(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、α−オレフィンオリゴマーの製造プロセスの一実施形態の一部を示す図である。
α−オレフィンオリゴマーの製造では、重合槽10においてフィードモノマーを触媒(例えばメタロセン触媒)存在下で重合する。重合によって得られる複数のオリゴマー(例えば3量体、4量体及び5量体)の混合物は、バランス槽20に送られ、ここでバッチ方式から連続方式への変更が行われる。オリゴマー混合物は、バランス槽20から分離槽30に送られる流路において失活剤であるアルカリ金属水酸化物水溶液を添加し、触媒を失活する。アルカリ金属水酸化物水溶液の添加によって、メタロセン触媒中の金属成分は水酸化物となって水相(アルカリ金属水酸化物水溶液)側に沈殿し、当該沈殿を含む水相とオリゴマー混合物を含む油相は、分離槽30で分離される。金属成分を含む水相は分離槽30で排水され、油相は、蒸留塔40に送られ、オリゴマーをそれぞれ分留する。
【0012】
上述の通り、触媒由来の金属成分は水相に含まれ、分離槽30で分離することで触媒由来の金属成分は除去できると考えられていた。
【0013】
例えばメタロセン触媒であるビス(ターシャリーブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドと助触媒であるMAO(メチルアルミノキサン)の組み合わせに、失活剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合には、以下に示す反応が進むと考えられていた。
MAO + 2H
2O + NaOH → NaAl(OH)
4 + CH
4
tBuCp
2ZrCl
2 + 2H
2O + 2NaOH → Zr(OH)
4↓ + 2tBuC
5H
6 + 2NaCl
しかし、実際には上記失活反応後の反応溶液は、α−オレフィンオリゴマー相(以下、油相という場合がある)と水溶液相(以下、水相という場合がある)の2相にはっきり分かれることはなく、油相と水相の界面に固体滞留物が生成される。当該固体滞留物(以下、「澱」という場合がある)は、触媒由来の金属成分を含み、水相を分離しただけでは金属成分を完全に除去することはできない。
【0014】
メタロセン触媒であるビス(ターシャリーブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドと助触媒であるMAO(メチルアルミノキサン)の組み合わせに、失活剤として水酸化ナトリウム水溶液を用いた場合の、油相と水相の界面に生成される澱は、下記構造を有すると推測される。
下記構造の化合物は、シクロペンタン骨格を有する有機物であるものの、適度に水酸基を有するため、油相と水相の界面に固体滞留物として存在しうる。
【化1】
(式中、Rはオレフィンモノマーであり、AOOは、α-オレフィンオリゴマーである。)
【0015】
本発明の第1のα-オレフィンオリゴマーの製造方法では、触媒を失活させる前に失活剤中の酸素を除去することで、上記澱の生成を著しく低減することができる。
【0016】
具体的には、触媒存在下、1種以上の炭素数6〜20のα−オレフィンを重合してα−オレフィンオリゴマーを製造し、酸素を除去した失活剤を混合して(例えば液液混合)触媒を失活する。好ましくは、混合は不活性ガス(窒素等)雰囲気下(酸素不存在下)で行う。
【0017】
第1の製造方法により得られるα-オレフィンオリゴマーは、触媒由来の金属成分の混入がほとんどなく、合成潤滑油として優れた物性を有するものである。また、不純物である澱自体の生成を抑制できることから、製造工程におけるフィルター等に対する負荷も軽減でき、製造コストの削減も可能である。
【0018】
第1の製造方法で用いることができる失活剤としては、例えばアルコール、水、酸、アルカリ、含酸素化合物及びその水溶液等が挙げられる。
失活剤の具体例としては、水酸化ナトリウム水溶液、エタノール、イソプロピルアルコール、塩酸、アセトンが挙げられる。
【0019】
触媒として有機アルミニウム化合物を用いる場合の失活剤は、有機アルミニウム化合物の失活生成物である水酸化アルミニウム化合物の溶解度から、好ましくはpH11〜14の水溶液であり、さらに好ましくはpH13〜14の水溶液である。pH11未満の水溶液の場合、水酸化アルミニウム化合物が固体として析出してしまうおそれがある。
【0020】
