(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記調節工程は、前記原料ガスの流量、前記パージガスの流量、又は前記サセプタの回転速度の少なくとも1つの値が前記成長時に周期的な増減を繰り返すように前記成長条件を調節する請求項1に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
前記測定工程は、前記ザグリ部に載置された前記基板の半径方向に位置する前記ザグリ部と前記基板との隙間の幅を前記周方向に沿って測定し、測定した前記幅の最大値と最小値から前記位置ずれを測定する請求項2に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
前記調節工程は、前記最大値に対応する前記基板の外周位置が前記原料ガスの上流側に接近するにつれて前記原料ガスの流量を増加させ、前記外周位置が前記上流側から離隔するにつれて前記原料ガスの流量を減少させるように前記成長条件を調節する請求項3に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
前記調節工程は、前記最大値に対応する前記基板の外周位置が前記原料ガスの上流側に接近するにつれて前記パージガスの流量を増加させ、前記外周位置が前記上流側から離隔するにつれて前記パージガスの流量を減少させるように前記成長条件を調節する請求項3又は4に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
前記調節工程は、前記最大値に対応する前記基板の外周位置が前記原料ガスの上流側に接近するにつれて前記回転速度を増加させ、前記外周位置が前記上流側から離隔するにつれて前記回転速度を減少させるように前記成長条件を調節する請求項3ないし5のいずれか1項に記載のエピタキシャルウェーハの製造方法。
【背景技術】
【0002】
例えば、コンピュータに備わるメモリと演算素子、デジタルカメラ及びビデオに備わる撮像素子などの様々な半導体デバイスがシリコンウェーハを用いて作製されている。特に先端向けの半導体デバイスを作製する場合には、シリコン基板の表面に気相成長でシリコン層を堆積させたシリコンエピタキシャルウェーハが用いられる。
【0003】
このようなエピタキシャルウェーハは、例えば、トリクロロシラン(TCS)等の原料を1100℃以上の高温で気相反応させ、シリコン基板の表面にシリコンエピタキシャル層を気相成長して作製される。作製されたエピタキシャルウェーハをもとに半導体デバイスが作製されるため、エピタキシャルウェーハのエピタキシャル層における膜厚と抵抗率は、半導体デバイスの特性に大きな影響を与える。それ故、半導体デバイスに用いるエピタキシャルウェーハにおいては、エピタキシャル層の膜厚と抵抗率がウェーハの面内方向において均一となる高品質なエピタキシャルウェーハが求められる。
【0004】
高品質なエピタキシャル層を成長する装置として、1枚の基板毎に基板の表面にエピタキシャル層を成長する枚葉式の気相成長装置が知られる。このような気相成長装置においては、例えば、石英製のブレードに基板を載置した状態で基板を搬送する搬送ロボットが用いられ、搬送ロボットにより基板が反応炉内に搬送される。反応炉内に搬送された基板は、例えば、リフトピンで搬送ロボットのブレード上からサセプタに向けて搬送され、基板はサセプタ上に載置される。
【0005】
基板が載置されるサセプタには、基板より直径が大きい円盤状にサセプタの表面が窪んだザグリ部が形成され、ザグリ部の内側に基板が載置される。ザグリ部に載置される基板は、基板とザグリ部の中心を一致させて基板とザグリ部との間に環状の隙間ができるように載置することが望ましいが、場合により基板とザグリ部の中心がずれた状態で載置されることがある。この場合、基板とザグリ部との間に幅が不均一な環状の隙間が形成され、この状態で基板にエピタキシャル層を成長すると、基板に供給される原料ガス等のガスの流れが隙間に起因して基板の周方向で不均一となる。その結果、成長させるエピタキシャル層の膜厚がエピタキシャル層の外周部で不均一となり、膜厚の均一性が悪化する。そして、このようなエピタキシャル層を有するエピタキシャルウェーハを用いて半導体デバイスを作製すると、半導体デバイス作製工程でデフォーカスを引き起こしてしまう。
【0006】
