特許第6326774号(P6326774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6326774
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】プロピレン重合体組成物
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20180514BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20180514BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
   C08J9/14CES
   C08L23/10
   C08L23/06
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-235463(P2013-235463)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-93963(P2015-93963A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山川 浩
(72)【発明者】
【氏名】逸見 隆史
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/150285(WO,A1)
【文献】 特開2003−089735(JP,A)
【文献】 特開2003−165859(JP,A)
【文献】 特開2010−275499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/14
C08L 23/06
C08L 23/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン重合体100重量部に対し、ビニリデン基量(Vd)が1.2個/10C以上2.1個/10C以下であり、メルトフローレート(MFR)(測定条件:190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10分以上6.0g/10分以下である高圧法低密度ポリエチレン1〜100重量部含むことを特徴とするプロピレン重合体組成物よりなる発泡成形体
【請求項2】
高圧法低密度ポリエチレンの溶融張力(測定条件:温度190℃、引取速度0.5m/分)が50mN以上200mN以下であることを特徴とする請求項1に記載の発泡成形体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプロピレン重合体と高圧法低密度ポリエチレンからなる、優れた発泡成形性を有するプロピレン重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロピレン重合体は、安価で物理的特性に優れており、射出成形、押出成形などの一般的な樹脂成形法により成形され、広範な用途で使用されている。しかし、プロピレン重合体の溶融粘度、及び溶融張力(MS)は低く、押出成形など、高い溶融粘度が必要とされる特定の成形法には適用しにくいという問題があった。また、MSが小さいため、発泡成形等の高MSを要求される成形法を用いた場合、発泡過程で気泡が破れやすいという問題があることが知られている。また、ブロー成形、及び、溶融紡糸などの成形方法では溶融粘度、及びMSが小さいため、溶融した樹脂が自重で伸長変形し、形状を保持出来ず、これらの成形方法を用いることは困難であった。
【0003】
このような問題を解決するため、プロピレン重合体のMSを大きくする検討が行われてきた。例えば、直鎖状プロピレン重合体に酸素存在下で電子線やガンマ線などの高エネルギーイオン化放射線を照射して長鎖分岐を生じさせ、プロピレン重合体自体を高MS化する方法(例えば、特許文献1参照。)、ゴム状重合体にビニル系単量体をグラフト共重合したコア−シェルグラフト共重合体を、プロピレン重合体に添加する方法(例えば、特許文献2参照。)、エチレン−α−オレフィン共重合ゴムとポリアミド繊維をプロピレン重合体に添加する方法も提案されている(例えば、特許文献3参照)。しかしながら、特許文献1の方法では、高エネルギーイオン化放射線の照射装置が必要となるばかりでなく、酸素存在下で高エネルギーイオン化放射線を照射する工程、及び、放射線照射後に、放射線照射によって生じた反応活性種を失活させる工程が必須となり、操作が複雑な上に、経済性にも劣っていた。特許文献2に記載されている方法では、多量のコア−シェルグラフト共重合体を添加しなければならないという問題があった。また、特許文献3に開示されている方法では、プロピレン重合体はポリアミド繊維との相溶性が低く、ポリアミド繊維がプロピレン重合体中に均一分散せず、更に繊維とプロピレン重合体樹脂間の密着性が低いため、成形品の外観不良、及び強度低下等の問題があった。
