特許第6331726号(P6331726)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6331726
(24)【登録日】2018年5月11日
(45)【発行日】2018年5月30日
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20180521BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20180521BHJP
   B32B 27/16 20060101ALI20180521BHJP
   C08J 7/04 20060101ALI20180521BHJP
【FI】
   B32B27/30 A
   B32B27/36 102
   B32B27/16
   C08J7/04 K
【請求項の数】10
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-116876(P2014-116876)
(22)【出願日】2014年6月5日
(65)【公開番号】特開2015-13473(P2015-13473A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2017年2月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-119070(P2013-119070)
(32)【優先日】2013年6月5日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春田 由季
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 知一
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−103169(JP,A)
【文献】 特開2010−033693(JP,A)
【文献】 特開2007−237700(JP,A)
【文献】 特開2012−223968(JP,A)
【文献】 特開2003−165184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00−43/00
C08F2/00−2/60
283/01
290/00−290/14
299/00−299/08
C08J7/04−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記基材層、下記第一の層及び下記第二の層を有する積層体。
基材層:ポリカーボネートを含有する層
第一の層:少なくともアクリル系共重合体(α)と活性エネルギー線硬化性化合物とを含有し、アクリル系共重合体(α)が、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものである活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して形成される層
共重合体(β):構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体
化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキレン基、RおよびRはそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、RおよびRは、相互に同一でも異なっていてもよい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
第二の層:アクリル当量が100以上である樹脂を含有する樹脂組成物(II)からなる層
【請求項2】
前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)が、前記アクリル系共重合体(α)を0.05重量%〜10重量%含有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記共重合体(β)が共重合可能なモノマー(C)として、炭素数4〜22の直鎖または分岐型アルキル(メタ)アクリレートから少なくとも一つ選ばれる(メタ)アクリレートを含む、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記第一の層の厚さが、2μm以上100μm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記樹脂組成物(II)が、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記樹脂組成物(II)が、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの合計(重量)を100重量部としたとき、ウレタンアクリレートを0.1重量%〜99.9重量%含有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記第二の層の厚さが、2μm以上100μm以下である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記基材層の厚さが、0.01mm以上2mm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項9】
前記基材層が、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層とを有する、請求項1〜8の
いずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記第一の層が、前記基材層の有するアクリル樹脂層に接するように形成され、前記第二の層が、前記基材層の有するポリカーボネート樹脂層に接するように形成されている、請求項9に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたすべり性、耐傷つき性、対溶剤性、鉛筆硬度、耐擦傷性、耐衝撃性を有する積層体に関し、また、携帯電話など産業用電子機器の表示体保護カバーとして好適な積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製品、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ABS、MS樹脂、AS樹脂などのスチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、トリアセチルセルロースなどの酢酸セルロース等の樹脂基材は、その軽量性、易加工性、耐衝撃性などが特に優れているので、容器、インストルメントパネル、包装材、各種ハウジング材、光デイスク基板、プラスチックレンズ、液晶ディスプレイやプラズマデイスプレイなどの表示機器の基材等、種々の用途に用いられている。
【0003】
携帯電話など表示体を有する産業用電子機器では、デザインの多様化、薄型化、大面積化の進展に伴い、その表示体カバーにも薄型化の要求が高まっており、現在、アクリル樹脂シートやポリカーボネート樹脂シートが一般的に使用されている。ポリカーボネート樹脂シートの場合、耐衝撃性は高いが、鉛筆硬度が低いという欠点がある。これに対し、アクリル樹脂シートの場合、ポリカーボネートより高い鉛筆硬度を有するものの、衝撃によりクラックが入りやすいという欠点がある。
【0004】
また、これらプラスチック基材はガラスに比べ表面硬度が低いため傷つきやすく、ポリカーボネートやアクリルのような透明な樹脂においては、その樹脂が持つ本来の透明性あるいは外観が著しく損なわれるという欠点があり、耐摩耗性を必要とする分野でのプラスチック基材の使用を困難なものとしている。このため、これらプラスチック基材の表面に耐摩耗性を付与する活性エネルギー線硬化性ハードコート材料(被覆材)が求められている。
【0005】
また、近年、TVやタッチパネルといった映像表示装置にハードコートを被覆した透明樹脂フィルムが多く使用されている。しかしながら、特にタッチパネルにおいては静電容量式の普及により、指を滑らす動き(フリップ)が操作上、頻繁に行われるようになっており、指による滑り感や爪や付着した指紋をティッシュや布で拭き取る際の傷付き(耐擦傷性)が課題とされており、従来のハードコートに比べ、滑り感と耐擦傷性のさらなる向上が求められている。
【0006】
このような問題点の解決を目指し、ハードコート層に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物においては、表面の摩擦係数を低下させて滑り性を付与する試みは数多くなされている。例えば、特許文献1に記載の発明は、ポリシロキサン構造やパーフルオロアルキル基とアクリロイル基を供に有する化合物を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化し、ハードコート層を形成することで、硬度と耐擦傷性、耐汚染性を向上している。また、特許文献2に記載の発明では、特定の構造を有するポリシロキサン含有化合物を無溶剤系のハードコートに添加している。
【0007】
さらに、ハードコートを施した樹脂基材では、耐衝撃性を確保したまま基材の鉛筆硬度や耐擦傷性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献3では、ポリカーボネート樹脂積層体両面にウレタンアクリレート系ハードコートを被覆しており、耐衝撃性を確保し、鉛筆硬度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−33693号公報
【特許文献2】特開2007−046049号公報
【特許文献3】特開2006−103169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、引用文献1に記載の発明では、摩擦係数の低下が十分ではなく、滑り感、耐擦傷性がタッチパネルにおいて要求されている性能を満足するに至っていない。また、引用文献2に記載の発明は、防汚性の課題を解決しようとするものであり、また用途も情報記録媒体に限定されており、例え溶剤系ハードコートに該技術を転用したとしてもポリシロキサン含有化合物中の架橋基量が少ないために、前述と同様タッチパネルにおいて要求されている性能のうち、中でも耐擦傷性の要求を満足するとは考えにくい。さらに、特許文献3に記載の発明では、積層体の表面鉛筆硬度が従来カバー基材のガラスに比べて4Hと低く、またタッチパネルで要求される滑りや耐擦傷性は満足していない。
【0010】
本発明の解決しようとする課題は、これら従来技術に比べ、耐衝撃性を有しながら、同時に表面の滑り性とその耐久性をも大幅に向上させ、卓越した硬度・耐摩耗性、透明性や低カール性をも併せて実現しうるような積層体を提供することであり、また、表示体カバーとして好適な積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、特定の共重合体を含有する硬化性組成物を硬化して形成される層と、ポリカーボネートを含有する基材層と、アクリル当量が100以上の樹脂を含有する樹脂組成物からなる層とを有する積層体とすることで、上記課題を解決できることを見出した。すなわち、本発明は以下に示すとおりである。
【0012】
(1)少なくとも下記基材層、下記第一の層及び下記第二の層を有する積層体。
基材層:ポリカーボネートを含有する層
第一の層:少なくともアクリル系共重合体(α)と活性エネルギー線硬化性化合物とを含有し、アクリル系共重合体(α)が、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものである活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して形成される層
共重合体(β):構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体
化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【0013】
【化1】
【0014】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキレン基、RおよびRはそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、Rおよび
は、相互に同一でも異なっていてもよい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0015】
第二の層:アクリル当量が100以上である樹脂を含有する樹脂組成物からなる層
【0016】
(2)前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)が、前記アクリル系共重合体(α)を0.05重量%〜10重量%含有する、(1)に記載の積層体。
【0017】
(3)前記共重合体(β)が共重合可能なモノマー(C)として、炭素数4〜22の直鎖または分岐型アルキル(メタ)アクリレートから少なくとも一つ選ばれる(メタ)アクリレートを含む、(1)または(2)に記載の積層体。
【0018】
(4)前記第一の層の厚さが、2μm以上100μm以下である、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の積層体。
【0019】
(5)前記樹脂組成物(II)が、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートを含有する、(1)〜(4)のいずれか一項に記載の積層体。
