(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6328055
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】EBCCD、EBCCDを操作させる方法、暗視野検査システム、検査方法および検査システム
(51)【国際特許分類】
H01J 31/50 20060101AFI20180514BHJP
G01N 21/956 20060101ALI20180514BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20180514BHJP
H04N 5/335 20110101ALI20180514BHJP
H01L 27/148 20060101ALI20180514BHJP
【FI】
H01J31/50 D
G01N21/956 A
G01N21/88 Z
H04N5/335
H01L27/148 B
【請求項の数】25
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2014-547347(P2014-547347)
(86)(22)【出願日】2012年12月11日
(65)【公表番号】特表2015-507321(P2015-507321A)
(43)【公表日】2015年3月5日
(86)【国際出願番号】US2012068944
(87)【国際公開番号】WO2013090261
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2015年12月10日
(31)【優先権主張番号】61/569,611
(32)【優先日】2011年12月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】13/710,315
(32)【優先日】2012年12月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー−テンカー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チャン ユン−ホ アレックス
(72)【発明者】
【氏名】リウ シュエフェン
(72)【発明者】
【氏名】フィールデン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン デイヴィッド エル
【審査官】
杉田 翠
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−199075(JP,A)
【文献】
特開2007−040909(JP,A)
【文献】
特開平06−275216(JP,A)
【文献】
特開2006−302844(JP,A)
【文献】
特開2009−206057(JP,A)
【文献】
特表2007−533107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/84−21/958
G01S7/52
15/89
G01T1/00−1/16
1/167−7/12
H01J29/36−29/45
31/08
31/26−33/04
40/00−49/48
H01L21/339
27/14
27/144−27/148
29/762
H04N5/30−5/378
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウィンドウを含むアセンブリと;
前記アセンブリの内側にあり、かつ前記ウィンドウに隣接する光電陰極と;
前記アセンブリの内側にあり、かつ前記光電陰極から発せられた電子を収集するように位置付けられた電荷結合素子(CCD)デバイスと;
前記光電陰極と前記CCDの間に位置付けられ、内部に複数の穴を有する制御デバイスと;
を含む、電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)であって、
前記複数の穴は、前記光電陰極の表面に対して垂直に形成され、前記複数の穴のパターンは前記CCDにおけるピクセルのパターンと整列され、各穴は、前記制御デバイスの前記光電陰極に面する表面に形成された少なくとも1つの第1電極に囲まれる、
電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)。
【請求項2】
前記CCDは、前記少なくとも1つの第1電極に面する表面にホウ素コーティングを有する、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項3】
前記CCDは背面薄化CCDを含む、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項4】
前記CCDは時間遅延積分CCDを含む、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項5】
前記ウィンドウの外面は反射防止コーティングを含む、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項6】
前記制御デバイスはシリコン構造物を含む、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項7】
前記制御デバイスは金属製構造物を含む、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項8】
前記制御デバイスは、前記複数の穴の間に複数の畝をさらに含む、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項9】
前記制御デバイスは、CCDピクセルの短い方の寸法の半分以下だけ前記光電陰極から分離するように位置付けられる、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1電極は複数の第1電極を含み、前記第1電極の各々は、所与の穴を囲み、かつ前記所与の穴からギャップにより分離される、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項11】
前記少なくとも1つの第1電極は、複数の環状電極と、1つの表面電極と、を含み、前記複数の環状電極の各々は、所与の穴から第1ギャップにより分離され、かつ前記表面電極から第2ギャップにより分離される、請求項1に記載のEBCCD。
【請求項12】
前記制御デバイスの前記穴を囲み、かつ前記制御デバイスの前記CCDに面する表面に位置付けられた少なくとも1つの第2電極をさらに含む、請求項10に記載のEBCCD。
【請求項13】
電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)を操作させる方法であって、
前記EBCCDの光電陰極を前記EBCCDのCCDに対して負の電圧に保つことと;
前記光電陰極とCCDとの間に配置された制御デバイス内に形成された複数の穴に電子を通過させることにより、前記光電陰極から前記CCDのピクセルに向かって進行する電子を集束させることであって、前記複数の穴を光陰極の表面に対し垂直に形成することで前記CCDに対し垂直に伝播する前記電子の前記複数の穴の側壁の影響を小さくすること;
を含み、
前記電子を集束させることは、前記制御デバイスの前記複数の穴の各穴をCCDの1つの対応するピクセルと位置合わせさせて、各ホールを通過する大部分の電子が対応するピクセル上に着地させることをさらに含む、方法。
【請求項14】
前記制御デバイスの前記穴の内面を、前記光電陰極に対して正の電圧に保つことをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも1つの穴を囲む第1電極を、前記穴の前記内面とは異なる電圧に保つことをさらに含み、前記第1電極は、前記制御デバイスの前記光電陰極に面する表面に位置付けられる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1電極は、前記穴の前記内面に対して負の電圧に保たれる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
第2電極を前記第1電極とは異なる電位に保つことをさらに含み、前記第2電極は、前記制御デバイスの少なくとも1つの穴を囲み、かつ前記CCDに面するように位置付けられる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記光電陰極に最も近い前記制御デバイス表面のいくつかの領域を、前記光電陰極の電位と同様の電位、または前記光電陰極に対してわずかに負の電位に保つことをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
