【実施例】
【0068】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨及び均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、以下の説明において量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、重量基準である。
【0069】
実施例及び比較例において、電極用バインダー(負極用バインダーまたは正極用バインダー)のガラス転移温度(Tg)の測定、一次粒子の体積基準のD50平均粒子径(一次粒子径)の測定、粒子複合体の体積基準のD50平均粒子径(Da)および電極活物質の体積基準のD50平均粒子径(Db)の測定、電極用バインダーの120℃揮発分測定、電極用バインダーの最低製膜温度の測定及び電極用バインダーの形状測定は、それぞれ以下のように行った。
【0070】
<ガラス転移温度>
電極用バインダーのガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析計(ナノテクノロジー社製 DSC6220SII)を用いて、JIS K 7121:1987に基づいて測定した。
【0071】
<一次粒子径の測定>
直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの1%水溶液中に実施例及び比較例で製造した電極用バインダー(負極用バインダー1〜12、正極用バインダー1〜13)をそれぞれ添加し、超音波にて分散化した後、コールターカウンターLS230(コールター社製粒子径測定器)による積分粒子径分布によって測定し、その50%積分値に相当する粒子径を電極用バインダーの体積基準のD50平均粒子径(一次粒子径)とした。
【0072】
<DaおよびDbの測定>
レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(マイクロトラックMT3200II;日機装)による乾式の積分粒子径分布によって実施例及び比較例で製造した粒子複合体の体積基準のD50平均粒子径(Da)と、実施例及び比較例で用いた電極活物質の体積基準のD50平均粒子径(Db)とを測定し、比(Da/Db)を求めた。
【0073】
<120℃揮発分の測定>
120℃に設定したオーブン内に実施例及び比較例で製造した粉末状負極用バインダー1〜12、粉末状正極用バインダー1〜13をそれぞれ入れ、10分ごとにバインダー重量の測定を行い、重量変化が0.1%未満になった時点で終了とした。この時の初期重量から測定終了時までの重量変化率(減少分)を120℃揮発分とした。
【0074】
<最低製膜温度>
最低製膜温度測定装置(MFFTB90;RHOPOINT社製)を使用しISO2115に準じて試験を行った。
【0075】
<形状測定>
粉末状電極用バインダーをSEMで観察し画像中に見える粒子30個をランダムに取り出し、各々の粒子の平均短軸径、平均長軸径を求め平均球形度を算出した。このとき平均球形度が80%以上である場合を球状、平均球形度が80%未満のものを非球状とした。
【0076】
また、実施例及び比較例において、電極精度、電極の柔軟性及びレート特性の評価はそれぞれ以下のように行った。
【0077】
<電極精度>
実施例及び比較例で作製した電極活物質層のTD方向(横方向)10cm、MD方向(縦方向)10cmについて、TD方向に均等に3点、MD方向に均等に3点の計9点の膜厚を測定した。この膜厚の平均値をA、平均値から最も離れている厚みをBとするとき、下記の式で電極厚みムラを計算した。
電極厚みムラ精度(%)=(|A−B|)×100/A
これを電極精度とし、以下の基準で評価した。結果を表1及び表2に示す。この値が小さいほど成形性に優れることを示す。
A:4%未満
B:4%以上9%未満
C:9%以上15%未満
D:15%以上
E:電極に穴が開いている
【0078】
<電極の柔軟性>
実施例及び比較例で作製した電気化学素子電極を、1cm×8cmに切り出し、直径3mm、4mm、5mmの金属棒にそれぞれ巻きつけ、生じた割れを下記のように評価した。結果を表1及び表2に示す。割れが少ないほど柔軟性に優れる、すなわち電極強度に優れることを示す。
A:直径3mmの金属棒で割れがない
B:直径4mmの金属棒で割れはないが、直径3mmの金属棒で割れがある
C:直径5mmで割れがある
【0079】
<レート特性>
実施例及び比較例で作製したラミネートセル型のリチウムイオン二次電池を、電解液注液後、5時間静置させ、25℃雰囲気下で0.2Cの定電流法によって、セル電圧3.65Vまで充電し、その後60℃に昇温し、12時間エージング処理を行い、25℃雰囲気下で0.2Cの定電流法によってセル電圧3.00Vまで放電を行った。
【0080】
その後、25℃雰囲気下で、4.2V、0.2Cレートで充電を行い、0.2Cおよび2.0Cレートで放電を行った。そのとき、各放電レート時の放電容量を、C
0.2(0.2C時の放電容量)、C
2.0(2.0C時の放電容量)、と定義し、ΔC=C
2.0/C
0.2時の放電容量×100(%)で示す容量変化率を求め、以下の基準により評価した。結果を表1及び表2に示す。この容量変化率ΔCの値が高いほど、放電レート特性(レート特性)に優れることを示す。
A:ΔCが83%以上
B:ΔCが82%以上83%未満
C:ΔCが80%以上82%未満
D:ΔCが80%未満
【0081】
<実施例1>
(負極用粒子状重合体1の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン(以下、「ST」と略記することがある。)78部、1,3−ブタジエン(以下、「BD」と略記することがある。)19部、イタコン酸(以下、「IA」と略記することがある。)3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、イオン交換水150部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン(以下、「TDM」と略記することがある。)0.3部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、75℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、負極用粒子状重合体1(スチレン・ブタジエン共重合体;以下、「SBR」と略記することがある。)の水分散体を得た。負極用粒子状重合体1の最低製膜温度は55℃であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃、一次粒子径は132nmであった。
【0082】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体1の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体1を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー1を得た。粉末状の負極用バインダー1の120℃揮発分は0.1%であった。
【0083】
(粒子複合体の製造)
負極活物質として人造黒鉛(平均粒子径:24.5μm、黒鉛層間距離(X線回折法による(002)面の面間隔(d値)):0.354nm)98.8部および上記負極用バインダーを固形分換算量で1.2部、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用いて10分間混合し、負極活物質に負極用バインダーを付着させ、粒子複合体を得た。
