(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331388
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】発光装置用リードフレーム又は基板、並びにそれを備える発光装置
(51)【国際特許分類】
H01L 33/60 20100101AFI20180521BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20180521BHJP
H01L 23/12 20060101ALI20180521BHJP
H01L 23/50 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/62
H01L23/12 Z
H01L23/50 D
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-271053(P2013-271053)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-126169(P2015-126169A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】加藤 保夫
(72)【発明者】
【氏名】黒田 耕司
【審査官】
皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−249514(JP,A)
【文献】
特開2013−239540(JP,A)
【文献】
特開2008−091818(JP,A)
【文献】
特開2012−033724(JP,A)
【文献】
特開2011−134742(JP,A)
【文献】
特開2013−125859(JP,A)
【文献】
特開2012−151289(JP,A)
【文献】
特開2013−026427(JP,A)
【文献】
米国特許第04247372(US,A)
【文献】
特開2013−201399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00−33/64
H01L 23/50
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に銀又は銀合金めっき層を有する、発光装置用リードフレーム又は基板であって、
前記銀又は銀合金めっき層は、光沢度が1.3以上であり、原子間力顕微鏡で規格番号JIS R 1683:2007に示される方法で測定される、測定エリアが5μm×5μm角での算術平均粗さRaが2nm以上10nm以下であり、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmが300nm以上1000nm以下であり、
前記銀又は銀合金めっき層を得る銀又は銀合金めっき液には硫黄化合物が20ppm以下添加されているリードフレーム又は基板。
【請求項2】
前記銀又は銀合金めっき層は、厚さが0.3μm以上9.5μm以下である、請求項1に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項3】
前記基体と前記銀又は銀合金めっき層の間に、銅、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、亜鉛、金、チタン、タングステン、タンタル、インジウム、クロムの群から選ばれる1種以上の純金属又はこれらの合金の層を少なくとも1つ有する、請求項1又は2に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項4】
前記基体は、銅又は銅合金であって、
前記基体上に、銅めっき層と、前記銀又は銀合金めっき層と、をこの順に有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項5】
前記基体は、銅又は銅合金であって、
前記基体上に、ニッケルめっき層と、パラジウム又はパラジウム合金めっき層と、前記銀又は銀合金めっき層と、をこの順に有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項6】
前記基体は、銅又は銅合金であって、
前記基体上に、ニッケルめっき層と、パラジウム又はパラジウム合金めっき層と、金又は金合金めっき層と、前記銀又は銀合金めっき層と、をこの順に有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項7】
前記銀合金は、銀金合金である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項8】
