特許第6331358号(P6331358)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6331358消臭剤、消臭剤の製造方法、消臭システム、消臭加工液、消臭加工液の製造方法及び繊維製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331358
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】消臭剤、消臭剤の製造方法、消臭システム、消臭加工液、消臭加工液の製造方法及び繊維製品
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20180521BHJP
   D06M 11/72 20060101ALI20180521BHJP
   D06M 11/44 20060101ALI20180521BHJP
   D06M 11/77 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   A61L9/01 B
   D06M11/72
   D06M11/44
   D06M11/77
【請求項の数】4
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-244836(P2013-244836)
(22)【出願日】2013年11月27日
(65)【公開番号】特開2015-100599(P2015-100599A)
(43)【公開日】2015年6月4日
【審査請求日】2016年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【弁理士】
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】西岡 亮子
【審査官】 中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−008357(JP,A)
【文献】 特開2009−090012(JP,A)
【文献】 特開2012−066085(JP,A)
【文献】 特開2012−072509(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/040424(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0195845(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/
D04H 1/
D06M 11/、13/
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)一次平均粒子径0.01μm〜10μmである難水溶性ポリリン酸(部分)金属塩100質量部、(b)アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤8〜60質量部、(c)アクリル系高分子およびシリコーン系高分子を合計で10〜130質量部、(f)一次平均粒子径0.005μm〜2μmである酸化亜鉛10〜30質量部並びに(d)水6000〜16000質量部、を含有する消臭加工液。
【請求項2】
少なくとも、(a)一次平均粒子径0.01μm〜10μmである難水溶性ポリリン酸(部分)金属塩100質量部、(b)アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤8〜60質量部、(c)アクリル系高分子およびシリコーン系高分子を合計で10〜130質量部、並びに(d)水200〜1000質量部、を混合し、混合液とする混合工程、該混合液を超音波処理して消臭剤を得る超音波処理工程、及び、該消臭剤と、(f)一次平均粒子径0.005μm〜2μmである酸化亜鉛と、(d)水とを混合して、請求項1に記載の消臭加工液を得る工程を含む、消臭加工液の製造方法
【請求項3】
少なくとも、請求項に記載の消臭加工液が含浸された繊維を乾燥する工程を含む、繊維製品の製造方法
【請求項4】
前記繊維が化学繊維又は化学繊維混紡繊維である請求項に記載の繊維製品の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消臭剤、消臭剤の製造方法、消臭システム、消臭加工液、消臭加工液の製造方法及び繊維製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、特に肌着などの衣類に対し、汗等に由来する悪臭を除くための消臭性が強く求められてきている。そのような背景において、アンモニア、酢酸という酸・塩基成分を共に消臭でき、悪臭、特に汗臭に対する高い消臭性を有する消臭剤を得るため、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛、スメクタイト及び水を含有する消臭剤が検討された(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−90012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、沈降抑止性及び低起泡性に優れた消臭加工液を与え、かつ、酸・塩基成分共に消臭でき、汗臭等の悪臭に対する消臭性が高く、洗浄が繰り返されても消臭性が低下しにくく、優れた吸水性及び風合いを有する繊維製品を与える、沈降抑止性に優れた消臭剤が希求されていたが、このような消臭剤は見出されていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、酸・塩基成分共に消臭でき、汗臭等の悪臭に対する消臭性が高く、洗浄が繰り返されても消臭性が低下しにくく、優れた吸水性及び風合いを有する繊維製品を与える、沈降抑止性に優れた消臭剤の提供である。本発明が解決しようとする別の課題は、当該消臭剤を含む消臭システムの提供である。本発明が解決しようとする更に別の課題は、消臭成分の沈降抑止性及び低起泡性に優れる消臭加工液の提供である。本発明が解決しようとする更に別の課題は、当該消臭加工液を用いた繊維製品の提供である。本発明が解決しようとする更に別の課題は、消臭剤の製造方法の提供である。本発明が解決しようとする更に別の課題は、消臭加工液の製造方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者は、鋭意検討の結果、(a)難水溶性金属塩、(b)分散剤、(c)バインダー高分子、及び(d)水、をそれぞれ特定量含有する消臭剤が、それ自身の沈降抑止性に優れる他、沈降抑止性及び低起泡性に優れた消臭加工液を与え、かつ、酸・塩基成分共に消臭でき、汗臭等の悪臭に対する消臭性が高く、洗浄が繰り返されても消臭性が低下しにくく、高い吸水性及び風合いを有する繊維製品を与えることを見出し、本発明の消臭剤、消臭システム、消臭加工液、繊維製品、消臭剤の製造方法及び消臭加工液の製造方法を完成させるに至った。
【0006】
本発明の消臭剤は、(a)難水溶性金属塩100質量部、(b)分散剤8〜60質量部、(c)バインダー高分子5〜150質量部、及び(d)水200〜1000質量部、を含有する。
【0007】
本発明の消臭剤の製造方法は、少なくとも、(a)難水溶性金属塩100質量部、(b)分散剤8〜60質量部、(c)バインダー高分子5〜150質量部、及び(d)水200〜1000質量部、を混合し混合液とする混合工程、並びに、該混合液を構成する該(a)難水溶性金属塩を少なくとも含む分散液、又は、該混合液、を超音波処理する超音波処理工程、を含む。
【0008】
本発明の消臭システムは、前記消臭剤又は前記消臭剤の製造方法により得られる消臭剤と、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、(f)難水溶性金属酸化物5〜50質量部及び(d)水7〜80質量部を含有する消臭助剤と、を含む。
【0009】
本発明の消臭加工液は、(a)難水溶性金属塩100質量部、(b)分散剤8〜60質量部、(c)バインダー高分子5〜150質量部、及び(d)水4000〜20000質量部、を含有する。本発明の消臭加工液は、好ましくは、更に、(f)難水溶性金属酸化物を、前記(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、5〜50質量部含有する。
【0010】
本発明の消臭加工液の製造方法は、少なくとも、前記消臭剤、又は、前記消臭剤の製造方法により得られる消臭剤と、(d)水と、を混合して、(d)水の総量を、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対して、4000〜20000質量部とする混合工程を含む。本発明の消臭加工液の製造方法は、好ましくは、少なくとも、前記消臭剤、又は、前記消臭剤の製造方法により得られる消臭剤と、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、(f)難水溶性金属酸化物5〜50質量部及び(d)水7〜80質量部を含有する消臭助剤と、(d)水と、を混合して、(d)水の総量を、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対して、4000〜20000質量部とする混合工程を含む。
【0011】
本発明の繊維製品は、少なくとも、前記消臭加工液、又は、前記消臭加工液の製造方法により得られる消臭加工液、が含浸された繊維を乾燥して得られる。
