値Pは一旦増加した後に、今度は逆に急激に減少する。たとえば、10N(ニュートン)程度の力に対応する圧力が加わっていた状態から、0.1N(ニュートン)程度の力に対応する圧力が加わる状態へと遷移する。この低下時点T4が溶融時点として圧力センサ29によって検出されればよい。
【0100】
ここにおいて、この時点T4においてもヘッド22のZ方向位置(高さ)Hが時刻T2時点と同じ値になるように、ヘッド22の位置が固定されている。そのため、バンプ電極BMが潰れてしまうことを回避することが可能である。たとえば仮に、圧力センサを用いた圧力制御によって、制御可能な最小圧力値でバンプ電極を加圧する技術を比較例として想定すると、当該最小圧力値(たとえば1N程度の力に対応する圧力)は比較的大きいため、当該比較例においてバンプ電極BMは加圧により潰れてしまう。なお、制御可能な最小圧力値は、圧力センサのドリフトにより経時的に蓄積される誤差の影響等によって、或る値(たとえば1N程度の力に対応する圧力)よりも小さくすることが困難である。一方、この実施形態によれば、上述のように、バンプ電極BMが潰れてしまうことを回避することが可能である。
【0101】
その後、さらに加熱処理が継続され、バンプ電極BMが融点TMmから温度TM2にまで更に昇温する温度上昇処理(時刻T4〜時刻T5)が実行される。温度TM2は、融点近傍且つ融点以上の温度である、とも表現される。ここでは、温度TM2は、融点TMよりも値ΔTU2(たとえば5℃)大きな温度であるものとする。
【0102】
このときも、ヘッド22の高さ制御によってヘッド22は同じ位置に固定されている。すなわち、ヘッド22の高さHは基準値SVに維持されたままである。そのため、Mバンプ電極BMの潰れを回避することが可能である。また、温度TMmから温度TM2からへの温度上昇(ΔTU2=TM2−TMm)によって、ヘッド22のリニアセンサ31の位置からヘッド22の下方先端位置(詳細にはチップ92の下方先端位置)までのZ方向長さが熱膨張によって更に増大する。このような熱膨張による膨張量ΔEX2は、たとえば、5℃の温度上昇(ΔTU2=5℃)で、数μm(マイクロメートル)程度発生する。そのため、ヘッド22の位置が固定されている状態において、チップ92と基板91との相互間距離DC(および下地金属UM1,UM2の相互間距離DU等)は更に低減され、チップ92と基板91とはさらに接近する。これにより、2つの被接合物91,92の表面の相互間に挟まれているバンプ電極BMに加わる圧力が再び増大する(
図6の左端から5番目の状態を参照)。したがって、膨張量(ΔEX1+ΔEX2)の発生に伴って、バンプ電極に対する押し付け力を十分に作用させバンプ電極の材料(たとえば、鉛フリーハンダの構成要素(スズ(Sb)、銀(Ag)、銅(Cu)等))を当該バンプ電極内部でさらに拡散させてバンプ電極の合金化を促進し、当該バンプ電極による接合を確実化することが可能である。
【0103】
このような温度TM2による加熱処理は所定時間(たとえば数十秒)継続して実行される。この処理期間(時刻T5〜時刻T6)においても、バンプ電極BMの潰れを回避することが可能であるとともに、膨張量(ΔEX1+ΔEX2)の発生に伴って、バンプ電極に対する押し付け力を十分に作用させてバンプ電極の合金化を促進すること等が可能である。
【0104】
その後の時刻T6において、ヘッド22の冷却処理が開始される(ステップS19)。
【0105】
この冷却処理に応じて、バンプ電極BMの温度は(融点TMm以下の温度へ向けて)低下していく。そして、バンプ電極BMの温度が融点TMmにまで下降すると、今度はバンプ電極BMは液相状態から固相状態へと遷移して固化(硬化)する(時刻T7)。このときも、ヘッド22の高さ制御によってヘッド22は同じ位置に固定されている。すなわち、ヘッド22の高さHは基準値SVに維持されたままである。ただし、温度TM2から温度TMmへの降温処理によって、ヘッド22のリニアセンサ31の位置からヘッド22の先端部付近までの長さが熱収縮によって低減する。このような収縮量(低減量)ΔCP2は、たとえば、5℃の温度下降で、数μm(マイクロメートル)程度発生する。そのため、ヘッド22の位置が固定されている状態において、チップ92と基板91との相互間距離DC(および下地金属UM1,UM2の相互間距離DU)は増大し、チップ92と基板91とは若干量離れていく。これにより、2つの被接合物91,92の表面の相互間に挟まれているバンプ電極BMのZ方向長さが若干量(たとえば5マイクロメートル)大きくなる(
図6の右端の状態を参照)。端的に言えば、バンプ電極BMが引き上げられる。したがって、両被接合物91,92の相互間距離を若干引き戻して(増大させて)、適切な高さのバンプ電極BMを形成することが可能である。
【0106】
バンプ電極BMの温度が融点TMm以下の温度(たとえば、融点TMmより2℃低い温度)にまで低下した時点(詳細にはバンプ電極BMが固化した直後の時点(たとえば時刻T7の直後の時刻))において、接合装置1は、ヘッド22によるチップ92の保持(吸着)を解除し、ヘッド22を上昇させる。固化したバンプ電極BMによってチップ92と基板91とが接合されているため、このような吸着解除後におけるヘッド22上昇時には、ヘッド22のみが上昇していく(チップ92は上昇しない)。この結果、
図6の右端の状態を有するバンプ電極BMがチップ92と基板91との間に形成される。具体的には、基板91とチップ92とを接続するバンプ電極BMが所望の高さを有する状態で適切に形成され、両被接合物91,92が当該バンプ電極BMを介して接合される。
【0107】
たとえば、バンプ電極BMの厚さが8μm(マイクロメートル)であるときには、時刻T2において上下の下地金属UMの相互間距離DUは、16(=8+8)μm(マイクロメートル)である(
図6の左端から2つ目の状態)。その後、時刻T4においては、熱膨張量ΔEX1(ここでは5μm(マイクロメートル))に起因して、相互間距離DUは、11(=16−ΔEX1=16−5)μm(マイクロメートル)に低減される。また、時刻T5から時刻T6までの期間においては、さらなる熱膨張量ΔEX2(ここでは5μm(マイクロメートル))に起因して、相互間距離DUは、6(=(16−EX1)−ΔEX2=11−5)μm(マイクロメートル)にさらに低減される。その後、時刻T7においては、熱収縮量ΔCP2(=5)に起因して、相互間距離DUは11(=(16−EX1−ΔEX2)+ΔCP2=6+5)μm(マイクロメートル)に増大する。