前記硫黄化合物は二硫化炭素である請求項1乃至7のいずれか一項に記載のリードフレーム又は基板。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のリードフレーム又は基板と、前記リードフレーム又は基板に載置された発光素子と、を備える発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置用リードフレーム又は基板、並びにそれを備える発光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)に代表される発光装置は、照明や各種ディスプレイ、液晶テレビや携帯電話のバックライトなどの光源として、広く利用されている。これらの機器への発光装置の実装信頼性向上のため、リードフレームや各種基板上には、多くの場合、銀めっきが施される。
【0003】
従来、発光装置用のリードフレームや基板に対して銀めっきを施すときに使用される銀めっき液は、トランジスタやICなど電子デバイス向けのリードフレーム用の銀めっき液が使用されているにすぎなかった。このような銀めっき液について、例えば特許文献1や特許文献2には、銀めっき膜を光沢化する光沢剤の製造方法が記載されている。また、例えば特許文献3及び特許文献4には、銀めっき膜のダイボンディング性やワイヤーボンディング性、生産性を向上するため、部分めっきできるように工夫された銀めっき液及びめっき方法が記載されている。しかし、これらは、発光装置に求められる光反射特性について何ら検討されていない。
【0004】
一方、発光装置の光取り出し効率の向上のため、例えば特許文献5には銀めっき膜の結晶サイズを調整する技術が記載されているが、反射率は向上するものの、実際の発光装置の全光束は、必ずしも向上しない。
【0005】
また、例えば特許文献6には、原子間力顕微鏡を用いて5μm×5μmの視野内で測定した表面粗さSaが2nmを超えて50nm未満とする銀又は銀合金膜をもった発光装置用基板の製造方法が記載されている。しかし、この製造方法によって得られる銀又は銀合金めっき膜は、近紫外領域の反射率の低下を抑制できるものの、主に可視領域の反射が重要な発光装置(特に、蛍光体を用いた白色LEDや青色又は緑色LED)では、必ずしも全光束の向上は見られない。
【0006】
また、例えば特許文献7には、銀又は銀合金をX線回折法にて測定した際、(200)面の強度比が総カウント数の20%以上40%以下である発光装置が記載されている。しかし、この技術により反射率の向上は見られるものの、主に可視領域の反射が重要な発光装置(特に、蛍光体を用いた白色LEDや青色又は緑色LED)では、必ずしも全光束の向上は見られない。
【0007】
現在、発光装置のより高い光取り出し効率を実現するため、実装部材であるリードフレームや基板のリフレクターとしての性能向上が期待されている。しかしながら、従来の技術では、得られる銀めっき膜の反射率が向上することはあるものの、発光装置の実際の明るさの指標となる全光束が必ずしも向上しない、という欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2807576号
【特許文献2】米国特許第3580821号
【特許文献3】米国特許第4247372号
【特許文献4】特開平05−222569号公報
【特許文献5】特許第4367457号
【特許文献6】特開2012−151289号公報
【特許文献7】国際公開WO2010/150824号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、従来に比べて発光装置の高い全光束が得られるリードフレーム又は基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記問題点を解決するために、本発明は、基体上に銀又は銀合金めっき層を有する、発光装置用リードフレーム又は基板であって、前記銀又は銀合金めっき層は、光沢度が1.3以上であり、原子間力顕微鏡で測定される、算術平均粗さRaが2nm以上10nm以下であり、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmが300nm以上1000nm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の発光装置は、本発明のリードフレーム又は基板と、そのリードフレーム又は基板に載置された発光素子と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のリードフレーム又は基板は、発光装置の発光効率の向上及び発光装置間の発光特性の品質安定化を得ることができる。これにより、例えばLED電球や液晶テレビ用バックライト内の発光装置の搭載数を削減でき、省エネルギ−化とともに製造コストの削減が可能となる。また、発光装置間の発光特性のばらつきが抑えられ、製造歩留まりの向上が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施例の銀めっき層と比較例の銀めっき層の原子間力顕微鏡による観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施の形態1>
