(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン樹脂フィルムは、透明性、低複屈折、低吸湿性、耐熱性、電気絶縁性、耐薬品性等に優れ、光学部材、医療、包装フィルム、自動車、半導体用途等で幅広く用いられている。特に、光学部材においては、液晶ディスプレイやタッチパネル用途でのユニットの多様化に合わせ、従来用いられていたポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチックフィルムに代えて、透明性の高く、低吸湿性に優れた環状オレフィン樹脂フィルムを用いることが検討されている。
【0003】
また、環状オレフィン樹脂フィルムは、表面硬度が不十分であるため、加工時において傷が付くおそれがあり、耐摩耗性、耐擦傷性の向上のために、その表面に、活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜からなるハードコート層等の保護層を設けることが検討されている。しかし、環状オレフィン樹脂フィルムは、その主構造が脂環構造であるため、フィルム表面の極性が低く、水接触角が90°程度と高いため、活性エネルギー線硬化性組成物を塗工した場合、塗材が塗れ広がりにくく、環状オレフィン樹脂フィルム基材表面とハードコート層との間の密着性が低いという問題あった。
【0004】
環状オレフィン樹脂フィルム基材表面とハードコート層との間の密着性を向上する方法として、環状オレフィン樹脂フィルム基材表面に極性基を有する変性オレフィン系樹脂を主成分としたプライマー層を設けた後、電離放射線硬化型樹脂を塗工、硬化させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法では、環状オレフィン樹脂フィルム基材表面とハードコート層との間の密着性を向上することはできるが、プライマー層を塗工、乾燥する工程が増え、さらに歩留まりの低下やコストアップを生じる問題があった。
【0005】
また、プライマー層を設けずにハードコート層を環状オレフィン樹脂フィルム基材表面に密着させる方法として、脂環構造を有する(メタ)アクリレートを含有する硬化性組成物の硬化塗膜をハードコート層として用いることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この硬化性組成物を用いた場合、環状オレフィン樹脂フィルム基材表面との密着性を十分なものとするためには、脂環構造を有する(メタ)アクリレートの比率を高める必要がある。しかし、脂環構造を有する(メタ)アクリレートの比率を高めれば、硬化塗膜の架橋密度が低下し、硬化塗膜表面の耐擦傷性が不十分となる問題があった。
【0006】
さらに、環状オレフィン樹脂フィルム基材表面に活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を形成した直後の密着性(初期密着性)は高いが、その後、強い光に晒された場合、その密着性(耐光密着性)の低下が問題になっている。
【0007】
そこで、環状オレフィン樹脂フィルム基材表面に高い耐擦傷性を付与ができ、プライマー層なしで環状オレフィン樹脂フィルム基材表面との間で優れた密着性を有する硬化塗膜を形成でき、さらにその密着性が強い光に晒された後にも低下しない活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有する環状オレフィン樹脂フィルムが求められていた。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の環状オレフィン樹脂フィルムは、環状オレフィン樹脂フィルム基材の少なくとも1面に、活性エネルギー線硬化性化合物(A)と、重合性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤(B1)及びヒンダードフェノール基を有するヒンダードアミン系光安定剤(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるヒンダードアミン系光安定剤(B)とを必須成分として含有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有するものである。
【0014】
前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)としては、例えば、多官能(メタ)アクリレート(A1)、ウレタン(メタ)アクリレート(A2)等が挙げられる。これらは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0015】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0016】
前記多官能(メタ)アクリレート(A1)は、1分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。この多官能(メタ)アクリレート(A1)の具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3−メチル−1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート(A1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの多官能(メタ)アクリレート(A1)の中でも、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性が向上することから、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが好ましく、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとを組合せ用いることがより好ましい。また、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートとジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとを組合せ用いる場合の質量比としては、硬化塗膜の耐擦傷性が向上することから、40/60〜80/20の範囲であることが好ましく、50/50〜75/25の範囲がより好ましく、60/40〜70/30の範囲が更に好ましい。
【0017】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)は、ポリイソシアネート(a2−1)と水酸基を有する(メタ)アクリレート(a2−2)とを反応させて得られたものである。
【0018】
前記ポリイソシアネート(a2−1)としては、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとが挙げられるが、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の着色をより低減できることから、脂肪族ポリイソシアネートが好ましい。
【0019】
