(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記焦点位置決定部は、直前の前記測定点までに取得された前記測定点ごとの前記測長値に基づいて、次の前記測定点での前記測定対象面の位置を推定し、推定した位置に基づいて、次の前記測定点で測定する際に設定する前記測定光の焦点位置を決定する、
請求項1に記載の形状測定装置。
前記焦点位置決定部は、直前の前記測定点までに取得された前記測定点ごとの前記測長値に基づいて、線形予測法により次の前記測定点での前記測定対象面の位置を推定する、
請求項3に記載の形状測定装置。
波長掃引光源からの光を測定光と参照光とに分岐し、前記測定光で測定対象面を走査し、前記測定対象面で反射した前記測定光と、参照面で反射した前記参照光との干渉光の強度を検出し、検出した前記干渉光の強度に基づいて、前記測定光と前記参照光との光路長差を算出し、算出した前記光路長差を各測定点の測長値として取得する形状測定方法において、
前記測定点ごとに取得される前記測長値に基づいて、次の前記測定点で測定する際に設定する前記測定光の焦点位置を決定し、決定した焦点位置に前記測定光の焦点位置を移動させた後、次の前記測定点での測定を実施する形状測定方法。
直前の前記測定点までに取得された前記測定点ごとの前記測長値に基づいて、次の前記測定点での前記測定対象面の位置を推定し、推定した位置に基づいて、次の前記測定点で測定する際に設定する前記測定光の焦点位置を決定する、
請求項7に記載の形状測定方法。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、焦点検出機構を装置に別途組み込むと、装置構成が複雑かつ大型化するという欠点がある。また、焦点検出処理の時間が必要になるため、測定時間が増大するという欠点もある。さらに、焦点検出の方式によっては、測定用の光を分岐する必要があり、感度が低下するという欠点もある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、簡素な構成で高精度な測定を短時間で実施できる形状測定装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
課題を解決するための手段は、次のとおりである。
【0007】
[1]波長掃引光源と、波長掃引光源からの光を測定光と参照光とに分岐する分岐部と、参照光を一定位置で反射する参照面と、測定光の焦点位置を調節する焦点調節部と、測定光を走査させて測定点を変更させる走査部と、走査部を制御する走査制御部と、測定対象面で反射した測定光と、参照面で反射した参照光とを干渉させた干渉光の強度を検出する検出部と、検出部で検出される干渉光の強度に基づいて、測定光と参照光との光路長差を算出し、算出した光路長差を測長値として出力する測長部と、測定点ごとに出力される測長値を記録する記録部と、測定点ごとに出力される測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する焦点位置決定部と、焦点調節部を制御して、焦点位置決定部で決定された焦点位置に測定光の焦点位置を設定する焦点位置制御部と、を備えた形状測定装置。
【0008】
本態様によれば、測定点が切り替わるたびに測定光の焦点調節が行われる。この際、過去の測定結果を利用して、次の測定点での焦点調節が行われる。これにより、別途焦点検出機構を用いることなく、焦点合わせを行うことができる。また、測定は、波長掃引光源を用いた干渉計測によって行われるため、短時間で行うことができる。
【0009】
[2]焦点位置決定部は、直前の測定点での測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する、上記[1]の形状測定装置。
【0010】
本態様によれば、直前の測定点での測長値に基づいて、次の測定点での測定光の焦点位置が決定される。この場合、次の測定点での測定光の焦点位置は、直前の測定点での測定対象面の位置に設定される。これにより、簡単に焦点合わせを行うことができる。
【0011】
[3]焦点位置決定部は、直前の測定点までに取得された測定点ごとの測長値に基づいて、次の測定点での測定対象面の位置を推定し、推定した位置に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する、上記[1]の形状測定装置。
【0012】
本態様によれば、直前の測定点までの測定結果から次の測定点での測定対象面の位置が推定される。そして、推定された位置に次の測定点での測定光の焦点位置が設定される。これにより、測定対象面が曲面である場合であっても、適切に焦点合わせを行うことができる。
