【実施例】
【0018】
(実施例1)
上記有機膜のエッチング方法に係る実施例について、
図1〜
図13を用いて説明する。
図4〜
図10に示すごとく、本例のエッチング方法では、ハードマスク層2によって表面が選択的に保護された有機膜1をエッチングする。また、本例では、部分エッチング工程(
図7〜
図9参照)と、成膜工程(
図6参照)とを繰り返して行う。
図7〜
図9に示すごとく、部分エッチング工程では、シリコン酸化膜を異方性エッチングするガスと、シリコン酸化膜をエッチングせず有機膜1を等方性エッチングするガスとの混合ガスを用いて、有機膜1を、該有機膜1の膜厚の一部のみエッチングする。
また、
図6に示すごとく、成膜工程においては、部分エッチング工程において有機膜1に形成された凹状部10の側面12および底面11に、シリコン酸化膜からなる保護膜3を成長させる。
【0019】
本例の有機膜1は、電子部品の配線層7をめっき形成する際に用いられる、めっきレジストである。以下、本例のエッチング方法を用いためっき方法について説明する。
本例では、基板5(
図13参照)に、図示しない大きな段差が形成されており、この段差を跨ぐように配線層7を形成する。この配線層7をめっき形成するためには、膜厚が厚いめっきレジスト(有機膜1:
図12参照)を用いる必要がある。このような膜厚が厚いめっきレジスト(有機膜1)は、直接露光しようとしても、露光装置の焦点が合わない。そのため
図1に示すごとく、有機膜1上にハードマスク層2とフォトレジスト63とを形成し、このフォトレジスト63およびハードマスク層2を先ずパターニングしてから(
図2〜
図4参照)、有機膜1をエッチングして(
図5〜
図10参照)、ハードマスク層2のパターンを有機膜1に転写する必要がある。以下、本例のめっき方法について詳説する。
【0020】
先ず、
図1に示すごとく、シリコンからなる基板5上に、シード層61と、シード保護層62と、有機膜1と、ハードマスク層2と、フォトレジスト63とをこの順に形成する。シード層61は、後述するめっき工程において、めっき成長の核になる層である。シード層61としては、例えばCuを用いることができる。また、シード保護層62は、有機膜1をエッチングする際にシード層61を保護するための層である。シード保護層62としては、例えばシリコン酸化膜を用いることができる。
【0021】
有機膜1は、後述するめっき工程(
図12、
図13参照)を行う際に用いられる、めっきレジストである。有機膜1としては、例えば、エポキシ樹脂を用いることができる。ハードマスク層2は、有機膜1をエッチングする際のパターンを形成するための層であり、例えばシリコン酸化膜を用いることができる。
【0022】
このように、基板5上にシード層61〜フォトレジスト63を順次積層した後、
図2に示すごとく、露光現像工程を行って、フォトレジスト63をパターニングする。その後、
図3に示すごとく、ハードマスク層2をドライエッチングする。次いで、
図4に示すごとく、フォトレジスト63を剥離する。以上の工程を行うことにより、有機膜1の表面をハードマスク層2によって選択的に保護した被処理体19を製造する。
【0023】
この後、
図5に示すごとく、部分エッチング工程を行う。部分エッチング工程では、上述したように、シリコン酸化膜を異方性エッチングするガスと、シリコン酸化膜をエッチングせず有機膜1を等方性エッチングするガスとの混合ガスを用いる。本例では、等方性エッチングをするガスとして、O
2ガスを用い、異方性エッチングをするガスとして、Arガスを用いる。また、部分エッチング工程では、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)を行う。すなわち、チャンバー内において、混合ガスに電磁波を照射することにより、混合ガス中のO
2を分解して酸素ラジカルを発生させると共に、Arをイオン化させてAr