本発明の繊維製品は、好ましくは、前記繊維が化学繊維又は化学繊維混紡繊維である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の消臭剤及び消臭システムは、それ自身の沈降抑止性に優れる他、沈降抑止性及び低起泡性に優れた消臭加工液を与え、かつ、酸・塩基成分共に消臭でき、汗臭等の悪臭に対する消臭性が高く、洗浄が繰り返されても消臭性が低下しにくく、高い吸水性及び風合いを有する繊維製品を与える。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の消臭剤は、(a)難水溶性金属塩100質量部、(b)分散剤8〜60質量部、(c)バインダー高分子5〜150質量部、及び(d)水200〜1000質量部、を含有する。
本発明の消臭システムは、本発明の消臭剤と、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、(f)難水溶性金属酸化物5〜50質量部及び(d)水7〜80質量部を含有する消臭助剤と、を含む。
本発明の消臭加工液は、(a)難水溶性金属塩100質量部、(b)分散剤8〜60質量部、(c)バインダー高分子5〜150質量部、及び(d)水4000〜20000質量部、を含有する。
本発明の消臭加工液は、好ましくは、更に、(f)難水溶性金属酸化物を、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、5〜50質量部含有する。
【0014】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液は、(a)難水溶性金属塩を含有する。(a)難水溶性金属塩には、本発明において、金属酸化物は含まれない。(a)難水溶性金属塩は、アンモニア等の塩基性悪臭及び酢酸等の酸性悪臭に対して有効である。(a)難水溶性金属塩は、水に難溶性である。なお、「難水溶性」とは、20℃、湿度50%の雰囲気下における水100gに対する溶解度が0.5g未満のものをいう。(a)難水溶性金属塩は、特定のものに限定されない。例としては、難水溶性ポリリン酸(部分)金属塩、難水溶性ケイ酸金属塩、難水溶性シュウ酸金属塩、難水溶性硫酸金属塩、難水溶性炭酸金属塩、難水溶性過塩素酸金属塩、難水溶性クロム酸金属塩、難水溶性金属塩化物、難水溶性金属硫化物、難水溶性金属水酸化物等が挙げられる。中でも、難水溶性ポリリン酸(部分)金属塩が好ましく、難水溶性ポリリン酸二水素金属塩がより好ましく、難水溶性トリポリリン酸二水素金属塩が更に好ましく、難水溶性トリポリリン酸二水素多価金属塩が特に好ましく、トリポリリン酸二水素アルミニウムが最も好ましい。(a)難水溶性金属塩は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0015】
難水溶性ポリリン酸(部分)金属塩の例としては、難水溶性ポリリン酸二水素金属塩、難水溶性ポリリン酸一水素金属塩、難水溶性ポリリン酸完全金属塩等が挙げられる。中でも、難水溶性ポリリン酸二水素金属塩が好ましい。
【0016】
難水溶性ポリリン酸二水素金属塩の例としては、難水溶性二リン酸二水素金属塩、難水溶性三リン酸二水素金属塩(難水溶性トリポリリン酸二水素金属塩と同義)、難水溶性四リン酸二水素金属塩等が挙げられる。中でも、難水溶性トリポリリン酸二水素金属塩が好ましい。
【0017】
難水溶性トリポリリン酸二水素金属塩の例としては、難水溶性トリポリリン酸二水素一価金属塩、難水溶性トリポリリン酸二水素多価金属塩が挙げられる。中でも、難水溶性トリポリリン酸二水素多価金属塩が好ましい。
【0018】
難水溶性トリポリリン酸二水素多価金属塩の例としては、トリポリリン酸二水素アルミニウム、トリポリリン酸二水素亜鉛、トリポリリン酸二水素マグネシウム等が挙げられる。中でも、難水溶性トリポリリン酸二水素アルミニウムが好ましい。
【0019】
難水溶性ケイ酸金属塩の例としては、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム等が挙げられる。
【0020】
難水溶性シュウ酸金属塩の例としては、シュウ酸カルシウム等が挙げられる。
【0021】
難水溶性硫酸金属塩の例としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸鉛等が挙げられる。
【0022】
難水溶性炭酸金属塩の例としては、炭酸銀、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛、炭酸鉛等が挙げられる。
【0023】
難水溶性過塩素酸金属塩の例としては、過塩素酸カリウム等が挙げられる。
【0024】
難水溶性クロム酸金属塩の例としては、クロム酸銀、クロム酸カルシウム、クロム酸バリウム、クロム酸鉛等が挙げられる。
【0025】
難水溶性金属塩化物の例としては、塩化銀等が挙げられる。
【0026】
難水溶性金属硫化物の例としては、硫化銀、硫化銅、硫化カルシウム、硫化バリウム、硫化マンガン、硫化鉄、硫化コバルト、硫化ニッケル、硫化亜鉛、硫化カドミウム、硫化錫、硫化鉛等が挙げられる。
【0027】
難水溶性金属水酸化物の例としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等が挙げられる。
【0028】
(a)難水溶性金属塩は、粒子状であることが好ましい。(a)難水溶性金属塩の一次平均粒子径は、好ましくは、0.01μm〜100μmであり、より好ましくは、0.01μm〜35μmであり、更に好ましくは、0.01μm〜10μmである。上記の範囲内の一次平均粒子径を有する(a)難水溶性金属塩を用いることにより、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中において、(a)難水溶性金属塩の沈降をより効果的に防ぐことができ、かつ、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液を、アンモニア等の塩基性悪臭及び酢酸等の酸性悪臭に、より優れた消臭性能を発揮するものとすることができ、更に、本発明の繊維製品が白化することを効果的に防止できる。
【0029】
(a)難水溶性金属塩の一次平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による写真に基づき、50個以上の粒子のFeret定方向接線径を測定し、単純算術平均して求める。
【0030】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中の(a)難水溶性金属塩の含有量(含有割合)を所定の範囲内に定めることにより、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液を、アンモニア等の塩基性悪臭及び酢酸等の酸性悪臭に対し、優れた消臭性能を発揮するものとすることができる。更に、本発明の繊維製品が白化することを防止できる。
【0031】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液は、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、(b)分散剤8〜60質量部を含有する。
【0032】
(b)分散剤は、(a)難水溶性金属塩の分散性を向上させ、かつ、消臭剤及び消臭システムの沈降抑止性と、消臭加工液の沈降抑止性及び低起泡性を良好にする作用を有する。また、(b)分散剤により、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液の、アンモニア等の塩基性悪臭及び酢酸等の酸性悪臭に対する消臭性能を更に向上させることができる。
【0033】
(b)分散剤としては、水溶性分散剤が好ましい。水溶性分散剤を用いることにより、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中において消臭成分の沈降を効果的に抑止することができる。なお、「水溶性」とは、20℃、湿度50%の雰囲気下における水100gに対する溶解度が1g以上のものをいう。
(b)分散剤は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0034】
水溶性分散剤としては、スメクタイト等の水溶性無機分散剤;水溶性有機高分子化合物分散剤、水溶性有機低分子化合物分散剤等の水溶性有機分散剤;等が挙げられる。中でも、水溶性有機分散剤が好ましく、少量の添加により効果を奏することから、水溶性有機高分子化合物分散剤がより好ましく、アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する水溶性有機高分子化合物分散剤が更に好ましく、[アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、オキシカルボニル基となっているものを除くカルボニル基、カルボキシル基、及び、カルボン酸塩、からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機高分子化合物分散剤]が特に好ましい。
【0035】
アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する水溶性有機高分子化合物分散剤としては、特に限定されないが、例として、後述する、[アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、オキシカルボニル基となっているものを除くカルボニル基、カルボキシル基、及び、カルボン酸塩、からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機高分子化合物分散剤];ポリ(メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)などの、[アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、オキシカルボニル基となっているものを除くカルボニル基、カルボキシル基、及び、カルボン酸塩、からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機高分子化合物分散剤]以外の、アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する水溶性有機高分子化合物分散剤;が挙げられる。
【0036】
アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する水溶性有機高分子化合物分散剤以外の水溶性有機高分子化合物分散剤としては、特に限定されないが、例として、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(スチレン−無水マレイン酸)、ポリリン酸などの、水溶性有機酸性ポリマー分散剤;ポリ(アクリル酸ナトリウム)、ポリ(メタクリル酸ナトリウム)、ポリ(スチレン−無水マレイン酸ナトリウム)、ポリ(メタクリル酸エトキシリン酸)、ポリ(アクリル酸−アクリル酸ナトリウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸カリウム)、ポリ(スチレン−アクリル酸ナトリウム−無水マレイン酸)、ポリ(メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸ナトリウム)などの、アンモニウム塩を含有しない水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤;ポリビニルアルコールなどの、水溶性ポリアルコール分散剤;ポリエチレンオキシドなどの、水溶性ポリアルキレンオキシド分散剤;ポリ(エチレンイミン)などの、水溶性ポリ(アルキレンイミン)分散剤;でんぷん、ショ糖などの天然水溶性有機高分子化合物分散剤;等が挙げられる。
【0037】
[アミノ基、アミン塩及びアンモニウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、オキシカルボニル基となっているものを除くカルボニル基、カルボキシル基、及び、カルボン酸塩、からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機高分子化合物分散剤]としては、特に限定されないが、例として、ポリ(スチレン−マレイン酸アンモニウム)、ポリ(スチレン−無水マレイン酸−マレイン酸アンモニウム)、ポリ(スチレン−メタクリル酸エトキシリン酸−無水マレイン酸−マレイン酸アンモニウム)、ポリ(スチレン−アクリル酸アンモニウム−無水マレイン酸)、ポリ(アクリル酸−アクリル酸アンモニウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸アンモニウム)、ポリ(アクリル酸−アクリル酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸アンモニウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)、ポリ(アクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)などの、[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤];ポリ(アクリル酸2−アミノエチル−アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸)、ポリ(アクリル酸2−アミノエチル−アクリル酸−アクリル酸エトキシリン酸)、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エトキシリン酸)などの、[アミノ基と、カルボキシル基とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー分散剤];ポリビニルピロリドンなどの、アミド結合を有する水溶性有機高分子化合物分散剤;等が挙げられる。
【0038】
中でも、[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤]、[アミノ基と、カルボキシル基とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー分散剤]、アミド結合を有する水溶性有機高分子化合物分散剤が好ましく、[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤]、[アミノ基と、カルボキシル基とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー分散剤]がより好ましく、[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤]が更に好ましい。
【0039】
[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤]は、市販されており、例として、ビックケミー・ジャパン株式会社製、「ANTI−TERRA−250」、「DISPERBYK(品番のないもの)」などを好ましいものとして挙げることができる(ANTI−TERRA及びDISPERBYKは登録商標)。
【0040】
[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマー塩分散剤]としては、既に上述したもの等が例として挙げられるが、中でも、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸)、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム)、ポリ(メタクリル酸エタノールアンモニウム)などの、[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩分散剤]が好ましい。また、上記のものに更にリン酸基及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を有する、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸)、ポリ(メタクリル酸2−アミノエチル−メタクリル酸−メタクリル酸エタノールアンモニウム−メタクリル酸エトキシリン酸−メタクリル酸エトキシリン酸エタノールアンモニウム)などの、[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種と、リン酸基及びリン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩分散剤]も好ましい。
【0041】
[アンモニウム塩と、カルボキシル基及びカルボン酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種とを、共に有する水溶性有機酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩分散剤]としては、上述したものが挙げられるが、アミン価が、好ましくは20〜90mgKOH/g、より好ましくは30〜85mgKOH/gのもの、酸価が、好ましくは20〜90mgKOH/g、より好ましくは25〜85mgKOH/gのもの、比重が、好ましくは0.8〜2.0g/cm、好ましくは0.9〜1.8g/cmのもの、重量平均分子量が、好ましくは1500〜50000のもの、より好ましくは1800〜10000のもの、更に好ましくは2000〜4000のもの、が望ましい。重量平均分子量は、ポリエチレンオキシドやポリエチレングリコールを標準物質として、水やn−ブタノールなどの展開溶媒を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0042】
水溶性有機低分子化合物分散剤としては、ペンタエリスリトール、エタノールアミン、エチレンジアミン、クレゾール等が挙げられる。
【0043】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液に含有される(b)分散剤の量は、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、8〜60質量部であり、好ましくは8〜50質量部であり、より好ましくは9〜50質量部であり、更に好ましくは10〜40質量部であり、特に好ましくは16〜35質量部である。本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液に含有される(b)分散剤の量が前記の範囲内にあることにより、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中の各成分が沈降することを効果的に抑制することができ、アンモニア等の塩基性悪臭及び酢酸等の酸性悪臭に対する消臭性能を更に効果的に向上させることができ、かつ、本発明の繊維製品の吸水性を更に高い状態にすることができ、更に、繊維製品において、繊維製品が白化することを効果的に防止できる。
