特許第6327073号(P6327073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6327073水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6327073
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/06 20060101AFI20180514BHJP
【FI】
   C07F9/06
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-179854(P2014-179854)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-53011(P2016-53011A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年8月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 敏秀
【審査官】 福山 則明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−020981(JP,A)
【文献】 特開2013−112646(JP,A)
【文献】 特開2011−132178(JP,A)
【文献】 特開2010−150514(JP,A)
【文献】 特開平09−048789(JP,A)
【文献】 特開平07−053580(JP,A)
【文献】 特開2003−012680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 9/02−9/6596
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記(1)工程〜(3)工程を経てなることを特徴とする水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法。
(1)工程;溶液中に含まれる下記一般式(1)で示される水酸化イミノホスファゼニウムを塩素化炭化水素及び/又は臭素化炭化水素より選択されるハロゲン化炭化水素と接触し、下記一般式(2)で示されるハロゲン化イミノホスファゼニウムとする工程。
【化1】
(式中、R1,R2は各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜10のフェニル基又はアルキルフェニル基を表し、R1とR2又はR2同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。)
【化2】
(式中、R1,R2は、上記一般式(1)で示されるものを示す。また、Xは、塩素原子又は臭素原子を表す。)
(2)工程;(1)工程により得られたハロゲン化イミノホスファゼニウム溶液の溶媒置換を行ない、ハロゲン化イミノホスファゼニウムの析出後、ろ別により精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを回収する工程。ただし、該(2)工程における溶媒置換の際の溶媒は、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンからなる群より選択される1種または2種以上である。
(3)工程;(2)工程により回収した精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを有機溶媒に溶解した後、塩基性物質と接触し、水酸化イミノホスファゼニウムとする工程。
【請求項2】
前記(1)工程におけるハロゲン化炭化水素が、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンからなる群より選択される少なくとも1種以上のハロゲン化炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載の水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法。
【請求項3】
前記(2)工程における溶媒置換の際の溶媒が、トルエンまたはキシレンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法。
【請求項4】
前記一般式(1)で示される水酸化イミノホスファゼニウムがテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドであり、前記一般式(2)で示されるハロゲン化イミノホスファゼニウムがテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物を含む水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液から、効率よく不純物を除去する方法に関するものである。さらに詳しくは、少なくとも不純物を含む水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液とハロゲン系炭化水素とを接触し、ハロゲン化イミノホスファゼニウムとする工程、ハロゲン化イミノホスファゼニウムを析出させた後、ろ別して不純物を除去する工程、ハロゲン化イミノホスファゼニウムを有機溶媒中で塩基性物質と接触し、水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液とする工程を経ることにより効率的な水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法となるものである。
【背景技術】
【0002】
水酸化イミノホスファゼニウムは、溶解度パラメータが10(cal/cm1/2以上であるプロトン性有機溶媒を少なくとも1種類以上含有する溶媒中では安定性が向上することが報告されている(例えば特許文献1参照。)。しかしながら、水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液は、40℃を超える高温条件下で6ケ月以上の長期間にわたって保管すると、水酸化イミノホスファゼニウムの分解等により純度低下を起こす場合があり、例えばNMR純度が70%以下となった水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液では、塩基触媒としての十分な性能が得られないという課題が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−020981号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そして、特許文献1においては、不安定な水酸化イミノホスファゼニウムをアルコール類等の溶液とすることにより安定化することが提案され、10日後のNMR純度が90%以上を維持することが可能であるとの記載がなされている。しかし、数ヶ月単位の長期保存安定性や、純度低下の有無、更には水酸化イミノホスファゼニウムの分解等により生成した不純物を除去する方法等に関しては検討されておらず、水酸化イミノホスファゼニウムの純度が低下した場合に、不純物を含む水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液から不純物を除去するための有効な精製方法が求められていた。