【0108】
なお、ここでは、バンプ電極BMの温度が融点TMm以下の温度にまで低下し、バンプ電極BMが固化した後に、ヘッド22によるチップ92の保持(吸着)が解除される態様を例示しているが、これに限定されない。具体的には、バンプ電極BMの温度が温度TM2から所定の温度(たとえば融点TMmよりも高い温度)にまで低下した時点で(あるいは温度TM2で)、バンプ電極BMが固化する前に、ヘッド22によるチップ92の保持(吸着)が解除されるようにしてもよい。
【0109】
以上のようにして、バンプ電極BMの高さが適切な値に調節された状態で、チップ92が当該バンプ電極BMを介して基板91に接合され、半導体デバイスが製造される。
【0110】
ところで、上述のように、上記特許文献1に記載の圧力制御技術においては、チップと基板との相互間の距離を制御することは困難であり、たとえば、当該距離が小さくなり過ぎることなどが生じ得る。
【0111】
一方、上記実施形態によれば、チップ92と基板91との相互間距離が適切に制御される。
【0112】
より詳細には、バンプ電極BMを温度TM1に昇温した状態で両被接合物91,92をバンプ電極BMを介して接触させ、その時点でのヘッド22のZ方向高さHが基準値SVとして取得される。そして、ヘッド22のZ方向高さが当該基準値SVに対して相対的に制御(詳細には、一定値に維持)された状態で、更なる加熱処理によってバンプ電極BMは融点TMm以上の温度にまで昇温されてバンプ電極BMが溶融される。このとき、ヘッド22のZ方向高さHが当該基準値SVに対して相対的に制御(詳細には、一定値に維持)されるため、上記従来技術のように圧力で制御する場合に比べて、両被接合物91,92の相互間距離DC(および下地金属UM1,UM2の相互間距離DU)を適切に制御することが可能である。
【0113】
通常、室温RTから融点TMmまでバンプ電極BMを昇温すると、ヘッド22の下端位置およびヘッド22に保持されたチップ92の下端位置は、ヘッド22およびチップ92の熱膨張によって、大きく(たとえば数十マイクロメートル)下降する。また、この熱膨張量には両被接合物91,92の材料によるバラツキ、あるいは両被接合物91,92の個体差によるバラツキ等も存在する。さらには、チップ92の厚み自体のバラツキ(個体差)、基板91の厚み自体のバラツキ(個体差)等も存在する。そのため、これらの下端位置を正確に制御することは容易ではない。
【0114】
これに対して、上記実施形態においては、温度TM1まで昇温した状態で両被接合物91,92を接触させており、この接触時点T2での両保持部材12,21の相互間距離DHを基準にして、両被接合物91,92の相互間距離DCが制御されている。
【0115】
そのため、まず、チップ92の厚み自体のバラツキ(個体差)、基板91の厚み自体のバラツキ(個体差)等を吸収することが可能である。
【0116】
また、温度TM1にまで昇温した状態で両被接合物91,92を接触させているので、熱膨張による影響が抑制される。
【0117】
具体的には、まず、室温RTから温度TM1までの温度上昇に伴う熱膨張の影響を排除することが可能である。また、温度TM1から所定の温度(TMm,TM2等)までの昇温による熱膨張量は、室温RTから当該所定の温度までの昇温による熱膨張量よりも低減される。たとえば、温度TM1から融点TMmへの昇温による熱膨張量ΔEX1は、室温RTから融点TMmへの昇温による熱膨張量(たとえば数十マイクロメートル)よりも低減され、比較的小さな温度差ΔTU1(たとえば5℃)に対応する比較的小さな値(たとえば数マイクロメートル)で済む。そのため、熱膨張に関するバラツキも低減され、相互間距離DC,DU(ひいてはバンプ電極BMの高さ)を良好に制御することが可能である。なお、温度TM1から温度TM2への昇温による熱膨張量(ΔEX1+ΔEX2)についても同様である。
【0118】
また特に、温度TM1から温度TM2にまで昇温した状態で加熱処理が継続される(時刻T4〜時刻T7(特に時刻T5〜時刻T6))。このとき、ヘッド22等の熱膨張により2つの被接合物91,92の相互間距離がさらに低減され、2つの被接合物91,92の表面の相互間に挟まれているバンプ電極BMに加わる圧力が増大する。したがって、溶融状態のバンプ電極BM内部での拡散を促進し、当該バンプ電極BMの合金化を促進することが可能である。
【0119】
また、上記実施形態によれば、両被接合物91,92が2つの保持部材12,22に保持された状態で、対向配置されて接合される。したがって、チップの自重のみで当該チップを基板上に配置する場合に比べて、チップ92の反りの発生および基板の反りの発生を抑制することが可能である。
【0120】
また、上記特許文献1に記載の技術においては摺動式(低剛性)のヘッドが用いられているため、チップを基板に接近させる際にチップの揺れが収束するまでに時間を要する。これに対して、上記実施形態においては、非摺動式のヘッド22が用いられている。換言すれば、高剛性のヘッド22が用いられている。詳細には、フローティング機構(摺動機構)を有しない剛体のヘッド22がボールネジ等のZ軸昇降駆動機構26で駆動される。より詳細には、ヘッド22は、Z軸昇降駆動機構26によって駆動されるベース部材221とベース部材221に対して圧力センサ29を介して固定されている先端側部材222とを有している。そのため、チップを基板に接近させる際にヘッド22を高速に移動しても、チップの揺れが収束するまでに要する時間は比較的短い。すなわち、チップを短時間で配置することが可能であり、チップ配置動作の高速化を図ることが可能である。換言すれば、基板上へのチップの平面配置動作に要する処理時間を短縮することが可能である。
【0121】
また、上記実施形態においては、基本的には、バンプ電極BMの高さを主に圧力制御以外の制御手法で制御している。上述のように一般的には、圧力センサによる圧力検出値のドリフト等に起因する誤差のために、圧力センサを用いて正確な圧力制御を行うことは困難である。一方、上記実施形態においては、当該微小な誤差による影響を回避可能な2つの時点でのみ圧力センサの検出値を利用しているため、そのような問題を回避することも可能である。
【0122】
<2.第2実施形態>
第2実施形態は、第1実施形態の変形例である。以下では、相違点を中心に説明する。
【0123】
