(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係るクローズアップレンズ、撮像装置、およびクローズアップレンズの製造方法について説明する。なお、本明細書において「クローズアップレンズ」とは、マスターレンズの物体側に装着されて、マスターレンズの撮影倍率を大きくする働きのある光学系のことをいう。また、「陸上」とは、空気中のことをいう。
【0012】
まず、本発明に係るクローズアップレンズについて説明する。本発明に係るクローズアップレンズは、陸上で良好に収差補正されたマスターレンズの物体側に装着して用いられ、着脱可能なクローズアップレンズであって、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズと、正の屈折力を有する第2レンズとから構成されている。
【0013】
このように、正の屈折力を有するレンズの物体側に負の屈折力を有するレンズを配置することにより、正の屈折力を有するレンズを単独で配置した場合と比べて歪曲収差を良好に補正することができる。特に本発明に係るクローズアップレンズを水中で用いた場合に、水中で発生する歪曲収差を良好に補正することができる。
【0014】
また、このような構成のもと、本発明に係るクローズアップレンズは、以下の条件式(1)を満足することにより、水中での高い光学性能を実現できる。
(1)0.00<fCw
ただし、
fCw:屈折率が1.0よりも実質的に大きい媒質中における前記クローズアップレンズの焦点距離
【0015】
条件式(1)は、クローズアップレンズの焦点距離が正であることを規定するための条件式である。条件式(1)を満足することにより、クローズアップレンズは、該クローズアップレンズが装着されるマスターレンズに対して、いわゆる虫眼鏡と同様の作用を及ぼす。すなわち、クローズアップレンズを装着するだけでマスターレンズの撮影倍率を大きくすることができる。その結果、容易に撮影シーンを広げることができる。
【0016】
条件式(1)の対応値が下限値を下回ると、クローズアップレンズの焦点距離が負となってしまい、マスターレンズの撮影倍率を大きくすることができなくなり好ましくない。
【0017】
また、このような構成のもと、本発明に係るクローズアップレンズは、以下の条件式(2)を満足することにより、水中での高い光学性能を実現できる。
(2)29.00≦ν2−ν1
ただし、
ν1:前記第1レンズの硝材の分散値
ν2:前記第2レンズの硝材の分散値
【0018】
条件式(2)は、負レンズである第1レンズの硝材の分散値と正レンズである第2レンズの硝材の分散値との差を規定する条件式であり、条件式(2)を満足することにより、水中での分散によって発生する色収差を良好に補正することができる。
【0019】
条件式(2)の対応値が下限値を下回ると、色収差の補正が困難になり、好ましくない。なお、本発明の効果を確実にするために、条件式(2)の下限値を32.00にすることが好ましい。
【0020】
また、本発明に係るクローズアップレンズは、前記媒質は水であり、最も物体側のレンズ面および最も像側のレンズ面が何れも水に接した状態で使用されることが望ましい。このような状態で使用されることにより、高い光学性能を発揮することができる。
【0021】
また、本発明に係る撮像装置は、上述した構成のクローズアップレンズを有することを特徴とする。これにより、水中においても高い光学性能を備えた撮像装置を実現することができる。
【0022】
また、本発明に係るクローズアップレンズの製造方法は、陸上で良好に収差補正されたマスターレンズの物体側に装着して用いられ、着脱可能なクローズアップレンズの製造方法であって、物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズと正の屈折力を有する第2レンズとを配置し、以下の条件式(1)および(2)を満足するように構成することを特徴とする。
(1)0.00<fCw
(2)29.00≦ν2−ν1
ただし、
fCw:屈折率が1.0よりも実質的に大きい媒質中における前記クローズアップレンズの焦点距離
ν1:前記第1レンズの硝材の分散値
ν2:前記第2レンズの硝材の分散値
【0023】
斯かるクローズアップレンズの製造方法により、水中での高い光学性能を備えたクローズアップレンズを製造することができる。
【0024】
(数値実施例)
以下、本発明に係るクローズアップレンズの数値実施例を添付図面に基づいて説明する。
なお、第2実施例は参考例とする。
【0025】
(第1実施例)
図1は、本発明の第1実施例に係るクローズアップレンズCL1が装着されるマスターレンズMLのレンズ構成を示す断面図である。
【0026】
図1に示すように、クローズアップレンズCL1が装着されるマスターレンズMLは、光軸に沿って物体側から順に、平行平板PFと、両凸レンズL1と、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズL2と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3と、フレアカット絞りFSと、開口絞りSと、フレアカット絞りFSと、両凹レンズL4と両凸レンズL5との接合レンズと、両凸レンズL6と、像面Iの近傍に配置されたフィルタ群FLとから構成されている。なお、最も物体側に配置された平行平板PFは、マスターレンズMLを水中で使用する際にマスターレンズMLの図示しない鏡筒に取り付けられ、マスターレンズMLを水圧から保護するためのものであり、陸上で使用する際は取り付けないで使用する。
