特許第6330108号(P6330108)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6330108高光電変換効率太陽電池及び高光電変換効率太陽電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6330108
(24)【登録日】2018年4月27日
(45)【発行日】2018年5月23日
(54)【発明の名称】高光電変換効率太陽電池及び高光電変換効率太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0216 20140101AFI20180514BHJP
   H01L 31/068 20120101ALI20180514BHJP
   H01L 31/056 20140101ALI20180514BHJP
【FI】
   H01L31/04 240
   H01L31/06 300
   H01L31/04 624
【請求項の数】14
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-519721(P2017-519721)
(86)(22)【出願日】2016年11月7日
(86)【国際出願番号】JP2016004824
【審査請求日】2017年5月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】橋上 洋
(72)【発明者】
【氏名】渡部 武紀
(72)【発明者】
【氏名】大塚 寛之
(72)【発明者】
【氏名】三田 怜
【審査官】 佐藤 久則
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/014112(WO,A1)
【文献】 特開2014−072450(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/051628(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0068591(US,A1)
【文献】 特表2015−507315(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/000025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶シリコン基板の第1主表面に、p型の導電型を有するp型領域と、n型の導電型を有し該n型の導電型を付与する、前記結晶シリコン基板に拡散される添加不純物の基板深さ方向における最大濃度が5×1018atoms/cm以上であるn型領域とが配置され、前記p型領域と前記n型領域を覆うように第1パッシベーション膜が配置され、前記第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、該第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜が配置された裏面電極型太陽電池であって、
前記第1パッシベーション膜と前記第2パッシベーション膜が酸化アルミニウム膜(ただし、Nb、Ta、V、Y、又はHfOを含むものを除く。)であり、
前記第2主表面の少なくとも一部は、前記結晶シリコン基板のバルクにおける導電型及び導電率と同じ導電型及び導電率を有することを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第2パッシベーション膜の上に、さらに反射防止膜が配置されたものであることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記反射防止膜が、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、及び、酸化チタンの少なくともいずれかを含むものであることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1パッシベーション膜の上に、さらに反射膜が配置されたものであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記反射膜が、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、及び、酸化チタンの少なくともいずれかを含むものであることを特徴とする請求項4に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第一主表面における前記p型領域の占有面積が前記n型領域の占有面積よりも大きいことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の太陽電池を電気的に接続して成るものであることを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項7に記載の太陽電池モジュールを電気的に複数接続して成るものであることを特徴とする太陽電池発電システム。
【請求項9】
結晶シリコン基板の第1主表面に、p型の導電型を有するp型領域を形成する工程と、
前記第1主表面に、n型の導電型を有し該n型の導電型を付与する、前記結晶シリコン基板に拡散される添加不純物の基板深さ方向における最大濃度が5×1018atoms/cm以上であるn型領域を形成する工程と、
前記p型領域と前記n型領域を覆うように第1パッシベーション膜を形成する工程と、
前記第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、該第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜を形成する工程と、
前記p型領域の表面に接する正電極を形成する工程と、
前記n型領域の表面に接する負電極を形成する工程と
を有し、前記第2主表面の少なくとも一部は、前記結晶シリコン基板のバルクにおける導電型及び導電率と同じ導電型及び導電率を有する裏面電極型太陽電池の製造方法であって、
前記第1パッシベーション膜と前記第2パッシベーション膜を、酸化アルミニウム膜(ただし、Nb、Ta、V、Y、又はHfOを含むものを除く。)により形成することを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記第2パッシベーション膜の上に、さらに反射防止膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項9に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記第1パッシベーション膜の上に、さらに反射膜を形成する工程を有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記正電極を形成する工程及び前記負電極を形成する工程は、
