【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例によってその範囲を限定されるものではない。なお、特に断りがない限り、「%」は「重量%」を表す。
【0030】
以下において採用した分析条件は下記の通りである。
・ガスクロマトグラフィー分析(GC分析)
装置:HP−6890(アジレント社製)
カラム:ジーエルサイエンス社製 Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、40℃で10分間保持
インジェクション温度:200℃
キャリヤーガス:窒素
スプリット比:100/1
検出器:FID
【0031】
・不純物分析(ガスクロマトグラフィー質量分析)
GC部分:HP−6890(アジレント社製)
カラム: ジーエルサイエンス社製 Inert Cap−1、長さ60m、内径0.25mm、膜厚1.5μm
カラム温度:40℃で10分間保持、次いで、20℃/分で昇温し、その後、240℃で10分間保持
MS部分:アジレント社製 5973 NETWORK
検出器 EI型(加速電圧:70eV)
【0032】
[製造例1]
攪拌機、滴下ロート、捕集用トラップを付した容量1Lのガラス製反応器に、スプレードライフッ化カリウム86g(アルドリッチ社製)、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ブタンおよびジエチレングリコール400mlを仕込み、捕集用トラップの出口管から窒素を通気し、窒素雰囲気下に置いた。反応器をオイルバスに浸して、90℃に加熱した。滴下ロートから、2−(p−トルエンスルホニルオキシ)ブタン135gを2.5時間かけて滴下した。90℃で反応を5時間継続し、反応で生成する揮発成分をドライアイス/エタノール浴に浸した捕集用トラップに捕集した。その後、オイルバスの温度を80℃まで下げ、反応器にドライアイス−エタノール浴に浸したガラス製トラップを直列に2つ繋げた。さらに、ガラス製トラップの出口には圧力コントローラー、および真空ポンプを繋げた。真空ポンプを起動し、圧力コントローラーを使って、系内の圧力を50〜45kPa、次いで、35〜30kPa、さらに、30〜25kPaまで段階的に下げて、揮発成分をガラストラップに回収した。最初の捕集トラップ、および2つのガラス製トラップの中身を合わせて、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1−ブテン5.23面積%、(E)−2−ブテン19.91面積%、(Z)−2−ブテン13.04面積%、2−フルオロブタン58.30面積%、その他不純物3.52面積%を含む混合物(22g)であった。
【0033】
[実施例1]
撹拌子、ジムロート型コンデンサーを付した容量300mlのガラス製反応器に、ジメチルスルホキシド60ml、および、水15gを入れ、0℃に冷却して内容物を撹拌した。ジムロート型コンデンサーには0℃の冷媒を循環させた。反応器に製造例1で得られた粗2−フルオロブタン40gを仕込み、10分間撹拌した。反応器に、N−ブロモスクシンイミド36gを20分間隔で、12gずつ、3分割して投入した。さらに1時間撹拌したのち、内容物をガスクロマトグラフィー分析した結果、1−ブテンが0.03面積%、(Z)−2−ブテンが0.01面積%、2−フルオロブタンが30.39面積%、および、その他不純物が1.11面積%検出され、高リテンション時間領域にブロモヒドリン体の生成が確認された。また、2−フルオロブタンが臭素化された化合物の生成は認められなかった。
【0034】
[実施例2]
実施例1の反応器からジムロート型コンデンサーを外し、捕集用受器、その後にガラス製トラップ取り付けた。ガラス製トラップの出口には圧力コントローラー、および真空ポンプを繋げた。真空ポンプを起動し、圧力コントローラーを使って、系内の圧力を70〜60kPa、次いで、40〜30kPa、さらに、30〜25kPaまで段階的に下げて、揮発成分を捕集用受器、およびガラス製トラップに回収した。捕集用受器、およびガラス製トラップの中身を合わせて、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、98.70面積%の2−フルオロブタンが回収されており、実施例1で仕込んだ粗2−フルオロブタンに対し重量基準で、92%の回収率であった。