【0005】
本発明は、不純物を含有する水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液から、効率よく不純物を除去する水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法を提供すことを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、不純物を含む水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液を特定の工程を経て精製することにより効率よく不純物を除去することが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は、少なくとも下記(1)工程〜(3)工程を経てなる水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法に関するものである。
(1)工程;溶液中に含まれる下記一般式(1)で示される水酸化イミノホスファゼニウムを塩素化炭化水素及び/又は臭素化炭化水素より選択されるハロゲン化炭化水素と接触し、下記一般式(2)で示されるハロゲン化イミノホスファゼニウムとする工程。
【0008】
【化1】
(式中、R,Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜10のフェニル基又はアルキルフェニル基を表し、RとR又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良い。)
【0009】
【化2】
(式中、R,Rは、上記一般式(1)で示されるものを示す。また、Xは、塩素原子又は臭素原子を表す。)
(2)工程;(1)工程により得られたハロゲン化イミノホスファゼニウム溶液の溶媒置換を行ない、ハロゲン化イミノホスファゼニウムの析出後、ろ別により精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを回収する工程。
(3)工程;(2)工程により回収した精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを有機溶媒に溶解した後、塩基性物質と接触し、水酸化イミノホスファゼニウムとする工程。
【0010】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明の水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液の精製方法は、少なくとも上記(1)工程〜(3)工程を経てなる精製方法である。
【0012】
ここで、(1)工程は、溶液中に含まれる上記一般式(1)で示される水酸化イミノホスファゼニウムを該ハロゲン化炭化水素と接触し、上記一般式(2)で示されるハロゲン化イミノホスファゼニウムとする工程であり、該(1)工程は、該水酸化イミノホスファゼニウムを該ハロゲン化炭化水素と接触することによりハロゲン化イミノホスファゼニウムにイオン変換する工程である。
【0013】
その際の該水酸化イミノホスファゼニウムは、上記一般式(1)で示される範疇に属するものであればいかなる方法により製造されたものでも良く、例えば特開2013−112646号公報の合成例、実施例等に記載の方法により製造することができる。
【0014】
該水酸化イミノホスファゼニウムにおけるR,Rは各々独立して炭素数1〜10のアルキル基、無置換の若しくは置換基を有する炭素数6〜10のフェニル基又はアルキルフェニル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−ブチル基、1−ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、2−メチル−1−ブチル基、イソペンチル基、tert−ペンチル基、3−メチル−2−ブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチル−2−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ヘプチル基、3−ヘプチル基、1−オクチル基、2−オクチル基、2−エチル−1−ヘキシル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基、ノニル基、デシル基、フェニル基、4−トルイル基、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基等の脂肪族又は芳香族の炭化水素基が例示され、その中でもメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、tert−ペンチル基、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基等の炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。また、RとR、又はR同士が互いに結合して環構造を形成していても良く、そのような置換基として、例えばジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等を挙げることができ、製造が容易であることからRとRが互いに結合して環構造を形成する場合は、テトラメチレン基が好ましく、R同士が互いに結合して環構造を形成する場合はジメチレン基が好ましい。そして、該水酸化イミノホスファゼニウムの具体例としては、例えばテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスファゼニウムヒドロキシド等を例示でき、特に強塩基性を有するものとなることから、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドが好ましい。
【0015】