前記第1パッシベーション膜の上に導電性ペーストを塗布するサブステップと、
前記導電性ペーストを塗布した前記結晶シリコン基板を、700℃以上890℃以下の温度において、1秒以上10分以下で熱処理するサブステップを有することを特徴とする請求項9又は請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
前記正電極を形成する工程及び前記負電極を形成する工程は、
前記第1パッシベーション膜又は前記反射膜の上に導電性ペーストを塗布するサブステップと、
前記導電性ペーストを塗布した前記結晶シリコン基板を、700℃以上890℃以下の温度において、1秒以上10分以下で熱処理するサブステップを有することを特徴とする請求項11に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項14】
前記第1パッシベーション膜の形成と、前記第2パッシベーション膜の形成を同時に行うことを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高光電変換効率太陽電池及び高光電変換効率太陽電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶シリコン太陽電池の光電変換効率を向上させる手法として、近年では受光面の電極を廃して電極の影による光学的損失を無くした、所謂裏面電極型太陽電池が広く検討されるようになってきた。
【0003】
図10は裏面電極型太陽電池の基本構造を示す断面模式図である。図10では、受光面は同図中下向きで示してある。裏面電極型太陽電池1000では、基板1001の非受光面に、p型の導電性を付与する添加物が高濃度拡散されたp型領域1002が形成され、これに隣接するようにn型の導電性を付与する添加物が高濃度拡散されたn型領域1003が形成されている。
【0004】
p型領域1002とn型領域1003の上及びその反対側の面(受光面)は、光励起されたキャリアの再結合による損失を低減するためのパッシベーション膜1004、1005で夫々覆われている。そして正電極1006と負電極1007がパッシベーション膜1004を貫通して形成されている。また、図10には示されていないが、基板1001の受光面には、数ミクロンの凹凸をもった光閉じ込めのためのテクスチャが形成される。
【0005】
裏面電極型太陽電池では受光面に電極が無いため、主に短波長光によって励起された電荷キャリアを、再結合させることなく裏面まで到達させる必要がある。実際には基板表面では電荷キャリアの再結合中心となるダングリングボンド(シリコンの未結合手)が高密度で存在するため、パッシベーション膜1005には非常に高いパッシベーション性能が要求される。
【0006】
ところで、電荷キャリアの再結合割合は、結晶バルクでのバルク再結合割合と、結晶表面での表面再結合割合の和である。一般に、結晶シリコンでは添加不純物濃度(室温での電荷キャリア濃度)が高くなると、バルク再結合が増加する。これは添加不純物に起因した結晶欠陥や、キャリア濃度が高くなるにしたがってオージェ過程の直接再結合が顕在化するためである。そのため一般には、p型領域1002およびn型領域1003のような高濃度領域においては、基板深さ方向の最大添加不純物濃度を例えば1018atoms/cm台前半に抑え、その表面を効果的なパッシベーション膜で覆うことで、裏面におけるキャリア再結合損失を抑制している。
【0007】
また、表面パッシベーションには化学終端と電界効果の2つの要素がある。電界効果は、パッシベーション膜に内蔵された固定電荷によって基板表面に電界を生じさせ、表面近傍の電荷キャリア濃度を減じ、表面での再結合を低減するというものである。太陽電池では、正電荷をもつ窒化シリコンや負電荷をもつ酸化アルミニウムが電界効果型パッシベーションとして一般的によく用いられる。
【0008】
電界効果型パッシベーションのパッシベーション効果は、原理的に適用する基板表面の導電型に関係なく得られる。しかし、基板表面の多数キャリアと同じ極性の固定電荷をもつ膜を適用し、且つ同面へ電極が形成されると、少数キャリアが本来収集されるべき電極とは逆極性の電極へ流れ込み、太陽電池の出力が低下することが知られている。
【0009】
この問題に対し、特許文献1では、裏面電極型太陽電池のp型領域表面には酸化アルミニウム膜を形成し、n型領域表面には酸化シリコンを適用し、また受光面には窒化シリコンを適用する例が記載されている。
【0010】
一方、化学終端型パッシベーションでは、代表的例として酸化シリコンが挙げられる。酸化シリコンは正電荷を持つものの、製法にもよるが、一般的な窒化シリコンと比べて固定電荷密度が1〜2桁低く、結晶シリコンとの界面における欠陥密度が比較的低いという特徴から、p型表面とn型表面のどちらにも使用できる素材として認識されてきた。非特許文献1(Mulligan)における例では、n型基板を使った太陽電池の受光面と裏面の両方に酸化シリコンを適用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−010746号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】William P. Mulligan et al.,Proceedings of 19th EUPVSEC pp.387―390(2004).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の太陽電池における裏面構造は、パッシベーション効果が高い一方、パターニングが必要になることから工程が複雑であり、その結果、高コストになるという問題があった。また、受光面のパッシベーションに適用される窒化シリコンは、正の固定電荷密度が高いことから電界効果が期待できる一方で、ダングリングボンド終端能力は一般にあまり高くない。そのため抵抗率の高い基板においては電界効果によって十分なパッシベーション効果が得られるが、より高い出力電圧が期待できる低抵抗基板においてはパッシベーション効果が著しく低下するという問題があった。
【0014】
また、酸化シリコン膜の形成には、一般に700℃〜1100℃の熱処理が必要になるため、高濃度拡散層の添加不純物が再拡散したり、熱酸化膜への偏析によって再分布したりして、太陽電池特性が低下するという問題があった。一方で、基板を室温の硝酸に浸漬させたり、200℃から450℃程度のオゾン雰囲気に曝して酸化シリコン膜を形成する方法もあるが、十分なパッシベーション効果が得られなかったり、品質が安定しないという問題があった。
【0015】
そのため、酸化シリコンパッシベーションを適用する際には、非特許文献1に記載の太陽電池に見られるように、受光面側へさらに表面電界層(FSF:Front Surface Field)を形成して受光面表面に電界効果を付与して太陽電池性能を改善する方法が採られてきた。
【0016】