光を検査対象サンプルに方向付けるための光学系と;
前記サンプルからの散乱光を収集し、収集した光を方向付けるための光学系と;
前記収集した光を受け取るための電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)検出器と;
を含む、暗視野検査システムであって、
前記EBCCD検出器は、
ウィンドウを含むアセンブリと;
前記アセンブリの内側にあり、かつ前記ウィンドウに隣接する光電陰極と;
前記アセンブリの内側にあり、かつ前記光電陰極から発せられた電子を収集するように位置付けられたCCDデバイスと;
前記光電陰極と前記CCDの間に位置付けられ、内部に複数の穴を有する制御デバイスと;を含み、
前記複数の穴は、前記光電陰極の表面に対して垂直に形成され、前記複数の穴のパターンは前記CCDにおけるピクセルのパターンと整列され、各穴は、前記制御デバイスの前記光電陰極に面する表面に形成された少なくとも1つの第1電極に囲まれる、
暗視野検査システム。
【請求項20】
前記CCDは時間遅延積分CCDである、請求項19に記載の暗視野検査システム。
【請求項21】
前記時間遅延積分CCDは、並行して読み取ることのできる多重読み出しレジスタを含む、請求項20に記載の暗視野検査システム。
【請求項22】
半導体ウエハの検査方法であって、
前記ウエハの領域に光を当てることと;
前記ウエハからの散乱光を収集することと;
収集した光を電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)検出器へと方向付けることと;
を含み、前記EBCCD検出器は、
前記EBCCDの光電陰極を前記EBCCDのCCDに対して負の電圧に保つことであって、前記CCDはパターンで配置された複数のピクセルを含むことと;
前記光電陰極とCCDとの間に配置された制御デバイス内に形成された複数の穴に電子を通過させることにより、前記光電陰極から前記CCDのピクセルに向かって進行する電子を集束させることであって、前記複数の穴を光陰極の表面に対し垂直に形成することで前記CCDに対し垂直に伝播する前記電子の前記複数の穴の側壁の影響を小さくすること;
を含み、
前記複数の穴が前記パターン内に配置され、前記制御デバイスは、前記複数の穴の各穴をCCDの1つの対応するピクセルと位置合わせさせて、各ホールを通過する大部分の電子が前記ピクセルのパターンの前記対応するピクセル上に着地するように位置決めされている、検査方法。
【請求項23】
前記CCDは時間遅延積分を行う、請求項22に記載の検査方法。
【請求項24】
前記時間遅延積分は、並行して読み出される多重レジスタを使用する、請求項23に記載の検査方法。
【請求項25】
検査システムであって、
前記検査システムは、パルス照明光源と;
電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)検出器を含むイメージセンサと、を含み;
前記EBCCD検出器は、
ウィンドウを含むアセンブリと;
前記アセンブリの内側にあり、かつ前記ウィンドウに隣接する光電陰極と;
前記アセンブリの内側にあり、かつ前記光電陰極から発せられた電子を収集するように位置付けられたCCDと;
前記光電陰極と前記CCDの間に位置付けられ、内部に複数の穴を有する制御デバイスと;を含み、
前記複数の穴は、前記光電陰極の表面に対して垂直に形成され、前記複数の穴のパターンは前記CCDにおけるピクセルのパターンと整列され、各穴は、前記制御デバイスの前記光電陰極に面する表面に形成された少なくとも1つの第1電極に囲まれており;
前記検査システムは、
前記パルス照明光源からのパルス照明を連続移動物体へと方向付けるように、かつ前記物体からの反射光を前記イメージセンサへと方向付けるように構成された光学構成要素と;
前記イメージセンサを操作するように構成されたプロセッサと;を含み、
処理を行う構成は、
照明パルス中に時間遅延積分(TDI)操作を行うことであって、TDI操作中、前記イメージセンサのピクセルにより保存された電荷は第1方向にのみ移動することと;
非照明中に分割読み出し操作を行うことであって、前記分割読み出し中、前記イメージセンサの第1ピクセルにより保存された第1電荷は前記第1方向に移動し、前記イメージセンサの第2ピクセルにより保存された第2電荷は第2方向に同時に移動し、前記第2方向は前記第1方向と反対方向にあることと、を含む、
検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年12月12日に出願された米国特許仮出願第61/569,611号(名称「Electron−Bombarded CCD And Inspection Systems Using Electron−Bombarded CCD Detectors」)に対する優先権を主張するものであり、この米国特許仮出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示の背景
本開示は、きわめて低レベルの光を、高い空間分解能、高い量子効率、非常に良好な信号対雑音比、および高いダイナミックレンジで検出することのできる感光性アレイ検出器に関する。
【背景技術】
【0003】
電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)検出器は、当技術分野において公知である。
図1Aは、従来型EBCCD101の図である。EBCCD101は密封管105を含み、この密封管は、真空環境において感光性光電陰極104とCCD102を格納する。一般に、光電陰極104とCCD102の間のギャップは約1mmか2mmである。密封管105は、光電陰極104に隣接して位置するウィンドウを有するので、入射光110の存在下では、光電陰極104が入射光110からの光子を吸収でき、次いで1つまたは数個の電子112を放出することができる。
【0004】
典型的な構成では、光電陰極104は、CCD102に対して約−2000V〜−10,000Vの負の電位に保たれる。このような電位差があるため、電子112はCCD102に向かって加速する。電子がCCD102に衝突すると、この電子は通常、CCD102の半導体材料内に複数の電子正孔対を生成する。電子はCCD102に捕捉され、その後、CCD102が検出器から読み出されるときに電流または電圧に変換される。
【0005】
イメージ増強検出器も、当技術分野において公知である。イメージ増強管はEBCCDと同様であるが、CCDの代わりに蛍光スクリーンと出力ウィンドウが存在する点が異なる。蛍光スクリーンからの光の捕捉は、CCDやCMOSイメージングデバイス等の外部のイメージ検出器で行うことができる。
【0006】
光電子倍増管も、当技術分野において公知である。光電子倍増管は、非常に高い利得を有することができ、場合によっては、単一の捕捉光子を検出することもできる。しかし、個々の光電子倍増管は空間分解能を持たない。光電子倍増管アレイを製作することは可能であるが、大型で高価となり、空間分解能はミクロン単位でなくミリメートル単位の程度である。
【0007】
マイクロチャンネルプレート(MCP)検出器も、当技術分野において公知である。MCPは、単独でも使用できるが、カスケード状に配置して利得を増加させることもできる。
図1Bは、カスケード状に配置された2つのMCP140、142を含む従来型MCPアセンブリ121の断面図である。典型的なMCPは高抵抗性材料で作られ、厚さは1〜2mmであり得る。MCPは、約6〜20μmの間隔を空けて並んだ直径約4〜10μmの小さな穴の配列を格納する。通常、二次電子の放出(以下に詳述)を確実に最大化する目的で、MCP表面に対する垂線に対して、これらの穴を意図的に数度傾斜させる。
図1Bが示す通り、MCP140、142のそれぞれの穴が反対方向に傾斜して、カスケード状のMCPの積み重ねを通過するイオンの直線経路を遮断するか、少なくとも最小化している。MCP140の底面146は、その上面145に対して正の電位(例えば数百ボルト〜1または2kV)に保つことができる。MCP142の電位は、MCP140より正の電位に維持することができる。一般に、カスケード状に配置された複数のMCPを使用する場合、入力から出力に進むにつれて、連続したMCPの各々は、直前の電位よりも正の電位に維持される。
【0008】