水酸化イミノホスファゼニウム溶液を構成する溶媒としては、水酸化イミノホスファゼニウムを溶解可能な溶媒であれば如何なるものでもよく、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、グリセリン等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の多価アルコール誘導体;エチレンジアミン、アニリン、アセトニトリル等の含窒素化合物等を挙げることができ、その中でも入手が容易であり、保存時の安定性に優れる水酸化イミノホスファゼニウム溶液となることから、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のモノアルコールが好ましい。
【0016】
該ハロゲン化炭化水素は、塩素化炭化水素及び/又は臭素化炭化水素より選択されるものであり、水酸化イミノホスファゼニウムと接触することによりハロゲン化イミノホスファゼニウムにイオン交換を行うことが可能であれば特に制限はなく、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、ブロモホルム、1,2−ジブロモエタン、1,1−ジブロモエタン、1,1,1−トリブロモエタン、1,1,2−トリブロモエタン、1,1,2,2−テトラブロモエタン等を例示することができ、イオン交換反応が速く、ハロゲン化イミノホスファゼニウム生成後の不純物の除去が容易であることから、クロロホルム、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタンが好ましい。
【0017】
その際のハロゲン化炭化水素の使用量としては、適宜選択可能であり、その中でも水酸化イミノホスファゼニウムからハロゲン化イミノホスファゼニウムへのイオン交換の反応速度が速く、イオン交換反応が十分に進行することから、水酸化イミノホスファゼニウム1モルに対して0.9モル〜10モルの範囲であることが好ましく、特に1.1モル〜7モルの範囲であることが好ましく、更に1.5モル〜5モルの範囲であることが好ましい。
【0018】
該水酸化イミノホスファゼニウムとハロゲン化炭化水素とを接触する際の方法としては、特に制限はなく、例えば水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液に対してハロゲン化炭化水素を1度に全量供給する方法、逐次的に供給する方法、一定速度で連続的に供給する方法などが挙げられる。そして、反応熱による急激な発熱を抑制するため、水酸化イミノホスファゼニウム溶液に対して、温度上昇を伴わないように一定の速度でハロゲン化炭化水素を連続的に供給することが好ましい。また、ハロゲン化炭化水素の供給時間は、溶液の濃度や製造のスケールにより選択可能であり、例えば0.01〜10時間の範囲を挙げることができ、中でも反応温度の制御が容易となることから1〜8時間の範囲であることが好ましい。
【0019】
イオン交換を行う際の反応温度としては、例えば0〜70℃を挙げることができ、好ましく10〜50℃である。イオン交換時の反応系の雰囲気は、空気下またはヘリウム、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下の何れで行っても良く、中でも窒素などの不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。
【0020】
該(1)工程におけるイオン交換により生成するハロゲン化イミノホスファゼニウムは、上記一般式(2)で示される範疇に属するものであり、該ハロゲン化イミノホスファゼニウムにおけるR,Rは、上記一般式(1)で示されたものである。また、Xは塩素原子又は臭素原子である。そして、該ハロゲン化イミノホスファゼニウムの具体例としては、例えばテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトラエチルグアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−プロピル)グアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトライソプロピルグアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトラ(n−ブチル)グアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトラフェニルグアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,1,3,3−テトラベンジルグアニジノ)ホスファゼニウムブロミド、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスファゼニウムクロリド、テトラキス(1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−イミノ)ホスファゼニウムブロミド等を例示でき、その中でも水酸化物へのイオン交換を温和な条件で行うことが可能であり、イオン交換して得られる水酸化イミノホスファゼニウムが強塩基性を有することから、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドが好ましい。
【0021】
本発明の水酸化イミノホスファゼニウムの精製方法における(2)工程は、(1)工程により得られたハロゲン化イミノホスファゼニウム溶液の溶媒置換を行ない、ハロゲン化イミノホスファゼニウムの析出後、ろ別により精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを回収する工程であり、該(2)工程は、(1)工程により得られるハロゲン化イミノホスファゼニウムを不溶の溶媒に置換し、析出したハロゲン化イミノホスファゼニウムをろ過により分離精製する工程である。
【0022】
その際にハロゲン化イミノホスファゼニウムを析出させるために置換する溶媒としては、ハロゲン化イミノホスファゼニウムが不溶で、不純物が溶解可能な溶媒であれば特に制限はなく、例えばヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、その中でも、ハロゲン化イミノホスファゼニウムの溶解性が低く、不純物の溶解性が高いばかりでなく、ハロゲン化イミノホスファゼニウムの析出晶の分散性にも優れることからトルエン、キシレンが好ましい。また、これらの溶媒は、単独でも2種以上を混合して用いてもよい。
【0023】