上記第1実施形態では、時刻T4から時刻T7に至る期間にて、ヘッド22の高さを一定に維持する態様が例示されている。
【0124】
この第2実施形態では、時刻T4から時刻T7に至る期間にて、2つの保持部材の相互間距離に応じた変位量(ここでは、ヘッド22の高さH)を変更する態様を例示する。より詳細には、2つの被接合物91,92の相互間距離DCがさらに所定距離ΔHU1大きくなるように、ヘッド22を所定距離ΔHU1上昇させる。すなわち、両保持部材12,22の相互間距離を値ΔHU1増大する。これによれば、当該期間におけるバンプ電極BMの潰れ過ぎが防止される。
【0125】
図7は、第2実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
図7を
図5と比較すると判るように、この第2実施形態においては、時刻T4から時刻T7に至る期間において、ヘッド22の高さが変更される。特に、温度TM2による加熱期間(時刻T5〜時刻T6)において、2つの被接合物の相互間距離DCが所定距離ΔHU1さらに大きくなるように、ヘッド22が上昇している。
【0126】
図7に示すように、時刻T4までは上記第1実施形態と同様の動作が行われる。
【0127】
その後、
図7の中段の曲線L2(L2b)に示すように、時刻T4から時刻T5に至る期間においてヘッド22が徐々に上昇し、時刻T5においては時刻T4での高さよりも若干量ΔHU1(たとえば、5μm)高い位置へと到達する。
【0128】
時刻T5から時刻T6に至る期間においては、時刻T5での到達位置が維持される。
【0129】
その後、時刻T6から時刻T7に至る期間においてヘッド22が徐々に下降し、時刻T7においては時刻T6での高さよりも若干量ΔHD1(たとえば、2.5μm)低い位置へと到達する。なお、値ΔHU1,ΔHD1は、相互間距離DU(,DC等)を調整するための調整量であるとも表現される。
【0130】
以後、第1実施形態と同様の動作が行われる。
【0131】
このような態様は、バンプ電極BMの厚さが比較的小さいときに特に有用である。
【0132】
図8は、
図6に対応する状態遷移図である。
図8を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0133】
たとえば、バンプ電極BMの厚さが5μm(マイクロメートル)であるときには、時刻T2において上下の下地金属UMの相互間距離DUは、10(=5+5)μm(マイクロメートル)である(
図8の左端から2つ目の状態)。その後、時刻T4においては、熱膨張量ΔEX1(ここでは5μm(マイクロメートル))に起因して、相互間距離DUは、5(=10−ΔEX1=10−5)μm(マイクロメートル)に低減される。
【0134】
また、時刻T5から時刻T6までの期間においては、さらなる熱膨張量ΔEX2(ここでは5μm(マイクロメートル))に起因して、理論的には相互間距離DUは、0(=(10−ΔEX1)−ΔEX2=5−5)μm(マイクロメートル)にさらに低減されてしまう(
図9の中央参照)。このように、バンプ電極BMが潰れ過ぎてしまうことがある。
【0135】
そこで、この実施形態においては、このようなバンプ電極BMの潰れ過ぎを防止するべく、ヘッド22を上昇させて、ヘッド22とステージ12との相互間距離DHを若干量ΔHU1(ここでは5μm(マイクロメートル))増大させる。この結果、2つの被接合物91,92の相互間距離DUも値ΔHU1増大する。たとえば、
図9の右端に示すように、相互間距離DUは、5(=10−ΔEX1−ΔEX2)+ΔHU1=0+5)になる。これにより、時刻T5から時刻T6までの期間においても、適切な大きさの相互間距離DU(たとえば5μm(マイクロメートル))を維持することが可能である。
【0136】
その後、時刻T7においては、熱収縮量ΔCP2(=5μm)に起因して、相互間距離DUは、10(=(10−ΔEX1−ΔEX2+ΔHU1)+ΔCP2=5+5)μm(マイクロメートル)に増大しようとする(
図10の中央参照)。ただし、ここでは、バンプ電極BMのZ方向高さが大きくなり過ぎることを防止するため、若干量ヘッド22を下降させて、ヘッド22とステージ12との相互間距離DHを若干量(ΔHD1(たとえば、2.5μm))減少させる。この結果、2つの被接合物91,92の相互間距離DUも値ΔHD1減少し、当該相互間距離DUは、7.5(=(10−ΔEX1−ΔEX2+ΔHU1+ΔCP2)−ΔHD1=10−2.5)μm(マイクロメートル)になる(
図10の右端参照)。これにより、時刻T7以降の期間においても、適切な大きさの相互間距離DU(たとえば7.5μm(マイクロメートル))を維持することが可能である。換言すれば、最終的に形成されるバンプ電極BMのZ方向高さを適切な値に制御することができる。
【0137】
ここにおいて、上記の調整量ΔHU1,ΔHD1は、バンプ電極BMの高さ、最終的な相互間距離DUの目標値および各膨張量ΔEX1,ΔEX2,ΔCP2等に基づいて設定されればよい。換言すれば、調整量ΔHU1,ΔHD1は、両被接合物91,92の相互間距離DCを所望の値に制御する(目標値に追従させる)ための値として算出されればよい。
【0138】
具体的には、まず、上記の各膨張量ΔEX1,ΔEX2および収縮量ΔCP2は、予め実験等によって取得されればよい。
【0139】
詳細には、ヘッド22等の熱膨張に伴うヘッド22の下端位置(あるいはヘッド22に保持されたチップ92の下端位置)BPの温度による変化(端的に言えば熱膨張量の温度変化)を事前測定によって取得しておく。より詳細には、ヘッド22の下端位置BPを、融点TMm近傍の所定温度範囲(たとえば、温度(TMm−20℃)と温度(TMm+50℃)との間)における複数の温度(たとえば、1℃刻みの複数の温度)のそれぞれにおいて予め取得しておく。
【0140】
同様に、ステージ12の熱膨張に伴うステージ12の上端位置(あるいはステージ12に保持された基板91の上端位置)の温度による変化(端的に言えば熱膨張量の温度変化)を事前測定によって取得しておく。
【0141】
そして、たとえば、融点TMm時点での下端位置BPと温度TM1での下端位置BPとの差分値(詳細にはその絶対値)を膨張量ΔEX1として算出すればよい。また、融点TMm時点でのステージ12の上端位置と温度TM1でのステージ12の上端位置との差分値(詳細にはその絶対値)をも加えた値を膨張量ΔEX1として算出することが、より好ましい。なお、膨張量ΔEX1は、ヘッド22等の熱膨張による2つの被接合物91,92の相互間距離DCの変化量(当該相互間距離DCの減少量)であるとも表現される。