作動時は、電子131がいずれかの穴の壁部に衝突すると、二次電子が様々な方向に放出される。MCPの上面と底面の間に電位差があるので、これらの二次電子は下面に向かって加速する。二次電子の一部は、穴の壁部に衝突して、さらに二次電子を生成する。単一のMCP内で、このプロセスが複数回発生し得る。実際、単一の入射電子または入射光子から、様々な方向に移動する数百個、あるいは数千個もの二次電子が生成され得る。カスケード状に配置されたMCP140、142の場合、単一の入射電子または入射光子から、100,000個〜1,000,000個の二次電子132が生成され得る。MCPは、イメージ増強管または光電陰極付きEBCCD(入射光子エネルギーが十分であれば光電陰極無し)の中で使用できる。
【0009】
不都合なことに、上記の検出器は空間分解能が低いため、半導体検査応用における用途が著しく限定されている。例えば、従来型EBCCD検出器では、電子は、CCDに向かって加速しながら水平方向に広がる。半導体検査で使われるUV光反応性の応用では、入射光子は約3.5eV以上のエネルギーを有する。光電陰極の仕事関数はわずか1eVか2eVであり得るため、1eVまたは数eVのエネルギーで電子が発生する。特に注目すべきことは、1eVもの低エネルギーが約6×10
5ms
−1の電子速度に対応することである。
【0010】
電子は本質的にランダムな方向に放出されるので、大部分の電子は、相当な水平方向速度成分をもって放出される。10
6Vm
−1の加速場勾配(1mmのギャップの横断に1kV)下では、電子が光電陰極からCCDまでの上記1mmのギャップを渡るのに約100psを要する。この100psの間、典型的な電子1個は、その水平方向速度成分のため約50μm横方向に動く。初期電子エネルギーに応じて水平速度がゼロ〜最大値に分布するので、約50μm〜100μmの長さ尺度の画像ぶれが発生し得る。入射光の波長が短いほど初期光子エネルギーが大きくなり、この画像ぶれが増加する。
【0011】
したがって、半導体産業がより短波長の検査へと移行すると、この画像ぶれがいっそう悪化することになる。355nmの入射放射線でも、検出器において20μmの空間分解能を達成することはできない。266nmの入射放射線では、画像ぶれは著しく悪化する。光電陰極とCCDの間のギャップを狭くすれば、アーク放電または電気絶縁破壊のリスクが高まり、よってデバイスの信頼性が低下することになる。電圧差を増加させた場合も信頼性が低下し、加えて後述の機構の摩耗が加速する。
【0012】
光電陰極とCCDの間のギャップを小さくすれば、画像ぶれは減少する。しかし、薄化CCDは、応力に起因する何十ミクロンもの反りを有する。ギャップをCCDの反りより大幅に広くしなければ、様々な場所の様々なギャップに起因して生じる電場変動により、様々な場所で画像の歪みが生じることになる。
【0013】
既存のEBCCD検出器に存在する別の制約は、真空中の残留ガスに存在する原子と電子が衝突したとき、あるいは電子がCCDの表面または容積から原子を除去したときに、イオンが発生することである。電位差があるため、このイオンは加速して光電陰極に戻り、光電陰極と衝突する。これにより材料が消耗し、さらに電子が排出される。このように光電陰極が消耗する結果、寿命が短くなり、光電陰極の効率が低下する。
【0014】
特に、光電陰極が薄くなるほど、光子が吸収されずに通過する確率が高くなる。しかし、非常に高い確率で電子が吸収されずに材料から脱出するように、光電陰極はすでに薄型に製造されている。そうでなければ量子効率が低下することになる。したがって、光電陰極の消耗は材料不良を招き得る。さらに、消耗時に発生する余分な電子により、信号レベルは上昇するが、信号対雑音比は低下する(すなわち、イオン生成は有意の数の電子を生成する偶発的事象であり、それにより非ガウス型雑音統計をもたらす)。
【0015】
従来型EBCCDは、CCDに衝突する高エネルギー電子によりCCDが損傷を受けることから、寿命も制限される。
【0016】
CCDの非平坦性により、CCDの様々な領域で様々な電場勾配が発生し得る。このような電場勾配に差が生じる結果、光電陰極からCCDに伝達されるイメージに小さな歪みが生じ、かつ/またはEBCCD検出器の利得に局所的変動が生じることがある。
【0017】
光電陰極とCCDの間の電圧差が大きいため、光電陰極面に少しでも衝突があれば、非常に大きな電場勾配が生じることになり、電界放射により自然に電子が発生し得る。このような電子が発生すれば、光がまったく存在しない場合でも、信号出力を伴う「ホットスポット」としてEBCCDに現れる。
【0018】
イメージ増強管は、概してEBCCDよりイメージ分解能が低い。その理由は、リン光体からイメージ検出器への光の伝達で、さらなるぶれが加わるからである。より高い加速電圧を使用して横方向分解能が少し改善しても、この追加的ぶれで相殺されるのが通例である。イメージ増強管は、イメージ検出器を高エネルギー電子と高電圧アーク放電から保護できるが、リン光体のスパッタリンクが原因で、光電陰極の消耗と過剰雑音発生を解消するに至っていない。
【0019】
光電子倍増管アレイは、横方向分解能が極度に制限され(分解能がmm規模)、数百個や数千個もの検出器を含むアレイとして製作するには法外な費用を要する。
【0020】
MCPは、二次電子が発生するために横方向分解能が低い。上記のように、二次電子は多eV数のエネルギーで生成されるので、水平方向速度成分は6×10
5ms
−1の何倍もの大きさとなり得る。実際、二次電子がCCDまたはリン光体に向けて横断する際の水平方向の広がりは、単一MCPでも100μm以上になり得る(カスケード状の複数のMCPではさらに大きくなる)。したがって、EBCCDまたはMCP無しイメージ増強管と比べて、二次電子の水平方向の広がりが一段と悪化する。その上、MCPは非常に高い利得を有する能力があるが、この利得は非常に雑音が大きい。個々の入射光子または電子から、様々な数の二次電子が生成され得る。
【0021】
こうしたことから、量子効率を維持または改良すると同時に、改善された空間分解能、寿命、および信号対雑音比を有するEBCCDが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
電子衝撃電荷結合素子(EBCCD)は、ウィンドウを有するアセンブリと、アセンブリの内側にあり、かつウィンドウに隣接する光電陰極と、アセンブリの内側にあり、かつ光電陰極から発せられた電子を収集するように位置付けられたCCDデバイスと、を含む。EBCCDはさらに、光電陰極とCCDの間に位置付けられた制御デバイスを含む。この制御デバイスは内部に複数の穴を有し、これらの複数の穴は、光電陰極の表面に対して垂直に形成され、これらの複数の穴のパターンは、CCDにおけるピクセルのパターンと整列される。各穴は、制御デバイスの光電陰極に面する表面に形成された少なくとも1つの第1電極に囲まれる。
【0023】
光電陰極は、ウィンドウ上に施されたコーティングであってよい。CCDは、背面薄化CCDまたは時間遅延積分CCDを含んでよい。ウィンドウの外面は、反射防止コーティングを含んでよい。制御デバイスは、シリコン構造物または金属製構造物を含んでよい。
【0024】
一実施形態では、制御デバイスは、穴と穴の間に複数の畝を含んでよい。制御デバイスは、CCDピクセルの短い方の寸法の約半分以下だけ光電陰極から分離されてよい。一実施形態では、複数の第1電極を設けてよく、この場合、各第1電極は所与の穴を囲み、ギャップによりその穴から分離される。別の一実施形態では、複数の環状電極と1つの表面電極が設けられ、この場合、環状電極の各々は、所与の穴から第1ギャップにより分離され、かつ表面電極から第2ギャップにより分離される。さらに別の一実施形態では、少なくとも1つの第2電極が制御デバイスの穴を囲み、この第2電極は、制御デバイスのCCDに面する表面に位置付けられる。
【0025】
EBCCDの操作方法も提供される。この方法は、EBCCDの光電陰極を、EBCCDのCCDに対して負の電圧に保つことを含む。電子は、光電陰極からCCDのピクセルに向かって進行しながら集束される。さらに、この集束を提供する制御デバイスの穴は、CCDのピクセルと整列される。
【0026】
この方法は、制御デバイスの穴の内面を、光電陰極に対して正の電圧に保つことをさらに含む。一実施形態では、少なくとも1つの穴を囲む第1電極を、穴の内面とは異なる電圧に保つ。第1電極は、制御デバイスの光電陰極に面する表面に位置付けられる。特に、第1電極は、穴の内面に対して負の電圧に保たれる。別の一実施形態では、第2電極は、第1電極とは異なる電位に保たれる。第2電極は、制御デバイスの少なくとも1つの穴を囲み、CCDに面するように位置付けられる。さらに別の一実施形態では、光電陰極に最も近い制御デバイス表面のいくつかの領域が、光電陰極の電位と同様の電位、または光電陰極に対してわずかに負の電位に保たれる。
【0027】
