特許第6331680号(P6331680)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331680
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/04 20060101AFI20180521BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   C08L33/04
   C08J5/18
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-102005(P2014-102005)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-218231(P2015-218231A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年2月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】福岡 博之
(72)【発明者】
【氏名】沼田 修
【審査官】 藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−087768(JP,A)
【文献】 特表2002−504575(JP,A)
【文献】 特開2005−097435(JP,A)
【文献】 特開2006−160995(JP,A)
【文献】 特開2011−168753(JP,A)
【文献】 特開2013−010954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/00 − 33/26
C08F 251/00 − 299/08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)のRおよびR〜Rのうち、少なくとも一つが式(2)または式(3)
で表されるマクロモノマーと、脂環式構造を有する単量体を含む単量体混合物(Ma)を
重合して得られたアクリル系共重合体(A)を含む樹脂組成物。
【化1】
式(1)において、RおよびR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、
シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基または複素
環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端
基であり、水素原子またはラジカル重合開始剤に由来する基である。nは、2〜1000
の自然数である。
【化2】
【化3】
式(2)、(3)において、Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリー
ル基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、または複素環基である。m=2〜3
、q=2〜3の場合は、それぞれのYが異なる種類であってよい。
【請求項2】
請求項1に記載の樹脂組成物を含む、押出製膜材料。
【請求項3】
下記式(1)のRおよびR〜Rのうち、少なくとも一つが脂環式構造であるマクロ
モノマーと、式(4)または式(5)で表される単量体を含む単量体混合物(Mb)を重
合して得られたアクリル系共重合体(B)を含む樹脂組成物。
【化4】
式(1)において、RおよびR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、
シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基または複素
環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端
基であり、水素原子またはラジカル重合開始剤に由来する基である。nは、2〜1000
の自然数である。
【化5】
【化6】
式(4)、(5)において、Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリー
ル基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、または複素環基である。m=2〜3
、q=2〜3の場合は、それぞれのYが異なる種類であってよい。Xは、水素原子または
メチル基である。
【請求項4】
前記アクリル系重合体(B)と、脂環式構造を有するアクリル系共重合体(C)を含む
、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3または4に記載の樹脂組成物を含む、押出製膜材料。
【請求項6】
請求項または請求項に記載の押出製膜材料を押出製膜したフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明で耐熱性、光学等方性に優れた樹脂組成物およびそのフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
アクリル系樹脂は透明度が高く、種々の光学材料として使用されている。しかし、液晶ディスプレイに用いられる光学フィルム等の用途では、耐熱性や光学等方性が十分ではなかった。
【0003】
これを改善するために、特許文献1には、ガラス転移温度(Tg)の高いアクリル系の樹脂に軟質成分を添加したアクリルフィルムが記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、配向緩和により光学等方性を高めたアクリル系樹脂を含むシートが記載されている。
さらに、特許文献3には、アクリル系マクロモノマーと他のアクリル系モノマーを共重合させた、透明性と機械物性バランスに優れた成形体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−100044号公報
【特許文献2】特開2008−121002号公報
【特許文献3】特開2006−160995号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載されたアクリルフィルムは、軟質成分が最適化されていないため光学等方性が十分ではなかった。特許文献2に記載された樹脂配合物と特許文献3に記載された共重合体はガラス転移温度が低い組成であるため、耐熱性が十分ではないという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、この問題点を解決し、透明で耐熱性、光学等方性に優れた樹脂組成物とそのフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨は、下記式(1)のRおよびR〜Rのうち、少なくとも一つが式(2)または式(3)で表される単量体と、脂環式構造を有する単量体を含む単量体混合物(Ma)を重合して得られたアクリル系共重合体(A)を含む樹脂組成物にある。
【0009】
【化1】
【0010】
式(1)において、RおよびR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基または複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基であり、水素原子またはラジカル重合開始剤に由来する基である。nは、2〜1000の自然数である。
【0011】
【化2】

l=1〜3,m=0〜3 (2)
【0012】
【化3】

p=1〜3,q=0〜3 (3)
【0013】
式(2)、(3)において、Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、複素環基である。m=2〜3、q=2〜3の場合は、それぞれのYが異なる種類であってよい。
【0014】