【0142】
このように、ヘッド22等の熱膨張による2つの被接合物91,92の相互間距離DCの変化量とバンプ電極BMの温度との対応関係RLを事前測定によって取得しておき、当該対応関係RLに基づいて膨張量ΔEX1が求められればよい(詳細には推定されればよい)。
【0143】
また、膨張量ΔEX2も同様であり、膨張量ΔEX2は、事前測定によって得られた対応関係RLに基づいて算出されればよい。詳細には、たとえば、温度TM2での下端位置BPと融点TMm時点での下端位置BPとの差分値(詳細にはその絶対値)が膨張量ΔEX2として算出されればよい。また、融点TMm時点でのステージ12の上端位置と温度TM1でのステージ12の上端位置との差分値(詳細にはその絶対値)をも加えた値が膨張量ΔEX2として算出されることが、より好ましい。
【0144】
収縮量ΔCP2についても同様である。収縮量ΔCP2も、上記の対応関係RLに基づいて算出されればよい。
【0145】
なお、ここでは、2つの保持部材12,22の熱膨張が考慮されて、2つの被接合物91,92の相互間距離DCの変化量が事前測定される態様が例示されているが、これに限定されない。たとえば、2つの保持部材12,22の熱膨張のみならず、2つの被接合物91,92自体の熱膨張量もが考慮されて、2つの被接合物91,92の相互間距離DCの変化量が事前測定されるようにしてもよい。あるいは、2つの被接合物91,92の熱膨張量のみが考慮されてもよい。また、2つの保持部材12,22のうち一方のみの熱膨張量が考慮されてもよい。2つの被接合物91,92のうちの一方のみの熱膨張量が考慮されてもよい。このように、対応関係RLにおいては、たとえば、ヘッド22とステージ12とチップ92と基板91とのうちの少なくとも1つの熱膨張量とバンプ電極BMの温度との関係が、事前測定によって得られればよい。ただし、2つの被接合物91,92の相互間距離DCをより正確に制御するためには、これらの要素22,12,92,91のうち、1または2以上の主要な要素(その熱膨張量が比較的大きいもの)を考慮することが好ましい。
【0146】
そして、調整量ΔHU1は、次式に基づいて算出されればよい。
【0148】
なお、値DU1は、時刻T5〜時刻T6の期間における相互間距離DUの目標値であり、値BH2は、上下のバンプ電極BMの合計高さ(たとえば10マイクロメートル)である。ヘッド22の高さHを調整量ΔHU1増大(上昇)することによれば、2つの被接合物91,92の相互間距離DCを所望の値(目標値)DU1に調整することができる。
【0149】
同様に、調整量ΔHD1は、次式に基づいて算出されればよい。なお、値DU2は、時刻T7における相互間距離DUの目標値(最終的な相互間距離DUの目標値)である。ヘッド22の高さHを調整量ΔHD1低減(下降)することによれば、2つの被接合物91,92の相互間距離DCを所望の値(目標値)DU2に調整することができる。
【0151】
なお、この実施形態においては、時刻T4からヘッド22の上昇を開始しているが、これに限定されない。たとえば、時刻T3からヘッド22の上昇を開始するようにしてもよい。これによれば、バンプ電極BMの潰れ過ぎをより確実に防止することが可能である。
【0152】
<3.第3実施形態>
第3実施形態も、第1実施形態の変形例である。以下では、相違点を中心に説明する。
【0153】
この第3実施形態においても、時刻T4から時刻T7に至る期間にて、ヘッド22の高さを変更する態様を例示する。ただし、第2実施形態とは逆に、2つの被接合物91,92の相互間距離DCがさらに所定距離「小さく」なるように、ヘッド22を所定距離「下降」させる。具体的には、ヘッド22を値ΔHD2下降して、両保持部材12,22の相互間距離DCを値ΔHD2低減する。
【0154】
図11は、第3実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。
図11を
図5と比較すると判るように、この第3実施形態においては、時刻T4から時刻T7に至る期間において、ヘッド22の高さが変更される。特に、温度TM2による加熱期間(時刻T5〜時刻T6)において、2つの被接合物の相互間距離DCが所定距離ΔHD2さらに小さくなるように、ヘッド22が下降している。
【0155】
図11に示すように、まず、時刻T4までは上記第1実施形態と同様の動作が行われる。
【0156】
その後、
図11の中段の曲線L2(L2c)に示すように、時刻T4から時刻T5に至る期間においてヘッド22が徐々に下降し、時刻T5においては時刻T4での高さよりも若干量ΔHD2(たとえば、5μm)低い位置へと到達する。
【0157】
時刻T5から時刻T6に至る期間においては、時刻T5での到達位置が維持される。
【0158】
その後、時刻T6から時刻T7に至る期間においてヘッド22が徐々に上昇し、時刻T7においては時刻T6での高さよりも若干量ΔHU2(たとえば、5μm)高い位置へと到達する。なお、値ΔHD2,ΔHU2は、それぞれ、相互間距離DU(,DC等)を調整するための調整量であるとも表現される。
【0159】
以後、第1実施形態と同様の動作が行われる。
【0160】
このような態様は、バンプ電極BMの厚さが比較的大きいときに特に有用である。
【0161】
図12は、
図6に対応する状態遷移図である。
図12を参照しながらさらに詳細に説明する。
【0162】
たとえば、バンプ電極BMの厚さが20μm(マイクロメートル)であるときには、時刻T2において上下の下地金属UMの相互間距離DUは、40(=20+20)μm(マイクロメートル)である(
図12参照)。その後、時刻T4においては、熱膨張量ΔEX1(ここでは5μm(マイクロメートル))に起因して、相互間距離DUは、35(=40−ΔEX1=40−5)μm(マイクロメートル)に低減される。
【0163】
また、時刻T5から時刻T6までの期間においては、さらなる熱膨張量ΔEX2(ここでは5μm(マイクロメートル))に起因して、理論的には相互間距離DUは、30(=(40−ΔEX1)−ΔEX2=35−5)μm(マイクロメートル)にさらに低減される(
図13の中央参照)。ただし、比較的厚いバンプ電極BMの合金化を促進するためには、バンプ電極BMの潰れは必ずしも十分ではない。
【0164】