【0084】
(負極の製造)
上記で得られた粒子複合体を、定量フィーダ(ニッカ社製「ニッカスプレーK−V))を用いてロールプレス機(ヒラノ技研工業社製「押し切り粗面熱ロール」)のプレス用ロール(ロール温度100℃、プレス線圧500kN/m)に供給した。プレス用ロール間に、厚さ20μmの銅箔を挿入し、定量フィーダから供給された上記粒子複合体を銅箔上に付着させ、成形速度1.5m/分で加圧成形し、負極活物質を有する負極を得た。
【0085】
(正極用スラリーおよび正極の製造)
正極活物質としてLiCoO
292部に、正極用バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF;クレハ化学社製「KF−1100」)を固形分量が2部となるように加え、さらに、アセチレンブラック(電気化学工業社製「HS−100」)を6部、N−メチルピロリドン20部を加えて、プラネタリーミキサーで混合して正極用スラリーを得た。この正極用スラリーを厚さ18μmのアルミニウム箔に塗布し、120℃で30分乾燥した後、ロールプレスして厚さ60μmの正極を得た。
【0086】
(セパレーターの用意)
単層のポリプロピレン製セパレーター(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を、5×5cm
2の正方形に切り抜いた。
【0087】
(リチウムイオン二次電池の製造)
電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。上記で得られた正極を、4×4cm
2の正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。また、上記で得られた正極の正極活物質層の面上に、上記で得られた正方形のセパレーターを配置した。さらに、上記で得られた負極を、4.2×4.2cm
2の正方形に切り出し、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うように、セパレーター上に配置した。更に、ビニレンカーボネートを2.0%含有する、濃度1.0モル/LのLiPF
6溶液を充填した。このLiPF
6溶液の溶媒はエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(EC/EMC=3/7(体積比))である。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃でヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、ラミネート型のリチウムイオン二次電池(ラミネート型セル)を製造した。
【0088】
<実施例2>
(負極用粒子状重合体2の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン74.5部、1,3−ブタジエン22.5部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、イオン交換水150部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、75℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、負極用粒子状重合体2の水分散体を得た。粒子状重合体2の最低製膜温度は40℃であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃、一次粒子径は135nmであった。
【0089】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体2の水分散体からロータリーエバポレーターにて25℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて25℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体2を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー2を得た。粉末状の負極用バインダー2の120℃揮発分は0.1%であった。
【0090】
上記負極用バインダー2を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0091】
<実施例3>
(負極用粒子状重合体3の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン85部、1,3−ブタジエン12部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、イオン交換水150部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、75℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、負極用粒子状重合体3の水分散体を得た。負極用粒子状重合体3の最低製膜温度は88℃であり、ガラス転移温度(Tg)は70℃、一次粒子径は134nmであった。
【0092】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体3の水分散体からロータリーエバポレーターにて60℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて60℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体3を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー3を得た。粉末状の負極用バインダー3の120℃揮発分は0.1%であった。
【0093】
上記負極用バインダー3を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0094】
<実施例4>
(負極用粒子状重合体4の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン78部、1,3−ブタジエン19部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で2.0部、イオン交換水150部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、75℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、負極用粒子状重合体4の水分散体を得た。負極用粒子状重合体4の最低製膜温度は53℃であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃、一次粒子径は80nmであった。
【0095】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体4の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体4を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー4を得た。粉末状の負極用バインダー4の120℃揮発分は0.4%であった。
【0096】
