特許第6331028号(P6331028)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6331028液晶配向処理剤、液晶配向膜および液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331028
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】液晶配向処理剤、液晶配向膜および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20180521BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   G02F1/1337 525
   C08G73/10
【請求項の数】11
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2014-549891(P2014-549891)
(86)(22)【出願日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】JP2013082053
(87)【国際公開番号】WO2014084309
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年11月22日
(31)【優先権主張番号】特願2012-261432(P2012-261432)
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】片山 雅章
(72)【発明者】
【氏名】三木 徳俊
(72)【発明者】
【氏名】巴 幸司
(72)【発明者】
【氏名】菊池 奈穂
(72)【発明者】
【氏名】保坂 和義
【審査官】 廣田 かおり
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−109438(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/008464(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/070819(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/126555(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/117759(WO,A1)
【文献】 特開昭63−151928(JP,A)
【文献】 特開平06−018899(JP,A)
【文献】 特開2006−030961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分と、(B)成分と、(C)成分と、(D)成分および(E)成分から選択される少なくとも1種と、を含有する液晶配向処理剤。
(A)成分:プロピレングリコールモノブチルエーテル。
(B)成分:下記の式[1]で示される構造を有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体。
【化1】
(式[1]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示し、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基、または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、nは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す)。
(C)成分:N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンまたはγ−ブチロラクトンの溶媒。
(D)成分:下記の式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒から選ばれる溶媒。
【化2】
(式[D−1]中、Dは炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−2]中、Dは炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−3]中、Dは炭素数1〜4のアルキル基を示す)。
(E)成分:1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールまたはエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる溶媒。
【請求項2】
前記(B)成分の重合体における前記ジアミン成分に、下記の式[1a]で示される構造のジアミン化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の液晶配向処理剤。
【化3】
(式[1a]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示し、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基、または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、nは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示し、mは1〜4の整数を示す)。
【請求項3】
前記(B)成分の重合体におけるジアミン成分に、下記の式[2]で示される構造のジアミン化合物を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の液晶配向処理剤。
【化4】
(式[2]中、Xは下記の式[2a]、式[2b]、式[2c]または式[2d]から選ばれる構造の置換基を示し、mは1〜4の整数を示す)。
【化5】
(式[2a]中、aは0〜4の整数を示し、式[2b]中、bは0〜4の整数を示し、式[2c]中、XおよびXはそれぞれ独立して炭素数1〜12の炭化水素基を示し、式[2d]中、Xは炭素数1〜5のアルキル基を示す)。
【請求項4】
前記(B)成分の重合体におけるテトラカルボン酸成分に、下記の式[3]で示される化合物を含むことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤。
【化6】
(式[3]中、Zは下記の式[3a]〜式[3j]から選ばれる構造の基である)。
【化7】
(式[3a]中、Z〜Zは水素原子、メチル基、塩素原子またはベンゼン環を示し、それぞれ同じであっても異なってもよく、式[3g]中、ZおよびZは水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい)。
【請求項5】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜。
【請求項6】
請求項1〜請求項のいずれか一項に記載の液晶配向処理剤を用いて、インクジェット法にて得られる液晶配向膜。
【請求項7】
請求項または請求項に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項8】
電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の少なくとも一方の基板と液晶層との間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられることを特徴とする請求項または請求項に記載の液晶配向膜。
【請求項9】
請求項に記載の液晶配向膜を有することを特徴とする液晶表示素子。
【請求項10】
電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の少なくとも一方の基板と液晶層との間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性基を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられることを特徴とする請求項または請求項に記載の液晶配向膜。
【請求項11】
請求項10に記載の液晶配向膜を有することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向膜を作製する際に用いる液晶配向処理剤およびそれを用いた液晶表示素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子が、大画面の液晶テレビや高精細なモバイル用途(デジタルカメラや携帯電話の表示部分)に広く実用化されていることに伴い、従来に比べて使用される基板の大型化、基板段差の凹凸が大きくなってきている。そのような状況においても、表示特性の点から大型基板や段差に対して、均一に液晶配向膜が塗膜されることが求められてきた。この液晶配向膜の作製の工程において、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸や溶媒可溶性ポリイミド(樹脂ともいう)の液晶配向処理剤(塗布溶液ともいう)を基板に塗布する場合、工業的にはフレキソ印刷法やインクジェット塗布法などで行うことが一般的である。その際、塗布溶液の溶媒には、樹脂の溶解性に優れる溶媒(良溶媒ともいう)であるN−メチル−2−ピロリドンやγ−ブチロラクトンなどに加えて、液晶配向膜の塗膜均一性を高めるために、樹脂の溶解性が低い溶媒(貧溶媒ともいう)であるブチルセロソルブなどが混合されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−037324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
側鎖を有するジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸や溶媒可溶性ポリイミドを用いた液晶配向処理剤は、液晶配向膜の塗膜均一性が低下する傾向にある。特に、均一な塗膜性が得られない場合、すなわち、はじきやピンホールが発生した場合、液晶表示素子にした際に、その部分が表示欠陥となる。そのため、基板への塗布溶液の濡れ拡がり性が高い貧溶媒の導入量を多くする必要がある。しかしながら、貧溶媒は、ポリアミド酸やポリイミドを溶解させる能力に劣るため、大量に混合すると樹脂の析出が起こる問題がある。
【0005】
また、近年、スマートフォンやタブレット型パソコンなどのモバイル用途向けに、液晶表示素子が用いられている。これらの用途では、できるだけ多くの表示面を確保するため、液晶表示素子の基板間を接着させるために用いるシール剤が、液晶配向膜の端部に近接した位置に存在する。そのため、液晶配向膜の端部の塗膜性が低下する場合、すなわち、液晶配向膜の端部が直線では無い、あるいは、その端部が盛り上がっている状態である場合、シール剤の基板間の接着効果が低下し、液晶表示素子の信頼性を低下させてしまう。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、側鎖を有するジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸や溶媒可溶性ポリイミドを用いた液晶配向処理剤であっても、基板への塗布溶液の濡れ拡がり性が高く均一な塗膜性が得られ、さらに、液晶配向膜の端部の塗膜性にも優れる液晶配向膜を提供することにある。
【0007】
また、本発明は、上述の液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、上述の液晶配向膜を提供することができる液晶配向処理剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、特定構造の溶媒および特定構造の側鎖を有する重合体を用いた液晶配向処理剤が、上記の目的を達成するために極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の要旨を有するものである。
(1)下記の(A)成分および(B)成分を含有する液晶配向処理剤。
(A)成分:プロピレングリコールモノブチルエーテル。
(B)成分:下記の式[1]で示される構造を有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体。
【0010】
【化1】
【0011】
(式[1]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示し、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基、または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、nは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す)。
【0012】
(2)前記(B)成分の重合体における前記ジアミン成分に、下記の式[1a]で示される構造のジアミン化合物を含むことを特徴とする上記(1)に記載の液晶配向処理剤。
【0013】
【化2】
【0014】
(式[1a]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示し、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基、または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、nは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示し、mは1〜4の整数を示す)。
【0015】
(3)前記(B)成分の重合体におけるジアミン成分に、下記の式[2]で示される構造のジアミン化合物を含むことを特徴とする上記(1)または上記(2)に記載の液晶配向処理剤。
【0016】
【化3】
【0017】
(式[2]中、Xは下記の式[2a]、式[2b]、式[2c]または式[2d]から選ばれる構造の置換基を示し、mは1〜4の整数を示す)。
【0018】
【化4】
【0019】
(式[2a]中、aは0〜4の整数を示し、式[2b]中、bは0〜4の整数を示し、式[2c]中、XおよびXはそれぞれ独立して炭素数1〜12の炭化水素基を示し、式[2d]中、Xは炭素数1〜5のアルキル基を示す)。
【0020】
(4)前記(B)成分の重合体におけるテトラカルボン酸成分に、下記の式[3]で示される化合物を含むことを特徴とする上記(1)〜上記(3)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【0021】
【化5】
【0022】
(式[3]中、Zは下記の式[3a]〜式[3j]から選ばれる構造の基である)。
【0023】
【化6】
【0024】
(式[3a]中、Z〜Zは水素原子、メチル基、塩素原子またはベンゼン環を示し、それぞれ同じであっても異なってもよく、式[3g]中、ZおよびZは水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい)。
【0025】
(5)(C)成分として、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンまたはγ−ブチロラクトンの溶媒を含有する上記(1)〜上記(4)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【0026】
(6)(D)成分として、下記の式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒から選ばれる溶媒を含有する上記(1)〜上記(5)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【0027】
【化7】
【0028】
(式[D−1]中、Dは炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−2]中、Dは炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−3]中、Dは炭素数1〜4のアルキル基を示す)。
【0029】
(7)(E)成分として、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオールまたはエチレングリコールモノブチルエーテルから選ばれる溶媒を含有する上記(1)〜上記(6)のいずれかに記載の液晶配向処理剤。
【0030】
(8)上記(1)〜上記(7)のいずれかに記載の液晶配向処理剤から得られる液晶配向膜。
【0031】
(9)上記(1)〜上記(7)のいずれかに記載の液晶配向処理剤を用いて、インクジェット法にて得られる液晶配向膜。
【0032】
(10)上記(8)または上記(9)に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【0033】
(11)電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の少なくとも一方の基板と液晶層との間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられることを特徴とする上記(8)または上記(9)に記載の液晶配向膜。
【0034】
(12)上記(11)に記載の液晶配向膜を有することを特徴とする液晶表示素子。