サセプタに載置した基板のこのような位置ずれの問題に関して、例えば、特許文献1では、サセプタに載置された基板の位置ずれを測定する方法を開示する。しかし、特許文献1では、位置ずれ測定後の具体的な対処方法を開示しない。また、特許文献2では、搬送ロボットに保持された状態における基板の位置ずれを搬送ロボットにフィードバックし、その位置ずれから搬送ロボットの位置を修正し、サセプタに載置する基板の位置ずれを抑える方法を開示する。しかし、特許文献2では、搬送ロボット上の基板の位置ずれ(サセプタに載置される前の基板の位置ずれ)の修正を開示し、サセプタに載置した基板に実際に位置ずれがある場合の具体的な対処方法を開示しない。
【0007】
サセプタに載置した基板に実際に位置ずれがある場合の対処方法として、例えば、特許文献3は、基板をサセプタ上に載置し直す方法を開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、位置ずれをした基板をサセプタに載置し直す場合、同一の基板がサセプタに対して複数回、載置されることになる。よって、基板の載置回数が増加することで、基板に付着するパーティクルが増加するとともに、基板がサセプタに正常に載置されるまでの時間が増加し、エピタキシャルウェーハの生産性が悪化してしまう。そこで、サセプタに載置した基板に位置ずれが生じても基板を載置し直すことなく、位置ずれが生じた基板に膜厚の均一性の良好なエピタキシャル層を成長する方法及び気相成長装置が求められる。
【0010】
本発明の課題は、サセプタに載置された基板に位置ずれがある場合でも膜厚の均一性が良好となるエピタキシャル層を成長することが可能なエピタキシャルウェーハの製造方法及び気相成長装置を提供することにある。
【0011】
本発明のエピタキシャルウェーハの製造方法は、
軸線周りに回転可能なサセプタに載置した基板の載置位置と基板を載置すべき目標位置との位置ずれを測定する測定工程と、
基板に成長するエピタキシャル層の成長速度が基板の周方向で均一となるように位置ずれに基づきエピタキシャル層の成長時の成長条件を調節する調節工程と、
サセプタを回転させ、調節工程で調節した成長条件によりエピタキシャル層を成長する成長工程と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
サセプタに載置した基板の外周部におけるエピタキシャル層の成長速度を基板の周方向で均一にするため、載置すべき目標位置に基板を載置したサセプタを気相成長時に回転させ、エピタキシャル層を成長させている。ここで、サセプタに載置される基板の載置位置が目標位置からずれると、この位置ずれによりエピタキシャル層の成長速度が基板の周方向で不均一となる。
【0013】
そのため、本発明では、基板の周方向におけるエピタキシャル層の成長速度を不均一する原因(基板の載置位置と目標位置の位置ずれ)に基づき基板の周方向における成長速度が均一になるように成長条件を調節する。このように成長条件を調節することで、基板の周方向でエピタキシャル層の成長速度が不均一になるのを抑制し、サセプタに載置された基板に位置ずれが生じても膜厚の均一性の良好なエピタキシャル層を成長可能となる。また、基板に位置ずれがある状態で気相成長しても膜厚の均一性を良好に保てるため、基板を載置し直すことによるパーティクルの増加と生産性の悪化を防ぐことができる。
【0014】
本発明の実施態様では、
サセプタは、基板が載置されるザグリ部を有し、
目標位置は、ザグリ部の中心と基板の中心が一致して基板が載置される位置である。
【0015】
ザグリ部と基板の中心が一致して基板がザグリ部に載置されると、基板の周方向のエピタキシャル層の成長速度が均一となる。よって、こうして載置される基板の位置を、基板を載置すべき目標位置とすることができる。
【0016】
本発明の実施態様では、
成長条件は、基板に向けて供給されるエピタキシャル層の原料ガスの流量、サセプタの下方に向けて供給されるパージガスの流量、又はサセプタの回転速度の少なくとも1つを含む。
【0017】
原料ガスの流量に応じて基板の外周部に到達する原料ガスの濃度と速度が変化するため、原料ガスの流量に応じてエピタキシャル層の成長速度が変化する。パージガスは、ガスの一部がサセプタの下方から上方に流れ込み、原料ガスの流れを阻害する。よって、パージガスの流量に応じて基板の外周部に到達する原料ガスの濃度と速度が変化する結果、エピタキシャル層の成長速度が変化する。また、サセプタに載置された基板の外周部は、原料ガスとパージガスの流量が一定ならば、原料ガスの上流側に位置する時間が長い箇所ほど成長速度が速くなる。また、サセプタに載置された基板の外周部は、原料ガスの下流側に位置する時間が長い箇所ほど成長速度が遅くなる。したがって、原料ガスの流量、パージガスの流量、サセプタの回転速度は、それぞれが単独でエピタキシャル層の成長速度を変化させる要因となる。よって、これらの要素の少なくとも1つを調節することでエピタキシャル層の成長速度を調節することが可能となる。