【0013】
[4]焦点位置決定部は、直前の測定点までに取得された測定点ごとの測長値に基づいて、線形予測法により次の測定点での測定対象面の位置を推定する、上記[3]の形状測定装置。
【0014】
本態様によれば、線形予測法により次の測定点での測定対象面の位置が推定される。これにより、簡単に次の測定点での測定対象面の位置を推定できる。
【0015】
[5]焦点位置決定部は、直前の測定点までの測定点ごとの測長値に基づいて、多項式回帰分析により次の測定点での測定対象面の位置を推定する、上記[3]の形状測定装置。
【0016】
本態様によれば、多項式回帰分析により次の測定点での測定対象面の位置が推定される。これにより、より正確に次の測定点での測定対象面の位置を推定できる。
【0017】
[6]測定対象物が測定光を透過する場合において、走査制御部は、走査部を制御して、測定光を2回走査させ、焦点位置決定部は、1回目の走査時は、測定点ごとに出力される第1の測定対象面の測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定し、2回目の走査時は、測定点ごとに出力される第2の測定対象面の測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定し、記録部は、1回目の走査によって測定点ごとに出力される測長値を第1の測定対象面の測長値として記録し、かつ、2回目の走査によって測定点ごとに出力される測長値を第2の測定対象面の測長値として記録する、上記[1]から[5]のいずれかの形状測定装置。
【0018】
本態様によれば、測定対象物が測定光を透過する場合(たとえば、測定対象物が透明な場合)、表面及び裏面の形状を測定できる。すなわち、測定対象物が測定光を透過する場合、測定対象物の表面の位置だけでなく裏面の位置も検出できるので、この性質を利用して、測定対象物の表面及び裏面の形状を測定する。ただし、測定光の焦点位置が、測定対象とする面からずれていると、高感度な測定ができなくなることから、2回に分けて測定を実施し、それぞれの面で高感度な測定ができるようにしている。すなわち、1回目の走査では、第1の測定対象面(たとえば、表面)に焦点位置が合うように焦点調節を行って測定し、2回目の走査では、第2の測定対象面(たとえば、裏面)に焦点位置が合うように焦点調節を行って測定している。これにより、表面及び裏面を精度よく測定できる。
【0019】
[7]波長掃引光源からの光を測定光と参照光とに分岐し、測定光で測定対象面を走査し、測定対象面で反射した測定光と、参照面で反射した参照光との干渉光の強度を検出し、検出した干渉光の強度に基づいて、測定光と参照光との光路長差を算出し、算出した光路長差を各測定点の測長値として取得する形状測定方法において、測定点ごとに取得される測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定し、決定した焦点位置に測定光の焦点位置を移動させた後、次の測定点での測定を実施する形状測定方法。
【0020】
本態様によれば、測定点が切り替わるたびに測定光の焦点調節が行われる。この際、過去の測定結果を利用して、次の測定点での焦点調節が行われる。これにより、別途焦点検出機構を用いることなく、焦点合わせを行うことができる。また、測定は、波長掃引光源を用いた干渉計測によって行われるため、短時間で行うことができる。
【0021】
[8]直前の測定点での測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する、上記[7]の形状測定方法。
【0022】
本態様によれば、直前の測定点での測長値に基づいて、次の測定点での測定光の焦点位置が決定される。この場合、次の測定点での測定光の焦点位置は、直前の測定点での測定対象面の位置に設定される。これにより、簡単に焦点合わせを行うことができる。
【0023】
[9]直前の測定点までに取得された測定点ごとの測長値に基づいて、次の測定点での測定対象面の位置を推定し、推定した位置に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する、上記[7]の形状測定方法。
【0024】
本態様によれば、直前の測定点までの測定結果から次の測定点での測定対象面の位置が推定される。そして、推定された位置に次の測定点での測定光の焦点位置が設定される。これにより、測定対象面が曲面である場合であっても、適切に焦点合わせを行うことができる。