【0020】
(6)前記樹脂組成物(II)が、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの合計(重量)を100重量部としたとき、ウレタンアクリレートを0.1重量%〜99.9重量%含有する、(1)〜(5)Iのいずれか一項に記載の積層体。
【0021】
(7)前記第二の層の厚さが、2μm以上100μm以下である、(1)〜(6)のいずれか一項に記載の積層体。
【0022】
(8)前記基材層の厚さが、0.01mm以上2mm以下である、(1)〜(7)のいずれか一項に記載の積層体。
【0023】
(9)前記基材層が、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層とを有する、(1)〜(8)のいずれか一項に記載の積層体。
【0024】
(10)前記第一の層が、前記基材層の有するアクリル樹脂層に接するように形成され、前記第二の層が、前記基材層の有するポリカーボネート樹脂層に接するように形成されている、(9)に記載の積層体。
【発明の効果】
【0025】
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)は、被膜形成時の溶剤乾燥工程において、光硬化性化合物中で表面自由エネルギーの低いアクリル系共重合体が表面に偏在し、続く活性エネルギー線の照射により、重合、硬化し、硬化被膜を形成する。
【0026】
本発明に用いるアクリル系共重合体(α)は高分子量のポリシロキサン構造を含有しているため、被膜表面に良好な易滑性を与え、また前記アクリル系共重合体(α)は活性エネルギー線硬化性架橋基を含有しているため、表面性能の耐久性(溶剤での拭き取り後、耐スチールウール擦傷性後の表面易滑性の低下が少ない)が高い。さらに、ポリシロキサン構造に他のアクリルモノマーが共重合されていることで、被膜を形成する他成分(溶剤、光硬化性化合物)との相溶性が良好である。
【0027】
その結果、該活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を基材(PMMA側)の表面に塗布して硬化させることで、表面の滑り感が向上し、爪や布、スチールウールに対する耐
擦傷性が良好な成型品を与えることが可能である。また、基材の裏面(PC側)にアクリル当量が100以上である樹脂を含有する樹脂組成物(II)からなる層を有することで、基材本来の硬度を向上させ、落球衝撃時の基材の変形を和らげ、積層体の耐衝撃性を向上させることが可能である。さらに、透明性にも優れるため、光学用途の部材への使用も可能である。
【0028】
このことから、本発明はタッチパネルや液晶テレビのような光学ディスプレイ用透明物品)、自動車関連部品(ランプ関連、ウィンドウ関連等の物品(リアウィンドウ、サイドウィンドウ、天窓等))、生活関連物品(各種電気機器の筐体、化粧板、家具等)等幅広い物品の表面保護カバーに好適に使用することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下において、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、これらの内容に本発明は限定されるものではない。なお、本明細書において(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基とメタクリロイル基との総称である。(メタ)アクリル、(メタ)アクリレートについても同様である。また、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0030】
1.積層体
本発明の積層体は、少なくとも基材層、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して形成される第一の層及び樹脂組成物(II)からなる第二の層を有する積層体である。ただし、第二の層のうち、第一の層に該当すると解され得るものは第二の層とはみなさないこととする。
【0031】
本発明の基材層は、ポリカーボネートを含有する層であるが、任意の形態及び形状のものを採用することが可能であり、例えばフィルム、シート等の成形体等が挙げられる。
【0032】
本発明における基材層は、硬度を重視する場合、厚さ0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることが最も好ましい。また、表示体として用いる際の薄型化のため、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが最も好ましい。
【0033】
本発明における第一の層は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して形成される層であるが、硬化後の層の厚さが2μm以上であることが、高い硬度を確保するという点から好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが最も好ましい。また、100μm以下であることが、硬化収縮による層の歪み(クラック)が発生し難いという点から好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。
【0034】
本発明における第二の層は、樹脂組成物(II)からなる層であって、厚さ2μm以上であることが、落球による衝撃を緩和させるという点から好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが最も好ましい。また、100μm以下であることが、透明性を重視するという点から好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。
【0035】
本発明の積層体において、基材層と、第一の層と、第二の層との配置に特に制限はない。各層は、直接隣接するように形成されていてもよいし、層間に更に接着性を向上するプライマー層などの他の層を有していても構わないが、表面の滑り性や耐擦傷性等の本発明の奏する効果を得るために、第一の層は最表面層であることが好ましい。 また、本発明
の積層体は耐衝撃性等の効果を十分に得るため、第二の層は第一の層に直接隣接しないことが好ましく、より好ましくは、第一の層、基材層、第二の層がこの順に配置されていることが好ましい。なお、この場合であっても、層間に更に他の層を有していても構わないことは同様である。
【0036】
2.活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)
本発明に用いる活性エネルギー線硬化型樹脂組成物(I)は、少なくともアクリル系共重合体(α)と活性エネルギー線硬化性化合物とを含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物であり、アクリル系共重合体(α)は以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものである。
【0037】
共重合体(β):構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体
化合物(γ):分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
【0038】
【化2】
【0039】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキレン基、RおよびRはそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、RおよびRは、相互に同一でも異なっていてもよい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0040】
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)は、前記アクリル系共重合体(α)を0.05重量%以上含有することが好ましく、硬化膜において表面易滑性が十分に発現し、滑り性と耐スチールウール擦傷性が良好である点から、0.1重量%以上が好ましく、1重量%以上が特に好ましい。また、10重量%以下含有することが好ましく、前記アクリル系共重合体(α)と反応する光硬化性化合物との相溶性が確保され硬化膜の透明性が良好であることと、前記光硬化性化合物よりも比較的軟らかい前記アクリル系共重合体(α)が表面に偏在し過ぎず、硬度、耐擦傷性が確保できる点から、9重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることが特に好ましい。
前記アクリル系共重合体(α)と、前記活性エネルギー線硬化性化合物について説明する。
【0041】
<アクリル系共重合体(α)>
本発明に用いるアクリル系共重合体(α)は、以下の共重合体(β)に化合物(γ)を付加して得られたものである。
【0042】
[共重合体(β)]
本発明に用いる共重合体(β)は、構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A)、エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)およびその他共重合可能なモノマー(C)の共重合体である。
【0043】
(構造式(I)で表されるシリコーンモノマー(A))
本発明に用いるシリコーンモノマー(A)としては、以下の構造式(I)で表される化合物である。
【0044】
【化3】
【0045】
(式中、Rは水素原子又はメチル基、Rは炭素数1〜12のアルキレン基、RおよびRはそれぞれメチル基又はフェニル基、nは10〜100の整数を表し、RおよびRは、相互に同一でも異なっていてもよい。また、Rは炭素数1〜12のアルキル基を表す。)
【0046】
は水素原子又はメチル基であり、共重合体のガラス転移温度(以下、Tgと略記することがある)が高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点から、メチル基であることが好ましい。
【0047】
は炭素数1以上のアルキレン基であり、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、2以上が好ましく、3以上が特に好ましい。また、12以下のアルキレン基であり、10以下が好ましく、8以下が好ましい。
【0048】
およびRはそれぞれメチル基又はフェニル基であり、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、メチル基であることが好ましい。また、nは10以上の整数であり、硬化膜において表面易滑性が十分に発現し、滑り性が良好である点から、25以上が好ましく、50以上が特に好ましい。また、100以下の整数であり、原料および前記アクリル系共重合体(α)の溶媒への溶解性および前記光硬化性化合物との相溶性が良好である点から、90以下が好ましく、80以下が特に好ましい。
【0049】
は炭素数1以上のアルキル基であり、原料の入手および製造(反応)が比較的容易である点から、2以上が好ましく、3以上が特に好ましい。また、12以下のアルキル基であり、10以下が好ましく、8以下が好ましい。
【0050】
具体的な構造としては、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されないが、ポリジメチルシロキサンを持つものが好ましく、例えば片末端にメタクリロイル基を有するポリジメチルシロキサン(例えばJNC社製「サイラプレーン(登録商標)FM0711」、「サイラプレーン(登録商標)FM0721」、「サイラプレーン(登録商標)FM0725」)を他のラジカル重合性モノマーとラジカル重合した際に生起する構造が挙げられる。これらの化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。なお、本発明におけるシリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)とは、(A)を二種以上用いたときに最も数平均分子量が高いものの数平均分子量(g/mol)を意味する。
【0051】
シリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)としては、特に限定されないが、通常1,000以上であり、硬化膜における表面滑り性が良好である(摩擦係数が低い)ことから、2,000以上が好ましく、3,000以上がさらに好ましい。また、通常50,000以下であり、溶媒や活性エネルギー線硬化性化合物との相溶性が良好であることから、20,000以下が好ましく、10,
000以下がさらに好ましい。特に4,000以上、7,000以下であると防汚性が特異的に良好となるため特に好ましい。
【0052】
(エポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B))
本発明に用いるエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のグリシジル基を有する(メタ)アクリレートを;3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等の脂環構造に直接エポキシ基が結合している(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0053】