【0027】
マスターレンズMLは、負メニスカスレンズL2の像側の面および両凸レンズL6の像側の面が非球面形状となっている。また、負メニスカスレンズL2と、正メニスカスレンズL3と、フレアカット絞りFSと、開口絞りSと、フレアカット絞りFSと、両凹レンズL4と両凸レンズL5との接合レンズと、両凸レンズL6とが一体となって光軸方向に移動することにより、無限遠物体から近距離物体に合焦する。なお、後述する他の実施例におけるマスターレンズMLも本実施例と同一のものを用いているので、他の実施例においてはマスターレンズMLの構成の説明は省略する。
【0028】
図2は、水中においてマスターレンズMLに第1実施例に係るクローズアップレンズCL1が装着された状態の光学系全系のレンズ構成を示す断面図である。
【0029】
図2に示すように、本実施例に係るクローズアップレンズCL1は、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズG1と両凸レンズG2との接合レンズから構成されている。負メニスカスレンズG1は物体側に配置され、両凸レンズG2は像面I側に配置されている。
【0030】
また、本実施例に係るクローズアップレンズCL1は、
図2に示すように、水中使用時においては、負メニスカスレンズG1の物体側の面および両凸レンズG2の像側の面が、何れも周囲媒質である水に接している。すなわち、水中使用時においては、両凸レンズG2の像側の面とマスターレンズMLの平行平板PFの物体側の面との間には、水が介在している。
【0031】
本実施例に係るクローズアップレンズCL1は、陸上においてでも水中においてでもマスターレンズMLに着脱することができるようになっている。クローズアップレンズCL1を陸上でマスターレンズMLに装着し、クローズアップレンズCL1が装着されたマスターレンズMLを水中に入れると、両凸レンズG2と平行平板PFとの間に水が入るようになっている。
【0032】
以下の表1−1にマスターレンズMLの諸元値を、表1−2にマスターレンズMLに本実施例に係るクローズアップレンズCL1を装着した状態の光学系全系の諸元値を、それぞれ掲げる。
【0033】
表1−1および表1−2中の[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面の順番、rはレンズ面の曲率半径、dはレンズ面の間隔、ndはd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率、νdはd線(波長λ=587.6nm)に対するアッベ数をそれぞれ示している。また、物面は物体面、(S)は開口絞りS、(FS)はフレアカット絞りFS、像面は像面Iをそれぞれ示している。なお、曲率半径r=∞は平面を示
している。また、レンズ面が非球面である場合には面番号に*印を付して曲率半径rの欄には近軸曲率半径を示している。
【0034】
[非球面データ]には、[面データ]に示した非球面について、その形状を次式で表した場合の近軸曲率半径r、円錐定数κ、および非球面係数A4〜A10を示す。
x=(h
2/r)/[1+{1−κ(h/r)
2}
1/2]+A4h
4+A6h
6+A8y
8+A10h
10
ここで、xは、面の頂点を基準としたときの光軸からの高さhの位置での光軸方向の変位である。また、「E−n」は「×10
−n」を示し、例えば、「1.234E−05」は、「1.234×10
−5」を示す。
【0035】
[各種データ]において、f(ML)はマスターレンズMLの焦点距離、FNO(ML)はマスターレンズMLのFナンバー、fはクローズアップレンズCL1をマスターレンズMLに装着した状態の水中における光学系全系の合成焦点距離、FNOはクローズアップレンズCL1をマスターレンズMLに装着した状態の水中における光学系全系のFナンバー、空気換算BFは空気換算バックフォーカス、fCwは水中におけるクローズアップレンズCL1の焦点距離、ν1はクローズアップレンズCL1の負の屈折力を有する第1レンズの硝材の分散値、ν2はクローズアップレンズCL1の正の屈折力を有する第2レンズの硝材の分散値をそれぞれ示す。
【0036】
[可変間隔データ]には、マスターレンズMLの無限遠物体合焦状態の焦点距離f(ML)、マスターレンズMLの近距離物体合焦状態の撮影倍率β(ML)、クローズアップレンズCL1をマスターレンズMLに装着した状態の水中における無限遠物体合焦状態の焦点距離f、クローズアップレンズCL1をマスターレンズMLに装着した状態の水中における近距離物体合焦状態の撮影倍率β、面間隔、および空気換算BFの値を示す。di(iは整数)は第i面の面間隔を示し、d0は物体から最も物体側のレンズ面までの距離を示す。
【0037】
[条件式対応値]は各条件式の対応値をそれぞれ示す。
【0038】