【0025】
[10]直前の測定点までに取得された測定点ごとの測長値に基づいて、線形予測法により次の測定点での測定対象面の位置を推定する、上記[9]の形状測定方法。
【0026】
本態様によれば、線形予測法により次の測定点での測定対象面の位置が推定される。これにより、簡単に次の測定点での測定対象面の位置を推定できる。
【0027】
[11]直前の測定点までの測定点ごとの測長値に基づいて、多項式回帰分析により次の測定点での測定対象面の位置を推定する、上記[9]の形状測定方法。
【0028】
本態様によれば、多項式回帰分析により次の測定点での測定対象面の位置が推定される。これにより、より正確に次の測定点での測定対象面の位置を推定できる。
【0029】
[12]測定対象物が測定光を透過する場合において、測定光を2回走査させ、1回目の走査時は、測定点ごとに出力される第1の測定対象面の測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定し、2回目の走査時は、測定点ごとに出力される第2の測定対象面の測長値に基づいて、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する、上記[7]から[11]のいずれかの形状測定方法。
【0030】
本態様によれば、測定対象物が測定光を透過する場合、測定対象物を2回走査して、測定対象物の第1の測定対象面(たとえば、表面)及び第2の測定対象面(たとえば、裏面)の形状を測定する。この際、1回目の走査では、第1の測定対象面(たとえば、表面)に焦点位置が合うように焦点調節を行って測定し、2回目の走査では、第2の測定対象面(たとえば、裏面)に焦点位置が合うように焦点調節を行って測定している。これにより、表面及び裏面を精度よく測定できる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、簡素な構成で高精度な測定を短時間で実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
[構成]
図1は、本発明に係る形状測定装置の一実施形態を示す全体構成図である。
【0035】
同図に示すように、本実施の形態の形状測定装置10は、波長掃引光源12と、ファイバーカプラ14と、コーナーキューブプリズム16と、焦点調節部18と、走査部20と、検出部22と、測長部24と、制御部26と、記録部28と、焦点位置決定部30と、表示部32と、操作部34と、を備えて構成され、ステージ40の上に載置された測定対象物Oの表面(測定対象面)Tの形状を非接触で測定する。
【0036】
波長掃引光源12は、波長(周波数)を一定の周期で掃引させながら光を出力する。波長掃引光源12から出力された光は、第1の光ファイバーF1を経由してファイバーカプラ14に導かれる。
【0037】
ファイバーカプラ14は、分岐部として機能し、波長掃引光源12からの光を測定光と参照光とに分岐する。また、後述するように、ファイバーカプラ14は、干渉部として機能し、コーナーキューブプリズム16で反射した参照光と、測定対象物Oの測定対象面Tで反射した測定光とを合成して干渉光を生成する。ファイバーカプラ14には、第1の光ファイバーF1と、第2の光ファイバーF2と、第3の光ファイバーF3と、第4の光ファイバーF4とが接続される。
【0038】
参照光は、第2の光ファイバーF2に導かれて、そのファイバー端から出射する。第2の光ファイバーF2から出射した参照光は、第1のコリメーターC1で平行光束とされ、コーナーキューブプリズム16に照射される。
【0039】
コーナーキューブプリズム16は、参照面を構成し、第1のコリメーターC1から出射された参照光を一定位置で反射する。コーナーキューブプリズム16で反射した参照光は、第1のコリメーターC1を介して第2の光ファイバーF2に入射し、第2の光ファイバーF2を経由してファイバーカプラ14に導かれる。
【0040】
測定光は、第3の光ファイバーF3に導かれて、そのファイバー端から出射する。第3の光ファイバーF3から出射した測定光は、第2のコリメーターC2で平行光束とされ、焦点調節部18及び走査部20を経由して、測定対象物Oの測定対象面Tに照射される。
【0041】
焦点調節部18は、測定光の焦点位置(測定光が焦点を結ぶ位置)を調節する。焦点調節部18は、焦点調節を行うための焦点調節レンズ18Aと、その焦点調節レンズ18Aを駆動するレンズドライバー18Bと、を備えて構成される。
【0042】