上記負極用バインダー4を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0097】
<実施例5>
(負極用粒子状重合体5の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら75℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、上記とは別の攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン78部、1,3−ブタジエン19部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部、及びイオン交換水26部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、3.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、負極用粒子状重合体5の水分散体を得た。負極用粒子状重合体5の最低製膜温度は56℃であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃、一次粒子径は304nmであった。
【0098】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体5の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体5を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー5を得た。粉末状の負極用バインダー5の120℃揮発分は0.1%であった。
【0099】
上記負極用バインダー5を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0100】
<実施例6>
(負極用粒子状重合体6の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら75℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、上記とは別の攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン78部、1,3−ブタジエン19部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.2部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部、及びイオン交換水26部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、3.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、負極用粒子状重合体6の水分散体を得た。負極用粒子状重合体6の最低製膜温度は56℃であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃、一次粒子径は625nmであった。
【0101】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体6の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体6を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー6を得た。粉末状の負極用バインダー6の120℃揮発分は0.1%であった。
【0102】
上記負極用バインダー6を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0103】
<実施例7>
上記負極用粒子状重合体1の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去した。その後、真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件での乾燥を行わなかった以外は、実施例1と同様に粒子状重合体の乾燥と解砕を行い、粉末状の負極用バインダー7を得た。粉末状の負極用バインダー7の120℃揮発分は0.8%であった。
【0104】
上記負極用バインダー7を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0105】
<比較例1>
(負極用粒子状重合体7の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン70部、1,3−ブタジエン27部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、イオン交換水150部、連鎖移動剤としてt−ドデシルメルカプタン0.3部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、75℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、負極用粒子状重合体7の水分散体を得た。負極用粒子状重合体7の最低製膜温度は27℃であり、ガラス転移温度(Tg)は30℃、一次粒子径は130nmであった。
【0106】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体7の水分散体からロータリーエバポレーターにて20℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて20℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体7を乳鉢で解砕し、若干凝集性の高い粉末状の負極用バインダー8を得た。粉末状の負極用バインダー8の120℃揮発分は0.1%であった。
【0107】
上記負極用バインダー8を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0108】
<比較例2>
(負極用粒子状重合体8の製造)
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、スチレン94部、1,3−ブタジエン3部、イタコン酸3部、乳化剤としてアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、イオン交換水150部および重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、75℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、負極用粒子状重合体8の水分散体を得た。負極用粒子状重合体8の最低製膜温度は120℃であり、ガラス転移温度(Tg)は100℃、一次粒子径は135nmであった。
【0109】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記負極用粒子状重合体8の水分散体からロータリーエバポレーターにて80℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて80℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体8を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー9を得た。