+にする。この酸素ラジカルと有機膜1とが化学反応して、有機膜1が等方的にエッチングされる。ここで、酸素ラジカルを発生させる際に、同時に酸素イオンが発生し、この酸素イオンによってSi酸化膜がエッチングされる可能性があるが、その量は僅かなので、大きな問題とはならない。また、部分エッチング工程では、有機膜1を、膜厚d(
図2参照)の一部のみエッチングする。Ar
+は、有機膜1の表面を活性化して、有機膜1と酸素ラジカルとを化学反応しやすくする。また、Ar
+によっても、有機膜1が物理的にエッチングされる。
【0024】
部分エッチング工程を行った後、
図6に示すごとく、成膜工程を行う。この工程では、部分エッチング工程において形成した凹状部10の底面11および側面12に、シリコン酸化膜からなる保護膜3を形成する。このとき、ハードマスク層2にも保護膜3が形成される。本例では、O
2とTMS(テトラメチルシラン)とを含む原料ガスを用いて、化学気相成長法(CVD)により、シリコン酸化膜を成長させる。成膜工程では、チャンバー内においてプラズマ化したOとSiが、被処理体19の表面で結合し、シリコン酸化膜が形成される。CVD法は、チャンバー内に電界をかけずに行うため、反応は等方的に起きる。そのため、上記底面11と、側面12と、ハードマスク層2とに、それぞれシリコン酸化膜からなる保護膜3が形成される。
【0025】
成膜工程を行った後、
図7〜
図9に示すごとく、再び部分エッチング工程を行う。上述したように、部分エッチング工程では、シリコン酸化膜を異方性エッチングするガス(Arガス)と、有機膜1を等方性エッチングするガス(O
2ガス)との混合ガスを用いて、RIEを行う。すなわち、チャンバー内において混合ガスに電磁波を照射して、Ar
+と酸素ラジカルを発生させると共に、チャンバー内に電界を発生させる。そして、
図7に示すごとく、Ar
+を電界によって膜厚方向(Z方向)に加速させ、保護膜3に衝突させる。このようにすると、
図8に示すごとく、側面12に形成された保護膜3は大きくエッチングされずに、底面11とハードマスク層2上に形成された保護膜3が主にエッチングされる。そのため、底面11から有機膜1が露出する。
【0026】
続けて部分エッチング工程を行うと、
図8、
図9に示すごとく、上記酸素ラジカルによって、凹状部10の底面11が等方性エッチングされる。このとき、前回の部分エッチング工程(
図5参照)においてエッチングした部位の側面121は、保護膜
3によって保護されているため、エッチングされない。また、新たにエッチングされる部位の側面122は、X方向(Z方向に直交する方向)にもエッチングが進行するが、1回の部分エッチング工程における、Z方向へのエッチング量を適切に調整することにより、上記側面122のX方向へのエッチング量を僅かにすることができる。
【0027】
本例では、上記部分エッチング工程(図
7〜図9参照)と、上記成膜工程(
図6参照)とを交互に複数回行う。このようにすると、既にエッチングした部位の側面121を、成膜工程にて形成される保護膜
3によって保護でき、かつ、新たにエッチングする部位の側面122がX方向に大きくエッチングされることを抑制できる。そのため、
図10に示すごとく、2つの工程を繰り返し行うことにより、ハードマスク層2のパターンを、有機膜1に正確に転写することができる。また、酸素ラジカルによる有機膜1のエッチングレートは速いため、成膜工程と部分エッチング工程とを交互に行ったとしても、全体のエッチングレートを充分に速くすることができる。
【0028】
有機膜1のエッチングが完了した後、
図11に示すごとく、ウエットエッチング処理を行って、ハードマスク層2とシード保護層62とを除去する。なお、この工程は、CF
4ガス等を用いたドライエッチングにより行うこともできる。
ハードマスク層2とシード保護層62とを除去した後、
図12に示すごとく、めっき工程を行って、露出したシード層61上に配線層7を成長させる。めっき工程が完了した後、