制御デバイスを有する集束EBCCDを含む暗視野検査システムが提供される。このシステムは、光を検査対象サンプルに方向付けるための光学系と、サンプルからの散乱光を収集し、収集した光を方向付けるための光学系と、収集した光を受け取るための本明細書に記載の集束EBCCDと、を含む。一実施形態では、このCCDは時間遅延積分CCDである。この時間遅延積分CCDは、並行して読み出すことのできる多重読み出しレジスタを含んでよい。
【0028】
半導体ウエハの検査方法も提供される。この方法は、ウエハの領域に光を当てることと、ウエハからの散乱光を収集することと、収集した光を集束EBCCD検出器へと方向付けることと、を含む。一実施形態では、CCDは時間遅延積分を行う。この時間遅延積分は、多重レジスタを並行して読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1B】カスケード状に配置された2つのMCPを含む従来型MCPアセンブリの断面図である。
【
図2】制御デバイスを含む代表的な集束EBCCDの図である。
【
図3A】代表的制御デバイスにおける4つの穴の上面図である。
【
図3B】別の制御デバイスの上面図である。ここでは、個々の電極が統合されて、制御デバイス上面の大部分を覆う単一の表面電極を形成している。
【
図3C】さらに別の制御デバイスの上面図である。この制御デバイスは、表面電極と各穴の間に設けられた内部電極を含む。
【
図4A】線分検出器EBCCDでの使用に適した代表的な制御デバイスの上面図である。
【
図4B】線分検出器EBCCDでの使用に適した別の代表的な制御デバイスの上面図である。
【
図4C】あるEBCCDの3つの穴と、それぞれの代表的な等電位を示す断面図である。
【
図4D】
図4D(1)と
図4D(2)は、それぞれ、別の代表的制御デバイスの上面図と断面図である。
【
図4E】
図4Cおよび4Dの代表的EBCCDの、光電陰極から様々な方向に進行する電子に対して算出された電子軌跡を示す図である。
【
図4F】別のEBCCDの3つの穴と、それぞれの代表的な等電位を示す断面図である。
【
図4G】
図4Fの代表的EBCCDの、光電陰極から様々な方向に進行する電子に対して算出された電子軌跡を示す図である。
【
図5】反射屈折イメージングシステムに垂直入射レーザー暗視野照明を追加した図である。
【
図6A】別の表面検査装置の図である。この検査装置は、表面領域を検査するための照明システムと収集システムを含む。
【
図6B】別の表面検査装置の図である。この検査装置は、表面領域を検査するための照明システムと収集システムを含む。
【
図7】暗視野パターン無しウエハ検査システムの光学系の図である。
【
図8】法線、傾斜両方の照明ビームを用いて異常検出を実装するように構成された暗視野検査システムの図である。
【
図9】複数のEBCCD検出器を含む別の暗視野ウエハ検査システムの図である。
【
図10】パルス照明光源を用いて連続移動物体を検査または測定するように構成された、代表的な検査/測定システムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図面の詳細な説明
集束EBCCDにより、量子効率を維持または改良すると同時に、空間分解能、寿命、および信号対雑音比が改善された。
図2は、集束EBCCD201の図である。EBCCD201は密封管205を含み、この密封管は、真空環境において感光性光電陰極204とCCD202を格納する。密封管205の上面はウィンドウ207を含む。ウィンドウ207は、対象の波長において透明である。UV感応性EBCCD検出器の場合、このウィンドウは、好ましくは、極めて純度の高いグレードの石英、溶融シリカ、またはアルミナ(サファイア)を含む。いくつかの好適な実施形態では、ウィンドウの外面はUV反射防止コーティングで被覆される。このコーティングは、低指数物質(例えばフッ化マグネシウム(MgF
2))で作られた単層でもよく、あるいは多層コーティングでもよい。
【0031】
光電陰極204は、ウィンドウ207に直接隣接して配置される。あるいは、ウィンドウ207のコーティングとして実装してもよい。光電陰極の材料は、光電子倍増管、イメージ増強管、またはCCD検出器用として当技術分野で公知の任意の光電陰極材料と実質的に同様であってよい。好適な実施形態では、光電陰極204は、1つ以上のアルカリ金属(例えばセシウム)を含んでよく、あるいは、半導体(例えば窒化ガリウム(GaN)、ヒ化ガリウム(GaAs))を含んでよい。光電陰極204は、CCD202に対して負の電圧203に保たれる。いくつかの実施形態では、負の電圧203は約1000Vであってよい。他の実施形態では、負の電圧203は数百ボルトまたは数十ボルトであってよい。
【0032】
CCD202は、密封管205の底面近くに配置され、その背面に最初に電子が衝突する向きにされた薄化CCD(すなわち背面薄化CCD)である。背面薄化CCDは通常、例えば厚さ約500μmのシリコン基板の上面にトランジスタその他のデバイスを形成することにより形成される。ドーピングを用いて、p型、n型両方のデバイスを作製することができる。このようなデバイスは、厚さの異なる種々な材料で形成されるので、CCDに到達する電子の一部は、厚みのあるシリコンの他、これらのデバイスによっても遮断または吸収されることがある。したがって、電子が背面に衝突したときに可能な限り多くの電子を確実に検出できるようにするため、シリコンのかなりの部分が除去される。標準的な実施形態では、結果として得られるシリコンの厚さは25μm程度である。
【0033】
不都合なことに、シリコンが露出していると、そこに天然酸化物が形成される。この天然酸化物は、電子がシリコンに進入するのを阻害することもある。したがって、一実施形態では、CCDを用いた検出の強化を促進する目的で、コーティングしなければ天然酸化物が堆積するシリコン露出部にホウ素コーティングを施すことができる。この保護コーティングについては、2012年6月12日に出願された米国特許仮出願第61/658,758号に詳述されている(この文献は、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態では、CCD202は時間遅延積分(TDI)CCDである。いくつかの好適な実施形態では、CCD202は接地電位近くに保たれる。
【0034】
集束を提供し、ゆえに性能を改善するため、EBCCD201はさらに、制御デバイス210を含む。制御デバイス210は1つ以上の制御信号212(例えば制御電圧)で制御される。一実施形態では、制御デバイス210は光電陰極204とCCD202の間に配置される。別の一実施形態では、制御デバイス210はCCD202に取り付けられる。
【0035】
制御デバイス210は、光電陰極204からCCD202に向けて進行する電子を有利に集束させて、電子の水平方向の広がりを最小化することができる。いくつかの実施形態では、制御デバイス210は、大きな水平速度成分を有する一部の電子を、集束でなく遮断することができる。この集束を提供するため、制御デバイス210は、貫通穴(すなわち開口)の配列を有する。一実施形態では、これらの穴のパターンはCCD202のピクセルのパターンと整列される。例えば、CCD202が20μm×20μmの正方形ピクセルを含む場合、制御デバイス210は、20μm×20μmのグリッド上に直径約10μmの穴の配列を含んでよい。いくつかの実施形態では、制御デバイス210の厚さは約25μm〜200μmであってよい。穴の配列とCCD202のピクセルの配列の整列を可能にするため、制御デバイス210は、整列機能をさらに含んでよい。同様に、制御デバイス210との整列を容易にするため、CCD202の片面または両面に整列マークを組み込んでもよい。
【0036】
いくつかの実施形態では、制御デバイス210は金属板または金属箔を含んでよい。他の好適な実施形態では、制御デバイス210は、シリコン結晶またはシリコンウエハを含んでよい。制御デバイス210内の穴の製作は、レーザードリル加工(例えば金属製材料の場合)またはフォトリソグラフィとエッチング(例えば半導体材料の場合)により行ってよい。半導体技術を用いて制御デバイス210を製作する実施形態では、穴以外の要素を、制御デバイスの中および表面に形成することもできる。例えば、電極、ドーピング領域、電圧制御デバイス、および検出デバイスを、制御装置210の表面または中に形成してよい。
【0037】
上記の通り、マイクロチャンネルプレート(MCP)は二次電子を発生させ、この二次電子はデバイスの利得を増加させるが、デバイスの空間分解能を低下させる。対照的に、制御デバイス210は、電子の大部分をCCD202のピクセルに向けて集束させ、同時に、相当な水平速度成分を有する電子は遮断するか向きをそらす。いくつかの好適な実施形態では、光電陰極204と制御デバイス210上面の間の電位差が小さいので(例えば数ボルトまたは数十ボルト)、制御デバイス210の制御電極に実際に電子が衝突しても、二次電子はまったく発生しないか、ごく少数しか発生しない。