ここで、表1−1、表1−2に記載されている焦点距離fや曲率半径r、およびその他長さの単位は一般に「mm」が使われる。しかしながら光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、これに限られるものではない。
【0039】
なお、以上に述べた表1−1、表1−2の符号は、後述する各実施例の表においても同様に用いるものとする。
【0040】
(表1−1)マスターレンズML
[面データ]
物面 ∞
1) ∞ 2.0000 1.522160 58.80
2) ∞ 1.1910
3) 345.8009 1.2000 1.603000 65.47
4) −345.8009 d4
5) 24.2548 1.2000 1.583126 59.38
*6) 4.6949 3.7000
7) 9.3610 2.9000 1.749500 35.27
8) 307.8348 0.3000
9) (FS) ∞ 1.7000
10) (S) ∞ 1.4000
11) (FS) ∞ 0.9000
12) −9.2376 1.0000 1.808090 22.79
13) 70.0310 2.7000 1.755000 52.29
14) −10.9860 0.4000
15) 25.6611 2.9500 1.592010 67.05
*16) −12.9991 d16
17) ∞ 0.5000 1.516330 64.14
18) ∞ 1.1100
19) ∞ 1.5900 1.516330 64.14
20) ∞ 0.3000
21) ∞ 0.7000 1.516330 64.14
22) ∞ 0.7000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号:6
κ = 0.1122
A4 = 5.52910E−04
A6 = 3.73730E−06
A8 = 3.27460E−07
A10=−7.20750E−10
面番号:16
κ =−10.5680
A4 = −3.93180E−04
A6 = 1.42680E−05
A8 = −2.39470E−07
A10= 1.98280E−09
[各種データ]
f (ML) = 10.31108
FNO(ML) = 2.91985
[可変間隔データ]
無限遠合焦状態 近距離合焦状態
f (ML)又はβ(ML) 10.31108 −0.06220
d0 ∞ 158.1027
d4 2.45900 1.81825
d16 10.56327 11.20402
空気換算BF 13.79476 14.43551
【0041】
(表1−2)第1実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞ 1.333060 53.98
1) 32.0000 2.0000 1.846660 23.80
2) 22.9000 11.0000 1.516800 63.88
3) −63.8129 3.0000 1.333060 53.98
4) ∞ 2.0000 1.522160 58.80
5) ∞ 1.1910
6) 345.8009 1.2000 1.603000 65.47
7) −345.8009 d7
8) 24.2548 1.2000 1.583126 59.38
*9) 4.6949 3.7000
10) 9.3610 2.9000 1.749500 35.27
11) 307.8348 0.3000
12) (FS) ∞ 1.7000
13) (S) ∞ 1.4000
14) (FS) ∞ 0.9000
15) −9.2376 1.0000 1.808090 22.79
16) 70.0310 2.7000 1.755000 52.29
17) −10.9860 0.4000
18) 25.6611 2.9500 1.592010 67.05
*19) −12.9991 d19
20) ∞ 0.5000 1.516330 64.14
21) ∞ 1.1100
22) ∞ 1.5900 1.516330 64.14
23) ∞ 0.3000
24) ∞ 0.7000 1.516330 64.14
25) ∞ 0.7000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号:9
κ = 0.1122
A4 = 5.52910E−04
A6 = 3.73730E−06
A8 = 3.27460E−07
A10=−7.20750E−10
面番号:19
κ =−10.5680
A4 = −3.93180E−04
A6 = 1.42680E−05
A8 = −2.39470E−07
A10= 1.98280E−09
[各種データ]
f = 11.19461
FNO = 2.93086
fCw = 213.41378
ν1 = 23.80
ν2 = 63.88
[可変間隔データ]
無限遠合焦状態 近距離合焦状態
f又はβ 11.19461 −0.10569
d0 232.5860 115.2534
d7 2.45900 1.81825
d19 10.56327 11.20402
空気換算BF 13.79476 14.43551
[各条件式対応値]