【0018】
より具体的には、本発明の実施態様では、
調節工程は、原料ガスの流量、パージガスの流量、又はサセプタの回転速度の少なくとも1つの値が成長時に周期的な増減を繰り返すように調節する。
【0019】
基板を載置すべき目標位置と基板を載置した載置位置の間に位置ずれがあると、基板の周方向におけるエピタキシャル層の成長速度に分布が生じ、基板の周方向において成長速度の速い箇所と遅い箇所が生じる。この成長速度の速い箇所と遅い箇所は、成長条件を調節しない場合には、軸線回りに回転するサセプタと一緒に軸線回りに所定の周期で回転する。そのため、所定の周期で回転する成長速度の速い箇所と遅い箇所に対応して成長速度を変化させる原料ガスの流量等の値を気相成長時に周期的に増減させることで、基板の周方向における成長速度の均一性を高めることが可能となる。
【0020】
本発明の実施態様では、
測定工程は、ザグリ部に載置された基板の半径方向に位置するザグリ部と基板との隙間における幅を周方向に沿って測定し、測定した幅の最大値と最小値から位置ずれ(載置位置と目標位置の位置ずれ)を測定する。
【0021】
ザグリ部の中心と基板の中心が一致する(基板が目標位置に載置される)場合、ザグリ部と基板との隙間は環状に形成され、基板の半径方向における隙間の幅(幅w1とする)は基板の周方向で一定となる。それに対して、基板の中心がザグリ部の中心からずれた場合、幅が不均一な環状の隙間に形成される。例えば、基板の中心がザグリ部の中心から距離d1ずれた場合、基板がずれた方向に形成される隙間の幅はw1−d1となり、ずれた方向と反対方向に位置する隙間の幅はw1+d1となる。この幅w1−d1、w1+d1のペアは、基板の中心がザグリ部の中心からずれた方向とその反対方向に位置する隙間の幅であるため、基板周囲に位置する隙間の幅の最大値と最小値に該当する。よって、この最大値及び最小値を取得することで、ザグリ部の中心と基板の中心の距離d1(位置ずれ)を測定できる。
【0022】
本発明の実施態様では、
調節工程は、最大値に対応する基板の外周位置が原料ガスの上流側に接近するにつれて原料ガスの流量を減少させ、外周位置が上流側から離隔するにつれて原料ガスの流量を増加させるように成長条件を調節する。
【0023】
ザグリ部に載置した基板の外周部に成長するエピタキシャル層の膜厚は、基板の半径方向に位置する隙間の幅が狭いほど薄くなるのに対し、その幅が広いほど厚くなることが知られる。よって、その幅の最大値に対応する基板の外周位置が原料ガスの上流側に接近するにつれて原料ガスの流量を減少させることで、膜厚が厚くなる箇所の成長速度を抑えることができる。また、逆に基板の外周位置が上流側から離隔するにつれて原料ガスの流量を増加させることで、膜厚が薄くなる傾向にある箇所の成長速度を高めることができる。それ故、基板の周方向において、不均一なエピタキシャル層の成長速度の均一性が高まるように調節できる。
【0024】
本発明の実施態様では、
調節工程は、最大値に対応する基板の外周位置が原料ガスの上流側に接近するにつれてパージガスの流量を増加させ、外周位置が上流側から離隔するにつれてパージガスの流量を減少させるように成長条件を調節する。
【0025】
パージガスの流量が増加すると、原料ガスの流れが阻害されて成長速度が減少するのに対し、パージガスの流量が減少すると、原料ガスの流れが円滑となり成長速度が増加する。そのため、基板の所定の外周位置に対応してパージガスの流量を制御し、膜厚が薄くなる箇所の成長速度を高めるとともに、膜厚が厚くなる箇所の成長速度を抑えることが可能となる。よって、基板の周方向における成長速度の均一性を高めるように調節可能となる。
【0026】
本発明の実施態様では、
調節工程は、最大値に対応する基板の外周位置が原料ガスの上流側に接近するにつれて回転速度を増加させ、外周位置が上流側から離隔するにつれて回転速度を減少させるように成長条件を調節する。
【0027】
サセプタに載置した基板の外周部は、原料ガスの上流側に位置する時間が長い箇所は成長速度が速いのに対し、原料ガスの上流側に位置する時間が短い箇所は成長速度が遅い。よって、基板の所定の外周位置に対応してサセプタの回転速度を制御し、膜厚が薄くなる箇所の成長速度を高めるとともに、膜厚が厚くなる箇所の成長速度を抑える。こうすることで基板の周方向における成長速度の均一性が高まるように調節可能となる。