【0110】
上記負極用バインダー9を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0111】
<比較例3>
(負極用粒子状重合体9の製造)
負極用粒子状重合体1の水分散体に対して重合体重量10部に対してトルエンを100部の重量比で添加し、乳化分散装置(マイルダーMDN303V;太平洋機工社製)にて15000rpmで乳化した。その後、その乳化液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を除去し、負極用粒子状重合体9の水分散体を得た。負極用粒子状重合体9の最低製膜温度は53℃であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃、一次粒子径は3020nmであった。
【0112】
(粒子状重合体の乾燥と解砕)
上記粒子状重合体9の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後、乾燥させた負極用粒子状重合体9を乳鉢で解砕し、粉末状の負極用バインダー10を得た。粉末状の負極用バインダー10の120℃揮発分は0.1%であった。
【0113】
上記負極用バインダー10を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0114】
<比較例4>
上記負極用粒子状重合体1の水分散体からロータリーエバポレーターにて40℃で水分を除去する際に、水分の除去を途中で停止し、粉末状の負極用バインダー11を得た。粉末状の負極用バインダー11の120℃揮発分は2%であった。
【0115】
上記負極用バインダー11を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0116】
<比較例5>
上記負極用粒子状重合体1の水分散体からロータリーエバポレーターにて60℃で水分を除去したのち、真空乾燥機にて60℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後フィルム化した負極用粒子状重合体1を乳鉢で粉砕した後、さらにジェットミルで平均粒子径が5000nm程度となるまで粉砕を行い、粉末状の負極用バインダー12を得た。粉末状の負極用バインダー12の120℃揮発分は0.1%であった。
【0117】
上記負極用バインダー12を用いた以外は、実施例1と同様に負極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0118】
<実施例8>
(正極用粒子状重合体1の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル(以下、「BA」と略記することがある。)20部、メタクリル酸エチル(以下、「EMA」と略記することがある。)77.5部、メタクリル酸(以下、「MAA」と略記することがある。)2.4部、メタクリル酸アリル(以下、「AMA」と略記することがある。)0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体1(アクリル系重合体;以下、「アクリル系」と略記することがある。)の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体1の最低製膜温度は45℃であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃、一次粒子径は310nmであった。
【0119】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体1の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて30℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー1を得た。粉末状の正極用バインダー1の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0120】
(粒子複合体の製造)
正極活物質としてNMC(111)92.5部と、導電剤としてアセチレンブラックを6部および上記正極用バインダーを固形分換算量で1.5部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用いて10分間混合し、正極活物質に正極用バインダーを付着させ、粒子複合体を得た。
【0121】
(正極の製造)
上記で得られた粒子複合体を、定量フィーダ(ニッカ社製「ニッカスプレーK−V))を用いてロールプレス機(ヒラノ技研工業社製「押し切り粗面熱ロール」)のプレス用ロール(ロール温度100℃、プレス線圧500kN/m)に供給した。プレス用ロール間に、厚さ20μmのアルミニウム箔を挿入し、定量フィーダから供給された上記粒子複合体をアルミニウム箔上に付着させ、成形速度1.5m/分で加圧成形し、正極活物質を有する正極を得た。
【0122】
(負極用スラリーおよび負極の製造)
負極活物質として人造黒鉛(平均粒子径:24.5μm、黒鉛層間距離(X線回折法による(002)面の面間隔(d値):0.354nm)96部、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(BM−400B)を固形分換算量で3.0部、カルボキシメチルセルロースの1.5%水溶液(DN−800H:ダイセル化学工業社製)を固形分換算量で1.0部混合し、さらにイオン交換水を固形分濃度が50%となるように加え、混合分散して負極用スラリーを得た。この負極用スラリーを厚さ18μmの銅箔に塗布し、120℃で30分間乾燥した後、ロールプレスして厚さ50μmの負極を得た。
【0123】
(セパレーターの用意)
単層のポリプロピレン製セパレーター(幅65mm、長さ500mm、厚さ25μm、乾式法により製造、気孔率55%)を、5×5cm
2の正方形に切り抜いた。
【0124】
(リチウムイオン二次電池の製造)
電池の外装として、アルミ包材外装を用意した。上記で得られた正極を、4×4cm
2の正方形に切り出し、集電体側の表面がアルミ包材外装に接するように配置した。また、上記で得られた正極の正極活物質層の面上に、上記で得られた正方形のセパレーターを配置した。さらに、上記で得られた負極を、4.2×4.2cm
2の正方形に切り出し、負極活物質層側の表面がセパレーターに向かい合うように、セパレーター上に配置した。更に、ビニレンカーボネートを2.0%含有する、濃度1.0モル/LのLiPF
6溶液を充填した。このLiPF
6溶液の溶媒はエチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)との混合溶媒(EC/EMC=3/7(体積比))である。さらに、アルミニウム包材の開口を密封するために、150℃でヒートシールをしてアルミニウム外装を閉口し、ラミネート型のリチウムイオン二次電池(ラミネート型セル)を製造した。
【0125】
<実施例9>
(正極用粒子状重合体2の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル12部、メタクリル酸エチル85.5部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体2の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体2の最低製膜温度は52℃であり、ガラス転移温度(Tg)は50℃、一次粒子径は319nmであった。