失活剤の酸素の除去手段は、失活剤中の酸素を除去できるのであれば特に限定されないが、好ましくは不活性ガスバブリングにより行い、さらに好ましくは窒素ガスバブリングにより行う。また、不活性ガスバブリングの実施時間は、例えば30分〜48時間であり、好ましくは24〜48時間である。
【0021】
例えば、酸素の除去を窒素バブリングにより行う場合、失活剤10m
3に、窒素1200Lをバブリングし、窒素通気量が0.12〜0.24窒素m
3/m
3である失活剤とする。
失活剤の窒素通気量が0.12窒素m
3/m
3未満であると、失活剤の酸素を除去しきれないおそれがある。一方、失活剤の窒素通気量が0.24窒素m
3/m
3超であると、失活剤成分が蒸発してしまうおそれがある。
【0022】
失活剤の酸素の除去手段として、上記不活性ガスバブリングの他に、ストリッピング法を含む気液接触法、及び酸素除去剤を用いる方法が挙げられる。
上記酸素除去剤による酸素の除去は、例えば失活剤に酸素除去剤を添加して、失活剤中の酸素除去剤濃度が数千ppm程度になるようにする。当該酸素除去剤としては、ハイドロサルファイド等が挙げられる。
【0023】
第1の製造方法では、反応液中の酸素が少ない状態で失活反応を実施できれば特に制限はない。例えば、水溶液である失活剤のpHを調整する場合、調製前の水溶液と水のそれぞれを酸素除去してもよく、又は、pH調整後に酸素除去してもよい。
【0024】
酸素を除去した失活剤は、好ましくは酸素濃度が1mg/L以下であり、より好ましくは酸素濃度が0.1mg/L以下であり、さらに好ましくは実質的に酸素を含まない(測定下限界未満)状態である。
尚、上記「酸素濃度」とは、失活剤中の溶存酸素濃度を指し、当該酸素濃度は、例えば、ガルバニ電池式酸素濃度計(東亜DKK株式会社製、ポータブル溶存酸素計DO−24P)によって測定できる。
【0025】
本発明の第2のα−オレフィンオリゴマーの製造方法は、触媒存在下、1種以上の炭素数6〜20のα−オレフィンを重合してα−オレフィンオリゴマーを製造し、α−オレフィンオリゴマーを含む反応液をバグフィルターに通液する。
【0026】
第2の製造方法では、失活反応後のオレフィンオリゴマーを含む反応液をバグフィルターに通液することで、触媒由来の金属成分を除去することができ、得られるα−オレフィンオリゴマーの物性を向上させることができる。また、バグフィルターは、焼結フィルター等と異なり、目詰まりを起こしにくく長寿命であるため、製造コストの削減にも優れる。
【0027】
第2の製造方法では、
図1のプロセスにおいて、分離槽30と蒸留塔40の間にバグフィルター50を設け、分離槽30で分離した油相を、当該バグフィルター50を通液させることで触媒由来の金属成分を除去する。
尚、バグフィルター50の設置場所は、蒸留塔40以降の製品タンクまでのいずれの場所にも設置可能であるが、分離槽30と蒸留塔40の間が未反応原料や軽質成分が多いため液体の粘度が低く好ましい。
【0028】
用いるバグフィルターは、好ましくは公称濾過精度(以下、単に「濾過精度」ともいう)が5μm以下、より好ましくは3μm、特に好ましくは1μm以下である。また、用いるバグフィルターは、好ましくは絶対濾過精度が15μm以下、より好ましくは10μm、特に好ましくは5μm以下である。濾過精度が大きすぎると、澱を十分に捕捉できなくなってしまうおそれがある。
尚、上記公称濾過精度及び絶対濾過精度について、「絶対濾過精度」とは、表示している径の粒子を99.9%以上捕捉することをいい、「公称濾過精度」とは、表示している径の粒子を80%以上捕捉することをいう。
【0029】
用いるバグフィルターのフィルターの材質は特に限定されず、例えばナイロンからなるフィルター、ポリプロピレンからなるフィルター等のいずれでもよいが、好ましくはポリプロピレンからなるフィルターである。
一般にフィルターは、低い圧力損失で処理した方が、寿命や必要動力の観点から好ましい。圧力損失が高い場合、濾過面積がより大きくしないと処理ができなくなるおそれがある。バグフィルターのフィルターがポリプロピレンからなる場合、フィルターの構造上、低い圧力損失で高い濾過精度を得ることができるため、ポンプ等の動力を小さくすることができる。
【0030】
本発明の第1及び第2のα−オレフィンオリゴマーの製造方法(以下、「本発明のα−オレフィンオリゴマーの製造方法」ともいう)で使用する炭素数6〜20のα−オレフィンは、好ましくは炭素数6〜14のα−オレフィンであり、より好ましくは炭素数8〜12のα−オレフィンであり、さらに好ましくは1−デセン、1−オクテン及び1−ドデセンである。