焦点調節レンズ18Aは、第3の光ファイバーF3から出射する測定光の光路上に配置される。焦点調節レンズ18Aは、たとえば、液体又はポリマーを用いた可変焦点レンズや、電気光学結晶を用いた可変焦点レンズのように、光軸に沿って移動する部品を持たずに、その焦点位置の調節が可能なレンズで構成される。この種の可変焦点レンズでは、電圧を印可すると、印加された電圧に応じて焦点位置を変化させる。
【0043】
レンズドライバー18Bは、焦点調節レンズ18Aを駆動するための回路であり、制御部26からの指示に従って焦点調節レンズ18Aを駆動する。
【0044】
走査部20は、測定光を走査させて測定点を変更させる。走査部20は、走査鏡20Aと、走査鏡20Aを駆動するアクチュエーター20Bと、を備えて構成される。
【0045】
走査鏡20Aは、焦点調節部18から出射する測定光の光路上に配置され、
図1において、矢印A−Aで示す方向に揺動自在に支持される。走査鏡20Aは、揺動することにより測定光の向きを変更する。これにより、測定光を走査でき、測定点(測定光の照射ポイント)を変更できる。
【0046】
なお、焦点調節部18から出射する測定光の進行方向をX軸方向とし、X軸方向と直交する方向をY軸方向とすると、走査鏡20Aは、Y軸と平行な軸の周りを揺動自在に支持される。したがって、走査鏡20Aが揺動すると、測定光はX軸に沿って走査される。ステージ40の載置面は、X軸及びY軸によって既定される平面(X−Y平面)と平行に設定される。この平面は水平面とされ、この水平面と直交する方向をZ軸方向とする。
【0047】
アクチュエーター20Bは、制御部26からの指示に従って走査鏡20Aを揺動させる。
【0048】
測定対象面Tに照射された測定光は、測定対象面Tで反射し、その反射光は、走査部20及び焦点調節部18を介して第2のコリメーターC2に入射する。そして、第2のコリメーターC2から第3の光ファイバーF3を経由してファイバーカプラ14に導かれる。
【0049】
ファイバーカプラ14は、測定対象面Tで反射した測定光と、コーナーキューブプリズム16で反射した参照光とを合成して、干渉光を生成する。この干渉光は、第4の光ファイバーF4に導かれて検出部22に入射される。
【0050】
検出部22は、光検出器であるフォトディテクタを有し、第4の光ファイバーF4によって導かれた干渉光の強度を検出する。そして、その検出結果(検出信号)を測長部24に出力する。
【0051】
測長部24は、検出部22で検出される干渉光の強度に基づいて、測定光と参照光との光路長差を算出し、算出した光路長差を測長値として出力する。具体的には、
図2に示すように、検出部22からの検出信号をフーリエ変換し、光路長差に応じた信号強度分布を求め、信号強度がピークとなる位置を検出して、測定光と参照光との光路長差を求める。この光路長差は、参照面と測定対象面との光学的な距離差を表わす。
【0052】
ここで、X−Y平面(ステージ40の載置面)と平行な面であって、参照面と光学的に共役な面を基準面として定義すると、各測定点での測長値は、基準面から測定点までの垂線の長さ(Z軸方向の距離)として定義できる。この場合、各測定点における測長値は、基準面を基準とした各測定点での測定対象面の高さ、あるいは、Z軸方向の位置として捉えることができる。
【0053】
制御部26は、形状測定装置10の全体の動作を制御する。具体的には、波長掃引光源12の駆動制御(光源制御部としての機能)や、焦点調節部18の駆動制御(焦点位置制御部としての機能)、走査部20の駆動制御(走査制御部としての機能)、検出部22の駆動制御(検出制御部としての機能)等を実施する。また、記録部28に対する測定データの記録制御(記録制御部としての機能)や、表示部32に対する表示制御(表示制御部としての機能)等を実施する。
【0054】
記録部28は、走査によって得られる各測定点での測定データ(測長値)を記録する。記録部28は、たとえば、ハードディスク装置などの記憶装置が用いられる。
【0055】
焦点位置決定部30は、走査によって得られた各測定点の測定データを取得して、次の測定点で測定する際に設定する測定光の焦点位置を決定する。制御部26は、走査によって得られる各測定点の測定データを焦点位置決定部30に順次加える。焦点位置決定部30は、得られた測定データに基づいて、次の測定点での測定光の焦点位置を決定する。そして、決定した焦点位置を制御部26に出力する。制御部26は、焦点位置決定部30から得られた焦点位置の情報に基づいて、焦点調節部18を制御し、測定光の焦点調整を行う。なお、この焦点位置の決定方法については、後に詳述する。
【0056】
表示部32は、ディスプレイを備え、ディスプレイに測定結果等の各種情報を表示する。