【0126】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体2の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー2を得た。粉末状の正極用バインダー2の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0127】
上記正極用バインダー2を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0128】
<実施例10>
(正極用粒子状重合体3の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル6部、メタクリル酸エチル91.5部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体3の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体3の最低製膜温度は65℃であり、ガラス転移温度(Tg)は60℃、一次粒子径は331nmであった。
【0129】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体3の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー3を得た。粉末状の正極用バインダー3の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0130】
上記正極用バインダー3を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0131】
<実施例11>
(正極用粒子状重合体4の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.5部、を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル20部、メタクリル酸エチル77.5部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.5部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体4の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体4の最低製膜温度は43℃であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃、一次粒子径は139nmであった。
【0132】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体4の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて30℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー4を得た。粉末状の正極用バインダー4の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0133】
上記正極用バインダー4を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0134】
<実施例12>
(正極用粒子状重合体5の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.8部仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル20部、メタクリル酸エチル77.5部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.8部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体5の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体5の最低製膜温度は43℃であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃、一次粒子径は100nmであった。
【0135】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体5の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて30℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー5を得た。粉末状の正極用バインダー5の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0136】
上記正極用バインダー5を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0137】
<実施例13>
(正極用粒子状重合体6の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル20部、メタクリル酸エチル77.5部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で0.4部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体6の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体6の最低製膜温度は48℃であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃、一次粒子径は625nmであった。
【0138】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体6の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて30℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー6を得た。粉末状の正極用バインダー6の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0139】
上記正極用バインダー6を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0140】
<実施例14>
上記正極用粒子状重合体1の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、粒子を得た。その後、得られた粒子を真空乾燥機にて30℃、0.6kPaの条件にて乾燥を行わなかった以外は、実施例8と同様に粒子状重合体の乾燥を行い、粉末状の正極用バインダー7を得た。粉末状の正極用バインダー7の120℃揮発分は0.8%であった。
【0141】
上記正極用バインダー7を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0142】
<比較例6>