【0031】
本発明のα−オレフィンオリゴマーの製造方法に使用する触媒としては、例えば(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドや、下記式(I)で表わされる化合物等のメタロセン触媒を用いることができる。
(RC
5H
4)
2MX
2 (I)
(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基である。
Mは周期律表第4族の遷移金属元素である。
Xは共有結合性又はイオン結合性の配位子である。)
【0032】
式(I)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜4の炭化水素基が好ましい。
Mの具体例としては、チタニウム、ジルコニウム、ハフニウムを挙げることができ、これらの中ではジルコニウムが好ましい。
Xの具体例としては、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20好ましくは1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20好ましくは1〜10のアルコキシ基、アミノ基、炭素数1〜20好ましくは1〜12のリン含有炭化水素基(例えば、ジフェニルホスフィン基等)、炭素数1〜20好ましくは1〜12の珪素含有炭化水素基(例えば、トリメチルシリル基等)、炭素数1〜20好ましくは1〜12の炭化水素基あるいはハロゲンを含有するホウ素化合物(例えば、B(C
6H
5)
4、BF
4等)を挙げることができ、これらの中で、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基及びアルコキシ基から選ばれる基が好ましい。
【0033】
上記式(I)で表されるメタロセン化合物の具体例としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(iso−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(テキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(トリメチルシリルメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムクロロヒドリド、ビス(シクロペンタジエニル)メチルジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)エチルジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)メトキシジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)フェニルジルコニウムクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジフェニルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジネオペンチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジヒドロジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジメトキシジルコニウムが挙げられ、好ましくはビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドである。
さらに、上記化合物において、これらの化合物の塩素原子を臭素原子、ヨウ素原子、水素原子、メチル基、フェニル基などに置き換えたもの、又、上記化合物の中心金属のジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えたものを挙げることができる。
【0034】
上記メタロセン触媒と共にメチルアルミノキサンを用いることができる。
上記メチルアルミノキサンは従来公知のメチルアルミノキサンを用いることができ、例えば下記式(II)及び(III)で表わされる鎖状又は環状のメチルアルミノキサンを使用することができる。
【化2】
【0035】
式(II)及び(III)において、pは重合度を表わし、通常3〜50であり、好ましくは7〜40である。これらメチルアルミノキサンは1種単独で用いてよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
