特許第6331572号(P6331572)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331572
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】窒化物半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20180521BHJP
   H01S 5/343 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   H01L21/205
   H01S5/343 610
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-68383(P2014-68383)
(22)【出願日】2014年3月28日
(65)【公開番号】特開2015-192036(P2015-192036A)
(43)【公開日】2015年11月2日
【審査請求日】2017年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】道上 敦生
【審査官】 河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/037251(WO,A1)
【文献】 特開2012−104564(JP,A)
【文献】 特開2012−146757(JP,A)
【文献】 国際公開第99/038218(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01S 5/343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機金属気相成長法によって、サファイア基板上に単結晶のAlGa1−XN(0.5<X≦1)からなる第1窒化物半導体層を積層する第1窒化物半導体層積層工程と、
前記第1窒化物半導体層に第2窒化物半導体層を積層する第2窒化物半導体層積層工程と、
を備え、
前記第1窒化物半導体層積層工程は、
酸素を供給しながら、前記サファイア基板の上面全体を前記第1窒化物半導体層で被膜させる第1工程と、
前記第1工程で供給される酸素の流量よりも少ない流量の酸素を供給しながら、または、酸素を供給しないで、前記第1窒化物半導体層を結晶成長させる第2工程と、
を有し、
前記サファイア基板の前記第1窒化物半導体層側の上面は、c面の平坦面と、前記平坦面に設けられた凸部と、を有し、
前記凸部の形状は、略円錐形、または、側面にn面を有する略六角錘形であることを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化物半導体素子の製造方法において、
前記第1窒化物半導体層積層工程では、800℃以上で、前記第1窒化物半導体層を成長させることを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の窒化物半導体素子の製造方法において、
前記第1窒化物半導体層積層工程と、前記第2窒化物半導体層積層工程とは、有機金属気相成長法によって連続して行われることを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1からの何れか一つに記載の窒化物半導体素子の製造方法において、
前記第1窒化物半導体層は、AlNであることを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
【請求項5】
請求項1からの何れか一つに記載の窒化物半導体素子の製造方法において、
前記第2窒化物半導体層は、GaNであることを特徴とする窒化物半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、窒化物半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化物半導体素子の製造方法としては、WO99/38218(特許文献1)に記載されたものがある。この窒化物半導体素子の製造方法では、基板上に、有機金属気相成長法によって、低温でチッ化ガリウム系化合物半導体からなるバッファ層を設け、さらに、チッ化ガリウム系化合物半導体からなる発光層を、高温で、順次積層していた。そして、バッファ層を成長させる際、酸素を供給することで、バッファ層を安定して成長させていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO99/38218
