(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6327076
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】化成処理装置および希土類磁石片の化成処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 22/76 20060101AFI20180514BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
C23C22/76
H01F41/02 G
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-183151(P2014-183151)
(22)【出願日】2014年9月9日
(65)【公開番号】特開2016-56406(P2016-56406A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2017年3月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【弁理士】
【氏名又は名称】梶谷 美道
(72)【発明者】
【氏名】笹井 敏行
(72)【発明者】
【氏名】栃下 佳己
(72)【発明者】
【氏名】三角 信弘
【審査官】
宮本 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−332162(JP,A)
【文献】
特開平03−257172(JP,A)
【文献】
特開2002−220675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 22/00 − 22/86
H01F 41/00 − 41/04
H01F 41/08
H01F 41/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
希土類磁石の磁石片が載置される上面を有し、前記磁石片よりも小さな開孔部を多数有するベルトと、
前記ベルトを予め決められた方向に移動させる駆動部と、
前記ベルトの下側において、前記磁石片用の化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1下側ノズルと、前記複数の第1下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2下側ノズルと、
前記ベルトの上側において、前記化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1上側ノズルと、前記複数の第1上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2上側ノズルと、
前記複数の第2下側ノズルの下方に設けられた洗浄液槽と、前記洗浄液槽内の前記洗浄液を前記複数の第2下側ノズルおよび前記複数の第2上側ノズルに供給する循環ポンプと
を有する、化成処理装置。
【請求項2】
希土類磁石の磁石片が載置される上面を有し、前記磁石片よりも小さな開孔部を多数有するベルトと、
前記ベルトを予め決められた方向に移動させる駆動部と、
前記ベルトの下側において、前記磁石片用の化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1下側ノズルと、前記複数の第1下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2下側ノズルと、
前記ベルトの上側において、前記化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1上側ノズルと、前記複数の第1上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2上側ノズルと、
前記複数の第2下側ノズルおよび前記複数の第2上側ノズルの少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有するケースと
を有する、化成処理装置。
【請求項3】
希土類磁石の磁石片が載置される上面を有し、前記磁石片よりも小さな開孔部を多数有するベルトと、
前記ベルトを予め決められた方向に移動させる駆動部と、
前記ベルトの下側において、前記磁石片用の化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1下側ノズルと、前記複数の第1下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2下側ノズルと、前記複数の第2下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気を前記ベルトに向けて噴出するように配置された下側送風口と、