【0035】
(13)電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の少なくとも一方の基板と液晶層との間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性基を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に用いられることを特徴とする上記(8)または上記(9)に記載の液晶配向膜。
【0036】
(14)上記(13)に記載の液晶配向膜を有することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の効果】
【0037】
本発明の特定構造の溶媒および特定構造の側鎖を有する重合体を含む液晶配向処理剤を用いることによって、基板への塗布溶液の濡れ拡がり性が高く、均一な塗膜性を得られ、さらには、液晶配向膜の端部の均一な塗膜性にも優れる液晶配向膜を提供することができる。特に、側鎖を有するジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸や溶媒可溶性ポリイミドを用いた液晶配向処理剤であっても、これら特性に優れる液晶配向膜を提供することができる。加えて、上記の液晶配向膜を有する液晶表示素子、上記の液晶配向膜を提供することのできる液晶配向処理剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】液晶配向膜の端部の直線性評価の基準を表すための図である。
図2】液晶配向膜の端部の盛り上がり評価の基準を表すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に、本発明について詳細に説明する。
本発明は、下記の(A)成分および(B)成分を含有する液晶配向処理剤、該液晶配向処理剤を用いて得られる液晶配向膜、さらには、該液晶配向膜を有する液晶表示素子である。
(A)成分:プロピレングリコールモノブチルエーテル(特定溶媒ともいう)。
(B)成分:下記の式[1]で示される構造(特定側鎖構造ともいう)を有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体(特定重合体ともいう)。
【0040】
【化8】
【0041】
(式[1]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示し、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示し、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基、または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基を示し、前記環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよく、nは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す)。
【0042】
本発明の特定溶媒は、液晶配向膜の塗膜性を高めるために用いられる貧溶媒として用いることができる。本発明の特定溶媒は、通常、貧溶媒に用いられているエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブあるいはBCSともいう)を用いた場合に比べて、基板に対する塗布溶液の濡れ拡がり性が高いため、はじきやピンホールが発生しにくい塗膜性に優れた液晶配向膜を得ることができる。さらに、塗布溶液の濡れ拡がり性が高くなることで、液晶配向膜の端部の直線性が高くなり、端部の盛り上がりを抑制することができる。
【0043】
本発明の(B)成分は、ポリイミド前駆体またはポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体である。なかでも、本発明の組成物を液晶配向剤として液晶配向膜に用いる場合には、前記式[1]で示される特定側鎖構造を有する特定重合体を用いることが好ましい。
【0044】
本発明の特定側鎖構造は、側鎖部分にベンゼン環、シクロヘキシル環または複素環、または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基を有する。これらベンゼン環、シクロヘキシル環、複素環または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基は、従来技術の長鎖アルキル基に比べて、剛直な構造を示す。これにより、側鎖部位の熱や紫外線に対する安定性が向上し、熱や光に対してもプレチルト角が安定な液晶配向膜を得ることができる。
【0045】
以上の点から、本発明の特定溶媒と特定重合体を含有する液晶配向処理剤は、塗膜性に優れた液晶配向膜を形成することができる。また、本発明の特定溶媒と特定重合体を含有する液晶配向処理剤は、長時間高温および光の照射に曝されても、プレチルト角が変化しない液晶配向膜となる。さらに、この液晶配向膜を用いることで、表示特性に優れた信頼性の高い液晶表示素子を提供することができる。
【0046】
<特定溶媒>
本発明の特定溶媒は、プロピレングリコールモノブチルエーテルである。
【0047】
本発明の特定溶媒は、上述した基板への塗布溶液の濡れ拡がり性を高める効果を高めるため、液晶配向処理剤に含まれる有機溶媒全体の5〜70質量%であることが好ましい。なかでも、10〜70質量%が好ましい。より好ましいのは、10〜60質量%である。
【0048】
液晶配向処理剤中の有機溶媒の全体の中で、本発明の特定溶媒の量が多いほど、本発明の効果、すなわち、基板への塗布溶液の濡れ拡がり性が高くなり、塗膜均一性に優れた液晶配向膜を得ることができる。
【0049】
<特定重合体>
本発明の(B)成分である特定重合体は、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドから選ばれる重合体である。
【0050】
ポリイミド前駆体は、下記の式[A]で示される構造である。
【0051】
【化9】
【0052】
(式[A]中、Rは4価の有機基であり、Rはカルボキシル基を有する2価の有機基であり、AおよびAは水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよく、AおよびAは水素原子、炭素数1〜5のアルキル基またはアセチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよく、nは正の整数を示す)。
【0053】
前記ジアミン成分としては、分子内に1級または2級のアミノ基を2個有するジアミン化合物であり、テトラカルボン酸成分としては、テトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物またはジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0054】
本発明の特定重合体は、下記の式[B]で示されるテトラカルボン酸二無水物と下記の式[C]で示されるジアミン化合物とを原料とすることで比較的簡便に得られるという理由から、下記の式[D]で示される繰り返し単位の構造式からなるポリアミド酸または該ポリアミド酸をイミド化させたポリイミドが好ましい。
【0055】
【化10】
【0056】
(式[B]および式[C]中、RおよびRは式[A]で定義したものと同意義である)。
【0057】
【化11】
【0058】
(式[D]中、RおよびRは式[A]で定義したものと同意義である)。
【0059】
また、通常の合成手法で、上記で得られた式[D]の重合体に、式[A]で示されるAおよびAの炭素数1〜8のアルキル基、および式[A]で示されるAおよびAの炭素数1〜5のアルキル基またはアセチル基を導入することもできる。
【0060】
<特定側鎖構造>
本発明の特定重合体は、下記の式[1]で示される特定側鎖構造を有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られるポリイミド前駆体またはポリイミドから選ばれる少なくとも1種の重合体である。
【0061】
【化12】
【0062】
式[1]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−である。
【0063】
式[1]中、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示す。なかでも、単結合または−(CH−(bは1〜10の整数である)が好ましい。
【0064】
式[1]中、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示す。なかでも、合成の容易さの点から、単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH−(cは1〜10の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−である。
【0065】
式[1]中、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基であり、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよい。さらに、Yは、炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する有機基から選ばれる2価の有機基であってもよい。なかでも、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基が好ましい。
【0066】
式[1]中、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよい。なかでも、ベンゼン環またはシクロへキサン環が好ましい。
【0067】
式[1]中、nは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3が好ましい。より好ましいのは、0〜2である。
【0068】
式[1]中、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す。なかでも、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のアルコキシル基である。特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基または炭素数1〜9のアルコキシル基である。
【0069】
<特定側鎖型ジアミン化合物>
本発明の特定重合体に、特定側鎖構造を導入する方法としては、特定側鎖構造を有するジアミン化合物を原料の一部に用いることが好ましい。特に下記の式[1a]で示されるジアミン化合物(特定側鎖型ジアミン化合物ともいう)を用いることが好ましい。
【0070】
【化13】
【0071】
式[1a]中、Yは単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、単結合、−(CH−(aは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH−(aは1〜10の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−である。
【0072】
式[1a]中、Yは単結合または−(CH−(bは1〜15の整数である)を示す。なかでも、単結合または−(CH−(bは1〜10の整数である)が好ましい。
【0073】
式[1a]中、Yは単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−、−COO−または−OCO−を示す。なかでも、合成の容易さの点から、単結合、−(CH−(cは1〜15の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−が好ましい。より好ましいのは、単結合、−(CH−(cは1〜10の整数である)、−O−、−CHO−または−COO−である。
【0074】
式[1a]中、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基であり、これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよい。さらに、Yは、炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する有機基から選ばれる2価の有機基であってもよい。なかでも、合成の容易さの点から、ベンゼン環、シクロへキサン環または炭素数12〜25であってステロイド骨格を有する2価の有機基が好ましい。
【0075】
式[1a]中、Yはベンゼン環、シクロヘキサン環または複素環から選ばれる2価の環状基を示し、これらの環状基上の任意の水素原子が、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜3のフッ素含有アルコキシル基またはフッ素原子で置換されていてもよい。なかでも、ベンゼン環またはシクロへキサン環が好ましい。
【0076】
式[1a]中、nは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0〜3が好ましい。より好ましいのは、0〜2である。
【0077】
式[1a]中、Yは炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜18のフッ素含有アルコキシル基を示す。なかでも、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜10のフッ素含有アルキル基、炭素数1〜18のアルコキシル基または炭素数1〜10のフッ素含有アルコキシル基が好ましい。より好ましくは、炭素数1〜12のアルキル基または炭素数1〜12のアルコキシル基である。特に好ましくは、炭素数1〜9のアルキル基または炭素数1〜9のアルコキシル基である。
【0078】
式[1a]におけるY、Y、Y、Y、Y、Yおよびnの好ましい組み合わせとしては、国際公開公報WO2011/132751(2011年10月27日公開)の13項〜34項の表6〜表47に掲載される(2−1)〜(2−629)と同じ組み合わせが挙げられる。なお、国際公開公報の各表では、本発明におけるY〜Yが、Y1〜Y6として示されているが、Y1〜Y6は、Y〜Yと読み替えるものとする。なかでも、(2−25)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)、(2−268)〜(2−315)、(2−364)〜(2−387)、(2−436)〜(2−483)または(2−603)〜(2−615)の組み合わせが好ましい。特に好ましい組み合わせは、(2−49)〜(2−96)、(2−145)〜(2−168)、(2−217)〜(2−240)または(2−603)〜(2−606)である。
【0079】
式[1a]中、mは1〜4の整数である。好ましくは、1の整数である。
【0080】
具体的には、例えば下記の式[1a−1]〜式[1a−31]で示される構造である。
【0081】
【化14】
【0082】
(式[1a−1]〜式[1a−3]中、Rは−O−、−OCH−、−CHO−、−COOCH−または−CHOCO−を示し、Rは炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルコキシル基、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状フッ素含有アルキル基またはフッ素含有アルコキシル基である)。
【0083】
【化15】
【0084】
(式[1a−4]〜式[1a−6]中、Rは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−または−CH−を示し、Rは炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルキル基、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状アルコキシル基、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状フッ素含有アルキル基またはフッ素含有アルコキシル基である)。
【0085】
【化16】
【0086】
(式[1a−7]および式[1a−8]中、Rは、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−COOCH−、−CHOCO−、−CHO−、−OCH−、−CH−、−O−または−NH−を示し、Rはフッ素基、シアノ基、トリフルオロメタン基、ニトロ基、アゾ基、ホルミル基、アセチル基、アセトキシ基または水酸基である)。
【0087】
【化17】
【0088】
(式[1a−9]および式[1a−10]中、Rは炭素数3〜12の直鎖状または分岐状アルキル基であり、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である)。
【0089】
【化18】
【0090】
(式[1a−11]および式[1a−12]中、Rは炭素数3〜12の直鎖状または分岐状アルキル基であり、1,4-シクロヘキシレンのシス−トランス異性は、それぞれトランス異性体である)。
【0091】
【化19】
【0092】