【0044】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液は(c)バインダー高分子を含有する。(c)バインダー高分子は特定のものに限定されず、樹脂、エラストマー、ゴムなどの各種高分子から適宜選択することができるが、常温又は高温下にて(a)難水溶性金属塩や繊維に対する接着性や粘着性を示すもの、特に高温下にて(a)難水溶性金属塩や繊維に対する接着性や粘着性を示し、かつ、常温下では適度に硬化して(a)難水溶性金属塩や繊維に固着し、水洗しても固着状態を維持するものが望ましい。好ましい(c)バインダー高分子は、アクリル系高分子、シリコーン系高分子及びウレタン系高分子からなる群より選ばれる少なくとも1種である。より好ましい(c)バインダー高分子は、アクリル系高分子とシリコーン系高分子との混合物、アクリル系高分子である。
(c)バインダー高分子は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
前記(c)バインダー高分子は、乳化液や懸濁液の状態で使用されることが、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中に微分散させることができ、そのため各成分を有効に機能させることができ、かつ、繊維製品に均等に各成分を付着させることができるために好ましい。
上記(c)バインダー高分子を用いることにより、本発明の繊維製品は洗濯等の洗浄を繰り返しても消臭性に優れたものとすることができる。
【0046】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中の(c)バインダー高分子の含有量は、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、5〜150質量部、好ましくは10〜130質量部、より好ましくは15〜120質量部である。
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中の(c)バインダー高分子の含有量が前記の範囲内にあることにより、本発明の繊維製品は洗濯等の洗浄を繰り返しても消臭性に優れ、吸水性及び風合いに優れたものとすることができ、かつ、本発明の消臭加工液は低起泡性に優れたものとすることができる。
【0047】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液は(d)水を含有する。
本発明の消臭剤中の(d)水の含有量は、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、200〜1000質量部であり、好ましくは250〜800質量部であり、より好ましくは300〜600質量部である。
本発明の消臭剤中の(d)水の含有量が前記の範囲内にあることにより、本発明の消臭剤は各成分が均一に溶解又は分散することができ、沈降抑止性に優れ、かつ、取り扱い性や輸送性に優れるものとすることができる。
【0048】
本発明の消臭システムを構成する消臭剤中の(d)水の含有量は、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、200〜1000質量部であり、好ましくは250〜800質量部であり、より好ましくは300〜600質量部である。また、後述する本発明の消臭システムを構成する消臭助剤中の(d)水の含有量は、本発明の消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、7〜80質量部であり、好ましくは10〜60質量部であり、より好ましくは15〜35質量部である。
本発明の消臭システムを構成する消臭剤及び消臭助剤中の(d)水の含有量がそれぞれ前記の範囲内にあることにより、本発明の消臭システムは取り扱い性や輸送性に優れるものとすることができる。
【0049】
後述する本発明の消臭加工液中の(d)水の含有量は、(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、4000〜20000質量部であり、好ましくは5000〜18000質量部であり、更に好ましい配合量は6000〜16000質量部である。
本発明の消臭加工液中の(d)水の含有量が前記の範囲内にあることにより、本発明の消臭加工液は各成分が均一に溶解又は分散することができ、沈降防止性に優れ、かつ、繊維に対する浸透性に優れるものとすることができる。
【0050】
本発明の消臭システムは、本発明の消臭剤、又は、後述する本発明の消臭剤の製造方法により得られる消臭剤と、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、(f)難水溶性金属酸化物5〜50質量部及び(d)水7〜80質量部を含有する消臭助剤と、を含む。
本発明の消臭システムにおいては、前記本発明の消臭剤と、前記消臭助剤とは、それぞれ、別途の形態として存在する。
【0051】
本発明の消臭システムを構成する消臭助剤は、(f)難水溶性金属酸化物を含有する。
(f)難水溶性金属酸化物は、アンモニア等の塩基性悪臭、及び、酢酸等の酸性悪臭に対して特に有効である。
【0052】
(f)難水溶性金属酸化物は、特定のものに限定されない。(f)難水溶性金属酸化物の例としては、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの、長周期表第4族金属の酸化物;酸化バナジウム、酸化ニオブなどの、長周期表第5族金属の酸化物;酸化クロム、酸化モリブデンなどの、長周期表第6族金属の酸化物;酸化マンガンなどの、長周期表第7族金属の酸化物;酸化鉄などの、長周期表第8族金属の酸化物;酸化コバルトなどの、長周期表第9族金属の酸化物;酸化ニッケルなどの、長周期表第10族金属の酸化物;酸化銅、酸化銀などの、長周期表第11族金属の酸化物;酸化亜鉛、酸化カドミウムなどの、長周期表第12族金属の酸化物;酸化アルミニウムなどの、長周期表第13族金属の酸化物;酸化ケイ素、酸化錫などの、長周期表第14族金属の酸化物;等が挙げられる。中でも、長周期表第4族金属の酸化物、長周期表第8族金属の酸化物、長周期表第11族金属の酸化物、長周期表第12族金属の酸化物、長周期表第13族金属の酸化物、長周期表第14族金属の酸化物が好ましく、酸化チタン、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ケイ素がより好ましく、酸化亜鉛が更に好ましい。
(f)難水溶性金属酸化物は1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
(f)難水溶性金属酸化物は粒子状であることが好ましい。(f)難水溶性金属酸化物の一次平均粒子径は、好ましくは、0.001μm〜100μmであり、より好ましくは、0.002μm〜50μmであり、更に好ましくは、0.003μm〜10μmであり、特に好ましくは、0.005μm〜2μmである。(f)難水溶性金属酸化物のBET比表面積は、好ましくは、0.1m/g〜100m/gであり、より好ましくは、1m/g〜100m/gであり、更に好ましくは、5m/g〜100m/gである。上記の範囲内の一次平均粒子径又はBET比表面積を有する(f)難水溶性金属酸化物を用いることにより、本発明の消臭システムを構成する消臭助剤中、及び、本発明の消臭加工液中において、(f)難水溶性金属酸化物の沈降を更に効果的に抑制することができ、かつ、本発明の消臭システム及び消臭加工液を、アンモニア等の塩基性悪臭、及び、酢酸等の酸性悪臭に、優れた消臭性能を発揮するものとすることができる。
【0054】
(f)難水溶性金属酸化物の一次平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による写真に基づき50個以上の粒子のFeret定方向接線径を測定し、単純算術平均して求める。
(f)難水溶性金属酸化物のBET比表面積は、ASTM D3037−89に規定されるBET法に準じて測定される。まず、窒素及びヘリウムの混合ガスをBET比表面積測定装置内に導入し、試料(BET比表面積の測定対象物)を入れた試料セルを液体窒素に浸して、窒素を試料表面に吸着させる。吸着平衡に達した後、試料セルを水浴に入れ常温まで温め、試料に付着していた窒素を脱着させる。窒素ガスの吸着、脱着時に試料セルを通過する前後の窒素ガスとヘリウムガスとの混合比は変化するので、この変化を窒素及びヘリウムの混合比が一定のガスを対照として熱伝導度検出器(TCD)で検知し、窒素ガスの吸着量および脱着量を求める。測定前に単位量の窒素ガスを装置内に導入してキャリブレーションを行い、TCDで検出した値に対応する表面績の値を求めておくことにより、その試料の表面積を求める。そして、その求めた表面積をその試料の質量で除すことにより、BET比表面積(単位:m/g)を求める。
BET比表面積は、粒子の形状にも影響され、また、一次平均粒子径との相関が大きいことで知られている。一般的には、一次平均粒子径が小さいほど、BET比表面積は大きなものとなる。
【0055】
本発明の消臭システムを構成する消臭助剤中の(f)難水溶性金属酸化物の含有量は、前記消臭システムを構成する消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、5〜50質量部であり、好ましくは8〜40質量部であり、より好ましくは10〜30質量部である。