該置換溶媒の使用量としては、例えばハロゲン化イミノホスファゼニウムの重量に対して1〜10倍の範囲、特に2〜6倍の範囲であることが好ましい。また、溶媒による溶媒置換は、該水酸化イミノホスファゼニウムを溶解している溶媒やイオン交換に用いるハロゲン化炭化水素により適宜選択可能であり、例えば30〜100℃の温度範囲で、15kPa〜1.5kPaの減圧下にて、溶媒全量の10〜50重量%まで濃縮した後に置換溶媒を添加することが好ましい。該置換溶媒は、一度に全量添加しても良いが、十分に溶媒を置換するため、2回から3回に分割して添加することが好ましい。分割して添加する場合は、30〜100℃の温度範囲、15〜1.5kPaの減圧下で、全溶媒量に対して30重量%以下に濃縮した後に再度置換溶媒を添加し、同操作を繰り返すことにより、溶媒置換を行うことができる。
【0024】
溶媒置換して得られる粘性溶液を、放冷または冷却することにより、ハロゲン化イミノホスファゼニウムを析出させることができる。その際の温度としては、0〜50℃の範囲が好ましく、特にハロゲン化イミノホスファゼニウムの回収量が向上することから、30℃以下が好ましく、更に20℃以下が好ましい。
【0025】
析出したハロゲン化イミノホスファゼニウムは、ろ過によるろ別により回収することが可能であり、その際のろ過としては、例えば加圧ろ過、吸引ろ過などを挙げることができる。そして、本ろ過操作により、ハロゲン化イミノホスファゼニウムと不純物とを分離した精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムとして回収することが可能となる。また、ろ過の際には、特に純度の高いハロゲン化イミノホスファゼニウムを回収することが可能となることからトルエンを洗浄溶媒として使用することが好ましい。
【0026】
ろ過により回収した精製ハロゲン化イミノホスファゼニウム中に残留する溶媒は、減圧下で加熱乾燥することにより除去が可能である。また、乾燥の際の温度や、減圧度は特に制限はなく、例えば温度は30℃〜90℃の範囲、減圧度は0.5kPa〜10kPaの範囲である。
【0027】
該(2)工程により回収される精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムは、不純物が除去されたものであり、その純度は95%以上のものであることが好ましい。その際の純度はNMRにより測定することが可能である。
【0028】
本発明の水酸化イミノホスファゼニウムの精製方法における(3)工程は、(2)工程により回収した精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを有機溶媒に溶解した後、塩基性物質と接触し、水酸化イミノホスファゼニウムとする工程であり、該(3)工程は、(2)工程により得られる精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムと塩基性物質を接触することにより、精製水酸化イミノホスファゼニウムとする工程である。
【0029】
該(3)工程において、精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを溶解する有機溶媒としては、ハロゲン化イミノホスファゼニウムを溶解可能な有機溶媒であれば如何なるものでもよく、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のモノアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、グリセリン等の多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル等の多価アルコール誘導体;エチレンジアミン、アセトニトリル等の含窒素化合物等を挙げることができ、その中でも入手が容易で、より効率的な精製方法となることから、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール等のモノアルコールが好ましい。
【0030】
精製ハロゲン化イミノホスファゼニウムを有機溶媒に溶解した際の濃度としては、通常0.05〜5.0mol/lの範囲、好ましくは0.15〜3.0mol/lの範囲である。
【0031】
そして、該(3)工程においては、精製ハロゲン化イミノホスファゼニウム溶液と塩基性物質とを接触することにより、イオン交換により精製水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液とすることができる。
【0032】
該塩基性物質としては、塩基性物質であれば特に限定するものではなく、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシド等を挙げることができ、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物としては、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム:水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が例示される。また、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドとしては、例えばアルカリ金属又はアルカリ土類金属のメトキシド、エトキシド、n−プロポキシド、イソプロポキシド、n−ブトキシド、イソブトキシド、t−ブトキシド等を挙げることができる。そして、より塩基性が強く、イオン交換性能が高いことから、塩基性物質としては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。また、塩基性物質の使用量としては、ハロゲン化イミノホスファゼニウムに対し、0.8〜1.3モルの範囲が好ましく、特に0.9〜1.2モルの範囲であることが好ましい。
【0033】
該(3)工程におけるイオン交換反応は、生成する水酸化イミノホスファゼニウムの酸化劣化を低減するため、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、イオン交換の際の反応温度に特に制限はなく、通常0〜130℃の範囲、好ましくは20〜80℃の範囲である。さらに、反応時間にも特に制限はなく、通常1分〜24時間の範囲、好ましくは5分〜4時間の範囲である。
【0034】
また、該(3)工程においては、イオン交換の際に副生する塩を除去するため、濾過を行ってもよい。この濾過工程は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下、又は空気下で行うことができる。また、加圧下で行うことも、減圧下で行うこともできる。
【0035】
該(3)工程により回収される精製水酸化イミノホスファゼニウムは、不純物が除去されたものであり、その純度は95%以上のものであることが好ましい。その際の純度はNMRにより測定することが可能である。