【0035】
[実施例3]
実施例1〜2の操作を繰り返して得られた2−フルオロブタン138gを蒸留釜に仕込み、KS型精留塔(東科精機製、カラム長60cm、充填剤ヘリパックNo.1)を使って、蒸留を行った。コンデンサーには−10℃の冷媒を循環させ、約1時間全還流を行った。蒸留釜は塔頂部の温度、及び釜内部の残量を考慮しながら、45から65℃まで加温した。全還流実施後、還流比30:1で留分の抜き出しを行った。抜出し開始後、約1.5時間後には、99.9面積%以上の2−フルオロブタン留分が得られるようになり、その結果、99.95面積%の2−フルオロブタンが91g得られた。留分を分析した結果、不純物として、1−ブテン、および、(Z)−2−ブテンがそれぞれ、53面積ppm、85面積ppm、また、イソブチルフルオリドが362面積ppm含まれていた。
【0036】
[実施例4]
撹拌子、ジムロート型コンデンサーを付した容量200mlのガラス製反応器に、ジエチレングリコールジメチルエーテル30ml、および、水7.6gを入れ、0℃に冷却して内容物を撹拌した。ジムロート型コンデサーには0℃の冷媒を循環させた。反応器に製造例1で得られた粗2−フルオロブタン20gを仕込み、10分間撹拌した。反応器に、N−ブロモスクシンイミド18gを20分間隔で、6gずつ、3分割して投入した。さらに1時間撹拌したのち、内容物をガスクロマトグラフィー分析した結果、1−ブテンが0.26面積%、(Z)−2−ブテンが0.10面積%、2−フルオロブタンが29.48面積%、その他不純物が2.64面積%検出され、高リテンション時間領域にブロモヒドリン体の生成が確認された。また、2−フルオロブタンが臭素化された化合物の生成は認められなかった。
【0037】
[実施例5]
実施例4の反応器からジムロート型コンデンサーを外し、捕集用受器、その後にガラス製トラップ取り付けた。ガラス製トラップの出口には圧力コントローラー、および真空ポンプを繋げた。真空ポンプを起動し、圧力コントローラーを使って、系内の圧力を70〜60kPa、次いで、50〜40kPaまで段階的に下げて、揮発成分を捕集用受器、およびガラス製トラップに回収した。捕集用受器、およびガラス製トラップの中身を合わせて、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、96.78面積%の2−フルオロブタンが回収されており、実施例4で仕込んだ粗2−フルオロブタンに対し重量基準で、82%の回収率であった。
【0038】
[実施例6]
実施例1において、溶媒をジメチルスルホキシドからN,N−ジメチルアセトアミド60mlに変更したこと以外は実施例1と同様に反応を実施した。
内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1−ブテンが0.4面積%、(Z)−2−ブテンが0.06面積%、2−フルオロブタンが29.71面積%、およびその他不純物が2.17面積%検出され、高リテンション領域にブロモヒドリン体の生成が確認された。また、2−フルオロブタンが臭素化された化合物の生成は認められなかった。
ジムロート型コンデンサーを外し、捕集用受器、その後にガラス製トラップ取り付けた。ガラス製トラップの出口には圧力コントローラー、および真空ポンプを繋げた。真空ポンプを起動し、圧力コントローラーを使って、系内の圧力を70〜60kPa、次いで、40〜30kPa、さらに、30〜25kPaまで段階的に下げて、揮発成分を捕集用受器、およびガラス製トラップに回収した。捕集用受器、およびガラス製トラップの中身を合わせて、ガスクロマトグラフィーにて分析した結果、94.13面積%の2−フルオロブタンが回収されており、仕込んだ粗2−フルオロブタンに対し重量基準で、89%の回収率であった。
【0039】
[実施例7]
実施例1において、N−ブロモスクシンイミド36gを1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン38.9gに変更したこと、および反応温度は−20℃に変更したこと以外は実施例1と同様に反応を実施した。