【0057】
操作部34は、キーボード、マウス等の各種操作デバイスを備え、オペレータから各種操作情報の入力を受け付ける。
【0058】
形状測定装置10は、以上のように構成される。なお、測長部24、制御部26、及び、焦点位置決定部30については、コンピューターで構成され、所定の測長プログラム、制御プログラム、焦点位置決定プログラム等を実行することにより、測長部24、制御部26、焦点位置決定部30として機能する。特に、制御部26については、コンピューターが所定の制御プログラムを実行することにより、光源制御部、焦点位置制御部、走査制御部、検出制御部、記録制御部、表示制御部等として機能する。
【0059】
[形状測定方法]
波長を一定の周期で掃引させた光を波長掃引光源12から出力させる。波長掃引光源12から出力された光は、第1の光ファイバーF1を経由してファイバーカプラ14に導かれ、ファイバーカプラ14によって測定光と参照光とに分岐される。
【0060】
参照光は、第2の光ファイバーF2に導かれて、そのファイバー端から出射し、第1のコリメーターC1を介して、一定位置に設置されたコーナーキューブプリズム16に照射される。コーナーキューブプリズム16に照射された参照光は、コーナーキューブプリズム16で反射し、第1のコリメーターC1を介して第2の光ファイバーF2に入射する。そして、その第2の光ファイバーF2を経由してファイバーカプラ14に導かれる。
【0061】
一方、測定光は、第3の光ファイバーF3に導かれて、そのファイバー端から出射する。第3の光ファイバーF3から出射した測定光は、第2のコリメーターC2で平行光束とされ、焦点調節部18及び走査部20を経由して、測定対象物Oの測定対象面Tに照射される。測定対象面Tに照射された測定光は、測定対象面Tで反射し、走査部20、焦点調節部18、第2のコリメーターC2を介して第3の光ファイバーF3に入射する。そして、第3の光ファイバーF3を経由してファイバーカプラ14に導かれる。
【0062】
測定対象面Tで反射した測定光、及び、コーナーキューブプリズム16で反射した参照光は、ファイバーカプラ14で合成され、干渉光が生成される。生成された干渉光は、第4の光ファイバーF4に導かれて検出部22に入射され、その強度が検出される。
【0063】
検出部22の検出結果(検出信号)は、測長部24に出力される。測長部24は、検出部22の検出結果に基づいて、測定光と参照光との光路長差を算出し、算出した光路長差を測長値として制御部26に出力する。制御部26は、測長部24から得られた測定データ(各測定点の測長値)を記録部28に記録するとともに、表示部32に表示する。
【0064】
測定は、測定光を走査させることにより連続的に行われる。制御部26は、一つの測定点での測定が終了すると、走査部20を駆動して、測定光の照射位置を次の測定点に移動させる。このように、測定光の照射位置を順次移動させて、各測定点での測長値を取得する。これにより、測定光で走査した箇所の形状を測定できる。すなわち、各測定点での測定対象面Tの高さが求まるので、測定対象面Tの形状を求めることができる。
【0065】
[焦点調節]
上記のように、測定は、測定光の走査によって、測定点を順次移動させながら連続的に行われる。本実施の形態の形状測定装置10では、測定点の切り替わりに連動して、測定光の焦点調節が行われる。この焦点合わせは、過去の測定データを利用して行われる。以下、この焦点調節の方法について説明する。
【0066】
〈第1の方法〉
図3は、焦点調節の第1の方法の概念図である。
【0067】
図3において、符号Tは測定対象面である。測定対象面Tは、図中矢印Bで示す方向(X軸と平行な方向)に走査され、各点P1、P2、…で測定される。すなわち、各点P1、P2、…が測定点であり、点P1、点P2、…の順で測定される。走査方向(図中矢印Bの方向)における各測定点の間隔は一定である。
【0068】
上記のように、測定光の照射により、測定光を照射した地点における測長値が得られる。この測長値は、測定光を照射した地点における測定対象面の位置として捉えることができる。
【0069】
そこで、第1の方法では、直前の測定点で測定された測定対象面Tの位置に焦点を合わせて、次の測定点での測定を実施する。すなわち、次の測定点での測定光の焦点位置は、直前の測定点での測定対象面Tの位置に設定される。たとえば、第2の測定点である点P2では、第1の測定点である点P1での測定対象面Tの位置に焦点位置が設定される。また、第3の測定点である点P3では、第2の測定点である点P2での測定対象面Tの位置に焦点位置が設定される。
【0070】