(1)fCw=213.41378
(2)ν2−ν1=40.08
【0042】
図3は
図1に示すマスターレンズMLの諸収差図であり、(a)は陸上使用時の諸収差を、(b)は水中使用時の諸収差をそれぞれ示している。また、
図4は
図2に示す光学系、すなわちクローズアップレンズCL1がマスターレンズMLに装着された状態の光学系全系の水中使用時の諸収差図である。
【0043】
各収差図において、FNOはFナンバーを、Aは半画角(単位:度)を、NAは開口数を、HOは物体高をそれぞれ示している。また、図中のdはd線(波長λ=587.6nm)での収差曲線を示し、gはg線(波長λ=435.8nm)での収差曲線を示し、記載のないものはd線での収差曲線を示す。非点収差を示す収差図において実線はサジタル像面を示し、破線はメリディオナル像面を示している。コマ収差を示す収差図は、マスターレンズMLに関しては、各半画角において、d線およびg線に対するメリディオナルコマ収差を表し、クローズアップレンズCL1をマスターレンズMLに装着した状態の光学系全系に関しては、各物体高において、d線およびg線に対するメリディオナルコマ収差を表している。なお、以下に示す各実施例の諸収差図においても、本実施例と同様の符号を用いる。
【0044】
マスターレンズMLは、
図3(a)に示すように、陸上において諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。しかし、水中においては、
図3(b)に示すように、諸収差が大きく変動し劣化することがわかる。
【0045】
さらに、
図4に示すように、クローズアップレンズCL1をマスターレンズMLに装着することにより、クローズアップレンズCL1がマスターレンズMLに装着された状態の光学系全系は、水中において諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0046】
(第2実施例)
次に、本発明の第2実施例について説明する。
図5は、水中においてマスターレンズMLに第2実施例に係るクローズアップレンズCL2を装着した状態の光学系全系のレンズ構成を示す断面図である。
【0047】
図5に示すように、本実施例に係るクローズアップレンズCL2は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズG1と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズG2とから構成されている。
【0048】
また、本実施例に係るクローズアップレンズCL2は、
図5に示すように、水中使用時においては、負メニスカスレンズG1の物体側の面および正メニスカスレンズG2の像側の面が、何れも周囲媒質である水に接している。すなわち、水中使用時においては、正メニスカスレンズG2の像側の面とマスターレンズMLの平行平板PFの物体側の面との間には、水が介在している。
【0049】
本実施例に係るクローズアップレンズCL2は、第1実施例と同様に、陸上においてでも水中においてでもマスターレンズMLに着脱することができるようになっている。クローズアップレンズCL2を陸上でマスターレンズMLに装着し、クローズアップレンズCL2が装着されたマスターレンズMLを水中に入れると、正メニスカスレンズG2と平行平板PFとの間に水が入るようになっている。なお、負メニスカスレンズG1の像側の面と正メニスカスレンズG2の物体側の面との間には水は入らず、空気が介在している。
【0050】
以下の表2に、マスターレンズMLに本実施例に係るクローズアップレンズCL2を装着した状態の光学系全系の諸元値を掲げる。
【0051】
(表2)第2実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞ 1.333060 53.98
1) 41.0000 3.0000 1.805180 25.45
2) 24.0000 1.0000
3) 22.9000 9.0000 1.622990 58.12
4) 103.6014 4.0000 1.333060 53.98
5) ∞ 2.0000 1.522160 58.80
6) ∞ 1.1910
7) 345.8009 1.2000 1.603000 65.47
8) −345.8009 d8
9) 24.2548 1.2000 1.583126 59.38
*10) 4.6949 3.7000
11) 9.3610 2.9000 1.749500 35.27
12) 307.8348 0.3000
13) (FS) ∞ 1.7000
14) (S) ∞ 1.4000
15) (FS) ∞ 0.9000
16) −9.2376 1.0000 1.808090 22.79
17) 70.0310 2.7000 1.755000 52.29
18) −10.9860 0.4000
19) 25.6611 2.9500 1.592010 67.05
*20) −12.9991 d20
21) ∞ 0.5000 1.516330 64.14
22) ∞ 1.1100
23) ∞ 1.5900 1.516330 64.14
24) ∞ 0.3000