また本発明の第2の要旨は、下記式(1)のRおよびR〜Rのうち、少なくとも一つが脂環式構造であるマクロモノマーと、式(4)または式(5)で表される単量体を含む単量体混合物(Mb)を重合して得られたアクリル系共重合体(B)を含む樹脂組成物にある。
【0015】
【化1】
【0016】
式(1)において、RおよびR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基または複素環基である。X〜Xは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基である。Zは、末端基であり、水素原子またはラジカル重合開始剤に由来する基である。nは、2〜1000の自然数である。
【0017】
【化4】

l=1〜3,m=0〜3 (4)
【0018】
【化5】

p=1〜3,q=0〜3 (5)
【0019】
式(4)、(5)において、Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、複素環基である。m=2〜3、q=2〜3の場合は、それぞれのYが異なる種類であってよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明により得られた樹脂組成物により、透明で耐熱性、光学等方性に優れたフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
<アクリル系共重合体(A)>
本発明のアクリル系共重合体(A)は、式(1)で表されるマクロモノマーを含む単量体混合物(Ma)を重合して得られた共重合体である。
【化1】
【0022】
式(1)において、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基または複素環基である。
ただし、R及びR〜Rの少なくとも一つは式(2)または(3)で表した置換基であることが必要である。光学等方性の観点から、R及びR〜Rの1%以上70%以下が式(2)または(3)で表した置換基であることが好ましい。
【0023】
【化2】
l=1〜3,m=0〜3 (2)
【0024】
【化3】

p=1〜3,q=0〜3 (3)
【0025】
Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、複素環基である。m=2〜3、q=2〜3の場合は、それぞれのYが異なる種類であってよい。
前記アルキル基としては、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。前記アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−ブチル基及びイソブチル基が挙げられる。
前記シクロアルキル基としては、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。前記シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、イソボルニル基、及びアダマンチル基が挙げられる。
【0026】
前記アリール基としては、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。前記アリール基の具体例としては、フェニル基、及びナフチル基が挙げられる。
【0027】
前記アルキルアリール基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基に炭素数6〜18のアリール基が結合した置換基が挙げられる。前記アルキルアリール基の具体例としては、ベンジル基、及びフェニルエチル基が挙げられる。
【0028】
前記アルコキシアリール基としては、例えば、炭素数1〜20のアルコキシ基に炭素数6〜18のアリール基が結合した置換基が挙げられる。前記アリール基の具体例としては、フェノキシエチル基、フェノキシポリエチレングリコール基が挙げられる。
【0029】
前記複素環基としては、例えば、炭素数5〜18の複素環基が挙げられる。前記複素環基の具体例としては、γ−ラクトン基及びε−カプロラクトン基が挙げられる。
【0030】
さらに、前記アルキル基、前記シクロアルキル基、前記アリール基、前記アルキルアリール基、前記アルコキシアリール基又は前記複素環基は、置換基を有することができる。
【0031】
前記置換基としては、それぞれ独立して、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(−COOR’)、カルバモイル基(−CONR’R’’)、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基、アミド基(−NR’R’’)、ハロゲン、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(−OR’)又は親水性若しくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。
【0032】
なお、R’又はR’’は、それぞれ独立して、複素環基を除いて前記R及びR〜Rと同様の基が挙げられる。
【0033】
前記置換基のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。前記置換基のカルバモイル基としては、例えば、N−メチルカルバモイル基及びN,N−ジメチルカルバモイル基が挙げられる。前記置換基のアミド基としては、例えば、ジメチルアミド基が挙げられる。前記置換基のハロゲンとしては、例えば、ふっ素、塩素、臭素及び、よう素が挙げられる。
前記置換基のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。前記置換基の親水性またはイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシル基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0034】
〜Xは、水素原子及びメチル基から選ばれる少なくとも1種であり、メチル基が好ましい。X〜Xは、合成し易さの観点から、X〜Xの半数以上がメチル基であることが好ましい。
【0035】
Zは、マクロモノマーの末端基である。マクロモノマーの末端基としては、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子またはラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。nは、2〜10,000の自然数である。
【0036】
前記マクロモノマーは、公知の方法で製造できる。マクロモノマーの製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法(米国特許4,680,352号明細書)、α−ブロモメチルスチレン等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法(国際公開88/04304号)、重合性基を化学的に結合させる方法(特開昭60−133007号公報、米国特許5147952号明細書)、熱分解による方法(特開平11−240854号公報)等が挙げられる。
【0037】