前記脂肪族ポリイソシアネートは、イソシアネート基を除く部位が脂肪族炭化水素から構成される化合物である。この脂肪族ポリイソシアネートの具体例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、リジントリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;ノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−メチル−1,3−ジイソシアナトシクロヘキサン、2−メチル−1,5−ジイソシアナトシクロヘキサン等の脂環式ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、前記脂肪族ポリイソシアネート又は脂環式ポリイソシアネートを3量化した3量化物も前記脂肪族ポリイソシアネートとして用いることができる。また、これらの脂肪族ポリイソシアネートは、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0020】
前記脂肪族ポリイソシアネートの中でも塗膜の耐擦傷性を向上させるには、脂肪族ポリイソシアネートの中でも、直鎖脂肪族炭化水素のジイソシアネートであるヘキサメチレンジイソシアネート、脂環式ジイソシアネートであるノルボルナンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0021】
前記(メタ)アクリレート(a2−2)は、水酸基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物である。この(メタ)アクリレート(a2−2)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールモノ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのモノ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド(EO)変性トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(PO)変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の3価のアルコールのモノ又はジ(メタ)アクリレート、あるいは、これらのアルコール性水酸基の一部をε−カプロラクトンで変性した水酸基を有するモノ及びジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の1官能の水酸基と3官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物、あるいは、該化合物をさらにε−カプロラクトンで変性した水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート;ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン−ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等のブロック構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレート;ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等のランダム構造のオキシアルキレン鎖を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a2−2)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0022】
前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)の中でも、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の耐擦傷性を向上できるため、1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものが好ましい。前記ウレタン(メタ)アクリレート(A2)を1分子中に4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するものとするため、前記(メタ)アクリレート(a2−2)としては、(メタ)アクリロイル基は2つ以上有するものが好ましい。このような(メタ)アクリレート(a2−2)としては、例えば、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリレート(a2−2)は、前記脂肪族ポリイソシアネートの1種に対して、1種を用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの(メタ)アクリレート(a2−2)の中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートは、耐擦傷性を向上できるため好ましい。
【0023】
前記ポリイソシアネート(a2−1)と前記(メタ)アクリレート(a2−2)との反応は、常法のウレタン化反応により行うことができる。また、ウレタン化反応の進行を促進するために、ウレタン化触媒の存在下でウレタン化反応を行うことが好ましい。前記ウレタン化触媒としては、例えば、ピリジン、ピロール、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン等のアミン化合物;トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン等のリン化合物;ジブチル錫ジラウレート、オクチル錫トリラウレート、オクチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジアセテート、オクチル酸錫等の有機錫化合物、オクチル酸亜鉛等の有機亜鉛化合物などが挙げられる。
【0024】
また、必要に応じて、上記の多官能(メタ)アクリレート(A1)、ウレタン(メタ)アクリレート(A2)以外の活性エネルギー線硬化性化合物(A)として、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等の比較的高分子量の(メタ)アクリレート(A3)を用いることができる。前記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリグリシジルメタクリレート等に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られるものが挙げられる。また、前記ポリエステル(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価カルボン酸と多価アルコールを重縮合して得られた両末端が水酸基であるポリエステルに、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたもの、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加したものに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。さらに、前記ポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエーテルポリオールに(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得られたものが挙げられる。また、前記(メタ)アクリレート(A3)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0025】
