(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記樹脂層積層工程は、前記各樹脂層について、樹脂と、対応する光学的機能物質とを含有するスラリーを塗布することにより樹脂層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
前記複数種類の樹脂層には、第1蛍光体を前記光学的機能物質として含有する樹脂層と、前記第1蛍光体と発光波長が異なる第2蛍光体を前記光学的機能物質として含有する樹脂層と、光学的機能物質を含有しない樹脂層とが少なくとも含まれることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の発光装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る光学的機能部材の製造方法、発光装置の製造方法及びこの製造方法によって製造される発光装置について説明する。
なお、以下の説明において参照する図面は、本発明を概略的に示したものであるため、各部材のスケールや間隔、位置関係などが誇張、あるいは、部材の一部の図示が省略されている場合がある。また、平面図とその断面図において、各部材のスケールや間隔が一致しない場合もある。また、以下の説明では、同一の名称及び符号については原則として同一又は同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略することとする。
【0015】
<第1実施形態>
[発光装置の構成]
まず、
図1から
図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る発光装置の構成について説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る発光装置10は、半導体発光素子1(以下、適宜「発光素子」と呼ぶ)と、発光素子1の上面及び対向する一対の側面(左側面及び右側面)を被覆する波長変換層7とを備えて構成されている。
【0016】
波長変換層(光学的機能層)7は、異なる種類の蛍光体(波長変換物質、光学的機能物質)を含有する複数種類(
図1及び
図2に示した例では4種類)の樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tの区画がストライプ状(縞状)に周期的に配置されている。
なお、
図1(a)に示した平面図、
図2に示した斜視図においては、樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tの配置を分かり易くするために、樹脂層の種類ごとに、異なる種類のハッチングを施している。後記する
図8から
図10、及び
図12から
図16についても同様である。
また、本実施形態では、発光素子1は青色光を発光するものとし、樹脂層7
Rは発光素子1が発光する青色光を赤色光に波長変換し、樹脂層7
Yは発光素子1が発光する青色光を黄色光に波長変換し、樹脂層7
Gは発光素子1が発光する青色光を緑色光に波長変換し、樹脂層7
Tは発光素子1が発光する青色光を波長変換することなく青色光のまま、それぞれ外部に出射するものとして説明する。
また、本実施形態に係る発光装置10は、
図3に示すように、発光素子1の半導体積層体3と、n側電極4n及びp側電極4pとが設けられた面を実装面とし、波長変換層7が設けられた成長基板2側を光取り出し面とするフェイスダウン実装型のLEDである。
【0017】
図3に示すように、発光素子1は、成長基板2と、半導体積層体3と、n側電極4n及びp側電極4pと、全面電極5a及びカバー電極5bと、保護層6とを備えている。
発光素子1は、成長基板2の下面側に、n型半導体層3nとp型半導体層3pとを積層した半導体積層体3を備えている。半導体積層体3は、電流を通電することにより発光するようになっており、n型半導体層3nとp型半導体層3pとの間に発光層3aを備えることが好ましい。
【0018】
半導体積層体3には、p型半導体層3p及び発光層3aが部分的に存在しない領域、すなわちp型半導体層3pの表面から窪んだ領域(この領域を「段差部3b」と呼ぶ)が形成されている。段差部3bの底面(
図3において下面)はn型半導体層3nの露出面であり、段差部3bには、n側電極4nが形成されている。また、p型半導体層3pの下面の略全面には、良好な反射性を有する全面電極5aが設けられている。更に、この全面電極5aを被覆するカバー電極5bが設けられ、カバー電極5bの下面の一部にp側電極4pが形成されている。
また、パッド電極であるn側電極4n及びp側電極4pを除き、半導体積層体3及びカバー電極5bの表面は、絶縁性及び透光性を有する保護層6で被覆されている。
【0019】
成長基板2は、半導体積層体3をエピタキシャル成長させるための基板である。成長基板2は、半導体積層体3をエピタキシャル成長させることができる基板材料で形成されればよく、大きさや厚さ等は特に限定されない。例えば、半導体積層体3をGaN(窒化ガリウム)などの窒化物半導体を用いて形成する場合には、基板材料としては、C面、R面、A面の何れかを主面とするサファイアやスピネル(MgAl
2O
4)のような絶縁性基板、また炭化ケイ素(SiC)、ZnS、ZnO、Si、GaAs、ダイヤモンド、及び窒化物半導体と格子接合するニオブ酸リチウム、ガリウム酸ネオジム等の酸化物基板が挙げられる。
また、成長基板2は、例えば、レーザリフトオフ法やケミカルリフトオフ法などにより最終的に取り除いてもよい。
【0020】
半導体積層体3は、前記したように、発光層3aを含むn型半導体層3nとp型半導体層3pとが積層された積層体のことである。本実施形態においては、半導体積層体3は、表面の一部において、表面からp型半導体層3p及び発光層3aのすべてと、n型半導体層3nの一部とが除去された段差部3bが設けられている。そして、段差部3bの底面(下面)には、n型半導体層3nに電気的に接続されたn側電極4nが設けられている。また、段差部3b以外の半導体積層体3の下面であるp型半導体層3pの下面には、p型半導体層3pの略全面と電気的に接続された全面電極5aと、更に全面電極5aの下面及び側面を被覆するカバー電極5bと、カバー電極5bの下面の一部の領域に設けられたp側電極4pと、を積層してなる電極が設けられている。
【0021】
半導体積層体3は、GaN、GaAs、AlN、InGaN、AlInGaP、GaP、SiC、ZnOのように、半導体発光素子に適した材料を用いることができる。本実施形態においては、発光素子1が発光する光の一部が、波長変換層7によって異なる波長の光に変換されるため、発光波長の短い青色や紫色に発光する半導体積層体3が好適である。
【0022】
n型半導体層3n、発光層3a及びp型半導体層3pは、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X、0≦Y、X+Y≦1)等の窒化物系化合物半導体が好適に用いられる。また、これらの半導体層は、それぞれ単層構造でもよいが、組成及び膜厚等の異なる層の積層構造、超格子構造等であってもよい。特に、発光層3aは、量子効果が生ずる薄膜を積層した単一量子井戸又は多重量子井戸構造であることが好ましい。
【0023】
半導体積層体3として窒化物系化合物半導体であるGaN系化合物半導体を用いる場合は、例えば、MOCVD法(有機金属気相成長法)、HVPE法(ハイドライド気相成長法)、MBE法(分子線エピタキシャル成長法)等の公知の技術により形成することができる。また、半導体層の膜厚は特に限定されるものではなく、種々の膜厚のものを適用することができる。
【0024】
全面電極5aは、p型半導体層3pの下面の略全面を覆うように設けられる。また、全面電極5aの下面及び側面の全体を被覆するように、カバー電極5bが設けられている。全面電極5aは、カバー電極5b及びカバー電極5bの下面の一部に設けられたp側電極4pを介して供給される電流を、p型半導体層3pの全面に均一に拡散するための導体層である。また、全面電極5aは良好な反射性を有し、発光素子1が発光する光を、光取り出し面である上方向に反射する反射膜としても機能する。ここで、反射性を有するとは、発光素子1が発光する波長の光を良好に反射することをいう。更に、全面電極5aは、波長変換層7によって波長変換された後の光に対しても良好な反射性を有することが好ましい。