本発明の消臭システムを構成する消臭助剤中の(f)難水溶性金属酸化物の含有量が前記の範囲内にあることにより、(a)難水溶性金属塩との量のバランスに優れるため、本発明の消臭システム及び消臭加工液を、アンモニア等の塩基性悪臭にも、酢酸等の酸性悪臭にも、優れた消臭性能を発揮するものとすることができる。
【0056】
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液は、上述した各成分の他、添加剤として、防腐剤;防黴剤;抗菌剤;架橋剤;カーボンブラック等の顔料;染料;エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;繊維用柔軟剤等を含有してもよい。本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中の、添加剤の配合量は、前記(a)、(b)、(c)、(d)及び(f)成分の合計量100質量部に対して、好ましくは10質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。
【0057】
本発明の消臭剤及び消臭加工液を、下着類、靴下、ストッキング、タイツ等の衣類;手袋;帽子;布オムツ;使い捨てオムツ;カーペット、絨毯、ゴザ、玄関用マット、トイレ用マット、風呂用マット等の敷物;布団;ベッド;ソファー;車用シート;靴の中敷;靴;その他繊維;壁紙;床材;壁材;屋根材;等に付着、含浸又は含浸後乾燥させて使用できる。
また、本発明の消臭剤及び消臭加工液を、室内用消臭剤、トイレ用消臭剤、喫煙所用消臭剤、車内用消臭剤、冷蔵庫用消臭剤等としても使用できる。
【0058】
本発明の消臭剤の製造方法は、少なくとも、(a)難水溶性金属塩100質量部、(b)分散剤8〜60質量部、(c)バインダー高分子5〜150質量部、及び(d)水200〜1000質量部、を混合し混合液とする混合工程、並びに、該混合液を構成する該(a)難水溶性金属塩を少なくとも含む分散液、又は、該混合液、を超音波処理する超音波処理工程、を含む。
本発明の消臭剤の製造方法において使用する各成分については、上述した消臭剤におけるものと同様であり、ここでは記載は割愛する。
【0059】
前記混合工程における混合条件については、特に限定されない。例としては、前記消臭剤を構成する各成分を、室温下(例えば20℃下)、スターラーやミキサーやディスパーのような攪拌機を用いて混合する方法などを挙げることができる。
【0060】
本発明の消臭剤の製造方法において、前記混合工程の最中、又は、前記混合工程の後に、該混合液を構成する前記(a)難水溶性金属塩を少なくとも含む分散液、又は、前記混合液、を超音波処理する超音波処理工程を実施する。
【0061】
本発明の消臭剤の製造方法においては、特に、(a)難水溶性金属塩を少なくとも含有する分散液に対して超音波処理を行うことが好ましい。
前記(a)難水溶性金属塩を少なくとも含有する分散液、又は、前記混合液を超音波処理することにより、前記分散液、又は、前記混合液中の各成分、特に(a)難水溶性金属塩の分散性を向上させることができる。
前記混合液中の各成分、特に(a)難水溶性金属塩が粒子状である場合、一次粒子同士が凝集して二次粒子を形成している場合がある。超音波処理を行うことにより、二次粒子の多くを解砕して一次粒子の状態に戻すことが可能になり、これにより分散性が向上する。それにより、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液中における各成分の沈降を更に効果的に抑制することができ、かつ、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液を、アンモニア等の塩基性悪臭及び酢酸等の酸性悪臭に、更に優れた消臭性能を発揮するものとすることができ、消臭加工液の低起泡性を更に良好とすることができ、かつ、本発明の繊維製品が白化することを更に効果的に防止できる。
超音波処理により解砕された一次粒子は、本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液に含有される(b)分散剤により、再び凝集して二次粒子になることを抑制されるため、本発明の消臭剤の製造方法により得られる消臭剤中の各成分は、更に沈降しにくい成分となる。
【0062】
超音波処理の条件としては、特に限定されないが、処理温度が好ましくは5〜60℃、より好ましくは10〜40℃;周波数が好ましくは16〜50kHz、より好ましくは16〜35kHz;出力を処理速度で除した、(出力/処理速度)の値として好ましくは0.4〜1500Wh/kg、より好ましくは5〜500Wh/kg、更に好ましくは10〜300Wh/kg;で処理することが望ましい。出力を処理速度で除したものは、「単位質量(1kg)当たりの消臭剤を処理する(消臭剤が受ける)超音波の仕事量(Wh)」に相当する。なお、出力及び処理速度そのものは、処理する消臭剤の規模に合わせて適宜設定すれば良いが、出力が好ましくは50〜20000W、より好ましくは500〜6000W;処理速度が好ましくは4〜150kg/h;が望ましい。なお、処理量に応じて、循環や冷却を行ってもよい。
【0063】
超音波処理を行う際に使用する超音波処理装置としては、エスエムテー社のUH50、UH−150、UH−300、UH−600、UH−600S、UH−600SH、UH−600SR、UH−600SR−1や、ヒールッシャー社のUP50H、UP100H、UP200H、UP200S、UP400S、UIP50、UIP250、UIP500hd、UIP1000hd、UIP2000hd、UIP4000、UIP10000、UIP16000等を挙げることができる。
【0064】
また、本発明の消臭システムにおいて、当該消臭システムを構成する消臭助剤に対し上述した方法にて同様に超音波処理を行い、(f)難水溶性金属酸化物の凝集を解砕してもよい。
【0065】
更に、後述する本発明の消臭加工液の製造方法において、当該消臭加工液に対し上述した方法にて同様に超音波処理を行い、各成分の凝集を解砕してもよい。
【0066】
本発明の消臭加工液の製造方法は、少なくとも、本発明の消臭剤、又は、本発明の消臭剤の製造方法により得られる消臭剤と、(d)水と、を混合して、(d)水の総量を、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対して、4000〜20000質量部とする混合工程を含む。
本発明の消臭加工液の製造方法は、好ましくは、少なくとも、本発明の消臭剤、又は、本発明の消臭剤の製造方法により得られる消臭剤と、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対し、(f)難水溶性金属酸化物5〜50質量部及び(d)水7〜80質量部を含有する消臭助剤と、(d)水と、を混合して、(d)水の総量を、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対して、4000〜20000質量部とする混合工程を含む。
本発明の消臭加工液の製造方法において使用する各成分については、上述した消臭剤及び消臭加工液におけるものと同様であり、ここでは記載は割愛する。但し、(d)水については、本発明の消臭加工液中の(d)水の総量を、前記消臭剤中の(a)難水溶性金属塩100質量部、すなわち、本発明の消臭加工液中の(a)難水溶性金属塩100質量部に対して、4000〜20000質量部とするように量を調整する。
【0067】
本発明の消臭加工液の製造方法においては、前記消臭剤として、本発明の製造方法により得られた消臭剤を用いることが好ましい。すなわち、超音波処理工程を含む本発明の製造方法により得られた消臭剤を用いて消臭加工液を製造することが好ましい。
なお、上述したように、本発明の消臭加工液に対し上述した方法にて同様に超音波処理を行い、各成分の凝集を解砕してもよい。
【0068】
本発明の繊維製品は、本発明の消臭加工液、又は、本発明の消臭加工液の製造方法により製造される消臭加工液が含浸された繊維を乾燥して得られる。
前記繊維が化学繊維又は化学繊維混紡繊維であることが好ましい。
前記消臭加工液を繊維に含浸・乾燥させる方法は、特に限定されない。当該方法の具体例としては、(I)前記本発明の消臭加工液を繊維にスプレー又は塗布した後、熱風乾燥、真空乾燥等により乾燥させて得る方法、(II)繊維を前記本発明の消臭加工液に浸漬させた後、熱風乾燥、真空乾燥等により乾燥させて得る方法等を挙げることができる。乾燥温度は、特に限定されるものではないが、20〜250℃が好ましく、40〜170℃がより好ましく、60〜150℃が更に好ましい。乾燥温度が上記の範囲内にあることにより、前記本発明の消臭加工液を、悪臭に対して、優れた消臭性能を発揮するものとすることができ、かつ、本発明の繊維製品を、洗濯等の洗浄を繰り返しても消臭性に優れたものとすることができ、かつ、繊維が傷むことを防止することができる。
【0069】