そこで、この実施形態においては、バンプ電極BMの潰れをさらに増大するべく、ヘッド22を下降させて、ヘッド22とステージ12との相互間距離DHを若干量(ΔHD2)減少させる。この結果、2つの被接合物91,92の相互間距離DUも値ΔHD2減少する。たとえば、
図13の右端に示すように、相互間距離DUは、20(=(40−ΔEX1−ΔEX2)−ΔHD2=30−10)になる。これにより、時刻T5から時刻T6までの期間において、適切な大きさの相互間距離DU(たとえば20μm(マイクロメートル))を維持することが可能である。これによれば、バンプ電極BMに対する圧力を増大させ、比較的厚いバンプ電極BMの合金化を促進することが可能である。
【0165】
その後、時刻T7においては、熱収縮量ΔCP2(=5)に起因して、相互間距離DUは25(=(40−ΔEX1−ΔEX2−ΔHD2)+ΔCP2=20+5)μm(マイクロメートル)に増大しようとする(
図14の中央参照)。ただし、ここでは、バンプ電極BMのZ方向高さが十分でないため、ヘッド22を若干量ΔHU2上昇させて、ヘッド22とステージ12との相互間距離DHを若干量ΔHU2(たとえば、5μm)増大させる。この結果、2つの被接合物91,92の相互間距離DUは値ΔHU2増大し、当該相互間距離DUは、30(=(40−ΔEX1−ΔEX2−ΔHD2+ΔCP2)+ΔHU2=25+5)μm(マイクロメートル)になる(
図14の右端参照)。これにより、時刻T7以降の期間においても、適切な大きさの相互間距離DU(たとえば30μm(マイクロメートル))を維持することが可能である。換言すれば、最終的に形成されるバンプ電極BMのZ方向高さを適切な値に制御することができる。
【0166】
ここにおいて、上記の調整量ΔHD2,ΔHU2は、バンプ電極BMの高さ、最終的な相互間距離DUの目標値および各膨張量ΔEX1,ΔEX2,ΔCP2等に基づいて設定されればよい。
【0167】
具体的には、調整量ΔHD2は、式(3)に基づいて算出されればよい。
【0169】
また、調整量ΔHU2は、式(4)に基づいて算出されればよい。
【0171】
<4.第4実施形態>
この第4実施形態においては、時刻T4から時刻T6(時刻T7)までの期間内に(バンプ電極BMの溶融中に)アライメント動作が実行される態様について例示する。第4実施形態は、第1実施形態の変形例であり、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0172】
上述のように、ステップS11における昇温動作においては、基板91の熱膨張等によって、チップ92のバンプ電極BMと基板91のバンプ電極BMとが水平方向において例えば20μm(マイクロメートル)ずれる。
【0173】
その後、上述のように、ステップS12のアライメント動作(時刻T1)によれば、チップ92と基板91とを水平方向において正確に位置決めすることができる。
【0174】
しかしながら、ステップS12のアライメントを行ったとしても、
図15に示すように、ステップS14(時刻T2)での両バンプ電極BMの接触時において両バンプ電極BMの物理的な接触が生じ、当該物理的な接触に起因して、両バンプ電極BMの相互間において水平方向の位置ずれΔX(たとえば、数μm(マイクロメートル))が発生することがある。より詳細には、両バンプ電極BMの接触時点T2においてヘッド22とチップ92との位置ずれがヘッド22によるチップ92の吸着部分で生じ、両バンプ電極BMの相互間で位置ずれΔX2が発生することがある。
【0175】
そこで、この第4実施形態では、バンプ電極BM溶融後の或る時点(ステップS15の時刻T4〜時刻T7の期間(
図5参照)内の或る時点(たとえば時刻T5))において、再度のアライメント動作(
図16参照)が実行される。
【0176】
バンプ電極BMの溶融中に再度のアライメント動作が行われることによって、両バンプ電極BMの相互間の水平方向の位置が修正され、両バンプ電極相互間の位置ずれが低減される。たとえば、当該両バンプ電極BMの相互間における水平方向の位置ずれは、所定の許容誤差以下(たとえば、0.1μm(マイクロメートル)程度)にまで低減される。
【0177】
このように、バンプ電極BMが溶融している期間において、両被接合物91,92の水平平面内におけるアライメント動作(水平方向におけるアライメント動作)が実行されることによれば、両バンプ電極BMの相互間における水平方向の位置ずれを、非常に小さな値に低減することが可能である。すなわち、両被接合物91,92の水平方向における位置を正確に合わせることが可能である。
【0178】
また、バンプ電極BMの溶融期間中のアライメント動作時には、ヘッド22のヒータによってチップ92を加熱しチップ92のバンプ電極BMの温度を上昇させることが好ましい。たとえば、融点TMmより大きな温度TM2にまで昇温されたステップS15の時刻T5〜時刻T6の期間(
図5参照)内の或る時点でアライメント動作が行われることが好ましい。
【0179】
なお、ステージ12内のヒータによる加熱を行わない場合には、基板91のバンプ電極BM1はチップ92のバンプ電極BM2からの熱供給により溶融する。たとえば、チップ92のバンプ電極BM2と基板91のバンプ電極BM1とが水平方向にずれると、バンプ電極BM2からバンプ電極BM1への熱伝導量が不十分になり、基板91側のバンプ電極BM(
図17のバンプ電極BM内のハッチング部分)が固化してしまう可能性が高くなる。したがって、このような固化を回避ないし抑制するためには、チップ92のバンプ電極BM2を十分に高い温度TM2(あるいは温度TM2よりも大きな値TM3)にまで上昇させることが好ましい。これによれば、バンプ電極の基板91側における固化を抑制しつつ良好にアライメント動作を行うことが可能である。
【0180】
また、バンプ電極BM1が仮に固化してしまった場合においても、チップ92のバンプ電極BM2を融点に対して十分に高い温度(値TM2、あるいは値TM2よりも大きな値TM3)まで昇温することによって、一旦固化してしまったバンプ電極BM1を再度溶融させることが可能である。特に、溶融後に一旦固化したハンダバンプの融点は元の融点よりも上昇していることがある。たとえば、ハンダを構成する複数の成分が混ざり合って合金化すると、当該合金化後の融点は当該合金化前の融点よりも高くなることがある。あるいは、バンプ電極BMのハンダと下地金属UM(銅あるいは金等)とが混ざり合って合金化すると、当該合金化後の融点は当該合金化前の融点よりも高くなることがある。そのため、チップ92のバンプ電極BM2を当該合金化後の融点よりも高い温度(値TM2あるいはそれよりも大きな値TM3)まで昇温することが好ましい。
