特許第6331026号(P6331026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6331026含フッ素高分岐ポリマー及びそれを含む不飽和ポリエステル樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331026
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】含フッ素高分岐ポリマー及びそれを含む不飽和ポリエステル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/36 20060101AFI20180521BHJP
   C08F 222/04 20060101ALI20180521BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20180521BHJP
   C08F 220/18 20060101ALI20180521BHJP
   C08F 299/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08F212/36
   C08F222/04
   C08F220/22
   C08F220/18
   C08F299/04
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2014-532994(P2014-532994)
(86)(22)【出願日】2013年8月26日
(86)【国際出願番号】JP2013072738
(87)【国際公開番号】WO2014034607
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2016年8月26日
(31)【優先権主張番号】特願2012-190234(P2012-190234)
(32)【優先日】2012年8月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松山 元信
(72)【発明者】
【氏名】原口 将幸
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−095516(JP,A)
【文献】 特開2001−158811(JP,A)
【文献】 特開昭61−236806(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/137724(WO,A1)
【文献】 特開平04−272986(JP,A)
【文献】 特開昭55−029501(JP,A)
【文献】 国際公開第01/019884(WO,A1)
【文献】 特開2007−231160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00 − 246/00
310/00
C08L 1/00 − 101/16
C08K 3/00 − 13/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に環状酸無水物構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCと、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dとの重合物である、含フッ素高分岐ポリマーであって、
該モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であり、
該モノマーCが下記式[1]で表される化合物であり、且つ
該モノマーAのモル数に対して5〜300モル%量の該モノマーB及び5〜300モル%量の該モノマーCを重合させてなる、含フッ素高分岐ポリマー。
【化1】

(式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、ハロゲン原子若しくは炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいベンジル基、若しくはハロゲン原子若しくは炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又はR、R及びそれらが結合する炭素原子とが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を表し、Aは酸素原子を表す。)
【請求項2】
前記モノマーCが無水マレイン酸である、請求項1に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
【請求項3】
前記モノマーBがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、請求項1又は請求項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
【請求項4】
前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物である、請求項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
【化2】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2〜12のフルオロアルキル基を表す。)
【請求項5】
前記モノマーBが下記式[3]で表される化合物である、請求項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
【化3】

(式中、Rは前記式[2]における定義と同じ意味を表し、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、pは1又は2の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)
【請求項6】
前記重合開始剤Dがアゾ系重合開始剤である、請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
【請求項7】
請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニス。
【請求項8】
(a)請求項1乃至請求項のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー0.01〜20質量部、
(b)不飽和ポリエステル樹脂100質量部、及び
(c)熱重合開始剤0.05〜10質量部
を含む硬化性組成物。
【請求項9】
請求項に記載の硬化性組成物より得られる硬化物。
【請求項10】
請求項に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜。
【請求項11】