(式[1a−13]中、Aはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数3〜20の直鎖状または分岐状アルキル基であり、Aは1,4−シクロへキシレン基または1,4−フェニレン基であり、Aは酸素原子または−COO−*(ただし、「*」を付した結合手がAと結合する)であり、Aは酸素原子または−COO−*(ただし、「*」を付した結合手が(CH)a)と結合する)である。また、aは0または1の整数であり、aは2〜10の整数であり、aは0または1の整数である)。
【0093】
【化20】
【0094】
【化21】
【0095】
【化22】
【0096】
【化23】
【0097】
【化24】
【0098】
上記の式[1a−1]〜[1a−31]中、特に好ましい構造のジアミン化合物は、式[1a−1]〜式[1a−6]、式[1a−9]〜式[1a−13]または式[1a−22]〜式[1a−31]などである。
【0099】
上記の特定側鎖型ジアミン化合物は、本発明の特定重合体とした際の溶媒への溶解性、液晶配向膜とした際の液晶配向性、電圧保持率および蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0100】
本発明の(B)成分である特定系重合体を作製するためのジアミン成分としては、下記の式[2]で示されるジアミン化合物を用いることも好ましい。
【0101】
【化25】
【0102】
式[2]中、Xは下記の式[2a]、式[2b]、式[2c]または式[2d]から選ばれる構造の置換基を示す。
式[2]中、mは1〜4の整数を示す。
【0103】
【化26】
【0104】
式[2a]中、aは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0または1の整数が好ましい。
【0105】
式[2b]中、bは0〜4の整数を示す。なかでも、原料の入手性や合成の容易さの点から、0または1の整数が好ましい。
【0106】
式[2c]中、XおよびXはそれぞれ独立して炭素数1〜12の炭化水素基を示す。
【0107】
式[2d]中、Xは炭素数1〜5のアルキル基を示す。
【0108】
下記に、本発明の式[2]で示されるジアミン化合物の具体的な構造を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0109】
すなわち、式[2]で示されるジアミン化合物としては、2,4−ジメチル−m−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸の他に、下記の式[2−1]〜[2−6]で示される構造のジアミン化合物を挙げることができる。
【0110】
【化27】
【0111】
【化28】
【0112】
なかでも、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、2,4−ジアミノベンジルアルコール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、式[2−1]、式[2−2]または式[2−3]で示されるジアミン化合物が好ましい。特に好ましくは、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノベンジルアルコール、3,5−ジアミノ安息香酸、式[2−1]または式[2−2]で示されるジアミン化合物である。
【0113】
前記式[2]で示されるジアミン化合物は、本発明の特定重合体の溶媒への溶解性や塗布性、液晶配向膜にした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することができる。
【0114】
本発明の(B)成分である特定重合体を作製するためのジアミン成分としては、式[1a]および式[2]で示されるジアミン化合物以外のジアミン化合物(その他ジアミン化合物ともいう)をジアミン成分として用いることができる。下記に、その他ジアミン化合物の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0115】
例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジカルボキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジフルオロ−4,4’− ジアミノビフェニル、3,3’−トリフルオロメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジアミノビフェニル、2,3’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2’−ジアミノジフェニルメタン、2,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2’−ジアミノジフェニルエーテル、2,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−スルホニルジアニリン、3,3’−スルホニルジアニリン、ビス(4−アミノフェニル)シラン、ビス(3−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(4−アミノフェニル)シラン、ジメチル−ビス(3−アミノフェニル)シラン、4,4’−チオジアニリン、3,3’−チオジアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルアミン、3,4’−ジアミノジフェニルアミン、2,2’−ジアミノジフェニルアミン、2,3’−ジアミノジフェニルアミン、N−メチル(4,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,3’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(3,4’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,2’−ジアミノジフェニル)アミン、N−メチル(2,3’−ジアミノジフェニル)アミン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,4−ジアミノナフタレン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、2,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,5−ジアミノナフタレン、1,6−ジアミノナフタレン、1,7−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,7−ジアミノナフタレン、2,8−ジアミノナフタレン、1,2−ビス(4−アミノフェニル)エタン、1,2−ビス(3−アミノフェニル)エタン、1,3−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェニル)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェニル)ブタン、ビス(3,5−ジエチル−4−アミノフェニル)メタン、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェニル)ベンゼン、1,4−ビス(4-アミノベンジル)ベンゼン、1,3−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,4’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,4−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、3,3’−[1,3−フェニレンビス(メチレン)]ジアニリン、1,4−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(4−アミノフェニル)メタノン]、1,3−フェニレンビス[(3−アミノフェニル)メタノン]、1,4−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,4−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(4−アミノベンゾエート)、1,3−フェニレンビス(3−アミノベンゾエート)、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(3−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノフェニル)イソフタレート、ビス(3−アミノフェニル)イソフタレート、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(4−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,4−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−(1,3−フェニレン)ビス(3−アミノベンズアミド)、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’−ビス(4−アミノフェニル)イソフタルアミド、N,N’−ビス(3−アミノフェニル)イソフタルアミド、9,10−ビス(4−アミノフェニル)アントラセン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ジフェニルスルホン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノフェニル)プロパン、2,2’−ビス(3−アミノ−4−メチルフェニル)プロパン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ブタン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ブタン、1,5−ビス(4−アミノフェノキシ)ペンタン、1,5−ビス(3−アミノフェノキシ)ペンタン、1,6−ビス(4−アミノフェノキシ)へキサン、1,6−ビス(3−アミノフェノキシ)へキサン、1,7−ビス(4−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,7−(3−アミノフェノキシ)ヘプタン、1,8−ビス(4−アミノフェノキシ)オクタン、1,8−ビス(3−アミノフェノキシ)オクタン、1,9−ビス(4−アミノフェノキシ)ノナン、1,9−ビス(3−アミノフェノキシ)ノナン、1,10−ビス(4−アミノフェノキシ)デカン、1,10−ビス(3−アミノフェノキシ)デカン、1,11−ビス(4−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,11−ビス(3−アミノフェノキシ)ウンデカン、1,12−ビス(4−アミノフェノキシ)ドデカン、1,12−ビス(3−アミノフェノキシ)ドデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノへキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカンまたは1,12−ジアミノドデカンなどが挙げられる。
【0116】
また、その他ジアミン化合物として、ジアミン側鎖にアルキル基、フッ素含有アルキル基または複素環を有するものなどを挙げることもできる。
【0117】
具体的には、下記の式[DA1]〜[DA13]で示されるジアミン化合物を例示することができる。
【0118】
【化29】
【0119】
(式[DA1]〜式[DA4]中、Aは、炭素数1〜22のアルキル基またはフッ素含有アルキル基を示す)。
【0120】
【化30】
【0121】
【化31】
【0122】
【化32】
【0123】
(式[DA5]〜式[DA10]中、Aは−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CH−、−O−、−CO−または−NH−を示し、Aは炭素数1〜22の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または炭素数1〜22の直鎖状もしくは分岐状のフッ素含有アルキル基を示す)。
【0124】
【化33】
【0125】
(式[DA11]中、pは1〜10の整数を示す)。
【0126】
本発明の効果を損なわない限りにおいて、その他ジアミン化合物として、下記の式[DA12]〜式[DA13]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【0127】
【化34】
【0128】
【化35】
【0129】
(式[DA14]中、mは0〜3の整数を示し、式[DA17]中、nは1〜5の整数を示す)。
【0130】
また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記の式[DA18]〜式[DA21]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【0131】
【化36】
【0132】
(式[DA18]中、Aは単結合、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C(CF−、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−CON(CH)−または−N(CH)CO−を示し、mおよびmはそれぞれ0〜4の整数を示し、かつm+mは1〜4の整数を示し、式[DA19]中、mおよびmはそれぞれ1〜5の整数を示し、式[DA20]中、Aは炭素数1〜5の直鎖または分岐アルキル基を示し、mは1〜5の整数を示し、式[DA21]中、Aは単結合、−CH−、−C−、−C(CH−、−CF−、−C(CF−、−O−、−CO−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCH−、−COO−、−OCO−、−CON(CH)−または−N(CH)CO−を示し、mは1〜4の整数を示す)。
さらに、本発明の効果を損なわない限りにおいて、下記の式[DA22]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【0133】
【化37】
【0134】
(式[DA22]中、Aは−O−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−CHO−、−OCO−、−CON(CH)−または−N(CH)CO−より選ばれる2価の有機基であり、Aは単結合、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、非芳香族環式炭化水素基または芳香族炭化水素基であり、Aは単結合、−O−、−NH−、−N(CH)−、−CONH−、−NHCO−、−COO−、−OCO−、−CON(CH)−、−N(CH)CO−または−O(CH−(mは1〜5の整数である)より選ばれ、Aは窒素含有芳香族複素環であり、nは1〜4の整数である)。
【0135】
加えて、その他ジアミン化合物として、下記の式[DA23]および式[DA24]で示されるジアミン化合物を用いることもできる。
【0136】
【化38】
【0137】
上記のその他ジアミン化合物は、本発明の特定重合体の溶媒への溶解性や液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0138】
<テトラカルボン酸成分>
本発明の(B)成分である特定重合体を作製するためのテトラカルボン酸成分としては、下記の式[3]で示されるテトラカルボン酸二無水物やそのテトラカルボン酸誘導体であるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド化合物、テトラカルボン酸ジアルキルエステル化合物またはテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライド化合物(すべてを総称して特定テトラカルボン酸成分ともいう)を用いることが好ましい。
【0139】
【化39】
【0140】
式[3]中、Zは下記の式[3a]〜式[3j]から選ばれる構造の基である。
【0141】
【化40】
【0142】
式[3a]中、Z〜Zは水素原子、メチル基、塩素原子またはベンゼン環を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0143】
式[3g]中、ZおよびZは水素原子またはメチル基を示し、それぞれ同じであっても異なってもよい。
【0144】
本発明の特定テトラカルボン酸成分である式[3]に示される構造中、Zは、合成の容易さやポリマーを製造する際の重合反応性のし易さの点から、式[3a]、式[3c]、式[3d]、式[3e]、式[3f]または式[3g]で示される構造が好ましい。より好ましいのは、式[3a]、式[3e]、式[3f]または式[3g]で示される構造であり、特に好ましいのは、式[3e]、式[3f]または式[3g]である。
【0145】
本発明の特定テトラカルボン酸成分は、全テトラカルボン酸成分中の1モル%以上であることが好ましい。より好ましいのは、5モル%以上であり、特に好ましいのは、10モル%以上である。
【0146】