【0004】
一方、プロピレン重合体に高圧ラジカル重合法で製造される高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)を添加し、高MSのブレンド物を得る方法も知られている。本手法ではLDPEの添加量が少ない場合にはMS増大効果が小さく、一方、MSを増大させるために大量のLDPEを添加すると、プロピレン重合体の特長である剛性が低下するという問題があった。従い、プロピレン重合体が持つ剛性等の特長を保持したまま、プロピレン重合体を高MS化することが求められていた。本課題を解決するためには添加するLDPEのMSを従来よりも大きくする必要が有る。このような背景から、高MSのLDPEを得る方法が開示されているが、これらは何れも反応器で製造された製品ペレットを後処理する技術である。例えば、電子線或いは放射線を照射して高圧法低密度ポリエチレンを部分的に架橋する方法が知られている(例えば特許文献4,5)。しかし、この方法では専用の照射装置が必要となる上、大量の樹脂の処理には高いコストがかかり、経済性に劣っていた。また、LDPEに有機過酸化物を添加した上で溶融混合し、部分的に架橋することによりMSを増大させる方法が知られている(例えば、特許文献6)。この手法は通常の押出機による処理が可能であるが、LDPEを均一に架橋させるのが難しい上に、コストがかかるという問題があった。更に簡便な手法として、何らの添加剤も添加せず、LDPEのみを溶融混練してMSを増大させる手法も開示されている(例えば特許文献7,8)。しかし、本手法においては重合反応器で製造されたLDPEのペレットを再度、溶融混練し、高MS化した後、再度プロピレン重合体に添加して溶融混練を行う必要があり、経済性の更なる改善が求められていた。
【0005】
上記のように、従来技術では溶融粘度、及び溶融張力が何れも大きなプロピレン重合体を得るために、プロピレン重合体自体の後処理を行う、或いは、プロピレン重合体樹脂にLDPE等を添加する方法が知られているが、成形性と経済性を満足する有効な手法は見出されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−298536号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平5−339433号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−181162号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開平09−31256号公報
【特許文献5】特開2000−159947号公報
【特許文献6】特許第3044256号公報
【特許文献7】特願2012−235696号
【特許文献8】特願2012−286960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、優れた発泡成形性を有し、経済性にも優れたプロピレン重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の課題を鑑みてなされたものであり、優れた発泡成形性を有し、経済性にも優れたプロピレン重合体組成物を提供することを目的とする。本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の高圧法低密度ポリエチレンが溶融押出成形中に溶融張力が著しく増大する特徴を有していることに着目し、溶融張力を増大させるために溶融混練等の加熱処理、或いは、架橋剤等の添加による架橋反応を行わず、高圧法製造装置により製造して得られた該高圧法低密度ポリエチレンのペレットを直接プロピレン重合体に配合するだけで、発泡成形性に優れたプロピレン重合体組成物が得られることを見出し本発明を完成するに至った。該組成物は押出発泡成形前にはMS、及び溶融粘度が小さいためプロピレン重合体とブレンドした組成物は流動性が高く、押出負荷が小さく経済性に優れている。更に、該組成物のMSは押出加工時に徐々に増大し、押出機出口付近で最大となるため、押出発泡成形においては、押出された溶融樹脂のMSは押出前のMSに比べ、極めて高くなっている。このため、押出された溶融樹脂が発泡する過程では、気泡が破裂しないだけの十分なMSを有するという従来にない特長を有している。
【0009】
すなわち、本発明は、プロピレン重合体100重量部に対して、ビニリデン基量(Vd)が1.2個/10C以上2.1個/10C以下であり、メルトフローレート(MFR)(測定条件:190℃、2.16kg荷重)が0.1g/10分以上6.0g/10分以下である高圧法低密度ポリエチレン1〜100重量部を含むことを特徴とするプロピレン重合体組成物、及び該高圧法低密度ポリエチレンの溶融張力(測定条件:温度190℃、引取速度0.5m/分)が50mN以上200mN以下であることを特徴とするプロピレン重合体組成物に関するものである。