【0028】
また、本発明の気相成長装置は、
基板にエピタキシャル層を成長する反応炉と、
反応炉内に位置し、基板が載置されるザグリ部を有するサセプタと、
軸線回りにサセプタを回転させる駆動部と、
ザグリ部に載置された基板の半径方向に位置するザグリ部と基板との隙間を撮像する撮像装置と、
エピタキシャル層の原料ガスとサセプタの下方に供給されるパージガスを反応炉に供給するガス供給口と、
原料ガスの流量、パージガスの流量及びサセプタの回転速度を制御する制御部と、を備え、
制御部は、
サセプタが軸線回りに回転した状態で撮像装置が撮像した隙間の撮像画像から基板の中心とザグリ部の中心の位置ずれを測定する測定手段と、
エピタキシャル層の成長速度が基板の周方向で均一となるように位置ずれに基づきエピタキシャル層の成長時の原料ガスの流量、パージガスの流量、又は回転速度の少なくとも1つを調節する調節手段と、
を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明は、気相成長装置として構成した発明である(前述の発明はエピタキシャルウェーハの製造方法として構成した発明である)。前述のエピタキシャルウェーハの製造方法の発明と同様にサセプタに載置された基板に位置ずれが生じても膜厚の均一性の良好なエピタキシャル層を成長可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は本発明の気相成長装置1の一例を示す。気相成長装置1により、例えば、成長用基板となるシリコン単結晶ウェーハ(基板W)にシリコン単結晶膜(エピタキシャル層)を気相成長させ、シリコンエピタキシャルウェーハが製造される。
【0032】
気相成長装置1は、透明石英製の天板2aを有する反応炉2を備える。反応炉2の内部には、サセプタ3と、サセプタ3を支持する支持部4と、支持部4を通じてサセプタ3を駆動させる駆動部5が配置される。
【0033】
サセプタ3は円盤状に形成され、サセプタ3の表面には基板Wの直径より大きな円盤状に窪むザグリ部3aが備わる。サセプタ3を上から見た
図2Aに示すようにサセプタ3とザグリ部3aは中心Cを軸とするように同心円状に位置する。ザグリ部3aには基板Wが載置され、ザグリ部3aは、載置された基板Wの外周Waに対向する内壁3a1を有する。
図2Aでは、ザグリ部3aに基板Wが載置された状態で基板Wの半径方向に位置する外周Waと内壁3a1の間に幅W1の隙間Sが形成される。
図2Aに幅W1が均等な環状の隙間Sが図示されるが、
図2Bに示すようにザグリ部3aの中心Cと基板Wの中心C1とがずれる場合には、基板Wの周囲で幅W1が不均一となる環状の隙間Sが形成される。サセプタ3は、ザグリ部3aと基板Wとの間に隙間Sを有した状態で基板Wを水平又は略水平に支持する。
【0034】
図1に戻って、支持部4はサセプタ3の裏面側からサセプタ3を水平又は略水平に支持するように配置される。支持部4は、鉛直方向に伸びる支柱4aと、支柱4aの上部から放射状に延びて先端がサセプタ3の周縁部に接続するアーム4bを備える。
【0035】
支柱4aの下部には駆動部5が接続される。駆動部5は支柱4aを上下動及び支柱4aを軸線O(鉛直方向)回りに回転駆動させることが可能な駆動手段(例えばモーター)として構成される。軸線O上には、例えば、サセプタ3及びザグリ部3aの中心Cが位置し、駆動部5が軸線O回りに支柱4aを回転させると、支柱4aと一緒にサセプタ3及びザグリ部3aが軸線O回りに回転する。
【0036】
次に反応炉2の外部には、反応炉2の左右にガス供給部6及びガス排出管7が配置されるとともに、反応炉2の上下にランプ8が配置される。
【0037】
ガス供給部6は、反応炉2の水平方向の一端側(図示左側)に位置し、反応炉2内に各種のガスを略水平に供給する。ガス供給部6は、上下2段のガス供給管(上側に配置される上側ガス供給管6aと下側に配置される下側ガス供給管6b)を備える。上側及び下側ガス供給管6a、6bは、それぞれ反応炉2内に通じるガス供給口6a1、6b1から反応炉2内にガスを供給する。
【0038】
上側ガス供給管6aは、気相成長時にはガス供給口6a1から反応炉2内に気相成長ガスGを供給する。気相成長ガスGは、シリコン単結晶膜(エピタキシャル層)の原料となる原料ガスと、原料ガスを希釈するキャリアガスと、単結晶膜に導電型を付与するドーパントガスを含む。原料ガスとしてはトリクロロシラン(TCS)等のシラン系ガス、キャリアガスとしては水素ガス、ドーパントガスとしては、例えば、ボロンやリン等を含むガスが気相成長中に供給される。