【0025】
全面電極5aは、良好な導電性と反射性とを有する金属材料を用いることができる。特に可視光領域で良好な反射性を有する金属材料としては、Ag、Al又はこれらの金属を主成分とする合金を好適に用いることができる。また、全面電極5aは、これらの金属材料を単層で、又は積層したものが利用できる。
【0026】
また、カバー電極5bは、全面電極5aを構成する金属材料のマイグレーションを防止するためのバリア層である。特に全面電極5aとして、マイグレーションし易いAgを用いる場合には、カバー電極5bを設けることが好ましい。
カバー電極5bとしては、良好な導電性とバリア性とを有する金属材料を用いることができ、例えば、Al、Ti、W、Auなどを用いることができる。また、カバー電極5bは、これらの金属材料を単層で、又は積層したものが利用できる。
【0027】
n側電極4nは、n型半導体層3nが露出した半導体積層体3の段差部3bの底面に設けられている。また、p側電極4pは、カバー電極5bの下面の一部に設けられている。n側電極4nはn型半導体層3nに、p側電極4pはカバー電極5b及び全面電極5aを介してp型半導体層3pに、それぞれ電気的に接続して、発光素子1に外部からの電流を供給するためのパッド電極である。
【0028】
n側電極4n及びp側電極4pとしては、金属材料を用いることができ、例えば、Ag、Al、Ni、Rh、Au、Cu、Ti、Pt、Pd、Mo、Cr、Wなどの単体金属及びそれらの合金などを好適に用いることができる。また、n側電極4n及びp側電極4pは、これらの金属材料を単層で、又は積層したものを利用することができる。
【0029】
保護層6は、絶縁性及び透光性を有し、成長基板2と、n側電極4n及びp側電極4pの外部との接続部とを除き、発光素子1の表面全体を被覆する被膜である。保護層6は、発光素子1の保護膜及び帯電防止膜として機能する。
また、保護層6は、光が取り出される半導体積層体3の側面を被覆するため、発光素子1が発光した波長の光に対して、良好な透光性を有することが好ましい。更に、保護層6は、波長変換層7の各樹脂層7
R,7
Y,7
Gが波長変換した後の波長の光に対しても良好な透光性を有することが好ましい。
【0030】
保護層6としては、金属酸化物や金属窒化物を用いることができ、例えば、Si、Ti、Zr、Nb、Ta、Alからなる群より選択された少なくとも一種の金属の酸化物又は窒化物を好適に用いることができる。
【0031】
波長変換層(光学的機能層)7は、異なる種類の粒状の蛍光体を含有する樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tがストライプ状に周期的に配置されて構成されており、発光素子1が発光する光の一部又は全部を吸収して、各樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tに含有される蛍光体の種類に応じて、発光素子1が発光する波長とは異なる波長の光を発光することにより、波長変換する層である。
【0032】
前記したように、本実施形態では、樹脂層7
Rは、発光素子1が発光する青色光を赤色光に波長変換する蛍光体を含有し、樹脂層7
Yは、発光素子1が発光する青色光を黄色光に波長変換する蛍光体を含有し、樹脂層7
Gは、発光素子1が発光する青色光を緑色光に波長変換する蛍光体を含有する蛍光体層である。また、樹脂層7
Tは、蛍光体を含有せず、発光素子1が発光する青色光を波長変換することなく透過させる透明層である。ここで、樹脂層7
Tは、出射する青色光が、他の樹脂層7
R,7
Y,7
Gと同程度に拡散される出射光となるように、光拡散部材を含有するようにしてもよい。
【0033】
なお、本実施形態において、蛍光体を含有しない樹脂層7
Tも、異なる種類の蛍光体を含有する樹脂層の1種として取り扱うものとする。
本実施形態のように、発光素子1が発光する波長の光を波長変換することなく出射する樹脂層7
Tを設けることにより、蛍光体を含有する他の樹脂層7
R,7
Y,7
Gから波長変換されて出射される光と混色した際に、発光素子1が発光する波長成分の光量を適切に調整することができる。
【0034】
更に、樹脂層の種類としては、前記した蛍光体層及び透明層として機能する樹脂層の他に、光反射部材を含有する反射層、光拡散部材を含有する拡散層、光吸収部材を含有する吸収層などの樹脂層を、必要に応じて波長変換層7の構成に加えるようにしてもよい。
【0035】
図1及び
図2に示した例では、波長変換層7は、フェイスダウン実装された状態で、発光素子1の上面(すなわち、成長基板2の上面(
図3参照))の全面及び対向する一対の側面(すなわち、成長基板2の側面及び保護層6を介した半導体積層体3の側面(
図3参照))である左側面及び右側面の全面を被覆するように設けられている。
【0036】
波長変換層7の膜厚は、蛍光体の含有量や、発光素子1が発光する光と波長変換後の光との混色後の色調などによって定めることができるが、例えば、1μm以上かつ1000μm以下とすることができ、5μm以上かつ500μm以下とすることが好ましく、10μm以上かつ200μm以下とすることがより好ましい。
【0037】
また、波長変換層7の各ストライプの幅は、1μm以上かつ1000μm以下とすることができ、5μm以上かつ500μm以下とすることが好ましく、10μm以上かつ200μm以下とすることがより好ましい。
特に、波長変換層7が設けられる発光素子1の表面の、ストライプの延伸方向に垂直な方向の幅に対して、ストライプの幅が十分に小さくなるように配置することが好ましい。すなわち、種類の異なる樹脂層の区画を高密度に配置することで、配光色むらを低減することができる。
【0038】
また、ストライプの幅は、すべて同じ幅としてもよいし、樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tの種類に応じて異なるようにしてもよい。また、
図1及び
図2に示した例では、樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tを周期的に配置しているが、これに限定されず、ランダムに配置するようにしてもよい。何れの場合でも、各樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tによって波長変換された光が混色することで生成される光が所望の色調となるように、各樹脂層7R,7
Y,7
G,7
Tの面積比を定めることができる。
【0039】
樹脂材料としては、発光素子1が発光した光及び波長変換層7に含有される蛍光体が波長変換した後の光に対して良好な透光性を有するものを用いることが好ましい。また、本実施形態では、後記する製造方法によって、溶剤と当該樹脂と各樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tに対応した粒状の蛍光体又は光拡散材などの固形粒子とを含有するスラリーを処方して、スプレー塗布した後に加熱することにより塗布した樹脂層を硬化させながら、波長変換層7の各樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tを順次に積層することができるように、樹脂材料として熱硬化性樹脂を用いることが好ましい。
このような樹脂材料としては、例えば、シリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ変性樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂、又はこれらの樹脂を1種類以上含むハイブリッド樹脂などが挙げられる。なかでも、シリコーン樹脂又はエポキシ樹脂が好ましく、特に耐光性及び耐熱性に優れるシリコーン樹脂がより好ましい。
【0040】
また、蛍光体(波長変換物質、光学的機能物質)としては、発光素子1が発光する波長の光によって励起されて、この励起光と異なる波長の蛍光を発する蛍光物質であれば特に限定されず、粒状の蛍光体を好適に用いることができる。粒状の蛍光体は、光散乱性及び光反射性を有するため、波長変換機能に加えて光散乱部材としても機能し、光の拡散効果を得ることができる。蛍光体は、当該蛍光体が含有される樹脂層中に一様に分散されていることが好ましい。