【0010】
本発明で用いるプロピレン重合体は、一般に、プロピレン系重合体の範疇に属するものであれば、エラストマーを除き、結晶性樹脂である限り如何なるものでもよく、好ましくは、プロピレンの単独重合体、および80重量%以上のプロピレンと20重量%以下の他のα−オレフィン、例えば、エチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などとのブロックまたはランダム共重合体などが挙げられる。これらのプロピレン重合体は、1種または2種以上を併用してもよい。本発明で用いるプロピレン重合体としては、JIS K 7210に従い、230℃、荷重2.16kgで測定したMFRが、0.05〜1000g/10分であるものが好ましく、更に好ましくは0.1〜700g/10分である。MFRがこの範囲にあれば押出発泡成形性に優れた組成物が得られる。
【0011】
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンのビニリデン基量は1.2個/10C以上2.1個/10C以下であり、好ましくは1.3個/10C以上1.9個/10C以下であり、更に好ましくは1.5個/10C以上1.8個/10C以下である。ビニリデン基量が1.2個/10C未満であると発泡体の独立気泡率及び発泡倍率が低下し、2.1個/10Cを超えると成形時の樹脂の流動性が低下するため好ましくない。
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンのMFRは0.1g/10分以上6.0g/10分以下であり、好ましくは0.5g/10分以上5.0g/10分以下、更に好ましくは1.0g/10分以上5.0g/以下である。0.1g/10分未満では成形時の樹脂の流動性が低下し、また、6.0g/10分を超えると発泡倍率、及び、独立気泡率が低下するため好ましくない。
【0012】
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンの溶融張力(測定条件:温度190℃、引取速度0.5m/分)は50mN以上200mN以下が好ましく、好ましくは60mN以上180mN以下、更に好ましくは70mN以上160mNである。溶融張力がこの範囲内にあると独立気泡率、及び発泡倍率が何れも大きく、製品の歩留りが高くなるため好ましい。
【0013】
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンの分子量分布は特に制限されないが、押出加工性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比で定義される分散度(Q)=Mw/Mnが7以上12以下が好ましく、更に好ましくは8以上11以下である。
【0014】
高圧法低密度ポリエチレン中のビニリデン基、トランスビニレン基等の二重結合は重合反応器中でβ−切断反応として知られている分子鎖の切断反応により生成する。この分子切断反応の頻度は反応温度が高いほど、また反応圧力が低いほど高くなるが、分子切断反応は分子量を低下させる(MFRが増大する)ため、ビニリデン基量を上げる反応温度、及び反応圧力の条件は、高分子量化させる条件と相反する。従い、本発明で用いる高ビニリデン基含有量、かつ高分子量(低MFR)の高圧法低密度ポリエチレンを製造する方法は従来知られていなかった。
【0015】
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンの製造はラジカル重合開始剤の存在下で、溶媒の存在下あるいは不存在下において、必要に応じて主に分子量調節を目的に連鎖移動剤を添加して、高圧圧縮機を備えた連続式のベッセル型、或いはチューブラー型高圧法低密度ポリエチレン製造装置により製造できるが、重合装置としては反応器内部の温度分布を制御し易いベッセル型重合装置が好適に用いられる。本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンは、エチレン流量、エチレンガス温度、ラジカル開始剤量の最適化により反応器入口と出口の間に、必要に応じて予め設定した温度勾配を生じさせると同時に、この温度勾配の大きさに応じた最適な反応圧力を設定することにより容易かつ効率的に製造出来る。
具体的には、本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンは、反応器内の平均反応温度を出来る限り高温にしてビニリデン基量を高め、同時に、MFRを可能な限り低下させるため、高分子量成分を生成する低温領域を同一反応器内に設けて、反応器内部に温度勾配を生じさせた上で、所望のビニリデン基量とMFRとなるように、反応圧力、及び反応器内部に供給するエチレンの温度を最適化することで容易、かつ効率的に製造することが出来る。