【0039】
下側ガス供給管6bは、気相成長時にはガス供給口6b1から反応炉2内に位置するサセプタ3の下方の空間に向けて水素等のパージガスを供給する。サセプタ3の下方に供給されたパージガスの一部は、サセプタ3の側面に沿うようにしてサセプタ3の表面側に流れ、原料ガスがサセプタ3の下方に流れ込むのを抑制する。
【0040】
ガス排出管7は反応炉2の水平方向の他端側(図示右側)に位置し、ガス排出口7aから反応炉2内のガスを反応炉2外に排出する。ガス排出管7により、基板Wを通過した気相成長ガスGとパージガス等が排出される。
【0041】
また、反応炉2の上下にはランプ8が複数配置される。ランプ8は、気相成長時に反応炉2内を加熱して反応炉2内に位置する基板W等の温度を調節する熱源である。
【0042】
図3Aに示すように反応炉2に一端が接続されるガス供給部6(上側及び下側ガス供給管6a、6b)の他端には、反応炉2内に供給する気相成長ガスGとパージガス等を貯蔵する各種のガスボンベ9が備わる。ガスボンベ9と反応炉2の間にはガスボンベ9から反応炉2内に向けて流れるガスの供給を遮断可能なストップバルブ10と、ストップバルブ10を通過してガスの流量を制御するマスフローコントローラ11が備わる。ガスボンベ9から反応炉2内に向けて流れる原料ガス、パージガス等がストップバルブ10を通過してマスフローコントローラ11に入ると、各ガスの流量が制御された状態で反応炉2内に供給される。
【0043】
また、
図3Aに示すように反応炉2の上方にランプ8の他に撮像装置12が配置される。撮像装置12は、例えば、カメラ12aとして構成される。カメラ12aは反応炉2の透明な天板2aを通して反応炉2内を撮像する。具体的には、
図2Bに示すようにザグリ部3aに載置した基板Wの半径方向に位置するザグリ部3aと基板Wの間の隙間Sを撮像する。
図2Bにて四角で囲まれた領域Rがカメラ12aにより撮像される領域の一例である。カメラ12aは、ザグリ部3aに載置された基板Wの半径方向に位置する隙間Sの幅W1を算出可能な画像を撮像し、撮像画像(動画等)を取得する。なお、駆動部5によりサセプタ3を回転させることにより基板Wの周方向に位置する全ての隙間Sを撮像することが可能である。
【0044】
図3Aに示すように駆動部5、ストップバルブ10、マスフローコントローラ11及びカメラ12aは、それらを各々制御する制御部13に電気的に接続される。制御部13は、例えば、上記の各装置を制御する制御用のコンピュータ13aとして構成される。
図3Bに示すようにコンピュータ13aは、CPU14、RAM15、ROM16を備え、それらがバス17でI/Oポート18(入出力インターフェース)に接続される。また、I/Oポート18には、駆動部5、ストップバルブ10、マスフローコントローラ11及びカメラ12aが接続される。
【0045】
CPU14は、駆動部5、ストップバルブ10、マスフローコントローラ11及びカメラ12aとのデータ通信及びデータ通信で取得したデータ等の情報処理の全般を司る。CPU14には、例えば、サセプタ3が所定角回転する毎にサセプタ3の位置を示す位置信号(ホーム信号)が駆動部5から出力される。RAM15はCPU14の作業領域として機能する揮発性の記憶部である。ROM16は、駆動部5、ストップバルブ10、マスフローコントローラ11及びカメラ12aとのデータ通信及び通信したデータを処理するために必要なデータやソフトウェア(プログラム)を記憶する不揮発性の記憶部である。
【0046】
ROM16には駆動部5に関するプログラムとして、サセプタ3を回転させる駆動部5を制御する駆動プログラム16aが格納される。ストップバルブ10とマスフローコントローラ11に関するプログラムとしては、エピタキシャル成長時における原料ガス、パージガス等の流量を制御する流量プログラム16bがROM16に格納される。カメラ12aに関するプログラムとしては、カメラ12aから入力される撮像画像から隙間Sの幅W1を算出する算出プログラム16cがROM16に格納される。
【0047】
また、ROM16には、
図2Bに示す基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cとの位置ずれ(位置ずれの量の距離D1と位置がずれた方向)を測定する測定プログラム16dが格納される。更にROM16には、エピタキシャル層の成長条件を位置ずれに基づき調節する調節プログラム16eが格納される。
【0048】