メタロセン化合物とメチルアルミノキサンの配合割合は、メチルアルミノキサン/メタロセン化合物(モル比)が、通常15〜150、好ましくは20〜120であり、さらに好ましくは25〜100である。モル比が15未満であると触媒活性が発現しないおそれがある他、α−オレフィンの二量体が生成しやすく、三量体以上の収率が低下するおそれがある。一方、モル比が150を超える場合、触媒の脱灰除去が不完全になるおそれがある。
【0037】
本発明の製造方法では生産性の観点から無溶媒で行うことが好ましいが、溶媒を用いることもできる。その場合、例えば、ベンゼン,トルエン,キシレン,エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、シクロペンタン,シクロヘキサン,メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ペンタン,ヘキサン,ヘプタン,オクタン等の脂肪族炭化水素、クロロホルム,ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素等を用いることができる。これらの溶媒は一種を単独で用いてもよく、2種以上のものを組み合わせてもよい。また、1−ブテン等のモノマーを溶媒として用いてもよい。
【0038】
本発明の製造方法において、重合方法は特に制限されず、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、スラリー重合法、気相重合法等のいずれの方法を用いてもよい。
重合条件については、重合温度は通常0〜200℃、好ましくは30〜150℃、より好ましくは40〜120℃である。また、原料モノマーに対する触媒の使用割合は、原料モノマー/上記メタロセン触媒(モル比)が好ましくは1〜10
8,特に100〜10
5となることが好ましい。さらに、重合時間は通常5分〜20時間、反応圧力は好ましくは常圧〜0.2MPaG、特に好ましくは常圧〜0.1MPaGである。
【0039】
本発明においては、上記重合用触媒を用いて予備重合を行うことができる。
予備重合は、触媒成分に、例えば、少量のオレフィンを接触させることにより行うことができるが、その方法に特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。予備重合に用いるオレフィンについては特に制限はなく、例えばエチレン、炭素数3〜20のα−オレフィン、又はこれらの混合物等を挙げることができるが、この重合において用いるモノマーと同じオレフィンを用いることが有利である。
【0040】
予備重合温度は、通常−20〜200℃、好ましくは−10〜130℃、より好ましくは0〜80℃である。
予備重合において、溶媒として、不活性炭化水素,脂肪族炭化水素,芳香族炭化水素,モノマー等を用いることができる。これらの中で特に好ましいのは脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素である。
また、予備重合は無溶媒で行ってもよい。予備重合においては、触媒中の遷移金属成分1ミリモル当たりに対する予備重合生成物の量が1〜10,000g、特に1〜1,000gとなるように条件を調整することが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例を用いて説明するが、本発明は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
実施例1
内容積1リットルのステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後に、1−デセン200ミリリットルを入れ、40℃に昇温した。メチルアルミノキサン0.5ミリモル(2.0ミリモル/mlのトルエン溶液;0.25ml)を投入した後、ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド5マイクロモル(5マイクロモル/mlのトルエン溶液;1ml)を投入後、すぐに水素を導入して0.05MPaGとし、重合を開始した。120分後、温度を室温まで下げて、窒素雰囲気で得られたデセンオリゴマーを含む重合液を窒素充填のシュレンク瓶に移送した。
【0043】
重合液に含まれる触媒の失活を
図2に示す装置を用いて実施した。