重合圧力としては100MPa以上400MPa以下、好ましくは150MPa以上190MPa以下が用いられる。この圧力の範囲内であれば、ビニリデン基量が高く、かつMFRが低い高圧法低密度ポリエチレンを得ることが出来るため好ましい。
【0016】
反応温度としては100℃以上330℃以下、好ましくは200℃以上280℃以下が用いられる。反応器内部の最高温度と最低温度の差は10℃以上200℃以下、好ましくは13℃以上100℃以下の条件が用いられる。反応器の温度が100℃以上であり、かつ反応器上部と下部の温度差が上記の範囲内であれば、ビニリデン基量が高く、かつMFRが低い高圧法低密度ポリエチレンを得ることが出来るため好ましい。
【0017】
反応器に供給するエチレンの供給量と温度は、反応圧力、反応温度に依存し、所望のビニリデン基量とMFRとするため、適宜変更され、エチレン供給量は生産速度に応じても適宜変更し得る。エチレン供給量としては10kg/h以上30kg/h以下が用いられ、エチレンの温度は10℃以上100℃以下が用いられる。エチレン供給量が10kg/h以上であり、エチレン温度が10℃以上であれば、高圧法低密度ポリエチレンが経済性に優れた生産速度で製造出来るため好ましい。
【0018】
ラジカル重合開始剤としては例えば酸素、過酸化水素、ジエチルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシピバレート等を用いることが出来るが、反応温度に応じて最適な分解温度の開始剤を選定出来る。本発明で用いる開始剤の量は、開始剤の種類、反応器内部の温度、高圧反応器へ導入するエチレン流量、及びエチレンの温度に合わせ適宜調整されるため、厳密に特定の範囲に限定し得るものではないが、一般的には1〜25kg/hである。
【0019】
連鎖移動剤は主に分子量の増大を抑える目的で使用でき、また二重結合量を増加させる目的でも使用できる。連鎖移動剤の例としてはエタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のオレフィン化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等のアルデヒド化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素等が挙げられる。
【0020】
本発明で用いる高圧法低密度ポリエチレンは高圧法製造装置により製造されたペレットを、溶融混練等の後処理、及び、架橋剤等の添加剤を添加する必要がなく、直接、プロピレン重合体に添加して押出発泡成形性の改良に利用出来る。該高圧法低密度ポリエチレンを添加したプロピレン重合体のMS、及び溶融粘度は押出加工前には小さいが、溶融加工により著しく増大するため、プロピレン重合体に少量添加することによりプロピレン重合体の押出発泡成形性を改良出来るという特徴を有している。
【0021】
本発明のプロピレン重合体組成物の組成に制限はないが、例えば、押出成形加工に対してはプロピレン重合体100重量部に対して、高圧法低密度ポリエチレンを1〜100重量部の配合比が用いられ、高圧法低密度ポリエチレンの配合比率は、好ましくは5〜20重量部、より好ましくは5〜15重量部である。この配合比率であれば押出特性、及び発泡性に優れた高圧法低密度ポリエチレン組成物が得られるため好ましい。
【0022】
本発明の高圧法低密度ポリエチレン組成物において、プロピレン重合体と高圧法低密度ポリエチレンのブレンド法は特に制限は無く、例えば、ドライブレンド、溶融ブレンド等が好適に用いられる。また、必要に応じて溶液ブレンドを行うことも出来る。
【0023】
本発明のプロピレン重合体の加工法は特に制限されず、例えば、射出発泡成形、ブロー成形、及び、シート成形等の押出発泡成形が例示される。
【0024】
また、本発明のプロピレン重合体重合体組成物には、本組成物の加工性を損なわない範囲で、他のポリオレフィンを混合して使用してもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明のプロピレン重合体組成物を用いることで、優れた性状を有する発泡成形体を経済的に製造出来る。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。
【0027】
以下に本発明において用いた物性評価方法、分析方法、溶融混練方法を示す。
(1)ビニリデン基量
樹脂を窒素下、150℃、2分間プレスを行って厚み200μmのフィルムを作製し、パーキンエルマー社製Spectrum One赤外分光光度計を用い、ビニリデン基の特性吸収ピーク888cm−1を用いて定量分析し、炭素原子10000個当たりのビニリデン基の個数(個/10C)を求めた。