【0038】
光230がEBCCD201に入射すると、1つ以上の電子220が光電陰極204から発せられる。これらの電子は実質的に全方向に放出され、光電陰極204と制御デバイス210間の電位差により、制御デバイス210に向かって加速する。制御デバイス210の穴により、電子は制御デバイス210内で実質的に平行にされる。したがって、制御デバイス210から現れた電子は、CCD202に対して実質的に垂直に進行する。これにより、所与の穴を通って進行する大部分の電子が、対応する(および整列された)CCD202のピクセルに確実に到着し、これにより画像ぶれが実質的に低減される。
【0039】
図3Aは、代表的な制御デバイスにおける4つの穴310の上面図である。上記の通り、好ましくは、これらの穴は、CCDのピクセルのグリッドと一致するグリッド上に配置される。ただし、検出器が面検出器でなく線分検出器の場合、1列のみの穴を配置してよい。好適な実施形態では、穴の直径はCCDピクセルのサイズの約半分である。非限定的な例として、CCDのピクセルが20μm×20μmである場合、いくつかの実施形態では、個々の穴の直径は約10μmであり得る。いくつかの実施形態では、制御デバイスの厚さは、穴の直径の約2.5〜20倍の大きさである。例えば、CCDピクセルのサイズが約20μm×20μmである場合、穴の直径は約10μm、制御デバイスの厚さは約25μm〜約200μmであり得る。穴の直径より穴の長さの方がはるかに長いので、穴を通過する電子は、比較的狭い角度範囲で進行することになる。
【0040】
個々の穴310の周りを電極312が囲む。好適な実施形態では、穴310の内面は導電性であり、制御電圧に接続される。いくつかの実施形態では、(
図2の電子220を表す矢印が示すように)穴310に向けて電子を引き付けるために、この電圧は光電陰極に対して正の電圧である。電子を穴310に向けるため、電極312は、穴310の内面とは異なる電圧にある。いくつかの実施形態では、電極312は、穴310の内面に対して負の電圧にある。いくつかの実施形態では、個々の穴310の周りに2つ以上の電極が設けられる。いくつかの実施形態では、制御デバイスの底面側の各穴の周りにも電極が設けられる。
【0041】
図3Bは、制御デバイスの別の実施形態の図である。ここでは、個々の電極(例えば、
図3Aに示す電極312)が統合されて、制御デバイス上面の大部分を覆う単一の電極322を形成している。いくつかの実施形態では、表面電極322と個々の穴310の間に小さなギャップ324が存在してよい。ギャップ324を形成するには、外側と内側で異なる電位を有する弱導電性要素を提供する不純物半導体(標準のドーパントを用いたn型またはp型のドーピング)を用いてよい。留意すべきことは、ギャップ324は絶縁体として形成されないことである。絶縁体として形成すると、電子を捕捉する傾向を有し、最終的に負に帯電するため、電子を穴310に引き付けるのでなく、電子を反発させることになる。
【0042】
図3Cは、制御デバイスのさらに別の実施形態の図である。この実施形態では、表面電極322と個々の穴310の間に内側電極332が設けられる。内側電極332と表面電極322は小さなギャップ330で分離される。一実施形態では、内側電極332と穴310を小さなギャップ324で分離してよい。好適な実施形態では、ギャップ324(および本明細書で論じる他のギャップ)ならびに制御デバイス表面の他の実質的に非導電性の領域を軽くドーピングするか、弱導電材料でコーティングすることにより、これらの表面にぶつかる電子またはイオンから表面が帯電するのを回避する。
【0043】
図4Aは、線分検出器EBCCDでの使用に適した代表的な制御デバイスの上面図である。面検出器で使用する実質的に円形の穴の二次元配列の代わりに、実質的に長方形の穴410(またはスリット)の一次元配列を用いてよい。穴410の周りは、単一の表面電極412または複数の電極(図示せず)で囲まれる。個々の穴410と電極(単一または複数の電極)の間に小さなギャップ414を設けてよい。上述の通り、ギャップ414の材料を軽くドーピングして弱導電性にしてよく、これにより帯電が防止される。線分検出器のいくつかの実施形態では、穴410の幅は、CCDのピクセル幅の約半分である。これにより、線状配列に沿う方向の画像ぶれが最小化される。いくつかの実施形態では、穴410の縦の長さは、CCDのピクセルの縦の長さの約75%〜90%であり、これにより(線状配列の軸に対して垂直のぶれは重要性が低いので)電子の伝達が最大化される。
【0044】
図4Bは、線分検出器EBCCDでの使用に適した別の代表的な制御デバイスの図である。この実施形態では、追加の電極420を個々の穴410の両側に配置するか、または穴の周りを囲む(図示せず)。
【0045】
理解すべきことは、上記の例は単なる実例として示すものであり、本発明の範囲を限定すると解釈すべきでないことである。多くの様々な電極構成、ギャップ構成、および穴構成が可能であることが認識されるであろう。例えば、一実施形態では、2を超える数の電極が個々の穴を囲み、あるいは個々の穴に隣接する。このように、電極、ギャップ、および穴の様々な構成が本発明の範囲内にある。
【0046】
図4Cは、EBCCDの代表的実施形態の穴3個部分の断面図である。この実施形態では、光電陰極404は約−60Vの電位に保たれ、CCD402は約0Vの電位に保たれる。また、線分検出器の実施形態であると仮定すると、CCD402のピクセル幅が約18μmであるのに対し、ピクセルの縦の長さ(
図4Cの平面に対して垂直の長さ)は、18μmより大きい(例えば約100μm以上である)。制御デバイス403は穴410(例えばスリット)の配列を含み、これらの穴はCCD402のピクセルと整列される。個々の穴410の幅は約9μm(すなわち、CCD402のピクセル幅の半分)である。この実施形態では、制御デバイス403の上端と光電陰極404の間のギャップは約10μmである。制御デバイスの厚さは約30μmである。この構成では、個々の穴410の上端の電位は実質的に−60Vである。特に注目すべきことは、穴410が光電陰極404の表面に対して垂直に形成されることである。これにより、穴410の側壁に衝突する電子の数が最少化され、その結果、二次電子の発生が最少化される。
【0047】
制御デバイス403の一部分の詳細を、
図4D(1)(上面図)と
図4D(2)の断面図に示す。
図4D(1)と4D(2)に示す通り、制御デバイス本体484において、第1電極412と第2電極446が内の個々の穴410を囲んでいる。穴410の幅と比べて、第1電極412および第2電極446の幅ははるかに狭い(例えば、少なくとも1:7程度)。第1電極と第2電極の間には、比較的大きなギャップ444が存在する。例えば、ピクセルサイズが約18μmの場合、ギャップの大きさは約4μmである。一実施形態では、ギャップ444は、微小導電性材料に露出してよい。例えば、領域482(全表面を図示)に示される通り、本体484の1つ以上の表面にドーピングまたは注入が施されてよい。あるいは、領域482は、本体484の表面に施された薄い抵抗性コーティングを含んでもよい。いくつかの実施形態では、電極412と446の間の本体484の表面のみ、ドーピング、注入、またはコーティングを施してよい。いくつかの実施形態では、電極412、446の一部または全部の下に微小導電性表面が広がるように(
図4D(2)に図示)、先に本体484の表面にドーピング、注入、またはコーティングを施してから、電極412、446を付着させてよい。なお、本明細書に示す他の実施形態でも、電極の同様の実装を用いてよい。
【0048】
電極412、446は、導電性トレース(図示せず)により外部電圧に接続される。この導電性トレースは上面の真下にあってよい。代表的な一実施形態では、電極412、446は、光電陰極に対してわずかに負の電圧に保たれる。例えば、光電陰極が約−60Vの電位にあるとき、約−65Vに維持される。ギャップ444が導電性材料に露出しているので、第1電極と第2電極の間には、ほぼ線形の電圧勾配が存在する。代替の実施形態では、電極412と446の間で、電位の異なる追加の電極を使用してよい。これにより、所望の電圧勾配への段階的近似が実現可能になる。一実施形態では、制御デバイス403の底面に第3電極481を形成してよく、この電極は−5Vの電位を有してよい。
【0049】
前の
