特許第6326749号(P6326749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6326749石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326749
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/14 20060101AFI20180514BHJP
   C08F 240/00 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   C08F4/14
   C08F240/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-188349(P2013-188349)
(22)【出願日】2013年9月11日
(65)【公開番号】特開2015-54892(P2015-54892A)
(43)【公開日】2015年3月23日
【審査請求日】2016年8月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃幸
【審査官】 藤本 保
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭45−030829(JP,B1)
【文献】 特開2010−143957(JP,A)
【文献】 特開昭59−027907(JP,A)
【文献】 特開昭56−106912(JP,A)
【文献】 特公昭40−014745(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 4/14
C08F 240/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三フッ化ホウ素、フェノールおよびジブチルエーテルからなる石油樹脂製造用触媒であって、三フッ化ホウ素に対するフェノールとジブチルエーテルの合計(モル比)が1.3〜2.7であり、その際のフェノール/ジブチルエーテル(モル比)が0.5〜26.0の範囲内であることを特徴とする石油樹脂製造用触媒。
【請求項2】
石油類の熱分解及び/又は精製により得られる不飽和炭化水素含有留分である原料油を請求項1に記載の石油樹脂製造用触媒を用い、重合することを特徴とする石油樹脂の製造方法。
【請求項3】
原料油が、ジシクロペンタジエン類を10重量%以上含む原料油であることを特徴とする
請求項2に記載の石油樹脂の製造方法。
【請求項4】
原料油が、沸点範囲20〜110℃のC5留分、沸点範囲140〜280℃のC9留分及びジシクロペンタジエン留分からなる群より選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項3に記載の石油樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、色相および原料油のモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能とする新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油類の分解、精製の際に得られる不飽和炭化水素含有留分を原料油として、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合を行い、石油樹脂を製造する方法は良く知られている。そして、その際の不飽和炭化水素含有留分としては、沸点範囲が20〜110℃の不飽和炭化水素留分(脂肪族系炭化水素留分、C5留分ということもある。)と、沸点範囲が140〜280℃の不飽和炭化水素留分(芳香族系炭化水素留分、C9留分ということもある。)の2種類が一般的であり、該C5留分から得られる脂肪族石油樹脂、該C9留分から得られる芳香族石油樹脂、並びに該C5留分と該C9留分とを共重合して得られる脂肪族/芳香族共重合石油樹脂等が知られている。また、ジシクロペンタジエン類を熱重合することで得られる脂環族石油樹脂も知られている。
【0003】
該脂環族石油樹脂の原料となるジシクロペンタジエン類としては、具体的にはジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等が知られている。そして、該ジシクロペンタジエン類をフリーデルクラフツ型触媒の存在下で重合した場合、モノマー重合転化率が上がらない、不飽和結合が樹脂中に多量に存在することから樹脂の色相悪化やゲル生成により品質が低下するという課題が発生する。そのため、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合石油樹脂等を製造する際は、ジシクロペンタジエン類を蒸留等により除去した留分により製造することが一般的である。
【0004】
石油樹脂は、一般的にゴム加工助剤、塗料、接着剤、インキ、アスファルト等の用途で使用され、これらの用途で併用されるゴム、ロジン系樹脂等の配合物と相溶する必要があるため、ゲル分が少ないことが望まれる。
【0005】
そして、石油樹脂を製造する際の重合活性や樹脂物性を改良する試みとして、三フッ化ホウ素を主触媒とし、共触媒の存在下で炭化水素樹脂を製造する方法が提案されている(例えば特許文献1参照。)。また、色相を改良するため、C9留分とC5留分をフリーデルクラフト型触媒の存在下、低温で重合する石油樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献2参照。)。
【0006】
また、未利用留分の利用という観点から、ジシクロペンタジエン類を原料としてフリーデルクラフツ型触媒の存在下で重合反応を行い、石油樹脂を製造する方法も検討され、ジシクロペンタジエンを5%以上含有するC9留分を三フッ化ホウ素、又は三フッ化ホウ素錯体の存在下に、低温で重合する方法(例えば特許文献3参照。)、C9留分とジシクロペンタジエンとを、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合する方法(例えば特許文献4〜6参照。)、C5留分とジシクロペンタジエンとを、フリーデルクラフツ型触媒の存在下に重合する方法(例えば特許文献7参照。)、等が提案されている。
【0007】