しかし、FSFはフリーキャリア吸収による長波長光の損失を抑制するため、裏面に形成する高濃度層に比べて不純物濃度が1〜2桁低くなるようにボロンやリンを熱拡散させて形成する。そのため、FSF形成工程が追加的に必要になり、太陽電池の製造コストが高くなるという問題があった。
【0017】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、光電変換効率が高くかつ安価な太陽電池を提供することを目的とする。また、本発明は、製造が簡便でパッシベーション効果が高く、高光電変換効率が高い太陽電池の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、結晶シリコン基板の第1主表面に、p型の導電型を有するp型領域と、n型の導電型を有し該n型の導電型を付与する添加不純物の基板深さ方向における最大濃度が5×1018atoms/cm以上であるn型領域とが配置され、前記p型領域と前記n型領域を覆うように第1パッシベーション膜が配置され、前記第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、該第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜が配置された裏面電極型太陽電池であって、
前記第1パッシベーション膜と前記第2パッシベーション膜が酸化アルミニウムを含む化合物からなるものであることを特徴とする太陽電池を提供する。
【0019】
このように、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜が酸化アルミニウムを含む化合物からなることにより、第1及び第2の主表面の両方においてパッシベーション効果が高く、そのため光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。また、製造が簡便であるので安価な太陽電池とすることができる。
【0020】
このとき、前記第2主表面の少なくとも一部は、前記結晶シリコン基板のバルクにおける導電型及び導電率と同じ導電型及び導電率を有することが好ましい。
【0021】
このように、第2主表面の少なくとも一部が基板のバルクにおける導電型及び導電率と同じ導電型及び導電率であれば、第2主表面に拡散層等を設ける必要がなく、構造が簡単で安価な太陽電池とすることができる。
【0022】
また、前記第2パッシベーション膜の上に、さらに反射防止膜が配置されたものであることが好ましい。
【0023】
このように、第2パッシベーション膜の上に反射防止膜が配置されることにより、受光面での反射が抑制され、より光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0024】
また、前記第1パッシベーション膜の上に、さらに反射膜が配置されたものであることが好ましい。
【0025】
このように、第1パッシベーション膜の上に反射膜が配置されることにより、裏面での反射が促進され、より光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0026】
また、前記反射防止膜及び前記反射膜が、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、及び、酸化チタンの少なくともいずれかを含むものであることが好ましい。
【0027】
このように、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、及び、酸化チタンの少なくともいずれかを含む反射膜及び反射防止膜であれば、裏面電極型の太陽電池の反射膜及び反射防止膜として好適であり、より特性の良い太陽電池とすることができる。
【0028】
また、前記第一主表面における前記p型領域の占有面積が前記n型領域の占有面積よりも大きいことが好ましい。
【0029】
酸化アルミニウムによるパッシベーション効果はn型領域よりもp型領域に対して大きいので、p型領域の占有面積がより大きければ、より光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0030】
また、本発明は、上記の太陽電池を電気的に接続して成るものであることを特徴とする太陽電池モジュールを提供する。
【0031】
このように、本発明の太陽電池を電気的に接続して太陽電池モジュールとすることができる。
【0032】
また、本発明は上記の太陽電池モジュールを電気的に複数接続して成るものであることを特徴とする太陽電池発電システムを提供する。
【0033】
このように、本発明の太陽電池を電気的に接続した太陽電池モジュールは、電気的に複数接続して太陽電池発電システムとすることができる。
【0034】
上記目的を達成するために、本発明は、結晶シリコン基板の第1主表面に、p型の導電型を有するp型領域を形成する工程と、
前記第1主表面に、n型の導電型を有し該n型の導電型を付与する添加不純物の基板深さ方向における最大濃度が5×1018atoms/cm以上であるn型領域を形成する工程と、
前記p型領域と前記n型領域を覆うように第1パッシベーション膜を形成する工程と、
前記第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、該第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜を形成する工程と、
前記p型領域の表面に接する正電極を形成する工程と、
前記n型領域の表面に接する負電極を形成する工程と
を有する裏面電極型太陽電池の製造方法であって、
前記第1パッシベーション膜と前記第2パッシベーション膜を、酸化アルミニウムを含む化合物により形成することを特徴とする太陽電池の製造方法を提供する。
【0035】
このように、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜を酸化アルミニウムを含む化合物により形成することにより、第1及び第2の主表面の両方においてパッシベーション効果が高く、そのため光電変換効率の高い太陽電池を製造することができる。また、製造工程が簡便であるので生産性が高く、安価な太陽電池を製造することができる。
【0036】
このとき、前記第2パッシベーション膜の上に、さらに反射防止膜を形成する工程を有することが好ましい。
【0037】
このように、第2パッシベーション膜の上に反射防止膜を形成することにより、受光面での反射が抑制され、より光電変換効率の高い太陽電池を製造することができる。
【0038】
また、前記第1パッシベーション膜の上に、さらに反射膜を形成する工程を有することが好ましい。
【0039】
このように、第1パッシベーション膜の上に反射膜を形成することにより、裏面での反射が促進され、より光電変換効率の高い太陽電池を製造することができる。
【0040】
また、前記正電極を形成する工程及び前記負電極を形成する工程は、
前記第1パッシベーション膜又は前記反射膜の上に導電性ペーストを塗布するサブステップと、