図4Cを参照すると、制御デバイス403の底面430は、導電性材料で形成された表面電極を含んでよく、CCD402に対して数ボルトだけ負の電圧に保持してよい。例えば、底面430を約−5Vの電圧に保持してよい。一実施形態では、底面430とCCD402の間のギャップは約20μmである。制御デバイス403の底面430とCCD402の間の電位差が小さいことの利点の1つは、CCD402の非平坦性が電子軌跡に与える影響がごく軽微であり、あるピクセルに対応する光電陰極404の領域から放出される電子のうち、CCD402の隣接ピクセルに到達する電子にはほとんど影響しないことである。一実施形態では、穴410の内面は、導電性材料(例えば不純物半導体、半金属材料等)を含む。上面と底面の間に電位差があるため、上面と底面の間の穴410の壁に沿って、ほぼ線形の電位勾配が生成される。
【0050】
図4Cの線432は、上記の幾何学的配置と電圧に対してラプラスの方程式を解くことにより算出された、−59Vの等電位を表す。線434は、−4Vの等電位を表す。その他の等電位線(ラベル表示せず)は、−59V〜−4Vの電圧の5V間隔に対応する。
【0051】
図4Eは、
図4Cおよび4Dの代表的EBCCDの、光電陰極404から様々な方向に進行する電子に対して算出された電子軌跡を示す図である。各電子が約1eVのエネルギーで光電陰極から離れると仮定して、線451は、光電陰極404の1ピクセルの中心近くを離れる電子がたどる近似的な軌跡を示す。大部分の軌跡(例えば軌跡451)は、対応するCCDピクセルと整列した穴を用いてCCD402に到達する。少数の軌跡(例えば軌跡452)は隣の穴の方にそれるが、図示の通り、壁に当たる可能性が最も高い。少数(ラベル表示せず)は上面に到達する。少数(ラベル表示せず)は向きを変えて光電陰極402に戻る。
図4Eに示す軌跡でCCD402の隣接ピクセルに到達する軌跡はほとんどないことから、制御デバイス403のない従来型EBCCDと比べて、この改良型EBCCDの分解能は(密な分布で示される通り)著しく優れている。その上、制御デバイス403または光電陰極404で停止する軌跡の数は、軌跡総数に対してごく少数であるため、このEBCCDは高効率である。
【0052】
図4Fは、別の代表的な制御デバイス460の断面図である。この実施形態では、制御デバイス460の上面の個々の穴410の間に畝462がある。この形状の違いを除き、このEBCCDの寸法は、
図4Cおよび4Dに関して記載されている寸法と同様であってよい。畝462の上端は、光電陰極404から約5μmに位置してよい。このように距離が短いので、光電陰極に対する畝上端の電位差はわずか数ボルトでよく、例えば約−3Vでよい。畝462の利点の1つは、横向きに進行する電子を反射させる上で、正確な電圧がさほど重要でなくなることである。具体的には、制御デバイス460の上面が物理的に光電陰極404の近くに位置するので、上面の電圧が少し変化しても、電場勾配は、電子を反射するのに十分強力であることができる。この代表的な実施形態では、光電陰極404は約−60Vの電圧に保たれる。制御デバイス460の上面には、各畝の中心の約−63Vから、各穴410の端部近くの−60Vへの電圧勾配が存在する。制御デバイス460の底面の電圧は約0Vであり、CCD402は0Vの電圧にある。算出された等電位線464は約−59Vの等電位を表し、等電位線466は約−4Vを表す。その他の中間の等電位線は、約5Vきざみを表す。好適な一実施形態では、畝462の上端を妥当に一定の曲率半径で丸みを付けて、強力な電場勾配を最小化する。
【0053】
図4Gは、
図4Fの代表的実施形態に対して算出された電子軌跡の一部を示す図である。線471は、光電陰極404から約1eVのエネルギーで様々な方向に発せられた電子に対して算出された軌跡を示す。この軌跡を
図4Eの軌跡と比べると、
図4Fの制御デバイス構成の方がCCD402に到達する電子の分布がコンパクトであり、ゆえに分解能の向上を示していることが分かる。
【0054】
上記の実施形態では、光電陰極の電圧がCCDに対して約60V負電圧であるが、制御デバイスの集束効果は制御デバイスと光電陰極間の電位差に大きく依存することが理解されるであろう。いくつかの実施形態では、光電陰極は約500V、あるいは約1000Vといった大きな負の電圧にされ、光電陰極と制御デバイスの間の電圧差は数ボルト以内、または数十ボルト以内に維持されてよい。この場合、制御デバイスの底部とCCDの間に大きな電位差が存在し、これにより電子が高エネルギーへと加速してからCCDに衝突する。制御デバイスの底部とCCDの間に数百ボルト以上の電圧差が存在する場合、通常は、制御デバイスとCCDの間を数百ミクロン離すことが望ましい。数百ミクロン離すことにより、CCDの非平坦性がEBCCDの性能に及ぼす影響を低減することもできる。電子は、制御デバイスを離れるときに十分に平行にされるので、電子がより広範な角度で進行する従来型EBCCDの歪みと比べて、CCDの非平坦性から電場に生じる小さな歪みはさほど重要ではない。
【0055】
上記で示した通り、様々な制御デバイス形状と電圧分布により、EBCCDの操作性能を確実に改善することが可能である。したがって、制御デバイスを含む改良型EBCCDは、上記の制御デバイス形状と電圧分布に限定されるのでなく、他の制御デバイス形状と電圧分布も含み得る。
図4A〜4Gは線形EBCCD検出器の代表的実施形態を示しているが、これらの代表的構成を、二次元EBCCD配列の検出器に応用することができる。
【0056】
留意すべきことは、金属製制御デバイスでなく、シリコンMEMSデバイスを用いて制御デバイスを実装した方が、いくつかの利点を得られることである。具体的には、どちらの実施形態も、穴の配列を通過する電子を平行にさせることにより、従来のEBCCD検出器と比べて空間分解能を実質的に改善できるが、金属製制御デバイスは、水平方向速度成分が比較的大きく、これらの電子を吸収することがある。これにより、シリコンMEMS制御デバイスを含むEBCCDと比べて効率が低下する。シリコンMEMS制御デバイスの場合、その電極構造と、各電極での適切な電圧の使用により、大部分の電子を穴に向けることができ、よって一段と多くの電子をCCDに搬送することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、制御デバイスを制御する1つ以上の制御電圧を調整して、EBCCDの利得を変化させることができる。原理上は、光電陰極の電圧を調整することでEBCCDの利得を変えることが可能であるが、光電陰極の静電容量が大きいため、光電陰極の電圧を迅速に変化させるには、大電流が必要になると考えられる。制御デバイスの穴および/または1つ以上の電極の電圧を変えることにより、CCDに到達する電子の一部を減少させて、EBCCDの実効利得を低下させることが可能である。いくつかの実施形態では、この利得低下は、光電陰極の電圧を変える場合より低い駆動電流で実施できる。いくつかの実施形態では、標準の半導体製造手法を用いて、MEMSデバイス上にトランジスタ、ダイオード、抵抗器等の能動回路を製作する。これらの能動回路により、電極電圧の局所制御が可能になり、このような電圧をより迅速に変更できるようになる。いくつかの実施形態では、EBCCDの様々な領域が様々な利得を有するように、上記の能動回路を用いて制御デバイスの様々なセクションの利得を変更する。いくつかの実施形態では、個々のピクセルまたはピクセル群の利得またはブランキングを制御することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、制御デバイス下面とCCDの間の電位差は小さい(例えば20V以下)か、または実質的にゼロであってよい。制御デバイスの底部とCCDの間に弱電場が存在するか電場がまったく存在しなければ、CCDの非平坦性が原因で、画像が著しく歪んだり、利得が局所的に著しく変動したりすることがなくなる。
【0059】
いくつかの実施形態では、カスケード状に配置された2つの制御デバイスを用いてよい。この場合、第1制御デバイスの電位は、光電陰極の電位から10ボルト以内または数十ボルト以内の範囲にあり、下流の第2制御デバイスは、CCDに近い電位(例えばCCDに対して−20V)にある。第1および第2制御デバイスの間に大きな電位差が存在してよい(例えば数十ボルト、数百ボルト、あるいは約1000Vも可)。この構成では、光電陰極から発せられた電子を第1制御デバイスが集束して、平行にするのに対し、第2制御デバイスは、平行にされた電子を加速する。
【0060】
いくつかの実施形態では、制御デバイスとCCDの間の整列を、CCDピクセルサイズの少なくとも約20%の精度で実施することが所望され得る。EBCCDの組み立て時に制御デバイスとCCDの両方をシリコン上に製作する実施形態では、波長約1.2μm超の赤外線を使用して、2つのシリコンデバイス上の整列マークを検出することができる(この赤外線であればシリコンを貫通できるため)。CCDの底面(実際には、背面薄化工程前のCCD製造中はウエハの上面)上の整列マークまたは回路特徴物と、シリコンMEMS制御デバイス上のマークを一致させることができ、これにより双方を確実に所望の精度に整列させることができる。