測定プログラム16dは、駆動部5によりサセプタ3を回転させることで基板Wの周方向に位置する全ての隙間Sを撮像した複数の撮像画像から距離D1を測定する。
図2Aに示すように基板Wとザグリ部3aの互いの中心C1、Cが一致する場合には基板Wとザグリ部3aが同心円状に位置し、基板Wとザグリ部3aとの隙間Sの幅W1は一定となる。この状態から基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cから距離D1ずれると(
図2B参照)、基板Wがずれた方向に形成される隙間Sの幅W1は距離D1狭くなり最小値となる。逆にずれた方向と反対方向に位置する隙間Sの幅W1は距離D1広くなり最大値となる。このような関係から距離D1は、幅W1の最大値を最小値で減算した値を2で除法することで算出できる。それ故、基板Wの周方向に位置する隙間Sの撮像画像から隙間Sの幅W1を測定して最大値と最小値を取得することで、距離D1を測定できる。また、測定プログラム16dは、サセプタ3の位置を示す位置信号、カメラ12aの撮像画像、カメラ12aの位置情報、隙間Sの幅W1の最大値及び最小値等に基づき基板Wの中心C1がザグリ部3aの中心Cからずれた方向(位置ずれの方向)を算出する。
【0049】
調節プログラム16eは、位置ずれの距離D1と方向に応じて不均一となる基板Wの周方向におけるエピタキシャル層の成長速度(特に基板Wの外周部の成長速度)を均一にするようにエピタキシャル成長時の成長条件を調節する。調節される成長条件としては、原料ガスの流量、パージガスの流量、又はサセプタ3の回転速度の少なくとも一つである。原料ガスの流量、パージガスの流量、サセプタ3の回転速度の具体的な数値は、後述する成長条件の調節方法により設定され、位置ずれの距離D1と方向に対応する数値が調節データ16e1としてROM16に格納される。例えば、エピタキシャル成長をする場合には調節データ16e1を利用して自動的に成長条件が調節される。
【0050】
以上のように構成された気相成長装置1によりエピタキシャルウェーハを作製する場合には、先ず反応炉2内に基板Wを搬入してサセプタ3上に載置する。そして、駆動部5によりサセプタ3を回転させながら、カメラ12aにより基板Wの周方向における隙間Sを撮像し、撮像画像から基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cとの位置ずれ(距離D1と方向)を測定する(測定工程)。そして、測定した位置ずれに基づいてエピタキシャル成長時の成長条件が調節され(調節工程)、調節した成長条件でエピタキシャル層を成長し、エピタキシャルウェーハを製造する(成長工程)。
【0051】
図2Bに示すようにサセプタ3に載置した基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cが一致せずに所定の方向に距離D1ずれる場合は、基板Wの外周部でのエピタキシャル層の成長速度が基板Wの周方向で不均一となる。そこで、本実施態様では、基板Wの周方向で成長速度が均一になるように位置ずれの距離D1と位置ずれの方向に基づき成長条件を調節することで、基板Wの周方向におけるエピタキシャル層の成長速度の不均一を抑制する。そして、サセプタ3に載置された基板Wに位置ずれがある場合でも膜厚の均一性の良好なエピタキシャル層を成長可能にする。以下、基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cとの位置ずれに応じてエピタキシャル層の成長条件を調節する成長条件の調節方法を説明する。
【0052】
基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cに所定の距離D1がある場合(
図2B参照)、ザグリ部3aと基板Wとの間に基板Wの半径方向に位置する幅W1が不均一となる隙間Sが形成される。このような状態でザグリ部3aに載置された基板Wにエピタキシャル層を成長すると、幅W1が狭い箇所(基板Wの外周部)ほどエピタキシャル層の膜厚が薄くなり、幅W1が広い箇所ほど膜厚が厚くなる。そこで、最初に基板Wの周方向におけるエピタキシャル層の成長速度と隙間Sの幅W1との相関を評価する。具体的には、
図2Cに示すように基板Wの外周Waの一部とザグリ部3aの内壁3a1が接触した状態で基板Wをサセプタ3に載置する。このように基板Wを載置することで、接触部分の最小値の幅W1(=0)から接触部分に対向する位置にある最大値の幅W1まで隙間Sの幅W1を基板Wの周方向で変えることができる。そして、載置された基板Wに対して、例えば、通常の成長条件でエピタキシャル層を成長し、成長したエピタキシャル層の外周部の膜厚を測定する。例えば、