前記導電性ペーストを塗布した前記結晶シリコン基板を、700℃以上890℃以下の温度において、1秒以上10分以下で熱処理するサブステップを有することが好ましい。
【0041】
このようにして正電極及び負電極を形成すれば、簡便に電極を形成することができ、生産性が高まり、安価な太陽電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の太陽電池であれば、安価かつ光電変換効率が高い太陽電池とすることができる。また、本発明の太陽電池の製造方法によれば、パッシベーション膜のパッシベーション効果を高めることができ、簡便に製造できるため、光電変換効率の高い太陽電池を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明に係る裏面電極型太陽電池の一実施態様を示す断面模式図である。
図2】本発明に係る裏面電極型太陽電池の別の一実施態様を示す断面模式図である。
図3】本発明に係る裏面電極型太陽電池のさらに別の実施態様を示す断面模式図である。
図4】本発明に係る裏面電極型太陽電池のさらに別の実施態様を示す断面模式図である。
図5】本発明に係る裏面電極型太陽電池の製造方法の一例を示す工程フロー図である。
図6】不純物の基板深さ方向の濃度分布の一例を示す図である。
図7】本発明に係る裏面電極型太陽電池の裏面構造を示す模式図である。
図8】本発明に係る太陽電池モジュールの一例を示す概観図である。
図9】本発明に係る太陽電池発電システムの模式図である。
図10】一般的な裏面電極型太陽電池の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
上記のように、近年、裏面電極型太陽電池において高いパッシベーション効果を簡便に得られるようにすることが問題となっていた。本発明者らは、このような高いパッシベーション効果を得る対策について鋭意検討して、本発明を完成させた。
【0045】
以下、本発明について、図を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0046】
以下に、本発明の太陽電池の実施態様を図1を用いて具体的に説明する。本発明の太陽電池は、結晶シリコン基板101の第1主表面(裏面)に、p型の導電型を有するp型領域102と、n型の導電型を有し該n型の導電型を付与する添加不純物の基板深さ方向における最大濃度が5×1018atoms/cm以上であるn型領域103とが配置され、p型領域102とn型領域103を覆うように第1パッシベーション膜104が配置され、第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、該第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜105が配置された裏面電極型太陽電池100であり、第1パッシベーション膜104と第2パッシベーション膜105が酸化アルミニウムを含む化合物からなるものである。なお、p型領域102とn型領域103の上にはそれぞれ正電極106と負電極107が配置されている。
【0047】
このように、第1パッシベーション膜104と第2パッシベーション膜105が酸化アルミニウムを含む化合物からなることにより、第1及び第2の主表面の両方においてパッシベーション効果が高く、そのため光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。また、製造が簡便であるので安価な太陽電池とすることができる。
【0048】
このとき、第2主表面の少なくとも一部は、結晶シリコン基板101のバルクにおける導電型及び導電率と同じ導電型及び導電率を有することが好ましい。このように、第2主表面の少なくとも一部が基板のバルクにおける導電型及び導電率と同じ導電型及び導電率であれば、第2主表面に拡散層(FSF層等)等を設ける必要がなく、構造が簡単で安価な太陽電池とすることができる。
【0049】
図2図4を参照して、本発明のさらなる態様を説明する。図2図4において、図1の太陽電池と同様の構成要素は同じ符号を用いて示した。
【0050】
図2に示すように本発明の太陽電池200は、第2パッシベーション膜105の上に、さらに反射防止膜108が配置されたものであることが好ましい。このように、第2パッシベーション膜105の上に反射防止膜108が配置されることにより、受光面での反射が抑制され、より光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0051】
また、図3に示すように本発明の太陽電池300は、第1パッシベーション膜104の上に、さらに反射膜109が配置されたものであることが好ましい。このように、第1パッシベーション膜104の上に反射膜109が配置されることにより、裏面での反射が促進され、より光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0052】
また、図4に示すように本発明の太陽電池400は、第2パッシベーション膜105の上に反射防止膜108が配置され、第1パッシベーション膜104の上に反射膜109が配置された構成とすることもできる。このような構成とすることにより、一層光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0053】
また、反射防止膜108及び反射膜109が、酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、及び、酸化チタンの少なくともいずれかを含むものであることが好ましい。このような反射膜及び反射防止膜であれば、裏面電極型の太陽電池の反射膜及び反射防止膜として好適であり、より特性の良い太陽電池とすることができる。
【0054】
また、図1図4のいずれの態様の太陽電池においても、第一主表面におけるp型領域102の占有面積がn型領域103の占有面積よりも大きいことが好ましい。酸化アルミニウムによるパッシベーション効果はn型領域よりもp型領域に対してより大きいので、p型領域の占有面積が大きければ、より光電変換効率の高い太陽電池とすることができる。
【0055】
次に、本発明の太陽電池の製造方法について説明する。本発明の太陽電池の製造方法は、結晶シリコン基板の第1主表面に、p型の導電型を有するp型領域を形成する工程と、第1主表面に、n型の導電型を有するn型領域を形成する工程と、p型領域とn型領域を覆うように第1パッシベーション膜を形成する工程と、第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜を形成する工程と、p型領域の表面に接する正電極を形成する工程と、n型領域の表面に接する負電極を形成する工程とを有する裏面電極型太陽電池の製造方法であり、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜を、酸化アルミニウムを含む化合物により形成する。