前記ベルトの上側において、前記化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1上側ノズルと、前記複数の第1上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2上側ノズルと、前記複数の第2上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気を前記ベルトに向けて噴出するように配置された上側送風口と
を有する、化成処理装置。
【請求項4】
前記複数の第1下側ノズルの下方に設けられた処理液槽と、前記処理液槽内の前記化成処理液を前記複数の第1下側ノズルおよび前記複数の第1上側ノズルに供給する循環ポンプとをさらに有する、請求項1から3のいずれかに記載の化成処理装置。
【請求項5】
前記複数の第1下側ノズルおよび前記複数の第1上側ノズルの少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有するケースを有する、請求項1から4のいずれかに記載の化成処理装置。
【請求項6】
前記複数の第2下側ノズルの下方に設けられた洗浄液槽と、前記洗浄液槽内の前記洗浄液を前記複数の第2下側ノズルおよび前記複数の第2上側ノズルに供給する循環ポンプとをさらに有する、請求項2、3、請求項2または3を引用する請求項4、および、請求項2または3を引用する請求項5のいずれかに記載の化成処理装置。
【請求項7】
前記複数の第2下側ノズルおよび前記複数の第2上側ノズルの少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有するケースを有する、請求項1、3、請求項1または3を引用する請求項4、および、請求項1または3を引用する請求項5のいずれかに記載の化成処理装置。
【請求項8】
前記ベルトの下側において、前記複数の第2下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気を前記ベルトに向けて噴出するように配置された下側送風口と、
前記ベルトの上側において、前記複数の第2上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気を前記ベルトに向けて噴出するように配置された上側送風口と
をさらに有する、請求項1、2、請求項1または2を引用する請求項4、および、請求項1または2を引用する請求項5のいずれかに記載の化成処理装置。
【請求項9】
前記下側送風口および前記上側送風口の少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有するケースを有する、請求項3または8に記載の化成処理装置。
【請求項10】
前記ベルトは、ステンレス製のメッシュベルトである、請求項1から9のいずれかに記載の化成処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載の化成処理装置を用意する工程と、
前記ベルト上に、前記磁石片を順次配置する工程と、
前記ベルトを前記予め決められた方向に移動させながら、前記複数の第1下側ノズルおよび前記複数の第1上側ノズルから前記化成処理液を噴出することによって、前記磁石片の表面全体が前記化成処理液に接触した状態を一定時間以上維持する工程と
を包含する希土類磁石の化成処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化成処理装置に関し、特に、希土類磁石片の化成処理に好適に用いられる化成処理装置およびそれを用いた磁石片の化成処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久磁石(以下、単に「磁石」という。)は、種々の形状の磁石片として用いられる。希土類磁石は、優れた磁気特性を有しており、広く利用されている。その中でも、ネオジム磁石として知られているR−Fe−B系焼結磁石(Rは希土類元素のうち少なくとも一種でありNdを必ず含む。)は、優れた磁気特性と比較的材料費が安価なことから広く利用されている。
【0003】
R−Fe−B系焼結磁石の磁石片は、以下の方法で製造される。なお、本明細書において、着磁していない状態のものも磁石という。
【0004】
所望の組成を有するR−Fe−B系合金の粉末を用意する。合金粉末をプレス成形によって、所望の形状の成形体を得る。成形体を焼結することによって焼結体を得る。必要に応じて、焼結体は、時効処理などの熱処理を受ける。熱処理の前または後に、機械加工を受けて、所望の大きさおよび形状の磁石片となる。その後、磁石片は機械加工で発生し磁石表面に付着した研削加工粉や研削液を除去するために洗浄される。
【0005】
R−Fe−B系焼結磁石は、希土類磁石の中でも特に耐食性が低い。そこで、機械加工、および洗浄の後、磁石片の耐食性を改善するために表面処理が施される。表面処理としては、例えば、NiやCuなどの金属めっき、樹脂塗装、アルミニウム蒸着、化成処理などが行われている。表面処理の種類や条件は、求められる耐食性およびコストなどに応じて選択される。例えば、特許文献1〜3に開示されている化成処理は、比較的コストが低く、また、環境に優しいなどの利点を有している。