さらに、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の活性エネルギー線硬化性化合物(A)として例示した(A1)〜(A3)以外に、リン酸基を有する(メタ)アクリレート(A4)を配合すると、基材への密着性がより向上できることから好ましい。前記リン酸基を有する(メタ)アクリレート(A4)は、1分子中に少なくとも1個のリン酸基を有する(メタ)アクリレートである。このリン酸基を有する(メタ)アクリレート(A4)としては、例えば、リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸ジ(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸トリ(メタ)アクリロイルオキシエチル、カプロラクトン変性リン酸(メタ)アクリロイルオキシエチル等が挙げられ、1分子中に2以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物も用いることができる。また、これらのリン酸基を有する(メタ)アクリレート(A4)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0026】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物に、前記リン酸基を有する(メタ)アクリレート(A4)を配合する場合のその配合量は、基材への密着性がより向上でき、硬化塗膜表面の耐擦傷性もより向上できることから、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)中に0.1〜30質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましい。
【0027】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物は、上記の活性エネルギー線硬化性化合物(A)とともに、重合性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤(B1)及びヒンダードフェノール基を有するヒンダードアミン系光安定剤(B2)からなる群から選ばれる少なくとも1種であるヒンダードアミン系光安定剤(B)とを必須成分として含有する。
【0028】
前記光安定剤(B1)としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等の重合性官能基を有するヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。より具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの前記光安定剤(B1)は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。これらの中でも、環状オレフィン樹脂との密着性がより向上し、強い光に晒された後の密着性(以下、「耐光密着性」と略記する。)もより一層低下を抑制できることから、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
【0029】
前記光安定剤(B2)としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル基等のヒンダードフェノール基を有するヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。より具体的には、下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。この光安定剤(B2)は、前記光安定剤(B1)と併用することもできる。
【0031】
本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物での、前記ヒンダードアミン系光安定剤(B)の配合量は、環状オレフィン樹脂との初期密着性、及び、耐光密着性の低下をより一層抑制できることから、上記の活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、0.05〜5質量部が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.3〜1.5質量%が更に好ましい。
【0032】
また、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物は、環状基材に塗工後、活性エネルギー線を照射することで硬化塗膜とすることができる。この活性エネルギー線とは、紫外線、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線をいう。活性エネルギー線として紫外線を照射して硬化塗膜とする場合には、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中に、後述する光重合開始剤(C)を添加し、硬化性を向上することが好ましい。また、必要であればさらに光増感剤(D)を添加して、硬化性を向上することもできる。一方、電子線、α線、β線、γ線等の電離放射線を用いる場合には、光重合開始剤(C)や光増感剤(D)を用いなくても速やかに硬化するので、特に光重合開始剤(C)や光増感剤(D)を添加する必要はない。
【0033】