【0056】
以下では、図5を参照して、本発明の太陽電池(図1の態様)の製造方法の一例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
図5(a)の基板101は、例えば、抵抗率が0.1〜10Ω・cmのp型又はn型の導電型をもつ結晶シリコンである。図には示していないが、基板表面には光閉じ込めのための凹凸構造(テクスチャ)が形成されることが好ましい。凹凸構造は、基板101を酸性又はアルカリ溶液に一定時間浸漬することで得られる。酸性溶液には一般にフッ硝酸と酢酸、リン酸、硫酸、水などの混合酸溶液が用いられ、これに基板101を浸漬すると、基板加工時に荒れた表面の微細な溝が優先的にエッチングされるなどして、凹凸構造が形成される。また、アルカリ溶液は、水酸化カリウムや水酸化ナトリウム水溶液、あるいは水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液が用いられる。アルカリエッチングはSi−OH結合を形成することでエッチングを進行させるためエッチング速度が結晶面方位に依存し、エッチング速度の遅い面が露出した凹凸構造が得られる。
【0058】
基板101の非受光面では必ずしも凹凸構造は必要ない。むしろ平坦化することにより表面積を減じてキャリア再結合損失を低減する効果が期待できる。その場合には、フッ硝酸を含んだ薬液を使用したスピンエッチングやインライン型の片面洗浄機が利用できる。
【0059】
凹凸構造形成後、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等、もしくは、これらの混合液の酸性水溶液中で洗浄することが好ましい。コスト的及び特性的観点から、塩酸中での洗浄が好ましい。清浄度を向上するため、塩酸溶液中に、0.5〜5%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。
【0060】
次に、図5(b)に示すように、基板101の片面(第1主表面)にp型領域102を形成する。III族元素を含んだ拡散源であればp型領域形成に使用できるが、電気的特性と装置の簡易性から、例えば臭化ボロンを用いて900〜1000℃で気相拡散するのがよい。本発明の太陽電池はp型領域を裏面にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、受光面側に窒化シリコンなどの拡散バリアを形成したりして、受光面にボロンが拡散されないように工夫を施すことが好ましい。また、気相拡散の他、ボロン化合物を基板101に塗布して乾燥した後、900〜1000℃で熱拡散してp型領域102を形成しても良い。この方法によれば、比較的容易に非塗布面へのボロン拡散が抑制できる。
【0061】
p型領域102の添加不純物濃度は、基板深さ方向の最大値で5×1018atoms/cm以上5×1020atoms/cm以下にするのが良く、さらに好ましくは8×1018atoms/cm以上5×1019atoms/cm以下程度にするのが良い。5×1018atoms/cm未満であると基板101と電極の接触抵抗が大きくなり、5×1020atoms/cmを超えると、p領域中の欠陥とオージェ再結合による電荷キャリアの再結合が顕著になって太陽電池の出力が低下する。
【0062】
次に、図5(c)に示すように、p型領域102の上に、拡散バリア510を形成する。これには、化学気相体積法や物理蒸着法で得られる窒化シリコン膜や酸化シリコン膜が好適に使用できる。膜の製造方法にもよるが、概ね厚さ50〜400nmの膜を形成するのが好ましい。これらの他、熱処理で得られる酸化シリコン膜を用いても良い。この場合、基板101を700〜1100℃の酸素又は水蒸気雰囲気中で熱処理し、20〜200nmの酸化シリコンを成長させる。
【0063】
続いて図5(d)に示すようにn型領域形成箇所の拡散バリア510を部分的に除去して開口部511を形成し、p型領域102を露出させる。拡散バリア510の除去は、例えばエッチングペーストを所望箇所にスクリーン印刷し、100〜400℃での熱処理を行うことで実現できる。また、工程がより簡素なレーザーアブレーションを用いてもよい。
【0064】
尚、この時の開口面積は、基板101の導電型によって最適な設計が求められるが、一般的にはエミッタとなる高濃度層の面積と太陽電池特性は比例の関係になる。本発明で用いる酸化アルミニウムはn型領域にも適用可能であるが、p型領域に対してより効果が高い。この性質上、本発明ではn型基板を用いた裏面電極型太陽電池でより高い効果が期待できる。
【0065】
次に、図5(e)に示すように、拡散バリアの開口部511において、n型領域103を形成する。このようにして、基板101の第1主表面に、n型の導電型を有するn型領域を形成する。V族元素を含んだ拡散源であればn型領域103を形成できるが、電気的特性と装置の簡易性から、例えばオキシ塩化リンを用いて800〜980℃で気相拡散するのがよい。本発明の太陽電池はn型領域103を裏面(第1主表面)にのみ形成する必要があり、これを達成するために基板同士を2枚重ね合わせた状態で拡散したり、受光面側に窒化シリコンなどの拡散バリアを形成(不図示)したりして、受光面にリンが拡散されないように工夫を施すことが好ましい。また、気相拡散の他、リン化合物を基板に塗布して乾燥した後、800〜980℃で熱拡散してn型領域103を形成しても良い。この方法によれば、比較的容易に非塗布面へのリン拡散が抑制できる。
【0066】
リン拡散は、上記の方法の他、拡散バリア(例えば酸化膜)の開口部511に露出したp型領域102をエッチング除去してから行っても良い。この場合、例えば基板101を水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液に浸漬することで、表面に形成されている酸化膜がマスクとして働き、p型領域102の露出部だけを除去できる。
【0067】
n型領域103の不純物濃度は、以下に述べる酸化アルミニウム膜の電界効果との関係から、基板深さ方向の最大値で5×1018atoms/cm以上にすることが好ましい。
【0068】
電界効果によるパッシベーション能力は、酸化アルミニウムの固定電荷密度と基板表面のキャリア密度で決定される。添加不純物濃度が5×1018atoms/cm未満のn型領域表面に負の固定電荷があると、少数キャリアの正孔が表面に集まって大きく反転状態へ向かう。これによりn型領域表面のキャリア再結合割合が低下する。しかしこのことは一方で、電極で再結合する少数キャリアが増加し、結果的には太陽電池の特性を低下させることになる。添加不純物濃度が5×1018atoms/cm以上の領域では電界効果は低下するが、酸化アルミニウムは結晶シリコン表面の化学終端能力も高いためパッシベーション効果が維持される。この効果は、酸化アルミニウム製膜時にシリコンと酸化アルミニウムとの界面に数原子層程度のシリコン酸化膜が形成されるためだと考えられている。