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の窒化物半導体素子の製造方法では、バッファ層を成長させる温度が低温であるため、バッファ層は、単結晶にはならず、アモルファスに近い多結晶の状態であった。このため、バッファ層上に形成される窒化物半導体層の結晶性には改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明の実施形態に係る課題は、窒化物半導体層の結晶性を向上できる窒化物半導体素子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明の実施形態に係る窒化物半導体素子の製造方法は、有機金属気相成長法によって、サファイア基板上に単結晶のAlGa1−XN(0.5<X≦1)からなる第1窒化物半導体層を積層する第1窒化物半導体層積層工程と、前記第1窒化物半導体層に第2窒化物半導体層を積層する第2窒化物半導体層積層工程とを備え、前記第1窒化物半導体層積層工程は、酸素を供給しながら、前記サファイア基板の上面全体を前記第1窒化物半導体層で被膜させる第1工程と、前記第1工程で供給される酸素の流量よりも少ない流量の酸素を供給しながら、または、酸素を供給しないで、前記第1窒化物半導体層を結晶成長させる第2工程と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の実施形態に係る窒化物半導体素子の製造方法によれば、前記第1窒化物半導体層積層工程の第1工程では、酸素を供給しているので、+c極性の第1窒化物半導体層を安定して成長させることができる。また、前記第1窒化物半導体層積層工程の第2工程では、供給される酸素の流量を減少または0としているので、第1窒化物半導体層の結晶性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体素子の構成を示す模式的断面図である。
図2A】本発明の一実施形態に係るサファイア基板の構成を示す模式的平面図である。
図2B】本発明の一実施形態に係るサファイア基板の構成を示す模式図であり、図2AのA−A線における断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る窒化物半導体素子の製造工程において、第1窒化物半導体層積層工程の第2工程で供給される酸素の流量とX線回折ロッキングカーブ半値幅(XRDロッキングカーブFWHM)との関係を示すグラフである。
図4A】本発明の一実施形態に係る第2窒化物半導体層の初期成長を説明する斜視方向からみた模式図である。
図4B】本発明の一実施形態に係る第2窒化物半導体層の初期成長を説明する平面方向からみた模式図である。
図5A】比較例としての第2窒化物半導体層の初期成長を説明する斜視方向からみた模式図である。
図5B】比較例としての第2窒化物半導体層の初期成長を説明する平面方向からみた模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態の窒化物半導体素子を示す断面図である。図1に示すように、窒化物半導体素子1は、サファイア基板11と、サファイア基板11に積層される第1窒化物半導体層21と、第1窒化物半導体層21に積層される第2窒化物半導体層22と、第2窒化物半導体層22に積層される第3窒化物半導体層23と、を有する。さらに、第3窒化物半導体層23は、サファイア基板側から順に、n型半導体層13と、発光層14と、p型半導体層15とを少なくとも有する。第3窒化物半導体層23は、一領域において少なくとも発光層14とp型半導体層15とが除去されて、n型半導体層13が露出する領域(以下、露出領域という)を有する。n型半導体層13の露出領域には、n側電極16が設けられ、p型半導体層15の上面には、p側電極17が設けられる。
【0011】
前記サファイア基板11は、図2A図2Bに示すように、第1窒化物半導体層21が積層される側の面(上面)110に、複数の凸部112と、複数の凸部112の周囲に配置されたc面からなる平坦面111と、を有する。凸部112の形状は、後述する第2窒化物半導体層22のGaNの結晶構造が6回対称性を有しているため、底面形状を6回対称とする錘状が好ましく、例えば本実施形態のような略円錐としても良く、さらには構成する各辺が、サファイアの結晶面(例えば、a面及びm面)に略平行な略六角錘形としても良い。なお、サファイア基板11の上面110に、凸部112を設けない構成としてもよい。
【0012】
前記第1窒化物半導体層21は、有機金属気相成長法によって形成された単結晶のバッファ層である。なお、本実施形態における単結晶とは、X線回折ロッキングカーブ測定によって得られるスペクトルの半値幅が1800arcsec以下を示すものをいう。このような第1窒化物半導体層21は、AlGa1−XN(0.5<X≦1)からなり、好ましくはAlNである。第1窒化物半導体層が単結晶であるため、サファイアの格子定数に近いAlNを用いる方がエピタキシャル成長しやすく、後述する第2窒化物半導体層22の結晶性向上に効果的である。また、第1窒化物半導体層21の膜厚は、サファイア基板の上面全体を第1窒化物半導体層21が十分に被膜できる10nm以上、かつ、第1窒化物半導体層21の結晶性が向上する100nm以下程度の範囲とするのが好ましく、さらに好ましくは15nm以上50nm以下程度の範囲、さらに好ましくは20nm以上40nm以下程度の範囲とすることで、第1窒化物半導体層21の結晶性をさらに良好なものにすることができる。また、第1窒化物半導体層21の酸素含有濃度は、+c極性の第1窒化物半導体層21を安定して得られる1%以上、かつ、第1窒化物半導体層21上に積層される第2窒化物半導体層22の結晶性を良好なものにすることができる10%以下程度の範囲にするのが好ましい。なお、ここでいう第1窒化物半導体層21の酸素含有濃度とは、後述する第1工程で成膜される層に含有される酸素の濃度をいう。
【0013】