図2の撹拌槽10内に窒素をパージし、シリンジを用いてシュレンク瓶中の400mLの重合液を撹拌槽に仕込み、撹拌しながら50℃まで加熱した。投入管20にNaOH水溶液(pH13)100mLを仕込み、44時間窒素バブリングした。窒素バブリング後のNaOH水溶液中の溶存酸素をガルバニ電池式酸素濃度計(東亜DKK株式会社製、ポータブル溶存酸素計DO−24P)で評価したところ4wtppmであった。
窒素バブリングしたNaOH水溶液を撹拌槽10に投入し、10分間撹拌しながら触媒の失活を行い、撹拌を停止して30分静置した。静置後の撹拌槽内を目視で確認したところ、油相と水相の2相に分かれており、油相と水相の界面の澱は目視では確認できなかった。
【0044】
得られた油相を孔径1.00μmのフィルタ(アドバンテック東洋社製、T100A−)で濾過し、得られた残渣をトルエンで洗浄して、油相中の澱の重さ(乾燥後の残渣と濾紙の恒量値−濾過前の濾紙の恒量値)を測定した。その結果、澱の捕捉量は0.0091gであり、油相中の澱濃度は15wtppmであることが分かった。
【0045】
比較例1
失活剤であるNaOH水溶液について、窒素バブリングを行わず、また、撹拌槽内を窒素置換せず空気雰囲気とした他は実施例1と同様にして、デセンオリゴマーを製造し、生じた澱を評価した。その結果、澱の捕捉量は油相156gに0.2185gであることが分かった。
尚、触媒失活後の撹拌槽内を目視で確認したところ、油相と水相の間に白色固体滞留物(澱)の相が生成しており、実質的に3相が確認できた。
【0046】
参考例1
図2の撹拌槽10に一定量の窒素をパージし、模擬液を撹拌槽10に仕込み、撹拌しながら50℃まで加熱した。投入管20にNaOH水溶液(pH13)100mLを仕込み、44時間窒素バブリングした。窒素バブリング後のNaOH水溶液中の溶存酸素をガルバニ電池式酸素濃度計(東亜DKK株式会社製、ポータブル溶存酸素計DO−24P)で評価したところ4wtppmであった。
窒素バブリングしたNaOH水溶液を撹拌槽10に投入し、10分間撹拌しながら触媒の失活を行った。撹拌を停止して30分静置した。
得られた油相中に生成したモノマー酸化物の濃度を評価した。当該モノマー酸化物濃度は、窒素パージで除去しきれなかった撹拌槽内の酸素量を反映したものである。また、油相中の澱の濃度も評価した。結果を表1に示す。
尚、上記模擬液とは、水洗後の重合液に触媒を投入したものである。
【0047】
参考例2〜7
参考例2〜6は、窒素のパージ流量を変化させた他は参考例1と同様にして、得られた油相中に生成したモノマー酸化物の濃度及び澱濃度を評価した。参考例7は比較例1と同じである。結果を表1に示す。また、参考例4〜7については、触媒を失活して静置した後の油相、澱及び水相の3相の様子を撮影した。結果を
図3に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
参考例3、4及び6について、横軸を酸化物濃度、及び縦軸を澱濃度とし、酸化物濃度と澱濃度の関係を
図4に示す。表1及び
図4から、酸化物の濃度が増加(窒素パージ流量の減少)に伴い、澱濃度が増加していることが分かる。これは、酸素量が澱の発生に関係していることを示すものである。
【0050】
評価例1
内容積1リットルのステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後に、1−デセン200ミリリットル、次にメチルアルミノキサン0.8ミリモルをいれ、40℃に昇温した。ビス(t−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド8マイクロモル投入後、水素2KPaGを導入し、重合を開始した。40℃で5時間間反応させた後、1質量%NaOH水溶液50ミリリットル中に加え、攪拌した。
【0051】
得られた油相(有機相)の濾過にはポリプロピレンフィルターを備える濾過精度2μmのデプスプリーツタイプのカートリッジフィルター(ロキテクノ社製、SHP−020−M25DKC、濾過面積:4.9cm
2)を用いて濾過時間の評価を行った。具体的には、
図5に示すように油相を撹拌混合している状態で200mLのシリンジで60ml採取し、上記カートリッジフィルターを備える濾過器に接続して圧入力し、圧入開始から終了までの時間を濾過時間とした。その結果、濾過時間は210秒であった。
濾過後のろ液を静置分離し、分離した重合液について、硫酸を投入して灰化した後、アルカリ溶融原子吸光によりアルミニウム濃度を評価したところ、アルミニウムの濃度は2wtppmであった。また、得られたろ液は、目視したところ白濁液であった。結果を表2に示す。