以下に、発明の実施の形態について説明する。但し、以下に説明する発光装置用リードフレーム又は基板、並びにそれを備える発光装置は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。
【0015】
本実施の形態において、発光装置用リードフレームとは、少なくとも発光素子が載置されるリードフレームのことをいい、好ましくは正極と負極になる対を含むリードフレームのことをいう。また、発光装置用基板とは、少なくとも発光素子が載置される基板のことをいう。この基板は、配線や回路が形成された、樹脂(繊維強化樹脂を含む)などのプリント基板、セラミック基板、フレキシブル基板などが挙げられる。
【0016】
発光装置は、例えば、発光素子を、リードフレームや基板に、銀ペーストや樹脂などの接着剤でダイボンディングし、更に金線などでワイヤーボンディングし、樹脂などの封止部材で封止することにより、製造されることが多い。また、発光装置は、例えばLED電球や液晶テレビ用バックライトなどに搭載される際に、はんだリフロ−などで実装される。
【0017】
なお、発光素子は、蛍光体を効率良く励起可能な短波長光を発光できる観点において、窒化物半導体(In
xAl
yGa
1−x−yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)の素子が好ましいが、ガリウム砒素系半導体やガリウム燐系半導体の素子でもよい。発光素子の発光波長は、特に限定されないが、蛍光体の発光との混色関係や発光効率などの観点から、例えば400nm以上530nm以下が挙げられ、430nm以上490nm以下であることが好ましく、450nm以上475nm以下であることがより好ましい。蛍光体は、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム、ユウロピウムで賦活されたサイアロン、ユウロピウムで賦活されたシリケート、マンガンで賦活されたフッ化珪酸カリウムなどが挙げられる。封止部材は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、又はこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂が挙げられる。また、発光装置用リードフレーム又は基板には、発光素子を包囲する包囲体が設けられてもよい。包囲体の母材は、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリアミド樹脂やポリシクロヘキサンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂、又はこれらの変性樹脂やハイブリッド樹脂が挙げられる。これらの母材中には、充填剤又は着色顔料として、ガラス、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化珪素などの粒子又は繊維を含有させてもよい。包囲体は、トランスファ成形や射出成形、滴下(ポッティング)法により形成することができる。
【0018】
このような発光装置の組み立て工程や実装工程を安定した品質で工業的に行うため、発光装置用のリードフレームや基板には、銀めっきが施される。このような銀めっきには、信頼性の高いダイ・ワイヤーボンディング性、安定したはんだ濡れ性、封止樹脂との高い密着性などの要求のほか、発光装置として、高い全光束を得ることが求められる。しかし、従来の銀めっきは、上述のように電子デバイス向けのリードフレーム用の銀めっきとして開発されたものであり、高い全光束の要求を満たすように考慮されたものではなかった。
【0019】
そこで、銀めっき液の種類、添加剤又は光沢剤の種類や濃度を変え、各種めっき条件(液温、電流密度など)にて、リードフレーム及び基板に銀又は銀合金めっきを行い、銀又は銀合金めっきのナノレベルの表面形状と発光装置の全光束の関係を鋭意研究したところ、基体上に銀又は銀合金めっき層を有する、発光装置用リードフレーム又は基板であって、その銀又は銀合金めっき層は、光沢度が1.3以上であり、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope、以下AFMと略して記載する)で測定される、算術平均粗さRaが2nm以上10nm以下であり、且つ粗さ曲線要素の平均長さRSmが300nm以上1000nm以下であるリードフレーム又は基板を用いて、発光装置を組み立てることによって、従来に比べて全光束が飛躍的に向上し、また製造ロット間のばらつきが非常に少ない発光装置を製造することが可能となることを見出した。なお、基体としては、銅、銅合金、鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、セラミック、樹脂から選ばれる1種が挙げられる。また、銀又は銀合金めっき層はリードフレーム又は基板の表面にあることが好ましいが、銀又は銀合金めっき層上に透光性の被膜が設けられてもよい。この被膜は、例えば酸化アルミニウム、酸化珪素、窒化アルミニウム、窒化珪素又はこれらの混合物、若しくは各種樹脂で構成することができる。