これらの中では、入手の容易さ、後述する分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(γ)による変性のしやすさから、グリシジルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメタクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルアクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート等が特に好ましい。これらの化合物は一種を単独で用いてもよく、二種以上を用いてもよい。
【0054】
共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)としては、特に限定されないが、通常1重量%以上であり、硬化膜の表面滑り性の耐久性が良好であることから、10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上がより好ましく、40重量%以上がさらに好ましく、50重量%以上が特に好ましい。また、前記アクリル系共重合体(α)の溶媒への溶解性が良好であり、共重合体(β)のエポキシ−酸反応時にゲル化が生起しづらい点から、通常99.9重量%以下であるが、90重量%以下であることが好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下が特に好ましい。
【0055】
(その他共重合可能なモノマー(C))
本発明に用いる「その他共重合可能なモノマー(C)」としては、本発明の効果が得られるものであれば特に限定されないが、好ましくはエポキシ基との反応性が低く、生成ポリマーの安定性を低下させないモノマー、または骨格が剛直で、硬度を下げないモノマー由来の構造である。前記モノマーの例としては、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキルを有する(メタ)アクリレート、スチレン、またはスチレンの低級アルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基)若しくは低級アルケニル基(例えば、炭素数2〜4のアルケニル基)の置換誘導体、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数5〜20の(ポリ)シクロアルキル側鎖を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類などを挙げることができ、1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0056】
例えば、次のような化合物が挙げられる。
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、ジ
エチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリメトキシシラン、及び3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、及びシアノ化ビニリデン等のアクリロニトリル化合物、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物が挙げられる。
【0057】
これらの中では、共重合体のTgが高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点、硬化表面の硬度が高くなる点から、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、つまりメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレートが好ましく、共重合体のTgが高くなり、硬化膜表面の硬度が高くなる点から、メチル(メタ)アクリレート、共重合体の溶媒への溶解性が良好になる点から2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートまたはステアリルメタクリレートを用いた構造が特に好ましい。これらの構造は一種を単独で含有してもよく、二種以上が含有していてもよい。
【0058】
また、その他共重合可能なモノマー(C)は、共重合体の溶媒への溶解性が良好になる点から、アクリル系共重合体(α)中のモル比が1重量%以上であることが好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%以上がさらに好ましく、20重量%以上が特に好ましく、30重量%以上が最も好ましい。また、硬化後塗膜の滑り性、耐SW性と前記アクリル系共重合体(α)の溶解性が良好である点から、99重量%以下であることが好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましく、80重量%以下が特に好ましく、70重量%以下が最も好ましい。
【0059】
本発明においては、シリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)と、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)を乗じた値が250,000以上であることが好ましい
。ここで、シリコーンモノマー(A)の数平均分子量は大きいほど硬化膜の滑り性が良好になり、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの共重合(β)中の重量比(%)が大きいほど硬化膜における共重合体(α)の脱落が抑制され滑り性の耐久性が良好になることから、250,000以上が好ましく、270,000以上がさらに好ましく、300,000以上が特に好ましい。また、シリコーンモノマー(A)の数平均分子量が小さく、エポキシ基を有する(メタ)アクリレートの共重合体(β)中の重量比(%)が小さいほど、合成時の酸−エポキシ反応におけるゲル化が抑制されることから、1,000,000以下が好ましく、900,000以下がさらに好ましく、700,000以下が特に好ましい。
【0060】
なお、シリコーンモノマー(A)のうち、最も数平均分子量が高い化合物の数平均分子量(g/mol)と、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)を乗じた値を調整するためには、シリコーンモノマー(A)の数平均分子量(g/mol)を選択したり、共重合体(β)中でのエポキシ基を有する(メタ)アクリレート(B)の重量比(%)を選択することで、調整できる。
【0061】
[化合物(γ)]
本発明に用いる化合物(γ)は、分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。
【0062】
(分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物)
分子内にカルボキシル基と1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、(メタ)アクリル酸の他、水酸基含有多官能アクリレートと酸無水物との反応物が挙げられ、その具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートマレイン酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートマレイン酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートフタル酸モノエステル、ペンタエリスリトールトリアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートテトラヒドロフタル酸モノエステル等が挙げられる。
【0063】
前記アクリル系共重合体(α)と活性エネルギー線硬化性化合物の成分の合計量(総重量)を100重量部としたとき、アクリル共重合体(α)の重量比率は、通常0.1重量%以上であるが、アクリル共重合体(α)の重量比率が大きくなると硬化膜表面の滑り性が良好となるため、好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上である。また、通常10重量%以下であるが、アクリル共重合体(α)の重量比率が小さくなると表面近傍に偏在する共重合体(α)の量が少なくなるため、表面硬度が高くなり耐擦傷性が良好となるため、好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下、特に好ましくは2.5重量%以下である。前記アクリル共重合体(α)の重量比率は、所望の物性を満足するのであれば特に限定されず、アクリル系共重合体(α)の構造、特にシリコーンモノマー(A)の分子量、含有量により適宜調整できる。
【0064】
<活性エネルギー線硬化性化合物>
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性化合物は、本発明に用いるアクリル系共重合体(α)以外の化合物であり、活性エネルギー線の照射によりアクリル系共重合体(α)と反応するものである。また分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であることが好ましい。また、硬化膜の硬度・耐擦傷性が良好であり、また硬化時の反応性も高い点から、前記光硬化性化合物中の(メタ)アクリロイル基の官能基数は、3個以
上が好ましく、4個以上が特に好ましい。また、硬化前の樹脂粘度が塗工するのに適する点から、9個以下が好ましく、6個以下が特に好ましい。
【0065】
具体的には、多官能(メタ)アクリレート、及びそのウレタン変性体、エステル変性体、並びにカーボネート変性体、から選ばれる一以上からなる多官能(メタ)アクリレート誘導体である。より具体的には、以下のようなものを例示できるが、本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を得ることができるものであればこれらに限定されるものではない。
【0066】
例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、無水コハク酸へのペンタエリスリトールトリアクリレート付加物、無水コハク酸へのジペンタエリスリトールペンタアクリレート付加物などの多官能アクリレート類;側鎖又は側鎖と末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリエステルオリゴマー(具体的には、東亞合成社製のM8030、M7100など)などのポリエステル(メタ)アクリレート類;イソホロンジイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体とポリテトラメチレングリコール(PTMG)とヒドロキシエチルアクリレート(HEA)の反応物、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアネート体とPTMG反応物へのペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物などの多官能ウレタン(メタ)アクリレート類;ポリカーボネートジオールを用いたオリゴエステルとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応物などのカーボネート結合を有するポリエステル(メタ)アクリレート類;IPDIとポリカーボネートジオールの反応物と、HEAの反応物などのカーボネート結合を有するポリウレタン(メタ)アクリレート類;ビスフェノールAのアクリル酸付加物(具体的には、新中村化学社製のEA−1025)などのポリエポキシ(メタ)アクリレート類;トリエトキシイソシアヌル酸ジアクリレート、トリエトキシイソシアヌル酸トリアクリレート(具体的には、東亞合成社製のアロニックスM315、M313)などのイソシアヌレート環を有するトリエトキシ(メタ)アクリレート類;及びこれらのアルキレンオキサイド変性物;ポリカプロラクトン変性物;などがある。また、これらを単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
中でも、粘度と硬化性、得られる硬化膜表面の硬度などから、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートのアルキレンオキサイド変性体、カプロラクトン変性体、などが特に好ましい。
【0068】
<光重合開始剤>
本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)に含まれる光重合開始剤としては、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、α−ヒドロキシアセトフェノン(α−ヒドロキシフェニルケトン)系、α−アミノアセトフェノン系、ベンジルケタール系などのアルキルフェノン型化合物;アシルホスフィンオキシド型化合物;オキシムエステル化合物;オキシフェニル酢酸エステル類;ベンゾインエ−テル類;芳香族ケトン類(ベンゾフェノン類);ケトン/アミン化合物;ベンゾイルギ酸およびそのエステル誘導体等である。
【0069】
具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジ
ルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチルが好ましい。これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
【0070】