0.01〜5000μmの膜厚を有する、請求項10に記載の硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素高分岐ポリマー、及び含フッ素高分岐ポリマーを含む不飽和ポリエステル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー(高分子)材料は、近年、多分野でますます利用されている。それに伴い、それぞれの分野に応じて、マトリクスとしてのポリマーの性状とともに、その表面や界面の特性が重要となっている。例えば、表面エネルギーの低いフッ素系化合物を表面改質剤として用いることにより、撥水撥油性、防汚性、非粘着性、剥離性、離型性、滑り性、耐磨耗性、反射防止特性、耐薬品性などの表面・界面制御に関する特性の向上が期待され、種々提案されている。
【0003】
熱硬化性樹脂の一つである不飽和ポリエステル樹脂は、各種の無機充填剤や顔料などを含有させて、天然の大理石調の外観を呈するように形成された人造大理石に用いられ、浴槽やキッチン、洗面所、ユニットバスの床面や壁面、カウンタートップ、サニタリー用途、家具、内装材などによく使用されている。これらの人造大理石は、一般に、樹脂、無機充填剤、低収縮剤、触媒、架橋剤、顔料などからなり、注型法、加熱プレス法などによって成型され、比較的安価でありながら加工性、施工性、耐温水性、強度、耐侯性などに優れ、天然大理石に近い外観であって、高級感があるためよく用いられている。
【0004】
しかしその一方、不飽和ポリエステル樹脂は水や油との親和性に優れるため、水垢や油汚れにより人造大理石の外観が損なわれる課題があった。特に浴槽やキッチン、洗面所などは使用頻度が高いため、表面が防汚性を持ち、かつ、汚れが拭き取りやすい機能が望まれていた。
【0005】
このような表面機能を形成するため、フッ素パウダーを配合した人造大理石用樹脂組成物(特許文献1)や、人造大理石の最表面層(ゲルコート層)を形成する材料に、分子内に二重結合を含む変性シリコーンオイルを配合した組成物(特許文献2)、或いは、該ゲルコート層形成材料にフッ素系ポリマーを配合した組成物(特許文献3)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−207065号公報
【特許文献2】特開2001−131483号公報
【特許文献3】特開平6−154118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの特許文献において教示されている防汚対策では、撥油性を付与することができず、油汚れを落としにくいという課題が残されていた。さらにフッ素系ポリマーは不飽和ポリエステル樹脂への分散性が悪く、そのため硬化後の光沢感や透明性を損なうことが課題となっている。
すなわち、本発明の課題は、例えば人造大理石等の母材の表面に、特にゲルコート層として適用したときに、母材の高級感を損なわずに、撥水撥油性及び防汚性を付与することができる含フッ素高分岐ポリマー、それを含むワニス、該含フッ素高分岐ポリマーを含む、不飽和ポリエステル樹脂の硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、有機溶媒に対する溶解性及び樹脂に対する分散性が高い含フッ素高分岐ポリマーにおいてその側鎖に、不飽和ポリエステルと反応性を有する環状酸無水物構造又は環状イミド構造を導入すると、該ポリマーを含む不飽和ポリエステル組成物を硬化することにより得られる硬化物及び硬化膜は、透明性を損なうことなく、その表面の撥水撥油性が向上し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は第1観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる、含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第2観点として、前記モノマーCが下記式[1]で表される化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
【化1】
(式中、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、ハロゲン原子若しくは炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいベンジル基、若しくはハロゲン原子若しくは炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又はR、R及びそれらが結合する炭素原子とが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を表し、Aは酸素原子又はNR(ここでRは、水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜14のアリール基を表す。)を表す。)
第3観点として、前記モノマーCが無水マレイン酸である、第2観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第4観点として、前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第5観点として、前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、第4観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第6観点として、前記モノマーBがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第7観点として、前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物である、第6観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
【化2】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rはヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素原子数2〜12のフルオロアルキル基を表す。)
第8観点として、前記モノマーBが下記式[3]で表される化合物である、第7観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
【化3】
(式中、Rは前記式[2]における定義と同じ意味を表し、Xは水素原子又はフッ素原子を表し、pは1又は2の整数を表し、qは0〜5の整数を表す。)
第9観点として、前記重合開始剤Dがアゾ系重合開始剤である、第1観点乃至第8観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第10観点として、前記モノマーAのモル数に対して5〜300モル%量の前記モノマーB及び5〜300モル%量の前記モノマーCを重合させることによって得られる、第1観点乃至第9観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第11観点として、第1観点乃至第10観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニスに関する。