【0041】
また、蛍光体は、溶剤及び熱硬化性樹脂とともに処方されるスラリーがスプレー塗布可能なように、平均粒径が2.5〜30μm程度とすることが好ましい。
なお、平均粒径の値は、空気透過法又はF.S.S.S.No(Fisher−SubSieve−Sizers−No.)によるものとする(いわゆるDバー(Dの上にバー)で表される値)。
【0042】
蛍光体材料としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、緑〜黄色に発光するセリウムで賦活されたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、緑色に発光するセリウムで賦活されたLAG(ルテチウム・アルミニウム・ガーネット)系蛍光体、緑〜赤色に発光するユーロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CaO−Al
2O
3−SiO
2)系蛍光体、青〜赤色に発光するユーロピウムで賦活されたシリケート((Sr,Ba)
2SiO
4)系蛍光体、緑色に発光するβサイアロン蛍光体、赤色に発光するCASN系又はSCASN系蛍光体などの窒化物系蛍光体、赤色に発光するKSF(K
2SiF
6:Mn)系蛍光体、赤色に発光する硫化物系蛍光体などが挙げられる。
【0043】
発光装置10が、液晶ディスプレイのバックライトなどに用いられる場合は、青色光によって励起され、赤色に発光する蛍光体(例えば、KSF系蛍光体)と、緑色に発光する蛍光体(例えば、βサイアロン蛍光体)とを用いることが好ましい。これによって、当該発光装置10を用いたディスプレイの色再現範囲を広げることができる。また、照明などに用いられる場合は、青緑色に発光する発光素子1と、赤色に発光する蛍光体とを組み合わせて用いることができる。
【0044】
また、前記した蛍光体材料に、蛍光体同士を結着させる結着材を添加することが好ましい。結着材としては、例えば、SiO
2,Al
2O
3,MSiO(Mは、Zn,Ca,Mg,Ba,Sr,Zr,Yなど)などの透光性の無機材料を用いることができる。
また蛍光体材料は、例えば、いわゆるナノクリスタル、量子ドットと称される発光物質でもよい。このような材料としては、半導体材料、例えば、II−VI族、III−V族又はIV−VI族の半導体、具体的には、CdSe、コアシェル型のCdS
XSe
1−X/ZnS、GaP、InAs等のナノサイズの高分散粒子を挙げることができる。このような蛍光体は、例えば、粒径が1〜100nm、好ましくは1〜20nm程度(原子10〜50個程度)のものを挙げることができる。このような蛍光体を用いることにより、内部散乱を抑制することができ、色変換された光の散乱を抑制し、波長変換層7の光の透過率をより一層向上させることができる。また、内部散乱を抑制することにより、上面に対して垂直な方向への光の配光成分を増加させることができ、同時に、発光装置10の側面又は下面に向かう光を抑制することができる。その結果、発光装置10の光取り出し効率を、より向上させることができる。このように構成した発光装置10を、例えば、バックライトに適用する場合に、バックライトへの入光効率を更に増加させることができる。また、量子ドット蛍光体は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等の樹脂を用いて表面修飾や安定化させてもよい。
また、蛍光体材料として有機系の発光材料を用いてもよい。有機系の発光材料として代表的なものは、有機金属錯体を用いた発光材料を挙げることができ、透明性の高い発光材料が多い。このため、蛍光体材料として有機系の発光材料を用いた場合には、量子ドット蛍光体を用いた場合と同様の効果を得ることができる。
【0045】
なお、
図1に示した例では、波長変換層7は、発光素子1の上面の全面及び対向する一対の側面の全面を被覆するように設けたが、これに限定されるものではない。波長変換層7は、上面のみに設けるようにしてもよいし、上面及びすべての側面(すなわち、左側面、右側面、正面及び背面)を被覆するように設けてもよい。
また、波長変換層7が設けられない側面(
図1の例では正面及び背面)を光反射部材で被覆して、外部に取り出される光は、すべて波長変換層7を介して取り出されるように構成してもよい。これによって、波長変換層7に区画された各樹脂層の面積比に応じた波長成分比の混色光を生成することができる。
【0046】
また、発光素子1は、フェイスダウン実装型に限定されるものではなく、フェイスアップ実装型のものであってもよい。この場合は、発光素子1のn側電極4n及びp側電極4pが設けられた面上に波長変換層7を設け、n側電極4n及びp側電極4pの外部電極と接続するための領域が露出するように波長変換層7に開口を設けるようにすればよい。
【0047】
[発光装置の動作]
次に、
図1を参照(適宜
図3参照)して、発光装置10の動作について説明する。
なお、前記したように、説明の便宜上、発光素子1は青色光を発光し、波長変換層7の樹脂層7
Rは赤色光を発光し、樹脂層7
Yは黄色光を発光し、樹脂層7
Gは緑色光を発光し、樹脂層7
Tは青色光を透過するものとして説明する。
【0048】
図1に示した発光装置10は、p側電極4p及びn側電極4n間に電流が供給されると、発光素子1の発光層3aが青色光を発光する。
発光素子1の発光層3aが発光した青色光は、半導体積層体3及び成長基板2内を伝播して、発光素子1の上面又は側面から波長変換層7の各樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tに伝播する。樹脂層7
R、樹脂層7
Y及び樹脂層7
Gに入射した青色光は、それぞれの樹脂層に含有される蛍光体粒子に吸収され、それぞれ赤色光、黄色光及び緑色光に波長変換されて発光装置10の外部に取り出される。また、樹脂層7
Tの入射した青色光は、樹脂層7
Tを透過して、青色光のまま発光装置10の外部に取り出される。
なお、発光素子1内を下方向に伝播する光は、全面電極5aによって上方向に反射され、発光素子1の上面又は側面から波長変換層7に伝播する。
そして、発光装置10の外部に取り出された赤色光、黄色光、緑色光及び青色光が混色することにより、白色光が生成される。
【0049】
[発光装置の製造方法]
次に、
図4を参照して、
図1に示した第1実施形態に係る発光装置10の製造方法について説明する。
図4に示すように、発光装置10の製造方法は、発光素子準備工程S11と、波長変換部材準備工程S12と、裁断工程S13と、貼付工程S14と、を含んでいる。
【0050】
発光素子準備工程S11は、
図3に示した構成の個片化された発光素子1を準備する工程である。
具体的には、まず、サファイアなどからなる成長基板2上(
図3において下面)に、前記した半導体材料を用いて、n型半導体層3n、発光層3a及びp型半導体層3pを順次積層した半導体積層体3を形成する。
【0051】
半導体積層体3が形成されると、半導体積層体3の表面(
図3において下面)の一部の領域について、p型半導体層3p、発光層3a及びn型半導体層3nの一部をエッチングにより除去してn型半導体層3nが底面に露出した段差部3bを形成する。
次に、段差部3bの底面にパッド電極であるn側電極4nを形成する。また、p型半導体層3p及び発光層3aを有する発光領域となる領域には、p型半導体層3pの下面の略全面を覆う反射性を有する全面電極5a及び全面電極5aの表面を被覆するカバー電極5bと、カバー電極5bの下面の一部にパッド電極であるp側電極4pを形成する。
更に、n側電極4n及びp側電極4pを除くウエハの表面全体に、例えば、スパッタリング法により、絶縁性のSiO
2などの保護層6を形成する。
【0052】
以上により、ウエハ状態の発光素子1が形成される。
次に、ダイシング法、スクライブ法などにより、ウエハ状態の発光素子1を所定の分割領域で割断することにより個片化された発光素子1を作製することができる。