図2Cに示すように基板の外周部に位置する各地点Pの各膜厚を測定し、基板Wの中心C1から各地点Pに向かう基板Wの半径方向に位置する隙間Sの幅W1と各地点Pの膜厚との相関を把握する。この相関から幅W1と幅W1に対応する基板Wの外周部の所定地点におけるエピタキシャル層の成長速度の相関が定まる。例えば、
図2Bに示すように基板Wの中心C1とザグリ部3aの中心Cとの位置ずれがある場合には、位置ずれの距離D1と方向により基板Wの周囲に位置する隙間Sの形状が定まる。よって、位置ずれを測定して基板Wの周囲に位置する隙間Sの形状を取得すると、その形状に対応する幅W1からザグリ部3aに載置される基板Wの周方向でのエピタキシャル層の成長速度の分布を把握できる。
【0053】
次に、基板Wの周方向で不均一となる成長速度の均一性を高めるための成長条件を定める。本実施態様では、成長速度を調節する要素として原料ガスの流量、パージガスの流量、及びサセプタの回転速度を採用する。
【0054】
原料ガスの流量は、原料ガスの流量に応じて基板Wの外周部に到達する原料ガスの濃度と速度を変化させるため、原料ガスの流量に応じてエピタキシャル層の成長速度を調節できる。また、パージガスの流量は、パージガスの流量に応じて原料ガスの流れを阻害するため、パージガスの流量に応じてエピタキシャル層の成長速度を調節できる。サセプタ3の回転速度は、サセプタ3の回転速度に応じてサセプタ3に載置された基板Wの位置を変化させる。例えば、基板Wの外周部は、原料ガスの上流側に位置する時間が長い箇所ほど成長速度が速くなり、逆に原料ガスの下流側に位置する時間が長い箇所ほど成長速度が遅くなる。そのため、サセプタ3の回転速度に応じてエピタキシャル層の成長速度を調節できる。よって、原料ガスの流量、パージガスの流量、サセプタ3の回転速度の各々は、成長速度を調節する要素として採用できる。
【0055】
最初に基板Wの周方向で不均一となった成長速度の均一性を高める原料ガスの流量を設定する方法を説明する。先ず、気相成長毎に原料ガスの流量を変える以外は同一の成長条件で基板Wにエピタキシャル層を成長する。原料ガスの流量としては、気相成長中にサインカーブ状に流量が変化する流量など様々な流量に設定し、設定した流量毎に基板Wに対してエピタキシャル層を成長する。次に、成長した各エピタキシャル層の外周部の膜厚を測定する。そして、設定した原料ガスの流量とその流量に対応する膜厚から基板Wの周方向における成長速度と原料ガスの流量の相関を把握する。なお、サセプタ3の回転を停止した状態で気相成長したエピタキシャル層における原料ガスの上流側に位置する基板Wの外周部の成長速度を利用して相関を把握することが望ましい。
【0056】
原料ガスの流量と基板Wの周方向での成長速度の相関を把握することで、位置ずれに応じて不均一となる基板Wの周方向における成長速度の均一性を高める原料ガスの流量を決定できる。こうすることで、基板Wの中心C1とザグリ部3aとの間に所定の距離D1が存在しても基板Wの周方向でのエピタキシャル層の成長速度の均一性を高めることができる。決定される原料ガスの流量としては、例えば、隙間Sの幅W1の最大値に対応する基板Wの外周位置P1(
図2B参照)がサセプタ3の回転により原料ガスの上流側に接近するにつれて原料ガスの流量を減少させる。そして、外周位置P1が上流側から離隔するにつれて原料ガスの流量を増加させるものとなる。
【0057】
次に、基板Wの周方向で不均一となった成長速度の均一性を高めるパージガスの流量を設定する方法を説明する。先ず、気相成長毎にパージガスの流量を変える以外は同一の成長条件で基板Wにエピタキシャル層を成長する。パージガスの流量としては、様々な流量に設定し、設定した流量毎に基板Wに対してエピタキシャル層を成長する。そして、先の原料ガスの流量の場合と同様にして基板Wの周方向における成長速度とパージガスの流量の相関を把握し、その相関から位置ずれにより不均一となる成長速度の均一性を高めるパージガスの流量を決定する。決定されるパージガスの流量としては、例えば、隙間Sの幅W1の最大値に対応する基板Wの外周位置P1(
図2B参照)が原料ガスの上流側に接近するにつれてパージガスの流量を増加させる。そして、基板Wの外周位置P1が上流側から離隔するにつれてパージガスの流量を減少させるものとなる。
【0058】