第12観点として、
(a)第1観点乃至第10観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマー0.01〜20質量部、
(b)不飽和ポリエステル樹脂100質量部、及び
(c)熱重合開始剤0.05〜10質量部
を含む硬化性組成物に関する。
第13観点として、第12観点に記載の硬化性組成物より得られる硬化物に関する。
第14観点として、第12観点に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。
第15観点として、0.01〜5000μmの膜厚を有する、第14観点に記載の硬化膜に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、積極的に枝分かれ構造を導入しているため、線状高分子と比較して分子間の絡み合いが少なく、微粒子的挙動を示し、有機溶媒に対する溶解性及び樹脂に対する分散性が高い。このため本発明の含フッ素高分岐ポリマーを、硬化性組成物等に配合し硬化膜を形成する際、微粒子状の該高分岐ポリマーは界面(硬化膜表面)に容易に移動して、樹脂表面の表面改質の向上につながる。
特に本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、そのポリマー側鎖を不飽和ポリエステルと反応性を有する環状酸無水物構造又は環状イミド構造を有するポリマー構造としたことにより、該含フッ素高分岐ポリマーを不飽和ポリエステル組成物に配合した組成物を母材、例えば人造大理石等、に塗布して硬化した場合、人造大理石等の母材に対しその高級感を損なうことなく、撥水撥油性を付与することができる。
本発明のワニスを用いることにより、前記含フッ素高分岐ポリマーを含む薄膜が好適に得られる。
本発明の硬化性組成物を用いることにより、前記含フッ素高分岐ポリマーを含む不飽和ポリエステル樹脂の硬化物及び硬化膜が好適に得られる。
本発明の硬化物は、その表面に前記含フッ素高分岐ポリマーが多く存在した状態にあるため、硬化物作製時に使用する混合・成形機械等の各種機械や金型への離型性、フィルム等の他の樹脂成形品に対する剥離性等、さらには撥水撥油性、防汚性に優れる。
本発明の硬化膜は、その表面に前記含フッ素高分岐ポリマーが多く存在した状態にあるため、硬化膜作成時に使用する基材に対する剥離性、さらには撥水撥油性、防汚性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例1で得られた高分岐ポリマー1の13C NMRスペクトルを示す図である。
図2図2は、実施例2で得られた高分岐ポリマー2の13C NMRスペクトルを示す図である。
図3図3は、実施例3で得られた高分岐ポリマー3の13C NMRスペクトルを示す図である。
図4図4は、比較合成例1で得られた高分岐ポリマー4の13C NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<含フッ素高分岐ポリマー>
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる。また本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込み(initiator-fragment incorporation)型含フッ素高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Dの断片を有している。
さらに、本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、本発明の効果を損なわない限り、前記モノマーA、前記モノマーB及び前記モノマーCに属さないその他のモノマーを、必要に応じて共重合させてもよい。
【0012】
[モノマーA]
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
【0013】
このようなモノマーAとしては、例えば、以下の(A1)〜(A7)に示した有機化合物が例示される。
(A1)ビニル系炭化水素類:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等;
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素類;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等;
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素類;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等;
(A2)ビニルエステル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルケトン類:
(A2−1)ビニルエステル類;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等;
(A2−2)アリルエステル類;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等;
(A2−3)ビニルエーテル類;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等;
(A2−4)アリルエーテル類;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等;
(A2−5)ビニルケトン類;ジビニルケトン、ジアリルケトン等;
(A3)(メタ)アクリル酸エステル類:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレンオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等;
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等;
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等;
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等;
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン等。
【0014】