石油樹脂の貯蔵時のゲル化を防止する為、石油樹脂にアミン系安定剤を添加する方法が提案されている(例えば特許文献6、7参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭56−106912号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献2】特開昭61−197616号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献3】特開昭62−064811号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献4】特開平07−033951号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献5】特開平08−034824号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献6】特開2011−127006号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【特許文献7】特開2010−006901号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に提案された方法においては、単独の共触媒の効果については述べられているが、複数の共触媒を使用する効果については何ら検討がなされておらず、重合時のゲル化防止、モノマー重合転化率向上、色相改良のすべてを同時に満たす石油樹脂、その製造については何ら検討のなされていないものであった。特許文献2,3に提案された方法においては、低温で重合を行うためモノマー重合転化率が低下する、冷凍設備を必要とする、等の生産性、コスト面に課題を有する。また、特許文献4、5に提案された方法においては、重合触媒について詳細に述べられておらず、重合時のゲル化防止、モノマー重合転化率向上、色相改良のすべてを同時に満たすことができない。また、特許文献6、7に提案された方法においては、貯蔵時のゲル化を防止するためのものであり、重合時のゲル化については何ら検討がなされていない。重合触媒についても詳細に述べられておらず、重合時のゲル化防止、モノマー重合転化率向上、色相改良のすべてを同時に満たすことができない。
【0010】
そこで、本発明は、色相およびモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂を製造するための石油樹脂製造用触媒、それを用いた石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類の多い原料油を使用した石油樹脂の製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
即ち、本発明は、三フッ化ホウ素、フェノールおよびジブチルエーテルからなる石油樹脂製造用触媒であって、該石油樹脂製造用触媒は三フッ化ホウ素に対するフェノールとジブチルエーテルの合計(モル比)が1.3〜2.7であり、その際のフェノール/ジブチルエーテル(モル比)が0.5〜26.0の範囲内であることを特徴とする石油樹脂製造用触媒、およびそれを用いた石油樹脂の製造方法に関するものである。
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明の石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素、フェノールおよびエーテルからなる新規な石油樹脂製造用触媒である。
【0014】
本発明の石油樹脂製造用触媒は、三フッ化ホウ素に特定の範囲でフェノール及びエーテルを加えることにより、原料油のモノマー重合転化率に優れ、得られる石油樹脂は、色調に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂を提供する触媒となるものであり、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能となる石油樹脂製造用触媒となるものである。ここで、三フッ化ホウ素とフェノール、三フッ化ホウ素とエーテルの2成分からなる触媒を用いた場合、原料油のモノマー重合転化率に劣り、得られる石油樹脂は、色調に劣り、ゲル分の多い石油樹脂となる。そして、その傾向は、ジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いる場合にはより顕著なものとなる。
【0015】
本発明の石油樹脂製造触媒を構成するエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメチルエーテルが挙げられる。
【0016】
本発明の石油樹脂製造用触媒を調製する際の各成分の使用量は、三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.3〜2.7、好ましくは1.4〜2.1であり、その際のエーテル/フェノール(モル比)が0.5〜26.0、好ましくは0.5〜20.0の範囲内である。ここで、三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.3〜2.7の範囲以外である場合、モノマー重合転化率の低い触媒となり、得られる石油樹脂は、色相に劣ったり、ゲル分の多いものとなる。また、その際のエーテル/フェノール(モル比)が0.5〜26.0の範囲以外では、モノマー重合転化率の低い触媒となり、得られる石油樹脂は、色相に劣ったり、ゲル分の多いものとなる。
【0017】
本発明の石油樹脂製造触媒を構成する三フッ化ホウ素は、ガス状の単体を使用することができる。また、三フッ化ホウ素及びエーテルとして、三フッ化ホウ素エーテル錯体、三フッ化ホウ素及びフェノールとして、三フッ化ホウ素フェノール錯体を使用することができる。
【0018】
エーテルは、最終的な三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)およびフェノール/エーテル(モル比)が上記の範囲内であれば、複数のエーテルを用いることも可能である。
【0019】
本発明の石油樹脂製造用触媒の調製方法としては、三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.3〜2.7であり、その際のエーテル/フェノール(モル比)が0.5〜26.0であれば如何なる方法を用いることも可能であり、例えば三フッ化ホウ素フェノール錯体と三フッ化ホウ素エーテル錯体とを混合する方法;三フッ化ホウ素、フェノール及びエーテルを混合する方法;三フッ化ホウ素フェノール錯体とエーテルを混合する方法;三フッ化ホウ素エーテル錯体とフェノールを混合する方法;石油樹脂の原料油に、三フッ化ホウ素フェノール錯体と三フッ化ホウ素エーテル錯体とを混合する方法;石油樹脂の原料油に、三フッ化ホウ素、フェノール及びエーテルとを混合する方法;石油樹脂の原料油に、三フッ化ホウ素フェノール錯体とエーテルとを混合する方法;石油樹脂の原料油に、三フッ化ホウ素エーテル錯体とフェノールとを混合する方法;等が例示される。石油樹脂の原料油中で触媒を調製する場合、これらの触媒原料を原料油に分割して添加してもよい。