【0006】
特許文献1〜3の実施例に記載されているように、従来、化成処理は磁石片を処理液に浸漬することによって行われることが多い。量産プロセスにおいては、例えば、以下の様にして多数の磁石片を化成処理する。
【0007】
一定数の磁石片を、例えば多数の貫通孔を有する金属製シートで形成されたバレル内に入れて、バレルを処理液に浸漬する。このとき、多数の磁石片の表面に均一に化成被膜を形成するために、処理液内でバレルを例えば水平軸の周りに回転させる。処理液内でバレルを回転させることによって、磁石片の表面に常に新鮮な処理液が接するようにし、また、磁石片同士が密着して磁石片の一部の表面が処理液に触れないということが起こらないようにする。この後、バレルを移動し、水に浸漬した状態で、バレルを回転させることによって水洗する。必要に応じてもう一度、水洗を行う。水洗後、磁石片をバレルから取り出し、例えば、遠心乾燥機を用いて乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000−150216号公報
【特許文献2】特開2002−220680号公報
【特許文献3】特開2010−263223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、本発明者の検討によると、上記の様な従来の方法によれば、磁石片同士の衝突・接触によって、欠けや割れが発生するという問題がある。特に、磁石をバレルに投入する時、バレルから取り出す時、および乾燥機に投入する時に、欠けや割れが発生しやすい。欠けや割れの発生は単重が20g以上の比較的磁石片の重量が大きい磁石を処理する場合に発生しやすい。また、化成処理方法として、処理液に磁石片を浸漬する方法を採用すると、バッチ処理になるので、化成処理から乾燥までを自動化することが難しい。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、従来よりも量産プロセスに適した化成処理装置およびそれを用いた化成処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態による化成処理装置は、希土類磁石の磁石片が載置される上面を有し、前記磁石片よりも小さな開孔部を多数有するベルトと、前記ベルトを予め決められた方向に移動させる駆動部と、
前記ベルトの下側(下方)において、前記磁石片用の化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1下側ノズルと、前記ベルトの上側(上方)において、前記化成処理液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第1上側ノズルとを有する。
【0012】
ある実施形態において、前記複数の第1下側ノズルの下方に設けられた処理液槽と、前記処理液槽内の前記化成処理液を前記複数の第1下側ノズルおよび前記複数の第1上側ノズルに供給する第1循環ポンプとをさらに有する。
【0013】
ある実施形態において、前記複数の第1下側ノズルおよび前記複数の第1上側ノズルの少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有する第1ケースを有する。
【0014】
ある実施形態において、前記ベルトの下側において、前記複数の第1下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2下側ノズルと、前記ベルトの上側において、前記複数の第1上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、洗浄液を前記ベルトに向けて噴出するように、前記予め決められた方向に沿って配列された複数の第2上側ノズルとをさらに有する。
【0015】
ある実施形態において、前記複数の第2下側ノズルの下方に設けられた洗浄液槽と、前記洗浄液槽内の前記洗浄液を前記複数の第2下側ノズルおよび前記複数の第2上側ノズルに供給する第2循環ポンプとをさらに有する。
【0016】
ある実施形態において、前記複数の第2下側ノズルおよび前記複数の第2上側ノズルの少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有する第2ケースを有する。
【0017】
ある実施形態において、前記ベルトの下側において、前記複数の第2下側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気を前記ベルトに向けて噴出するように配置された下側送風口と、
前記ベルトの上側において、前記複数の第2上側ノズルの前記予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気を前記ベルトに向けて噴出するように配置された上側送風口とをさらに有する。
【0018】