また、式[3e]、式[3f]または式[3g]の構造の特定テトラカルボン酸成分を用いる場合、その使用量は、テトラカルボン酸成分全体の20モル%以上とすることで、所望の効果が得られる。好ましくは、30モル%以上である。さらに、テトラカルボン酸成分のすべてを式[3e]、式[3f]または式[3g]の構造のテトラカルボン酸成分であってもよい。
【0147】
本発明の特定重合体には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、特定テトラカルボン酸成分以外のその他のテトラカルボン酸成分を用いることができる。
【0148】
その他のテトラカルボン酸成分としては、以下に示すテトラカルボン酸化合物、テトラカルボン酸二無水物、ジカルボン酸ジハライド化合物、ジカルボン酸ジアルキルエステル化合物またはジアルキルエステルジハライド化合物が挙げられる。
【0149】
すなわち、その他のテトラカルボン酸成分としては、ピロメリット酸、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸、1,2,5,6−アントラセンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジフェニルシラン、2,3,4,5−ピリジンテトラカルボン酸、2,6−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ピリジン、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸または1,3−ジフェニル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸が挙げられる。
【0150】
特定テトラカルボン酸成分およびその他のテトラカルボン酸成分は、本発明の特定重合体の溶媒への溶解性や液晶配向膜とした場合における液晶の配向性、電圧保持率、蓄積電荷などの特性に応じて、1種類または2種類以上を混合して使用することもできる。
【0151】
<特定重合体の製造方法>
本発明において、特定重合体を合成する方法は特に限定されない。通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを反応させて得られる。一般的には、テトラカルボン酸およびその誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種のテトラカルボン酸成分と、1種または複数種のジアミン化合物からなるジアミン成分とを反応させて、ポリアミド酸を得る。具体的には、テトラカルボン酸二無水物と1級または2級のジアミン化合物とを重縮合させてポリアミド酸を得る方法、テトラカルボン酸と1級または2級のジアミン化合物とを脱水重縮合反応させてポリアミド酸を得る方法またはジカルボン酸ジハライドと1級または2級のジアミン化合物とを重縮合させてポリアミド酸を得る方法が用いられる。
【0152】
ポリアミド酸アルキルエステルを得るには、カルボン酸基をジアルキルエステル化したテトラカルボン酸と1級または2級のジアミン化合物とを重縮合させる方法、カルボン酸基をジアルキルエステル化したジカルボン酸ジハライドと1級または2級のジアミン化合物とを重縮合させる方法またはポリアミド酸のカルボキシル基をエステルに変換する方法が用いられる。
【0153】
ポリイミドを得るには、前記のポリアミド酸またはポリアミド酸アルキルエステルを閉環させてポリイミドとする方法が用いられる。
【0154】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる有機溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0155】
例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンまたはγ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンまたは下記の式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒などが挙げられる。
【0156】
【化41】
【0157】
(式[D−1]中、Dは炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−2]中、Dは炭素数1〜3のアルキル基を示し、式[D−3]中、Dは炭素数1〜4のアルキル基を示す)。
【0158】
これらは単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0159】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを有機溶媒中で反応させる際には、ジアミン成分を有機溶媒に分散あるいは溶解させた溶液を攪拌させ、テトラカルボン酸成分をそのまま、または有機溶媒に分散あるいは溶解させて添加する方法、逆にテトラカルボン酸成分を有機溶媒に分散、あるいは溶解させた溶液にジアミン成分を添加する方法、ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを交互に添加する方法などが挙げられ、これらのいずれの方法を用いてもよい。また、ジアミン成分またはテトラカルボン酸成分を、それぞれ複数種用いて反応させる場合は、あらかじめ混合した状態で反応させてもよく、個別に順次反応させてもよく、さらに個別に反応させた低分子量体を混合反応させ重合体としてもよい。その際の重合温度は−20℃〜150℃の任意の温度を選択することができるが、好ましくは−5℃〜100℃の範囲である。また、反応は任意の濃度で行うことができるが、濃度が低すぎると高分子量の重合体を得ることが難しくなり、濃度が高すぎると反応液の粘性が高くなり過ぎて均一な攪拌が困難となる。そのため、好ましくは1〜50質量%、より好ましくは5〜30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、有機溶媒を追加することができる。
【0160】
ポリイミド前駆体の重合反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数の比は0.8〜1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成するポリイミド前駆体の分子量は大きくなる。
【0161】
本発明のポリイミドは前記のポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドであり、このポリイミドにおいては、アミド酸基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0162】
ポリイミド前駆体をイミド化させる方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化またはポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。
【0163】
ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100℃〜400℃、好ましくは120℃〜250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0164】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、−20〜250℃、好ましくは0〜180℃で攪拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5〜30モル倍、好ましくは2〜20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1〜50モル倍、好ましくは3〜30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミンまたはトリオクチルアミンなどを挙げることができ、中でもピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸または無水ピロメリット酸などを挙げることができ、中でも無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0165】
ポリイミド前駆体またはポリイミドの反応溶液から、生成したポリイミド前駆体またはポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、有機溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2〜10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類または炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種類以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0166】
本発明の特定重合体の分子量は、そこから得られる液晶配向膜の強度、膜形成時の作業性および塗膜性を考慮した場合、GPC(Gel Permeation Chromatography)法で測定した重量平均分子量で5,000〜1,000,000とするのが好ましく、より好ましくは、10,000〜150,000である。
【0167】
<液晶配向処理剤>
本発明の液晶配向処理剤は、液晶配向膜を形成するための塗布溶液であり、特定溶媒および特定重合体を含有する塗布溶液である。
【0168】
本発明の液晶配向処理剤における、すべての重合体成分は、すべてが本発明の特定重合体であってもよく、それ以外の他の重合体が混合されていても良い。その際、それ以外の他の重合体の含有量は、本発明の特定重合体の0.5質量%〜15質量%、好ましくは1質量%〜10質量%である。それ以外の他の重合体としては、前記式[1a]で示されるジアミン化合物、式[2]で示されるジアミン化合物および特定テトラカルボン酸成分を用いていないポリイミド系重合体が挙げられる。さらには、ポリイミド系重合体以外の重合体、具体的には、アクリルポリマー、メタクリルポリマー、ポリスチレン、ポリアミドまたはポリシロキサンなどが挙げられる。
【0169】
本発明の液晶配向処理剤中の有機溶媒は、塗布により均一な液晶配向膜を形成するという観点から、有機溶媒の含有量が70〜99.9質量%であることが好ましい。この含有量は、目的とする液晶配向膜の膜厚によって適宜変更することができる。
【0170】
本発明の液晶配向処理剤に用いる有機溶媒は、特定重合体を溶解させる有機溶媒(良溶媒ともいう)であれば特に限定されない。下記に、良溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0171】
例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、1,3−ジメチル−イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンまたは上述した前記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒などを挙げることができる。
【0172】
これらの良溶媒のなかでも、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン(以上(C)成分ともいう)を用いることが好ましい。また、特定重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、前記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒(以上(D)成分ともいう)を用いることが好ましい。
【0173】
本発明の液晶配向処理剤における良溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる溶媒全体の10〜80質量%であることが好ましい。なかでも、20〜70質量%が好ましい。より好ましいのは、30〜60質量%である。
【0174】
本発明の液晶配向処理剤には、液晶配向処理剤を塗布した際の樹脂被膜または液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる有機溶媒(貧溶媒ともいう)として、本発明の(A)成分である特定溶媒(プロピレングリコールモノブチルエーテル)を含有する。この特定溶媒は、本発明の効果を高めるため、液晶配向処理剤に含まれる有機溶媒全体の5〜70質量%であることが好ましい。なかでも、10〜70質量%が好ましい。より好ましいのは、10〜60質量%である。
【0175】
さらに、本発明の液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、特定溶媒以外の貧溶媒(その他貧溶媒ともいう)を合わせて用いることができる。下記に、その他貧溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
【0176】
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、イソペンチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、3−メチル−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1−メチルシクロヘキサノール、2−メチルシクロヘキサノール、3−メチルシクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2−ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、3−エトキシブチルアセタート、1−メチルペンチルアセタート、2−エチルブチルアセタート、2−エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2−(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1−(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチルエチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸、3−メトキシプロピオン酸プロピル、3−メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n−プロピルエステル、乳酸n−ブチルエステル、乳酸イソアミルエステルまたは上述した前記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒などを挙げることができる。
【0177】
なかでも、1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテル(以上(E)成分ともいう)または上述した前記式[D−1]〜式[D−3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
【0178】
これらのその他貧溶媒は、液晶配向処理剤に含まれる有機溶媒全体の1〜60質量%であることが好ましい。なかでも、1〜50質量%が好ましい。より好ましいのは5〜40質量%である。
【0179】
本発明の液晶配向処理剤には、本発明の効果を損なわない限り、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタン基またはシクロカーボネート基を有する架橋性化合物、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基および低級アルコキシアルキル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、または重合性不飽和結合を有する架橋性化合物を導入することもできる。これら置換基や重合性不飽和結合は、架橋性化合物中に2個以上有する必要がある。
【0180】
エポキシ基またはイソシアネート基を有する架橋性化合物としては、例えば、ビスフェノールアセトングリシジルエーテル、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルアミノジフェニレン、テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビス(アミノエチル)シクロヘキサン、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ビスフェノールヘキサフルオロアセトジグリシジルエーテル、1,3−ビス(1−(2,3−エポキシプロポキシ)−1−トリフルオロメチル−2,2,2−トリフルオロメチル)ベンゼン、4,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)オクタフルオロビフェニル、トリグリシジル−p−アミノフェノール、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、2−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−2−(4−(1,1−ビス(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)エチル)フェニル)プロパンまたは1,3−ビス(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−(4−(1−(4−(2,3−エポキシプロポキシ)フェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチル)フェノキシ)−2−プロパノールなどが挙げられる。