このように、直前の測定点での測定対象面Tの位置に焦点位置を合わせて、次の測定点の測定を実施することにより、測定光の焦点位置が測定対象面Tからずれるのを防止でき、高感度な測定が可能になる。
【0071】
焦点位置決定部30は、測長値と焦点位置との関係を定めたテーブルを保持しており、このテーブルを参照して、測長値から測定対象面Tの位置に焦点を合わせるための焦点位置を決定する。そして、決定した焦点位置の情報を制御部26に出力する。
【0072】
制御部26は、得られた焦点位置の情報に基づいて、焦点調節部18の駆動を制御し、決められた焦点位置に測定光の焦点を合わせる。すなわち、直前の測定点での測定対象面Tの位置に測定光の焦点を合わせる。
【0073】
図4は、焦点調節を含めた測定の手順を示すフローチャートである。
【0074】
まず、第1の測定点で測定を実施する(ステップS11)。そして、その測定結果を記録部28に記録する(ステップS12)。
【0075】
記録部28への測定データの記録後、次の測定点の有無を判定する(ステップS13)。すなわち、走査が完了したか否かを判定する。走査が完了しており、次の測定点がない場合は、処理を終了する。
【0076】
一方、次の測定点が存在する場合は、次の測定点での焦点位置を決定する(ステップS14)。ここで、次の測定点での焦点位置は、直前の測定点での測定結果に基づいて決定する。すなわち、直前の測定点での測定対象面Tの位置に焦点位置を設定する。
【0077】
次に、焦点調節を行って、決定した焦点位置に測定光の焦点位置を移動させる(ステップS15)。焦点調節後、測定点を移動させ(ステップS16)、次の測定点の測定を実施する(ステップS11)。
【0078】
このように、測定点を切り替えるたびに焦点調節を行って、各測定点での測定を実施する。これにより、高感度な測定を行うことができる。
【0079】
〈第2の方法〉
図5は、焦点調節の第2の方法の概念図である。
【0080】
図5において、符号Tは測定対象面である。測定対象面Tは、図中矢印Bで示す方向に走査され、各点P1、P2、…で測定される。
【0081】
本方法では、直前の測定点までに取得された測定点ごとの測長値に基づいて、次の測定点での測定対象面Tの位置を推定し、推定した位置を次の測定点での焦点位置に設定する。
【0082】
たとえば、第6の測定点である点P6まで測定が完了している場合、第1の測定点(測定開始点)である点P1から第6の測定点(直前の測定点)である点P6までの各測定点での測定結果(測長値L1、L2、…、L6)を利用して、次の測定点(点P7)での測定対象面Tの位置を推定する。そして、推定した位置に焦点位置を設定して、第7の測定点(点P7)での測定を実施する。推定は、たとえば、線形予測法を利用する。
【0083】
焦点位置決定部30は、各測定点での測定結果の情報を逐次取得し、線形予測法を利用して、次の測定点での測定対象面Tの位置を算出する。そして、算出した位置を次の測定点での焦点位置に決定し、決定した焦点位置の情報を制御部26に出力する。制御部26は、得られた焦点位置の情報に基づいて、焦点調節部18の駆動を制御し、決められた焦点位置に測定光の焦点を合わせる。
【0084】
このように、第2の方法では、直前の測定点までの測定結果に基づいて、次の測定点での測定対象面Tの位置を推定し、その位置に焦点位置を設定して、次の測定点での測定を実施する。これにより、測定光の焦点位置から測定対象面Tの位置がずれるのを防止でき、常に高感度な測定を行うことができる。特に、
図5に示すように、測定対象面Tが連続的に変化する場合に有効に作用する。
【0085】
なお、次の測定点での測定対象面Tの位置を推定する方法は、線形予測法に限らず、種々の方法を利用することができる。たとえば、直前の測定点までの測定結果を利用して、多項式回帰分析により次の測定点での測定対象面Tの位置を推定することもできる。これにより、より正確に次の測定点での測定対象面Tの位置を推定できる。
【0086】
[透明物体の測定]
波長掃引光源を用いた干渉計測では、透明物体のように測定対象物Oが測定光を透過する場合、測定対象物Oの両面(表面及び裏面)の形状を測定することができる。
【0087】
しかしながら、信号強度は、焦点位置から離れるに従って低下するので、一度に両面の測定を高精度に行うことは困難である。
【0088】
そこで、測定対象物を2回走査し、表面と裏面を分けて測定する。その際、表面の測定では、表面の位置に測定光の焦点を合わせて測定を実施し、裏面の測定では、裏面の位置に測定光の焦点の位置を合わせて測定を実施する。
【0089】