【0069】
一方で、添加不純物濃度が1×1021atoms/cm程度を超えると、n型領域中の欠陥とオージェ再結合による電荷キャリアの再結合が顕著になることによる太陽電池の出力の低下のおそれがある。このため、添加不純物濃度は1×1021atoms/cm以下にするのが好ましい。
【0070】
上記p型領域102とn型領域103の不純物濃度は、二次イオン質量分析法により容易に測定できる。図6はこの方法により測定したボロン濃度分布(図6中の(a))とリン濃度分布(図6中の(b))の例を示したものである。添加不純物や拡散条件により、濃度分布の形状は異なるが、同図中の矢印で示した値が添加不純物の基板深さ方向における最大濃度である。
【0071】
p型領域とn型領域の形成パターンは、例えば図7(a)に示すようにp型領域102とn型領域103が直線状に隣接する形式でも良い。また、図7(b)に示すようにp型領域702の中に島状のn型領域703が形成される形式でもよく、図7(c)に示すようにn型領域713の中に島状のp型領域712が形成される形式でもよい。
【0072】
なお、p型領域の形成工程とn型領域の形成工程の順序は逆であっても構わない。
【0073】
リン拡散後、拡散面に形成されたボロンガラス、拡散バリア、リンガラスをフッ酸などで除去する。基板101の表面の清浄性を保つため、より好ましくは、アンモニア水や水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液と0.5〜5%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。これに加えて、さらに塩酸、硫酸、硝酸、もしくはこれらの混合液、あるいはこれらと0.5〜5%の過酸化水素を混合させ、60〜90℃に加温して洗浄してもよい。また、好ましくは洗浄の最後の段階でフッ酸水溶液により基板表面の酸化膜を除去するのが良い。
【0074】
次に、図5(f)に示すように、p型領域102とn型領域103の上に第1パッシベーション膜104、さらに、その反対面(第2主表面)に第2パッシベーション膜105を形成する。いずれのパッシベーション膜も酸化アルミニウムを含む化合物により形成された膜である。酸化アルミニウムの製膜方法には、原子層堆積法の他、プラズマCVD、大気圧CVD、あるいは減圧CVDなどの化学気相堆積法が主に用いられる。これらの手法では、プリカーサとしてテトラメチルアルミニウムを使い、また、プリカーサにキャリアガスを導入する場合は水素やアルゴン又は窒素を用いるのが一般的である。アルミニウムの酸化剤には、酸素、二酸化炭素、亜酸化窒素、水又はオゾンなどが使用できる。
【0075】
また、酸化アルミニウムを含むパッシベーション膜の形成には、真空蒸着法やスパッタ法を用いてもよい。また、アルミニウムアルコキシドなどの化合物を使ったゾルゲル法によって形成しても良い。
【0076】
第1パッシベーション膜104と第2パッシベーション膜105は両面を同時に形成しても良いし、片面ずつ形成しても良い。同時に形成する場合には、原子層堆積法が適している。この場合、100〜350℃程度に保った反応室へ、両面が反応ガスに触れるように基板101を設置し、そこへ酸化ガスとプリカーサを交互に導入及びガス置換することで、酸化アルミニウム膜が形成される。
【0077】
第1パッシベーション膜104と第2パッシベーション膜105の組成を変えても良い。このような片面ずつの膜形成では、従来型の平板型プラズマCVDやスパッタ及びゾルゲル法などが適している。
【0078】
第1パッシベーション膜104及び第2パッシベーション膜105の厚さは0.5nm以上、好ましくは3nm〜30nm(3nm以上30nm以下)とするのが良い。第1及び第2パッシベーション膜の膜厚をこの膜厚範囲にすることで、基板101に対するパッシベーション膜のカバレッジとパッシベーション効果を同時に得ることができる。
【0079】
また、第1パッシベーション膜104に、太陽電池裏面に到達する光を再度基板内へ反射させる反射膜としての機能を兼ねさせる場合には、膜厚を70nm以上200nm以下、より好ましくは80nm以上100nm以下とするのがよい。膜厚が70nm以上200nm以下であれば、反射膜としての機能を好適に発揮させることができる。
【0080】
基板裏面の光反射を改善するために、図3のように第1パッシベーション膜104の上に、さらに酸化アルミニウム以外の化合物からなる反射膜109を形成しても良い。反射膜109には酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、酸化チタンなどが使用できる。これらの膜は化学気相堆積やスパッタ、真空蒸着などの手法で形成してよい。反射膜109の膜厚は、第1パッシベーション膜104の膜厚や反射膜109の屈折率にもよるが、概ね80〜250nmとするのが良い。
【0081】
一方、第2パッシベーション膜105に反射防止膜としての機能を兼ねさせる場合には、膜厚を70nm以上200nm以下、より好ましくは80nm以上150nm以下とするのがよい。第2パッシベーション膜105の膜厚が70nm以上200nm以下であれば、反射膜としての機能を好適に発揮させることができる。
【0082】
また、受光面の反射防止効果を改善するために、図2のように第2パッシベーション膜105の上に、さらに酸化アルミニウム以外の化合物からなる反射防止膜108を形成しても良い。反射防止膜108には酸化シリコン、フッ化マグネシウム、窒化シリコン、酸化錫、酸化チタンなどが使用できる。これらの膜は化学気相堆積やスパッタ、真空蒸着などの手法で形成してよい。反射防止膜108の膜厚は、第2パッシベーション膜105の膜厚や反射防止膜の屈折率にもよるが、概ね50〜120nmとするのが良い。
【0083】
また図4に示すように、図2図3の特徴を併せて、太陽電池の裏面にパッシベーション膜104と反射膜109の積層体を形成し、受光面にパッシベーション膜105と反射防止膜108の積層体を形成しても良い。
【0084】
酸化アルミニウム膜は、製法にもよるが、300〜600℃の熱処理を施すことでパッシベーション効果が改善することが知られている。製膜温度がこれらの温度帯より低い場合には、酸化アルミニウム製膜後、反射膜や反射防止膜の積層前に上記温度帯の不活性ガス雰囲気もしくは水素濃度2〜10%の水素混合窒素雰囲気で5〜20分の熱処理を行うことが好ましい。
【0085】