【0061】
上記の制御デバイスは、電子を有利に平行にすることができるので、画像ぶれが減少する。画像ぶれが減ることから、いくつかの実施形態では、光電陰極に必要とされる負電圧の度合いが減少する。その上、制御デバイスは、CCDから光電陰極に戻って来るイオンの大部分を遮断することもできるので、光電陰極の摩耗率が低下する。さらに、イオンが実際に光電陰極に到達しても、そのエネルギーは比較的低く、材料の消耗が比較的少ないので、検出器の耐用寿命が長期化する。さらに、制御デバイスから放出される電子は(制御デバイスがない場合と比べて)低エネルギーでCCDに衝突するので、CCDに与える損傷が少なくなる。その上、このような電子であれば、CCDからの物質のスパッタリングが減少するので、結果として生じるイオンが減り、検出器の寿命がさらに長期化する。
【0062】
以下に詳述する通り、ウエハ、レチクル、およびフォトマスクの検査システムに、制御デバイスを有するEBCCDを有利に含めることができる。散乱光レベルは表面粗さおよび表面上の粒子または欠陥のサイズに依存するので、制御デバイスを有するEBCCDの利得制御を有利に使用して、様々な散乱光レベルを補正することができる。
【0063】
図5は、反射屈折イメージングシステム500に垂直入射レーザー暗視野照明を追加した図である。この暗視野照明は、UVレーザー501と、照射ビームサイズおよび検査面プロファイルを制御するための適応光学系502と、機械収容部504内の開口およびウィンドウ503と、光軸に沿って法線入射するレーザーの方向をサンプル508の表面に向け直すためのプリズム505と、を含む。また、プリズム505は、サンプル508の表面形状からの鏡面反射と、対物レンズ506の光学的表面からの光路に沿った反射を、イメージ平面(または検出器)アレイ509の方向に向ける。対物レンズ506用のレンズは、反射屈折対物レンズ、集束レンズ群、およびズームチューブレンズの一般的形態で提供してよい。好適な一実施形態では、暗視野散乱信号が弱信号であり得ることから、制御デバイスを有する上記EBCCD検出器を用いて、イメージ平面(または検出器)アレイ509を有利に実装することができる。上記の制御デバイスを有するEBCCDは、この応用によく適している。その理由は、EBCCDの空間分解能が高いからであり、いくつかの実施形態では、検査対象ウエハ上のパターンに応じて変化する散乱光レベルに応答して、またはこれを見越して、EBCCDの利得を制御できるからである。2007年1月4日に公開された米国特許出願公開第2007/0002465号に、システム500のいくつかの態様がさらに詳しく記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
図6Aは、別の表面検査装置600の図である。この検査装置は、表面領域611を検査するための照明システム601と収集システム610を含む。
図6Aが示す通り、レーザーシステム615は、光ビーム602がレンズ603を通過する方向に向くように構成される。レンズ603は、その平面が表面611と実質的に平行になる向きにされ、その結果、表面611上のレンズ603の焦点面に照明線(illumination line)605が形成される。加えて、光ビーム602と集束ビーム604は、非直行入射角で表面611に向かうように方向付けされる。特に、光ビーム602と集束ビーム604は、表面611に対する法線方向から約1度〜約85度の角度で方向付けされてよい。このようにして、照明線605は、実質的に集束ビーム604の入射面の中にある。いくつかの実施形態では、照明線の長さは約1mm、2mm、または数mm、幅は1μm、2μm、または数μmであり得る。いくつかの実施形態では、線状焦点の代わりに、照明を一連の個別の点に集束させてもよい。
【0065】
収集システム610は、照明線605からの散乱光を収集するためのレンズ612と、レンズ612から入射した光をデバイス(例えば、上記制御デバイスを含むEBCCD検出器614)上に集束させるためのレンズ613を含む。この種の検査システムでは、EBCCD検出器614の利得を動的に調整することが重要である。その理由は、ウエハのパターンが多様であることに起因して、ウエハの領域によって散乱光レベルと回折光レベル(およびフィルタ効率)が劇的に変わることがあるからである。
【0066】
一実施形態では、EBCCD検出器614は、線状配列の複数の検出器を含んでよい。この場合、EBCCD検出器614内の線状配列の検出器を、照明線615と平行する向きにしてよい。一実施形態では、多重収集システムを含めることできる。この場合、各収集システムは、類似しているが向きの異なる構成要素を含む。例として、
図6Bに、表面検査装置用の収集システム621、622、623の代表的配列を示す(この図は、簡単にするために、例えば照明システム601と同様の照明システムを表示していない)。2009年4月8日に発行された米国特許第7,525,649号に、検査システム601のいくつかの態様がさらに詳しく記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
図7は、表面701上の異常の検査に使用できる表面検査システム700の図である。この実施形態では、システム700の実質的に固定された照明デバイス部分で表面701を照らすことができる。この照明デバイス部分は、レーザーシステム720により生成されたレーザービームを含む。レーザーシステム720の出力は、偏光光学系721、ビーム拡大器と開口722、およびビームを拡大し集束させるためのビーム形成光学系723を連続的に通過することができる。
【0068】
次に、集束したレーザービーム702がビーム折り曲げ(ターニング)部品703とビーム偏向器704に反射され、ビーム705が表面701の方向に向けられて、表面を照らす。好適な実施形態では、ビーム705は表面701に対して実質的に法線すなわち垂直であるが、他の実施形態では、ビーム705は表面701に対して斜角であってよい。
【0069】
一実施形態では、ビーム705は表面701に対して実質的に垂直すなわち法線であり、ビーム偏向器704は、表面701からのビームの鏡面反射をビーム折り曲げ部品703に向けて反射させる。これにより、ビーム偏向器は、鏡面反射が検出器に到達するのを防ぐシールドの働きをする。鏡面反射の方向は、表面701に対して法線をなす線SRに沿っている。ビーム705が表面701に対して法線をなす一実施形態では、この線SRは、照明ビーム705の方向と一致する。この共通の基準線または方向を、本明細書では検査システム700の軸と称する。ビーム705が表面701に対して斜角である場合、鏡面反射SRの方向とビーム705の入射方向は一致しない。この場合、表面法線の方向を示すSR線を、検査システム700の収集部分の主軸と称する。
【0070】
小粒子により散乱した光はミラー706により収集され、開口707および検出器708の方に送られる。大型粒子により散乱した光はレンズ709により収集され、開口710および検出器711の方に送られる。留意すべきことは、大型粒子の一部から散乱する光は、収集されて検出器708にも送られ、同様に、小型粒子の一部から散乱する光は、収集されて検出器711にも送られるが、このような光は、各検出器が検出するように設計される散乱光と比べて、散乱光強度が相対的に低いことである。一実施形態では、パターン無しウエハ上の欠陥検出用として検査システムを構成してよい。一実施形態では、検出器708、711の1つ以上を、上記制御デバイスを有するEBCCDにより実装することができる。2001年8月7日に発行された米国特許第6,271,916号に、検査システム700のいくつかの態様がさらに詳しく記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0071】
図8は、法線、傾斜両方の照明ビームを用いて異常検出を実装するように構成された暗視野検査システム800の図である。この実施形態では、レーザーシステムからレーザービーム801を供給できる。レンズ802が空間フィルタ803を通じてビーム801を集束させ、レンズ804がビームを平行にして、偏光ビームスプリッタ805に伝送する。ビームスプリッタ805は、第1偏光成分を法線照明チャンネルに渡し、第2偏光成分を傾斜照明チャンネルに渡す。ここで、第1成分と第2成分は直交する関係にある。法線照明チャンネル806では、第1偏光成分が光学系807により集束され、ミラー808に反射されて、サンプル809の表面に向かう。サンプル809により散乱した放射線は、放物面ミラー810により収集、集束され、光電子倍増管811に送られる。