中でも、硬化性の低下を最小限に抑えることが可能であり、入手が容易であって、着色等を起こしにくいことから、光重合開始剤の少なくとも一部として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシフェニルケトン類を用いることが好ましい。
【0071】
また、特に硬化性が良好な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を得るためには、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、などのα−アミノフェニルケトン類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、などのベンゾフェノン類;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸エチル、などのベンゾイルギ酸(エステル)類;CGI242(チバ製)、OXE01(チバ製)、などのオキシムエステル類が好ましい。更に、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いることがより好ましく、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾイルギ酸メチルが特に好ましい。
【0072】
前記アクリル系共重合体と反応する光硬化性化合物の成分の合計量(総重量)を100重量部としたとき、光重合開始剤は2〜6.5重量部であり、好ましくは2.5重量部以上、5.5重量部以下である。2重量部未満では得られる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の硬化性に劣り、6.5重量部以上では硬化膜の物性が低下したりする可能性がある。
【0073】
なお、本発明に用いる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)に活性エネルギー線を照射して硬化膜を得る際、活性エネルギー線として紫外線や軟エックス線などを用いる場合には、を本発明に用いる組成物中に上記のような光重合開始剤を含むことが好ましいが、比較的エネルギーが高い電子線や硬エックス線などを用いる場合には光重合開始剤を含んでいなくてもよい。
【0074】
<無機粒子>
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)は、無機粒子を含有することができる。前記無機粒子と架橋密度の高い(メタ)アクリロイル共重合体とを含有させることで、より高い硬度を有するハードコートを形成し得る活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を提供できる。
【0075】
無機粒子の平均一次粒子径は1nm〜200nmであることが好ましく、硬化膜の透明性が良好である点から150nm以下であることがさらに好ましく、100nm以下であることがより好ましい。下限値は特段限定されないが、通常1nm以上が好ましく、原料の入手が容易である点から、さらに好ましくは5nm以上であり、より好ましくは10n
m以上である。
【0076】
一方、上記範囲の無機粒子の運動は、重力による沈降よりも熱拡散が支配するため、ハードコート液中に安定に粒子を分散可能となり、さらにハードコート膜を形成した際に効果的に表面に無機粒子を存在させることができる。また、無機粒子の平均一次粒子径が小さいほど、光学特性が良好になる傾向がある。
本発明における無機粒子の平均一次粒子径は、TEMなどの電子顕微鏡により観察される粒子の大きさを平均した径をいう。
【0077】
無機粒子の例としては、シリカ(オルガノシリカゾルを含む)、アルミナ、チタニア、ゼオライト、雲母、合成雲母、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、フッ化マグネシウム、スメクタイト、合成スメクタイト、バーミキュライト、ITO(酸化インジウム/酸化錫)、ATO(酸化アンチモン/酸化錫)、酸化錫、酸化インジウム、酸化アンチモンなどが挙げられ、これらの無機粒子は1種のみ含有させることでもよく、2種以上を組み合わせてもよい。中でもシリカ(オルガノシリカゾルを含む)は原料の入手が容易であること、粒子表面の修飾が容易であり、分散安定性を確保しやすい点から好適に使用される。
【0078】
シリカを水に分散させたコロイド状シリカは、表面修飾されたコロイド状シリカであることが、塗膜の透明性、積層体の耐候性、及び積層体の観点から好ましい。
【0079】
コロイド状シリカの修飾には、加水分解性ケイ素基を有する化合物又は水酸基が結合したケイ素基を有する化合物を用いることができる。これらの化合物は、それぞれ、一種でも二種以上でもよい。加水分解性ケイ素基を有する化合物では、加水分解によりシラノール基が生成し、それらのシラノール基がコロイド状シリカ表面に存在するシラノール基と反応して結合することにより表面修飾コロイド状シリカが生成する。
【0080】
前記ケイ素基含有化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルオリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0081】
または、メルカプト基を有するシランに、多官能(メタ)アクリレートまたは高分子量(メタ)アクリレートを付加した誘導体、イソシアネート基を有するシランに水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを付加した誘導体などの変性したケイ素基含有化合物を用いてもよい。
【0082】
コロイド状シリカの表面修飾は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基を含有す
る化合物、触媒、水を20〜100℃にて1〜40時間反応させることにより行うことができる。
【0083】
前記表面修飾反応に使用する触媒としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸
、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸;アルカリ;アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウム2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドエチルアセトアセテート、ホウ酸ブトキシド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテートが挙げられる。これらの触媒の使用量は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基含有化合物の合計量100質量部に対して0.0001〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。また、前記表面修飾反応における水の量は、加水分解性ケイ素基に対して0.5〜100当量であることが好ましく、1〜30当量であることがより好ましい。
【0084】
また、前記コロイド状シリカは、酸性又は塩基性のコロイド状シリカのうち、酸性のコロイド状シリカであることが好ましい。
【0085】
本発明に用いられる無機粒子は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)100重量部に対し、5重量部以上含有させることが好ましく、10重量部以上であることがより好ましく、20重量部以上であることが更に好ましい。また、70重量部以下であることが好ましく、50重量部以下であることがより好ましく、40重量部以下であることが更に好ましい。
【0086】
<調製方法>
本発明の活活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の調製方法は特に限定されず、例えば、アクリロイル系共重合体(α)と多官能(メタ)アクリレートを、必要に応じて、溶媒、重合開始剤、添加剤などと併せて混合することにより調製することができる。
【0087】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の調製で用いられる溶媒は、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリロイル共重合体、多官能(メタ)アクリレート、塗布の下地となる基材の材質、および組成物の塗布方法などを考慮して適宜選択される。用いることができる溶媒の具体例としては、例えば、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒;ジエチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、アニソール、フェネトールなどのエーテル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールジアセテートなどのエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコール系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン系溶媒;などが挙げられる。
【0088】
これらの溶媒を単独で使用してもよく、また2種以上を併用して使用してもよい。これらの溶媒のうち、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒およびケトン系溶媒が好ましく使用される。
【0089】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)は、必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤として、レベリング剤、帯電防止剤、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤および紫外線吸収剤などの常用の添加剤が挙げられる。
【0090】
前記レベリング剤としては、例えば、またはパーフルオロアルキル基あるいはパーフル
オロアルキレン骨格を含有する化合物、ポリジメチルシロキサン構造を含有する化合物などが挙げられる。前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)における前記レベリング剤の含有量は、透明性、塗布外観、密着性、硬度の観点から0〜5質量部であることが好ましく、0〜2質量部であることがより好ましく、0〜1質量部であることがさらに好ましい。
【0091】
また、以下で後述するような基材が光または熱で硬化可能な官能基を含む場合、該基材層を活性エネルギー線照射または加熱により硬化させることで形成すると、より好ましい場合がある。また、基材は、成形品(物品)の形のものであってもよいし、基材層と塗布面との間に他の層を介していてもよい。
【0092】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)の塗布方法としては、特に限定されないが、スピンコート、デイップコート、フローコート、スプレーコート、バーコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート、エアナイフコート等を好ましく挙げることができる。
【0093】
上記基材に上記塗布方法で塗膜を形成した後、加熱乾燥により揮発成分を除去し、次いで活性エネルギー線を塗膜に照射するなどの手段により、硬化膜が得られる。この硬化膜等のように、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して形成される層が本発明における第一の層である。
【0094】
硬化膜を得る際に活性エネルギー線を用いる場合、その照射法としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、または通常20〜2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線(エレクトロンビーム、EB)が挙げられる。このような活性エネルギー線で硬化した硬化膜は生産性・物性のバランスに優れ、特に好ましい。
【0095】
ヘイズは、JIS K7136に準拠して、下記式より算出することができる。
H(%)=(Td/Tt)×100
H:ヘイズ(曇価)(%)
Td:拡散透光率(%)
Tt:全光線透過率(%)
なお、ヘイズの測定は、例えば濁度計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定することができる。
【0096】
3.樹脂組成物(II)
本発明の樹脂組成物(II)は、以下のとおりである。
すなわち、アクリル当量が100以上である樹脂を含有する樹脂組成物であり、塗膜の作成において、塗工方法、溶剤乾燥の有無、硬化工程の有無、硬化方法については特に限定されない。また、本発明におけるアクリル当量とは、樹脂組成物(II)を構成する成分の分子量(g/mol)をその成分1分子内に存在するアクリロイル基の数で除した値である。尚、アクリロイル基を有さない場合は、無限大となり、この場合も含まれる。混合物の場合は、各構成成分のアクリル当量に重量比を乗じた値の和とする。アクリル当量が大きいほど得られる塗膜の硬度は低くなる傾向にある。また、アクリル当量は110以上であることが好ましい。
【0097】