図6は、透明物体を測定する場合の測定の概念図である。なお、同図(A)は、測定対象物Oの表面を測定する場合の概念図であり、同図(B)は、測定対象物Oの裏面を測定する場合の概念図である。
【0090】
測定対象物Oの表面を第1の測定対象面T1とし、裏面を第2の測定対象面T2とすると、1回目の走査では、第1の測定対象面T1に測定光の焦点を合わせて、第1の測定対象面T1の測定を実施する。そして、2回目の走査では、第2の測定対象面T2に測定光の焦点を合わせて、第2の測定対象面T2の測定を実施する。
【0091】
ここで、焦点調節は、上記第1の方法を用いて実施する。すなわち、直前の測定点での測定結果(測長値)に基づいて、次の測定点での測定光の焦点位置を決定する。したがって、次の測定点での焦点位置は、直前の測定点での測定対象面の位置に設定される。
【0092】
たとえば、
図6(A)に示すように、1回目の走査によって、第1の測定対象面T1を測定する場合、第2の測定点である点P2では、第1の測定点である点P1での第1の測定対象面T1の位置に焦点位置が設定される。また、第3の測定点である点P3では、第2の測定点である点P2での第1の測定対象面T1の位置に焦点位置が設定される。
【0093】
また、たとえば、
図6(B)に示すように、2回目の走査によって、第2の測定対象面T2を測定する場合、第2の測定点である点P2では、第1の測定点である点P1での第2の測定対象面T2の位置に焦点位置が設定される。また、第3の測定点である点P3では、第2の測定点である点P2での第2の測定対象面T2の位置に焦点位置が設定される。
【0094】
このように、直前の測定点での測定対象面の位置に焦点位置を合わせて、次の測定点の測定を実施することにより、測定光の焦点位置が測定対象面からずれるのを防止でき、両面において、高感度な測定が可能になる。
【0095】
図7は、透明物体を測定する場合の測定の手順を示すフローチャートである。
【0096】
上記のように、透明物体を測定する場合は、測定対象物の2回走査し、表裏を分けて測定する。
【0097】
測定が指示されると、1回目の走査を開始する(ステップS20)。まず、第1の測定点で測定を実施する(ステップS21)。そして、その測定結果を記録部28に記録する(ステップS22)。記録部28への測定データの記録後、次の測定点の有無を判定する(ステップS23)。すなわち、1回目の走査が完了したか否かを判定する。1回目の走査が完了している場合は、2回目の走査を開始する(ステップS30)。
【0098】
一方、次の測定点が存在する場合は、次の測定点での焦点位置を決定する(ステップS24)。上記のように、次の測定点での焦点位置は、直前の測定点での測定結果に基づいて決定する。すなわち、直前の測定点での第1の測定対象面T1の位置に焦点位置を設定する。次に、焦点調節を行い、決定した焦点位置に測定光の焦点を移動させる(ステップS25)。この場合、第1の測定対象面T1、又は、その近傍に焦点が合わせられる。焦点調節後、測定点を移動させ(ステップS26)、次の測定点の測定を実施する(ステップS21)。
【0099】
1回目の走査が終了すると、2回目の走査を開始する(ステップS30)。まず、第1の測定点での測定を実施する(ステップS31)。そして、その測定結果を記録部28に記録する(ステップS32)。記録部28への測定データの記録後、次の測定点の有無を判定する(ステップS33)。すなわち、2回目の走査が完了したか否かを判定する。2回目の走査が完了している場合は、測定処理を終了する。
【0100】
一方、次の測定点が存在する場合は、次の測定点での焦点位置を決定する(ステップS34)。上記のように、次の測定点での焦点位置は、直前の測定点での測定結果に基づいて決定する。すなわち、直前の測定点での第2の測定対象面T2の位置に焦点位置を設定する。次に、焦点調節を行い、決定した焦点位置に測定光の焦点を移動させる(ステップS35)。この場合、第2の測定対象面T2、又は、その近傍に焦点が合わせられる。焦点調節後、測定点を移動させ(ステップS36)、次の測定点の測定を実施する(ステップS31)。
【0101】
このように、測定対象物が測定光を透過可能な場合、測定対象物を2回走査して測定を実施し、測定対象物の表面及び裏面を測定する。この際、表面を測定する場合は、測定光の焦点を表面の位置に合わせて測定を実施し、裏面を測定する場合は、測定光の焦点を裏面の位置に合わせて測定を実施する。これにより、表面及び裏面において、高感度な測定を行うことができる。
【0102】
なお、本例では、第1の方法を用いて焦点調節しているが、第2の方法を用い焦点調整することもできる。