前記マクロモノマーを製造する際の、単量体混合物(ma)に含まれるその他の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸o−ビフェニル、(メタ)アクリル酸p−ビフェニル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、プラクセルFM(ダイセル化学(株)製カプロラクトン付加モノマー、商品名)、ブレンマーPME−100(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が2であるもの)、商品名)、ブレンマーPME−200(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が4であるもの)、商品名)、ブレンマーPME−400(日油(株)製メトキシポリエチレングリコールメタクリレート(エチレングリコールの連鎖が9であるもの)、商品名)、ブレンマー50POEP−800B(日油(株)製 オクトキシポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−メタクリレート(エチレングリコールの連鎖が8であり、プロピレングリコールの連鎖が6であるもの)、商品名)及びブレンマー20ANEP−600(日油(株)製ノニルフェノキシ(エチレングリコール−ポリプロピレングリコール)モノアクリレート、商品名)、ブレンマーAME−100(日油(株)製、商品名)、ブレンマーAME−200(日油(株)製、商品名)及びブレンマー50AOEP−800B(日油(株)製、商品名)が挙げられる。
【0038】
これらの中で、単量体の入手し易さと、耐熱性の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アタクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸が好ましい。なかでも、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチルがより好ましい。
前記単量体混合物(ma)中の前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、耐熱性の点から、80質量%以上99.5質量%以下が好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量の下限値は、82質量%以上がより好ましく、84質量%以上が更に好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量の上限値は、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。
【0039】
前記式(1)のマクロモノマーは、前記アクリル系共重合体(A)を重合する際の単量体混合物(Ma)中の、前記マクロモノマー以外の単量体との反応性、および前記マクロモノマー自身の塑性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が10000〜200000であることが好ましく、20000〜100000であることがより好ましい。
【0040】
前記重量平均分子量(Mw)が10000未満では前記マクロモノマーの塑性によりアクリル系共重合体(A)の耐熱性が低下しやすく、200000を超えると単量体混合物(Ma)中のマクロモノマー以外の単量体との反応性が低下しやすい。
【0041】
なお、前記マクロモノマーは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
さらに本発明のアクリル系共重合体(A)の重合に用いる、前記単量体混合物(Ma)に含まれる前記マクロモノマー以外の単量体としては、耐熱性の面から、脂環式の置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むことが必須である。
前記脂環式の置換基としては、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。前記シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
これらの中で、耐熱性と強度の観点からt−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基であることが好ましい。なかでも、イソボルニル基がより好ましい。
【0043】
また、前記単量体混合物(Ma)に含まれる前記マクロモノマー以外の単量体としては前記脂環式の置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体以外に、得られるアクリル系共重合体(A)の透明性の面から、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン誘導体が好ましい。さらに、これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸o−ビフェニル、(メタ)アクリル酸p−ビフェニル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化β−ナフトール、(メタ)アクリル酸o−フェニル−2−フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシ化o−フェニルフェノール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレンがより好ましい。また、機械物性の面から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルが更に好ましい。
【0044】
これら単量体は1種類のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
前記式(1)のマクロモノマーの含有量は、前記単量体混合物(Ma)中に1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましい。
【0046】
前記マクロモノマーの含有量が1質量%以上であれば、アクリル系共重合体(A)の複屈折を打ち消す効果が得られ、90質量%以下であれば単量体混合物(Ma)の重合が容易となる。
【0047】
前記脂環式の置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、耐熱性と強度の点で、前記単量体混合物(Ma)中に1〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることがより好ましい。
【0048】
前期単量体の重合は、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法で、公知の重合条件で行うことができる。
【0049】
重合開始剤は、公知の有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。
【0050】
有機過酸化物の具体例としては、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等が挙げられる。
【0051】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。
【0052】
これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0053】
これら重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
また、これらの重合開始剤の量は、前記単量体混合物(Ma)100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0055】
重合温度は公知の範囲で行えばよく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
【0056】
さらに、重合の際には、重合体の分子量を調節するために、メルカプタン類、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等の公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0057】