図13に示すごとく、有機膜1を剥離し、さらに、シード保護層62とシード層61をエッチングする。このようにして、目的の配線層7を形成する。
【0029】
本例の作用効果について説明する。本例では、部分エッチング工程(
図7〜
図9参照)と、成膜工程(
図6参照)とを交互に複数回行う。そのため、ハードマスク層2のパターンを有機膜1に正確に転写でき、かつエッチングレートを速くすることができる。
すなわち、上記混合ガスには、シリコン酸化膜(保護膜3)を異方性エッチングするガスが含まれているため、この混合ガスを用いて部分エッチング工程を行うと、直前の成膜工程において側面12に形成された保護膜3を大きくエッチングすることなく、底面11に形成された保護膜3を主にエッチングして、該底面11の有機膜1を露出させることができる。そして、続けて部分エッチング工程を行うことにより、混合ガスに含まれる、有機膜1を等方性エッチングするガスによって、露出した底面11の有機膜1をエッチングすることができる。
【0030】
この部分エッチング工程と成膜工程とを交互に繰り返すと、側面12を保護膜3によって保護しつつ、有機膜1をZ方向にエッチングすることができる。また、有機膜1のうち等方性エッチングガスによって新たにエッチングされる部位は、その側面122(
図9参照)にもエッチングが進行するが、1回の部分エッチング工程におけるZ方向へのエッチング量を適切に調整することにより、側面122のX方向へのエッチング量を僅かにすることができる。これにより、エッチングの異方性を高めることができ、ハードマスク層2のパターンを有機膜1に正確に転写することが可能となる。また、等方性エッチングガス(O
2)はエッチングレートが速いため、部分エッチング工程と成膜工程とを交互に行っても、全体のエッチングレートを比較的速くすることができる。
【0031】
ここで仮に、上記部分エッチング工程と成膜工程とを交互に行わず、等方性エッチング工程のみを行って、有機膜をエッチングしたとすると、
図26に示すごとく、有機膜91の側面
912がX方向に大きくエッチングされてしまう。そのため、エッチングが必要な有機膜の厚さ(Z方向寸法)が大きくなるほど、ハードマスク層92のパターンの、有機膜91への転写精度が低下するおそれが高くなる。また、有機膜91が倒れる可能性もある。しかしながら、本例のように部分エッチング工程と成膜工程とを交互に行えば、側面12(
図7〜
図9参照)を保護膜3によって保護しつつエッチングできるため、このような問題が生じにくい。
【0032】
本例のエッチング方法は、有機膜1の膜厚が厚く、かつ正確なパターン転写を要求される場合に、特に有効である。本例では上述したように、基板5上に大きな段差があるため、この段差を有機膜1によって埋める必要が生じ、有機膜1の膜厚が部分的に厚くなる。この場合でも、本例では、エッチングレートが速いため、有機膜1のエッチングを短時間で完了させることができる。また、パターンの転写が正確であるため、配線層7(
図13参照)を微細化しやすい。
【0033】
また、本例の混合ガスには、O
2ガスとArガスとが含まれる。そして、部分エッチング工程(
図7〜
図9参照)において、酸素ラジカルとAr
+とを発生させ、このAr
+によって、保護膜3を異方性エッチングすると共に、酸素ラジカルによって、有機膜1を等方性エッチングさせている。
Arガスは、Ar
+となって有機膜に照射された際に、底面の有機膜を活性化し、反応性を高める効果がある。そのため、ArをO
2ガスと組み合わせて用いることにより、酸素ラジカルによる有機膜のエッチングレートをさらに速くすることができる。
なお、本例では、等方性エッチングガスとしてO
2ガスを用いたが、他にN
2ガスを用いることもできる。但し、エッチングレートの点を考慮すると、O
2ガスが最も適している。また、O
2ガスとN
2ガスの混合ガスを用いることもできる。この場合は、O
2ガスの比率が高いほど、エッチングレートの点で有利である。
【0034】