樹脂組成物(II)の構成成分としては、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシレート、ポリシロキサン、パーフ
ルオロポリエーテルなどのアクリル当量が100以上である樹脂が挙げられ、これら1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。また、これらの化合物にアクリロイル基を導入した化合物を用いてもよい。
【0098】
これらの中でも、扱い易さの点から、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレートが好ましく、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートの(メタ)アクリロイル基の官能基数は、通常1個以上であるが、2個以上が好ましく、さらには3個以上が好ましく、4個以上が特に好ましい。また、これらは一種でも二種以上でもよい。
【0099】
(メタ)アクリレートの具体例としては、以下のとおりである。
例えば、1分子中に1個の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、シクロヘキシルアクリレートやイソボルニルメタクリレート等の脂環式(メタ)アクリレート、スチレンやその誘導体等の芳香環を有する(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール鎖、ポリジメチルシロキサン鎖、パーフルオロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートやポリアルキレングリコール鎖、ポリジメチルシロキサン鎖の末端がヒドロキシ基に置換されたポリアルキレングリコール鎖、ポリジメチルシロキサン鎖を有する(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0100】
1分子中に2個の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、ヘキサンジオールジアクリレート等の炭素数2〜22の直鎖状または分岐状アルキレン骨格の両末端に(メタ)アクリレートが置換した脂肪族ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等の脂環式骨格を含有するジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0101】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリル基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0102】
また、本発明の効果を奏するのであれば、かかる1分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては前述の化合物に特に限定されないが、中でも、粘度と硬化性、得られる硬化膜表面の硬度などから、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリス
リトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが好ましく、さらにはペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0103】
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリイソプレン等が挙げられる。
【0104】
ポリエステルとしては、ジカルボン酸(コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸等)又はその無水物と低分子量ジオール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリテトラメチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等)との重縮合によって得られるもの、例えばポリエチレンアジペート、ポリプロピレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリブチレンセバケート等、低分子量ジオールへのラクトンの開環重合によって得られるもの、例えばポリカプロラクトン、ポリメチルバレロラクトン等が挙げられる。
【0105】
ポリカーボネートとしては、芳香族ジヒドロキシ化合物又はこれと少量のポリヒドロキシ化合物を、ホスゲンとの界面重合法により得られるか、または、前述の芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により作られる分岐していてもよい熱可塑性ポリカーボネート重合体であり、例えばビスフェノールAを主原料とする炭酸エステル重合物が使用される。さらには低分子量ジオールとアルキレンカーボネート又はジアルキルカーボネートとから脱アルコールによって得られるポリブチレンカーボネート、ポリヘキサメチレンカーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等を用いてもよい。
【0106】
ポリウレタンとしては、イソホロンジイソシアネートや水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環骨格イソシアネート化合物に、(ポリ)ブタジエンジオール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、(ポリ)エステルジオール、(ポリ)カプロラクトン変性ジオール、(ポリ)カーボネートジオール、(ポリ)スピログリコール等の一種又は二種以上の化合物の水酸基を付加させた((ポリウレタン))等が挙げられる。
【0107】
ポリ(メタ)アクリレートとしては、炭素数1〜22の直鎖状または分岐状のアルキル基を有する(メタ)アクリレート、スチレン、またはスチレンの低級アルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基)若しくは低級アルケニル基(例えば、炭素数2〜4のアルケニル基)の置換誘導体、パーフルオロアルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリルアミド、炭素数5〜20の(ポリ)シクロアルキル側鎖を有するシクロアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類などの(メタ)アクリレートをモノマーとする重合物を挙げることができる。本発明の効果を奏するのであれば、これらモノマーは1種類を単独で重合しても2種類以上を共重合してもよく、またラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等の重合法も特に限定されない。また、ランダム、ブロック、グラフト構造など重合体の構造も特に限定されるものではない。
【0108】
前述のモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n−トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリメトキシシラン、及び3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、及びシアノ化ビニリデン等のアクリロニトリル化合物、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、及びN,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、入手のし易さ・扱い易さの点から、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートおよびそのカチオン化剤による変性体、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、が好ましく、さらにはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0109】
ポリエポキシレートとしては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型
エポキシ樹脂類、トリスフェノールメタントリグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、2,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150(ダイセル化学工業株式会社製、脂環式エポキシ樹脂)等やこれらをモノマーとした重合物が挙げられる。これらの中でも、入手のし易さからビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂類、2,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサノン−メタ−ジオキサン、ビス(2,3−エポキシシクロペンチル)エーテル、EHPE−3150が好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂類が特に好ましい。
【0110】
ポリシロキサンとしてはポリジメチルシロキサンや、ポリジメチルシロキサンに相溶性を確保するための構造、例えばアルキル基やポリアルキレングリコール鎖が導入された誘導体が挙げられる。
樹脂組成物(II)は、硬度や耐擦傷性の観点からこれらの化合物にアクリロイル基を導入した化合物を含有することが好ましい。すなわち、ポリオレフィン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどを含有することが好ましい。
【0111】
さらには、樹脂組成物(II)として、入手や分子設計、合成のしやすさからポリウレタン、ウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましく、また、硬度や耐擦傷性の観点からウレタン(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0112】
ポリウレタンとしては、イソホロンジイソシアネートや水添ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環骨格イソシアネート化合物、またはヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物やトリレンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート化合物と、それら化合物に、(ポリ)ブタジエンジオール、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、(ポリ)テトラメチレングリコール、1,4−(ポリ)ブタンジオール、1,6−(ポリ)ヘキサンジオール、(ポリ)エステルジオール、(ポリ)カプロラクトン変性ジオール、(ポリ)カーボネートジオール、(ポリ)スピログリコール等の一種又は二種以上の化合物を反応させ、その反応比率により水酸基あるいはイソシアネート基のどちらかを分子中に残すように合成された化合物、あるいは前述のポリウレタンのうち、水酸基を残したポリウレタンを主剤とし、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートを硬化剤として別途配合した樹脂組成物の硬化物が挙げられる。加えて、同様にイソシアネート基にアミノ基を反応させて得られるウレア結合を含有する化合物、ウレタン結合にイソシアネート基が反応して生起するアロファネート結合を含有する化合物、ウレア結合にイソシアネート基が反応して生起するビュレット結合を含有する化合物、イソシアネート基が3量化したイソシアヌレート構造を含有する化合物も本発明ではポリウレタンとして使用できる。
【0113】
耐光性の観点から、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、シクロヘキサンジイソシアネート、ビス(イソシアネートシクロヘキシル)メタン、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチ
ルヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、及び、トリス(イソシアネートヘキシル)イソシアヌレート等の脂肪族トリイソシアネートが好ましく、さらにはイソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
【0114】
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、前述のポリウレタンのうち、イソシアネート基を残したもののイソシアネート基に、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の水酸基を持つ(メタ)アクリレートの水酸基を反応させた化合物が挙げられる。また、ウレア結合、アロファネート結合、ビュレット結合、イソシアヌレート構造を含有し、且つイソシアネート基が残るように合成したポリウレタンに対し、前述と同様の水酸基を持つ(メタ)アクリレートの水酸基を反応させた化合物も例示できる。
【0115】