本発明の繊維製品に用いる繊維は、特に限定されるものではない。本発明の繊維製品に用いる繊維の具体例としては、綿(木綿)、ジュート、麻等の植物繊維、及び、羊毛、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、天蚕糸、絹等の動物繊維等の天然繊維;ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン及び、ポリウレタン等の合成繊維、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート、ペットボトルを再生してできたポリエステル等の再生繊維、ガラス繊維、及び、炭素繊維等の化学繊維;等を挙げることができる。本発明の繊維製品に用いる繊維は、一種類単独で用いても、二種類以上組み合わせた混紡繊維で用いてもよい。本発明の繊維製品に用いる繊維は、中でも、化学繊維又は化学繊維混紡繊維、すなわち、化学繊維より選ばれる少なくとも1種を含むものであることが好ましく、合成繊維及び再生繊維より選ばれる少なくとも1種を含むものであることがより好ましく、ポリエステル繊維又はポリエステル混紡繊維であることが更に好ましい。本発明の繊維製品に用いる繊維が、上述した種類の繊維であることにより、本発明の繊維製品は、悪臭に対する消臭性が高く、洗浄が繰り返されても消臭性が低下しにくいという特長を効果的に発現することができる。
【0070】
繊維製品の具体例としては、下着類、靴下、ストッキング、タイツ等の衣類;繊維製手袋;繊維製帽子;布オムツ;カーペット、絨毯、玄関用マット、トイレ用マット、風呂用マット等の敷物;布団;ベッド;繊維製ソファー;繊維製車用シート;靴の繊維製中敷;繊維製靴;その他繊維;等が挙げられる。好ましい繊維製品は、人体に直接触れる可能性のある繊維製品、具体的には、下着類、靴下、ストッキング、タイツ等の衣類;繊維製手袋;繊維製帽子;布オムツ;等が挙げられる。
【0071】
上述したようにして本発明の繊維製品を得るので、本発明の繊維製品には本発明の消臭加工液の成分が残存している。換言すれば、本発明の繊維製品は(a)難水溶性金属塩、(b)分散剤及び(c)バインダー高分子を含んでおり、実施態様によっては、(f)難水溶性金属酸化物を含み得る。
本発明の消臭剤、消臭システム及び消臭加工液は(c)バインダー高分子を含有するため、本発明の繊維製品を洗濯、クリーニング等の洗浄に繰り返し付しても、当該繊維製品の消臭効果は低下しにくい。
【実施例】
【0072】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り質量基準である。
【0073】
<消臭剤の沈降抑止性>
作製した消臭剤80gをポリスチレン容器(東罐興業社製 プラストコップ N71−215G ムジ :口径70.7mm×高さ90.5mm×底径46.5mm)に入れアルミホイルで蓋をして、10日間静置後、容器の底を、ステンレススプーン(清水アキラ社製 サンダイヤ 規格150)の大きい方のさじ(大きい方の端部)を用いて先端部分からすくい、当該スプーン上に付着した沈殿物について、次の基準で判定した。沈殿物の少ないものほど、沈降抑止性に優れている。
◎:沈殿物を観察できない。
○:沈殿物が、薬さじの先端から8mmまでの部分にのみ付着する(沈殿物が少量である)。
×:沈殿物が、薬さじの先端から8mmを超える部分にまで付着する(沈殿物が多量である)。
【0074】
<消臭加工液の起泡力>
JIS K 3362に準拠し、以下の方法にて評価した。
底を有する直径5cmのガラス管に消臭加工液50mLを入れ、この液上900mmの高さから加工液200mLを出口中径2.9mmのピペットを通し30秒間かけて落下させ、そのときに生じた泡の高さ(mm)を起泡力として測定した。この値が低いほど、低起泡性に優れる。
消臭加工液の起泡力(泡の高さ)は、120mm以下であることが望ましい。120mm以下であると、消臭加工生地が白化することを効果的に抑制することができる。
【0075】
<消臭加工液の沈降抑止性>
均一に分散させた消臭加工液30mLを容量30mLのバイアル瓶に入れ、2.5時間静置後、バイアル瓶側面に見える沈殿物の層の厚みを測定し、次の基準で判定した。沈殿物の少ないものほど、沈降抑止性に優れている。
◎:沈殿物の層を観察できない。
○:沈殿物の層の厚みが0.5mm以下である。
△:沈殿物の層の厚みが0.5mmを超え2.0mm以下である。
×:沈殿物の層の厚みが2.0mmを超えている。
【0076】
<洗濯・乾燥>
洗濯機(ハイアール社製 JW−Z23A)に、液温40℃に調整した水道水15LとJAFET標準配合洗剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル及びアルファオレフィンスルホン酸ナトリウムを配合)20mLを添加して洗濯液を作り、その中に後述する消臭性加工生地を入れ洗濯を行った。当該洗濯液での洗い15分、脱水3分、すすぎ洗い4分、脱水3分、すすぎ洗い4分、脱水4分の工程を4回繰り返した。
洗濯後の当該消臭性加工生地を、60℃の恒温槽に広げて30分間乾燥した。
【0077】
<アンモニア消臭率>
消臭性加工生地は、10cm×10cmの大きさに裁断され、調湿環境(温度20℃ 湿度65%)で20時間以上調湿され状態調整された後、容量5Lのサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス社製 スマートバッグ PA 5L 型式AA)に入れられた。当該サンプリングバッグは、真空ポンプで中の空気を抜いた後、再度、調湿環境(温度20℃ 湿度65%)に15分保管され、その後に、容量50Lのサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス社製 50Lテドラーバッグ(登録商標))にアンモニア濃度1000ppmのアンモニアガスと窒素ガスとの混合ガスを乾燥空気で希釈して調製しておいた、検知管によるアンモニア濃度が100ppmのアンモニア含有ガス3Lを封入され、ゴム栓で閉じられた。
当該消臭性加工生地と、アンモニア濃度が100ppmの前記アンモニア含有ガス3Lを封入した容量5Lのサンプリングバッグ内のアンモニア濃度が、前記アンモニア含有ガスを封入されてから2時間後に、検知管で測定され、アンモニア測定濃度が得られた。
検知管は、ガステック社製、No.3La(測定範囲2.5ppm〜200ppm)とNo.3L(測定範囲0.5ppm〜78ppm)を使用した。
前記アンモニア含有ガス3Lを封入した容量5Lのサンプリングバッグに、消臭性加工生地を入れないこと以外は同様にして空試験を行いアンモニア空試験濃度を得て、下記式(1)で消臭率を算出した。値が大きいほど消臭性に優れている。
また、洗濯・乾燥後の当該消臭性加工生地について、未洗濯の消臭性加工生地と同様に評価した。
アンモニア消臭率(%)
=100×(アンモニア空試験濃度−アンモニア測定濃度)/(アンモニア空試験濃度)
・・・(1)
洗濯・乾燥後のアンモニア消臭率は、本発明の消臭加工液由来の消臭成分を含有しない乾燥生地(未加工生地)の洗濯・乾燥後のアンモニア消臭率(上記試験法にて測定した結果、52%)に対し、5ポイント以上の向上効果があること、すなわち、消臭率が57%以上であることが望ましい。5ポイント以上の向上効果があると、消臭剤によるアンモニアの除去効果が認められる。
【0078】
<酢酸消臭率>
消臭性加工生地は、10cm×10cmの大きさに裁断され、調湿環境(温度20℃ 湿度65%)で20時間以上調湿され状態調整された後、容量5Lのサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス社製 スマートバッグ PA 5L 型式AA)に入れられた。当該サンプリングバッグは、真空ポンプで中の空気を抜いた後、再度、調湿環境(温度20℃ 湿度65%)に15分保管され、その後に、容量50Lのサンプリングバッグ(ジーエルサイエンス社製 50Lテドラーバッグ(登録商標))に、酢酸(和光純薬工業社製 試薬特級)試薬瓶の気相部分よりガス用注射器で採取した酢酸ガスを乾燥空気で希釈して調製しておいた、検知管による酢酸濃度が30ppmの酢酸含有ガス3Lを封入され、ゴム栓で閉じられた。
当該消臭性加工生地と、酢酸濃度が30ppmの前記酢酸含有ガス3Lを封入した容量5Lのサンプリングバッグ内の酢酸濃度が、前記酢酸含有ガスを封入されてから2時間後に、検知管で測定され、酢酸測定濃度が得られた。
検知管は、光明理化学工業(株)製、216Sを使用した。
前記酢酸含有ガス3Lを封入した容量5Lのサンプリングバッグに、消臭性加工生地を入れないこと以外は同様にして空試験を行い空試験濃度を得て、下記式(2)で消臭率を算出した。値が大きいほど消臭性に優れている。
また、洗濯・乾燥後の当該消臭性加工生地について、未洗濯の消臭性加工生地と同様に評価した。
酢酸消臭率(%)
=100×(酢酸空試験濃度−酢酸測定濃度)/(酢酸空試験濃度)・・・(2)
【0079】
<吸水性>
JIS L 1907「滴下法」を参考に、以下の方法で行った。10cm×10cmに裁断した消臭性加工生地を、シャーレ(外径37mm 厚み2.3mm)の縁の上に置き、空中に浮いた箇所に、マイクロピペットを用いて、当該生地表面より約10mmの高さから、30μLのイオン交換水を滴下した。水滴が当該生地の表面に達したときから、当該生地が水滴を吸収するにつれて鏡面反射が消え湿潤だけが残った状態までの時間をストップウォッチで測定した。この操作を3回実施し、平均値を求めた。値が小さいほど吸水性に優れている。
また、洗濯・乾燥後の当該消臭性加工生地について、未洗濯の消臭性加工生地と同様に評価した。
【0080】
<風合い>
消臭性加工生地を10cm×10cmの正方形に裁断し、その中央を、直径7mmの円柱の先端に乗せ、消臭性加工生地の広がり具合について、以下の基準を用いて評価した。評価点数が低い(0に近い)ものほど、消臭性加工生地が柔らかく、優れている。
(評価点数:評価結果)
0:消臭性加工生地の広がりによって生じる生地間の最大角度が80°未満である。
1:消臭性加工生地の広がりによって生じる生地間の最大角度が80°以上、85°未満である。