【0181】
オキセタン基を有する架橋性化合物は、下記の式[4]で示すオキセタン基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
【0182】
【化42】
【0183】
具体的には、下記の式[4−1]〜式[4−11]で示される架橋性化合物である。
【0184】
【化43】
【0185】
(式[4−1]中、nは1〜3の整数を示す)。
【0186】
【化44】
【0187】
【化45】
【0188】
【化46】
【0189】
(式[4−7]中、nは1〜3の整数を示し、式[4−8]中、nは1〜3の整数を示し、式[4−9]中、nは1〜100の整数を示す)。
【0190】
【化47】
【0191】
(式[4−11]中、nは1〜10の整数を示す)。
【0192】
シクロカーボネート基を有する架橋性化合物としては、下記の式[5]で示されるシクロカーボネート基を少なくとも2個有する架橋性化合物である。
【0193】
【化48】
【0194】
具体的には、下記の式[5−1]〜式[5−37]で示される架橋性化合物である。
【0195】
【化49】
【0196】
【化50】
【0197】
【化51】
【0198】
【化52】
【0199】
【化53】
【0200】
【化54】
【0201】
【化55】
【0202】
【化56】
【0203】
【化57】
【0204】
【化58】
【0205】
【化59】
【0206】
【化60】
【0207】
(式[5−24]中、nは1〜10の整数を示し、式[5−25]中、nは1〜10の整数を示す)。
【0208】
【化61】
【0209】
【化62】
【0210】
【化63】
【0211】
【化64】
【0212】
【化65】
【0213】
(式[5−36]中、nは1〜100の整数を示し、式[5−37]中、nは1〜10の整数を示す)。
【0214】
さらに、下記の式[5−38]〜式[5−40]に示される少なくとも1種の構造を有するポリシロキサンを挙げることもできる。
【0215】
【化66】
【0216】
(式[5−38]〜式[5−40]中、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、式[5]で示される構造、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、アルコキシル基、脂肪族環または芳香族環を示し、少なくとも1つは式[5]で示される構造を示す)。
【0217】
より具体的には、下記の式[5−41]および式[5−42]の化合物が挙げられる。
【0218】
【化67】
【0219】
(式[5−42]中、nは1〜10の整数を示す)。
【0220】
ヒドロキシル基およびアルコキシル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物としては、例えば、ヒドロキシル基またはアルコキシル基を有するアミノ樹脂、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂、グリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂、スクシニルアミド−ホルムアルデヒド樹脂またはエチレン尿素−ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。具体的には、アミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基またはその両方で置換されたメラミン誘導体、ベンゾグアナミン誘導体、またはグリコールウリルを用いることができる。このメラミン誘導体またはベンゾグアナミン誘導体は、2量体または3量体として存在することも可能である。これらはトリアジン環1個当たり、メチロール基またはアルコキシメチル基を平均3個以上6個以下有するものが好ましい。
【0221】
このようなメラミン誘導体またはベンゾグアナミン誘導体の例としては、市販品のトリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均3.7個置換されているMX−750、トリアジン環1個当たりメトキシメチル基が平均5.8個置換されているMW−30(以上、三和ケミカル社製)やサイメル300、301、303、350、370、771、325、327、703、712などのメトキシメチル化メラミン、サイメル235、236、238、212、253、254などのメトキシメチル化ブトキシメチル化メラミン、サイメル506、508などのブトキシメチル化メラミン、サイメル1141のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化イソブトキシメチル化メラミン、サイメル1123のようなメトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1123−10のようなメトキシメチル化ブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1128のようなブトキシメチル化ベンゾグアナミン、サイメル1125−80のようなカルボキシル基含有メトキシメチル化エトキシメチル化ベンゾグアナミン(以上、三井サイアナミド社製)が挙げられる。また、グリコールウリルの例として、サイメル1170のようなブトキシメチル化グリコールウリル、サイメル1172のようなメチロール化グリコールウリル等、パウダーリンク1174のようなメトキシメチロール化グリコールウリル等が挙げられる。
【0222】
ヒドロキシル基またはアルコキシル基を有するベンゼンまたはフェノール性化合物としては、例えば、1,3,5−トリス(メトキシメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(イソプロポキシメチル)ベンゼン、1,4−ビス(sec−ブトキシメチル)ベンゼンまたは2,6−ジヒドロキシメチル−p−tert−ブチルフェノール等が挙げられる。
【0223】
より具体的には、国際公開公報WO2011/132751(2011年10月27日公開)の62頁〜66頁に掲載される、式[6−1]〜式[6−48]で示される架橋性化合物が挙げられる。
【0224】
重合性不飽和結合を有する架橋性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリロイルオキシエトキシトリメチロールプロパンまたはグリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を分子内に3個有する架橋性化合物、さらに、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイドビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレートまたはヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどの重合性不飽和基を分子内に2個有する架橋性化合物、加えて、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピルフタレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルリン酸エステルまたはN−メチロール(メタ)アクリルアミド等の重合性不飽和基を分子内に1個有する架橋性化合物が挙げられる。
【0225】
加えて、下記の式[7]で示される化合物を用いることもできる。
【0226】
【化68】
【0227】
(式[7]中、Eはシクロヘキサン環、ビシクロヘキサン環、ベンゼン環、ビフェニル環、ターフェニル環、ナフタレン環、フルオレン環、アントラセン環またはフェナントレン環からからなる群から選ばれる基を示し、Eは下記の式[7a]または式[7b]から選ばれる基を示し、nは1〜4の整数を示す)。
【0228】
【化69】
【0229】
上記化合物は架橋性化合物の一例であり、これらに限定されるものではない。また、本発明の液晶配向処理剤に用いる架橋性化合物は、1種類であってもよく、2種類以上組み合わせてもよい。
【0230】
本発明の液晶配向処理剤における、架橋性化合物の含有量は、すべての重合体成分100質量部に対して、0.1〜150質量部であることが好ましい。架橋反応が進行し目的の効果を発現させるためには、すべての重合体成分100質量部に対して0.1〜100質量部がより好ましく、特に、1〜50質量部が最も好ましい。
【0231】
本発明の液晶配向処理剤を用いて液晶配向膜とした際、液晶配向膜中の電荷移動を促進し、該液晶配向膜を用いた液晶セルの電荷抜けを促進させる化合物として、国際公開公報WO2011/132751(2011.10.27公開)の69頁〜73頁に掲載される、式[M1]〜式[M156]で示される窒素含有複素環アミン化合物を添加することが好ましい。このアミン化合物は、組成物に直接添加しても構わないが、適当な溶媒で濃度0.1質量%〜10質量%、好ましくは1質量%〜7質量%の溶液にしてから添加することが好ましい。この溶媒としては、上述した特定重合体を溶解させる有機溶媒であれば特に限定されない。
【0232】
本発明の液晶配向処理剤は、本発明の効果を損なわない限り、液晶配向処理剤を塗布した際の液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性を向上させる化合物を用いることができる。さらに、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物などを用いることもできる。
【0233】
液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性をさらに向上させる化合物としては、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、ノ二オン系界面活性剤などが挙げられる。
より具体的には、例えば、エフトップEF301、EF303、EF352(以上、トーケムプロダクツ社製)、メガファックF171、F173、R−30(以上、大日本インキ社製)、フロラードFC430、FC431(以上、住友スリーエム社製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(以上、旭硝子社製)などが挙げられる。これらの界面活性剤の使用割合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0234】
液晶配向膜と基板との密着性を向上させる化合物の具体例としては、以下に示す官能性シラン含有化合物やエポキシ基含有化合物が挙げられる。
例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−エトキシカルボニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−トリエトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、N−トリメトキシシリルプロピルトリエチレントリアミン、10−トリメトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、10−トリエトキシシリル−1,4,7−トリアザデカン、9−トリメトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、9−トリエトキシシリル−3,6−ジアザノニルアセテート、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビス(オキシエチレン)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、2,2−ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,3,5,6−テトラグリシジル−2,4−ヘキサンジオール、N,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンまたはN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−4、4’−ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。
【0235】
これら基板との密着させる化合物を使用する場合は、液晶配向処理剤に含有されるすべての重合体成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。0.1質量部未満であると密着性向上の効果は期待できず、30質量部よりも多くなると液晶配向処理剤の保存安定性が悪くなる場合がある。
【0236】
本発明の液晶配向処理剤には、上記のその他貧溶媒、架橋性化合物、液晶配向膜の膜厚の均一性や表面平滑性をさらに向上させる化合物および基板との密着させる化合物の他に、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体や導電物質を添加してもよい。
【0237】
<液晶配向膜・液晶表示素子>
本発明の液晶配向処理剤は、基板上に塗布、焼成した後、ラビング処理や光照射などで配向処理をして、液晶配向膜として用いることができる。また、垂直配向用途などの場合では配向処理なしでも液晶配向膜として用いることができる。この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミなどの光を反射する材料も使用できる。
【0238】
液晶配向処理剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷またはインクジェット法などで行う方法が一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法またはスプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0239】
液晶配向処理剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンまたはIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向処理剤に用いる溶媒に応じて、30〜300℃、好ましくは30〜250℃の温度で溶媒を蒸発させて液晶配向膜とすることができる。焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜100nmである。液晶を水平配向や傾斜配向させる場合は、焼成後の液晶配向膜をラビングまたは偏光紫外線照射などで処理する。
【0240】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、本発明の液晶配向処理剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。
【0241】
液晶セルの作製方法としては、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
【0242】
さらに、本発明の液晶配向処理剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の少なくとも一方の基板と液晶層との間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射および加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300〜400nm、好ましくは310〜360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0243】
上記の液晶表示素子は、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式により、液晶分子のプレチルトを制御するものである。PSA方式では、液晶材料中に少量の光重合性化合物、例えば光重合性モノマーを混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層に所定の電圧を印加した状態で光重合性化合物に紫外線などを照射し、生成した重合体によって液晶分子のプレチルトを制御する。重合体が生成するときの液晶分子の配向状態が電圧を取り去った後においても記憶されるので、液晶層に形成される電界などを制御することにより、液晶分子のプレチルトを調整することができる。また、PSA方式では、ラビング処理を必要としないので、ラビング処理によってプレチルトを制御することが難しい垂直配向型の液晶層の形成に適している。
【0244】
すなわち、本発明の液晶表示素子は、上記した手法により本発明の液晶配向処理剤から液晶配向膜付き基板を得た後、液晶セルを作製し、紫外線の照射および加熱の少なくとも一方により重合性化合物を重合することで液晶分子の配向を制御するものとすることができる。
【0245】
PSA方式の液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
【0246】