これらのうち好ましいものは、上記(A1−3)群の芳香族ビニル系炭化水素類、(A2)群のビニルエステル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、アリルエーテル類及びビニルケトン類、(A3)群の(メタ)アクリル酸エステル類、(A4)群のポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物、並びに(A5)群の含窒素ビニル系化合物である。特に好ましいのは、(A1−3)群に属するジビニルベンゼン、(A2)群に属するフタル酸ジアリル、(A3)群に属するエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート並びに(A5)群に属するメチレンビス(メタ)アクリルアミドである。これらの中でも特にジビニルベンゼンが好ましい。
【0015】
[モノマーB]
本発明において、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBは、好ましくはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましく、特に前記式[2]で表される化合物が好ましく、より好ましくは前記式[3]で表される化合物であることが望ましい。
【0016】
このようなモノマーBとしては、例えば、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−3−メチルブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチル(メタ)アクリレート、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロノニル(メタ)アクリレート、1H−1−(トリフルオロメチル)トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、1H,1H,3H−ヘキサフルオロブチル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロブチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロヘキシル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−パーフルオロオクチル−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−3−メチルブチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−5−メチルヘキシル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−(パーフルオロ−7−メチルオクチル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
本発明において、モノマーBの使用量は、反応性や表面改質効果の観点から、前記モノマーAの使用モル数に対して5〜300モル%、好ましくは10〜200モル%、より好ましくは20〜100モル%の量である。
【0018】
[モノマーC]
本発明において、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、好ましくはビニル基、内部オレフィン又は(メタ)アクリル基の何れかを少なくとも1つ有することが好ましく、特に上記環状酸無水物構造又は環状イミド構造中に内部オレフィンを有する化合物が好ましく、より好ましくは、前記式[1]で表される化合物が好ましい。なお、本発明では内部オレフィンとは、炭素−炭素二重結合を構成する各炭素原子がそれぞれ少なくとも1つの基で置換されている炭素−炭素二重結合をいう。
【0019】
前記式[1]において、R及びRはそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜6のアルキル基、炭素原子数1〜6のハロアルキル基、ハロゲン原子若しくは炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいベンジル基、若しくはハロゲン原子若しくは炭素原子数1〜6のアルキル基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、又はR、R及びそれらが結合する炭素原子とが一緒になって、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基を表し、Aは酸素原子又はNRを表す。また、前記Rは水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜14のアリール基を表す。
【0020】
ここで、R及びRが表すハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜6のハロアルキル基としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3−ブロモプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル基、3−ブロモ−2−メチルプロピル基、4−ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
また、R、R及びそれらが結合する炭素原子とが一緒になって表すヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基としては、シクロプロぺン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、テトラヒドロピラジン環、ジヒドロジオキシン環、ジヒドロジチイン環、ジヒドロオキサジン環、ジヒドロチアジン環、ジヒドロオキサチイン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2.2.2]オクテン環等が挙げられる。
【0021】
が表す炭素原子数6〜14のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ピレニル基等が挙げられる。
なお、Rが表す炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記R及びRで例示した基と同様のものが挙げられる。
【0022】
このようなモノマーCとしては、例えば、無水マレイン酸、シトラコン酸無水物、2,3−ジメチルマレイン酸無水物、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−tert−ブチルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−(4−アミノフェニル)マレイミド、N−(1−ピレニル)マレイミド等が挙げられる。これらの中でも無水マレイン酸が好ましい。
【0023】
本発明において、モノマーCの使用量は、反応性や表面改質効果の観点から、前記モノマーAの使用モル数に対して5〜300モル%、好ましくは10〜200モル%、より好ましくは20〜100モル%の量である。
【0024】
[重合開始剤D]
本発明における重合開始剤Dは、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)〜(5)に示す化合物を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等;