内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1−ブテンが0.01面積%、(Z)−2−ブテンが0.002面積%、(E)−2−ブテンが0.005面積%、2−フルオロブタンが38.33面積%、およびその他不純物が2.60面積%検出され、高リテンション時間領域にブロモヒドリン体の生成が確認された。また、2−フルオロブタンが臭素化された化合物の生成は認められなかった。
【0040】
[実施例8]
実施例1において、水15gをメタノール27gおよび、反応温度を−10℃に変更したこと以外は実施例1と同様に反応を実施した。
内容物をガスクロマトグラフィーにて分析した結果、1−ブテン1.45面積%、(E)−2−ブテン1.23面積%、(Z)−2−ブテン2.85面積%残存し、2−フルオロブタンが20.98面積%、その他不純物が4.21面積%検出された。また、高リテンション時間領域に、ブロモメトキシブタン体の生成が確認され、2−フルオロブタンが臭素化された化合物の生成は認められなかった。
【0041】
[実施例9]
撹拌子、ジムロート型コンデンサーを付した容量300mlのガラス製反応器に、ジメチルスルホキシド60ml、および、水15gを入れ、0℃に冷却して内容物を撹拌した。ジムロート型コンデンサーには0℃の冷媒を循環させた。反応器に製造例1で得られた粗2−フルオロブタン40gを仕込み、10分間撹拌した。反応器に、N−ブロモスクシンイミド36gを、12gずつ、20分間隔で3分割して投入した。さらに1時間撹拌したのち、内容物をガスクロマトグラフィー分析した結果、1−ブテンが0.02面積%、(Z)−2−ブテンが0.02面積%、2−フルオロブタンが30.58面積%、および、その他不純物が1.02面積%検出され、高リテンション時間領域にブロモヒドリン体の生成が確認された。また、2−フルオロブタンが臭素化された化合物の生成は認められなかった。
反応液を0℃に冷却し、n−ヘキサン10mlを添加して5分間強撹拌し、未反応ブテン類を含む2−フルオロブタンを抽出し、n−ヘキサン層を分離した。この抽出操作を2回さらに繰り返し、n−ヘキサン層を集め、5%亜硫酸水素ナトリウム水溶液、次いで飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ別したろ液(n−ヘキサン層)をガスクロマトグラフィーで分析した結果、1−ブテン、(Z)−2−ブテン、及び2−フルオロブタンはほぼ抽出されており、ブロモヒドリン体はn−ヘキサンに抽出されず、溶媒のジメチルスルホキシドに残存することが確認された。よって、2−フルオロブタンとブロモヒドリン体を容易に分離できることが分かった。
【0042】
[比較例1]
製造例1の反応を繰り返して、1−ブテン5.43面積%、(E)−2−ブテン20.02面積%、(Z)−2−ブテン13.17面積%、2−フルオロブタン57.89面積%、その他不純物3.49面積%を含む混合物249gを実施例3で使用した同じ蒸留塔を用いて蒸留を行った。コンデンサーには−10℃の冷媒を循環させ、約1時間全還流を行った。蒸留釜は塔頂部の温度、及び釜内部の残量を考慮しながら、40から50℃まで加温した。還流比45:1〜30:1の間で留分の抜き出しを行った。その結果、ブテン類を留去し、留分の純度が99.0面積%以上になるまでに、11時間要した。最終的に99.12面積%の2−フルオロブタンが86g得られた。
本蒸留結果から、大量にブテン含む粗2−フルオロブタンを蒸留し、ブテン類を除去するには多大な時間を要し、工業的には生産効率の点で問題のあることが分かる。
【0043】
[比較例2]
ガス導入管、撹拌子を付した容量100mlのガラス製反応器に、1,1,2−トリフロオロトリクロロエタン30mLを仕込み、反応器をドライアイス/エタノール浴に浸し、−70℃に冷却した。反応器に製造例1で製造した粗2−フルオロブタン20gを入れ、ガス導入管から、塩素ガスをマスフローコントローラーを介して、約1時間かけて10.7g導入した。−70℃でさらに、30分間撹拌した後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、1−ブテン、(E)−2−ブテンおよび、(Z)−2−ブテンがそれぞれ2.21面積%、3.41面積%、3.09面積%残存し、2−フルオロブタンが塩素化された化合物が13.4面積%検出された。