2:消臭性加工生地の広がりによって生じる生地間の最大角度が85°以上、90°未満である。
3:消臭性加工生地の広がりによって生じる生地間の最大角度が90°以上である。
また、洗濯・乾燥後の当該消臭性加工生地について、未洗濯の消臭性加工生地と同様に評価した。
【0081】
(実施例1)
バインダー高分子(X1)含有液(北広ケミカル社製 ライトエポックS−65 : シリコーン高分子とアクリル高分子との混合物含有液 : 固形分25%)26.0質量部(すなわち、バインダー高分子の乾燥質量6.5質量部、イオン交換水19.5質量部)、及びバインダー高分子(X2)含有液(アイカ工業社製 ウルトラゾールTN−60−3 : アクリル高分子含有液 : 固形分56%)11.3質量部(すなわち、バインダー高分子の乾燥質量6.3質量部、イオン交換水5.0質量部)が加えられ撹拌され、37.3質量部の分散液(A)が得られた。
34.1質量部の分散剤水溶液(ビックケミー・ジャパン社製 ANTI−TERRA−250 : 高分子量酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩の水溶液(アンモニウム塩及びカルボキシル基を有する、水溶性有機酸性ポリマーのアルキロールアンモニウム塩分散剤の水溶液) : 酸価46mgKOH/g、アミン価41mgKOH/g、比重1.07g/cm、重量平均分子量2000〜4000、固形分70%)(ANTI−TERRAは登録商標)(固形分量として23.9質量部)を水溶液(B)とした。
消臭剤に含有されるイオン交換水の総配合量(実施例1においては481.0質量部)から、前記バインダー高分子(X1)含有液、前記バインダー高分子(X2)含有液、及び前記分散剤水溶液に含有されるイオン交換水の合計量を差し引いた質量部(実施例1においては446.3質量部)の濃度調整用イオン交換水を用意した。
該分散液(A)37.3質量部、該水溶液(B)34.1質量部、及び濃度調整用イオン交換水446.3質量部が混合攪拌され、ほぼ均一な分散液が得られたところで、その後引き続き、トリポリリン酸二水素アルミニウム(テイカ社製 K−FRESH #100P : 一次平均粒子径0.5μm〜1.5μm)100質量部が加えられ更に攪拌され、617.7質量部の分散液(C1)が得られた。
これに、超音波処理装置(エスエムテー社製 UH−600)により、20℃において、周波数が20kHz、(出力/処理速度)が60Wh/kgの条件下にて超音波処理が行われ、617.7質量部の消臭剤(S1)が得られた。
【0082】
イオン交換水24.4質量部に、0.4質量部のキサンタンガム(伊那食品工業社製ウルトラキサンタンV−7T)と、16.5質量部の酸化亜鉛(堺化学工業社製 NANOFINE W−1、一次平均粒子径0.01μm、BET比表面積75m/g)が加えられ、ホモジナイザーで強攪拌され、41.3質量部の、分散液である消臭助剤(T)が得られた。
消臭剤(S1)617.7質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部の組み合わせによる消臭システム(W1)が得られた。
【0083】
次に、消臭加工液に含有されるイオン交換水の追加分量9793.2質量部に、消臭剤(S1)617.7質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U1)が得られた。
【0084】
カチオン可染性ポリエステル90%とポリウレタン10%からなる繊維径8μmの繊維を170μmに束ね、目付110g/mに平編みした乾燥生地を上記消臭加工液(U1)に浸漬し、間隙を調整した2本のロール間を通し、下記式(3)で示されるピックアップ率が70±3%となるように一定圧力で絞り、当該生地に当該消臭加工液(U1)を均一に含浸加工した。その後、当該消臭加工液(U1)を含む生地を110℃のオーブンで2分間乾燥し、消臭性加工生地(繊維製品)(Y1)を得た。
ピックアップ率(%)=100×(加工液に含浸し一定圧力で絞った直後の加工生地質量−加工前の乾燥生地質量)/(加工前の乾燥生地質量)・・・(3)
得られた消臭剤(S1)、消臭加工液(U1)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y1)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例2)
111.9質量部の分散液(A)、34.1質量部の水溶液(B)及び372.0質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(C2)618.0質量部が得られ、更に、消臭剤(S2)618.0質量部が得られた。
また、消臭剤(S2)618.0質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(W2)が得られた。
更に、イオン交換水9823.3質量部に、消臭剤(S2)618.0質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U2)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(U2)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(Y2)が得られた。
得られた消臭剤(S2)、消臭加工液(U2)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y2)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例3)
186.4質量部の分散液(A)、34.1質量部の水溶液(B)及び297.8質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(C3)618.3質量部が得られ、更に、消臭剤(S3)618.3質量部が得られた。
また、消臭剤(S3)618.3質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(W3)が得られた。
更に、イオン交換水9853.4質量部に、消臭剤(S3)618.3質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U3)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(U3)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(Y3)が得られた。
得られた消臭剤(S3)、消臭加工液(U3)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y3)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0087】
(実施例4)
298.4質量部の分散液(A)、34.1質量部の水溶液(B)及び186.3質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(C4)618.8質量部が得られ、更に、消臭剤(S4)618.8質量部が得られた。
また、消臭剤(S4)618.8質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(W4)が得られた。
更に、イオン交換水9898.6質量部に、消臭剤(S4)618.8質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U4)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(U4)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(Y4)が得られた。
得られた消臭剤(S4)、消臭加工液(U4)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y4)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0088】
(実施例5)
373.4質量部の分散液(A)、34.1質量部の水溶液(B)及び111.7質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(C5)619.2質量部が得られ、更に、消臭剤(S5)619.2質量部が得られた。
また、消臭剤(S5)619.2質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(W5)が得られた。
更に、イオン交換水9928.7質量部に、消臭剤(S5)619.2質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U5)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(U5)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(Y5)が得られた。
得られた消臭剤(S5)、消臭加工液(U5)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y5)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(実施例6)