【0052】
評価例2−5
表2に示すフィルターで表2に示す濾過時間で評価例1と同様の濾過を実施し、ろ液中の金属濃度と得られた濾過液を目視で評価した。結果を表2に示す。
尚、評価例2−4のカートリッジフィルターはそれぞれ、SHP−030−M25DKC、SHP−050−M25DKC、及びSNP−030−M25DKCであり、評価例5ではカートリッジフィルターは用いなかった。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例2
図6に示す装置を用いてバグフィルターの評価を行った。
タンク(T1)に評価例1と同様にして得たα−オレフィンオリゴマー液を16リットル仕込み、攪拌しながらテープヒーターで60℃まで昇温した。所定の温度になったら、純水で希釈した1wt%NaOH水溶液を4リットル入れ、15分間攪拌を維持した。さらに15分間静置して、油相と水相に分離した。その後、T1タンクのボトムよりNaOH水溶液を抜き出すが、澱が抜き出し液に混入してきたことを目視で確認できたところで水相の抜き出しをやめた。
残った油相を再度攪拌して澱を分散させ、その後ポンプを起動して流量が4リットル/minに一定になるようにバグフィルター(イートンフィルトレーション社製AccuGAFフィルターバッグAGF−53、ポリプロピレン製)に通油して、フィルター前後の圧力を確認した。
【0055】
油相の通油中、ポンプ吐出ドレンとフィルター出口ドレンからサンプリングを行い、入口サンプルより澱濃度を定量し、出口サンプルから通油後の油相中のAl及びZrの濃度をそれぞれ評価し、ろ過精度を確認した。結果を
図7に示す。
尚、Al濃度は、得られたサンプルに硫酸を添加して灰化した後、アルカリ溶融原子吸光法により評価した。またZr濃度は、得られたサンプルを灰化した後、酸処理をして、ICP−AES法により評価した。
【0056】
実施例3
図8に示す装置を用い、フィルター面積が0.00062m
2となるように実施例2で使用したバグフィルターを切り取り、当該フィルターに、流量50ml/minで、以下の方法で得られた油相を通油させた。当該通油は、30L反応器を用い、重合液が20℃の温度で1質量%NaOHを投入し、重合を停止して得られた重合液(30L−20℃アルカリ洗油相)、30L反応器を用い、重合液が80℃の温度で1質量%NaOHを投入し、重合を停止して得られた重合液(30L−80℃アルカリ洗油相)及び100L反応器を用い、重合液が80℃の温度で1質量%NaOHを投入し、重合を停止して得られた重合液(100L−80℃アルカリ洗油相)をそれぞれ用いて実施した。
油相の通油中、ポンプ吐出ドレンとフィルター出口ドレンからサンプリングを行い、入口サンプルより澱濃度を定量し、実施例2と同様にして出口サンプルから通油後の油相中のAl及びZrの濃度をそれぞれ評価し、ろ過精度を確認した。結果を
図9に示す。
【0057】
上記で評価した油相は、以下の方法をそれぞれ反応器の大きさにスケールアップして得たものである。
内容積5リットルのステンレス製オートクレーブを十分乾燥し、窒素置換の後に、1−ドデセン1750ミリリットル、1−オクテン1250ミリリットル、次にトリイソブチルアルミニウム1.5ミリモルをいれ、105℃に昇温した。別途準備した触媒混合液を24ミリリットル投入後、水素0.05MPaGを導入し、重合を開始した。120分後、残りの触媒混合液24ミリリットルを添加し、さらに105℃で120分反応させた後、内容物を取り出し、1質量%NaOH水溶液750ミリリットル中に加え、攪拌し,重合を停止させた。この溶液を分液ロートに移し、油相を分取した。
【0058】
尚、上記触媒混合液は、100ミリリットルのガラス製シュレンク瓶に窒素雰囲気下でトリイソブチルアルミニウム3ミリモル(0.5ミリモル/ミリリットルのトルエン溶液;6ミリリットル)、(1,1’−ジメチルシリレン)(2,2’−ジメチルシリレン)−ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド60マイクロモル(5マイクロモル/ミリリットルのトルエン溶液;12ミリリットル)及び粉末状のN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート0.12ミリモル(96ミリグラム)を入れ室温で1分ほど攪拌した後、1−オクテン15ミリリットル、1−ドデセン15ミリリットルを加えてさらに室温で1時間攪拌した混合液である。