前記単量体混合物(Ma)を重合して得られたアクリル系共重合体(A)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は、5000以上である。前記重量平均分子量(Mw)が、5000以上であれば、耐熱性が向上する。耐熱性の点から10000以上がより好ましい。
【0058】
<アクリル系共重合体(B)>
本発明のアクリル系共重合体(B)は、式(1)で表される前記マクロモノマーを含む単量体混合物(Mb)を重合して得られた共重合体である。
【0059】
【化1】
【0060】
式(1)において、R及びR〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基または複素環基である。
ただし、R及びR〜Rの少なくとも一つは脂環式の置換基であることが必須である。耐熱性と強度の観点から、R及びR〜Rの5%以上60%以下が脂環式の置換基であることが好ましい。
前記脂環式の置換基としては、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。前記シクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基及びアダマンチル基が挙げられる。
これらの中で、耐熱性と強度の観点からt−ブチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基であることが好ましい。なかでも、イソボルニル基がより好ましい。
【0061】
〜Xは、水素原子及びメチル基から選ばれる少なくとも1種であり、メチル基が好ましい。X〜Xは、合成し易さの観点から、X〜Xの半数以上がメチル基であることが好ましい。
【0062】
Zは、マクロモノマーの末端基である。マクロモノマーの末端基としては、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子またはラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。nは、2〜10,000の自然数である。
【0063】
前記マクロモノマーは、前出のアクリル系共重合体(A)のマクロモノマーと同様、公知の方法で製造できる。
【0064】
前記マクロモノマーを製造する際の、単量体混合物(mb)に含まれるその他の単量体としては、前出のアクリル系共重合体(A)の場合と同じ種類のラジカル重合性単量体が挙げられる。
これらの中で、単量体の入手し易さと、光学等方性の観点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等の(メタ)アクリル酸エステル、及び(メタ)アクリル酸が好ましい。なかでも、メタクリル酸メチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチルがより好ましい。
【0065】
前記単量体混合物(mb)中の前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量は、耐熱性の点から、80質量%以上99.5質量%以下が好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量の下限値は、82質量%以上がより好ましく、84質量%以上が更に好ましい。前記(メタ)アクリル酸エステルの含有量の上限値は、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。
【0066】
前記式(1)のマクロモノマーは、前記アクリル系共重合体(B)を重合する際の単量体混合物(Mb)中の、前記マクロモノマー以外の単量体との反応性、前記マクロモノマー自身の塑性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)が10000〜200000であることが好ましく、20000〜100000であることがより好ましい。
【0067】
前記重量平均分子量(Mw)が10000未満では前記マクロモノマーの塑性によりアクリル系共重合体(B)の耐熱性が低下しやすく、200000を超えると単量体混合物(Mb)中のマクロモノマー以外の単量体との反応性が低下しやすい。
【0068】
なお、前記マクロモノマーは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
さらに本発明のアクリル系共重合体(B)の重合に用いる、前記単量体混合物(Mb)に含まれる前記マクロモノマー以外の単量体としては、光学等方性の面から、式(4)または(5)で表した芳香族系置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むことが必要である。
【0070】
【化4】

l=1〜3,m=0〜3 (4)
【0071】
【化5】

p=1〜3,q=0〜3 (5)
【0072】
Yは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アルコキシアリール基、複素環基である。m=2〜3、q=2〜3の場合は、それぞれのYが異なる種類であってよい。
前記式(4)、式(5)においてXは、水素原子及びメチル基から選ばれる少なくとも1種であり、反応性の観点から水素原子が好ましい。
また、前記単量体混合物(Mb)に含まれる前記マクロモノマー以外の単量体としては前記式(4)式(5)で表した芳香族系置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体以外に、得られるアクリル系共重合体(B)の透明性の面から、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン誘導体が好ましい。具体的には、前出のアクリル系共重合体(A)の場合と同じ種類のラジカル重合性単量体が挙げられるが、機械物性の面から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルが更に好ましい。
これら単量体は1種類のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
前記式(1)のマクロモノマーの含有量は、前記単量体混合物(Mb)中に1〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましい。
【0074】
前記マクロモノマーの含有量が1質量%以上であれば、アクリル系共重合体(B)の耐熱性、透明性が向上し、90質量%以下であれば単量体混合物(Mb)の重合が容易となる。
前記式(4)または式(5)で表した芳香族系置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、光学等方性の点で、前記単量体混合物(Mb)中に1〜70質量%であることが好ましく、3〜50質量%であることがより好ましい。
【0075】
前期単量体の重合は、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法で、公知の重合条件で行うことができる。

重合開始剤は、前出のアクリル系共重合体(A)の重合と同様、公知の有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。
【0076】
これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0077】
これら重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
また、これらの重合開始剤の量は、前記単量体混合物(Mb)100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0079】
重合温度は公知の範囲で行えばよく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