25) ∞ 0.7000 1.516330 64.14
26) ∞ 0.7000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号:10
κ = 0.1122
A4 = 5.52910E−04
A6 = 3.73730E−06
A8 = 3.27460E−07
A10=−7.20750E−10
面番号:20
κ =−10.5680
A4 = −3.93180E−04
A6 = 1.42680E−05
A8 = −2.39470E−07
A10= 1.98280E−09
[各種データ]
f = 11.25066
FNO = 2.91914
fCw = 232.92579
ν1 = 25.45
ν2 = 58.12
[可変間隔データ]
無限遠合焦状態 近距離合焦状態
f 又はβ 11.25066 −0.10135
d0 310.9972 121.1678
d8 2.45900 1.81825
d20 10.56327 11.20402
空気換算BF 13.79476 14.43551
[各条件式対応値]
(1)fCw=232.92579
(2)ν2−ν1=32.67
【0052】
図6は
図5に示す光学系、すなわちクローズアップレンズCL2がマスターレンズMLに装着された状態の光学系全系の水中使用時の諸収差図である。
図6に示すように、クローズアップレンズCL2をマスターレンズMLに装着することにより、クローズアップレンズCL2がマスターレンズMLに装着された状態の光学系全系は、水中において諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0053】
(第3実施例)
次に、本発明の第3実施例について説明する。
図7は、水中においてマスターレンズMLに第3実施例に係るクローズアップレンズCL3を装着した状態の光学系全系のレンズ構成を示す断面図である。
【0054】
図7に示すように、本実施例に係るクローズアップレンズCL3は、光軸に沿って物体側から順に、物体側に凸面を向けた負メニスカスレンズG1と、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズG2とから構成されている。
【0055】
また、本実施例に係るクローズアップレンズCL3は、
図7に示すように、水中使用時においては、負メニスカスレンズG1の物体側の面および正メニスカスレンズG2の像側の面が、何れも周囲媒質である水に接している。すなわち、水中使用時においては、正メニスカスレンズG2の像側の面とマスターレンズMLの平行平板PFの物体側の面との間には、水が介在している。
【0056】
本実施例に係るクローズアップレンズCL3は、第1実施例と同様に、陸上においてでも水中においてでもマスターレンズMLに着脱することができるようになっている。クローズアップレンズCL3を陸上でマスターレンズMLに装着し、クローズアップレンズCL3が装着されたマスターレンズMLを水中に入れると、正メニスカスレンズG2と平行平板PFとの間に水が入るようになっている。なお、負メニスカスレンズG1の像側の面と正メニスカスレンズG2の物体側の面との間には水は入らず、空気が介在している。
【0057】
以下の表3に、マスターレンズMLに本実施例に係るクローズアップレンズCL3を装着した状態の光学系全系の諸元値を掲げる。
【0058】
(表3)第3実施例
[面データ]
面番号 r d nd νd
物面 ∞ 1.333060 53.98
1) 41.0000 3.0000 1.808090 22.74
2) 26.5000 1.0000
3) 23.0000 9.0000 1.603000 65.44
4) 71.9789 4.0000 1.333060 53.98
5) ∞ 2.0000 1.522160 58.80
6) ∞ 1.1910
7) 345.8009 1.2000 1.603000 65.47
8) −345.8009 d8
9) 24.2548 1.2000 1.583126 59.38
*10) 4.6949 3.7000
11) 9.3610 2.9000 1.749500 35.27
12) 307.8348 0.3000
13) (FS) ∞ 1.7000
14) (S) ∞ 1.4000
15) (FS) ∞ 0.9000
16) −9.2376 1.0000 1.808090 22.79
17) 70.0310 2.7000 1.755000 52.29
18) −10.9860 0.4000
19) 25.6611 2.9500 1.592010 67.05
*20) −12.9991 d20
21) ∞ 0.5000 1.516330 64.14
22) ∞ 1.1100
23) ∞ 1.5900 1.516330 64.14
24) ∞ 0.3000
25) ∞ 0.7000 1.516330 64.14
26) ∞ 0.7000
像面 ∞
[非球面データ]
面番号:10
κ = 0.1122
A4 = 5.52910E−04
A6 = 3.73730E−06
A8 = 3.27460E−07
A10=−7.20750E−10
面番号:20
κ =−10.5680