【0072】
傾斜照明チャンネル812では、第2偏光成分がビームスプリッタ805に反射されてミラー813に送られ、このミラーで反射したビームが半波長板814を通過し、光学系815により集束され、サンプル809に送られる。傾斜チャンネル812の傾斜照明ビームから生じサンプル809により散乱する放射線は、放物面ミラー810により収集、集束され、検出器811に送られる。一実施形態では、検出器811を、上記制御デバイスを有するEBCCDにより実装することができる。好ましくは、検出器および照射スポット(法線照射チャンネルと傾斜照射チャンネルから表面809に照射されるスポット)は、放物線ミラー810の焦点位置にある。
【0073】
放物線ミラー810は、サンプル809からの散乱放射線を平行にして、平行ビーム816にする。次に、平行ビーム816は対物レンズ817により集束され、分析器818を通って検出器811に到達する。なお、放物面以外の形状を有するカーブミラー面を使用してもよい。器具820がビームとサンプル809の間の相対運動を提供できるので、サンプル809表面全体に渡って照射スポットが走査される。一実施形態では、EBCCD検出器811からの出力をコンピュータ830が受信できる。2001年3月13日に発行された米国特許第6,201,601号に、検査システム800のいくつかの態様が記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
図9は、複数のEBCCD検出器を含む別の暗視野ウエハ検査システム900の図である。システム900では、光源901が発した光ビームを照明光学系902が受け取る。一実施形態では、照明光学系902の中に、複数のビームスプリッタと、屈折光学要素に実質的に平行な出力光ビームを提供する複数の反射光学要素とが含まれていてよい。この場合、続いて屈折光学要素が複数の光ビームをサンプル903に集束させることができる。
【0075】
光学収集サブシステム907は、散乱光収集器その他の要素(例えば、1つ以上の開口、スプリッタ、偏光要素、反射光学要素)を含み、サンプルからの散乱光を2つのイメージ検出器906に向けることができる。一実施形態では、光学収集サブシステム907は、屈折光学要素905をさらに含んでよい。屈折光学要素905は、光学収集サブシステム907の他の要素が散乱光をイメージ検出器906に向けて画像化するのを援助するように構成される。一実施形態では、イメージ検出器906の少なくとも一方は、制御デバイスを含む上記のEBCCD検出器を含むことができる。例えば、一実施形態では、一方の検出器を実質的な光散乱用に最適化し、別の検出器を実質的に低い光散乱用に最適化してよい。したがって、走査の一部の間、散乱光の一部分は実質的光散乱用に最適化された一方のイメージ検出器に向けられ、散乱光の別の部分は低光散乱用に最適化された別のイメージ検出器に向けられるように、光学要素を構成してよい。2011年7月12日に出願された米国特許仮出願第61/506,892号の優先権を主張している2012年7月9日に出願された米国特許出願第13/5
44,954号に、より詳細にシステム900のいくつかの態様が記載されている。この2つの特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0076】
図10は、連続移動物体1001(例えばウエハ、マスク、レチクル)を伴うパルス照明源1006を使用するように構成された代表的な検査/測定システム1000の図である。有利には、パルス照明1006は長パルスを出力することができる。パルス照明1006の代表的な光源は、Qスイッチレーザーまたはパルスランプを含むことができる。Qスイッチレーザーは、レーザーの光発振器内部の可変減衰器を使用して、極度に高いピーク出力で光パルスを生成する。この光パルスは、連続モードで作動する同一レーザーが生成する光パルスと比べて、出力がはるかに高い。パルスランプは、遠紫外線(DUV)エキシマーまたは超紫外線(EVU)源により実装可能である。好適な一実施形態では、パルス幅は、実施する時間遅延積分(TDI)のライン周期(line period)に近いか、ライン周期より多少長い。
【0077】
システム1000では、ビームスプリッタ1007がパルス照明源1006からの照明パルスを対物レンズ1004の方向に向け、この対物レンズが光を物体1001へと集束させる。次に、物体1001からの反射光がイメージセンサ1010の方向に向けられる。一実施形態では、上記のEBCCDの実施形態のいずれかを用いてイメージセンサ1010を実装することができる。なお、光の方向付けと集束を行う他の周知の光学部品は、簡単にするため
図10には表示していない。イメージセンサ1010に連結されたプロセッサ1020は、パルス照明源1006からの照明パルスと、イメージセンサ1010との間でやり取りする制御信号およびデータ信号とを同期させ、さらにイメージデータを分析するように構成される。上記の構成では、物体1001は物体運動1003を有し、イメージセンサ1010上のイメージはイメージ運動1009を有する。
【0078】
システム1000の一態様によれば、物体運動1003があるので、図の照明領域1002a(例えば時間帯N)、前の照明領域1002b(例えば時間帯N−1)、前の照明領域1002c(例えば時間帯N−2)で示されるように、照明領域は物体1001を横切って連続的に移動する。各照明領域1002a、1002b、1002cは、細長い長方形の領域であってよい(見やすくするため縮尺通りに表示していない)。留意すべきことは、明確にするため領域を分離して図示しているが、画像化範囲を100%確保し、あるいは欠陥検出中に追加的な冗長性と性能を得る目的で、領域が部分的に重なってよいことである。
【0079】
システム1000の別の態様によれば、イメージセンサ1010は、照明パルス中にTDIモード動作を実行できる。このTDIモード動作中、イメージセンサのピクセルにより保存された電荷は第1方向にのみ移動する。システム1000は、非照明中に分割読み出し動作も実行することができる。この分割読み出し動作中、イメージセンサの第1ピクセルにより保存された第1電荷は第1方向に移動し、イメージセンサの第2ピクセルにより保存された第2電荷は同時に第2方向に移動する。この第2方向は第1方向と反対方向にある。
【0080】
このように、システム1000は、TDI読み出しモードの有益な特性と、パルスイメージアーキテクチャの高速読み出し能力とを有利に組み合わせることができる。システム1000の他の態様については、2012年12月10日に出願された米国特許出願第61/735,427号(名称「Method And Apparatus For High Speed Acquisition Of Moving Images Using Pulsed Illumination」)により詳細に記載されており、この文献は参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
本発明の例示的実施形態を添付の図を参照しながら本明細書で詳細に記載したが、本発明は、これらの厳密な実施形態に限定されないものと理解される。上記の実施形態は、網羅的であるという意図はなく、開示される厳密な形態に本発明を限定するという意図もない。したがって、当業者には多くの修正および変形が明らかになるであろう。例えば、上記実施形態では制御デバイス内に円形の穴を表示しているが、他の実施形態では、楕円形や長方形の穴でよい。概して、この穴の形状とサイズは、CCDの対応する(そして整列される)ピクセルの形状とサイズに基づく。穴のコーナーが尖っていると電場勾配が増加し得るが、このことは、CCDが二次元ピクセル配列である用途には望ましくないと考えられる。しかし、CCDが一次元ピクセル配列である用途では、端のピクセルに衝突する電子は比較的少数となる。コーナーに衝突する電子が少なくなるので、望ましくない電場勾配に電子が遭遇する確率は最小になる。結果として、このような実施形態では、尖ったコーナーは容認可能となり得る。また、上記の通り、半導体技術を用いて制御デバイスを製作する場合には、制御デバイス内に電圧制御デバイスおよび/または検出デバイスを形成してよい。いくつかの実施形態では、電子軌跡に与える影響を最小にする目的で、これらのデバイスを、制御デバイス内でなく制御デバイスの底面(すなわちCCDに面する側)に形成してよい。いくつかの実施形態では、電子検出器は、CCDでなくCMOSイメージセンサを含んでよい。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項およびその均等物により定義されることが意図される。