【0080】
さらに、重合の際には、重合体の分子量を調節するために、メルカプタン類、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等の公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0081】
前記単量体混合物(Mb)を重合して得られたアクリル系共重合体(B)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は、5000以上である。前記重量平均分子量(Mw)が、5000以上であれば、耐熱性が向上する。耐熱性の点から10000以上がより好ましい。
【0082】
また、本発明の樹脂組成物は、以下のアクリル系共重合体(C)またはアクリル系共重合体(D)を含んでいても良い。
<アクリル系共重合体(C)>
本発明のアクリル系共重合体(C)は、前記アクリル系共重合体(A)、(B)以外の共重合体であればよく、耐熱性の点で前記アクリル系共重合体(C)が脂環式構造を有することが好ましい。前記脂環式構造としては、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基等が挙げられる。前記アクリル系共重合体(C)が脂環式構造を有するためには、脂環式構造を有する単量体を公知の方法で共重合すればよい。前記脂環式構造を有する単量体は、前記アクリル系共重合体(C)を重合する際の単量体混合物(Mc)中に1〜70%含まれることが好ましい。
【0083】
前記アクリル系共重合体(C)は、公知の単量体の混合物を公知の方法で重合して得られる。
重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸o−ビフェニル、(メタ)アクリル酸p−ビフェニル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化β−ナフトール、(メタ)アクリル酸エトキシ化o−フェニルフェノール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、プラクセルFM(ダイセル化学(株);カプロラクトン付加単量体)、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノルマルブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、ブレンマーPME−100、ブレンマーPME−200(日本油脂(株))等の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸アダマンチル等の脂環式側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物等のα,β−不飽和カルボン酸類;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド等のマレイミド類;カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、トリフルオロ酢酸ビニル等のビニルエステル類;ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン等のジエン類;スチレン、ビニルトルエン、o,p−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン等のモノもしくはポリアルキルスチレン等の芳香族ビニル化合物;メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、ブトキシメタクリルアミド、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ブトキシアクリルアミド等重合性アミド類;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル等のジアルキルアミノエチル(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。
【0084】
これらの中でも、入手のし易さ、得られる共重合体の透明性および機械物性バランスの面から、(メタ)アクリル酸エステル類、脂環式側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類、α,β−不飽和カルボン酸類が好ましい。さらに、これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸がより好ましい。
さらに、上述したラジカル重合性単量体のうち、耐熱性の面から脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル類が特に好ましい。具体的には、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルが挙げられる。
【0085】
前期単量体混合物(Mc)の重合は、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法で、公知の重合条件で行うことができる。
【0086】
重合開始剤は、前出のアクリル系共重合体(A)、(B)の重合と同様、公知の有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。
【0087】
これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0088】
これら重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0089】
また、これらの重合開始剤の量は、前期単量体混合物(Mc)100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。
【0090】
重合温度は公知の範囲で行えばよく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
【0091】
さらに、重合の際には、重合体の分子量を調節するために、メルカプタン類、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等の公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0092】
前期単量体混合物(Mc)を重合して得られたアクリル系共重合体(C)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は、30000以上である。前記重量平均分子量(Mw)が、30000以上であれば、耐熱性が向上する。強度の点から70000以上がより好ましい。
<アクリル系共重合体(D)>
本発明のアクリル系共重合体(D)は、前記アクリル系共重合体(A)、(B)以外の共重合体であればよく、光学等方性の点で前記アクリル系共重合体(D)が式(4)または式(5)で表した芳香族系置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体を含むことが好ましい。
【0093】
前記アクリル系共重合体(D)は、公知の単量体の混合物を公知の方法で重合して得られる。
重合可能な単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸誘導体、スチレン誘導体が好ましい。具体的には、前出のアクリル系共重合体(A),(B)の場合と同じ種類のラジカル重合性単量体が挙げられるが、機械物性の面から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチルが更に好ましい。
これら単量体は1種類のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
