(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328029
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】バイト切削装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20180514BHJP
B23D 5/02 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
H01L21/304 601Z
B23D5/02
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-215185(P2014-215185)
(22)【出願日】2014年10月22日
(65)【公開番号】特開2016-82191(P2016-82191A)
(43)【公開日】2016年5月16日
【審査請求日】2017年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雅之
【審査官】
中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−113446(JP,A)
【文献】
特開2011−124265(JP,A)
【文献】
特開2007−250598(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0218651(US,A1)
【文献】
特開2008−028343(JP,A)
【文献】
特開2006−054386(JP,A)
【文献】
特開2003−078095(JP,A)
【文献】
特開2007−061980(JP,A)
【文献】
特開2004−022733(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23D 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが配設されたデバイス領域と、該デバイス領域の外周の端材領域とから構成される板状の被加工物の表面をバイト工具で旋回切削するバイト切削装置であって、
被加工物を保持面で吸引保持するチャックテーブルと、
スピンドルの先端に装着されたバイト工具を含むバイトホイールで該チャックテーブルに保持された被加工物を旋回切削する切削手段と、
該チャックテーブルと該切削手段とを該保持面に対して平行方向に相対移動させる加工送り手段と、
該チャックテーブルに吸引保持された被加工物の該保持面の外側に位置づけられ、被加工物の該端材領域を下方へ押し下げる矯正手段と、を備え、
該矯正手段によって押し下げられた該端材領域の高さは、該保持面に保持された被加工物の該デバイス領域の高さ以下の高さに矯正されることを特徴とするバイト切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイト工具で被加工物を旋回切削するバイト切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バイト工具の装着されたバイトホイールをスピンドルの下端に固定し、WL−CSP(Wafer Level−Chip Size Package)の表面のバンプを旋回切削して高さを揃えたり、複数のICチップ等を搭載し、樹脂でモールドをされた樹脂や金属からなるパッケージ基板の表面を旋回切削して平坦化したりするバイト切削装置が知られている。
【0003】
バイトホイールは、ホイール基台と、ホイール基台に装着された先端に切り刃を有するバイト工具とを備え、バイトホイールを回転させつつ、切り刃を被加工物へ当接した状態でバイトホイールと被加工物を摺動させることにより被加工物を旋回切削する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−35344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に金属板(リードフレーム)を基台にし、その上に複数のICチップ等が搭載され樹脂でモールド封止された被加工物を切削する際、金属板の外周が反り上がっていたり、バイト切削装置のチャックテーブルで被加工物を吸引保持することで外周が反り上がってしまったりして、そのまま旋回切削加工を施すと、被加工物の外周にバイト工具が衝突し、バイト工具を破損してしまう恐れがある。
【0006】
また、被加工物の外周が反り上がっていたとすると、外周からチャックテーブルの保持面と被加工物との間に切削水が侵入して、チャックテーブルに吸引保持されている被加工物がチャックテーブルから剥離してしまう恐れがある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、外周が反り上がった被加工物でもチャックテーブルで吸引保持して旋回切削可能なバイト切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、複数のデバイスが配設されたデバイス領域と、該デバイス領域の外周の端材領域とから構成される板状の被加工物の表面をバイト工具で旋回切削するバイト切削装置であって、被加工物を保持面で吸引保持するチャックテーブルと、スピンドルの先端に装着されたバイト工具を含むバイトホイールで該チャックテーブルに保持された被加工物を旋回切削する切削手段と、該チャックテーブルと該切削手段とを該保持面に対して平行方向に相対移動させる加工送り手段と、該チャックテーブルに吸引保持された被加工物の該保持面の外側に位置づけられ、被加工物の該端材領域を下方へ押し下げる矯正手段と、を備え、該矯正手段によって押し下げられた該端材領域の高さは、該保持面に保持された被加工物の該デバイス領域の高さ以下の高さに矯正されることを特徴とするバイト切削装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の切削装置によると、被加工物を旋回切削する前に、矯正手段により被加工物の外周を下方へ折り曲げて高さを矯正することができるため、外周の端材領域に衝突させてバイト工具を破損したり、チャックテーブルに吸引保持されている被加工物がチャックテーブルから剥離する恐れがないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明実施形態のバイト切削装置の斜視図である。
【
図2】チャックテーブルで板状の被加工物を吸引保持した状態の一部断面側面図である。
【
図3】外周に反り上り部分を有する被加工物の反り上り部分を矯正手段で下方に押し下げる様子を示す一部断面側面図である。
【