前記光重合開始剤(C)としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−2−モルホリノ(4−チオメチルフェニル)プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン等のアセトフェノン系化合物;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾイン系化合物;2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシド等のアシルホスフィンオキシド系化合物;ベンジル(ジベンゾイル)、メチルフェニルグリオキシエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチルエステル、オキシフェニル酢酸2−(2−オキソ−2−フェニルアセトキシエトキシ)エチルエステル等のベンジル系化合物;ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル−4−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物;2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン等のチオキサントン系化合物;ミヒラ−ケトン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン等のアミノベンゾフェノン系化合物;10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアンスラキノン、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、1−[4−(4−ベンゾイルフェニルサルファニル)フェニル]−2−メチル−2−(4−メチルフェニルサルフォニル)プロパン−1−オン等が挙げられる。これらの光重合開始剤(C)は、1種で用いることも、2種以上併用することもできる。
【0034】
また、前記光増感剤(D)としては、例えば、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、トリブチルアミン等の3級アミン化合物、o−トリルチオ尿素等の尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオホスフェート、s−ベンジルイソチウロニウム−p−トルエンスルホネート等の硫黄化合物などが挙げられる。
【0035】
上記の光重合開始剤(C)及び光増感剤(D)の使用量は、本発明の活性エネルギー線硬化性組成物中の前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)及び前記化合物(B)の合計100質量部に対し、各々0.05〜20質量部が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0036】
本発明の活性エネルギー線硬化性組成物には、上記の活性エネルギー線硬化性化合物(A)、ヒンダードアミン系光安定剤(B)等以外に、用途、要求特性に応じて、有機溶剤、重合禁止剤、表面調整剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、耐光安定剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、有機顔料、無機顔料、顔料分散剤、有機ビーズ等の添加剤;酸化ケイ素(シリカ粒子)、酸化アルミニウム、酸化チタン、ジルコニア、五酸化アンチモン等の無機充填剤などを配合することができる。これらその他の配合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0037】
前記無機充填剤の中でもシリカ粒子を配合することにより、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面の耐擦傷性をより向上でき、基材への密着性もより向上できる。前記シリカ粒子としては、その表面が有機基で表面修飾されたものであっても表面修飾されていないものであってもよい。また、前記シリカ粒子は、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜の透明性及び表面の耐擦傷性をより向上できることから、ナノメーターオーダーサイズのシリカ微粒子が好ましく、コロイダルシリカがより好ましい。前記シリカ微粒子の平均粒子径としては、5〜200nmの範囲が好ましく、5〜100nmの範囲がより好ましい。なお、この平均粒子径は、動的光散乱法で測定した値である。
【0038】
前記無機充填剤を配合する場合のその配合量は、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面の耐擦傷性をより向上でき、基材への密着性もより向上できることから、前記活性エネルギー線硬化性化合物(A)100質量部に対して、1〜150質量部が好ましく、5〜100質量部がより好ましい。
【0039】
前記有機溶媒は、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の溶液粘度を適宜調整する上で有用であり、特に薄膜コーティングを行うためには、膜厚を調整することが容易となる。ここで使用できる有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類などが挙げられる。これらの溶剤は、1種で用いることも、2種以上を併用することもできる。
【0040】
本発明の環状オレフィン樹脂フィルムに用いる環状オレフィン樹脂フィルム基材としては、環状オレフィンを重合したものであれば、単独重合体であっても、共重合体であっても特に制限なく用いることができる。環状オレフィン樹脂の市販品としては、例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEONOR(登録商標)」、「ZEONEX(登録商標)」;JSR株式会社製の「ARTON(登録商標)」;ポリプラスチックス株式会社製の「TOPAS(登録商標)」等が挙げられる。
【0041】
前記環状オレフィン樹脂フィルム基材は、環状オレフィン樹脂をフィルム上に成形したものである。また、環状オレフィン樹脂フィルム基材の表面は、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜との密着性を向上するため、サンドブラスト法、溶剤処理法等による表面の凹凸化処理、電気的処理(コロナ放電処理、大気圧プラズマ処理)、クロム酸処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線・電子線照射処理、酸化処理等により処理をしたものが好ましく、これらの中でもコロナ放電処理、大気圧プラズマ処理等の電気的処理をしたものがより好ましい。
【0042】
また、前記環状オレフィン樹脂フィルム基材の厚さは、1〜200μmの範囲が好ましく、5〜100μmの範囲がより好ましく、10〜50μmの範囲がさらに好ましい。フィルム基材の厚さを当該範囲とすることで、環状オレフィン樹脂フィルムの片面に、本発明で用いる活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を設けた場合にもカールを抑制しやすくなる。
【0043】
本発明の環状オレフィン樹脂フィルムは、環状オレフィン樹脂フィルム基材の少なくとも1面に、活性エネルギー線硬化性組成物を塗工し、その後活性エネルギー線を照射して硬化塗膜とすることで得られたものである。環状オレフィン樹脂フィルムに活性エネルギー線硬化性組成物を塗工する方法としては、例えば、ダイコート、マイクログラビアコート、グラビアコート、ロールコート、コンマコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、かけ渡しコート、ディップコート、スピンナーコート、ホイーラーコート、刷毛塗り、シルクスクリーンによるベタコート、ワイヤーバーコート、フローコート等が挙げられる。