前記式(4)または式(5)で表した芳香族系置換基をもつ(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量は、光学等方性の点で、前記単量体混合物(Md)中に1〜70質量%であることが好ましく、3〜50質量%であることがより好ましい。
【0095】
前期単量体混合物(Md)の重合は、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法で、公知の重合条件で行うことができる。
【0096】
重合開始剤は、前出のアクリル系共重合体(A)、(B)、(C)の重合と同様、公知の有機過酸化物あるいはアゾ化合物を使用することができる。
【0097】
これらの中でも、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)が好ましい。
【0098】
これら重合開始剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
また、これらの重合開始剤の量は、前期単量体混合物(Md)100質量部に対して0.0001〜10質量部の範囲内で用いることが好ましい。

重合温度は公知の範囲で行えばよく、例えば、−100〜250℃であり、好ましくは0〜200℃の範囲である。
【0100】
さらに、重合の際には、重合体の分子量を調節するために、メルカプタン類、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等の公知の連鎖移動剤を添加してもよい。
【0101】
前期単量体混合物(Md)を重合して得られたアクリル系共重合体(D)の、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は、5000以上である。前記重量平均分子量(Mw)が、5000以上であれば、耐熱性が向上する。耐熱性の点から10000以上がより好ましい。
【0102】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、前記アクリル系共重合体(A)またはアクリル系共重合体(B)を含むことにより、透明性、耐熱性、光学等方性が得られる。
【0103】
前記アクリル系共重合体(A)の場合、樹脂組成物の合計量中に、前記アクリル系共重合体(A)を40〜100質量%含むことが好ましい。前記アクリル系共重合体(A)が40質量%以上であれば十分な強度が得られ、100質量%以下であれば十分な透明性、耐熱性と光学等方性が得られる。
【0104】
強度の点から50質量%以上がより好ましく、耐熱性、透明性の点から99質量%以下がより好ましい。
【0105】
前記アクリル系共重合体(B)の場合、前記アクリル系共重合体(C)との合計量中に、前記アクリル系共重合体(B)を1〜70質量%含むことが好ましい。前記アクリル系共重合体(B)が1質量%以上であれば十分な強度が得られ、70質量%以下であれば十分な耐熱性、透明性が得られる。
【0106】
強度の点から5質量%以上がより好ましく、耐熱性、透明性の点から50質量%以下がより好ましい。
【0107】
さらに本発明の樹脂組成物は、耐熱性や光学特性、機械的特性を損なわない範囲であれば、熱可塑性樹脂や添加剤等を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリルポリマー、ポリオレフィン、ポリアミド、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の飽和ポリエステル及びポリカーボネートが挙げられる。
添加剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系,リン系、イオウ系等の酸化防止剤;耐光安定剤、耐候安定性剤、熱安定剤等の安定剤;ガラス繊維、炭素繊維等の補強材;フェニルサリチレート、(2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシベンゾフェノン等の紫外線吸収剤;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモン等の難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤等の帯電防止剤;顔料、染料等の着色剤;有機フィラーや無機フィラー;可塑剤;滑剤等が挙げられる。
【0108】
前記熱可塑性樹脂や前記添加剤は、樹脂組成物に対して0.1質量%以上、10質量%以下が好ましい。
【0109】
本発明の樹脂組成物は、前記アクリル系共重合体(A)、前記アクリル系共重合体(B)、前記アクリル系共重合体(C)および前記熱可塑性樹脂や前記添加剤を公知の方法で混合することで得られる。混合方法は、例えば、ミキサー等の混合機でブレンドした後、得られた混合物を押出混練する方法が挙げられる。押出混練に用いる混練機は、例えば、単軸押出機、二軸押出機等の押出機や加圧ニーダー等が挙げられる。
【0110】
本願発明の樹脂組成物を含むアクリル系フィルムは、本発明の樹脂組成物を用いて、公知の方法で製造できる。フィルムの製造方法としては、押出成形法、インフレーション成形法、溶液流延法等が挙げられる。
【0111】
押出成形法によってフィルムを製造する場合、ガス発泡による外観不良を防止するために予め樹脂組成物を80〜130℃の範囲の温度で加熱および乾燥させることが好ましい。押出成形は、ガラス転移温度(Tg)より50℃以上高い温度で行われることが好ましい。
【0112】
また、溶液流延法によってフィルムを製造する場合、溶剤としては、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。フィルム中の残留溶剤の濃度は0.1wt%以下であることが好ましい。
【0113】
前記フィルムは、無延伸状態で用いられることが好ましいが、延伸して用いることもできる。延伸する場合は、一軸延伸フィルムでもよいし、二軸延伸フィルムでもよい。
本発明の光学フィルムは、ことにより、延伸しても位相差の増大を抑制することができ、光学等方性を保つことができる。得られたフィルムを延伸する場合、Tg−20℃〜Tg+30℃の温度で行うことが好ましい。
【実施例】
【0114】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
なお、評価は以下の方法でおこなった。
【0115】
(分子量測定)
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー株式会社製 商品名HLC−8120)を用いて測定した。カラムは、TSKgel G5000HXL*GMHXL−L(東ソー株式会社製)を使用した。検量線は、F288/F80/F40/F10/F4/F1/A5000/A1000/A500(東ソー株式会社製 標準ポリスチレン)、及びスチレンモノマーを使用して作成した。
【0116】
試料をテトラヒドロフラン(THF)に溶解させて0.4質量%に調製したTHF溶液100μlを使用し40℃で測定を行った。標準ポリスチレン換算にて質量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、質量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)を算出した。
【0117】
(フイルム膜厚)
デジマイクロ(MF−501、(株)ニコン製)を用いて測定した。
【0118】
(透明性)
JIS K7105に従って測定したヘイズの値をフィルム透明性の指標とした。ヘイズが1%以上であれば透明性が不十分と判断した。
【0119】
(強度)
JIS K7161に従って測定した破断伸度を強度の指標とした。破断伸度が1%未満であれば強度が不十分と判断した。