【0181】
また、アライメント時において値ΔTU2の温度上昇による熱膨張によって両被接合物91,92の相互間距離DCが小さくなり過ぎる場合には、ヘッド22の高さHを基準値SVに対して変更して両被接合物91,92の相互間距離DCを調整した状態でアライメント動作を実行するようにすればよい。そして、アライメント終了後に、ヘッド22の位置を元の位置に戻すようにすればよい。
【0182】
たとえば、時刻T5においてヘッド22の高さHを基準値SVから値ΔEX2上昇させて、両被接合物91,92の相互間距離DCを若干拡大させた状態でアライメント動作を実行する。そして、アライメント終了後に、ヘッド22の高さHを値ΔEX2下降させて、ヘッド22の位置を元の位置に戻すようにすればよい。
【0183】
また、第4実施形態に係る思想は、第2実施形態および第3実施形態に係る技術にも適用可能である。
【0184】
<5.第5実施形態>
この第5実施形態は、第4実施形態の変形例である。以下、第4実施形態との相違点を中心に説明する。
【0185】
第4実施形態においては、接触後の上下の両バンプ電極BMが接触状態を維持したままアライメントが行われる態様が示されている。
【0186】
この第5実施形態においては、両バンプ電極BMの接触後に当該両バンプ電極BMの接触を一旦解除し、2つの被接合物91,92の水平方向におけるアライメント動作が実行される。詳細には、一旦、ヘッド22を上昇させた後に、バンプ電極BMを溶融するとともにアライメント動作を行った後に、ヘッド22を下降して両バンプ電極BMを接合する。
【0187】
図18は、第5実施形態の動作を示すタイミングチャートである。また、
図19はバンプ電極BMに関する状態遷移図を示す図である。
図18および
図19を参照しながら説明する。
【0188】
上述のように、ステップS14(時刻T2)での両バンプ電極BMの接触時において両バンプ電極BMの物理的な接触が生じ、当該物理的な接触に起因して、両バンプ電極BMの相互間において水平方向の位置ずれΔX2(たとえば、数μm(マイクロメートル))が発生することがある(
図19の左端)。
【0189】
この第5実施形態では、両バンプ電極BMの接触を検出し両バンプ電極BMの接触時点でのヘッド22の高さHを基準値SVとして記憶した後に、当該両バンプ電極BMの接触を一旦解除する(
図19の左端から2つ目の状態を参照)。具体的には、ヘッド22を上昇し、2つの被接合物91,92の相互間距離DCを増大させて、両バンプ電極BMの接触を解除する。
【0190】
その後、バンプ電極BM2が溶融される(
図19の左から3つ目の状態を参照)。なお、この時点においては、バンプ電極BM1は溶融されずバンプ電極BM2のみが溶融されるようにしてもよい。
【0191】
そして、2つの被接合物91,92の水平方向におけるアライメント動作が実行される(
図19の左端から4つ目の状態を参照)。
【0192】
つぎに、ヘッド22が下降されて、2つの保持部材22,12の相互間距離DHが低減され、2つの両被接合物91,92が接触する(
図19の右端の状態を参照)。詳細には、チップ92のバンプ電極BM2と基板91のバンプ電極BM1とが再び接触する。なお、この時点では、バンプ電極BM1が溶融されているため、時刻T2における固相状態での接触時に生じたような位置ずれは生じにくい。
【0193】
その後、第1実施形態等と同様に、基準値SVに基づく高さ制御動作等が実行される。
【0194】
このような態様によっても、バンプ電極BM1,BM2の相互間の接触に起因する位置ずれが適切に補正される。
【0195】
また、このようなバンプ電極BMの溶融期間中のアライメント動作時には、第4実施形態と同様に、ヘッド22のヒータによってチップ92を加熱しチップ92のバンプ電極BMの温度を上昇させることが好ましい。
【0196】
<6.第6実施形態>
第6実施形態においては、第5実施形態に係るアライメント動作と第4実施形態に係るアライメント動作とが逐次的に実行される態様を例示する。なお、この実施形態では、ヘッド22のヒータによってチップ92のみが加熱されるものとする。
【0197】
図20は、第6実施形態に係る動作を示すタイミングチャートである。また、
図21および
図22は、バンプ電極の接合部分付近の状態遷移を示す図である。さらに、
図23はヘッド22の下端位置BP(ひいてはヘッド22の熱膨張量)とバンプ電極BMの温度との対応関係RLを示す図である。当該対応関係RLが、以下の動作に先立つ測定動作(事前測定)によって、予め取得されているものとする。これらの図を参照しながら第6実施形態に係る動作について説明する。なお、
図23においては、上記各実施形態における数値例とは異なる数値例が示されている。また、
図23においては、ヘッド22のヒータ温度とバンプ電極BMの温度との相関関係も併せて示されている。この実施形態においては、ヘッド22のヒータ温度を各温度に制御することによって、バンプ電極BMが各対応温度に制御される。
【0198】
まず、第5実施形態と同様の動作が実行される。
【0199】
上述のように、時刻T2での両バンプ電極BMの接触時において両バンプ電極BMの物理的な接触が生じ、当該物理的な接触に起因して、両バンプ電極BMの相互間において水平方向の位置ずれΔX2(たとえば、数μm(マイクロメートル))が発生する(
図21の左端の状態を参照)。
【0200】
そして、接合装置1は、両バンプ電極BMの接触時点でのヘッド22の高さHを基準値SVとして記憶した後に、当該両バンプ電極BMの接触を一旦解除する。具体的には、接合装置1は、ヘッド22を調整量ΔH31(たとえば22マイクロメートル)上昇し、2つの被接合物91,92の相互間距離DCを増大させて、両バンプ電極BMの接触を一旦解除する。
【0201】
その後、バンプ電極BM2が温度TM1から温度TM2まで上昇されバンプ電極BM2が溶融される(
図21の左から2つ目の状態を参照)(時刻T3〜時刻T5)。また、このとき、温度上昇(温度TM1(たとえば177℃)→温度TM2(たとえば225℃))に応じてヘッド22の熱膨張が生じ、ヘッド22の下端位置BPが値(ΔEX1+ΔEX2)(例えば19マイクロメートル)下降する(