次に、図5(g)に示すようにp型領域102の上に正電極106を、n型領域103の上に負電極107を形成する。この正電極106を形成する工程及び負電極107を形成する工程は、第1パッシベーション膜104又は反射膜109の上に導電性ペーストを塗布するサブステップと、導電性ペーストを塗布した結晶シリコン基板101を、700℃以上890℃以下の温度において、1秒以上10分以下で熱処理するサブステップを有していてよい。ここで、電極の形成方法に特に制限は無いが、生産性の観点から、導電性ペーストのスクリーン印刷又はディスペンサー形成が良い。具体的には、正電極106及び負電極107は、Ag粉末及びガラスフリットを有機バインダーと混合したAgペーストを、パッシベーション膜104を介してp型領域102とn型領域103の上へ塗布して乾燥後、1秒以上30分間以下、好ましくは1秒以上10分以下、700℃以上890℃程度の温度で焼成することにより形成される。この熱処理によりパッシベーション膜104、もしくはパッシベーション膜104と反射膜がAgペーストに侵食され、電極とシリコンが電気的に接触する。
【0086】
また、電極の形成にはメッキを適用しても良い。この場合は電極形成箇所の基板表面を露出させる必要があるため、当該箇所のパッシベーション膜104を、例えばレーザーアブレーションで除去することができる。
【0087】
上述した本発明の太陽電池を、複数電気的に接続することで太陽電池モジュールが得られる。図8は、本発明の太陽電池を電気的に接続して成る太陽電池モジュール16の非受光面における構成の一例を示す概観図である。太陽電池の正電極26が隣接する太陽電池の負電極27にタブ12によって電気的に接続され、所定の出力に必要な枚数の太陽電池11が連結されている。接続された太陽電池11は、図には示してないが、カバーガラスと充填剤、さらにバックシートによって封止されている。カバーガラスにはソーダライムガラスが広く使用される。また充填剤にはエチレンビニルアセテートやポリオレフィン又はシリコーンなどが使用される。バックシートにはポリエチレンテレフタレートを使用した機能性フィルムが一般的に用いられている。なお、1つの太陽電池の正電極26は太陽電池モジュール16の正極端子13に接続され、別の1つの太陽電池の負電極27は太陽電池モジュール16の負極端子14に接続されている。
【0088】
図9は本発明の太陽電池モジュール16を連結した太陽電池発電システムの基本構成を示したものである。本発明の太陽電池発電システムは、上述した本発明の太陽電池モジュール16を電気的に複数接続して成るものである。図9に示したように、複数の太陽電モジュール16が配線15で直列に連結され、インバータ17を経由して外部負荷回路18に発電電力を供給する。同図には示していないが、当該システムは発電した電力を蓄電する2次電池をさらに備えていて良い。
【実施例】
【0089】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
(実施例1)
150mm角、厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmのリンドープ<100>n型アズカットシリコン基板において、熱濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去後、80℃の5%水酸化カリウム水溶液中に基板を20分間浸漬し、ランダムピラミッド状のテクスチャを形成し、引き続き塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。
【0091】
次いで、基板裏面にホウ素化合物とバインダーの混合物をスピンコートし、1000℃で、30分間の熱処理でボロン拡散し、p型領域を形成した。その後、さらに続けて1000℃、2時間の酸化熱処理を行い、酸化膜(シリコン酸化膜)を形成した。酸化膜形成後、基板裏面のn型領域を形成する箇所の酸化膜を、波長532nmのレーザー照射でライン状に除去した。
【0092】
次に、受光面を向い合せて2枚1組にした基板を石英ボートに装填し、オキシ塩化リンを用いて820℃で30分間の熱処理を行い、n型領域を形成した。この工程の後、任意抽出したサンプルにおいて、p型領域とn型領域の基板深さ方向におけるピーク不純物濃度を二次イオン質量分光法で測定したところ、p型領域は5×1019atoms/cm、n型領域は3×1019atoms/cmであった。
【0093】
その基板を10%のHF水溶液に浸漬してガラス層と酸化膜を除去した後、さらに80℃の塩酸水と過酸化水素水の混合液と2%のHF水溶液に順次浸漬して洗浄し、純水でのリンス後に乾燥した。
【0094】
洗浄後の基板の受光面に原子層堆積法により膜厚100nmの酸化アルミニウムを形成し、さらに、その裏側に膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成した。その後、基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板裏面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0095】
上記p型領域とn型領域上に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0096】
(実施例2)
実施例1でp型領域とn型領域を形成した基板の裏面に、原子層堆積法により膜厚100nmの酸化アルミニウムを形成し、さらに、受光面に膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成した。その後、その基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板受光面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0097】
上記p型領域とn型領域上に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0098】
(実施例3)
実施例1でp型領域とn型領域を形成した基板の両面に、原子層堆積法により膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成し、その後、基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板両面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0099】
上記p型領域とn型領域上に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0100】
(実施例4)
150mm角、厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmのボロンドープ<100>p型アズカットシリコン基板を用い、実施例1と同様の太陽電池を作製した。その後、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0101】
(実施例5)
150mm角、厚さ200μm、比抵抗1Ω・cmのリンドープ<100>n型アズカットシリコン基板において、熱濃水酸化カリウム水溶液によりダメージ層を除去後、80℃の5%水酸化カリウム水溶液中に20分間浸漬し、ランダムピラミッド状のテクスチャを形成し、引き続き塩酸/過酸化水素混合溶液中で洗浄を行った。