試験はダンベル状に切り出したフィルムを引張試験機(オートグラフAG−IS、(株)島津製作所)に、つかみ間距離10mmでセットして行った。23℃、50%RHの雰囲気下、毎分1mmの速度で引っ張り、フィルムが破断したときのひずみを破断伸度とした。
(耐熱性)
フィルムの動的粘弾性を測定してtanδカーブの最大値である、tanδピーク温度で評価した。tanδピーク温度が130℃未満であれば耐熱性が不十分と判断した。
動的粘弾性は、動的粘弾性測定装置(Rheogel−E4000、(株)UBM製)を用いて、4mm×20mmのフィルムに周波数1.75Hz、引張変形ひずみ0.01%の刺激を加えながら30℃から200℃までを3℃/分の速度で昇温させて測定した。
(位相差(光学等方性))
位相差測定装置(RETS−100、大塚電子(株)製)を用いて、回転検光子法により400〜800nmの波長について測定を行った。590nmの位相差が±4nm以上であれば位相差の制御(光学等方性)が不十分と判断した。
複屈折(Δn)と位相差(Rth)は以下の関係にある。
【0120】
Rth=Δn×d
(Δn:複屈折、Rth:位相差、d:フィルムの厚み(nm))
また、複屈折(Δn)は以下に示す値である。
【0121】
Δn=(nx+ny)/2−nz
(nx:面内で延伸方向の屈折率、ny:面内で延伸方向と垂直な方向の屈折率、nz:フィルム厚み方向の屈折率)
<分散剤(1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900質量部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60質量部、メタクリル酸カリウム10質量部、メタクリル酸メチル(MMA)12質量部を加えて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、重合温度50℃に昇温し、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08質量部を添加し、更に重合温度60℃に昇温した。該重合開始剤の添加と同時に、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24質量部/分の速度で75分間連続的に滴下することで合計18質量部を加えた。重合温度60℃で6時間保持した後、室温に冷却して分散剤(1)を得た。この分散剤(1)の固形分は10%あった。
<連鎖移動剤(1)の合成>
撹拌機を備えた反応容器に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬(株)製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成(株)製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。
次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成(株)製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。反応物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100Mpa以下で、20℃において12時間乾燥し、連鎖移動剤(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0122】
<マクロモノマーの合成>
マクロモノマー(1)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム(NaSO)0.10質量部及び分散剤(1)0.25質量部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メタクリル酸2−フェノキシエチル(PHEMA)98質量部、アクリル酸メチル(MA)2質量部、連鎖移動剤(1)0.0036質量部及び重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)製、商品名:パーオクタO)0.24質量部を加え、分散液とした。この後、重合装置内を十分に窒素置換し、分散液を80℃に昇温してから1時間保持し、更に91℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む懸濁液を得た。この懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマー(1)を得た。マクロモノマー(1)の重量平均分子量(Mw)は46,000、分子量分布(Mw/Mn)は4.5であった。
マクロモノマー(2)
PHEMA98質量部、連鎖移動剤(1)0.0036質量部の代わりに、メタクリル酸ベンジル(BZMA)98質量部、連鎖移動剤(1)0.0024質量部を用いた以外はマクロモノマー(1)と同様にしてマクロモノマー(2)を得た。マクロモノマー(2)のMwは44,000、Mw/Mnは4.1であった。
マクロモノマー(3)
連鎖移動剤(1)0.0024質量部の代わりに、連鎖移動剤(1)0.0036質量部を用いた以外はマクロモノマー(2)と同様にしてマクロモノマー(3)を得た。マクロモノマー(3)のMwは31,000、Mw/Mnは3.6であった。
【0123】
マクロモノマー(4)
連鎖移動剤(1)0.0024質量部の代わりに、連鎖移動剤(1)0.0050質量部を用いた以外はマクロモノマー(2)と同様にしてマクロモノマー(4)を得た。マクロモノマー(4)のMwは23,000、Mw/Mnは3.3であった。
【0124】
マクロモノマー(5)
BZMA98質量部の代わりに、MMA73質量部、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)25質量部を用いた以外はマクロモノマー(2)と同様にしてマクロモノマー(6)を得た。マクロモノマー(6)のMwは22,000、Mw/Mnは3.9であった。
マクロモノマー(6)
連鎖移動剤(1)0.0024質量部の代わりに、連鎖移動剤(1)0.0050質量部を用いた以外はマクロモノマー(6)と同様にしてマクロモノマー(7)を得た。マクロモノマー(7)のMwは8,000、Mw/Mnは2.7であった。
【0125】
マクロモノマーの組成と分子量を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
<アクリル系共重合体(A)の合成>
共重合体(A−1)
脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム0.30質量部及び分散剤(1)0.40質量部を混合して分散媒を得た。
【0128】
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、マクロモノマー(1)10質量部、
MMA66.6質量部、IBXMA22.5質量部及びMA0.9質量部を仕込み、50
℃に加温した状態で攪拌することによりシラップを得た。このシラップを40℃以下に冷
却した後、連鎖移動剤としてノルマルオクチルメルカプタン(n−OM)0.12質量部
及び重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(AMBN)0
.12質量部を加えて溶解させた。
【0129】
次いで、前記分散媒をシラップに加えた後、窒素バブリングにより重合装置内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌し懸濁液を得た。
【0130】
前記懸濁液を73℃に昇温し、重合発熱ピークが出るまで73℃に保持した。重合発熱ピークが出た後、懸濁液が73℃になったところで、懸濁液を95℃に昇温し、1時間保持して重合を完結させた。
【0131】