図23参照)。その結果、両バンプ電極BMの相互間には3マイクロメートルの隙間が存在する。すなわち、両バンプ電極BM1,BM2は互いに接触していない。
【0202】
逆に言えば、温度TM1から温度TM2への昇温による膨張量(ΔEX1+ΔEX2)(換言すれば事前測定値(ここでは19マイクロメートル))を考慮して、両バンプ電極BM1,BM2が接触しない程度に、予めヘッド22が調整量ΔH31上昇されている。調整量ΔH31は、事前測定された膨張量(ΔEX1+ΔEX2)(19マイクロメートル)よりも大きな値に(たとえば、22マイクロメートル)に設定されればよい。
【0203】
そして、2つの被接合物91,92の水平方向におけるアライメント動作が実行される(
図21の左端から3つ目の状態を参照)(時刻T5〜時刻T51)。
【0204】
その後、ヘッド22が調整量ΔH32(例えば5マイクロメートル)下降されて、2つの保持部材22,12の相互間距離DHが低減され、2つの両被接合物91,92が接触する(
図21の右端の状態を参照)(時刻T52)。詳細には、チップ92のバンプ電極BM2と基板91のバンプ電極BM1とが再び接触する。この再接触時点では、バンプ電極BM1が溶融されているため、時刻T2における固相状態での接触時に生じたような位置ずれは生じにくい。しかしながら、若干の位置ずれが生じることもある。
【0205】
そこで、この第6実施形態では、第4実施形態に係るアライメント動作と同様の動作がさらに実行される。すなわち、バンプ電極BMの溶融中に再度のアライメント動作(溶融中アライメント動作とも称する)が行われる(時刻T53〜時刻T56)。なお、時刻T53において水平方向における両被接合物91,92の位置ずれが既に許容誤差範囲内に収まっている場合には、当該再度のアライメント動作は行われないようにしてもよい。
【0206】
以下、バンプ電極BMの溶融中に行われる再度のアライメント動作について、さらに詳細に説明する。
【0207】
具体的には、溶融中アライメント動作中において、ヘッド22の高さHを基準値SVに対して変更して両保持部材21,22の相互間距離DHを増大し、両被接合物91,92の相互間距離DCを増大する(時刻T53〜時刻T54)。温度上昇による熱膨張等によって溶融中アライメント動作中に両被接合物91,92の相互間距離DCが小さくなり過ぎることを回避するためである。このような相互間距離DCの調整動作(増大動作)によれば、適切な相互間距離DCが確保され、アライメント動作を容易に行うことが可能である。
【0208】
また、この第6実施形態においては、上述のように、ステージ12内のヒータによる加熱が行われない。溶融中アライメント動作において上記のように両被接合物91,92の相互間距離DCが増大されると、バンプ電極BM2からバンプ電極BM1への熱伝導量が不十分になり、基板91側のバンプ電極BM(
図17のバンプ電極BM内のハッチング部分参照)が固化してしまう可能性がある。そこで、この第6実施形態では、上記のようにチップ92のバンプ電極BM2を十分に高い温度TM3(温度TM2よりも大きな値)にまで上昇させる(時刻T53〜時刻T54)。これによれば、バンプ電極の基板91側における固化を抑制しつつ良好にアライメント動作を行うことが可能である。
【0209】
このように、時刻T53〜時刻T54において、接合装置1は、バンプ電極BMを温度TM2(たとえば225℃)から温度TM3(たとえば234℃)へとさらに昇温しつつ、ヘッド22を調整量ΔH33(例えば9マイクロメートル)上昇させる。ヘッド22を上昇させることによって、両バンプ電極BMの相互間に発生する圧力を低減し、両バンプ電極BMが水平方向に動き易くなる。また、バンプ電極BMを温度TM3へと昇温することによって、バンプ電極BM1の固化を回避ないし抑制することが可能である。なお、この温度上昇(温度TM2から温度TM3への温度上昇)により、値ΔEX3(例えば4マイクロメートル)の更なる熱膨張(
図23参照)が発生し、両被接合物91,92の相互間距離DCは低減する。そのため、上記の値ΔH33(例えば9マイクロメートル)は、当該値ΔEX3をも考慮して比較的大きな値に決定されることが好ましい。具体的には、相互間距離DCが所望の値(たとえば(BH2+3)マイクロメートル)になるように、値ΔH33が決定されればよい。
【0210】
なお、ヘッド22の上昇後における相互間距離DCが時刻T2の時点での相互間距離DCよりも若干量大きくなるとしても、バンプ電極BMは溶融して液相状態を有しておりバンプ電極BMの粘性によって上下のバンプ電極BMが繋がった状態が維持されている(
図22の左端から2つ目の状態参照)。
【0211】
そして、時刻T54〜時刻T55において、チップ92と基板91との水平方向におけるアライメント動作が行われる。これにより、当該両バンプ電極BMの相互間における水平方向の位置ずれは、所定の許容誤差以下(たとえば、0.1μm(マイクロメートル)程度)にまで低減される。
【0212】
このアライメント終了後の時刻T55〜時刻T56において、ヘッド22が調整量ΔH34(たとえば10マイクロメートル)下降される。これにより、両被接合物91,92の相互間距離DCも基準状態(時刻T2)に対して値ΔH34低減され両バンプ電極BMが十分に加圧される。
【0213】
その後、ヘッド22が適宜の調整量ΔH35(例えば2マイクロメートル)上昇される。これにより、両被接合物91,92の相互間距離DC(換言すれば、バンプ電極BMの高さ)が所望の値(たとえば基準状態(時刻T2)の値BH2よりも5マイクロメートル小さな値(BH2−5))に調整される。逆に言えば、両被接合物91,92の相互間距離DCが所望の値となるような調整量ΔH35が決定され、当該調整量ΔH35による調整動作が実行される。
【0214】
そして、バンプ電極BMの温度が温度TM3から下降を開始した時点T58で、(ここではバンプ電極BMが固化する前に、)ヘッド22によるチップ92の保持(吸着)が解除され、ヘッド22が上昇する。その後、バンプ電極BMがさらに冷却される。換言すれば、バンプ電極BMを溶融させた状態での加熱処理が所定期間(時刻T4〜時刻T58)継続された後、冷却が開始されバンプ電極の温度が低減されるとともに、ヘッド22によるチップ92の保持が解除される(時刻T58)。このようにして、バンプ電極BMを介して両被接合物91,92が接合される。
【0215】