なお、ウエハを割断する前に、成長基板2の裏面を研磨して薄肉化するようにしてもよい。これにより、容易に割断することができる。
【0053】
波長変換部材準備工程(光学的機能部材準備工程、光学的機能部材の製造方法)S12は、
図1に示した発光装置10の波長変換層(光学的機能層)7として用いるための、異なる種類の蛍光体を含有する複数種類の樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tがストライプ状に配置されたシート状又は板状の波長変換部材(光学的機能部材)8(
図8参照)を準備する工程である。
ここで、波長変換部材8の各樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tが、それぞれ波長変換層7の各樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tに対応する。
【0054】
なお、発光素子準備工程S11と波長変換部材準備工程S12とは、何れを先に行うようにしてもよく、並行して行うようにしてもよい。また、発光素子準備工程S11を行う替わりに、既成の発光素子1を購入するなどして用いるようにしてもよい。
【0055】
ここで、波長変換部材準備工程S12について、
図5から
図8を参照(適宜
図1及び
図4参照)して、詳細に説明する。
本実施形態における波長変換部材準備工程S12は、
図5に示すように、詳細には樹脂層積層工程S21と、スライス工程S22と、本硬化工程S23とが含まれる。更に、樹脂層積層工程S21には、下部ブランク層形成工程S211と、樹脂層形成工程S212と、仮硬化工程S213と、上部ブランク層形成工程S214とが含まれる。
【0056】
樹脂層積層工程S21は、複数種類の樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tを積層した樹脂層積層体80(
図8参照)を形成する工程である。
樹脂層積層工程S21において、最初のサブ工程として、下部ブランク層形成工程S211が行われる。下部ブランク層形成工程S211において、
図6(a)に示すように、上面が平坦な載置台20上に、波長変換部材8(
図8参照)の一端(
図8において下端)のブランク(余白)層8
Lを形成する。
【0057】
なお、ブランク層8
Lは、波長変換部材8の他端(
図8において上端)のブランク層8
Uとともに、後記する裁断工程S13又は貼付工程S14において、シート状又は板状の波長変換部材8を取り扱う際に把持するための部位である。このため、ブランク層8
Lは、蛍光体を含有しない樹脂層である。
【0058】
ブランク層8
Lの厚さは、スライスされた後の把持部として十分な幅となるように定めることができ、例えば、500μm〜数mm程度とすることができる。
ブランク層8
Lは、蛍光体を含有する他の樹脂層と同様の樹脂を用いてもよいし、異なる種類の樹脂であってもよい。ブランク層8
Lは、樹脂を含有する溶液を、上面が平坦な載置台20上に、スプレー塗布して形成してもよいし、スピンコート法やスクリーン印刷法などの塗布法を用いて形成することもできる。比較的厚く、膜厚に高い精度を必要としないブランク層8
Lを形成するためには、樹脂溶液を比較的高い粘度に調整して、スクリーン印刷法で形成することが好ましい。また、ブランク層8
Lとして、既成の樹脂シートを載置台20に載置するようにしてもよい。
また、樹脂として、熱硬化性樹脂を用いる場合は、スプレー塗布法などによりブランク層8
Lを形成した後に、加熱処理を行うことで仮硬化させることが好ましい。仮硬化させることで、上層として積層される樹脂層と融合しないようにすることができる。
【0059】
樹脂層形成工程S212は、異なる種類の蛍光体を含有する樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tを形成する工程である。
樹脂層形成工程S212において、溶剤と樹脂と各樹脂層に対応する蛍光体の粒子とを含有するスラリーを調整し、スプレー塗布法、スピンコート法、スクリーン印刷法などの塗布法により、前記した樹脂層積層体80(
図8参照)の最下層となるブランク層8
L上に順次に塗布膜を積層するように形成する。塗布法は上記のものに限定されるものではないが、精度の高い膜厚で、かつ、高速に塗布膜を形成できるため、スプレー塗布法を用いることが好ましい。また、スプレーをパルス状に、すなわち間欠的に噴射させる塗布法であるパルススプレー法が、より高精度な膜厚で塗布膜を形成できるため、更に好ましい。
【0060】
パルススプレー法では、噴射量を少なくすることができるため、1回のスプレー塗布による塗布量を低減して薄膜を形成することができる。そして、スプレー塗布を複数回繰り返すことにより、塗布膜である樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
T(以下、適宜に「樹脂層8
R等」と略す)を精度のよい膜厚で形成することができる。また、樹脂材料として熱硬化性樹脂を用い、複数回のスプレー塗布の間に、1回の塗布ごと又は所定回数(例えば、3回)の塗布ごとに熱硬化性樹脂の仮硬化処理を行うことにより、液垂れなどにより膜厚が不均一となることを防止し、均一性の高い良好な膜厚精度で、更に膜厚の厚い樹脂層8
R等を形成することができる。すなわち、表面積の広い発光素子1にも好適に用いることができる波長変換部材8を形成することができる。
【0061】
図6(b)は、ブランク層8
L上に、スプレー装置30を用いて赤色に発光する蛍光体を含有するスラリーのパルス状にスプレーSPを噴射して塗布することで、樹脂層8
Rを形成する様子を示している。
【0062】
スプレー装置30によって塗布されるスラリーは、溶剤と、熱硬化性樹脂と、粒状の蛍光体とが含有される。また、このスラリーは、スプレー噴射可能な範囲で、適度な粘度に調整される。
【0063】
また、熱硬化性樹脂としては、発光素子1が発光する波長の光及び波長変換層7に含有される蛍光体が発光する波長の光に対して良好な透光性を有するものであれば特に限定されず、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂などを用いることができる。具体的には、信越化学工業社製のシリコーン樹脂である製品名:LPS−3541を挙げることができる。
また、溶剤としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、トルエン、アセトンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0064】
また、熱硬化性樹脂は、常温で固体のものを溶剤に溶解させて用いることが好ましい。これによって、塗布されたスラリーである樹脂層8
R等を、仮硬化処理として加熱処理を行うことによって適宜な硬度に硬化させることができる。
【0065】
また、以下に、スラリーの処方例を挙げる。
熱硬化性樹脂:シリコーン樹脂(LPS3541)
溶剤:n−ヘプタン
蛍光体:熱硬化性樹脂:溶剤(質量比)=15:10:15
【0066】
(パルススプレー法)
ここで、
図11を参照して、パルススプレー法及びパルススプレー法に好適なスプレー装置30の例について説明する。
図11に示すスプレー装置30は、塗布液として固形粒子を含有するスラリーの塗布に適した装置である。すなわち、塗布液であるスラリーを常時撹拌することでスラリーに含有される固形粒子を沈降させることなく、スラリー中に常に一様に分散させ、固形粒子が一様に分散されたスラリーをスプレー噴射するように構成されている。
このために、
図11に示すスプレー装置30は、2本のシリンジ31,32と、シリンジ31,32の下端部を接続する流通路33と、流通路33の中ほどに設けられたノズル付きバルブ34とを備えて構成されている。
【0067】
シリンジ31は、内部にプランジャ31aを備え、スラリーSLを収容する円筒形の容器である。シリンジ31の下端部は狭窄しており、当該下端部は流通路33と連通している。また、シリンジ31の上端部からは、不図示のバルブを介して内部に圧縮空気31bが導入される。そして、シリンジ31内のスラリーSLは、導入された圧縮空気31bによって、プランジャ31aを介して加圧される。