前記第2窒化物半導体層22は、第1窒化物半導体層21を埋め込むGaN層であり、特に初期成長時に平坦な結晶面を有し、後述する第3窒化物半導体層23に生じる転位を減らすことができる。このような、第2窒化物半導体層22の膜厚は、少なくとも第1窒化物半導体層21を被膜できる厚みを有していれば良く、例えば10nm以上50nm以下程度である。
【0014】
前記第3窒化物半導体層23(n型半導体層13、発光層14、p型半導体層15)は、半導体発光素子に適した材料であれば良く、例えば、InAlGa1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y<1)などを用いることができる。また、第3窒化物半導体層23を構成する各半導体層は、それぞれ単層構造でもよいが、組成及び膜厚等の異なる層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に、発光層14は、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸又は多重量子井戸構造であることが好ましい。
【0015】
前記n側電極16及び前記p側電極17は、それぞれ金属ワイヤなどの外部電極が接続され、第3窒化物半導体層23と電気的に接続するための部材である。n側電極16は、第3窒化物半導体層23を構成するn型半導体層13と接するように形成され、例えば、Ag、Al、Ni、Rh、Au、Cu、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、Wなどの単体金属又はこれらの金属を主成分とする合金などを用いることができ、さらには、これらの金属材料を単層で、又は積層したものを利用することができる。また、前記p側電極17は、本実施形態においては、透光性電極17aと、パッド電極17bとを有する。透光性電極17aは、第3窒化物半導体層23を構成するp型半導体層15の上面において略全面に形成され、例えば、ITO(インジウム・スズ酸化物)やIZO(インジウム・亜鉛酸化物)などの透光性導電材料が用いられる。パッド電極17bは、透光性電極17aの上面の一部に形成され、n側電極16と同様の金属材料を用いることができる。
【0016】
次に、図1を参照して、前記窒化物半導体素子1の製造方法について説明する。
【0017】
窒化物半導体素子1の製造方法は、まず、有機金属気相成長法によって、サファイア基板11上に、単結晶のAlGa1−XN(0.5<X≦1)からなる第1窒化物半導体層21を積層する(以下、第1窒化物半導体層積層工程という)。そして、前記第1窒化物半導体層積層工程の後、有機金属気相成長法によって、第1窒化物半導体層21上に第2窒化物半導体層22を積層する(以下、第2窒化物半導体層積層工程という)。
【0018】
次に、前記第2窒化物半導体層22上に、n型半導体層13、発光層14、p型半導体層15を、有機金属気相成長法などによって、順に積層して第3窒化物半導体層23を形成する(以下、第3窒化物半導体層積層工程という)。
【0019】
次に、形成された第3窒化物半導体層23の上面の一部の領域について、p型半導体層15、発光層14及びn型半導体層13の一部をエッチングにより除去してn型半導体層13が底面に露出した露出領域を形成する。その後、当該分野で周知の方法により、n型半導体層13の露出領域にn側電極16、p型半導体層15の上面にp側電極17をそれぞれ形成して、窒化物半導体素子1を製造する。
【0020】
本実施形態において、前記第1窒化物半導体層積層工程は、第1工程と第2工程とを有する。
【0021】
前記第1工程では、酸素を、例えば0.01sccm以上0.1sccm以下程度、さらに好ましくは0.02sccm以上0.06sccm以下程度(ただし、酸素の供給方法は、不活性ガスに酸素を混合して目的の流量で供給しても良いし、直接、酸素を目的の流量で供給しても良い)供給しながら、サファイア基板11の上面110の全体を第1窒化物半導体層21で被膜させる。これにより、+c極性の第1窒化物半導体層21を安定して成長させることができ、さらに、その第1窒化物半導体層21上に積層される第2窒化物半導体層22において、平坦な結晶面を得ることができる。これは、酸素を加えることで、第1窒化物半導体層21のN極性化(−c極性)が抑制されて第1窒化物半導体層21の成長が安定することによると考えられる。
【0022】
前記第2工程では、前記第1工程で供給される酸素の流量よりも少ない流量の酸素を供給しながら、または、酸素を供給しないで、第1窒化物半導体層21を結晶成長させる。これにより、第1窒化物半導体層21の結晶性を向上でき、さらに、結晶性の良い第1窒化物半導体層21上に積層される第2窒化物半導体層22においても、結晶性を向上できる。なお、第2工程において供給される酸素の流量を減少させる場合、第1工程で供給される酸素の流量から、段階的または連続的に減少させてもよい。
【0023】
前記第1窒化物半導体層積層工程では、800℃以上で、第1窒化物半導体層21を成長させる。これにより、第1窒化物半導体層21を確実に単結晶化させることができる。なお、第1窒化物半導体層21の成長温度は、好ましくは、800℃〜1300℃であり、さらに好ましくは、900℃〜1200℃である。これにより、サファイア基板11の上面110のダメージを軽減し、かつ、第1窒化物半導体層21を単結晶化することができる。これに対して、成長温度が上限値よりも大きいと、サファイア基板11の上面110がダメージをうけるおそれがあり、成長温度が下限値より小さいと、第1窒化物半導体層21を単結晶化することができない。