ある実施形態において、前記下側送風口および前記上側送風口の少なくとも側方および上方を包囲し、前記ベルトを通過させる一対の開口部を有する第3ケースを有する。
【0019】
ある実施形態において、前記ベルトは、ステンレス製のメッシュベルトである。
【0020】
本発明の実施形態による希土類磁石の化成処理方法は、上記のいずれかに記載の化成処理装置を用意する工程と、前記ベルト上に、曲面を有する前記磁石片を順次配置する工程と、前記ベルトを前記予め決められた方向に移動させながら、前記複数の第1下側ノズルおよび前記複数の第1上側ノズルから前記化成処理液を噴出することによって、前記磁石片の表面全体が前記化成処理液に接触した状態を一定時間以上維持する工程とを包含する。前記希土類磁石は例えば、R−Fe−B系焼結磁石である。前記磁石片の質量は例えば20g以上であり、典型的には30g以上である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の実施形態によると、従来よりも量産プロセスに適した化成処理装置およびそれを用いた化成処理方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による化成処理装置100の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による化成処理装置100およびそれを用いた化成処理方法を説明する。以下では、R−Fe−B系焼結磁石の磁石片の化成処理を例示するが、他の希土類磁石の化成処理にも適用できる。
【0024】
図1に本発明の実施形態の一例による化成処理装置100の模式図を示す。
【0025】
化成処理装置100は、化成処理室10と、洗浄室20と、乾燥室30とを有する。化成処理装置100は、化成処理から乾燥までを自動で行うことができる。もちろん、本発明の実施形態による化成処理装置は、化成処理室10だけを有してもよいし、化成処理室10と洗浄室20とだけを有してもよい。
【0026】
化成処理装置100は、駆動部(不図示)によって、
図1中の矢印で示す予め決められた方向に移動させられるベルト40を有している。化成処理装置100は、ベルト40の下側において、磁石片用の化成処理液をベルト40に向けて噴出するように、予め決められた方向に沿って配列された複数の第1下側ノズル12aと、ベルト40の上側において、化成処理液をベルト40に向けて噴出するように、予め決められた方向に沿って配列された複数の第1上側ノズル12bとを有する。ベルト40は、磁石片52が載置される上面を有し、磁石片52よりも小さな開孔部を多数有している。
【0027】
多数の開孔部を有するベルト40上の磁石片52に、複数の第1下側ノズル12aおよび複数の第1上側ノズル12bから、すなわち磁石片52の上下から、化成処理液が供給されるので、磁石片52の表面全体が化成処理液に接触した状態が一定時間以上維持される。化成処理の時間は、ベルト40の移動速度および/または化成処理室10の長さ(第1下側ノズル12aおよび第1上側ノズル12bの数および配列間隔)によって適宜調節できる。
【0028】
化成処理液は、磁石片52の表面全体が化成処理液に接触した状態を維持できる程度に供給されればよい。化成処理液は、シャワー状に供給されてもよいし、霧状に供給されてもよい。化成処理液としては、公知の化成処理液を用いることができる。例えば、磁石片52がアルミニウム膜でコーティングされている場合には、特許文献1に記載の化成処理液を用いることができるし、磁石片52に直接化成処理を行う場合には、特許文献2または3に記載の化成処理液を用いることもできる。なお、化成処理液に関して、参考のために特許文献1〜3の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0029】
第1下側ノズル12aから化成処理液を供給する圧力が強すぎると、ベルト40上で磁石片52が跳ね上がるので、欠けや割れが発生する恐れがある。したがって、第1下側ノズル12aから化成処理液を供給する圧力は適宜調整することが好ましい。なお、ベルト40上の磁石片52が跳ねるのを抑制するように、例えばネットベルトを設けてもよいが、化成処理液を供給する圧力を調整すれば、ネットベルト等を設ける必要は無く、むしろ、磁石片52がベルト40上でわずかに移動できる方が、磁石片52の表面全体に化成処理液を供給できる点で有利である。
【0030】
ベルト40は、例えば、ステンレス製のメッシュベルトであることが好ましい。メッシュベルトは、網目部分が凸部を形成するので、磁石片52との接触面積を小さくできる。したがって、磁石片52の表面に化成処理液が行き渡りやすく、また、乾燥後においてシミが形成されにくいという利点を有している。また、ステンレス製であると、化成処理液に対する安定性が高く、また、強度や耐熱性も高い。もちろん、ステンレス以外の材料で形成されたベルトを用いてもよい。
【0031】