(2)アゾアミド化合物:
2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等;
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等;
(5)その他:
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボン酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(トリフルオロメチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロブチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル)等。
【0025】
上記アゾ系重合開始剤の中でも、表面改質の観点から、2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)又は2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0026】
本発明において、重合開始剤Dの使用量は、前記モノマーAの使用モル数(複数種を併用する場合にはその合計モル数)に対して5〜200モル%、好ましくは20〜200モル%、より好ましくは20〜100モル%の量である。
【0027】
[その他のモノマーE]
本発明におけるその他のモノマーEとしては、汎用で使用される公知のラジカル重合性モノマーであり、上記モノマーA〜Cに該当しないモノマーを使用することができる。これらのモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものでない。これらのモノマーは一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
本発明において、その他のモノマーの総使用量は、反応性や表面改質効果の観点から、前記モノマーAの使用モル数に対して5〜300モル%、好ましくは10〜200モル%、より好ましくは20〜100モル%の量である。
【0028】
<含フッ素高分岐ポリマーの製造方法>
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、前述のモノマーA、モノマーB及びモノマーCを、該モノマーAに対して所定量の重合開始剤Dの存在下で重合させて得られる。
【0029】
前述のモノマーA、モノマーB及びモノマーCの重合開始剤Dの存在下での重合方法としては、公知の方法、例えば、溶液重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
【0030】
このとき用いられる有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン、ミネラルスピリット、シクロヘキサン等の脂肪族又は脂環式炭化水素類;塩化メチル、臭化メチル、ヨウ化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、オルトジクロロベンゼン等のハロゲン化物類;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシブチルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジ−n−ブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等のアミド類;ジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシド類などが挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよく、また二種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
【0031】
これらのうち好ましいのは、芳香族炭化水素類、ハロゲン化物類、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルコール類、アミド類等であり、特に好ましいものはベンゼン、トルエン、キシレン、オルトジクロロベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等である。
【0032】
前記重合反応を有機溶媒の存在下で行う場合、前記モノマーAの1質量部に対する前記有機溶媒の質量は、通常5〜120質量部であり、好ましくは10〜110質量部である。
【0033】
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の観点から、好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃であり、80〜130℃がより好ましい。
反応時間は、反応温度や、モノマーA、モノマーB、モノマーC及び重合開始剤Dの種類及び割合、重合溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30〜720分、より好ましくは40〜540分である。
重合反応の終了後、得られた含フッ素高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行なう。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
【0034】
本発明の含フッ素高分岐ポリマーのゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量(Mw)は、1,000〜400,000、好ましくは2,000〜200,000である。
【0035】
<ワニス及び薄膜>
本発明はまた、上記含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニスに関する。
上記ワニスの形態において使用する有機溶媒としては、含フッ素高分岐ポリマーを溶解するものであればよく、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;テトラヒドロフラン(THF)、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ヘキサフルオロプロピル=ヘキサフルオロ−2−ペンチル=エーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよく、また二種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
【0036】
また前記有機溶媒に含フッ素高分岐ポリマーを溶解又は分散させる濃度は任意であるが、含フッ素高分岐ポリマーと有機溶媒の総質量(合計質量)に対して、含フッ素高分岐ポリマーの濃度は0.001〜90質量%であり、好ましくは0.002〜80質量%であり、より好ましくは0.005〜70質量%である。