前述のポリウレタンおよびウレタン(メタ)アクリレートのうち、特に単独膜あるいは単独硬化膜における破断伸びが高いものが、本発明の積層体における耐(落球)衝撃性を向上させるために好ましい。前記破断伸び率は10%以上が好ましく、20%以上がより好ましく、30%以上が更に好ましく、40%以上が最も好ましい。また、塗膜の硬度の低下を抑制できることから、300%以下が好ましく、200%以下がより好ましく、150%以下が更に好ましく、100%以下が最も好ましい。
【0116】
また、かかるウレタン(メタ)アクリレートは市販品を用いてもよく、例えばU−108A、U−200AX、UA−511、U−412A、UA−4200、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−6100、U−108、UA−4000、UA−122P、UA−5201、UA−512、UA−W2A、UA−W2、UA−7000、UA−7100(新中村化学社製)などが例として挙げられる。
【0117】
樹脂組成物(II)は、硬度や耐擦傷性と耐落球衝撃性の観点から分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの混合物が好ましく、それぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。 また、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートとウレタン(メタ)アクリレートの合計(重量)を100重量部としたとき、ウレタン(メタ)アクリレートの含有量は通常0.1重量部以上であるが、耐落球衝撃性が良好となることから、10重量部以上が好ましく、20重量部以上がより好ましく、30重量部以上が更に好ましく、40重量部以上が最も好ましい。また、通常99.9重量部以下であるが、硬度と耐擦傷性が良好となることから、90重量部以下が好ましく、80重量部以下がより好ましく、70重量部以下が更に好ましく、60重量部以下が最も好ましい。
【0118】
<光重合開始剤>
本発明の樹脂組成物(II)に含まれる光重合開始剤としては、公知のものを広く採用できるが、好ましくは、α−ヒドロキシアセトフェノン(α−ヒドロキシフェニルケトン)系、α−アミノアセトフェノン系、ベンジルケタール系などのアルキルフェノン型化合物;アシルホスフィンオキシド型化合物;オキシムエステル化合物;オキシフェニル酢酸エステル類;ベンゾインエ−テル類;芳香族ケトン類(ベンゾフェノン類);ケトン/アミン化合物;ベンゾイルギ酸およびそのエステル誘導体等である。
【0119】
具体的には、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジ
ルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシド、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ミヒラーズケトン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸エチルが好ましい。これらの光重合開始剤は2種以上を適宜に併用することもできる。
【0120】
中でも、硬化性の低下を最小限に抑えることが可能であり、入手が容易であって、着色等を起こしにくいことから、光重合開始剤の少なくとも一部として2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ヒドロキシフェニルケトン類を用いることが好ましい。
【0121】
また、特に硬化性が良好な樹脂組成物(II)を得るためには、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、などのα−アミノフェニルケトン類;ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、などのベンゾフェノン類;ベンゾイルギ酸メチル、ベンゾイルギ酸、ベンゾイルギ酸エチル、などのベンゾイルギ酸(エステル)類;CGI242(チバ製)、OXE01(チバ製)、などのオキシムエステル類が好ましい。更に、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチルなどを用いることがより好ましく、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ベンゾイルギ酸メチルが特に好ましい。
【0122】
前記アクリル系共重合体と反応する光硬化性化合物の成分の合計量(総重量)を100重量部としたとき、光重合開始剤は0.1〜10重量部であり、好ましくは0.5重量部以上、7重量部以下であり、さらに好ましくは1重量部以上、6重量部以下である。0.1重量部未満では得られる樹脂組成物(II)の硬化性に劣り、10重量部以上では硬化膜の物性が低下したりする可能性がある。
【0123】
なお、本発明の樹脂組成物(II)に活性エネルギー線を照射して硬化膜を得る際、活性エネルギー線として紫外線や軟エックス線などを用いる場合には、を本発明の組成物中に上記のような光重合開始剤を含むことが好ましいが、比較的エネルギーが高い電子線や硬エックス線などを用いる場合には光重合開始剤を含んでいなくてもよい。
【0124】
前記活性エネルギー線硬化性組成物は、前述した成分以外の他の成分をさらに含有していてもよい。このような他の成分としては、例えばコロイド状シリカ、滑り剤又はレベリング剤、及び溶剤が挙げられる。
【0125】
例えば、前記(メタ)アクリレートとしては、前記三官能以上の(メタ)アクリレートとγ−メルカプトプロピルトリメトキシシランの付加物とコロイダルシリカ及び/又はシリケート加水分解縮合物;ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の水酸基含有アクリレートとイソシアネートプロピルトリエトキシシランの付加物とコロイダルシリカ及び/又はシリケート加水分解縮合物等でもよい。
【0126】
前記コロイド状シリカには、分散媒中に分散しているシリカを用いることができる。前記分散媒としては、例えば、水、メタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、エチレングリコール、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルアセトアミド、キシレン及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0127】
前記シリカの体積平均粒子径は、積層体の透明性や塗膜の均一性の観点から、200nm以下であることが好ましく、1〜200nmであることがより好ましく、5〜50nmであることがさらに好ましい。前記シリカの体積平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製JSM−7401F)を用いて粒子を撮影し、この画像の50個の粒子について画像解析ソフトImageProPlus(MediaCybernetics社製)を用いて測定することができる。
【0128】
前記活性エネルギー線硬化性組成物における前記コロイド状シリカの含有量は、固形分として、前記多官能(メタ)アクリレートと前記ウレタン(メタ)アクリレートの合計量を100質量部とした場合に、10〜40質量部であることが好ましい。特に、有機溶剤に分散したコロイド状シリカを利用することが、活性エネルギー線硬化性組成物の塗膜を形成した場合に、高い透明性を発現するので好ましく、代表的には水酸基を有する溶剤、又はケトン基を有する極性溶媒に分散したオルガノシリカゾルを用いることが好ましい。
【0129】
このようなコロイド状シリカとしては、例えば、「IPA−ST」(IPA分散オルガノシリカゾル、日産化学工業株式会社製)、「MEK−ST」(MEK分散オルガノシリカゾル、日産化学工業株式会社製)、「MIBK−ST」(MIBK分散オルガノシリカゾル、日産化学工業株式会社製)等、又はこれらを原料に他の水酸基を有する溶剤に溶媒置換したゾル(例えばPGM分散オルガノシリカゾル等)が挙げられる。
【0130】
前記コロイド状シリカは、表面修飾されたコロイド状シリカであることが、塗膜の透明性、積層体の透明性、積層体の耐候性、及び積層体の耐水性の観点から好ましい。このようなコロイド状シリカとしては、例えば、加水分解性ケイ素基を有する化合物により表面修飾されたコロイド状シリカが挙げられる。
【0131】
コロイド状シリカの修飾には、加水分解性ケイ素基を有する化合物又は水酸基が結合したケイ素基を有する化合物を用いることができる。これらの化合物は、それぞれ、一種でも二種以上でもよい。加水分解性ケイ素基を有する化合物では、加水分解によりシラノール基が生成し、それらのシラノール基がコロイド状シリカ表面に存在するシラノール基と反応して結合することにより表面修飾コロイド状シリカが生成する。
【0132】
前記ケイ素基含有化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルオリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、p−ビニルフェニルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、及び3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0133】
または、メルカプト基を有するシランに、多官能(メタ)アクリレートを付加した誘導体、イソシアネート基を有するシランに水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを付加した誘導体などの変性したケイ素基含有化合物を用いてもよい。
コロイド状シリカの表面修飾は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基を含有する化合物、触媒、水を20〜100℃にて1〜40時間反応させることにより行うことができる。
【0134】
前記表面修飾反応に使用する触媒としては、例えば、塩酸、フッ化水素酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;ギ酸、酢酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、アクリル酸、メタクリル酸等の有機酸;アルカリ;アセチルアセトンアルミニウム、アルミニウム2,2,6,6,−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオネート、アルミニウムジイソプロポキシドエチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドエチルアセトアセテート、ホウ酸ブトキシド、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクテートが挙げられる。これらの触媒の使用量は、コロイド状シリカと加水分解性ケイ素基含有化合物の合計量100質量部に対して0.0001〜5質量部であることが好ましく、0.01〜1質量部であることがより好ましい。また、前記表面修
飾反応における水の量は、加水分解性ケイ素基に対して0.5〜100当量であることが好ましく、1〜30当量であることがより好ましい。
【0135】
また前記コロイド状シリカは、酸性又は塩基性のコロイド状シリカのうち、酸性のコロイド状シリカであることが好ましい。
【0136】
前記滑り剤又はレベリング剤には、ポリジメチルシロキサン構造を有する滑り剤又はレベリング剤を用いることができる。前記活性エネルギー線硬化性組成物における前記滑り剤又はレベリング剤の含有量は、透明性、塗布外観、密着性、硬度の観点から0〜5質量部であることが好ましく、0〜2質量部であることがより好ましく、0〜1質量部であることがさらに好ましい。
【0137】
前記滑り剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、その共重合物、ポリジメチルシロキサン骨格を有するアクリルポリマー、ポリジメチルシロキサン骨格を有するウレタンポリマー、及びこれらにアクリロイル基やメタクリロイル基を導入し、活性エネルギー線反応性を付与した化合物が挙げられる。
【0138】
前記レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性したポリジメチルシロキサン及びその共重合物、エーテル基、水酸基等の親水基を含み、かつポリジメチルシロキサン骨格を有するアクリルポリマー、親水基とポリジメチルシロキサン骨格を有するウレタンポリマー、及びこれらにアクリロイル基やメタクリロイル基を導入し、活性エネルギー線反応性を付与した化合物が挙げられる。
【0139】
前記活性エネルギー線硬化性組成物における前記溶剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性組成物の取り扱い上の観点から適宜に決めることができる。溶剤は一種でも二種以上でもよい。このような溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、3−メトキシプロピルアセタート等のエーテルエステル類;トルエン、キシレン
等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類;が挙げられる。
【0140】
また、以下で後述するような基材が光または熱で硬化可能な官能基を含む場合、該基材を活性エネルギー線照射または加熱により硬化させると、より好ましい場合がある。また、基材は、成形品(物品)の形のものであってもよいし、基材と塗布面との間に他の層を介していてもよい。