【0024】
次に、図3を用いて、前記第1窒化物半導体層積層工程の第1工程および第2工程の実施例を説明する。本実施例では、第2工程において酸素の供給量を変えて形成した3つのサンプルを準備して、それぞれのサンプルをX線ロッキングカーブ半値幅(XRC−FWHM)にて測定した。なお、本実施例におけるサファイア基板は、その上面に略円錐形状の凸部を複数有し、それら凸部の周囲にはc面からなる平坦面を有するものを用いる。本実施例における凸部の形成方法としては、サファイア基板の上面に、形成する凸部の底面形状と同様の形状(本実施例では円形状とする)にてレジストマスクをパターン形成した後、ドライエッチングをレジストマスクが完全に除去されるまで行うことで形成することができる。
【0025】
図3では、第1窒化物半導体層をAlNとし、前記第1工程において、酸素を窒素又はアルゴンなどの不活性ガスに混合させることで、約0.02sccmの酸素を供給する。次に、前記第2工程において、第1工程と同様の方法にて酸素をそれぞれ、0sccm、約0.01sccm、約0.02sccm供給して、サファイア基板上にAlN層を約30nm程度成膜した3つのサンプルを準備する。次に、3つのサンプルのAlN層上にそれぞれ、第2窒化物半導体層としてのGaN層を約5μm成膜した後、このGaN層についてX線回折ロッキングカーブ半値幅(XRDロッキングカーブFWHM)を測定した。このとき、GaN層のミラー指数(002)(102)について測定した。図3では、横軸に、第2工程で供給される酸素の流量を示し、縦軸に、X線回折ロッキングカーブ半値幅を示す。
【0026】
なお、本実施例では、第1窒化物半導体層にAlNを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。第1窒化物半導体層は、Alの混晶比が高いもの、例えばAlGa1−XN(0.5<X≦1)であれば同様の傾向を示すと考えられる。
【0027】
図3に示すように、ミラー指数が(102)では、第2工程で供給される酸素の流量が少ないほど、X線回折ロッキングカーブ半値幅が小さくなり、結晶性が良くなっている。ミラー指数が(002)では、第2工程で供給される酸素の流量にかかわらず、X線回折ロッキングカーブ半値幅はほぼ一定である。したがって、第2工程で供給される酸素の流量が、第1工程で供給される酸素の流量よりも少ないと、GaN層(第2窒化物半導体層)の結晶性を向上できることが分かる。
【0028】
次に、図4A図4Bを用いて、前記第2窒化物半導体層の初期成長を説明する。
【0029】
図4A図4Bは、略円錐形状の凸部112を有するサファイア基板11の上面110全体に、第1窒化物半導体層である単結晶のAlN層21が積層されており、積層されたAlN層21上に第2窒化物半導体層であるGaN層22a,22bを成長させたときの初期成長の状態を模式的に示す図である。
【0030】
図4A図4Bに示すように、初期成長のときのGaN層22a,22bは、単結晶のAlN層21上において、サファイア基板11の平坦面111(c面)に位置する部分と、凸部112の側面におけるn面近傍に位置する部分と、から成長する。
【0031】
さらに、n面近傍の位置に成長したGaN層22aによって、凸部112の周囲にある平坦面111の位置から成長したGaN層22bが、凸部112を囲むように、安定した六角形状のファセットを形成することが促進される。
【0032】
その結果、凸部112の周囲にある平坦面111の位置から成長したGaN層22bの合わさり目が、1つになるように成長することによって、GaN層22bに生じる転位が減少する傾向にある。したがって、サファイア基板11は、その上面110に略円錐形の凸部112を有することによって、第2窒化物半導体層から生じる転位の数を減らすことができると考えられる。なお、本実施例では凸部の形状を略円錐としたがこれに限定されず、凸部の側面近傍にn面を有していれば良く、略六角錘形としても良い。
【0033】
次に、比較例として、本実施例における第2工程を行わずに第1工程のみ(約0.04sccmの酸素を供給)でAlN層21を形成する場合のGaN層22cの初期成長を、図5A図5Bを用いて説明する。
【0034】
図5A図5Bに示すように、GaN層22cのファセットが不安定な略六角形状を有する傾向にある。このため、GaN層22cは、図5BのA部分に示すように、略六角形状を構成する辺の長さが異なる歪んだ部分を有することで、GaN層22cが凸部112を埋め込むときに偏り、本実施例よりも転位が増加すると考えられる。
【0035】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 窒化物半導体素子
11 サファイア基板
110 上面
111 平坦面
112 凸部
13 n型半導体層
14 発光層
15 p型半導体層
16 n側電極
17 p側電極
21 第1窒化物半導体層
22 第2窒化物半導体層
23 第3窒化物半導体層
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B