【0037】
そして、前記ワニスを基材上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷など)、スプレーコート法、カーテンコート法等によって塗布することで塗膜を得ることができる。得られた塗膜は、必要に応じてホットプレート、オーブン等で乾燥して成膜してもよい。
これらの塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて前記ワニスを濾過した後、塗布に供することが好ましい。
【0038】
また前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)などのポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合物)、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合物)、ノルボルネン系樹脂等)、FRP、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
【0039】
形成された含フッ素高分岐ポリマーからなる薄膜の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜50μm、好ましくは0.05〜20μmである。
【0040】
<硬化性組成物>
本発明はまた、(a)前記含フッ素高分岐ポリマー、(b)不飽和ポリエステル樹脂及び(c)熱重合開始剤を含有する硬化性組成物に関する。
【0041】
[(b)不飽和ポリエステル樹脂]
本発明の硬化性組成物に使用される不飽和ポリエステル樹脂としては、汎用で使用される公知のものを使用することができる。
このような不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系ポリエステル、イソフタル酸系不飽和ポリエステル、テレフタル酸系不飽和ポリエステル、ヘット酸系不飽和ポリエステル、ビスフェノール系不飽和ポリエステル、ビニルエステル系不飽和ポリエステル、ノボラック系不飽和ポリエステル、及びこれらの変性物等が挙げられる。これらの不飽和ポリエステル樹脂は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
【0042】
[(c)熱重合開始剤]
本発明の硬化性組成物に使用される熱重合開始剤としては、不飽和ポリエステル樹脂の硬化に使用される公知のものを使用することができる。このような熱重合開始剤(硬化剤)としては、例えば、tert−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類;メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ジアセチルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;tert−ブチル=パーオキシアセテート、tert−ブチル=パーオキシイソブチレート、tert−ブチル=パーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル=パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミル=パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチル=パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミル=パーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチル=パーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類;ビス(2−エチルヘキシル)=パーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)=パーオキシジカーボネート、1,6−ビス(tert−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、O−イソプロピル=OO−tert−ブチル=モノパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート類などの有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。これらの熱重合開始剤は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬化性の観点から、有機過酸化物で分解温度が低いものが好ましく、具体的には、メチルエチルケトンパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシドを用いるのが好ましい。
【0043】
本発明の硬化性組成物において、(a)含フッ素高分岐ポリマーの含有量は、(b)不飽和ポリエステル樹脂の総質量100質量部に対して、0.01〜20質量部であり、より好ましくは、0.1〜10質量部である。
また、(c)熱重合開始剤の含有量は、(b)不飽和ポリエステル樹脂の総質量100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、より好ましくは、0.1〜5質量部である。
【0044】
[その他添加剤]
さらに、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、低収縮剤、内部離型剤、増粘剤、着色剤、強化剤、抗菌剤、防カビ剤、硬化触媒、硬化促進剤、加水分解抑制剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。また必要に応じて有機溶媒を混合してもよい。
【0045】
<硬化物及び硬化膜>
本発明の硬化性組成物は、例えば所定の型に充填した後、熱重合(硬化)させることにより硬化物を得ることができる。また、ガラス繊維等の強化材を含むFRP成形体を得る場合には、常用の成形法、例えばハンドレイアップ(HL)法、SMC(Sheet Molding Compound)法、BMC(Bulk Molding Compound)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、スプレーアップ法等を任意に用いることができる。
【0046】
また本発明の硬化性組成物は、例えば基材表面の一部又は全部に塗布した後、熱重合(硬化)させることにより膜状の硬化物、すなわち硬化膜が得られる。
この場合の前記基材としては、前述の<ワニス及び薄膜>で例示した基材と同様のもの挙げられる。