【0068】
シリンジ32は、シリンジ31と同じ構成をしており、内部に収容されるスラリーSLは、狭窄した下端部が流通路33と連通している。従って、シリンジ31とシリンジ32とは、流通路33を介して連通しており、それぞれの内部に収容されるスラリーSLは混ざり合うことができるようになっている。
また、シリンジ32の上端部からは、シリンジ31と同様に、不図示のバルブを介して内部に圧縮空気32bが導入される。そして、シリンジ32内のスラリーSLは、導入された圧縮空気32bによって、プランジャ32aを介して加圧される。
【0069】
また、ノズル付きバルブ34は、流通路33の中ほどに設けられ、流通路33内を流通するスラリーSLを下方向に開口するノズルから吐出可能に構成されている。また、ノズル付きバルブ34には、外部から圧縮空気が導入され、ノズルから噴射することで、スラリーSLをスプレーSPとして噴射させることができるように構成されている。また、ノズル付きバルブ34は、ノズルから吐出させるスラリー量及び圧縮空気量を、それぞれに対応したバルブの開度を調整することにより制御できるように構成されている。
【0070】
次に、スプレー装置30において、スラリーSLを撹拌する動作について説明する。
シリンジ31及びシリンジ32の各上端部からは、それぞれ異なる圧縮空気源から圧縮空気が供給される。そして、シリンジ31に導入される圧縮空気31bの圧力と、シリンジ32に導入される圧縮空気32bの圧力とが、異なる位相(例えば、逆位相)で脈動するように圧縮空気が供給される。これによって、スプレー装置30は、シリンジ31,32内のスラリーSLを、流通路33を介して互いに往復させることができ、その結果として、当該スラリーSLを撹拌することができる。
【0071】
このようにしてスラリーSLを常時撹拌することにより、流通路33内には、固形粒子である蛍光体が常に均一に分散されたスラリーSLが流通する。そして、ノズル付きバルブ34によって流通路33内を流通するスラリーSLを吐出させることにより、蛍光体粒子が均一に含有されるスプレーSPを噴射することができる。
【0072】
次に、スプレー装置30を用いたパルススプレー方式のスプレー塗布について説明する。
パルススプレー方式とは、前記したように、スプレーSPをパルス状に、すなわち間欠的に噴射する方式である。スプレー装置30において、ノズル付きバルブ34の、バルブ開度を調整することにより、スプレーSPの噴射量を制御することができる。簡単には、バルブの開度を「開」と「閉」との2段階とし、開閉を所定の周期及びデューティ比で制御することによりパルススプレーを行うことができる。
バルブ開閉のタイミングは、スラリーSLと圧縮空気とについて同じとしてもよいし、圧縮空気の方が長く開状態となるようにしてもよい。
また、単位時間当たりのスプレーSPの噴射量を精度よく維持するためには、バルブ開閉の周期は30〜3600回/分程度とすることが好ましい。
【0073】
なお、パルススプレー方式及びスラリーの塗布に適したスプレー装置については、例えば、参考文献1及び参考文献2に詳細に説明されているため、更なる説明は省略する。
(参考文献1)特開昭61−161175号公報
(参考文献2)特開2003−300000号公報
【0074】
図6から
図8に戻って(適宜
図1、
図4及び
図5参照して)、波長変換部材準備工程S12についての説明を続ける。
仮硬化工程S213は、樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合に、少なくとも1種類の樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tを形成するごとに、当該樹脂層を加熱することにより仮硬化させる工程である。これにより、更に上層に積層される樹脂層との間で、含有する蛍光体が混ざり合うことを防止することができる。
また、樹脂層形成工程S212において、1層の樹脂層を形成するために、複数回の塗布を行う場合は、液垂れなどにより塗布膜の膜厚にムラが生じないように、当該複数回の塗布の途中で、所定回数(例えば3回)ごとに、仮硬化処理を行うようにしてもよい。
【0075】
ここで、仮硬化処理とは、熱硬化性樹脂が架橋反応を起こす硬化温度よりも低い所定温度で所定時間加熱することで、樹脂層8
R等に含有される溶剤を蒸発させ、樹脂層8
R等を弱く硬化させることをいうものである。すなわち、仮硬化処理における加熱温度及び加熱時間を制御することにより溶剤の蒸発量を制御することができ、その結果として、樹脂層8
R等の硬度を調整することができる。仮硬化処理の目的は、塗布された蛍光体などが意図せずに動くことを抑制しつつ、次のスプレー塗布によって新たに形成される樹脂層8
R等との密着性を確保することである。これによって、樹脂層間での剥離を抑制することができる。
【0076】
また、本硬化処理とは、熱硬化性樹脂が架橋反応する温度以上の所定温度で、所定時間加熱することにより、熱硬化性樹脂が架橋反応により完全に硬化させることをいうものである。また、本硬化処理を行うことにより、樹脂層8
R等に含有される溶剤は略完全に蒸発する。
なお、仮硬化処理及び本硬化処理のための加熱には、加熱温度や加熱時間や加熱対象となる部材の大きさなどに応じて、ヒータやオーブンなどの適宜な加熱装置を用いることができる。
【0077】
なお、前記した処方例のスラリーを用いる場合は、仮硬化処理を、例えば、以下のような条件で行うことができる。
(樹脂層形成工程)
樹脂層8
R等の各層として、1回のスプレー塗布当たりの塗布量が約0.7mg/cm
2として、3回塗布する。
(仮硬化工程)
仮硬化処理として、3回塗布するごとに、オーブンを用いて150℃で5分間加熱する。
【0078】
また、
図6(c)は、4種類の樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tを順次積層した様子を示している。
更に、本実施形態では、
図7(a)に示すように、樹脂層形成工程S212と仮硬化工程S213とを交互に複数回繰り返し行うことにより、所定の積層数の樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tを積層する。
図7(a)に示した例では、4種類の樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
Tを、この順で4周期分、すなわち16層を積層しているが、これに限定されるものではなく、製造しようとする波長変換部材8の仕様に応じて、樹脂層の種類、積層数、積層順などを適宜に変更することができる。
【0079】
最後に、上部ブランク層形成工程S214において、
図7(b)に示すように、最上層の樹脂層8
T上に、ブランク層8
Uを形成することにより、樹脂層積層体80が形成される。ブランク層8
Uの形成方法、材料、寸法などは、下部ブランク層形成工程S211と同様であるから、詳細な説明は省略する。なお、ブランク層8
Uの材料、寸法などは、ブランク層8
Lと同じであってもよいし、異なるようにしてもよい。
【0080】
次に、スライス工程S22において、
図8に示すように、樹脂層積層体80を、例えば、鋭利な刃40を用いて、樹脂層積層体80の積層面である上面に垂直な面で、所定の膜厚Dにスライス(薄片化)する。これによって、シート状又は板状の波長変換部材8が形成される。
なお、鋭利な刃40を用いて樹脂層積層体80をスライスするのに適した装置として、例えば、ミクロトームを挙げることができる。
【0081】
次に、本硬化工程S23において、波長変換部材8を、適宜な加熱装置を用いて加熱することにより、波長変換部材8に含有される熱硬化性樹脂を本硬化させる。熱硬化性樹脂を本硬化させることによって、波長変換部材8が完全に架橋され、樹脂硬度が増すことで十分な硬度を有するようになり、表面が傷付き難くなるとともに、隣接する樹脂層8
R,8
Y,8
G,8
T同士が熱硬化性樹脂の架橋反応によって強固に接合され、樹脂層間にひび割れなどが生じ難くなる。また、樹脂層8
R等にタック性もなくなる。
【0082】