298.4質量部の分散液(A)、17.0質量部の水溶液(B)及び204.9質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(C6)620.3質量部が得られ、更に、消臭剤(S6)620.3質量部が得られた。
また、消臭剤(S6)620.3質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(W6)が得られた。
更に、イオン交換水9908.8質量部に、消臭剤(S6)620.3質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U6)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(U6)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(Y6)が得られた。
得られた消臭剤(S6)、消臭加工液(U6)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y6)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0090】
(実施例7)
298.4質量部の分散液(A)、68.3質量部の水溶液(B)及び155.4質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(C7)622.1質量部が得られ、更に、消臭剤(S7)622.1質量部が得られた。
また、消臭剤(S7)622.1質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(W7)が得られた。
更に、イオン交換水9968.8質量部に、消臭剤(S7)622.1質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(U7)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(U7)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(Y7)が得られた。
得られた消臭剤(S7)、消臭加工液(U7)及び消臭性加工生地(繊維製品)(Y7)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0091】
(比較例1)
分散液(A)を用いず、34.1質量部の水溶液(B)及び483.6質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(CC1)617.7質量部が得られ、更に、消臭剤(SC1)617.7質量部が得られた。
また、消臭剤(SC1)617.7質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(WC1)が得られた。
更に、イオン交換水9778.1質量部に、消臭剤(SC1)617.7質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(UC1)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(UC1)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(YC1)が得られた。
得られた消臭剤(SC1)、消臭加工液(UC1)及び消臭性加工生地(繊維製品)(YC1)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0092】
(比較例2)
濃度調整用イオン交換水を用いず、485.4質量部の分散液(A)及び34.1質量部の水溶液(B)が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(CC2)619.5質量部が得られ、更に、消臭剤(SC2)619.5質量部が得られた。
また、消臭剤(SC2)619.5質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(WC2)が得られた。
更に、イオン交換水9967.0質量部に、消臭剤(SC2)619.5質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(UC2)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(UC2)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(YC2)が得られた。
得られた消臭剤(SC2)、消臭加工液(UC2)及び消臭性加工生地(繊維製品)(YC2)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0093】
(比較例3)
水溶液(B)を用いず、298.4質量部の分散液(A)及び223.5質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(CC3)621.9質量部が得られ、更に、消臭剤(SC3)621.9質量部が得られた。
また、消臭剤(SC3)621.9質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(WC3)が得られた。
更に、イオン交換水9918.9質量部に、消臭剤(SC3)621.9質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(UC3)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(UC3)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(YC3)が得られた。
得られた消臭剤(SC3)、消臭加工液(UC3)及び消臭性加工生地(繊維製品)(YC3)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例4)
298.4質量部の分散液(A)、6.9質量部の水溶液(B)及び211.1質量部の濃度調整用イオン交換水が加えられ攪拌された他は、実施例1と同じ操作が行われ、分散液(CC4)616.4質量部が得られ、更に、消臭剤(SC4)616.4質量部が得られた。
また、消臭剤(SC4)616.4質量部と消臭助剤(T)41.3質量部との組み合わせにより、消臭システム(WC4)が得られた。
更に、イオン交換水9842.4質量部に、消臭剤(SC4)616.4質量部及び消臭助剤(T)41.3質量部が加えられ撹拌され、消臭加工液(UC4)が得られた。
消臭加工液(U1)を消臭加工液(UC4)に代える他は実施例1と同じ操作が行われ、消臭性加工生地(繊維製品)(YC4)が得られた。
得られた消臭剤(SC4)、消臭加工液(UC4)及び消臭性加工生地(繊維製品)(YC4)について、上記各試験を行った。結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例1〜7の消臭剤は沈降抑止性に優れ、前記消臭剤を用いて得られる消臭加工液は低起泡性及び沈降抑止性に優れ、前記消臭加工液が含浸され乾燥されて得られる消臭性加工生地(繊維製品)は、洗濯前と洗濯・乾燥後の、アンモニア消臭率及び酢酸消臭率がそれぞれ高く、洗濯前と洗濯・乾燥後の吸水性にそれぞれ優れ、かつ、洗濯前と洗濯・乾燥後の風合いにそれぞれ優れていた。
【0097】
バインダー高分子を含有していない、比較例1の消臭剤、消臭加工液、及び、当該消臭加工液が含浸され乾燥されて得られる消臭性加工生地(繊維製品)については、洗濯・乾燥後のアンモニア消臭率が低かった。
バインダー高分子の含有量が多すぎる、比較例2の消臭剤、消臭加工液、及び、当該消臭加工液が含浸され乾燥されて得られる消臭性加工生地(繊維製品)については、消臭加工液の低起泡性が劣り、洗濯・乾燥後の酢酸消臭率が低かった。
分散剤を含有していない、比較例3の消臭剤、消臭加工液、及び、当該消臭加工液が含浸され乾燥されて得られる消臭性加工生地(繊維製品)については、消臭剤の沈降抑止性が劣り、消臭加工液の沈降抑止性が劣り、アンモニア消臭率、特に洗濯・乾燥後のアンモニア消臭率が低く、吸水性に劣っていた。
分散剤の含有量が少なすぎる、比較例4の消臭剤、消臭加工液、及び、当該消臭加工液が含浸され乾燥されて得られる消臭性加工生地(繊維製品)については、洗濯・乾燥後のアンモニア消臭率が低く、吸水性にやや劣っていた。
【0098】
上述したように、実施例1〜7の消臭剤は沈降抑止性に優れ、前記消臭剤を用いて得られる消臭加工液は低起泡性及び沈降抑止性に優れ、前記消臭加工液が含浸され乾燥されて得られる消臭性加工生地(繊維製品)は、洗濯前と洗濯・乾燥後の、アンモニア消臭率及び酢酸消臭率がそれぞれ高く、洗濯前と洗濯・乾燥後の吸水性にそれぞれ優れ、かつ、洗濯前と洗濯・乾燥後の風合いにそれぞれ優れていた。また、汗による悪臭の原因となるものとして、アンモニア、酢酸、イソ吉草酸が挙げられるが、上記の結果より、本発明に係る消臭剤は、汗による悪臭の原因となる酸(酢酸)及びアンモニアの消臭率が高いことが示されたため、汗臭に対する消臭性が高いことが示された。なお、イソ吉草酸は酢酸と同じ酸であり、酢酸同様の消臭性を示すことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の消臭システムは、酸・塩基成分を含有する悪臭、特に汗臭に対する消臭を行う場合に有用である。