液晶には、熱や紫外線照射により重合する重合性化合物が混合される。重合性化合物としては、アクリレート基やメタクリレート基等の重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物が挙げられる。その際、重合性化合物は、液晶成分の100質量部に対して0.01〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量部である。重合性化合物が0.01質量部未満であると、重合性化合物が重合せずに液晶の配向制御ができなくなり、10質量部よりも多くなると、未反応の重合性化合物が多くなって液晶表示素子の焼き付き特性が低下する。
【0247】
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流または直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射して重合性化合物を重合する。これにより、液晶分子の配向を制御することができる。
【0248】
加えて、本発明の液晶配向処理剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の少なくとも一方の基板と液晶層との間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300〜400nm、好ましくは310〜360nmである。加熱による重合の場合、加熱温度は40〜120℃、好ましくは60〜80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0249】
活性エネルギー線および熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜を得るためには、この重合性基を含む化合物を液晶配向処理剤中に添加する方法や、重合性基を含む重合体成分を用いる方法が挙げられる。本発明の液晶配向処理剤は、熱や紫外線の照射により、反応する2重結合部位持つ特定化合物を含んでいるため、紫外線の照射および加熱の少なくとも一方により液晶分子の配向を制御することができる。
【0250】
液晶セル作製の一例を挙げるならば、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、または、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが挙げられる。
【0251】
液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流または直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射することで、液晶分子の配向を制御することができる。
以上のようにして、本発明の液晶配向処理剤を用いて作製された液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用できる。
【実施例】
【0252】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、これらに限定されるものではない。
【0253】
「本発明のポリイミド前駆体およびポリイミドの合成:本発明の(B)成分である特定重合体」
<ジアミン成分>
(特定側鎖型ジアミン化合物:本発明の式[1a]で示されるジアミン化合物)
A1:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシ〕ベンゼン(下記の式[A1]で示されるジアミン化合物)
A2:1,3−ジアミノ−4−〔4−(トランス−4−n−ヘプチルシクロへキシル)フェノキシメチル〕ベンゼン(下記の式[A2]で示されるジアミン化合物)
A3:1,3−ジアミノ−4−{4−〔トランス−4−(トランス−4−n−ペンチルシクロへキシル)シクロへキシル〕フェノキシ}ベンゼン(下記の式[A3]で示されるジアミン化合物)
A4:下記の式[A4]で示されるジアミン化合物
【0254】
【化70】
【0255】
【化71】
【0256】
(本発明の式[2]で示されるジアミン化合物)
B1:3,5−ジアミノ安息香酸(下記の式[B1]で示されるジアミン化合物)
B2:下記の式[B2]で示されるジアミン化合物
【0257】
【化72】
【0258】
(その他ジアミン化合物)
C1:p−フェニレンジアミン(下記の式[C1]で示されるジアミン化合物)
C2:4,4’−ジアミノジフェニルアミン(下記の式[C2]で示されるジアミン化合物)
C3:1,3−ジアミノ−4−オクタデシルオキシベンゼン(下記の式[C3]で示されるジアミン化合物)
【0259】
【化73】
【0260】
<テトラカルボン酸成分>
D1:1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(下記の式[D1]で示されるテトラカルボン酸二無水物)
D2:ビシクロ[3,3,0]オクタン−2,4,6,8−テトラカルボン酸二無水物(下記の式[D2]で示されるテトラカルボン酸二無水物)
D3:下記の式[D3]で示されるテトラカルボン酸二無水物
D4:下記の式[D4]で示されるテトラカルボン酸二無水物
【0261】
【化74】
【0262】
<有機溶媒>
(本発明の(A)成分である有機溶媒)
PB:プロピレングリコールモノブチルエーテル
(本発明の(C)成分である有機溶媒)
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
NEP:N−エチル−2−ピロリドン
γ−BL:γ−ブチロラクトン
(本発明の(D)成分である有機溶媒)
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PCS:エチレングリコールモノプロピルエーテル
DEEE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
(本発明の(E)成分である有機溶媒)
BCS:エチレングリコールモノブチルエーテル
【0263】
<ポリイミド前駆体およびポリイミドの分子量測定>
合成例におけるポリイミド前駆体およびポリイミドの分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC−101)(昭和電工社製)、カラム(KD−803,KD−805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N’−ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム−水和物(LiBr・HO)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o−リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000、および30,000)(東ソー社製)およびポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000、および1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0264】
<ポリイミドのイミド化率の測定>
合成例におけるポリイミドのイミド化率は次のようにして測定した。ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO−d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW−ECA500)(日本電子データム社製)にて500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5ppm〜10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1−α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0265】
「本発明の(B)成分である特定重合体および比較例用重合体の合成」
<合成例1>
D1(9.10g,46.4mmol)、A1(8.83g,23.2mmol)およびB1(3.53g,23.2mmol)をNEP(64.4g)中で混合し、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(1)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は、25,200、重量平均分子量は、70,300であった。
【0266】
<合成例2>
D2(6.25g,25.0mmol)、A1(6.79g,17.8mmol)、B1(2.17g,14.3mmol)およびC1(0.39g,3.61mmol)をNMP(29.2g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(2.10g,10.7mmol)とNMP(23.9g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(2)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は、23,200、重量平均分子量は、65,300であった。
【0267】
<合成例3>
合成例2で得られたポリアミド酸溶液(2)(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.75g)およびピリジン(3.75g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(800ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(3)を得た。このポリイミドのイミド化率は56%であり、数平均分子量は18,900、重量平均分子量は45,400であった。
【0268】
<合成例4>
D2(6.10g,24.4mmol)、A3(5.28g,12.2mmol)、B1(2.65g,17.4mmol)およびB2(1.06g,5.21mmol)をNMP(28.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(2.05g,10.5mmol)とNMP(23.1g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(9.00g)およびピリジン(6.50g)を加え、90℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノール(1000ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(4)を得た。このポリイミドのイミド化率は80%であり、数平均分子量は17,200、重量平均分子量は40,900であった。
【0269】
<合成例5>
D2(4.40g,17.6mmol)、A1(6.70g,17.6mmol)、B1(1.07g,7.03mmol)およびC2(2.10g,10.5mmol)をNMP(29.2g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(3.45g,17.6mmol)とNMP(23.9g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.70g)およびピリジン(3.75g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(800ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(5)を得た。このポリイミドのイミド化率は55%であり、数平均分子量は18,800、重量平均分子量は43,500であった。
【0270】
<合成例6>
D2(8.61g,34.4mmol)、A4(3.77g,7.65mmol)、B1(4.07g,26.7mmol)およびC1(0.41g,3.79mmol)をNMP(29.1g)中で混合し、80℃で8時間反応させた後、D1(0.75g,3.82mmol)とNMP(23.8g)を加え、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.65g)およびピリジン(3.65g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(800ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(6)を得た。このポリイミドのイミド化率は51%であり、数平均分子量は14,800、重量平均分子量は37,300であった。
【0271】
<合成例7>
D2(4.34g,17.3mmol)、A2(5.47g,13.9mmol)、B1(2.11g,13.9mmol)およびB2(1.41g,6.94mmol)をNMP(27.6g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(3.40g,17.3mmol)とNMP(22.6g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(8.85g)およびピリジン(6.25g)を加え、90℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(1000ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(7)を得た。このポリイミドのイミド化率は78%であり、数平均分子量は18,200、重量平均分子量は42,500で合った。
【0272】
<合成例8>
D2(7.65g,30.6mmol)、A3(4.96g,11.5mmol)、B1(2.91g,19.1mmol)、B2(0.78g,3.84mmol)およびC1(0.41g,3.79mmol)をNMP(30.1g)中で混合し、80℃で6時間反応させた後、D1(1.50g,7.65mmol)とNMP(24.6g)を加え、40℃で6時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.90g)およびピリジン(3.90g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(800ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(8)を得た。このポリイミドのイミド化率は60%であり、数平均分子量は17,600、重量平均分子量は39,900であった。
【0273】
<合成例9>
D3(8.00g,35.7mmol)、A1(6.79g,17.8mmol)、B1(2.17g,14.3mmol)およびC1(0.39g,3.61mmol)をNMP(52.1g)中で混合し、40℃で5時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)にNMPを加え、6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.71g)およびピリジン(3.60g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(700ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(9)を得た。このポリイミドのイミド化率は55%であり、数平均分子量は17,900、重量平均分子量は40,100であった。
【0274】
<合成例10>
D3(9.00g,40.1mmol)、A4(2.97g,6.03mmol)およびB1(5.19g,34.1mmol)をNMP(51.5g)中で混合し、40℃で8時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)にNMPを加え、6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.70g)およびピリジン(3.60g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(700ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(10)を得た。このポリイミドのイミド化率は50%であり、数平均分子量は16,100、重量平均分子量は37,900であった。
【0275】
<合成例11>
D4(5.97g,19.9mmol)、A2(5.23g,13.3mmol)、B1(2.02g,13.3mmol)およびC2(1.32g,6.62mmol)をNMP(28.3g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(2.60g,13.3mmol)とNMP(23.1g)を加え、40℃で5時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(11)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は、24,500、重量平均分子量は、69,900であった。
【0276】
<合成例12>