【0036】
本発明により得られる精製水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液は、純度が高く、各種有機反応や高分子反応に使用することができる。例えば、活性水素を有する開始剤を水酸化イミノホスファゼニウムで処理した後、アルキレンオキサイドを反応させることにより、ポリアルキレングリコールを製造することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明の方法によれば、不純物を含む水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液を腐食性物質を使用することなく、不純物が除去された水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液として収率よく精製することができる。精製後に得られる水酸化イミノホスファゼニウムは、塩基触媒としての活性が高く、少量で高い生産性が得られるため、本発明は工業的に極めて有用である。
【実施例】
【0038】
次に実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例においては、NMR、GC−MSを以下のとおり測定した。
【0039】
〜NMRの測定〜:
核磁気共鳴スペクトル測定装置(日本電子製、(商品名)GSX400)を用い、重溶媒に重水を用い測定した。
【0040】
〜イオンクロマトグラフィーの測定〜
カラム(東ソー(株)製、(商品名)TSKgel IC−Anion−PWXL)、検出器(比誘電率測定装置、(商品名)MC-8020)を装着したイオンクロマトグラフィー、溶離液として高速イオンクロマトグラフィー用標準溶離液((商品名)IC−Anion−A)を用い、温度35℃、流速1ml/minの条件で測定を行った。塩化ナトリウム標準溶液を用いて作成した検量線による、絶対検量線法に基づき塩素イオン濃度を測定した。測定サンプルは水酸化イミノホスファゼニウム1gにイオン交換水を加え100gとした1wt%溶液を用いた。
【0041】
〜イオン交換率の算出〜
下記式より算出した。
【0042】
(1−(塩素イオン濃度測定値)/(1wt%中の理論塩素イオン濃度))×100
〜GC−MSの測定〜
ガスクロマトグラフィー−質量分析装置(日本電子製、(商品名)JMS−700)を用い、イオン化モードとしてFAB+を用いて測定を行った。
【0043】
実施例1
温度計、磁気回転子を付した1リットル4つ口フラスコにNMR純度が68%、濃度が29重量%のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド:((MeN)C=N)OH(式中、Meはメチル基を表す。以下同様)の2−プロパノール溶液500g(水酸化イミノホスファゼニウム含量:145g)を採り、この溶液に25℃から35℃の温度範囲でクロロホルム150gを50gずつ1時間かけて添加した。クロロホルムを添加終了後、更に1時間撹拌を行なうことにより、水酸化物イオンの塩素イオンへのイオン交換を行い、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドの溶液とした。
【0044】
得られたテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド溶液を、60〜90℃の温度で減圧度15kPaから5kPaの範囲で2−プロパノール及びクロロホルムの70重量%除去した後、トルエン200gを添加し、60〜90℃の温度で減圧度15kPaから5kPaの範囲で溶媒量20wt%まで濃縮した。再びトルエン200gを加え同様の条件にて濃縮を行い溶媒量20重量%とした。再度トルエン200gを加え溶媒量20wt%まで濃縮してトルエンによる溶媒置換を行った。得られたテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドのトルエン溶液を10℃に冷却してテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを析出させた。析出したテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを吸引ろ過装置にてろ別した後、トルエン100gを用いて洗浄した。洗浄後にろ過物を取り出し、60℃、5kPaの減圧下で3時間加熱乾燥して、残留溶媒を除去し、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド123.3gを得た。テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドの収率は82.1%であった。また、得られたテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドのNMR純度は99.2%であった。
【0045】
得られたテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド120g(0.23モル)を温度計、磁気回転子を付した1リットル4つ口フラスコに採り、2−プロパノール(特級試薬、和光純薬製)180gに溶解した。温度を60℃とした後、水酸化カリウム(和光純薬製)16.7g(1.1当量)を加え、60℃で3時間加熱撹拌を行い、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドへのイオン交換を行った。副生した塩化カリウムなどの塩をろ過により除去して、濃度38.1重量%のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド含有2−プロパノール溶液300gを得た。
【0046】
テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドへのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果、99.5%であった。また、H−NMR、GC−MS、元素分析により同定を行った。
【0047】
H−NMR(重溶媒:DO):
化学シフト:2.83ppm(ホスファゼニウム塩由来のメチル基)。
【0048】
GC−MS(FAB+)測定結果:
m/z=487(テトラキス(テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムカチオンの分子量に一致。)。
【0049】
比較例1