【0020】
本発明の石油樹脂製造用触媒は、例えば石油類の熱分解及び/又は精製により得られる不飽和炭化水素含有留分である原料油の重合反応に用いることにより、分子量、軟化点、色相に優れ、ゲルの生成量の少ない石油樹脂を生産効率よく製造することができる。
【0021】
その際の原料油としては、例えば石油類の熱分解および精製により得られる、沸点範囲20〜110℃のC5留分、沸点範囲140〜280℃のC9留分、ジシクロペンタジエン留分、等を挙げることができる。
【0022】
該C5留分としては、一般的に石油類の熱分解および精製により得られる沸点範囲20〜110℃の留分として知られているものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばイソプレン、トランス−1,3−ペンタジエン、シス−1,3−ペンタジエン、シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエン等に代表される炭素数4〜6の共役ジオレフィン性不飽和炭化水素類;ブテン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、シクロペンテン等に代表される炭素数4〜6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;シクロペンタン、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン、n−ヘキサン等の脂肪族系飽和炭化水素;これらの混合物、等が挙げられる。
【0023】
該C9留分としては、一般的に石油類の熱分解および精製により得られる沸点範囲140〜280℃の留分として知られているものであれば如何なるものを用いることも可能であり、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、インデンのアルキル誘導体等に代表される炭素数8〜10のビニル芳香族炭化水素類;炭素数10以上のオレフィン類;炭素数9以上の飽和芳香族類;ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン等のジシクロペンタジエン類;これらの混合物、等が挙げられる。
【0024】
該ジシクロペンタジエン留分は、一般的に石油類の熱分解および精製により得られるものであれば如何なるものを用いることも可能であり、該C9留分を更に精製したもの、該C5留分中のシクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンを二量化し精製したもの、等が挙げられる。
【0025】
本発明の石油樹脂製造用触媒を用いて得られる石油樹脂は、特に色相に優れ、ゲル生成が少ないものとなることから、原料油としてはジシクロペンタジエン類を10重量%以上含むものであることが好ましい。その際のジシクロペンタジエン類としては、一般的に石油類の熱分解および精製により得られるジシクロペンタジエン類として知られているものであれば如何なるものでもよく、例えばジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジメチルジシクロペンタジエン、これらの混合物等が挙げられる。
【0026】
該原料油として、該C5留分を主成分として用いた場合、得られる石油樹脂は脂肪族系石油樹脂と称されるものとなる。また、該C9留分を主成分として用いた場合、得られる石油樹脂は芳香族系石油樹脂と称されるものとなる。該C5留分と該C9留分の混合物(その際の混合割合は任意である。)を用いた場合、得られる石油樹脂は脂肪族/芳香族系石油樹脂と称されるものとなる。さらに、ジシクロペンタジエン類を用いた場合、得られる石油樹脂は脂環族石油樹脂と称されるものとなる。
【0027】
そして、石油樹脂の製造する際の製造条件としては、本発明の石油樹脂製造用触媒の存在下で重合を行うこと以外の如何なる制限を受けることはなく、例えば原料油に本発明の石油樹脂製造用触媒を加え加熱し重合することにより石油樹脂を製造することができる。
【0028】
その際の重合温度としては、任意であり、特に色相に優れる石油樹脂を生産効率よく製造できることから、0〜100℃が好ましく、特に0〜80℃であることが好ましい。ここで、色相の優れる石油樹脂を製造する際には、一般的には重合温度を0℃未満とする低温重合法がとられているが、低温重合法は、モノマー重合転化率が低く生産効率に劣るという課題を有する。本発明の石油樹脂製造用触媒を用いることにより、0℃以上の条件下であっても、色相に優れる石油樹脂を生産効率よく製造することが可能となる。また、該石油樹脂製造用触媒の添加量としては、任意であり、その中でも特に生産効率に優れた製造方法となることから、該原料油100重量部に対して0.1〜2重量部であることが好ましい。さらに、重合時間としては、0.1〜10時間の範囲が好ましい。反応圧力は大気圧〜1MPaが好ましい。
【0029】
石油樹脂の重合反応の後には、石油樹脂製造用触媒の除去を行うことも可能であり、その際は、塩基による中和処理、水洗、溶媒による留去等の常法を選択することも可能である。
【0030】
そして、得られる石油樹脂は、色相およびモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ないことを特徴とするものであり、特に色相10以下、全モノマーの平均重合転化率が70重量%以上であることが好ましい。また、軟化点60〜160℃、特に70〜150℃を有するものであることが好ましい。特に加工性に優れるものとなることから重量平均分子量(Mw)500〜5000である石油樹脂が好ましい。
【発明の効果】
【0031】
色相および原料油のモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能とする新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法を提供するものである。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限を受けるものではない。尚、実施例、比較例において用いた原料油、得られた石油樹脂の分析方法は下記の通りである。