合成例11で得られたポリアミド酸溶液(11)(40.0g)に、NMPを加え、6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.85g)およびピリジン(3.75g)を加え、80℃で4.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(800ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(12)を得た。このポリイミドのイミド化率は61%であり、数平均分子量は18,500、重量平均分子量は42,200であった。
【0277】
<合成例13>
D4(4.90g,16.3mmol)、A3(4.94g,11.4mmol)、B1(1.49g,9.79mmol)およびB2(2.32g,11.4mmol)をNMP(27.8g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(3.20g,16.3mmol)とNMP(22.8g)を加え、40℃で5時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(8.90g)およびピリジン(6.50g)を加え、90℃で3.5時間反応させた。この反応溶液をメタノール(1000ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(13)を得た。このポリイミドのイミド化率は80%であり、数平均分子量は16,400、重量平均分子量は38,500であった。
【0278】
<合成例14>
D2(6.70g,26.8mmol)、B1(2.33g,15.3mmol)、C1(0.41g,3.79mmol)およびC3(7.20g,19.1mmol)をNMP(31.2g)中で混合し、80℃で5時間反応させた後、D1(2.25g,11.5mmol)とNMP(25.5g)を加え、40℃で5時間反応させ、樹脂固形分濃度が25質量%のポリアミド酸溶液(14)を得た。このポリアミド酸の数平均分子量は、25,100、重量平均分子量は、68,900であった。
【0279】
<合成例15>
合成例14で得られたポリアミド酸溶液(14)(40.0g)に、NMPを加え6質量%に希釈した後、イミド化触媒として無水酢酸(4.70g)およびピリジン(3.70g)を加え、80℃で4時間反応させた。この反応溶液をメタノール(800ml)中に投入し、得られた沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、100℃で減圧乾燥しポリイミド粉末(15)を得た。このポリイミドのイミド化率は55%であり、数平均分子量は19,500、重量平均分子量は47,900であった。
本発明の特定重合体および比較例用重合体を表1に示す。
【0280】
【表1】
*1:ポリアミド酸。
【0281】
「本発明の液晶配向処理剤の製造」
下記する実施例1〜実施例22および比較例1〜比較例5では、液晶配向処理剤の製造例を記載する。
【0282】
本発明の液晶配向処理剤を表2〜表4に示す。
【0283】
本発明の実施例および比較例で得られた液晶配向処理剤を用い、「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」、「プレチルト角の評価(通常セル)」および「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(PSAセル)」を行った。その条件は、下記のとおりである。
【0284】
「液晶配向処理剤の印刷性の評価」
本発明の実施例および比較例で得られた液晶配向処理剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、印刷性評価を行った。印刷機には、簡易印刷機S15型(日本写真印刷製)を用いた。印刷は、洗浄をしていないクロム蒸着基板上に、印刷面積が80×80mm、印圧が0.2mm、捨て基板が5枚、印刷から仮乾燥までの時間が90秒、仮乾燥がホットプレート上にて70℃で5分間の条件で行った。
得られた液晶配向膜に関して、液晶配向膜のピンホールの評価、液晶配向膜の端部の直線性の評価および液晶配向膜の端部の盛り上がりの評価を行った。
液晶配向膜のピンホールの評価は、液晶配向膜をナトリウムランプの下で目視観察することで行った。具体的には、液晶配向膜上に確認されたピンホールの数を数え、ピンホールの数が少ないものほど、本評価に優れるとした。
【0285】
液晶配向膜の端部の直線性の評価は、印刷方向に対して右側端部の液晶配向膜を光学顕微鏡観察することで行った。具体的には、光学顕微鏡の倍率が25倍で観察して得られた液晶配向膜画像の図1中の(1)と(2)の差、すなわち、図1中のAの長さを測定した。その際、すべての液晶配向膜の画像は、同一倍率で得た。このAの長さが短いほど、液晶配向膜の端部の直線性に優れるとした。
液晶配向膜の端部の盛り上がりの評価は、印刷方向に対して右側端部の液晶配向膜を光学顕微鏡観察することで行った。具体的には、光学顕微鏡の倍率が25倍で観察して得られた液晶配向膜画像の図2中のBの長さを測定した。その際、すべての液晶配向膜画像は、同一倍率で得た。このBの長さが短いほど、液晶配向膜の端部の盛り上がりに優れるとした。
【0286】
表5〜表7に実施例および比較例で得られた液晶配向膜のピンホールの数、Aの長さおよびBの長さを示す。
【0287】
「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」
本発明の実施例6で得られた液晶配向処理剤(6)、実施例12で得られた液晶配向処理剤(12)、実施例20で得られた液晶配向処理剤(20)および実施例21で得られた液晶配向処理剤(21)を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、インクジェット塗布性の評価を行った。インクジェット塗布機には、HIS−200(日立プラントテクノロジー社製)を用いた。塗布は、純水およびIPA(イソプロピルアルコール)にて洗浄を行ったITO(酸化インジウムスズ)蒸着基板上に、塗布面積が70×70mm、ノズルピッチが0.423mm、スキャンピッチが0.5mm、塗布速度が40mm/秒、塗布から仮乾燥までの時間が60秒、仮乾燥がホットプレート上にて70℃で5分間の条件で行った。
得られた液晶配向膜のピンホールの評価を「液晶配向処理剤の印刷性評価」と同様の条件で行った。
【0288】
表5および表6に実施例で得られた液晶配向膜のピンホールの数を示す。
【0289】
「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」
本発明の実施例および比較例で得られた液晶配向処理剤を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶セルの作製を行った。この溶液を純水およびIPAにて洗浄を行った30×40mmITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間加熱処理をして膜厚が100nmのポリイミド液晶配向膜付きのITO基板を得た。このITO基板の塗膜面をロール径が120mmのラビング装置でレーヨン布を用いて、ロール回転数が1000rpm、ロール進行速度が50mm/sec、押し込み量が0.1mmの条件でラビング処理した。
得られた液晶配向膜付きのITO基板を2枚用意し、液晶配向膜面を内側にして6μmのスペーサー挟んで組み合わせ、シール剤(XN−1500T)(三井化学社製)を印刷した。次いで、他方の基板と液晶配向膜面が向き合うようにして貼り合わせた後、シール剤を熱循環型クリーンオーブン中にて120℃で90分間加熱処理をすることにより硬化して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶を注入し、注入口を封止して液晶セル(通常セル)を得た。その際の液晶には、ネマティック液晶(MLC−6608)(メルク・ジャパン社製)を用いた。
上記で得られた液晶セルを用いて、液晶配向性の評価を行った。液晶配向性は、液晶セルを偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)で観察し、配向欠陥の有無を確認した。具体的には、配向欠陥が見られなかったものを、本評価に優れるとした(表8〜表10中に、良好と示した)。
【0290】
表8〜表10に実施例および比較例で得られた液晶配向性の結果を示す。
【0291】
「プレチルト角の評価(通常セル)」
上記の「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」で得られた液晶セルを用いて、プレチルト角の評価を行った。プレチルト角は、液晶注入後、95℃で5分間加熱処理後、120℃で5時間加熱処理後を測定した。さらに、液晶注入後に95℃で5分間加熱処理した後の液晶セルに、365nm換算で10J/cmの紫外線を照射した後を測定した。
95℃で5分間加熱処理後のプレチルト角に対して、120℃で5時間の加熱処理後または紫外線を照射した後のプレチルト角の変化が小さいものほど、熱または紫外線に対するプレチルト角の安定性が高いとした。
なお、プレチルト角は、PAS−301(ELSICON製)を用いて室温で測定した。さらに、紫外線の照射は、卓上型UV硬化装置(HCT3B28HEX−1)(センライト製)を用いて行った。
【0292】
表8〜表10に実施例および比較例で得られたプレチルト角の結果を示す。
【0293】
「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(PSAセル)」
実施例5で得られた液晶配向処理剤(5)および実施例19で得られた液晶配向処理剤(19)を細孔径1μmのメンブランフィルタで加圧濾過し、液晶セルの作製および液晶配向性の評価を行った。この溶液を、純水およびIPAにて洗浄した中心に10×10mmのパターン間隔20μmのITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)と中心に10×40mmのITO電極付き基板(縦40mm×横30mm、厚さ0.7mm)のITO面にスピンコートし、ホットプレート上にて100℃で5分間加熱処理をして膜厚が100nmのポリイミド塗膜を得た。塗膜面を純水にて洗浄した後、熱循環型クリーンオーブン中にて100℃で15分間加熱処理をして、液晶配向膜付き基板を得た。
この液晶配向膜付き基板を、液晶配向膜面を内側にして、6μmのスペーサー挟んで組み合わせ、シール剤で周囲を接着して空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、ネマティック液晶(MLC−6608)(メルク・ジャパン社製)に、下記の式で示される重合性化合物(1)を、ネマティック液晶(MLC−6608)の100質量%に対して重合性化合物(1)を0.3質量%混合した液晶を注入し、注入口を封止して、液晶セルを得た。
【0294】
【化75】
【0295】
得られた液晶セルに、交流5Vの電圧を印加しながら、照度60mWのメタルハライドランプを用いて、350nm以下の波長をカットし、365nm換算で20J/cmの紫外線照射を行い、液晶の配向方向が制御された液晶セル(PSAセル)を得た。液晶セルに紫外線を照射している際の照射装置内の温度は、50℃であった。
この液晶セルの紫外線照射前と紫外線照射後の液晶の応答速度を測定した。応答速度は、透過率90%から透過率10%までのT90→T10を測定した。
実施例で得られたPSAセルは、紫外線照射前の液晶セルに比べて、紫外線照射後の液晶セルの応答速度が速くなったことから、液晶の配向方向が制御されたことを確認した。また、いずれの液晶セルとも、偏光顕微鏡(ECLIPSE E600WPOL)(ニコン社製)での観察により、液晶は均一に配向していることを確認した。
【0296】
<実施例1>
合成例1の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(1)(10.5g)に、NEP(18.9g)およびPB(14.4g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(1)を得た。この液晶配向処理剤(1)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。得られた液晶配向処理剤(1)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0297】
<実施例2>
合成例2の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、NMP(16.0g)およびPB(15.7g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(2)を得た。この液晶配向処理剤(2)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。得られた液晶配向処理剤(2)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0298】
<実施例3>
合成例2の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、NMP(14.0g)、PB(11.8g)およびBCS(5.90g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(3)を得た。この液晶配向処理剤(3)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(3)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0299】
<実施例4>
合成例3の合成手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、NMP(17.6g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(21.5g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(4)を得た。この液晶配向処理剤(4)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(4)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0300】
<実施例5>
合成例3の合成手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.55g)に、NMP(8.00g)およびNEP(12.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(16.0g)およびBCS(4.00g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(5)を得た。この液晶配向処理剤(5)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(5)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」、「プレチルト角の評価(通常セル)」および「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(PSAセル)」を行った。
【0301】
<実施例6>
合成例3の合成手法で得られたポリイミド粉末(3)(1.55g)に、NMP(8.56g)およびNEP(12.8g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(17.1g)およびBCS(4.30g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(6)を得た。この液晶配向処理剤(6)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(6)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」を行った。
【0302】
<実施例7>
合成例4の合成手法で得られたポリイミド粉末(4)(2.50g)に、NMP(19.6g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(3.90g)、PCS(7.80g)およびBCS(7.80g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(7)を得た。この液晶配向処理剤(7)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(7)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0303】
<実施例8>
合成例5の合成手法で得られたポリイミド粉末(5)(2.56g)に、γ−BL(18.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(16.0g)およびPGME(6.00g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(8)を得た。この液晶配向処理剤(8)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(8)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0304】