図4】外周の反り上り部分が押し下げられた被加工物を旋回切削している様子を示す一部断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1を参照すると、本発明実施形態に係るバイト切削装置2の斜視図が示されている。4はバイト切削装置2のベースであり、ベース4の後方にはコラム6が立設されている。コラム6には、上下方向に伸びる一対のガイドレール8が固定されている。
【0012】
この一対のガイドレール8に沿ってバイト切削ユニット(バイト切削手段)10が上下方向に移動可能に装着されている。バイト切削ユニット10は、スピンドルハウジング12と、スピンドルハウジング12を支持する支持部14を有しており、支持部14が一対のガイドレール8に沿って上下方向に移動する移動基台16に取り付けられている。
【0013】
バイト切削ユニット10は、スピンドルハウジング12中に回転可能に収容されたスピンドル18と、スピンドル18を回転駆動するモータ20と、スピンドル20の先端に固定されたホイールマウント22と、ホイールマウント22に着脱可能に装着されたバイトホイール24とを含んでいる。
【0014】
図4に最も良く示されるように、バイトホイール24は、ホイール基台26と、ホイール基台26の下端に装着された先端にダイヤモンドからなる切り刃28aを有するバイト工具28とを含んでいる。
【0015】
バイト切削装置2は、バイト切削ユニット10を一対の案内レール8に沿って上下方向に移動するボールねじ30とパルスモータ32とから構成されるバイト切削ユニット送り機構34を備えている。パルスモータ32を駆動すると、ボールねじ30が回転し、バイト切削ユニット10が上下方向に移動される。
【0016】
ベース4の上面には凹部4aが形成されており、この凹部4aにチャックテーブル機構36が配設されている。チャックテーブル機構36は保持面40aを有するチャックテーブル38を備えており、図示しないチャックテーブル移動機構によりY軸方向に移動される。
【0017】
チャックテーブル38の周りにはウォーターカバー41が配設されており、ウォーターカバー41とベース4の固定部との間に渡りチャックテーブル移動機構を覆う蛇腹42が設けられている。ベース4の前方側には、バイト切削装置2のオペレータが旋回切削条件等を入力する操作パネル44が配設されている。
【0018】
チャックテーブル38は、複数のデバイスチップが配設されて樹脂モールドされたデバイス領域13と、デバイス領域13を囲繞する金属板(リードフレーム)15が露出した端材領域15aとを有する板状の被加工物11を吸引保持する。チャックテーブル38を跨ぐように矯正ユニット(矯正手段)46が配設されている。
【0019】
矯正ユニット46は、チャックテーブル38を跨ぐようにベース4に立設された一対のポスト48a,48bと、ポスト48a,48bの上端部を連結する連結部材50とを含んでいる。
【0020】
連結部材50には、図示しない回転機構により回転可能に且つ図示しない移動機構により上下方向に移動可能に円筒部材52が取り付けられている。円筒部材52は矩形状の支持プレート54を支持しており、支持プレート54には、一対の押圧部材56a,56bが支持プレート54から垂下するように配設されている。
【0021】
以下、上述したように構成されたバイト切削装置2の作用について
図2乃至
図4を参照して説明する。
図2を参照すると、板状の被加工物11がチャックテーブル38により吸引保持された状態の一部断面側面が示されている。
【0022】
被加工物11は、金属板(リードフレーム)15と、金属板15上に複数のデバイスチップが搭載され樹脂でモールド封止されたデバイス領域13と、デバイス領域13を囲繞する金属板15が露出した端材領域15aとを含んでいる。
【0023】
チャックテーブル38は吸引源に接続された吸引路39を有しており、吸引路39の他端は複数のピンが立設された吸引保持部40に開口している。本実施形態のチャックテーブル38はピンチャックであり、複数のピンから構成された吸引保持部40の保持面4aで被加工物11を吸引保持する。
【0024】
被加工物11の反り上がった端材領域15aを矯正するには、図示しないチャックテーブル移動機構を駆動して、チャックテーブル38をY軸方向に移動し、チャックテーブル38に保持された被加工物11を、
図1及び
図3(A)に示す、矯正ユニット46の直下に位置づける。
【0025】
このように被加工物11を位置づけた後、
図3(B)に示すように、矯正ユニット46の円筒部材52を下降して、一対の押圧部材56a,56bにより対向する端材領域15aを下方に押し下げる。端材領域15aは金属板15から形成されているため、このように一旦押し下げられるとその状態が維持される。
【0026】
次いで、円筒部材52を一旦上昇させてから90°回転して、一対の押し下げ部材56a,56bを未矯正の反り上がっている端材領域15aに位置づけ、円筒部材52を下方に移動することにより、
図3(B)に示すように、対向している端材領域15aを下方に押し下げる。これにより、四辺の端材領域15aがデバイス領域13の上面の高さよりも下方に押し下げられたことになる。
【0027】
このように被加工物11の端材領域15aの高さを矯正した後、
図4に示すように、スピンドル18を約2000rpmで回転させつつ、バイト切削ユニット送り機構34を駆動して、バイト工具28の切り刃28aを被加工物11のデバイス領域13の封止樹脂に所定深さ切り込ませ、チャックテーブル38を矢印Y1方向に所定の送り速度で移動させながら、被加工物11のデバイス領域13の封止樹脂を旋回切削する。この旋回切削時には、チャックテーブル38は回転させずにY1方向に所定の送り速度で加工送りする。
【0028】
上述した実施形態によると、バイト切削ユニット2は矯正ユニット46を備えているため、被加工物の旋回切削加工を行う前に、被加工物11の端材領域15aを下方へ折り曲げて高さを矯正することはできるため、バイト工具を外周の端材領域15aに衝突させてバイト工具28を破損してしまうことが防止される。
【0029】
また、被加工物11の端材領域15aが反り上がっていると、水が被加工物11と保持面40aとの間に侵入してしまう恐れがあるが、端材領域15aが下方に折り曲げられて矯正されているため、切削水が被加工物11と保持面40aとの間に侵入することが抑制され、チャックテーブル40から被加工物11が剥離する恐れを防止できる。
【0030】
また、チャックテーブル38の周りに、回転して端材領域15aを押し下げるクランプ手段を配設することで、同様の効果を達成しても良い。その場合、旋回切削中にクランプ手段で端材領域15aを押し下げつつ固定しても良い。
【符号の説明】
【0031】
2 バイト切削装置
10 バイト切削ユニット
24 バイトホイール
28 バイト工具
34 バイト切削ユニット送り機構
38 チャックテーブル
40 吸引保持部
40a 保持面
46 矯正ユニット(矯正手段)
54 支持プレート
56a,56b 押圧部材