【0103】
また、本例では、1回目の走査で表面を測定し、2回目の走査で裏面の測定する構成としているが、1回目の走査で裏面を測定し、2回目の走査で表面の測定する構成とすることもできる。
【0104】
また、測定対象物が積層構造を有する場合、測定する界面の数だけ走査回数を増やして、各界面の測定を行うことができる。この場合、測定する界面の位置に合わせて、測定光の焦点位置を調節する。たとえば、測定対象物が透明であって、かつ、2層構造を有する場合、表面及び裏面に加えて、第1層と第2層との界面が測定対象面となる。この場合、3回走査し、表面(第1の測定対象面)、第1層と第2層との界面(第2の測定対象面)、裏面(第3の測定対象面)の順で測定する。そして、1回目の走査では表面に、2回目の走査では第1層と第2層との界面に、3回目の走査では裏面に、測定光の焦点を合わせて、測定を実施する。これにより、各面において、高感度な測定ができる。
【0105】
[変形例]
〈焦点調節部〉
上記実施の形態では、可変焦点レンズを用いて測定光の焦点調節を行う構成としているが、測定光の焦点調節を行う手段は、これに限定されるものではない。レンズを光軸方向に機械的に移動させて、焦点調節を行う構成とすることもできる。
【0106】
なお、可変焦点レンズは、レンズの機械的な移動を伴わないことから、応答性がよく、短時間で焦点合わせの高速化が図れるという利点がある。
【0107】
〈走査部〉
上記実施の形態では、走査鏡を用いて測定光を走査させる構成としているが、測定光を走査させる手段は、これに限定されるものでない。この他、たとえば、ポリゴンミラーを用いて走査させる構成とすることもできる。また、MEMSミラー(MEMS : Micro Electro Mechanical System)を用いて、走査光を走査させることもできる。さらに、電気光学結晶による偏向装置によって測定光を走査させることもできる。
【0108】
また、上記実施の形態では、測定光を偏向させて、測定光を走査させる構成としているが、測定対象物を移動させて、測定光を走査させる構成とすることもできる。この場合、たとえば、ステージをX−Y平面に沿って移動可能とし、ステージをアクチュエーターで移動させて、測定光を走査させる。
【0109】
〈参照面〉
上記実施の形態では、コーナーキューブプリズムで参照面を構成しているが、ミラーで参照面を構成することもできる。
【0110】
〈分岐部・干渉部〉
上記実施の形態では、分岐部及び干渉部をファイバーカプラで構成しているが、ビームスプリッターで構成することもできる。
【0111】
また、上記実施の形態では、分岐部及び干渉部を1つのファイバーカプラで兼用しているが、分岐部及び干渉部を別々のファイバーカプラで構成することもできる。
【0112】
〈干渉計〉
上記実施の形態では、干渉計の構成として、マイケルソン型の干渉計の構成を採用しているが、干渉計の構成は、これに限定されるものではない。この他、たとえば、フィゾー型の干渉で構成することもできる。
【0113】
〈測定対象物〉
測定対象物については、特に限定されるものではなく、金属やプラスチック等の種々の物体を測定対象物とすることができる。また、上記のように、測定光を透過可能な物体、たとえば、ガラスやポリマー等で構成される物体を測定対象物とすることもできる。
【実施例】
【0114】
本発明の効果を確認するため、次の実験を行った。
【0115】
図1に示す形状測定装置において、各測定点で焦点調節を行いながら測定する場合と、焦点調節を行わずに測定する場合(焦点を固定して測定する場合)とを比較した。
【0116】
比較は、30度の傾斜を有する金属の測定対象面に対して、測長方向(Z軸方向)に約10mmの範囲で測定することにより行った。
【0117】
また、焦点調節は、第1の方法、すなわち、直前の測定点での測定対象面の位置に焦点を合わせて次の測定点の測定を実施する方法を採用した。
【0118】
図8は、測定結果を示すグラフである。同図(A)は、焦点調節を行いながら測定した場合の測定結果を示しており、同図(B)は、焦点調節を行わすに測定した場合の測定結果を示している。
【0119】
図8(B)に示すように、焦点調節を行わずに測定した場合、高感度測定が可能な範囲は、測長方向に±1mm程度の範囲Rbである。
【0120】
これに対して、焦点調節を行いながら測定する方法(本発明の方法)の場合は、
図8(A)に示すように、約10mmの範囲の全域Raで高感度計測が可能であることが確認できる。
【0121】
このように、本発明によれば、深さのある物体の形状測定に非常に有効であることが確認できる。