<実施例9>
合成例6の合成手法で得られたポリイミド粉末(6)(2.55g)に、NEP(22.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(8.00g)およびBCS(10.0g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(9)を得た。この液晶配向処理剤(9)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(9)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0305】
<実施例10>
合成例7の合成手法で得られたポリイミド粉末(7)(2.55g)に、NMP(6.00g)およびNEP(12.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(16.0g)およびDEEE(6.00g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(10)を得た。この液晶配向処理剤(10)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(10)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0306】
<実施例11>
合成例7の合成手法で得られたポリイミド粉末(7)(2.50g)に、NEP(19.6g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(19.6g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(11)を得た。この液晶配向処理剤(11)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(11)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0307】
<実施例12>
合成例7の合成手法で得られたポリイミド粉末(7)(1.50g)に、NEP(20.7g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(20.7g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(12)を得た。この液晶配向処理剤(12)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(12)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」を行った。
【0308】
<実施例13>
合成例8の合成手法で得られたポリイミド粉末(8)(2.55g)に、NMP(20.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(8.00g)、PCS(8.00g)およびBCS(4.00g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(13)を得た。この液晶配向処理剤(13)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(13)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0309】
<実施例14>
合成例8の合成手法で得られたポリイミド粉末(8)(2.57g)に、γ−BL(20.1g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(16.1g)およびDEEE(4.00g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(14)を得た。この液晶配向処理剤(14)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(14)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0310】
<実施例15>
合成例9の合成手法で得られたポリイミド粉末(9)(2.53g)に、NMP(5.94g)およびNEP(15.9g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(17.8g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(15)を得た。この液晶配向処理剤(15)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(15)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0311】
<実施例16>
合成例10の合成手法で得られたポリイミド粉末(10)(2.55g)に、NMP(20.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(12.0g)およびPCS(8.00g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(16)を得た。この液晶配向処理剤(16)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(16)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0312】
<実施例17>
合成例11の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(11)(10.0g)に、NMP(11.1g)、NEP(6.92g)およびPB(13.7g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(17)を得た。この液晶配向処理剤(17)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(17)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0313】
<実施例18>
合成例11の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(11)(10.0g)に、NMP(16.0g)、PB(5.90g)およびBCS(9.80g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(18)を得た。この液晶配向処理剤(18)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(18)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0314】
<実施例19>
合成例12の合成手法で得られたポリイミド粉末(12)(2.56g)に、NEP(22.1g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(4.00g)およびBCS(14.0g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(19)を得た。この液晶配向処理剤(19)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(19)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」、「プレチルト角の評価(通常セル)」および「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(PSAセル)」を行った。
【0315】
<実施例20>
合成例12の合成手法で得られたポリイミド粉末(12)(1.55g)に、NEP(19.2g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(12.8g)およびBCS(10.7g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(20)を得た。この液晶配向処理剤(20)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(20)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」を行った。
【0316】
<実施例21>
合成例12の合成手法で得られたポリイミド粉末(12)(1.50g)に、γ−BL(22.7g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(14.5g)およびPGME(4.10g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(21)を得た。この液晶配向処理剤(21)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(21)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤のインクジェット塗布性の評価」を行った。
【0317】
<実施例22>
合成例13の合成手法で得られたポリイミド粉末(13)(2.50g)に、NEP(21.5g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、PB(11.8g)およびBCS(5.90g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(22)を得た。この液晶配向処理剤(22)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(22)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0318】
<比較例1>
合成例2の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(2)(10.0g)に、NMP(16.0g)およびBCS(15.7g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(23)を得た。この液晶配向処理剤(23)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(23)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0319】
<比較例2>
合成例3の合成手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、NMP(39.2g)を加え、70℃にて24時間攪拌して液晶配向処理剤(24)を得た。この液晶配向処理剤(24)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(24)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0320】
<比較例3>
合成例3の合成手法で得られたポリイミド粉末(3)(2.50g)に、NMP(17.6g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(21.5g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(25)を得た。この液晶配向処理剤(25)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(25)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0321】
<比較例4>
合成例14の合成手法で得られた樹脂固形分濃度25質量%のポリアミド酸溶液(14)(11.0g)に、NMP(17.6g)およびBCS(17.2g)を加え、25℃にて3時間攪拌して液晶配向処理剤(26)を得た。この液晶配向処理剤(26)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(26)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0322】
<比較例5>
合成例15の合成手法で得られたポリイミド粉末(15)(2.55g)に、NMP(18.0g)を加え、70℃にて24時間攪拌して溶解させた。この溶液に、BCS(22.0g)を加え、40℃にて6時間攪拌して液晶配向処理剤(27)を得た。この液晶配向処理剤(27)に、濁りや析出物の発生などの異常は見られず、均一な溶液であることが確認された。
得られた液晶配向処理剤(27)を用いて、上述した条件にて「液晶配向処理剤の印刷性の評価」、「液晶セルの作製および液晶配向性の評価(通常セル)」および「プレチルト角の評価(通常セル)」を行った。
【0323】
【表2】
*2:組成物(液晶配向処理剤)中の重合体の占める割合を示す。
【0324】
【表3】
*3:組成物(液晶配向処理剤)中の重合体の占める割合を示す。
【0325】
【表4】
*4:組成物(液晶配向処理剤)中の重合体の占める割合を示す。
【0326】
【表5】
【0327】
【表6】
【0328】
【表7】
【0329】
【表8】
【0330】
【表9】
【0331】
【表10】
*5:ピンホールによる配向欠陥が15個以上観察された。
【0332】
上記の結果からわかるように、本発明の実施例の液晶配向処理剤から得られた液晶配向膜は、比較例の液晶配向処理剤から得られた液晶配向膜に比べて、ピンホールが発生しない均一な塗膜性を示した。さらに、液晶配向膜の端部の直線性が高く、液晶配向膜の端部の盛り上がりが小さい結果も得られた。特に、本発明の特定側鎖構造を有するジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸や溶媒可溶性ポリイミドを用いた液晶配向処理剤であっても、上述した効果が高い結果が得られた。
【0333】
同一の重合体を用いた液晶配向処理剤の印刷性評価において、本発明の特定溶媒を含む実施例と特定溶媒を含まない比較例との比較で、特定溶媒を含まない比較例では、液晶配向膜にピンホールが多く発生し、液晶配向膜の端部の直線性が低く、液晶配向膜の端部の盛り上がりが大きい結果となった。具体的には、実施例2と比較例1との比較、実施例4と比較例2および比較例3との比較である。
【0334】
また、同一の重合体を用いた液晶配向処理剤の液晶セルの液晶配向性の評価において、本発明の特定溶媒を含む実施例と特定溶媒を含まない比較例との比較で、特定溶媒を含まない比較例では、ピンホールに伴う配向欠陥が多く見られた。具体的には、実施例2と比較例1との比較、実施例4と比較例2および比較例3との比較である。
【0335】
加えて、液晶セルのプレチルト角の評価において、本発明の特定側鎖構造を含む液晶配向処理剤と特定側鎖構造を含まない液晶配向処理剤との比較で、特定側鎖構造を含まない液晶配向処理剤は、プレチルト角の安定性が低い、すなわち、加熱や紫外線に対する変化が大きい結果が得られた。具体的には、実施例2と比較例4との比較および実施例4と比較例4との比較である。また、これら比較例の液晶配向処理剤は、特定溶媒を含まないため、液晶配向膜にピンホールが多く発生し、液晶配向膜の端部の直線性が低く、液晶配向膜の端部の盛り上がりが大きい結果となった。さらには、液晶セルの液晶配向性の評価において、ピンホールに伴う配向欠陥が多く見られた。
【産業上の利用可能性】
【0336】
本発明の液晶配向処理剤は、ピンホールが発生しない均一な塗膜性を示し、さらに、液晶配向膜の端部の直線性が高く、液晶配向膜の端部の盛り上がりが小さい液晶配向膜を得ることができる。
【0337】
加えて、本発明の液晶配向処理剤は、ピンホールに伴う配向欠陥が発生しない液晶配向膜を得ることができる。特に、側鎖を有するジアミン化合物を使用して得られるポリアミド酸や溶媒可溶性ポリイミドを用いた液晶配向処理剤であっても、同様の結果を得ることができる。
【0338】
よって、本発明の液晶配向処理剤から得られた液晶配向膜を有する液晶表示素子は、信頼性に優れたものとなり、大画面で高精細の液晶テレビなどに好適に利用でき、TN素子、STN素子、TFT液晶素子、特に垂直配向型の液晶表示素子に有用である。
【0339】
さらに、本発明の液晶配向処理剤から得られた液晶配向膜は、液晶表示素子を作製する際に、紫外線を照射する必要がある液晶表示素子に対しても有用である。すなわち、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子、さらには、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、前記一対の基板の間に活性エネルギー線および熱の少なくとも一方で重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、前記電極間に電圧を印加しつつ前記重合性基を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子に対しても有用である。
図1
図2