【0141】
本発明の樹脂組成物(II)への塗布方法としては、特に限定されないが、スピンコート、デイップコート、フローコート、スプレーコート、バーコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート、エアナイフコート等を好ましく挙げることができる。
【0142】
上記基材に上記塗布方法で塗膜を形成した後、加熱乾燥により揮発成分を除去し、次いで活性エネルギー線を塗膜に照射するなどの手段により、硬化膜が得られる。
なお、この硬化膜等のように、樹脂組成物(II)からなる層が本発明における第二の層である。第二の層における樹脂組成物(II)は上記硬化膜のように樹脂組成物(II)を硬化させてなる層であることが好ましい。
【0143】
ここで、第二の層は厚さ2μm以上であることが、落球による衝撃を緩和させるという点から好ましく、5μm以上であることがより好ましく、8μm以上であることが最も好ましい。また、100μm以下であることが、透明性を重視するという点から好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることが最も好ましい。
【0144】
硬化膜を得る際に活性エネルギー線を用いる場合、その照射法としては、キセノンランプ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯、タングステンランプ等の光源から発せられる紫外線、または通常20〜2000kVの粒子加速器から取り出される電子線、α線、β線、γ線等の活性エネルギー線(エレクトロンビーム、EB)が挙げられる。このような活性エネルギー線で硬化した硬化膜は生産性・物性のバランスに優れ、特に好ましい。
【0145】
ヘイズは、JIS K7136に準拠して、下記式より算出することができる。
H(%)=(Td/Tt)×100
H:ヘイズ(曇価)(%)
Td:拡散透光率(%)
Tt:全光線透過率(%)
なお、ヘイズの測定は、例えば濁度計(日本電色工業株式会社製)を用いて測定することができる。
【0146】
4.基材層
本発明における基材層は、ポリカーボネートを含有する層である。ここで、ポリカーボネートを含有する層としては、形態及び形状は任意に決めることが可能であり、例えばフィルム、シート等の成形体等が挙げられる。ポリカーボネート(以下、PCと略記することがある)としては、単独重合体であっても共重合体であってもよい。また、ポリカーボネートは、分岐構造であっても、直鎖構造であってもよいし、さらに分岐構造と直鎖構造との混合物であってもよい。
【0147】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造方法は、例えば、ホスゲン法、エステル交換法およびピリジン法などの公知のいずれの方法を用いてもかまわない。以下一例として、エステル交換法によるポリカーボネート樹脂の製造方法を説明する。
【0148】
エステル交換法は、イソソルバイド、スピログリコールおよび2価フェノールなどに代表されるジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを塩基性触媒、さらにはこの塩基性触媒を中和する酸性物質を添加し、溶融エステル交換縮重合を行う製造方法である。ここで、ジヒドロキシ化合物は、二種以上を混合して用いて共重合体としてもよい。
【0149】
前記2価フェノールの代表例としては、ビスフェノール類が挙げられ、特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、すなわちビスフェノールAが好ましく用いられる。また、ビスフェノールAと、他の2価フェノールとを用いても構わない。
前記他の2価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンおよび1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォキシドおよびビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテルなどの化合物、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのアルキル化ビスフェノール類、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパンなどのハロゲン化ビスフェノール類が挙げられる。
【0150】
前記炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートおよびジシクロヘキシルカーボネートなどが挙げられる。これらのうち、特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。
【0151】
ポリカーボネートには、一般に用いられる各種の添加剤を本発明の本質を損なわない範囲で添加してもよく、酸化防止剤、着色防止剤、紫外線吸収剤、光拡散剤、難燃剤、離型剤、滑剤、帯電防止剤および染顔料などが挙げられる。
【0152】
本発明の基材層は、ポリカーボネートを含有することを特徴としているが、本発明の奏する効果を妨げない限り、その他の樹脂を含有してもよい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)またはメタクリル酸メチル(MMA)共重合体(例えばメタクリル酸メチル−スチレン共重合樹脂(MS樹脂))、トリアセチルセルロース、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、変性ポリオレフィン樹脂、水素化ポリスチレン樹脂、シクロオレフィン系透明樹脂(例えばJSR製「ア−トン」、日本ゼオン製「ゼオノア」など)等が挙げられる。
【0153】
また、本発明における基材層は、ポリカーボネートを含む層のみの単層からなるものだけでなく、ポリカーボネートを含む層を1層以上含め、さらに異なる材料からなる層を含む2層以上のポリカーボネート積層体も含まれ、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材であることが、高い表面硬度と耐衝撃性を兼ね備えることが可能となるため好ましい。これらの中でも、表面の硬度を重視する場合、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)との積層体が好ましい。また、基材として、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材を用いる場合は、アクリル樹脂層上に第一の層を形成し、ポリカーボネート樹脂層上に第二の層を形成してなることが、さらに高い表面硬度と耐衝撃性を兼ね備えることが可能となるため好ましい。
【0154】
前記基材は、形態及び形状は任意に決めることができる。前記基材の形態としては、例
えばシート、フィルム、及び成形体等が挙げられる。
【0155】
本発明の基材は、硬度を重視する場合、厚さ0.01mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.3mm以上であることが最も好ましい。また、表示体の薄型化のため、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが最も好ましい。
【0156】
また、アクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層の2層を積層した基材の場合、積層した基材全体厚みに対するアクリル樹脂厚みの割合は、硬度と耐衝撃性の観点から0.5%以上20%以下が好ましく、2%以上10%以下が特に好ましい。
その他の透明基材として、例えば、熱硬化性や光硬化性の透明樹脂(例えば、透明エポキシ樹脂、透明ウレタン樹脂、熱硬化性のアクリル系樹脂、光硬化性のアクリル系樹脂、熱硬化性の各種有機無機ハイブリッド樹脂、光硬化性の各種有機無機ハイブリッド樹脂などの硬化物)を使用し、その上に塗布しても用いることができる。
【0157】
これらのうち、光学物品用途で使用する場合、すなわち、透明基材として、光学用透明フィルム、光学用シート、光学用板状物を用いる場合、基材が、コーティング、溶融押し出し成形、ソルベントキャスト法のいずれかで形成された透明樹脂成形物であることが望ましい。
【0158】
5.ロール状フィルム積層体
本発明の積層体は、例えば、基材層の上に本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して第一の層を形成し、さらにもう一方の面に、樹脂組成物(II)からなる第二の層を形成し、ロール状に巻き付けていくことにより製造することができる。
【0159】
<本発明が効果を奏する理由>
本発明が効果を奏する理由としては、以下のように推察される。
すなわち、本発明の積層体は、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物(I)を硬化して形成される第一の層において、アクリル系共重合体(α)が高分子量のポリシロキサン構造を含有しているため、被膜表面に良好な易滑性を与え、また前記アクリル系共重合体(α)は活性エネルギー線硬化性架橋基を含有しているため、高い鉛筆硬度と表面性能の耐久性(溶剤での拭き取り後、耐スチールウール擦傷性後の表面易滑性の低下が少ない)が高く、滑りが良く、高い耐擦傷性・硬度を有する表面を与えることが可能である。また、第一の層を最表面層として、アクリル当量が100以上である樹脂組成物(II)により構成される第二の層を形成することで、基材が本来有する耐衝撃性を保持したまま、第一の層側の表面硬度を向上させることが可能となり、加工時のハンドリングによる傷付きを減少させるものと推察される。
【0160】
<表示装置>
本発明は、さらに、本発明の積層体と、光源とを含む表示装置に関する。この場合、積層体に含まれる基材は透光性基材であることが望ましい。また、光源は、基材の背面、すなわち基材の微細凹凸層とは反対側の面に配置され、そこから基材に向けて光を照射することが好ましい。
【0161】
なお、透光性基材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に10〜2000μm程で用いられる。
【0162】
上記積層体と組み合わせることのできる光源としては、光を発することのできるものであれば特に限定はないが、例えば、光源としては、発光ダイオード、冷陰極管、熱陰極管、ELなどが挙げられる。本発明の表示装置には、さらに、位相差板、輝度向上フィルム
、導光板、光拡散板、光拡散シート、集光シート、反射板などを備えていてもよい。また、光源として、液晶モジュール、バックライトユニットなどを使用してもよい。
【0163】
光透過性部材として、各種の光透過性板、光透過性フィルムなどを使用することができる。光透過性板として、例えば強化ガラス、アクリル板、トリアセチルセルロース板、ポリエチレンテレフタレート板、ジアセチレンセルロース板、アセテートブチレートセルロース板、ポリエーテルサルホン板、ポリウレタン板、ポリエステル板、ポリカーボネート板、ポリスルホン板、ポリエーテル板、ポリメチルペンテン板、ポリエーテルケトン板、(メタ)アクリルニトリル板などが挙げられる。光透過性フィルムとして、例えばトリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ジアセチレンセルロースフィルム、アセテートブチレートセルロースフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリアクリル系樹脂フィルム、ポリウレタン系樹脂フィルム、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、(メタ)アクリルニトリルフィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムなどが挙げられる。光透過性部材として、アクリル板、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、シクロオレフィンポリマー(COP)フィルム、強化ガラスを用いるのがより好ましい。なお、光透過性部材の厚さは、用途に応じて適時選択することができるが、一般に25〜1000μm程で用いられる。
【0164】
液晶モジュールとする場合には、上記光源を含み、さらに、その上に偏光板/液晶セル/偏光板がこの順に配置された構成を有するものである。液晶セルは、一般に液晶表示装置に用いられているものならば特に制限されない。例えば、TN(Twisted Ne
matic)型液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)型液晶セル、HAN(Hybrid Alignment Nematic)型液晶セル、IPS(In Plane Switching)型液晶セル、VA(Vertical Ali
gnment)型液晶セル、MVA(Multiple Vertical Alignment型液晶セル、OCB(Optical Compensated Bend)型液晶セルなどを挙げることができる。
【0165】