また、前記基材上への塗布方法としては、前述の<ワニス及び薄膜>で例示した塗布方法と同様のものが挙げられる。これらの塗布方法の中でも、スピンコート法又はスプレーコート法を用いることが望ましい。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて前記硬化性組成物を濾過した後、塗布に供することが好ましい。
なお塗布に際し、必要に応じて該硬化性組成物に有機溶媒を添加してワニスの形態としてもよい。この場合の前記有機溶媒としては、前述の<ワニス及び薄膜>で例示した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
形成された硬化膜の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜5000μm、好ましくは0.1〜500μmである。
なお、型を使用して成形する場合や、基材上に成形後基材から外す場合等には、離型及び表面改質の観点から、使用する型や基材に表面エネルギーの低い剥離剤を塗布しておくことが好ましい。
【0047】
前記熱重合(硬化)における加熱条件としては、40〜300℃、0.3〜600分間の範囲の中から適宜選択された温度及び時間が採用される。また本発明の硬化性組成物は、汎用の不飽和ポリエステル樹脂と同様に、前記硬化剤(熱重合開始剤)の含有量及び加熱条件を調節することで、ゲル状の成形物、所謂半硬化物とすることができる。この半硬化物は離型や加工が容易なため、必要に応じ半硬化物とし、種々加工をした後さらに加熱することで硬化物とすることができる。
【0048】
本発明の硬化物は、前述の通り、硬化物内部(深部)と比べて、硬化物表面(界面)に前記含フッ素高分岐ポリマーが多く存在した状態にある。このため、硬化物作製時に使用する混合・成形機械等の各種機械や金型への離型性、フィルム等の他の樹脂成形品に対する剥離性等、さらには撥水撥油性、防汚性に優れた硬化物とすることができる。
【実施例】
【0049】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
【0050】
(1)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC K−804L、GPC K−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)13C NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl
基準ピーク:CDCl(77.0ppm)
(3)F定量分析(イオンクロマトグラフィー)
装置:日本ダイオネクス(株)製 ICS−1500
溶媒:(2.7mmol/L炭酸ソーダ、0.3mmol/L重曹)水溶液
検出器:電気伝導度
(4)ガラス転移温度(Tg)測定
装置:NETZSCH社製 Photo−DSC 204 F1 Phoenix(登録商標)
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:5℃/分(25〜200℃)
(5)5%重量減少温度(Td5%)測定
装置:ブルカー・エイエックスエス(株)製 示差熱・熱重量同時測定装置 TG−DTA2000SA
測定条件:空気雰囲気下
昇温速度:10℃/分(25〜400℃)
(6)濁度(HAZE)測定
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
(7)接触角測定
装置:協和界面化学(株)製 DropMaster DM−501
測定温度:25℃
(8)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 MH−180CS、MH−3CS
【0051】
また、略記号は以下の意味を表す。
C6FA:2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート[ユニマテック(株)製 FAAC−6]
DVB:ジビニルベンゼン[新日鉄住金化学(株)製 DVB−960]
MA:無水マレイン酸[純正化学(株)製]
St:スチレン[東京化成工業(株)製]
MAIB:2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)[大塚化学(株)製 MAIB]
UP−1:不飽和ポリエステル樹脂[東罐マテリアル・テクノロジー(株)製 人造大理石用クリアゲルコート 3Z−0006PI]
TI−1:メチルエチルケトンパーオキシド[化薬アクゾ(株)製 カヤメック(登録商標)M]
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
THF:テトラヒドロフラン
【0052】
[実施例1]酸無水物基を有する高分岐ポリマー1の合成
200mLの反応フラスコに、MIBK78gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてDVB2.6g(20mmol)、モノマーBとしてC6FA4.2g(10mmol)、モノマーCとしてMA1.0g(10mmol)、開始剤DとしてMAIB4.6g(20mmol)、及びMIBK78gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、DVB、C6FA、MA及びMAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK135gを留去後、氷浴にて冷却したヘキサン195gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー1)8.1gを得た。
得られた高分岐ポリマー1の13C NMRスペクトルを図1に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー1の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAユニット[C]:MAIBユニット[D]=1.0:0.4:0.5:0.6であった。また、該ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,400、分散度(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))は2.2であった。
【0053】
【化4】
式中、黒点は結合端を表す。
【0054】
[実施例2]酸無水物基を有する高分岐ポリマー2の合成
モノマーA、モノマーB、モノマーCとともに、モノマーEとしてSt1.0g(10mmol)を添加した以外は実施例1と同様に操作し、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー2)7.7gを得た。
得られた高分岐ポリマー2の13C NMRスペクトルを図2に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー2の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAユニット[C]:Stユニット[E]:MAIBユニット[D]=1.0:0.2:0.5:0.2:0.5であった。また、該ポリマーのGPCによるポリ換算で測定される重量平均分子量Mwは9,000、分散度(Mw/Mn)は2.1であった。