なお、前記した処方例のスラリーを用いる場合は、本硬化処理を、例えば、以下のような条件で行うことができる。但し、樹脂層形成工程S212及び仮硬化工程S213は、前記した条件(1回のスプレー塗布当たり約0.7mg/cm
2で塗布し、3回塗布するごとに、150℃で5分間加熱する)で行うものとする。
樹脂層8
R等の1層ごとに、当該条件で合計9回スプレー塗布して形成した場合、本硬化処理として、オーブンを用いて180℃で4時間加熱を行うようにすることができる。
【0083】
また、波長変換部材8を、発光素子1の表面に折り曲げて貼付する場合は、本硬化工程S23は、後記する貼付工程S14の後に行うようにしてもよい。本硬化を行う前の比較的柔軟な状態で波長変換部材8を発光素子1の表面に沿って折り曲げて貼付することで、波長変換部材8を発光素子1の表面に良好に密着させることができる。
以上のように各サブ工程を行うことにより、波長変換部材8が準備される。
【0084】
すなわち、本実施形態に係る波長変換部材8の製造方法によれば、樹脂層8
R等を積層して、積層面に垂直な面でスライスするだけで、複数種類の樹脂層8
R等がストライプ状に区画された波長変換部材8を製造することができる。また、比較的容易に制御が可能な各樹脂層8
R等の膜厚によって区画の寸法が定められるため、寸法精度よく区画を形成することができる。
【0085】
図4に戻って、発光装置の製造方法の説明を続ける。
次に、裁断工程S13において、
図9(a)に示すように、破線で示した裁断線に沿って、波長変換部材8を裁断する。波長変換部材8の裁断は、例えば、レーザカッターや、金型を用いた打ち抜き工法により、行うことができる。
【0086】
次に、貼付工程S14において、
図9(a)に破線で示した裁断線に沿って裁断された波長変換部材8を、一点鎖線で示した折り曲げ線に沿って折り曲げ、
図9(b)に示すように、発光素子1の上面及び対向する一対の側面(左側面及び右側面)に沿って貼付する。
波長変換部材8は、発光素子1が発光する光に対して透光性を有する接着剤を用いて、発光素子1の上面及び側面に貼付することができる。また、波長変換部材8を発光素子1の上面及び側面に沿って接触させた後に、波長変換部材8の外側から、圧力及び熱を印加するラミネート法により貼付することもできる。
以上のようにして、波長変換層7を備えた発光装置10が完成する。
【0087】
なお、本実施形態の製法方法では、裁断工程S13を行った後で貼付工程S14を行うようにしたが、これに限定されるものではない。先に貼付工程S14として、裁断前の波長変換部材8を発光素子1の上面及び側面に沿って貼付し、その後に裁断工程S13として、余分な波長変換部材8を切除するようにしてもよい。
【0088】
以上説明したように、異なる種類の蛍光体を含有する複数種類の樹脂層8
R等が区画された波長変換部材8を貼付するだけで、当該波長変換部材8を波長変換層7として備えた発光装置10を、容易に製造することができる。
また、1枚の波長変換部材8を折り曲げて、発光素子1の上面及び側面に一連の動作で貼付することができるため、貼付工程に要する時間を短縮することができる。
【0089】
<変形例>
次に、
図10を参照して、第1実施形態の変形例に係る発光装置及びその製造方法について説明する。
まず、第1変形例に係る発光装置について説明する。
第1変形例に係る発光装置(不図示)は、発光素子1の上面及び対向する一対の側面(左側面及び右側面)に、
図10(a)に示すように裁断される波長変換層7Aが設けられるものである。
図1に示した発光装置10では、対向する一対の側面(左側面及び右側面)に設けられる波長変換層7の樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tが、横縞のストライプ状に配置されているのに対して、第1変形例に係る発光装置では、対向する一対の側面(左側面及び右側面)に設けられる波長変換層7Aの樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tが、縦縞のストライプ状に配置されていることが異なる。
【0090】
第1変形例に係る発光装置の製造方法では、前記した裁断工程S13(
図4参照)において、
図10(a)に示すように、発光素子1の対向する一対の側面(左側面及び右側面)に設けられる波長変換層7Aが縦縞のストライプ状となるように、波長変換部材8から波長変換層7Aとなる領域を破線で示した裁断線に沿って裁断する。
そして、貼付工程S14(
図4参照)において、
図10(a)に一点鎖線で示した折り曲げ線に沿って、波長変換部材8を折り曲げて発光素子1の上面及び一対の側面(左側面及び右側面)に貼付する。
他の構成及び製造方法の工程は、前記した第1実施形態に係る発光装置10及びその製造方法と同様であるから、説明は省略する。
【0091】
次に、第2変形例に係る発光装置とその製造方法について説明する。
第2変形例に係る発光装置(不図示)は、発光素子1の上面及び4面すべての側面(左側面、右側面、正面及び背面)に、
図10(b)に示すように裁断される波長変換層7Bが設けられる。
図1に示した発光装置10が、対向する一対の側面(左側面及び右側面)に設けられた波長変換層7において、樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tが、横縞のストライプ状に配置されているのに対して、第2変形例に係る発光装置では、一方の対の側面(左側面及び右側面)に設けられた波長変換層7Bの樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tが、横縞のストライプ状に配置されるとともに、他方の対の側面(正面及び背面)に設けられる波長変換層7Bの樹脂層7
R,7
Y,7
G,7
Tが、縦縞のストライプ状に配置されることが異なる。
【0092】
第2変形例に係る発光装置の製造方法では、前記した裁断工程S13(
図4参照)において、
図10(b)に破線で示すように、発光素子1の上面及び4つの側面(左側面、右側面、正面及び背面)の形状に沿って、波長変換部材8から波長変換層7Bとなる領域を裁断する。
そして、貼付工程S14(
図4参照)において、
図10(b)に一点鎖線で示した折り曲げ線に沿って、波長変換部材8を折り曲げて発光素子1の上面及二対の側面(左側面、右側面、正面及び背面)に貼付する。
他の構成及び製造方法の工程は、前記した第1実施形態に係る発光装置10及びその製造方法と同様であるから、説明は省略する。
【0093】
第1実施形態に係る発光装置10、第1実施形態の第1変形例及び第2変形例に係る発光装置では、波長変換層7,7A,7Bとして、何れも均一な膜厚D(
図8参照)の波長変換部材8を用いて、発光素子1の上面及び側面を被覆するため、作製される発光装置10等の配光色むらを低減することができる。
【0094】
第1実施形態に係る波長変換部材(光学的機能部材)8及び当該波長変換部材8を波長変換層(光学的機能層)7として備える発光装置10において、波長変換部材8は、含有する波長変換物質の種類が異なる複数種類の樹脂層をストライプ状に配置して構成されるものであるが、樹脂層の種類は、これに限定されるものではない。
例えば、光学的機能物質として、光反射性物質、光拡散性物質、又はその他の光学的な機能を付与することができる物質を含有させた樹脂層を加えて、光学的機能部材を構成するようにしてもよい。更にまた、同種の光学的機能物質を異なる濃度で含有させた樹脂層を、それぞれ種類の異なる樹脂層として光学的機能部材を構成するようにしてもよい。
【0095】
次に、このような他の構成を有する実施形態について順次に説明する。
なお、以下に説明する各実施形態において、光学的機能部材は、樹脂層に含有させる光学的機能物質として、波長変換物質(蛍光体)に代えて、又は加えて、光反射性物質や光拡散性物質などを用い、それぞれに所定の厚さで積層することで、第1実施形態と同様にして作製することができるため、光学的機能部材の製造方法の説明は適宜に省略する。また、各実施形態における発光装置は、シート状又は板状に作製した光学的機能部材を、発光素子又は他の構成部材に貼付して光学的機能層として用いるものであるから、発光装置の製造方法の説明も適宜に省略する。
【0096】
<第2実施形態>
次に、