【0102】
次いで、基板裏面にホウ酸化合物とバインダーの混合物をスピンコートし、1000℃で、30分間の熱処理でボロン拡散し、p型領域を形成した。その後、さらに続けて1000℃、2時間の酸化熱処理を行い、酸化膜を形成した。酸化膜形成後、基板裏面のn型領域を形成する箇所の酸化膜を、波長532nmのレーザー照射で島状に除去した。尚、この時のn型領域の占有面積は実施例1に比べて25%削減してある。
【0103】
次に、受光面を向い合せて2枚1組にした基板を石英ボートに装填し、オキシ塩化リンを用いて820℃で30分間の熱処理を行い、n型領域を形成した。この工程の後、任意抽出したサンプルにおいて、p型領域とn型領域の基板深さ方向におけるピーク不純物濃度を二次イオン質量分光法で測定したところ、p型領域は5×1019atoms/cm、n型領域は3×1019atoms/cmであった。
【0104】
その基板を10%のHF水溶液に浸漬してガラス層と酸化膜を除去した後、さらに80℃の塩酸水と過酸化水素水の混合液と2%のHF水溶液に順次浸漬して洗浄し、純水でのリンス後に乾燥した。
【0105】
基板の両面に、原子層堆積法により膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成し、その後基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板両面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0106】
上記p型領域とn型領域に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0107】
(比較例1)
実施例1でp型領域とn型領域を形成した基板の裏面に、原子層堆積法により膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成した。次に、スクリーン印刷によりp型領域を酸レジストで覆って乾燥させた後、露出しているn型領域上の酸化アルミニウムを2%のフッ酸水溶液で除去した。酸レジスト除去及び基板洗浄後、基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板両面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0108】
上記p型領域とn型領域に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0109】
(比較例2)
実施例1でp型領域とn型領域を形成した基板の受光面にリン化合物とバインダーを混合させたリン拡散源を塗布し、塗布面を向かい合わせた状態で820℃、10分の熱処理を行い、受光面にFSF層を形成した。次に、基板を10%のHF水溶液に浸漬してガラス層を除去した後、さらに80℃の塩酸水と過酸化水素水の混合液と2%のHF水溶液に順次浸漬して洗浄し、純水でのリンス後に乾燥した。
【0110】
その後、基板両面に原子層堆積法により膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成した。次に、スクリーン印刷によりp型領域を酸レジストで覆って乾燥させた後、露出しているn型領域上の酸化アルミニウムを2%のフッ酸水溶液で除去した。酸レジスト除去及び基板洗浄後、基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板両面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0111】
上記p型領域とn型領域に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0112】
(比較例3)
実施例1でp型領域とn型領域を形成した基板の受光面にリン化合物とバインダーを混合させたリン拡散源を塗布し、塗布面を向かい合わせた状態で820℃、10分の熱処理を行い、受光面にFSF層を形成した。次に、基板を10%のHF水溶液に浸漬してガラス層を除去した後、さらに80℃の塩酸水と過酸化水素水の混合液と2%のHF水溶液に順次浸漬して洗浄後し、純水でのリンス後に乾燥した。
【0113】
その後、基板を900℃の酸素雰囲気で10分間熱処理し、基板の両面に酸化シリコン膜(膜厚約10nm)を形成した。基板両面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0114】
上記p型領域とn型領域に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0115】
(比較例4)
実施例3と同様の工程で作製した太陽電池において、リン拡散条件を調整し、n型領域の基板深さ方向におけるピーク不純物濃度を3×1018atoms/cmとした。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0116】
(比較例5)
実施例4でp型領域とn型領域を形成した基板の受光面に、原子層堆積法により膜厚10nmの酸化アルミニウムを形成し、基板を450℃の窒素雰囲気で15分間熱処理した。基板両面には、さらにプラズマCVDにより、膜厚90nmの窒化シリコン膜を形成した。
【0117】
上記p型領域とn型領域に、スクリーン印刷によりAgペーストを塗布し、800℃、3秒間の熱処理を行ってAgペーストを硬化させ、太陽電池を得た。最後に、キセノンランプ光源式の疑似太陽光を使い、太陽電池の出力特性を測定した。
【0118】
上記実施例1〜5及び比較例1〜5の太陽電池の特性をまとめて以下の表1に示す。表1において、Jscは短絡電流、Vocは開放電圧、FFは曲線因子、Eff.は変換効率である。本発明による太陽電池の変換効率はいずれも22.0%以上であり、比較例より高い変換効率を示した。また、実施例5の結果から、本発明はp型領域の占有面積がより大きい太陽電池構造において、特に有効であることが示された。
【0119】
【表1】
【0120】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【要約】
本発明は、結晶シリコン基板の第1主表面に、p型の導電型を有するp型領域と、n型の導電型を有しn型の導電型を付与する添加不純物の基板深さ方向における最大濃度が5×1018atoms/cm以上であるn型領域とが配置され、p型領域とn型領域を覆うように第1パッシベーション膜が配置され、第1主表面の反対側の表面である第2主表面に、第2主表面を覆うように第2パッシベーション膜が配置された裏面電極型太陽電池であって、第1パッシベーション膜と第2パッシベーション膜が酸化アルミニウムを含む化合物からなる太陽電池である。これにより、安価かつ光電変換効率が高い太陽電池が提供される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10