以上のごとく、本例によれば、ハードマスク層のパターンを正確に転写でき、かつエッチングレートが速い、有機膜のエッチング方法を提供することができる。
【0035】
なお、本例では、上記成膜工程において、原料ガスとして、O
2ガスとTMS(テトラメチルシラン)とを混合したガスを用いたが、本発明はこれに限るものではない。すなわち、TMSの代わりに、他の有機Siガス、例えばテトラメトキシシラン(TMOS)、メチルトリメトキシシラン(MTMOS)、ジメチルメトキシシラン(DMDMOS)、メトキシトリメチルシラン(MOTMS)等を用いることもできる。
また、本例では、シリコン酸化膜を異方性エッチングするガスとしてArガスを用いたが、KrやXe等の、他の希ガスを用いることもできる。但し、Arガスは希ガスの中では安価なので、Arガスの使用が好ましい。
【0036】
また、上記「シリコン酸化膜」は、SiO
2に限られず、SiとOの組成比が1:2から若干外れたものも含まれる。例えば、CVDの成膜条件によっては、SiとOの組成比が1:2から僅かに外れたものを成膜することも可能である。
【0037】
(実施例2)
本例は、上述した有機膜1のエッチング方法を用いて、MIセンサ4(Magneto-Impedance Sensor)における、アモルファスワイヤの周囲に巻回される検出コイル79を形成する例である。
図14、
図15に示すごとく、MIセンサ4を製造するにあたって、まず、シリコン製の基板5上に第1配線層7aを形成し、その上に樹脂製の保持部41を塗布する。この保持部41に線状の感磁体40を保持させ、その後、熱を加えて保持部41を硬化させる。第1配線層7aは、周知のめっき工程を用いて形成することができる。
【0038】
この後、
図16に示すごとく、シード層61と、シード保護層62と、有機膜1(めっきレジスト)と、ハードマスク層2と、フォトレジスト63とをこの順に積層する。これらシード層61〜フォトレジスト63の材質等は、実施例1と同様である。
【0039】
この後、実施例1と同様に、露光現像工程(
図2参照)、ドライエッチング工程(
図3参照)、レジスト剥離工程(
図4参照)を順次行い、さらに、部分エッチング工程(
図7〜
図9)と成膜工程(
図6参照)とを交互に複数回行う。
【0040】
本例では
図16に示すごとく、感磁体40と保持部41によって大きな段差が形成されている。そのため、有機膜1を使ってこの段差を埋める必要があり、有機膜1の厚さを厚くせざるを得ない。また、有機膜1には、薄い部位D1と厚い部位D2とがある。そのため、例えば有機膜1を感光性レジストによって形成し、この感光性レジストを直接、露光しようとしても、露光装置の焦点が合わなくなる。そのため、一旦、フォトレジスト63を露光して、ハードマスク層2をエッチングし(
図3参照)、このハードマスク層2のパターンを有機膜1に転写する必要性がある。
【0041】
上述のように、部分エッチング工程と成膜工程とを交互に行って、有機膜1全体をエッチングした後、めっき工程(
図12、
図13)を行う。これにより、
図17、
図18に示すごとく、第2配線層7bをめっき形成する。第2配線層7bは、感磁体40及び保持部41を跨ぐように形成されている。また、第2配線層7bは、第1配線層7aの両端部710にそれぞれ接続している。これら第1配線層7aと第2配線層7bとによって、検出コイル79を形成してある。
【0042】
本例の作用効果について説明する。本例の有機膜1は、Z方向に段差のある配線層7(第2配線層7b)をめっき形成するためのめっきレジストである。
Z方向に段差のある配線層7をめっきするためには、膜厚が厚いめっきレジスト(有機膜1)を用いる必要がある。この場合、上記エッチング方法を用いれば、エッチングレートが速いため、めっきレジスト(有機膜1)の膜厚が厚くても短時間でエッチングすることが可能となる。また、配線の幅やパターン間隔等を狭くすると、短絡したり断線したりする問題が発生しやすくなり、配線の形成が難しくなるが、上記エッチング方法はパターンを正確に転写できるため、従来の方法に比べて配線層7をより微細化することが可能となる。