【0033】
<原料油>
ナフサの分解・精製により得られた沸点範囲140〜280℃のC9(A)、C9(B)留分(表1)、ジシクロペンタジエン留分(表2)、沸点範囲20〜110℃のC5留分(表3)のそれぞれの組成を表1〜3に示す。なお、表1〜3中のDCPDはジシクロペンタジエン、CPDはシクロペンタジエンの略記である。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
<石油樹脂製造用触媒成分>
三フッ化ホウ素フェノール錯体:三フッ化ホウ素30重量%(ステラケミファ(株)製)。
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体:三フッ化ホウ素48重量%(和光純薬(株)製)。
三フッ化ホウ素ジブチルエーテル錯体:三フッ化ホウ素34重量%(シグマアルドリッチジャパン(株)製)。
三フッ化ホウ素:(大陽日酸(株)製)
フェノール:(和光純薬(株)製、試薬特級)
ジエチルエーテル:(和光純薬(株)製、試薬特級)
〜分析方法〜
<各原料油中の成分分析>
JIS K−0114(2000年)に準拠してガスクロマトグラフ法を用いて分析した。
【0037】
<モノマー重合転化率の測定>
JIS K−0114(2000年)に準拠してガスクロマトグラフ法により重合前後の油中の全モノマー量の測定を行い、モノマー重合転化率を算出した。
【0038】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリスチレンを標準物質とし、JIS K−0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。
【0039】
<軟化点の測定>
JIS K−2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。
【0040】
<色相(ガードナー)の測定>
得られた石油樹脂を50重量%トルエン溶液として、ASTM D−1544−63Tに従って測定した。
【0041】
実施例1
三フッ化ホウ素フェノール錯体2.25gおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.47gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.5、フェノール/エーテル(モル比)が5.0に相当)して、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。
【0042】
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(A)留分(表1参照)400gとDCPD留分(表2参照)100gを仕込んだ(C9留分/DCPD留分=80/20(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒2.72g(原料油100重量部に対して、0.54重量部に相当。)を加えて40℃で3時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
【0043】
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
【0044】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は69%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も7と優れるものであった。
【0045】
比較例1
三フッ化ホウ素フェノール錯体0.75gおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.41gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.2、フェノール/エーテル(モル比)が0.4に相当)とし、触媒の調製を行った。
【0046】
得られた触媒2.16gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件(割合)を表4に示す。
【0047】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は56%であり、得られた石油樹脂は色相13と悪いものであった。
【0048】
実施例2
三フッ化ホウ素フェノール錯体3.00gおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.63gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計モル比が1.5、フェノール/エーテル(モル比)が5.0に相当)とし、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。
【0049】
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照)400gとC5留分(表3参照)100gを仕込んだ(C9留分/C5留分=80/20(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒3.63g(原料油100重量部に対して、0.73重量部に相当。)を加えて40℃で2時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
【0050】
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
【0051】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は77%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も6と優れるものであった。
【0052】
実施例3
三フッ化ホウ素1.00g、フェノール2.77gおよびジエチルエーテル0.11gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が2.1、フェノール/エーテル(モル比)が20.0に相当)とし、触媒の調製を行った。
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照)300gとC5留分(表3参照)200gを仕込んだ(C9留分/C5留分=60/40(重量%))。それ以外は、実施例2と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件(割合)を表4に示す。