最後に、基板Wの周方向で不均一となった成長速度の均一性を高めるサセプタ3の回転速度を設定する方法を説明する。先ず、気相成長時にサセプタ3の回転速度を変える以外は同一の成長条件で基板Wにエピタキシャル層を成長する。サセプタ3の回転速度としては、気相成長中にサインカーブ状に回転速度が変化する速度など様々な速度に設定し、設定した速度毎に基板Wに対してエピタキシャル層を成長する。そして、先の原料ガスの流量の場合と同様にして基板Wの周方向における成長速度とサセプタ3の回転速度の相関を把握し、その相関に基づき位置ずれにより不均一となる成長速度の均一性を高めるサセプタ3の回転速度を決定する。
【0059】
決定されるサセプタ3の回転速度としては、例えば、次の式1に示す回転速度である。次の式において、ω
0はサセプタ3の標準回転速度、Δωは回転速度補正量、tはエピタキシャル成長開始からの時間、Tは基板Wの回転周期、θは位置ずれの方向に対応したオフセット角である。オフセット角θは隙間Sの幅W1の最小値が原料ガスの上流側に位置する際に回転速度が最小値(ω
0−Δω)となるように設定する。
【0061】
決定されるサセプタ3の回転速度は、より具体的には、例えば、隙間Sの幅W1の最大値に対応する基板Wの外周位置P1(
図2B参照)が原料ガスの上流側に接近するにつれて回転速度を増加させる。そして、基板Wの外周位置P1が上流側から離隔するにつれてサセプタ3の回転速度を減少させるものとなる。
【0062】
以上のように、原料ガスの流量、パージガスの流量、サセプタ3の回転速度の値のいずれかを周期的に増減するように成長条件を調節する。これにより、位置ずれがある状態でも基板Wの外周部における基板Wの周方向における成長速度の均一性を高めることができる。上記では、原料ガスの流量、パージガスの流量、サセプタ3の回転速度の3つのいずれかに基づいて成長条件を調節する例を示したが、それらを組み合わせて成長条件を調節してもよい。
【0063】
なお、このようにして決定される原料ガスの流量、パージガスの流量、サセプタ3の回転速度は、位置ずれ(距離D1と距離D1の方向)に対応する調節データ16e1としてROM16に格納される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0065】
(実施例)
実施例では、気相成長装置1を用いて直径300mmのシリコン単結晶基板(基板W)にトリクロロシランを原料ガスとしてシリコンエピタキシャル層を気相成長した。具体的には、基板Wをザグリ部3aに載置し、ザグリ部3aの中心Cと基板Wの中心C1との位置ずれに応じて原料ガスの流量のみを調整してエピタキシャル層を成長した。そして、ザグリ部3aの中心Cから基板Wの中心C1がずれた方向と平行な方向でエピタキシャル層の膜厚を測定し、膜厚分布を測定した。膜厚分布は、膜厚の最大値をt
M、膜厚の最小値をt
mとして、t
M−t
mをt
M+t
mで除法した値に100を乗じて算出した。
【0066】
(比較例)
比較例では、位置ずれに基づき原料ガスの流量を調節しないこと以外は実施例と同様の条件で基板Wにエピタキシャル層を成長し、成長したエピタキシャル層の膜厚から膜厚分布を取得した。
図4は、実施例と比較例における原料ガスの流量を示すグラフである。実施例ではトリクロロシランの流量が10slmを基準として周期的に増減する正弦波状の流量に調節したのに対して、比較例ではトリクロロシランの流量を10slmに維持したまま流した。また、実施例では、隙間Sの幅W1の最大値に対応する基板Wの外周位置P1(
図2B参照)が原料ガスの上流側に接近するにつれて原料ガスの流量を減少させた。更に、外周位置P1がその上流側から離隔するにつれて原料ガスの流量を増加させた。
【0067】
図5は、実施例及び比較例で成長したエピタキシャル層の膜厚分布の測定結果を示すグラフである。このグラフにおいて、左端における基板Wの外周Waとザグリ部3aの内壁3a1との隙間Sの幅W1は最小値に対応し、右端における基板Wの外周Waとザグリ部3aの内壁3a1との隙間Sの幅W1は最大値に対応する。比較例では、膜厚分布が±0.87%となるとともに、エピタキシャル層の外周部で膜厚の均一性が悪化している。それに対して、実施例では、膜厚分布が±0.66%となるとともに、エピタキシャル層の外周部で膜厚の均一性が良好となり、膜厚分布が改善している。
【0068】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明はその具体的な記載に限定されることなく、例示した構成等を技術的に矛盾のない範囲で適宜組み合わせて実施することも可能であるし、またある要素、処理を周知の形態に置き換えて実施することもできる。