【0043】
また、本例では、上記配線層7(第2配線層7b)を用いて、MIセンサの検出コイル79を形成してある。
MIセンサ4の検出コイル79を構成する配線層7(第2配線層7b)は、感磁体40や保持部41によって形成された大きな段差を跨ぐ必要がある。したがって、この検出コイル79をめっき形成するためのめっきレジスト(有機膜1)は、段差を埋めるため、膜厚を厚くする必要が特に高い。また、近年、MIセンサ4の小型化及び高感度化の要求が高まり、これに伴って、検出コイル79のパターンを、上述した通り微細化する必要性が高くなっている。このように、検出コイル79を形成するためのめっきレジストは、膜厚を厚くし、かつパターンを微細化する必要性が高いため、上記エッチング方法のように、エッチングレートが速く、かつハードマスク層2のパターンを正確に転写できる方法を用いた場合の効果は大きい。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を備える。
【0044】
(実施例3)
本例は、MIセンサ4の形状を変更した例である。本例のMIセンサ4を製造する場合には、
図19に示すごとく、まず基板5に溝部50を形成し、シード層61およびシード保護層62を成膜する。この際、溝部50の側面51と底面52にも、シード層61およびシード保護層62を成膜する。続いて、有機膜1(めっきレジスト)、ハードマスク層2、フォトレジスト63を形成する。
【0045】
その後、実施例2と同様に、露光現像工程(
図2参照)、ドライエッチング工程(
図3参照)、レジスト剥離工程(
図4参照)を順次行う。さらに、部分エッチング工程(
図7〜
図9参照)と成膜工程(
図6参照)とを交互に複数回行って、有機膜1をZ方向にエッチングする。その後、めっき工程(
図12、
図13)を行い、
図20に示すごとく、第1配線層7aをめっき形成する。この後、
図21に示すごとく、溝部50内に感磁体40を配置し、樹脂製の保持部41を用いて溝部50を充填する。その後、第2配線層7bを形成する。第2配線層7bは、周知のめっき方法を用いて形成することができる。第1配線層7aと第2配線層7bとによって、検出コイル79が形成される。
【0046】
本例では、
図19、
図20に示すごとく、検出コイル79の第1配線層7aを形成する際に、有機膜1(めっきレジスト)を用いて溝部50を埋める必要があるため、有機膜1の厚さを厚くする必要がある。また、MI素子4の最近の高感度化要求に対応しようとすると、検出コイル79を構成する配線層7の幅や間隔を狭くする等、パターンの微細化をする必要性が高い。そのため、上記エッチング方法のように、有機膜1のエッチングレートが速く、かつパターンを正確に転写できる方法を用いた場合の効果は大きい。
【0047】
(実験例1)
本発明の効果を確認するための実験を行った。まず、シリコン製の基板5(
図1参照)上に、Cuからなるシード層61と、SiO
2からなるシード保護層62と、エポキシ系樹脂からなる有機膜1と、SiO
2からなるハードマスク層2と、フォトレジスト63とをこの順に積層した。各層の間には、密着性を高めるため、Ti薄膜を介在させた(フォトレジスト63の直下は除く)。有機膜1には、JSR製THB−126Nを用いた。有機膜1の膜厚は40μmとした。また、フォトレジスト63には、東京応化社製TMMR P−W1000PMを用いた。フォトレジスト63の膜厚は4μmにした。シード保護層62とハードマスク層2とは、それぞれ膜厚を0.5μmにした。
【0048】
上記工程を行った後、露光現像工程(
図2参照)を行い、残部630の幅W1と、抜部631の幅W2とがそれぞれ
5.0μmとなるようにエッチングパターンを形成した。その後、CF4ガスを用いたドライエッチング工程を行って、ハードマスク層2をエッチングし(