その後、反応液を40℃以下に冷却して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄、脱水し、40℃で16時間乾燥して、共重合体(A−1)を得た。共重合体(A−1)のMwは105,000、Mw/Mnは8.1であった。
【0132】
共重合体(A−2)
マクロモノマー(1)10質量部及びn−OM0.12質量部の代わりに、マクロモノマー(2)10質量部及びn−OM0.18質量部を用いた以外は共重合体(A−1)と同様にして共重合体(A−2)を得た。共重合体(A−2)のMwは90,000、Mw/Mnは10.4であった。
【0133】
共重合体(A−3)
マクロモノマー(1)10質量部及びn−OM0.12質量部の代わりに、マクロモノマー(3)10質量部及びn−OM0.16質量部を用いた以外は共重合体(A−1)と同様にして共重合体(A−3)を得た。共重合体(A−3)のMwは91,000、Mw/Mnは7.5であった。
【0134】
共重合体(A−4)
マクロモノマー(1)10質量部、IBXMA22.5質量部、MMA66.6質量部、MA0.9質量部及びn−OM0.12質量部の代わりに、マクロモノマー(4)6質量部、IBXMA23.5質量部、MMA68.6質量部、アクリル酸o−フェニル−2−フェノキシエチル(OPPEA)1.9質量部及びn−OM0.16質量部を用いた以外は、共重合体(A−1)と同様にして共重合体(A−4)を得た。共重合体(A−4)のMwは98,000、Mw/Mnは7.1であった。
【0135】
アクリル系共重合体(A)の組成と分子量を表2に示す。
【0136】
【表2】
【0137】
<アクリル系共重合体(B)の合成>
共重合体(B−1)
脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム0.29質量部及び分散剤(1)0.27質量部を混合して分散媒を得た。
【0138】
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、マクロモノマー(5)50質量部、BZA30質量部及びMMA20質量部を仕込み、50℃に加温した状態で攪拌することによりシラップを得た。このシラップを40℃以下に冷却した後、重合開始剤としてAMBN0.30質量部を加えて溶解させた。
【0139】
次いで、前記分散媒をシラップに加えた後、窒素バブリングにより重合装置内の雰囲気を窒素置換しながら、攪拌し懸濁液を得た。
【0140】
前記懸濁液を75℃に昇温し、重合発熱ピークが出るまで75℃に保持した。重合発熱ピークが出た後、懸濁液が75℃になったところで、懸濁液を95℃に昇温し、1時間保持して重合を完結させた。
【0141】
その後、反応液を40℃以下に冷却して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄、脱水し、40℃で16時間乾燥して、共重合体(B−1)を得た。共重合体(B−1)のMwは92,000、Mw/Mnは8.4であった。
【0142】
共重合体(B−2)
BZA30質量部及びMMA20質量部の代わりに、OPPEA35質量部及びMMA15質量部を用いた以外は共重合体(B−1)と同様にして共重合体(B−2)を得た。共重合体(B−2)のMwは105,000、Mw/Mnは7.3であった。
【0143】
共重合体(B−3)
マクロモノマー(5)50質量部、BZA30質量部及びMMA20質量部の代わりに、マクロモノマー(6)40質量部、BZA42質量部及びMMA18質量部を用いた以外は共重合体(B−1)と同様にして共重合体(B−3)を得た。共重合体(B−3)のMwは62,000、Mw/Mnは11.1であった。
【0144】
アクリル系共重合体(B)の組成と分子量を表3に示す。
【0145】
【表3】
【0146】
<アクリル系共重合体(C)の合成>
共重合体(C−1)
BZA9.6質量部、IBXMA21質量部及びMMA68.4質量部の代わりに、IBXMA25質量部及びMMA74質量部を用いた以外は共重合体(B−4)と同様にして共重合体(C−1)を得た。共重合体(C−1)のMwは97,000、Mw/Mnは3.7であった。
共重合体(C−2)
MMA74質量部及びMA1質量部の代わりに、MMA73質量部及びOPPEA2質量部を用いた以外は共重合体(C−1)と同様にして共重合体(C−2)を得た。共重合体(C−2)のMwは95,000、Mw/Mnは6.6であった。
アクリル系共重合体(C)の組成と分子量を表4に示す。
【0147】
【表4】
【0148】
<アクリル系共重合体(D)の合成>
共重合体(D−1)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム0.30質量部及び分散剤(1)0.40質量部を混合して分散媒を得た。そこにBZMA10質量部、IBXMA22.5質量部、MMA66.6質量部、MA0.9質量部、n−OM0.20質量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.10質量部を加えて撹拌し分散させ、窒素バブリングにより重合装置内の雰囲気を窒素置換した。
得られた混合物を、撹拌下、反応系の温度を70℃まで昇温し、重合発熱ピークが出るまで70℃に保持した。重合発熱ピークが出た後、懸濁液が70℃になったところで、懸濁液を95℃に昇温し、1時間保持して重合を完結させた。
その後、反応液を40℃以下に冷却して懸濁液を得た。この懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄、脱水し、40℃で16時間乾燥して、共重合体(D−1)を得た。共重合体(D−1)のMwは99,000、Mw/Mnは6.5であった。
共重合体(D−2)
BZMA10質量部、IBXMA22.5質量部、MMA66.6質量部及びMA0.9質量部の代わりに、BZA9.6質量部、IBXMA21質量部、MMA68.4質量部及びMA1質量部を用いた以外は共重合体(D−1)と同様にして共重合体(D−2)を得た。共重合体(D−2)のMwは103,000、Mw/Mnは6.6であった。
【0149】
共重合体(D−3)
BZA9.6質量部、IBXMA21質量部、MMA68.4質量部及びMA1質量部の代わりに、BZA40質量部、MMA57.5質量部及びMA2.5質量部を用いた以外は共重合体(D−2)と同様にして共重合体(D−3)を得た。共重合体(D−3)のMwは95,000、Mw/Mnは6.2であった。
アクリル系共重合体(D)の組成と分子量を表5に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
(実施例1〜8、比較例1〜6)
アクリル系共重合体(A)〜(C)、マクロモノマーを表6、表7に示す比率で混合した樹脂組成の合計100質量部に対し、酸化防止剤としてアデカスタブAO60((株)ADEKA製)0.5質量部、アデカスタブ2112((株)ADEKA製)0.3質量部を添加した。
二軸押出機(ラボプラストミルマイクロ((株)東洋精機製作所製))を用いて溶融混練して押出したストランドを所定の長さでカットし、前記樹脂組成物のペレットを得た。溶融混練は、二軸押出機のバレル温度240℃、ダイ温度240℃で行った。
【0152】
次に、上記の樹脂組成物のペレットを、Tダイ付二軸押出機(ラボプラストミルマイクロ、(株)東洋精機製作所製)を用いてフィルムとした。二軸押出機のバレル温度は240℃、ダイ温度は240℃で行った。
上記の操作で得られた押出フィルムを長さ75mm×幅45mmに切り出し、テンシロン万能試験機((株)オリエンテック製)を用いて延伸した。132℃に加熱した試験機の恒温槽に、つかみ間距離45mmでセットしたフィルムを毎分12mmの速度で長さ方向に引っ張り、元の長さの2倍まで一軸延伸した。
【0153】
評価結果を表6,7に示す。
【0154】
【表6】
【0155】
【表7】
【0156】
表中の組成比は質量部で表した。