なお、ここでは、時刻T58にて(換言すれば、バンプ電極BMが固化する前に)ヘッド22によるチップ92の保持が解除される態様が例示されているが、これに限定されない。たとえば、バンプ電極BMの温度を融点近傍温度(より詳細には、融点TMmの近傍、且つ、融点TMmよりも数℃程度低い温度)にまで低減させた時点で、ヘッド22によるチップ92の保持が解除されるようにしてもよい。より詳細には、時刻T7の直後(換言すれば、バンプ電極BMが固化した直後)において、ヘッド22によるチップ92の保持が解除されるようにしてもよい。
【0216】
また、チップ92の保持を解除する時点でのヘッド22の高さは、対応関係RLに基づいて所望の値になるように制御されることが好ましい。詳細には、チップ92の保持解除時点(バンプ電極BMの温度を融点近傍温度にまで低減させた時点等)での2つの被接合物91,92の相互間距離DCが所定値になるように、2つの保持部材12,22の相互間距離DHが対応関係RLに基づいて制御されればよい。これによれば、ヘッド22等の熱膨張量(詳細には、温度TM2(あるいは温度TM3)から融点近傍温度への温度変動に伴うヘッド22の熱収縮量)も考慮して、バンプ電極BMの高さを正確に制御することができる。特に、このようにしてバンプ電極BMの高さを所定値に制御しつつ且つバンプ電極BMを固化させた時点で、チップ92の保持が解除されることによれば、より正確にバンプ電極BMの高さを所望の値に制御することができる。
【0217】
以上のような動作によれば、時刻T5〜時刻T51のアライメント動作によって、物理的接触に伴う位置ずれが良好に低減される。さらに、時刻T54〜時刻T55のアライメント動作をも行うことによって、両被接合物91,92の水平方向の位置ずれがさらに良好に低減される。
【0218】
また上記の動作においては、ヘッド22の熱膨張量を考慮した上でヘッド22の位置が移動され、各期間における両被接合物91,92の相互間距離DCがそれぞれ適切な値に調整される。そのため、非常に良好な接合動作が実現される。
【0219】
なお、この第6実施形態においては、溶融中アライメント動作中において、バンプ電極BMをさらに温度TM3にまで昇温する態様を例示したが、これに限定されない。たとえば、ヘッド22のヒータによってチップ92が加熱され、且つ、ステージ12のヒータによって基板91が加熱される場合等においては、バンプ電極BMをさらに温度TM3にまで昇温することなく温度TM2に維持したまま再度のアライメント動作が時刻T52〜T57において実行されるようにしてもよい。
【0220】
<7.第7実施形態>
上記各実施形態では、各チップを基板表面に実装する際に、時刻T5〜時刻T6等において、比較的長期間(たとえば30秒間)に亘って加熱処理が行われている。
【0221】
この第7実施形態においては、
図24のフローチャートに示すように、上記各実施形態と同様の動作(ステップS11〜ステップS19(
図4も参照))を繰り返し実行し、同一基板上に複数のチップを仮接合する(ステップS10,S20参照)。ただし、時刻T5〜時刻T6(
図5等参照)に亘る加熱処理時間を数分の1〜数十分の1に短縮する(例えば、60秒→5秒)。
【0222】
その後、同一基板上に仮接合された複数のチップを纏めて再加熱する(ステップS30)。具体的には、チップ92のバンプ電極BMを融点TMm以上の温度(たとえば温度TM2)にまで昇温して、バンプ電極BMの材料の合金化を促進する。
【0223】
このように、各チップにおける時刻T5〜時刻T6に亘る加熱処理時間を短縮するとともに、同一基板上に仮接合された複数のチップに対する加熱処理を纏めて実行する。これによれば、総処理時間の短縮を図ることができる。
【0224】
より詳細には、各チップに関する温度TM2での加熱処理時間(バンプ電極を溶融させた状態での加熱処理時間)(時刻T5〜時刻T6)を(例えば、60秒から5秒へと)短縮して、同一基板上に複数のチップ92を仮接合する(ステップS10,S20)。その後、当該基板をバッチ式(間欠式)ないしベルトコンベヤ式(連続式)の加熱装置60(
図25参照)に移載し、同一基板上に仮接合された多数のチップを温度TM2で再加熱する(ステップS30)。詳細には、温度TM2による適切な加熱期間(例えば60秒)に亘って、基板上の多数のチップを加熱する。このような追加的な一括加熱工程を実行することによれば、各チップに関する短縮後の加熱期間(たとえば5秒)では十分に合金化が進行していない場合でも、当該一括加熱工程によってバンプ電極BMの合金化を進行させることが可能である。なお、
図25には、上述の接合装置1と加熱装置(再加熱装置)60とを備える接合システム100が示されている。
【0225】
また、このような処理によれば、同一基板上に仮接合された複数のチップに対する加熱処理が纏めて実行されるので、総処理時間の短縮を図ることができる。
【0226】
<8.変形例等>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0227】
たとえば、上記実施形態においては、ステージ12が固定されヘッド22が移動する場合において、2つの保持部材22,12の相互間距離DHに応じた物理量(変位量)としてヘッド22のZ方向位置が用いられている。ただし、本発明は、これに限定されない。具体的には、上記実施形態とは逆にステージ12が移動しヘッド22が固定されるようにしてもよい。また、その場合には、相互間距離DHに応じた物理量(変位量)として、ステージ12のZ方向位置が用いられるようにしてもよい。
【0228】
また、上記実施形態においては、2つの被接合物の接合表面の双方にバンプ電極が設けられる場合が例示されているが、これに限定されない。たとえば、2つの被接合物のうちの一方の被接合物の接合表面のみにバンプ電極が設けられ、他方の被接合物の接合表面には電子回路パターン等が設けられるようにしてもよい。
【0229】
また、上記実施形態においては、位置認識部28として、同軸照明系を有する撮像部27(
図1参照)によって反射光による撮影画像が取得され位置検出を行うものを例示したが、これに限定されない。たとえば、位置認識部28は、撮像部とは別の照明光源からの透過光を用いた透過型の位置検出を行うものであってもよい。詳細には、ステージ12の下側に撮像部27を設け、照明光源を撮像部27の元の位置(
図1参照)に設けるとともに、透過光による撮影画像を取得して位置検出を行うようにしてもよい。