A4 = −3.93180E−04
A6 = 1.42680E−05
A8 = −2.39470E−07
A10= 1.98280E−09
[各種データ]
f = 11.35687
FNO = 2.91908
fCw = 233.04833
ν1 = 22.74
ν2 = 65.44
[可変間隔データ]
無限遠合焦状態 近距離合焦状態
f又はβ 11.35687 −0.1008
d0 313.8750 122.9035
d8 2.45900 1.81825
d20 10.56327 11.20402
空気換算BF 13.79476 14.43551
[各条件式対応値]
(1)fCw=233.04833
(2)ν2−ν1=42.70
【0059】
図8は
図7に示す光学系、すなわちクローズアップレンズCL3がマスターレンズMLに装着された状態の光学系全系の水中使用時の諸収差図である。
図8に示すように、クローズアップレンズCL3をマスターレンズMLに装着することにより、クローズアップレンズCL3がマスターレンズMLに装着された状態の光学系全系は、水中において諸収差が良好に補正され、優れた結像性能を有していることがわかる。
【0060】
以上説明したように、上記各実施例によれば、水中での高い光学性能を備えたクローズアップレンズを実現することができる。
【0061】
なお、上記各実施例は、本発明に係るクローズアップレンズを同一のマスターレンズMLに装着した例を示しているが、他のマスターレンズに装着することもできる。また、以下に記載の内容は、光学性能を損なわない範囲で適宜採用可能である。
【0062】
レンズ面は、球面または平面で形成されても、非球面で形成されても構わない。
【0063】
レンズ面が球面または平面の場合、レンズ加工及び組立調整が容易になり、加工及び組立調整の誤差による光学性能の劣化を防げるので好ましい。また、像面がずれた場合でも描写性能の劣化が少ないので好ましい。
【0064】
レンズ面が非球面の場合、非球面は、研削加工による非球面、ガラスを型で非球面形状に形成したガラスモールド非球面、ガラスの表面に樹脂を非球面形状に形成した複合型非球面のいずれの非球面でも構わない。また、レンズ面は回折面としても良く、レンズを屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)あるいはプラスチックレンズとしても良い。
【0065】
また、各レンズ面には、フレアやゴーストを軽減し高コントラストの高い光学性能を達成するために、広い波長域で高い透過率を有する反射防止膜を施しても良い。
【0066】
次に、本発明のクローズアップレンズCLを備えた光学装置について説明する。
【0067】
図9は、本発明に係るクローズアップレンズCLを備えたカメラの構成を示す図である。カメラ1は、
図9に示すように撮影レンズ2を備えたレンズ交換式の所謂ミラーレスカメラである。撮影レンズ2は、上述のクローズアップレンズCL1〜3の何れかが装着されたマスターレンズMLである。カメラ1において、不図示の水中の物体(被写体)からの光は、撮影レンズ2で集光されて、不図示の光学ローパスフィルタを介して撮像部3の撮像面上に被写体像を形成する。そして、撮像部3に設けられた光電変換素子により被写体像が光電変換されて被写体の画像が生成される。この画像は、カメラ1に設けられた電子ビューファインダ4に表示される。これにより撮影者は、電子ビューファインダ4を介して被写体を観察することができる。
【0068】
撮影者によって不図示のレリーズボタンが押されると、撮像部3により光電変換された画像が不図示のメモリに記憶される。このようにして、撮影者は本カメラ1による被写体の撮影を行うことができる。
【0069】
以上の構成により、本発明に係るクローズアップレンズCLを備えたカメラ1は、水中での高い光学性能を実現することができる。なお、本実施形態では、ミラーレスカメラの例を説明したが、カメラ本体にクイックリターンミラーを有しファインダー光学系により被写体を観察する一眼レフタイプのカメラに本発明に係るクローズアップレンズCLを装着した場合でも、上記カメラ1と同様の効果を奏することができる。
【0070】
次に、本発明のクローズアップレンズCLの製造方法について説明する。
【0071】
図10は、本発明のクローズアップレンズCLの製造方法の概略を示す図である。本発明のクローズアップレンズCLの製造方法は、陸上で良好に収差補正されたレンズ系の物体側に着脱自在に装着されるクローズアップレンズの製造方法であって、
図10に示すように、以下の各ステップS1〜S2を含むものである。
ステップS1:光軸に沿って物体側から順に、負の屈折力を有する第1レンズと正の屈折力を有する第2レンズとを配置する。
ステップS2:次の条件式(1)および(2)を満足するように構成する。
(1)0.00<fCw
(2)29.00≦ν2−ν1
ただし、
fCw:屈折率が1.0よりも実質的に大きい媒質中における前記クローズアップレンズの焦点距離
ν1:前記第1レンズの硝材の分散値
ν2:前記第2レンズの硝材の分散値
【0072】
斯かる本発明のクローズアップレンズの製造方法によれば、水中での高い光学性能を備えたクローズアップレンズを製造することができる。