図12を参照して、第2実施形態に係る発光装置について説明する。
図12(a)及び
図12(b)に示すように、第2実施形態に係る発光装置10C及び発光装置10Dは、それぞれ波長変換層7C及び波長変換層7Dが、波長変換機能を有する樹脂層7
Pに加えて、光反射機能を有する樹脂層7
Wを有するように構成されるものである。
【0097】
(第1の例)
まず、
図12(a)に示す、第1の例に係る発光装置10Cについて説明する。
図12(a)に示すように、第2実施形態の第1の例に係る発光装置10Cは、
図1及び
図2に示した第1実施形態に係る発光装置10において、波長変換層7に代えて、波長変換層7Cを備えている。また、波長変換層7Cは、光反射性物質を含有して光反射機能を付与された樹脂層7
Wと、波長変換物質である蛍光体を含有して波長変換機能を付与された樹脂層7
Pとから構成されている。
【0098】
波長変換層7Cは、発光素子1の側面が光反射機能を有する樹脂層7
Wで被覆され、発光素子1の光取り出し面である上面が波長変換機能を有する樹脂層7
Pで被覆されるように設けられている。波長変換層7Cは、光学的機能物質として光反射性物質を含有する樹脂層7
Wと、光学的機能物質として波長変換物質(蛍光体)を含有する樹脂層7
Pとを有するように構成した光学的機能層である。
このように構成することで、発光装置10Cは、上面から光を出射するように構成することができる。
【0099】
なお、
図12(a)に示すように、発光素子1の上面の全領域が樹脂層7
Pに被覆され、側面が樹脂層7
Wに被覆されるようにすることが好ましい。また、樹脂層7
Pと樹脂層7
Wの界面が発光素子1の上面の端部で斜めになり、樹脂層7
Pの上部が下部よりも平面視で外側となるように設けられることが好ましい。これによって、発光装置10Cの光取り出し効率を向上させることができる。
【0100】
樹脂層7
Wは、第1実施形態における樹脂層7
R等において、波長変換物質である蛍光体に代えて光反射性物質を含有するように形成されるものである。
樹脂層7
Wに光反射機能を付与するための光反射性物質としては、例えば、Nb
2O
5、TiO
2、ZrO
2、Ta
2O
5などの透光性を有し、樹脂層7
Wの母体となる樹脂材料よりも屈折率の高い材料の粒子、Ag、Alなどの表面の光反射率の高い材料の粒子を用いることができる。また、これのら光反射性物質の粒子の粒径は、前記した蛍光体の粒子の粒径と同程度とすることができる。
【0101】
樹脂層7
Pは、第1実施形態における樹脂層7
R,7
G,7
Yなどと同様のものであり、1種類の樹脂層7
R等で構成してもよく、第1実施形態における波長変換層7と同様に、複数種類の樹脂層7
R等をストライプ状に組み合わせて構成してもよい。また、樹脂層7
Pは、波長変換物質を含有しない樹脂層7
Tを有するものであってもよく、光反射機能を有する樹脂層7
Wを構成の一部として有するものであってもよい。
【0102】
[発光装置の動作]
第1実施形態に係る発光装置10と同様に、発光素子1が、青色光を発光するものとして、発光装置10Cの動作について説明する。発光素子1が発光した青色光は、直接に又は発光素子1の下面側に設けられた全面電極及び発光素子1の側面に設けられた樹脂層7
Wによって反射されて上方に伝播し、発光素子1の上面に設けられた樹脂層7
Pを介して外部に取り出される。また、樹脂層7
Pを介して外部に取り出される際に、青色光の一部又は全部が、例えば黄色光などに波長変換される。
【0103】
(第2の例)
次に、
図12(b)に示す、第2の例に係る発光装置10Dについて説明する。
図12(b)に示すように、第2実施形態の第2の例に係る発光装置10Dは、発光素子1が実装基板90にフェイスダウン型で実装され、発光素子1の光取り出し面である上面に、光学的機能層として波長変換層7Dが設けられたものである。
【0104】
波長変換層7Dは、中央部に波長変換機能を有する樹脂層7
Pを有し、両端部に光反射機能を有する樹脂層7
Wを有するように、異なる種類の樹脂層7
P,7
Wがストライプ状に配置された光学的機能層である。波長変換層7Dの両端に光反射機能を有する樹脂層7
Wが設けられているため、発光装置10Dの出射光の横方向への広がりを抑制することができる。
発光装置10Dのように、光反射機能を有する樹脂層7
Wを組み合わせることで、上面から出射する光線の配光特性が所望の特性となるように構成することができる。
【0105】
なお、第2実施形態に係る発光装置10C及び発光装置10Dにおいて、光学的機能層として、光反射機能を有する樹脂層7
Wと、波長変換機能を有する樹脂層7
Pとを組み合わせたが、これに限定されるものではない。例えば、樹脂層7
Pに代えて、波長変換機能を有さない透明層である樹脂層7
T(
図1及び
図2などを参照)を用いてもよく、光反射性物質又は光拡散性物質を含有する濃度を低減して、光の一部を拡散光として透過する光拡散機能を有する樹脂層を組み合わせて構成することもできる。
このように、光反射機能、光拡散機能又は透光性を有する樹脂層を組み合わせて光学的機能層を構成することで、発光装置の配光特性を制御することができる。
【0106】
<第3実施形態>
次に、
図13を参照して、第3実施形態に係る発光装置について説明する。
図13(a)に示すように、第3実施形態に係る発光装置に用いられる波長変換層(光学的機能層)7Eは、中央部に波長変換物質(光学的機能物質)を含有する濃度が高い樹脂層7
P1が配置され、その両側に、樹脂層7
P1よりも波長変換物質(光学的機能物質)を含有する濃度が低い樹脂層7
P2が配置され、更にその外側に、光反射性物質(光学的機能物質)を含有する樹脂層7
Wが配置された積層構造を有している。
また、
図13(b)及び
図13(c)に示すように、第3実施形態に係る発光装置10E及び発光装置10Fは、それぞれ
図13(a)に示した波長変換層7を備えるものである。
【0107】
(第1の例)
まず、
図13(b)に示す第1の例に係る発光装置10Eについて説明する。
図13(b)に示すように、第3実施形態の第1の例に係る発光装置10Eは、発光素子1が、リードフレーム91のカップ状に形成された凹部の底面に、フェイスアップ型で実装されている。また、発光素子1は、ワイヤ93を用いてリードフレーム91と電気的に接続されている。リードフレーム91の凹部は、発光装置10Eの光出射方向である上方ほど、平面視で外側となるように傾斜した側面を有している。この側面は良好な光反射性を有する光反射面となっている。また、リードフレーム91の凹部の開口端に蓋をするように波長変換層7Eが設けられている。リードフレーム91の凹部内は、樹脂やガラスなどの透光性を有する封止部材92が充填されている。なお、当該凹部内は、封止部材92を充填せずに中空としてもよい。
このように、波長変換層7Eは、発光素子1に接するように設けられるのではなく、封止部材、レンズ、導光板など、発光素子1が発光した光の光路上に設けられた光学部材に設けられるようにしてもよい。
【0108】
このような構成の発光装置10Eにおいて、リードフレーム91の凹部の形状を工夫しても、凹部の開口端の位置における輝度分布が平坦又は所望の分布とならない場合がある。例えば、発光素子1の直上領域である凹部の開口端の位置の中央部では輝度が高く、周辺部ほど輝度が低くなる場合について考察する。凹部の開口端の位置に均一な濃度で波長変換物質が含有された均一な厚さの波長変換層が設けられていると、周辺部では相対的に発光素子1からの光(例えば、青色光)が、波長変換層で波長変換される割合が高くなり、波長変換後の光(例えば、黄色光)の成分が多くなる。すなわち、観察方向によって色調が変化する色むらの大きな発光装置となる。
【0109】
そこで、第1の例に係る発光装置10Eのように、中央部における樹脂層7
P1対して周辺部における樹脂層7
P2の波長変換物質の濃度が低くなるように波長変換層7Eを構成することにより、色むらについての配光特性を改善することができる。
また、波長変換層7Eは、両端部に光反射機能を有する樹脂層7
Wを有し、平面視でリードフレーム91の開口部の外側の領域が樹脂層7
Wで被覆されるように設けられている。これによって、出射光の横方向への不要な広がりを抑制することができる。