【0020】
このような効果が得られる詳細なメカニズムは、現状では定かではないが、発光素子から発せられた光が、本実施の形態の銀又は銀合金めっき層の表面で、繰り返し反射、散乱、吸収を繰り返すとき、銀又は銀合金のナノレベルの粒子の大きさや形態が、光取り出し効率に影響し、発光装置の全光束に影響していると考えられる。
【0021】
もちろん、本実施の形態の銀又は銀合金めっき層は、信頼性の高いダイ・ワイヤーボンディング性、安定したはんだ濡れ性、封止樹脂との高い密着性などの従来の性能要求を満たすことができるものである。
【0022】
本実施の形態の銀又は銀合金めっき層の厚さは、めっき業界で広く使用される微小部蛍光X線膜厚計で測定することができる。銀又は銀合金めっき層の厚さとしては、0.05μm以上10μm以下であることが好ましい。銀又は銀合金めっき層の厚さが0.05μm未満であると、めっき表面に入射した光が下地素材まで到達し、高い反射率が得られにくくなる。一方、銀又は銀合金めっき層の厚さが、10μmを超えると、全光束、ダイ・ワイヤーボンディング性、はんだ濡れ性、封止樹脂密着性などは問題ないが、金属銀のコストが高くなり、経済的な理由で好ましくない。
【0023】
また、本実施の形態の銀又は銀合金めっき層の光沢度は、リードフレーム業界で一般に使用されている光沢度で、例えばGAM社製のDensitmeter Model 144や日本電色工業株式会社製の微小面色彩計・反射率計VSR400やデンシトメーター(反射濃度計)ND−11で測定される数値である。銀又は銀合金めっき層の光沢度は、1.3以上であることが好ましい。銀又は銀合金めっき層の光沢度が1.3未満になると、反射率が低くなり、発光装置の全光束が低くなる。一方、銀又は銀合金めっき層の光沢度の上限は問わないが、測定機器の検出限界が上限となる。一般には3.0前後となる。
【0024】
本実施の形態のリードフレーム又は基板上の銀又は銀合金めっき層のナノレベルの表面形状は、AFMにより測定することができる。AFMは、探針と試料(本例では銀又は銀合金めっき層)に作用する原子間力を検出するタイプの顕微鏡である。AFMの探針は、片持ちばね(カンチレバー)の先端に取り付けられている。この探針と試料表面を微小な力で接触させ、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針・試料間距離(Z方向)をフィ−ドバック制御しながら水平(X、Y方向)の走査することで、表面形状を画像化できる。この画像デ−タを数値処理することによって、ナノレベルの形状を数値化することが可能である。このナノレベルの形状を数値化する指標はいろいろあるが、鋭意研究した結果、発光装置の全光束の高さは、成膜された銀又は銀合金めっき層の表面形状を表す算術平均粗さRa(以下、Raと略す)と粗さ曲線要素の平均長さRSm(以下、RSmと略す)に関係していることが判明した。
【0025】
AFMによる表面形状の測定結果は、その測定条件によって大きく変化するため、得られるRaやRSmの数値は、ある一定条件のもとで測定することが好ましい。めっき業界において、AFMの測定に係る標準は見られないが、セラミックスでは評価方法について標準化されており、規格番号JIS R 1683:2007 標題 原子間力顕微鏡によるファインセラミックス薄膜の表面粗さ測定方法、として公開されている。本明細書では、この標準に従い、RaとRSmの測定を行うものとする。測定条件は下記のとおりである。
【0026】
測定装置:SPA−300(エスアイアイ社)
スキャナ−径:20μm
走査周波数:1.0Hz
測定エリア:5μm×5μm角
XYデ−タ数:256×256
探針:SI−DF20(材質=シリコン、先端半径R=10nm、探針高さ=12.5μm)
【0027】
本実施の形態の銀又は銀合金めっき層のRaは、2nm以上10nm以下が好ましく、3nm以上5nm以下がより好ましい。Raが2nm未満になると、銀又は銀合金めっき層の表面が非常に平滑になるため、光反射が正反射になりやすく、発光装置内での光相互作用が少なく、高い光束が得られない。一方、Raが10nmを越えると、光の乱反射が大きくなり、めっき表面での光減衰が大きくなる。
【0028】
また、本実施の形態の銀又は銀合金めっき層のRSmは、300nm以上1000nm以下が好ましく、500nm以上700nm以下がより好ましい。RSmが300nm未満であると、銀又は銀合金めっきの析出粒子が小さく、反射光が減衰しやすくなり、高い光束が得られない。一方、RSmが1000nmを超えると、銀又は銀合金めっき層のそれぞれの粒界の面の方向によって、個々の発光装置の全光束にばらつきができやすく、安定した全光束が得られない。