【0044】
また、活性エネルギー線硬化性組成物を硬化するために、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、紫外線を照射する装置としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ(フュージョンランプ)、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、水銀−キセノンランプ、ショートアーク灯、ヘリウム・カドミニウムレーザー、アルゴンレーザー、太陽光、LED等が挙げられる。
【0045】
本発明の環状オレフィン樹脂フィルムは、その基材の優れた光学特性、寸法安定性、耐熱性、透明性に加え、その表面の耐擦傷性に優れることから、各種用途に適用できるが、特に、液晶ディスプレイ(LCD)、有機ELディスプレイ(OLED)等の画像表示装置の画像表示部に用いる光学フィルムとして有用である。特に、薄型であっても優れた耐擦傷性を有することから、例えば、電子手帳、携帯電話、スマートフォン、携帯オーディオプレイヤー、モバイルパソコン、タブレット端末等の小型化や薄型化の要請の高い携帯電子端末の画像表示装置の画像表示部の光学フィルムとして好適に用いることができる。また、光学フィルムとして用いる場合、画像表示装置の画像表示部の最表面に用いる保護フィルム、タッチパネルの基材として用いることができる。さらに、保護フィルムとして用いた場合には、例えば、LCDモジュールやOLEDモジュール等の画像表示モジュールの上部に当該画像表示モジュールを保護する透明パネルが設けられた構成の画像表示装置においては、当該透明パネルの表面又は裏面に貼り付けて使用することで、傷つき防止や透明パネルが破損した際の飛散防止に有効である。
【実施例】
【0046】
以下に実施例により本発明をより具体的に説明する。
【0047】
(調製例1)
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下、「DPHA」と略記する。)及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート(以下、「DPPA」と略記する。)の混合物(DPHA/DPPA=65/35(質量比))100質量部、シリカ微粒子(日産化学工業株式会社製「MEK−ST40」、平均粒子径10〜20nm、オルガノシリカゾル(コロイダルシリカ)の40質量%メチルエチルケトン分散液)25質量部(シリカ微粒子として10質量部)、メタクリルロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブ(登録商標) LA−87」;2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート)1質量部、及び1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASFジャパン株式会社製「IRGACURE(登録商標) 184」)6質量部を均一に攪拌した後、メチルエチルケトンで希釈して、不揮発分50質量%の活性エネルギー線硬化性組成物(1)を調製した。
【0048】
(調製例2)
アデカスタブ LA−87の配合量を、1質量部から0.1質量部に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(2)を調製した。
【0049】
(調製例3)
アデカスタブ LA−87の配合量を、1質量部から0.5質量部に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(3)を調製した。
【0050】
(調製例4)
アデカスタブ LA−87の配合量を、1質量部から2質量部に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(4)を調製した。
【0051】
(調製例5)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、メタクリルロイル基を有するヒンダードアミン系光安定剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブ(登録商標) LA−82」;1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(5)を調製した。
【0052】
(調製例6)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードフェノール基を有するヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) PA144」;下記式(1)で表される化合物)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(6)を調製した。
【0053】
【化2】
【0054】
(比較調製例1)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を用いなかった以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R1)を調製した。
【0055】
(比較調製例2)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 111FDL」;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールの重合物とN,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンとの質量比1:1の混合物)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R2)を調製した。
【0056】
(比較調製例3)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 770DF」;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバシエート)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R3)を調製した。
【0057】
(比較調製例4)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブ(登録商標) LA−81」;ビス(1−ウンデカンオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R4)を調製した。
【0058】
(比較調製例5)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 123」;デカン二酸ビス{2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)ピペリジン−4−イル})に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R5)を調製した。