(2)分子量分布
東ソー(株)製HLC−8121GPC/HTに、カラムTSKgel GMHhr−H(20)HTを3本連結し、カラム温度140℃、溶剤1,2,4−トリクロロベンゼン、
サンプル濃度1.0mL/1mL、注入量0.3mLの条件で測定を行い、直鎖ポリエ
チレンに換算した数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)から分散度Qを算出
した。
(3)密度
JIS K6922−1(1997年)に準拠して測定した。
(4)メルトフローレート(MFR)
JIS K6922−1に準拠して測定した。
(5)溶融張力(MS)
設定温度23℃の恒温室内で、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、製品名:キャピログラフ)を用いて、長さ8mm、直径2.095φ、流入角90℃のフラットダイを使用し、温度190℃で、樹脂を18g充填し、ピストン降下速度10mm/分、引取速度0.5mで引取った際に必要な張力を溶融張力とした。
(6)発泡倍率
プロピレン重合体樹脂組成物を使用して押出発泡成形された発泡成形体から、直径5cm×長さ10cmの円筒状の発泡体を切り出し、重量W(g)を測定し、JIS K6767に準拠して、次式で見掛密度を算出した。
【0028】
見掛密度(g/cm)=W/(2.5×π×10)
発泡倍率は、この見掛密度より、次式で求めた。
【0029】
発泡倍率=1/見掛密度
〔発泡成形体の気泡形状〕
プロピレン重合体樹脂組成物を使用して押出発泡成形された発泡成形体の外観、および断面における気泡の状態を顕微鏡で観察し、発泡体が、概して、円滑な表面を有し、独立気泡からなる場合には○、発泡体が、概して、外観が凹凸で、連続気泡からなる場合には×と2段階法により評価した。
【0030】
〔発泡成形体の独立気泡率〕
プロピレン重合体樹脂組成物を使用して成形された発泡成形体の独立気泡率(S)(%)は、ASTM D2856−70に記載の手順Cに準拠し、東芝ベックマン株式会社製の空気比較式比重計930型を使用して測定される発泡体の実容積(独立気泡の容積と樹脂部分の容積との和)V(L)、測定に使用した発泡体試験片の外寸法から計算される見掛け容積V(L)、試験片の重量W(g)、試験片を構成する樹脂の密度ρ (g/L)を用い、下記式により算出した。
【0031】
S(%)=(V−V)×100/(V−W/ρ)
尚、試験片を構成する樹脂の密度ρ(g/L)及び試験片の重量W(g)は、発泡体試験片を加熱プレスにより気泡を脱泡させてから冷却する操作を行い、得られた試験片から求めることができる。
【0032】
〔発泡成形体の引裂き強さ〕
プロピレン重合体樹脂組成物を使用して押出発泡成形された発泡成形体を手で引裂いた際の引裂け難易度により、容易に引裂けない場合には○、容易に引裂ける場合には×、両者の中間程度の引裂け易さを△とし、3段階法により評価した。
【0033】
本発明で用いた高圧法低密度ポリエチレン(B)の合成例を以下に示す。
【0034】
合成例1
[高圧法低密度ポリエチレン(B−1)の製造]
ベッセル型反応器に往復型高圧圧縮機で圧縮したエチレン22.1kg/hを温度33℃で圧入し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド17.5g/hを添加し、圧力164MPa、反応器上部の温度250℃、反応器下部の温度271℃で連続的に重合して密度は918.0kg/m、ビニリデン基量1.21個/10C、Q10.5、MFR4.0g/10分、MS89mNの高圧法低密度ポリエチレン(B−1)を得た。
【0035】
合成例2
[高圧法低密度ポリエチレン(B−2)の製造]
ベッセル型反応器に往復型高圧圧縮機で圧縮したエチレン22.8kg/hを温度35℃で圧入し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド13.8g/hを添加し、圧力180MPa、反応器上部の温度257℃、反応器下部の温度277℃で連続的に重合して密度918.3kg/m、ビニリデン基量1.52個/10C、Q10.5、MFR2.8g/10分、MS113mNの高圧法低密度ポリエチレン(B−2)を得た。
【0036】
合成例3
[高圧法低密度ポリエチレン(B−3)の製造]
ベッセル型反応器に往復型高圧圧縮機で圧縮したエチレン21.1kg/hを温度33℃で圧入し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド13.6g/hを添加し、圧力180MPa、反応器上部の温度257℃、反応器下部の温度278℃で連続的に重合して密度917.9kg/m、ビニリデン基量1.63個/10C、Q10.7、MFR4.8g/10分、MS77mNの高圧法低密度ポリエチレン(B−3)を得た。