【0055】
【化5】
式中、黒点は結合端を表す。
【0056】
[実施例3]酸無水物基を有する高分岐ポリマー3の合成
C6FAの使用量を5.0g(12mmol)に、MAIBの使用量を5.5g(24mmol)にそれぞれ変更した以外は実施例2と同様に操作し、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー3)5.4gを得た。
得られた高分岐ポリマー3の13C NMRスペクトルを図3に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー3の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAユニット[C]:Stユニット[E]:MAIBユニット[D]=1.0:0.3:0.6:0.4:0.6であった。また、該ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは9,200、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
【0057】
【化6】
式中、黒点は結合端を表す。
【0058】
[比較合成例1]酸無水物基を有さない高分岐ポリマー4の合成
2Lの反応フラスコに、MIBK521gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の1Lの反応フラスコに、モノマーAとしてDVB26g(0.2mol)、モノマーBとしてC6FA42g(0.1mol)、開始剤DとしてMAIB55g(0.24mol)、及びMIBK521gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の2L反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、DVB、C6FA及びMAIBが仕込まれた前記1Lの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液をヘキサン1300gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー4)44gを得た。
得られた高分岐ポリマー4の13C NMRスペクトルを図4に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー4の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAIBユニット[D]=1.0:0.4:0.9であった。また、該ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,800、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
【0059】
【化7】
式中、黒点は結合端を表す。
【0060】
実施例1〜3で得られた高分岐ポリマー1〜3、及び比較合成例1で得られた高分岐ポリマー4の、重量平均分子量、分散度、13C NMRスペクトルから求めたモノマーB導入量、F定量分析から求めたF原子含有量、ガラス転移温度(Tg)及び5%重量減少温度(Td5%)を表1に示す。
【0061】
【表1】
【0062】
[実施例4]高分岐ポリマー1〜3の溶媒溶解性
実施例1〜3で得られた高分岐ポリマー1〜3について、表2に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。試験は、濃度が10質量%となるように高分岐ポリマーをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で1分間撹拌後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表2に併せて示す。
[評価基準]
○:完全に溶解し透明な溶液となっている
×:溶け残りがある
【0063】
【表2】
【0064】
[実施例5〜8]不飽和ポリエステル樹脂硬化膜の表面改質
表3に記載の種類、添加量の表面改質剤を、不飽和ポリエステル樹脂であるUP−1 100質量部に加え、およそ40℃で加熱撹拌して均一に混合した。この混合物を室温(およそ25℃)まで冷却した後、硬化剤TI−1 0.1質量部を添加し硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物を、剥離コート処理した50×50mmのガラス基板上に置いた5mm四方×1mm厚のシリコーン製型枠中に流し込んだ。さらにこの上に別の50×50mmのガラス基板を覆い被せ封止した。この型枠中の硬化性組成物を、60℃のホットプレートで5時間加熱することで硬化させた。この硬化物を基板及び型枠から取り外し、硬化膜を得た。
得られた硬化膜の濁度(HAZE)を測定し、透明性を評価した。また、得られた硬化膜の下面(剥離コート処理したガラス基板に接していた面)の水及びオレイン酸の接触角を測定し、撥水撥液性を評価した。結果を表3に併せて示す。
【0065】
[比較例1]表面改質剤を添加しない不飽和ポリエステル樹脂硬化膜の表面特性
表面改質剤を添加しない以外は実施例5と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0066】
[比較例2]酸無水物基を有さない高分岐ポリマーによる不飽和ポリエステル樹脂硬化膜の表面改質
表面改質剤として、比較合成例1で得られた高分岐ポリマー4を使用した以外は実施例5と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
【0067】
【表3】
【0068】
表3に示したように、酸無水物基を有する含フッ素高分岐ポリマーを添加した不飽和ポリエステル樹脂硬化膜(実施例5〜8)は、HAZEが40〜59、水及びオレイン酸の接触角がそれぞれ88.4〜106.2度、43.3〜57.4度であり、表面改質剤を添加しない硬化膜(比較例1)と比較して、同等以上のHAZEを維持しながら、格段の撥水撥液性を有していた。一方、酸無水物基を有さない含フッ素高分岐ポリマーを添加した不飽和ポリエステル樹脂硬化膜(比較例2)は、水及びオレイン酸の接触角がそれぞれ100.9度、34.0度となり撥水撥液性は向上したが、HAZEが84であり透明性が大幅に低下した。
以上の結果から、本発明の酸無水物基を有する含フッ素高分岐ポリマーを不飽和ポリエステル樹脂に添加することにより、該樹脂から得られる硬化膜の透明性を損うことなく、該硬化膜に撥水撥液性を付与させることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、それを含む不飽和ポリエステル樹脂組成物が、人造大理石等に撥水撥油性を付与するゲルコート層を形成する材料として好適に利用することができる。
図1
図2
図3
図4