【0059】
(比較調製例6)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 5100」;ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシピペリジン−4−イル)−1,10−デカンジオエートと1,8−ビス[{2,2,6,6−テトラメチル−4−((2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシピペリジン−4−イル)−デカン−1,10−ジイル)ピペリジン−1−イル}オキシ]オクタンの混合物)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R6)を調製した。
【0060】
(比較調製例7)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 292」;ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート70〜80質量%とメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケート20〜30質量%の混合物)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R7)を調製した。
【0061】
(比較調製例8)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、ヒンダードアミン系光安定剤(株式会社ADEKA製「アデカスタブ(登録商標) LA−52」;テトラキス(1,2,2,6,6―ペンタメチル−4−ピペリジル)ブタン−1,2,3,4−テトラカルボキシレート)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R8)を調製した。
【0062】
(比較調製例9)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 400」)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R9)を調製した。
【0063】
(比較調製例10)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、紫外線吸収剤(BASFジャパン株式会社製「TINUVIN(登録商標) 384−2」)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R10)を調製した。
【0064】
(比較調製例11)
調製例1で用いたアデカスタブ LA−87を、酸化防止剤(BASFジャパン株式会社製「IRGANOX(登録商標) 1010」)に変更した以外は調製例1と同様に行い、活性エネルギー線硬化性組成物(R11)を調製した。
【0065】
(実施例1)
【0066】
調製例1で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(1)を、予めその表面を電気的処理(コロナ放電処理;出力100W、速度1.0m/分)した環状オレフィン樹脂フィルム基材(日本ゼオン株式会社製「ZEONOR(登録商標)フィルム ZF16−100」、厚さ100μm)上に、ワイヤーバーを用いて塗布し、60℃で90秒間加熱後、空気雰囲気下で紫外線照射装置(アイグラフィックス株式会社製「MIDN−042−C1」、ランプ:120W/cm、高圧水銀灯)を用いて、照射光量0.4J/cm
2で紫外線を照射して、厚さ2μmの硬化塗膜を有する環状オレフィン樹脂フィルム(1)を得た。
【0067】
[耐擦傷性の評価]
上記で得られた環状オレフィン樹脂フィルム(1)の硬化塗膜の表面について、クロックメーター形摩擦試験器(直径1.0cm円形摩擦子、スチールウール#0000、荷重500g、10往復)を用いて試験を行い、試験後の硬化塗膜表面を目視で観察し、下記の基準により耐擦傷性を評価した。
A:傷が無い。
B:浅い傷が5本以下である。
C:傷が5本以下である。
D:傷が多数ある。
E:顕著に深い傷が多数ある。
【0068】
[初期密着性の評価]
上記で得られた環状オレフィン樹脂フィルム(1)の硬化塗膜表面に1mm間隔で縦、横11本の切れ目を入れて100個のマス目を作製した。次いで、セロハンテープ(ニチバン株式会社製「セロテープ(登録商標) CT−18」)をその表面に密着させた後、一気に剥がす操作を2回繰り返した。剥離せずに残った残面積比率から、下記の基準により初期密着性を評価した。なお、下記の基準でD〜Fの評価となったものは、不合格と判定した。
A:残面積比率が100%である。
B:残面積比率が95%以上99%以下である。
C:残面積比率が85%以上94%以下である。
D:残面積比率が50%以上84%以下である。
E:残面積比率が35%以上49%以下である。
F:残面積比率が34%以下である。
【0069】
[耐光性試験後の密着性(耐光密着性)の評価]
上記で得られた環状オレフィン樹脂フィルム(1)について、サンシャインウェザオメーターによる促進耐候性試験(JIS L0891準拠し、試験条件は下記の通りである。)を実施し、試験後に上記の初期密着性の評価と同様に行い、耐光密着性を評価した。
光源:サンシャインカーボンアーク灯連続照射
温度:63℃
相対湿度:50%RH
照射時間:48時間
降雨の周期及び時間:設定なし
【0070】
(実施例2〜6及び比較例1〜11)
上記の調製例2〜6及び比較調製例1〜11で得られた活性エネルギー線硬化性組成物(2)〜(6)及び(R1)〜(R11)を用いた以外は、実施例1と同様に、それぞれの硬化塗膜を有する環状オレフィン樹脂フィルム(2)〜(6)及び(R1)〜(R11)を作成し、得られた環状オレフィン樹脂フィルムについて、耐擦傷性、初期密着性、及び耐光密着性を評価した。
【0071】
上記の調製例1〜6及び比較調製例1〜11で調製した活性エネルギー線硬化性組成物の組成、及び上記で得られた環状オレフィン樹脂フィルムの評価結果を表1〜3に示す。なお、表1〜3中の組成は、すべて不揮発分量で記載している。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
表1に示した評価結果から、本発明の環状オレフィン樹脂フィルムである実施例1〜6のものは、そのフィルムが有する活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜表面の耐擦傷性に優れ、環状オレフィン樹脂フィルム基材との初期密着性も高く、さらに耐光密着性(耐光試験後の密着性)も優れたものであった。
【0076】
一方、表2及び3に示した比較例1〜11は、本発明で用いるヒンダードアミン系光安定剤を含有しない活性エネルギー線硬化性組成物の硬化塗膜を有する環状オレフィン樹脂フィルムである。これらの環状オレフィン樹脂フィルムは、耐擦傷性、初期密着性及び耐光密着性の少なくとも1つが十分でなく、実用性に問題があった。