化成処理装置100は、第1下側ノズル12aの下方に設けられた処理液槽14と、処理液槽14内の化成処理液を第1下側ノズル12aおよび第1上側ノズル12bに供給する第1循環ポンプ(不図示)とをさらに有する。処理液槽14と第1循環ポンプとを設けることによって、化成処理液を循環的に利用することができる。
【0032】
化成処理装置100は、第1下側ノズル12aおよび第1上側ノズル12bの少なくとも側方および上方を包囲し、ベルト40を通過させる一対の開口部16aおよび16bを有する第1ケース16を有することが好ましい。化成処理装置100のように化成処理室10に洗浄室20が隣接している場合、化成処理液が洗浄室20に飛散することを防止できるし、作業者や工場内に化成処理液が飛散することを防止できる。
【0033】
化成処理装置100は、洗浄室20をさらに有し、ベルト40の下側において、第1下側ノズル12aの予め決められた方向に設けられ、洗浄液をベルト40に向けて噴出するように、予め決められた方向に沿って配列された複数の第2下側ノズル22aと、ベルト40の上側において、第1上側ノズル12bの予め決められた方向(化成処理装置100の下流側)に設けられ、洗浄液をベルト40に向けて噴出するように、予め決められた方向に沿って配列された複数の第2上側ノズル22bとをさらに有する。洗浄液は例えば水である。洗浄液も、上述の化成処理液と同様に、適度な圧力で、磁石片52に供給することが好ましい。また、洗浄に必要な時間に応じて、第2下側ノズル22aおよび第2上側ノズル22bの数および配列間隔等を調節すればよい。
【0034】
化成処理装置100は、第2下側ノズル22aの下方に設けられた洗浄液槽24と、洗浄液槽24内の洗浄液を第2下側ノズル22aおよび第2上側ノズル22bに供給する第2循環ポンプ(不図示)とをさらに有する。洗浄液槽24と第2循環ポンプとを設けることによって、洗浄液を循環的に利用することができる。
【0035】
化成処理装置100は、第2下側ノズル22aおよび第2上側ノズル22bの少なくとも側方および上方を包囲し、ベルト40を通過させる一対の開口部16bおよび26bを有する第2ケース26を有する。第2ケース26は、ここで例示するように、第1ケース16と一体に形成されていてもよいし、独立して形成されてもよい。第2ケース26を設けることによって、化成処理液に洗浄液が混入することを防止できるし、作業者や工場内に洗浄液が飛散することを防止できる。
【0036】
化成処理装置100は、乾燥室30をさらに有し、ベルト40の下側において、第2下側ノズル22aの予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気をベルト40に向けて噴出するように配置された下側送風口32aと、ベルト40の上側において、第2上側ノズル22bの予め決められた方向に設けられ、熱風または乾燥空気をベルト40に向けて噴出するように配置された上側送風口32bとをさらに有する。熱風または乾燥空気の供給量は、磁石片52がベルト40上で跳ねて欠けや割れが発生しないよう調整することが好ましい。
【0037】
化成処理装置100は、下側送風口32aおよび上側送風口32bの少なくとも側方および上方を包囲し、ベルト40を通過させる一対の開口部26bおよび36bを有する第3ケース36を有する。第3ケース36を設けることによって、例えば、熱風を使用する場合には、熱を有効に利用し、乾燥効率を向上させることができる。熱風の温度は、例えば、50℃〜80℃である。
【0038】
本発明の実施形態による化成処理装置は上記の例に限定されるものではなく、例えば、処理液槽14、第1循環ポンプ、洗浄液槽24、第2循環ポンプ、第1ケース16、第2ケース26、第3ケース36は省略してもよい。
【0039】
上述したように、化成処理装置100は、化成処理から乾燥まで自動で行うことができる。磁石片52は、ベルト40の上面に順次配置するだけでよいので、容易に自動化することができる。また、磁石片52はベルト40上に配置された状態で、化成処理から乾燥までを経るので、磁石片52同士が接触し、欠けや割れが発生することがない。したがって、従来のバレルを用いた化成処理装置では欠けや割れが発生しやすい単重が30g以上の磁石片においても、化成処理装置100を用いることによって、欠けや割れの発生をほとんど防止することができる。
【0040】
なお、化成処理装置100を用いて、単重が35g〜500gでアルミニウム蒸着被膜が形成されている磁石片を特許文献1記載の化成処理液を用いて90〜120秒間化成処理したものは、割れや欠けがほとんどなく、従来のバレルを用いて化成処理したものと同等以上の耐食性を有していることが確認されている。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、希土類磁石片の化成処理に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0042】
10 化成処理室
12a 第1下側ノズル
12b 第1上側ノズル
14 処理液槽
16 第1ケース
20 洗浄室
30 乾燥室
52 磁石片
100 化成処理装置