本発明の表示装置は、液晶表示装置(液晶ディスプレイ)、LED(発光ダイオードディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネセンスディスプレイ)、VFD(蛍光ディスプレイ)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などといった、フラットパネルディスプレイに適用することができる。また、本発明の表示装置の作製に使用することのできる本発明の活性エネルギー線硬化性組成物は、アンチブロッキング性に加えて、耐候性をも有するので、これらの表示装置の屋外での使用が可能となる。例えば、広告などの情報掲示を目的としたパネルディスプレイとして屋外または半屋外に設置することが可能となる。
【0166】
また、本発明の表示装置の屋外または半屋外での用途としては、タッチパネルが挙げられ、これは、画面上の表示を押さえることによって機器を操作する機構を有し、例えば、銀行ATM、自動販売機、携帯情報端末(PDA)、複写機、ファクシミリ、ゲーム機、博物館およびデパートなどの施設に設置される案内表示装置、カーナビゲーション、マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機)、携帯電話、鉄道車両のモニタ装置などにおいて有用である。
【実施例】
【0167】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の諸例において「部」とあるのは「重量部」を意味する。
【0168】
下記の実施例等で得られた積層体の物性は下記の方法により評価した。
(1)耐スチールウール磨耗性(耐SW性):
#0000のスチールウール、加重160g/cmにて第一の層の硬化膜表面を300往復擦り、試験後の硬化膜の傷付きの程度を以下の通り評価した。
○:傷が0〜100本
×:傷が100本より多いか、または白化
(2)鉛筆硬度:
第一の層と第二の層の硬化膜について、JIS準拠鉛筆硬度計(太佑機材社製)を用い、JIS K−5400の条件に基づき測定を行い、傷の入らないもっとも硬い鉛筆の番
手で評価した。アクリル面、ポリカーボネート面で同様の評価を行い、基材のもともとの硬度より向上している場合を○とした。
(3)耐衝撃性:
第一の層を表面に、第二の層を裏面にした幅12.6cm、長さ22.4cm、厚さ0.85mmの試験片に、50gの鋼球を50cmの高さから中心部に向かって自然落下させる剛球落下試験により耐衝撃性を評価した。なお、評価として○は落球により傷が付かなかったことを示し、×は落球により傷が付いたことを示す。
(4)ヘイズ:
JIS K−7136に従ってヘイズメーター(村上色彩技術研究所製「HAZE METER HM−65W」)にてヘイズ値を測定した。なお、0.3%以下を合格とした。
【0169】
<合成例1>
撹拌機、還流冷却管、及び温度計を取り付けた反応器に、数平均分子量10,000の片末端メタクリロイル基置換ポリジメチルシロキサン(JNC社製「サイラプレーン(登録商標)FM−0725」)20重量部、グリシジルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルG」)30重量部、メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルM」)40重量部、ステアリルメタクリレート(三菱レイヨン社製「アクリエステルS」)10重量部、メチルイソブチルケトン(MIBK)150重量部を仕込み、撹拌開始後に系内を窒素置換し、55℃に昇温した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)0.06重量部、1-ドデカンチ
オール(和光純薬社製)0.09重量部を添加した後、系内を65℃まで昇温し、3時間撹拌した後、さらにV−65を0.06重量部を添加して65℃で3時間撹拌した。系内を100℃まで昇温し、30分間撹拌した後、MIBK68.8重量部を加え、再度系内を100℃まで昇温する。p−メトキシフェノール(和光純薬工業社製)0.05重量部とトリフェニルホスフィン(和光純薬工業社製)2.3重量部を添加した後、アクリル酸(三菱化学社製)15.5重量部を加え、110℃まで昇温し6時間撹拌した。冷却後、MIBK253部を添加し、共重合体(F1)の溶液を得た。反応液の組成は(F1)/MIBK=20/80(重量比)であった。
【0170】
<配合例I>
合成例1で得られた共重合体(F1)の溶液、及び硬化性モノマーDPHAおよびアロニックスM313を固形分比で2:86:12になるように配合し、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を4.0重量部、α−アミノフェニルケトン系光重合開始剤(BASF社製「Irgacure907」)を0.5重量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルイソブチルケトン=1/1(重量比)の溶液で固形分が40%になるように希釈し、配合液Iを得た。この液のアクリル当量は115g/mol
であった。
【0171】
<配合例II>
硬化性モノマーDPHAおよびウレタンアクリレートUA122Pを固形分比40:60になるように配合し、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を4.5重量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルイソブチルケトン=1/1(重量比)の溶液で固形分が40%になるように希釈し、配合液IIを得た。この液のアクリル当量は370g/molであった。
【0172】
<配合例III>
硬化性モノマーDPHAおよびアロニックスM313を固形分比40:60になるように配合し、さらに光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製「Irgacure(登録商標)184」)を4.5重量部添加した後、プロピレングリコールモノメチルエーテル/メチルイソブチルケトン=1/1(重量比)の溶液で固形分が40%になるように希釈し、配合液IIIを得た。この液のアクリル当量は131g/molであった。
【0173】
<配合例IV>
ポリエステル樹脂であるテスラック(登録商標)2488およびポリイソシアネート硬化剤であるマイテック(登録商標)NY730A−Tを固形分比で53:47になるよう配合し、さらにオクチル酸錫触媒としてネオスタン(登録商標)U810を0.1重量部添加した後、メチルエチルケトン溶液で固形分が40%になるように希釈し、ポリウレタン樹脂の配合液IVを得た。この液にはアクリロイル基を有する化合物が含有されていないため、アクリル当量は無限大である。
【0174】
<実施例1>
厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)上に得られた配合液Iをアクリル面に、ポリカーボネート面に配合液IIを乾燥後の塗膜がそれぞれ10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させ、アクリル樹脂層上に第一の層を形成し、ポリカーボネート樹脂層上に第二の層を形成してなる積層体1を得た。
【0175】
積層体1を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.2%であり、耐摩耗性は○であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ7HとFで○であり、耐衝撃性は○であった。
【0176】
<実施例2>
厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)上に得られた配合液Iをアクリル面に、ポリカーボネート面に配合液IIIを乾燥後の塗膜がそれぞれ10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させ、アクリル樹脂層上に第一の層を形成し、ポリカーボネート樹脂層上に第二の層を形成した積層体1を得た。
【0177】
積層体2を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.2%であり、耐摩耗性は○であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ7HとFで○であり、耐衝撃性は○であった。
【0178】
<比較例1>
ハードコート層のない厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)を積層体3とした。
【0179】
積層体3を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.2%であり、耐摩耗性は×であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ3Hと2Bで×であり、耐衝撃性は○であった。
【0180】
<比較例2>
厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)上に得られた配合液Iをアクリル面のみに乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させ、アクリル樹脂層上のみに第一の層を形成した積層体4を得た。
【0181】
積層体4を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.2%であり、耐摩耗性は○であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ7H○と2B×であり、耐衝撃性は○であった。
【0182】
<比較例3>
厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)上に得られた配合液Iをアクリル面とポリカーボネート面に乾燥後の塗膜がそれぞれ10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させ、アクリル樹脂層上に第一の層を形成し、ポリカーボネート樹脂層上にも第一の層と同一の層を形成した積層体5を得た。
【0183】
積層体5を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.2%であり、耐摩耗性は○であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ7HとFで○であり、耐衝撃性は×であった。なお、この場合、耐衝撃性試験は、第一の層をアクリル樹脂層として表面に、第二の層をポリカーボネート樹脂層として裏面にして行った。
【0184】
<比較例4>
厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)上に得られた配合液Iをアクリル面のみに乾燥後の塗膜が20μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で2分間加熱して塗膜を乾燥させた。次いで、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させ、アクリル樹脂層上のみに第一の層を形成した積層体6を得た。
【0185】
積層体6を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.2%であり、耐摩耗性は○であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ7H○と2B×であり、耐衝撃性は○であった。
各積層体につき、上記(1)〜(3)の測定を行い、結果を表1に示した。
【0186】
<実施例3>
厚さ0.64mmのアクリル樹脂層とポリカーボネート樹脂層を有する2層積層基材:
PMMA/PCシート(日本ウェーブロック社製「ShineTech AW−10」)のポリカーボネート面に得られた配合液IVを乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で10分間加熱して塗膜を乾燥させ、ポリカーボネート樹脂層上に第二の層を形成した。次に、アクリル面に配合液Iを乾燥後の塗膜が10μmとなるようにバーコーターにて塗布し、80℃で1.5分間加熱して塗膜を乾燥後、出力120W/cmの高圧水銀灯を使用し、450mW/cm、500mJ/cmの紫外線を照射し、硬化膜を被覆させ、アクリル樹脂層上に第一の層を形成し、積層体7を得た。
【0187】
積層体7を前記の評価方法によって評価したところ、ヘイズは0.3%であり、耐摩耗性は○であり、アクリル側とポリカーボネート側の鉛筆硬度はそれぞれ7HとBで○であり、耐衝撃性は○であった。
【0188】
【表1】
【0189】
PMMA(ポリメタクリ酸メチル):アクリライト、三菱レイヨン社製
DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート):KAYARAD(登録商標)
DPHA 日本化薬株式会社製
UA122P:UA122P、新中村化学工業株式会社
M313:アロニックスM313、東亞合成株式会社製
テスラック(登録商標)2488:日立化成社製
マイテック(登録商標)NY730A−T:三菱化学社製
ネオスタン(登録商標)U810:日東化成社製
※耐SW性、鉛筆硬度、耐衝撃性、ヘイズの評価のいずれも○以上の結果であるものが好ましい。
【0190】
実施例および比較例を対比すると、比較例1は、基材のみであり、耐SW性、鉛筆硬度、耐衝撃性が不十分である。
比較例2は、第二の層を有さないため、耐衝撃性が満足に向上していない。
比較例3は、第二の層に活性エネルギー線樹脂組成物(I)を使用しており、活性エネルギー線樹脂組成物(II)を使用しておらず、耐衝撃性が満足に向上していない。
比較例4は、第二の層を有さず、第一の層を厚くしたが、耐衝撃性、反りの評価が満足に向上しなかった。