クロロホルム150gの代わりに、濃度2モル/リットルの塩酸水溶液180gを用いた以外は、実施例1と同様の操作により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド含有溶液の精製を行なった。塩酸水溶液の供給に伴い、激しい発熱と共に白煙が生じた。また、反応の発熱による昇温の為、温度を35℃以下に保つために塩酸水溶液の供給に2時間を要した。
【0050】
なお、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを回収した収量は52gであり、収率としては34.7%と低いものであった。NMR純度は98.8%であった。
【0051】
また、精製後のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液としては、濃度37.8重量%の2−プロパノール溶液130gであった。そして、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果は98.7%であった。
【0052】
実施例2
クロロホルム150gの代りに、1,1,2−トリクロロエタン200gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液の精製を行った。
【0053】
なお、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを回収した収量は121.3gであり、収率としては80.8%であった。NMR純度は99.1%であった。
【0054】
また、精製後のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液としては、濃度38.0重量%の2−プロパノール溶液300gであった。そして、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果は99.3%であった。
【0055】
実施例3
クロロホルム150gの代りに、1,1,1−トリクロロエタン200gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液の精製を行った。
【0056】
なお、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを回収した収量は118.6gであり、収率としては79.0%であった。NMR純度は98.9%であった。
【0057】
また、精製後のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液としては、濃度38.3重量%の2−プロパノール溶液298gであった。そして、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果は99.6%であった。
【0058】
実施例4
テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド溶液から溶媒置換を行なう際の溶媒であるトルエン600gの代りに、o−キシレン600gとし、ろ別の際の洗浄溶媒であるトルエンの代りに、o−キシレンとした以外は、実施例1と同様の方法により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液の精製を行った。
【0059】
なお、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを回収した収量は122.6gであり、収率としては81.7%であった。NMR純度は99.1%であった。
【0060】
また、精製後のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液としては、濃度37.9重量%の2−プロパノール溶液301gであった。そして、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果は99.5%であった。
【0061】
比較例2
テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリド溶液から溶媒置換を行なう際の溶媒であるトルエン600gの代りに、クロロベンゼン600gとした以外は、実施例1と同様の方法により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液の精製を試みた。
【0062】
テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドが析出せず回収できなかった。
【0063】
実施例5
クロロホルム150gの代りに、クロロホルム50gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液の精製を行った。
【0064】
なお、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを回収した収量は115.3gであり、収率としては76.8%であった。NMR純度は99.1%であった。
【0065】
また、精製後のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液としては、濃度36.9重量%の2−プロパノール溶液291gであった。そして、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果は99.5%であった。
【0066】
実施例6
クロロホルム150gの代りに、クロロホルム350gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液の精製を行った。
【0067】
なお、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムクロリドを回収した収量は125.3gであり、収率としては83.4%であった。NMR純度は99.2%であった。
【0068】
また、精製後のテトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシド溶液としては、濃度39.1重量%の2−プロパノール溶液306gであった。そして、テトラキス(1,1,3,3−テトラメチルグアニジノ)ホスファゼニウムヒドロキシドのイオン交換率をイオンクロマトグラフィーにて分析した結果は99.5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明により、不純物を含む水酸化イミノホスファゼニウムから、効率よく不純物を除去でき、収率よく不純物を除去した水酸化イミノホスファゼニウム含有溶液を得ることができる。また、水酸化イミノホスファゼニウムは、有機塩基触媒や相関移動触媒として有用である。