【0110】
更にまた、樹脂層7
P1,7
P2,7
Wごとに、屈折率の異なる樹脂材料を用いるようにしてもよい。中央部である樹脂層7
P1に対して、周辺部の樹脂層7
P2、更には樹脂層7
Wほど、屈折率の低い樹脂材料を用いることで、スネルの法則に基づき、内側(中央部)から、より外側(周辺部)へ伝播する光線が、樹脂層7
P1と樹脂層7
P2との界面や樹脂層7
P2と樹脂層7
Wとの界面で全反射される。このため、光線が中央部に集中するような配光特性とすることができる。
具体的には、例えば、樹脂層7
P1に屈折率が1.53のフェニルシリコーン樹脂を用い、樹脂層7
P2に屈折率が1.47のフェニルシリコーン樹脂を用い、樹脂層7
Wに屈折率が1.41のジメチルシリコーン樹脂を用いて波長変換層7Eを構成することができる。
【0111】
(第2の例)
次に、
図13(c)に示す、第2の例に係る発光装置10Fについて説明する。
図13(c)に示す第3実施形態の第2の例に係る発光装置10Fは、発光素子1が実装基板90にバンプ94を用いてフェイスダウン型で実装され、発光素子1の側面が光反射性を有する樹脂からなる光反射部材95で被覆され、発光素子1の上面に波長変換層7Eが設けられて構成されている。
【0112】
第2の例に係る発光装置10Fにおいても、第1の例に係る発光装置10Eと同様に、発光素子1の上面における輝度分布が平坦でない場合には、均一な濃度で波長変換物質が含有された波長変換層が均一な厚さで設けられていると色むらが生じることになる。
そこで、発光装置10Fは、発光装置10Eと同様に、含有する波長変換物質の濃度が異なる樹脂層7
P1,7
P2を積層して構成した波長変換層7Eを用いて、配光特性を改善するように構成されている。
また、波長変換層7Eの両端部として有する光反射性を有する樹脂層7
Wは、発光素子1の側面を被覆する光反射部材95と平面視で重なるように配置されている。これによって、出射光の横方向への不要な広がりを抑制することができる。
【0113】
なお、第3実施形態に係る発光装置10E及び発光装置10Fにおいて、波長変換層7Eを構成する、含有する波長変換物質の濃度が異なる樹脂層は、2段階に限らず3段階以上に構成してもよい。
また、波長変換物質を含有せずに、屈折率の異なる樹脂層を積層した光学的機能部材を用いて、輝度についての配光特性を改善するようにしてもよい。
【0114】
<第4実施形態>
次に、
図14を参照して、第4実施形態に係る発光装置について説明する。
図14(a)に示すように、第4実施形態に係る発光装置10Gは、種類の異なる樹脂層7
P,7
Tがストライプ状に配置された2つの波長変換層7G
1,7G
2が、発光素子1の上面において、互いにストライプの延伸方向が異なるように当該上面に垂直な方向に積層されている。
図14(b)に示すように、波長変換層7G
1,7G
2は、何れも波長変換物質を含有する樹脂層7
Pと、波長変換物質を含有せずに透光性を有する樹脂層7
Tとを交互にストライプ状に配置して構成されている。
【0115】
なお、発光装置10Gの波長変換層7G
1,7G
2は、異なる種類の樹脂層がストライプ状に配置された2枚の波長変換部材8(
図8参照)を、ストライプの延伸方向が発光素子1の上面で互いに直交するように重ねて貼付することで形成することができる。
【0116】
異なる種類の樹脂層がストライプ状に配置された1枚の波長変換部材8(
図8参照)を発光素子1等に貼付して波長変換層を形成する場合、ストライプの延伸方向とこれに垂直な方向とでは、配光特性が異なることになる。発光装置10Gのように、ストライプの延伸方向が直交するように2層の波長変換層7G
1,7G
2を組み合わせることで、配光特性の異方性を改善することができる。
また、波長変換層は、3層以上で構成してもよく、各層のストライプの延伸方向の成す角度は、直交以外の例えば60度や45度などであってもよい。また、構成の異なる波長変換層を積層するようにしてもよい。更にまた、発光装置10Gにおいて、波長変換層7G
1,7G
2に代えて、波長変換物質を含有しない光学的機能層を備えるようにしてもよい。
【0117】
<第5実施形態>
次に、
図15を参照して、第5実施形態に係る発光装置について説明する。
図15に示すように、第5実施形態に係る発光装置10Hは、実装基板90上に複数の発光素子1が実装され、複数の発光素子1の上面を被覆するように波長変換層7Hが設けられている。また、発光素子1の側面が光反射部材95で被覆されている。本実施形態における光反射部材95は、発光素子1同士の横方向の空間に、光反射性を付与された樹脂をディスペンサなどを用いて充填することで形成される。
【0118】
また、波長変換層7Hは、波長変換物質を含有する樹脂層7
Pと、波長変換物質を含有せずに透光性を有する樹脂層7
Tとを交互にストライプ状に配置して構成されている。波長変換層7Hは、1枚の波長変換部材8(
図8参照)を複数の発光素子1を被覆するように貼付することで形成される
このように、1枚の波長変換部材又はその他の光学的機能部材を、複数の発光素子を被覆するように貼付することで、発光装置の生産性を向上させることができる。
また、複数の発光素子1は、個片化されたチップを実装基板90に実装されたものに限らず、ウエハレベルで形成されたものであってもよい。
【0119】
<第6実施形態>
次に、
図16を参照して、第6実施形態に係る発光装置について説明する。
図16に示すように、第6実施形態に係る発光装置10Iは、液晶ディスプレイなどのバックライト用の照明装置として用いられるものである。そのために、発光装置10Iは、板状の導光板96と、導光板96の光入射面となる端面を被覆するように設けられた波長変換層7Iと、実装基板90にサイドビュー型で実装された発光素子1とを備えている。
なお、
図16(a)は、発光装置10Iを、波長変換層7Iを設けられた導光板96と、発光素子1が実装された実装基板90とに分解した状態の斜視図を示している。一方、
図16(b)は、両者が接合した状態の発光装置10Iの断面図を示している。
【0120】
発光装置10Iは、
図16(b)に示すように、サイドビュー型で複数の発光素子1が実装されており、発光素子1の光取り出し面が、波長変換層7Iと密着するように組み立てられる。また、板状の導光板96の一方の主面が光取り出し面であり、他方の主面及び光入射面以外の端面には、光反射層(不図示)が設けられている。
また、波長変換層7Iは、導光板96の入射面の形状に合わせて形成されており、中央部に波長変換機能を有する樹脂層7
Pが配置され、上下両端部に光反射機能を有する樹脂層7
Wが配置されている。
【0121】
発光素子1が発光する光線L1は、波長変換層7Iを介して導光板96の入射面に入射される。このとき、光線L1の一部は波長変換層7Iによって波長変換され、波長の異なる光が混色した光線L2が導光板96に入射される。導光板96に入射された光線L2は、導光板96内で反射を繰り返しながら、一方の主面から照明光L3として取り出される。
【0122】
なお、発光素子1の光取り出し面の全体が、樹脂層7
Pと密着するように設けられることが好ましい。更に、上下に樹脂層7
Wにを設けることによって、発光素子1からの光線L1を、波長変換層7Iを介して外部へ漏れないように導光板96内へ導入することができる。
【0123】
このように、導光板96の入射面に波長変換層7Iを設けることで、発光素子1として青色光などの短波長に発光する単一種類の発光素子1を用いるだけで、例えば白色の照明装置を構成することができる。
なお、波長変換層7Iの波長変換機能を有する樹脂層7
Pは、1種類の樹脂層7
Y(
図1参照)で構成されてもよく、複数種類の樹脂層7
R,7
G等(
図1参照)で構成されてもよい。
【0124】
以上、本発明に係る光学的機能部材の製造方法、発光装置の製造方法及び発光装置について、発明を実施するための形態により具体的に説明したが、本発明の趣旨はこれらの記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて広く解釈されなければならない。また、これらの記載に基づいて種々変更、改変などしたものも本発明の趣旨に含まれることはいうまでもない。