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は81%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も6と優れるものであった。
【0053】
比較例2
三フッ化ホウ素1.00g、フェノール0.42gおよびジエチルエーテル0.76gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.0、フェノール/エーテル(モル比)が0.4に相当)を用いた以外は、実施例3と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表4に示す。
【0054】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は59%で、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相は10であった。
【0055】
実施例4
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照)250gとC5留分(表3参照)250gを仕込んだ(C9留分/C5留分=60/40(重量%))。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、三フッ化ホウ素フェノール錯体2.00gおよび三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.25gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計モル比が1.4、フェノール/エーテル(モル比)が1.7に相当)を加えて40℃で2時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
【0056】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は70%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も5と優れるものであった。
【0057】
比較例3
三フッ化ホウ素1.20g、フェノール4.49gおよびジエチルエーテル0.13gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が2.8、フェノール/エーテル(モル比)が27.0に相当)を用いた以外は、実施例4と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表4に示す。
【0058】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は59%で、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相は12であった。
【0059】
実施例5
原料油にジブチルエーテル0.58gを先に添加した後、三フッ化ホウ素フェノール錯体4.00g(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.9、フェノール/エーテル(モル比)が6.7に相当)を用いた以外は、実施例4と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表4に示す。
【0060】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は84%で、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相は6であった。
【0061】
実施例6
三フッ化ホウ素フェノール錯体3.00gおよび三フッ化ホウ素ジブチルエーテル錯体0.87gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計モル比が1.5、フェノール/エーテル(モル比)が5.1に相当)を加える以外は、実施例4と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表4に示す。
【0062】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は80%で、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相は6であった。
【0063】
実施例7
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.88gおよびフェノール0.62gを混合(三フッ化ホウ素に対するフェノールとエーテルの合計(モル比)が1.5、フェノール/エーテル(モル比)が0.5に相当)し、石油樹脂製造用触媒の調製を行った。
【0064】
内容積2リットルのガラス製オートクレーブに、原料油としてナフサの分解により得たC9(B)留分(表1参照)500gを仕込んだ。次に、窒素雰囲気下で40℃に加熱した後、得られた石油樹脂製造用触媒2.51g(原料油100重量部に対して、0.50重量部に相当。)を加えて40℃で3時間重合した。仕込条件(割合)を表4に示す。
【0065】
重合反応終了後、苛性ソーダ水溶液を添加して中和した後、ろ過によりゲル分を回収し、乾燥してゲル分の重量を測定した。また、油層の未反応油を蒸留して石油樹脂を回収した。
【0066】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は88%であり、得られた石油樹脂はゲルを含まず、色相も7と優れるものであった。
【0067】
比較例4
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.88gを用いた以外は、実施例7と同様の方法により石油樹脂の製造を行った。仕込条件を表4に示す。
【0068】
得られた石油樹脂の物性を表5に示す。モノマー重合転化率は71%、色相が11と悪いものであった。
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0071】
色相および原料油のモノマー重合転化率に優れ、ゲル分の少ない石油樹脂、特にジシクロペンタジエン類を多く含有する原料油を用いることをも可能とする新規な石油樹脂製造用触媒およびそれを用いた石油樹脂の製造方法を提供するものであり、その産業的価値は極めて高いものである。