【0029】
本実施の形態のリードフレーム又は基板は、基体と銀又は銀合金めっき層の間に、銅、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、コバルト、亜鉛、金、チタン、タングステン、タンタル、インジウム、クロムの群から選ばれる1種以上の純金属又はこれらの合金の層を少なくとも1つ有していてもよい。これにより、銀又は銀合金めっき層の基体への密着性を高めたり、銀又は銀合金めっき層への原子拡散又は銀又は銀合金めっき層からの原子拡散を抑制したり、することができる。
【0030】
好ましい一例として、基体が銅又は銅合金であって、その基体上に、銅めっき層と、銀又は銀合金めっき層と、がこの順に設けられたものが挙げられる。また、別の好ましい一例として、基体が銅又は銅合金であって、その基体上に、ニッケルめっき層と、パラジウム又はパラジウム合金めっき層と、銀又は銀合金めっき層と、がこの順設けられたものが挙げられる。さらに、別の好ましい一例として、基体が銅又は銅合金であって、その基体上に、ニッケルめっき層と、パラジウム又はパラジウム合金めっき層と、金又は金合金めっき層と、銀又は銀合金めっき層と、がこの順に設けられたものが挙げられる。
【0031】
本実施の形態の銀合金めっき層は、ワイヤーボンディング性や光反射性の観点において、銀金合金めっき層であることが好ましい。
【0032】
本実施の形態の銀又は銀合金めっき層は、いわゆるシアン系の銀又は銀合金めっき液を用いて実現することができる。
【0033】
また、本実施の形態の銀又は銀合金めっき層を得る銀又は銀合金めっき液には、イオウ化合物、セレン化合物、アンチモン化合物などの光沢剤を添加してもよい。
【0034】
本実施の形態の銀又は銀合金めっき層を得るめっき方法は、例えば、被めっき物(本例ではリードフレーム又は基板)を陽極とし、金属銀、金属銀合金、ステンレス、白金族金属又は白金族金属などで被覆されたチタンを陰極としためっき液に浸漬し、電気めっきを行うめっき方法が挙げられる。
【0035】
本実施の形態の銀又は銀合金めっき層を得るめっき方法は、マニュアル又は自動エレベーター方式のいわゆるラック式めっき方法、リールツーリール方式であって電気めっき槽がオーバーフロー式のめっき方法、若しくは、電子デバイス向けリードフレームの部分めっきに採用されている噴流式めっき方法のいずれにも対応可能である。
【0036】
また、本実施の形態の銀又は銀合金めっき層を得るめっき方法は、リードフレームの銀又は銀合金めっきに使用できるが、銀又は銀合金めっきした後のリードフレームを圧延加工などして塑性変形したリードフレームにも適用することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
リードフレームの材料(基体)としては、株式会社神戸製鋼所製のKLF194(CDA No.C19400、鉄含有率2.3%)銅材の板厚0.11mmの平板を使用し、株式会社エノモトのLED用オープンフレームFLASH LED 6PIN OP1(外形寸法5050)のタイプに型抜きしたものを使用する。まず、これに、アルカリ系の脱脂剤で脱脂処理を施したあと、希硫酸で酸中和し、その後シアン浴により銅めっきを0.5μm施す。その後、銀又は銀合金めっきを行い、清浄な純水で洗浄した後、乾燥し、銀又は銀合金めっき層を表面に備えるリードフレームを作製する。銀めっきは、全面銀めっきとする。このリードフレームを金型内に配置し、成形材料として、ポリフタルアミド樹脂を注入し、硬化させて金型からはずす。そして、樹脂成形後のリードフレーム上にInGaN系の青色発光ダイオード素子を樹脂の接着剤を介して載置した後、150℃で1時間加熱して接合する。その後、発光ダイオード素子の電極と、リードフレームと、を25μm径の金線にて接続する。次に、変性シリコーン樹脂にYAG蛍光体を20%の割合で配合したものを、樹脂成形体の開口部に充填し、熱風乾燥機にて硬化させ(硬化条件:150℃、4時間)、封止する。この後、個別の発光装置として切断する。
【0039】
また、リードフレームの材料(基体)、下地めっき、銀又は銀合金めっき、の条件を変えて、各実施例及び比較例の発光装置を作製する。表1に、各実施例及び比較例における、基体、下地めっき、銀又は銀合金めっきの条件を示す。
【0040】
以上のようにして得られた各実施例及び比較例の発光装置の全光束Φv(lm)を分式全光束測定装置にて測定する。表1に、各実施例及び比較例における、銀又は銀合金めっき層の厚さ、光沢度、Ra、RSmと、発光装置の全光束Φv(lm)と、を示す。また、
図1に、実施例1の銀めっき層と比較例1の銀めっき層のAFMによる観察像を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表1に示すとおり、比較例1〜3に比べて、実施例1〜20の全光束値は、40〜50%程度高くなっている。