図3参照)、次いで、フォトレジスト63を剥離した(
図4参照)。以上の工程を行うことにより、被処理体19を製造した。
【0049】
その後、部分エッチング工程(
図7〜
図9参照)と成膜工程(
図6参照)とを交互に行うことにより、有機膜1をZ方向にエッチングする工程を行った。エッチング装置には、Oxford社製Plasmalab System100を用いた。エッチング工程では、
図22に示すごとく、まず、チャンバー内にO
2ガスとArガスを導入し、基板温度を安定させるため、5分間待機した(ステップS1)。その後、チャンバーを真空引きし、エッチング用のガスを導入した(ステップS2)。このステップでは、チャンバーにO
2ガスを3.38×10
−2m
3/sで導入した後、Arガスを3.38×10
−2m
3/sで導入した。そして、これらO
2ガスとArガスを、チャンバー内において混合した。
【0050】
次いで、部分エッチング工程を行った(ステップS3)。部分エッチング工程では、チャンバー内の気圧を0.266Paにし、被処理体19の温度を25±10℃にした。
【0051】
部分エッチング工程の後、チャンバーを真空引きし、保護膜3の原料ガスを導入した(ステップS4)。このステップでは、チャンバー内にO2ガスを1.35×10
−2m
3/sで導入し、その後、TMS(テトラメチルシラン)を3.38×10
−3m
3/sで導入した。ステップS4に次いで、成膜工程(ステップS5)を行った。このステップでは、チャンバー内の圧力を0.266Paにし、被処理体19の温度を25±10℃にした。そして、保護膜3を10
nm形成した。
【0052】
上記ステップS2〜S5を25回繰り返した後、終了処理(ステップS6)を行った。成膜工程(ステップS5)を含めた全体のエッチングレートは、0.43μm/minであった。このエッチングレートは、後述の比較実験におけるエッチングレート(0.47μm/min)と大きな差が無いことを確認できた。
なお、従来のように、CH系ガスとNH
3ガスの混合ガスを用いてエッチングした場合は、エッチングレートが0.15μm/minである。この値と比較して、本発明は、エッチングレート(0.43μm/min)を大幅に改善できることが分かる。
【0053】
有機膜1全体をエッチングした後の断面SEM写真を
図23に示す。この写真から、有機膜1の側面12はX方向に大きくエッチングされておらず、フォトレジスト63のパターンを正確に転写できていることが分かる。なお、凹状部10の最大幅は5.7μmであり、パターンの変換誤差は14%であった。
【0054】
(比較実験)
本発明に含まれない比較実験を行った。まず、実験例1と同一の被処理体19を製造した。そして、保護膜(
図6参照)を形成することなく、エッチングのみを行って、有機膜全体をエッチングした。すなわち、
図24に示すごとく、チャンバーにガスを導入して5分間待機(ステップS11)した後、チャンバーにエッチングガスを導入した(ステップS12)。このステップでは、O
2ガスを3.38×10
−2m
3/sで導入し、次いで、Arガスを3.38×10
−2m
3/sで導入した。
【0055】
次いで、有機膜のエッチングを行った(ステップS13)。このステップでは、チャンバー内の圧力を0.266Paにし、被処理体19の温度を25±10℃にした。そして、保護膜を形成することなく、1回のエッチング工程で、有機膜をZ方向に全てエッチングした。
【0056】
有機膜のエッチングレートは、0.47μm/minであった。有機膜をエッチングした後の断面SEM写真を
図23に示す。この写真から、有機膜91の側面912はX方向に大きくエッチングされており、フォトレジスト63のパターンを正確に転写できていないことが分かる。なお、凹状部10の最大幅は8.3μmであり、パターンの変換誤差は66%であった。これから、比較実験では、実験例1よりもパターンの変換誤差が大きいことが分かる。