【0037】
合成例4
[高圧法低密度ポリエチレン(B−4)の製造]
ベッセル型反応器に往復型高圧圧縮機で圧縮したエチレン23.4kg/hを温度33℃で圧入し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド7.3g/hを添加し、圧力185MPa、反応器上部の温度262℃、反応器下部の温度265℃で連続的に重合して密度918.3kg/m、ビニリデン基量1.50個/10C、Q8.3、MFR11.0g/10分、MS47mNの高圧法低密度ポリエチレン(B−4)を得た。
【0038】
合成例5
[高圧法低密度ポリエチレン(B−5)の製造]
ベッセル型反応器に往復型高圧圧縮機で圧縮したエチレン20.1kg/hを温度36℃で圧入し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド8.4g/hを添加し、圧力162MPa、反応器上部の温度231℃、反応器下部の温度247℃で連続的に重合して密度924.6kg/m、ビニリデン基量0.70個/10C、Q7.6、MFR3.8g/10分、MS29mNの高圧法低密度ポリエチレン(B−5)を得た。
【0039】
合成例6
[高圧法低密度ポリエチレン(B−6)の製造]
ベッセル型反応器に往復型高圧圧縮機で圧縮したエチレン24.0kg/hを温度29℃で圧入し、重合開始剤としてt−ブチルパーオキサイド10.9g/hを添加し、圧力183MPa、反応器上部の温度256℃、反応器下部の温度264℃で連続的に重合して密度919.2kg/m、ビニリデン基量1.10個/10C、Q9.8、MFR1.7g/10分、MS132mNの高圧法低密度ポリエチレン(B−6)を得た。
【0040】
実施例1
[プロピレン重合体組成物の製造]
プロピレン重合体(日本ポリプロ(株)製 商品名FX4E、密度900kg/m、MFR5g/10分)と合成例1で得られたLDPE(B−1)を70:30(重量%)でドライブレンド後、バレルの温度をC1;180℃、C2;200℃、C3;220℃、ダイヘッド;220℃としたプラコー社製50mm径単軸押出機を用いて溶融混合して、プロピレン重合体樹脂組成物を調製した。
[プロピレン重合体組成物の押出発泡成形体の製造]
プロピレン重合体組成物100重量部に対し、発泡核剤として平均粒径8μmのタルクを0.7重量部の割合で含有する発泡成形用プロピレン重合体組成物をメルトブレンドにより調製した。バレルの途中に揮発性液体注入用のバレル孔を有する単軸押出機(スクリュー径50mmφ、L/D=36、共伸機械製)の発泡成形用押出設備を用い、発泡成形用プロピレン重合体樹脂組成物を10kg/時で供給し、溶融混練を行った。さらに、揮発性液体であるブタンを700g/時でバレル孔から圧入して、該ブタンを分散させ、発泡成形体表面に凹凸が発生しない最低の樹脂温度である160℃に設定した丸棒用ダイ(径13mmφ)により棒状の発泡成形体を押出した。該棒状発泡成形体の外側に空気を吹き付け5.0m/分で引き取り、発泡成形体を得た。
【0041】
上記製造法にて作成したプロピレン重合体組成物の発泡成形体について、独立気泡率、発泡倍率、発泡体形状および引裂き強さを評価した。得られたプロピレン重合体樹脂組成物の物性および発泡成形体の評価結果を表1に示す。
【0042】
実施例2
実施例1において、高圧法低密度ポリエチレンとして(B−2)を用いた以外は、実施例1と同様に、プロピレン重合体組成物の押出発泡成形を行った。評価結果を表1に示す。
【0043】
実施例3
実施例1において、高圧法低密度ポリエチレンとして(B−3)を用いた以外は、実施例1と同様に、プロピレン重合体組成物の押出発泡成形を行った。評価結果を表1に示す。
【0044】
実施例4
実施例1において、高圧法低密度ポリエチレン/プロピレン重合体配合比を20:80(重量%)に変えたこと以外は、実施例1と同様に、プロピレン重合体組成物の押出発泡成形を行った。評価結果を表1に示す。
実施例5〜10
実施例1で用いたプロピレン重合体、及び高圧法低密度ポリエチレンとして合成例1〜3で製造した(B−1)、(B−2)及び(B−3)を表1に示した配合比率でブレンドしたものを用いて、実施例1と同様に、プロピレン重合体組成物の押出発泡成形を行った。評価結果を表1に示す。
【0045】
比較例1
実施例1において、高圧法低密度ポリエチレンとして合成例4で得られた(B−4)を用いた以外は、実施例1と同様に、プロピレン重合体組成物の押出発泡成形を行った。評価結果を表1に示す。
【0046】
比較例2〜8
実施例1で用いたプロピレン重合体、及び高圧法低密度ポリエチレンとして合成例4〜6で製造した(B−4)、(B−5)及び(B−6)を表1に示した配合比率でブレンドしたものを用いて、実施例1と同様に、プロピレン重合体組成物の押出発泡成形を行った。評価結果を表1に示す。
【0047】
【表1】