(正極用粒子状重合体7の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、アクリル酸ブチル27.6部、メタクリル酸エチル70.0部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体7の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体7の最低製膜温度は27℃であり、ガラス転移温度(Tg)は30℃、一次粒子径は307nmであった。
【0143】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体7の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて25℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー8を得た。粉末状の正極用バインダー8の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0144】
上記正極用バインダー8を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0145】
<比較例7>
(正極用粒子状重合体8の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水210部を仕込み、撹拌しながら70℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液25.5部を反応器に添加した。次いで、メカニカルスターラーを装着した上記とは別の容器に、窒素雰囲気下、メタクリル酸エチル22.5部、メタクリル酸メチル(以下、「MMA」と略記することがある。)75.0部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部、乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で1.0部、及びイオン交換水22.7部を添加し、これを攪拌乳化させて単量体混合液を調製した。そして、この単量体混合液を攪拌乳化させた状態にて、2.5時間かけて一定の速度で、イオン交換水210部及び過硫酸カリウム水溶液を仕込んだ反応器に添加し、重合転化率が95%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体8の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体8の最低製膜温度は115℃であり、ガラス転移温度(Tg)は100℃、一次粒子径は280nmであった。
【0146】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体8の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて80℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー9を得た。粉末状の正極用バインダー9の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0147】
上記正極用バインダー9を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0148】
<比較例8>
(正極用粒子状重合体9の製造)
メカニカルスターラー及びコンデンサを装着した反応器に、窒素雰囲気下、イオン交換水831部と乳化剤として濃度30%のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(ダウファックス(登録商標)2A1、ダウ・ケミカル社製)を固形分相当量で10部添加し、アクリル酸ブチル6部、メタクリル酸エチル91.5部、メタクリル酸2.4部、メタクリル酸アリル0.1部を添加し、この単量体混合液を攪拌乳化させた。これを撹拌しながら60℃に加熱し、1.96%過硫酸カリウム水溶液51部を反応器に添加した。重合転化率が98%になるまで反応させて、正極用粒子状重合体9の水分散体を得た。また、正極用粒子状重合体9の最低製膜温度は42℃であり、ガラス転移温度(Tg)は60℃、一次粒子径は50nmであった。
【0149】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体9の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー10を得た。粉末状の正極用バインダー10の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0150】
上記正極用バインダー10を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0151】
<比較例9>
(正極用粒子状重合体10の製造)
正極用粒子状重合体1の水分散体に対して重合体重量10部に対してトルエンを100部の重量比で添加し、乳化分散装置(マイルダーMDN303V;太平洋機工社製)にて15000rpmで乳化した。その後、その乳化液をロータリーエバポレーターを用いて溶剤を除去し、正極用粒子状重合体10の水分散体を得た。正極用粒子状重合体10の最低製膜温度は53℃であり、ガラス転移温度(Tg)は40℃、一次粒子径は3050nmであった。
【0152】
(粒子状重合体の乾燥)
上記正極用粒子状重合体10の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて40℃、0.6kPaの条件にて乾燥させ、粉末状の正極用バインダー11を得た。粉末状の正極用バインダー11の120℃揮発分は、0.1%であった。
【0153】
上記正極用バインダー11を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0154】
<比較例10>
上記正極用粒子状重合体1の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度30℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥させずに、粉末状の正極用バインダー12を得た。粉末状の正極用バインダー12の120℃揮発分は2%であった。
【0155】
上記正極用バインダー12を用いた以外は、実施例8と同様に正極の製造及びリチウムイオン二次電池の製造を行った。
【0156】
<比較例11>
上記正極用粒子状重合体1の水分散体をスプレー乾燥機(大川原化工機社製)において、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)を用い、回転数25,000rpm、熱風温度40℃として、噴霧乾燥造粒を行い、得られた粒子を真空乾燥機にて70℃、0.6kPaの条件で乾燥させた。その後フィルム化した正極用粒子状重合体1を乳鉢で粉砕した後、さらにジェットミルで平均粒子径が5000nm程度となるまで粉砕を行い、粉末状の正極用バインダー13を得た。粉末状の正極用バインダー13の120℃揮発分は0.1%であった。
【0157】
【表1】
【表2】
【0158】
表1および表2に示すようにガラス転移温度が35〜80℃、一次粒子の体積基準のD50平均粒子径が80〜1000nmである重合体からなり、120℃における揮発分が1重量%未満であり、粉末状複合化粒子である電極用バインダーを含む粒子複合体を用いて製造した電極の電極精度、柔軟性は良好であり、さらにこの電極を用いたリチウムイオン二次電池のレート特性は良好であった。